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Specification :(In Japanese)表面修飾基材およびポリマー被覆基材

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5130446
Publication number P2010-261001A
Date of registration Nov 16, 2012
Date of issue Jan 30, 2013
Date of publication of application Nov 18, 2010
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)表面修飾基材およびポリマー被覆基材
IPC (International Patent Classification) C08F   2/00        (2006.01)
C08L  89/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
C08F 289/00        (2006.01)
C09D 189/00        (2006.01)
C09D 157/00        (2006.01)
C08K   5/13        (2006.01)
C08K   5/02        (2006.01)
FI (File Index) C08F 2/00 C
C08L 89/00
B82B 1/00
C08F 289/00
C09D 189/00
C09D 157/00
C08K 5/13
C08K 5/02
Number of claims or invention 3
Total pages 9
Application Number P2009-114889
Date of filing May 11, 2009
Date of request for substantive examination Sep 2, 2010
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】高原 淳
【氏名】小林 元康
【氏名】宮地 宏直
Representative (In Japanese)【識別番号】100097180、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 均
【識別番号】100110917、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 亨
Examiner (In Japanese)【審査官】久保田 英樹
Document or reference (In Japanese)米国特許出願公開第2010/0116691(US,A1)
J. Liu, W. Yang, H.M. Zareie, J.J. Gooding, T.P. Davis,pH-Detachable Polymer Brushes Formed Using Titanium-Diol Coordination Chemistry and Living Radical Polymerization (RAFT),Macromolecules,米国,American Chemical Society,2009年 3月30日,Vol.42, No.8,pp.2931-2939
Field of search C08F 2/00- 2/60
C08F 251/00-291/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
基材と、
基材表面に直接に形成されたポリドーパミン膜と、
該ポリドーパミン膜に固定された重合開始剤とを含む表面修飾基材。
【請求項2】
基材と、
基材表面に直接に形成されたポリドーパミン膜と、
該ポリドーパミン膜に固定された重合開始剤と、
該重合開始剤を起点としてモノマーを重合してなる高分子膜とを有するポリマー被覆基材。
【請求項3】
前記高分子膜が摺動性高分子であり、前記摺動性高分子がメタクリル酸アルキルエステル(アルキル鎖長C6以上、またはイオン性官能基を有するメタクリル酸エステル)を主成分単位として含む摺動性高分子である請求項2に記載のポリマー被覆基材。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾基材およびポリマー被覆基材に関する。特に基材の材質によらず、基材表面をポリマーで簡易に被覆しうる表面修飾基材、ならびに該表面修飾基材を用いて形成したいわゆるポリマーブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
表面改質の方法として材料表面にポリマーをグラフト重合させる、いわゆるポリマーブラシの利用が知られている。ポリマーブラシを調製するには重合反応の開始点となる官能基を対象となる材料表面に固定化する。このため、材料表面の化学的特性に応じた試薬を準備する必要がある。例えば、ガラスやシリコンに対してはシランカップリング系化合物(非特許文献1-3)、金にはチオール類(非特許文献1-5)、鉄やアルミにはリン酸化合物(非特許文献6-7)など基材と化学的に結合するのに適切な化合物を選択する必要があり、ユニバーサルに対応出来る化合物が検討されている。
