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明細書 :グラフト表面固体とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3422463号 (P3422463)
公開番号 特開平11-263819 (P1999-263819A)
登録日 平成15年4月25日(2003.4.25)
発行日 平成15年6月30日(2003.6.30)
公開日 平成11年9月28日(1999.9.28)
発明の名称または考案の名称 グラフト表面固体とその製造方法
国際特許分類 C08F291/00      
C08F292/36      
C08F292/00      
FI C08F 291/00
C08F 292/36
C08F 292/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 5
出願番号 特願平10-065684 (P1998-065684)
出願日 平成10年3月16日(1998.3.16)
審査請求日 平成13年3月13日(2001.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】辻井 敬亘
【氏名】福田 猛
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】中島 庸子
参考文献・文献 特開 昭62-1701(JP,A)
特開 平2-237625(JP,A)
特開 平2-244611(JP,A)
特開 平10-287720(JP,A)
特公 昭40-22393(JP,B1)
調査した分野 C08F 291/00
C08F 292/00
C08F 2/36
特許請求の範囲 【請求項1】
固体表面に単分子累積された重合開始基を介して高分子鎖がグラフトされていることを特徴とするグラフト表面固体。

【請求項2】
単分子累積は1層または2層以上である請求項1のグラフト表面固体。

【請求項3】
重合開始基は1種または2種以上である請求項1または2のグラフト表面固体。

【請求項4】
単分子累積された重合開始基を介しての高分子鎖のグラフトは、固体表面の広がり範囲においてあらかじめ区分されたパターンで不活化された重合開始基を有している請求項1ないし3のいずれかのグラフト表面固体。

【請求項5】
高分子鎖のグラフトは、ホモ重合、ランダム共重合もしくはブロック共重合の高分子鎖グラフトである請求項1ないし4のいずれかのグラフト表面固体。

【請求項6】
高分子鎖のグラフトは、リビングラジカル重合の高分子鎖グラフトである請求項1ないし5のいずれかのグラフト表面固体。

【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかのグラフト表面固体の製造方法であって、固体表面に対して重合開始基をラングミュアー・ブロジェット法による単分子累積で固定化し、次いでグラフト重合により高分子鎖をグラフトすることを特徴とするグラフト表面固体の製造方法。

【請求項8】
請求項7の方法であって、遊離の重合開始剤を存在させてグラフト重合するグラフト表面固体の製造方法。

【請求項9】
請求項7または8の方法であって、リビングラジカル重合を行うグラフト表面固体の製造方法。

【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかの方法において、単分子累積で固定化した後に、光照射により、所定のパターンで区分された領域での重合開始基の不活化を行い、次いでグラフト重合するグラフト表面固体の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、グラフト表面固体とその製造方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術と発明の課題】従来より、固体表面へのグラフト重合は、重合するモノマーの種類を変えることにより多様な表面特性を付与することができることから、これまでにも広く採用されている表面改質法の一つである。また、この表面グラフトにおいては、固体表面にあらかじめ重合開始基を導入しておくことも考えられてきている。

【0003】
しかしながら、これまでの技術においては、均一な表面修飾を可能として、表面グラフト密度をコントロールすることや、グラフト鎖の一次構造(分子量、分子量分布、モノマー配列様式)等をコントロールすることは難しく、さらには、グラフト表面を所定のパターン化された領域について構成することも難しいという問題があった。つまり、高度に制御されたグラフト表面固体を形成することが従来の技術では困難であって、技術的発展のための手がかりが依然として得られていないのが実情であった。

【0004】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の限界を超えて、高度に制御されたものとすることのできるグラフト表面固体を提供するとともに、そのための方法をも提供することを課題としている。

【0005】
【課題を解決するための手段】この出願は、上記の課題を解決するために、第1の発明として、固体表面に単分子累積された重合開始基を介して高分子鎖がグラフトされていることを特徴とするグラフト表面固体を提供する。そして、この出願は、第1の発明に関連して、第2の発明として、単分子累積は1層または2層以上であるグラフト表面固体を、第3の発明として、重合開始基は1種または2種以上であるグラフト表面固体を、第4の発明として、単分子累積された重合開始基を介しての高分子鎖のグラフトは、固体表面の広がり範囲においてあらかじめ区分されたパターンで不活化された重合開始基を有しているグラフト表面固体を、第5の発明として、高分子鎖のグラフトは、ホモ重合、ランダム共重合もしくはブロック共重合の高分子鎖グラフトであるグラフト表面固体を、第6の発明として、高分子鎖のグラフトは、リビングラジカル重合の高分子鎖グラフトであるグラフト表面固体をも提供する。