【0003】
また、上記のように材料表面にポリマーブラシ膜を調製する方法は従来から行われていたが、一般的にグラフト密度が低く1平方ナノメール当たり0.01~0.1本未満しか高分子鎖が固定化できないという問題があった。1998年以降、リビング重合を用いた表面開始重合法が開発され(非特許文献8)、グラフト密度は0.1~1.0本/nm2程度にまで向上したが、表面改質対象となる材料に応じて重合開始剤の固定化方法を変える必要があった。
【0004】
ところで、二枚貝の足糸腺から分泌されるドーパミン含有タンパクは海水中でも安定な接着力を発揮する天然の接着剤として知られている。このドーパミンは塩基性条件下で様々な材料表面に付着し酸化重合し、膜を形成することが知られている(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】O. Prueker, J. Ruehe, Macromolecules, 1998, 31, 592-601
【非特許文献2】B. Zhao and W. J. Brittain, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 3557-3558
【非特許文献3】K. Ohno, T. Morinaga, K. Koh, Y. Tsujii and T. Fukuda, Macromolecules, 2005, 38, 2137-2142
【非特許文献4】J. -B. Kim, M. L. Bruening and G. L. Baker, Am. Chem. Soc., 2000, 122, 7616-7617
【非特許文献5】W. Huang, J. -B. Kim, M. L. Bruening, G. L. Baker, Macromolecules, 2002, 35, 1175-1179
【非特許文献6】R. Matsuno, K. Yamamoto, H. Otuska and A. Takahara, Macromolecules, 2004, 37, 2203-2209
【非特許文献7】R. Matsuno, H. Otuska and A. Takahara, Soft Matt., 2006, 2, 415-421
【非特許文献8】M. Ejaz, S. Yamamoto, K. Ohno, Y. Tsujii, T. Fukuda, Macromolecules 1998, 31, 5934-5936
【非特許文献9】H. S. Lee, M. W. Dellatore, M. Miller, P. B. Messersmith, Science, 2007, 318, 426-430
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術に鑑みてなされたものであり、材質によらず、各種の基材表面に簡易に重合開始剤を固定しうる技術を提供することを目的としている。また、本発明は、表面に重合開始剤が固定された表面修飾基材を用いて形成した新規ポリマーブラシ(ポリマー被覆基材)を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、各種基材表面に簡易に形成することが可能なポリドーパミン膜に着目するに至った。ポリドーパミン膜には、ドーパミン由来のフェノール性水酸基、アミノ基が存在するため、適切な化学処理により重合反応の起点となる官能基(以下、「重合開始剤」と呼ぶことがある)を導入できる可能性がある。
【0008】
かかる知見に基づいて完成された本発明は、下記事項を要旨として含む。
(1) 基材と、基材表面に形成されたポリドーパミン膜と、該ポリドーパミン膜に固定された重合開始剤とを含む表面修飾基材。
【0009】
(2) 基材と、基材表面に形成されたポリドーパミン膜と、該ポリドーパミン膜に固定された重合開始剤と、該重合開始剤を起点としてモノマーを重合してなる高分子膜とを有するポリマー被覆基材。
【0010】
(3) 前記高分子膜が摺動性高分子である(2)に記載のポリマー被覆基材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、材質によらず、各種の基材表面に簡易に重合開始剤を固定しうる技術が提供される。また、本発明によれば、該表面に重合開始剤が固定された表面修飾基材を用いて形成した新規ポリマーブラシ(ポリマー被覆基材)が提供される。さらに本発明によれば、グラフト密度の高いポリマーブラシが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施例において製造したポリドーパミン膜(図1A)、重合開始剤が導入されたポリドーパミン膜(図1B)およびポリドーパミン膜上に形成されたポリメチルメタクリレート膜(図1C)のXPSスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、その最良の形態を含めて、さらに具体的に説明する。本発明に係る表面修飾基材は、基材と、基材表面に形成されたポリドーパミン膜と、該ポリドーパミン膜に固定された重合開始剤とを含む。

【0014】
ポリドーパミン膜は、金属や各種の材質表面に形成することが可能であり、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)表面などにも形成することができる。したがって、本発明において使用する基材の材質は特に限定はされず、シリコン、アルミニウム、ステンレス等の金属製の基材であってもよく、またポリオレフィン、PTFE等のポリマーからなる基材であってもよく、さらにガラスなどの無機材料であってもよい。ポリマーからなる基材においては、ポリマーをあらゆる手法で変性させた樹脂も、基材の構成樹脂として用いることができる。

【0015】
これらは単独で、或いは2種類以上を含む樹脂であっても構わない。このような樹脂の成形体には、必要に応じて、各種の添加剤が配合されていても良い。添加剤としては、例えば軟化剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤、結晶核剤、ワックス、増粘剤、機械的安定性付与剤、レベリング剤、濡れ剤、造膜助剤、架橋剤、防腐剤、防錆剤、顔料、分散剤、凍結防止剤、消泡剤等が挙げられ、これらは単独で、或いは2種類以上組み合わせて添加される。

【0016】
また、基材の形状も特に限定はされない。たとえば、シート状、粒子状であってもよく、各種の成形体形状であってもよい。たとえば基材は、金属または重合体からなるカテーテル、ステントなど医療用器材、転がり軸受、すべり軸受、内燃機関、変速機等の自動車部品や建設機械部品などであってもよい。これらの成形体を本発明において基材として使用する場合、成形体表面に所望の高分子膜を簡易かつ高密度で形成することが可能であり、機器の性能を向上することができる。たとえば高分子膜として摺動性の高分子膜を形成することで、滑り性が向上するため、カテーテルやステントなどの挿管作業を円滑かつ安全に行えるようになる。

【0017】
基材表面へのポリドーパミン膜の形成は、ドーパミンの優れた接着性と自発的薄膜形成能力を活用して行われる。具体的には、ドーパミン水溶液(pH=8程度)に基材を浸漬させると速やかにドーパミンの自己酸化重合が始まり、基材表面に高分子化したドーパミンが堆積して薄膜を形成する。この薄膜はガラスや金属など幅広い材料表面に安定に接着する。

【0018】
ドーパミン水溶液の濃度は、一般的には0.01~0.1モル/リットル程度であれば特に限定はされないが、0.01~0.05モル/リットルが好ましい。pHは、一般的には6.4~10.8程度であり、最も好ましくは8.0~8.5である。また、基材浸漬時のドーパミン水溶液の温度は、10~50℃程度が好ましい。浸漬時間は、目的とするポリドーパミン膜の厚みにより様々であり、一般的には6~48時間程度が好適である。得られるポリドーパミン膜の厚さは、10~30nm程度が好ましい。

【0019】
ポリドーパミン膜には、ドーパミン由来のフェノール性水酸基、アミノ基が存在するため、適切な化学処理により重合反応の起点となる官能基(重合開始剤)を導入できる。

【0020】
重合開始剤の種類は、最終的に基材表面に被覆される高分子膜を形成するモノマーの種類に応じて適宜に選択される。高分子膜形成用モノマーと重合開始剤との関係を以下にまとめるが、本発明で使用する重合開始剤および形成される高分子膜がこれらに限定されることはない。

【0021】
【表1】
JP0005130446B2_000002t.gif

【0022】
アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルにはメタクリル酸メチルをはじめ、エステル基としてメチル基、エチル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ヒドロキシエチル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基、3-エチルオキセタニル基、2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル基、αグルコース、βラクトース、ジメチルアミノ基、4級アンモニウムカチオン、N-アルキルイミダゾールカチオン、N-アルキルピリジニウムカチオン、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-パーフルオロブチルエチル基、2-パーフルオロオクチルエチル基が結合したモノマーも含まれる。また、アクリル酸、メタクリル酸、2-(2-メタクリロイルオキシエチル)ジメチルアミノ酢酸、2-メタクリルロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(N-[2-メタクリロイロキシエチル]-N,N-ジメチルアンモニオ)プロパンスルホネートも含まれる。

【0023】
アクリルアミド誘導体には無置換アクリルアミドの他にN-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N,N-ジ(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、(3-(メタクリロイルアミノ)プロピル)ジメチル-3-スルホプロピル)アンモニウム塩、1-(3-スルホプロピル)-2-ビニルピリジニウムヒドロキシドを含む。
スチレン誘導体としてはスチレン、スチレンスルホン酸、4-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸t-ブチル、4-ジメチルアミノスチレン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンが含まれる。

【0024】
上記の重合開始剤は、ポリドーパミン膜表面のフェノール性水酸基やアミノ基と反応して、ポリドーパミン膜に固定される。したがって、重合開始剤の使用量は、フェノール性水酸基やアミノ基に対して当量程度であれば十分であるが、やや過剰に使用してもよい。また、重合開始剤を固定する際の温度、時間は、使用する重合開始剤に種類に応じて選定され、特に限定されない。ポリドーパミン膜への重合開始剤の固定法としては、たとえばポリドーパミン膜を有する基材を、重合開始剤を含有する塩化メチレンなどの有機溶媒または水に浸漬する方法、あるいは該基材を有機溶媒または水に浸漬し、重合開始剤を滴下する方法などが挙げられる。
上記の工程を経て、本発明に係る表面修飾基材が得られる。

【0025】
次いで、表面修飾基材に固定された重合開始剤を起点として、所望の重合性モノマーを重合することで、本発明に係るポリマー被覆基材が得られる。重合性モノマーの重合条件は、使用するモノマー種に応じて適宜に選定され、また必要に応じ助触媒等を添加してもよい。また、重合時の温度、時間は、使用する重合開始剤、モノマー種および目的とする高分子膜の厚みに応じて選定され、特に限定されない。重合法としては具体的には、前記表面修飾基材を、重合性モノマーまたはその溶液に浸漬する方法などが挙げられる。

【0026】
高分子膜は、前記重合開始剤を起点として成長し、いわゆるポリマーブラシの形態で本発明に係るポリマー被覆基材が得られる。得られる高分子膜の厚みは、その用途にもよるが一般に30~200nm程度である。また、本発明によれば、高いグラフト密度で高分子膜を形成することも可能である。ポリマーはポリドーパミン膜に固定された重合開始剤を起点として成長する。したがって、重合開始剤を高密度でポリドーパミン膜に固定することで、得られる高分子膜も緻密になる。高分子膜の緻密性は、基材表面の単位面積当たりに形成されるポリマー鎖の本数(グラフト密度ともいう)で規定でき、たとえば、本発明によれば、0.5本/nm2以上のグラフト密度で高分子膜を形成することもできる。

【0027】
本発明のポリマー被覆基材を摺動部材として用いる場合、高分子膜としてはメタクリル酸アルキルエステル(アルキル鎖長C6以上、またはエチレングリコール鎖長9繰り返し単位以上)を主成分単位として含む摺動性高分子が好ましく用いられる。また、耐摩耗性や高温条件下での低摩擦性を向上させるにはメタクリル酸ブチルイミダゾリウム塩などが優れている。さらにメタクリル酸ブチルイミダゾリウム塩はイオン伝導性にも優れるため燃料電池の電極表面コーティングなどへも応用が可能である。

【0028】
ステントやカテーテルなどステンレス製医用材料で表面に低摩擦特性を付与する場合、高分子膜としては高分子電解質や水溶性ポリマーが好ましく用いられる。特に、ポリ(アクリル酸ポリエチレングリコール)グラフト薄膜は大気中でも低摩擦を発現する。

【0029】
材料表面に撥水性材料を付与するには本法によりポリ(メタクリル酸パーフルオロアルキル)グラフト薄膜を調製することで達成可能である。

【0030】
抗菌コート材料を得るには本法によりポリ(メタクリルロイルオキシエチルトリアルキルアンモニウム塩)をグラフトすることで達成できる。

【0031】
窓ガラスや外壁などの基材に防汚性を付与するには高分子両性電解質グラフト薄膜が適している。

【0032】
上記したように、本発明においては(1)ポリドーパミン膜の固定化、(2)重合開始剤の導入の2段階のプロセスを経て基材表面に重合開始剤を固定化している。一方、従来法では1段階の工程で重合開始剤を固定化できるが、従来法では基材の材質に応じて適切な試薬を選択し、反応条件を調整しながら重合開始剤を基材表面に固定する必要がある。上記でも述べたように例えば、ガラスやシリコンに対してはシランカップリング系化合物、金にはチオール類、鉄やアルミにはリン酸化合物など基材と化学的に結合するのに適切な化合物を個々に用意しておかなくてはならない。そのために労力およびコストが増大する。一方、本発明では様々な材質の基材に対してもドーパミンという1種類の物質を用い、同じプロセスを経て確実に重合開始剤を固定化できるため、非常に簡便で優れた手法である。

【0033】
また、従来法では化学処理の際にトルエンやテトラヒドロフランなどの有機溶剤を使用する。さらに、ごくわずかの水分が存在しても重合開始剤の固定化反応が阻害されるため使用する溶剤の脱水はもちろん、場合によっては乾燥窒素を充填したグローブボックス中で全ての処理工程を行う必要があり、高度な技術と設備が要求される。一方、本発明ではドーパミン水溶液に基材を浸漬するだけで基材表面にポリドーパミン膜が形成され、また重合開始剤の固定も容易である。ドーパミンは生体内で神経伝達物質として存在する物質であり、溶媒として使用する水はほぼ無害と考えて良い。従って、本発明は従来法に比べ環境負荷の極めて低いという大きな特徴を持つ技術である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【実施例】
【0035】
pH8.5に調整したTris-HCl緩衝溶液にドーパミン塩酸塩を加え、ステンレス製基材を浸漬した。12時間後、基材表面上にはポリドーパミン膜が生成した。ポリドーパミン膜を形成した基材を、塩化メチレンに浸漬し、ここに重合開始剤として酸臭化物(2-bromoisobutylyl bromide)を滴下して、ポリドーパミン膜に重合開始剤を固定して表面修飾基材を得た。表面修飾基材を洗浄、自然乾燥した後、メタクリル酸メチルとCuBr(I)を含む溶液に表面修飾基材を浸漬し、70℃で6時間反応させることで基材表面にポリメチルメタクリレート(PMMA)をグラフトし、その後洗浄、乾燥を行った。反応の進行はX線光電子分光法(XPS)により確認した。また、静的接触角測定、原子間力顕微鏡(AFM)により水に対する接触角の変化、および膜厚の変化を測定した。
【実施例】
【0036】
図1にステンレス基材上でのポリドーパミン膜調製後(A)、酸臭化物反応処理後(B)、PMMA調製後(C)におけるXPSスペクトルを示す。酸臭化物との反応後にC=O、Br3dのピークが観察され、ポリドーパミン膜上へ表面開始剤が固定化できていることを確認した。メタクリル酸メチルの重合後、Br3dとN1sのピーク強度が低下し、C1sとO1sのスペクトルにエステル結合由来のピークが明瞭に現れたことからPMMAグラフト層の生成が示された。また水に対する静的接触角はポリドーパミン膜55°に対し、PMMA膜調製後は80°へと上昇した。さらに、ポリドーパミン/PMMAは170nm以上の膜厚を有していた。以上の結果から、種々の基材への接着性に優れたポリドーパミンを下地として利用することで様々な基材上への高分子鎖の固定化による表面改質が可能であると考えられる。
【実施例】
【0037】
また、上記と同法によりシリコン基板、アルミニウム上でポリドーパミン薄膜を調製し、さらに酸臭化物(2-bromoisobutylyl bromide)を反応させることで重合開始官能基を固定した。また、その後、上記と同様にして基材表面にPMMAがグラフトしたことをXPSおよびエリプソメーター、接触角測定により確認した。
【実施例】
【0038】
さらに、上記と同法によりポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基材上でポリドーパミン薄膜を調製した。XPSスペクトルからポリドーパミン由来の炭素C1sおよび窒素N1Sの結合ピークが観測されポリドーパミン薄膜の生成を確認した。
【実施例】
【0039】
ステンレス基材およびガラス基板上でのポリドーパミン膜を調製後、表面に2-ブロモイソブチル基を固定した。得られたステンレス製基材とCuBr(I)、2,2‘-ビピリジルをガラス容器に入れ真空脱気した後、高純度アルゴンで置換した。ここに水、メタクリル酸ポリエチレングリコール(分子量475)、2-ブロモイソブチル酸エチルをこの順に加え、直ちに凍結脱気した後、高純度アルゴンを充填した。室温で4時間撹拌した後、ステンレス基板を取り出し、メタノールと水で十分に洗浄した。これにより膜厚35nmのポリ(メタクリル酸ポリエチレングリコール)グラフト層が生成したことをエリプソメーターにより確認した。
【実施例】
【0040】
表面摩擦特性を直線摺動型摩擦試験機によりステンレス球(直径10mm)プローブを用いて大気中荷重50g(面圧201MPa)、摺動速度120mm/min条件下にて評価した。未処理のステンレス基板の動摩擦係数が0.34であるのに対してポリ(メタクリル酸ポリエチレングリコール)グラフトステンレス基板は0.028であり、グラフト処理により動摩擦係数が10分の1以下まで低下した。水中でも動摩擦係数は0.098程度であり低摩擦表面が得られている。また、荷重20g(面圧148MPa)条件下では大気中で80往復以上の摩擦に対しても低摩擦を維持していた。通常のコーティング方法では数往復程度の摩擦で膜が剥離するが、本件のグラフト処理では耐摩耗性が向上していることが明らかとなった。

Drawing
(In Japanese)【図1】
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