【0006】
また、この出願は、第7の発明として、前記の第1ないし第6の発明のグラフト表面固体の製造方法であって、固体表面に対して重合開始基をラングミュアー・ブロジェット法による単分子累積で固定化し、次いでグラフト重合により高分子鎖をグラフトすることを特徴とするグラフト表面固体の製造方法を提供する。さらに、第7の発明に関連して、この出願は、第8の発明として、遊離の重合開始剤を存在させてグラフト重合するグラフト表面固体の製造方法を、第9の発明として、リビングラジカル重合を行うグラフト表面固体の製造方法を、第10の発明として、単分子累積で固定化した後に、光照射により、所定のパターンで区分された領域での重合開始剤の不活化を行い、次いでグラフト重合するグラフト表面固体の製造方法をも提供する。

【0007】
【発明の実施の形態】この出願の発明は、以上のとおりの特徴を持つものであるが、以下に、さらに詳しく発明の実施の形態について説明する。まず、この発明のグラフト表面固体においては、固体表面に物理的もしくは化学的に結合して単分子累積された重合開始基が存在し、この固定化された重合開始基を介して高分子鎖がグラフトされていることを要件としている。

【0008】
この場合の固体表面については特にその種類に限定はなく、重合開始基、そして高分子鎖の種類、さらにはグラフト修飾された固体表面の目的と用途とによって各種のものであってよく、たとえば酸化物や窒化物等の無機物や、Si、Ge、Al、Fe等の元素単体や金属、合金、有機物質の各種のものであってよい。これらの固体は、その特性において、導体、半導体、絶縁体、磁性体等の各種のものでよい。いずれの場合にも、その表面には、1層または2層以上の重合開始基の単分子累積ができるものから選択される。

【0009】
固体表面への単分子累積は、この発明においてはラングミュアー・ブロジェット(LB)法により行われることになる。このため、単分子累積を可能とするためには、重合開始基は、たとえば疎水基と親水基とを持つ構造の重合開始剤化合物を用いて固体表面に導入されることになる。一般的には、たとえば次の構造;
1 -A-B-R2
(R1 は、加水分解してHO-(水酸基)等となる親水性基を示し、R2 は、重合開始活性基を示し、AおよびBは、各々、有機基を示す)を持つものとして重合開始剤化合物を考慮することができる。

【0010】
親水性基を形成し、この親水性基によって固体表面に固定化される代表的なものとしては、シランカップリング剤の構成としてよく知られているアルコキシシリル基がある。なお、単分子累積のためのラングミュアー・ブロジェット(LB)法についても、従来より知られている手段の適用として考慮される。

【0011】
このラングミュアー・ブロジェット(LB)法による単分子累積によって、固体表面には均一に重合開始基が配置されることになり、固体表面の所要領域においてグラフト修飾の高度制御が可能とされる。そして、固体表面においては、単分子累積された重合開始基に対しては、エネルギー線、たとえば光を所定のパターンで照射することで光分解させて不活化することもでき、微細パターン化された領域でのグラフト修飾も可能となる。つまり単分子膜状態での露光とグラフト重合による増幅操作として、高分解能で、高感度の新しいリソグラフィー技術としての展開が可能となる。

【0012】
固体表面の重合開始基への高分子鎖のグラフトは、ラジカル重合として行うこと、さらには、この発明においてはリビングラジカル重合として行うことが適当である。リビングラジカル重合によって、分子量の規制に加え、分子量分布の狭い多様な共重合体(ランダム、ブロック、組成傾斜型など)をもグラフトできることになる。また、リビングラジカル重合では、末端に官能基も導入しやすいことから、機能性の高いグラフト表面固体を得ることができる。

【0013】
なお、この発明においては、重合開始剤を反応系に遊離の状態で存在させることが有効でもある。もちろん、リビング重合に限られずに、ラジカル重合等の手段によるグラフトが可能であるが、高度に制御されたグラフト表面を得るためにはリビングラジカル重合が有効である。このための手段については、高分子鎖の種類と、重合開始基の種類等に応じて、たとえば実施例に例示したように、適宜に選択されることになる。

【0014】
そこで、以下に、実施例を示し、さらに詳しくこの発明のグラフト表面固体とその製造方法について例示説明する。

【0015】
【実施例】(実施例1)図1に例示したように、2-(4-クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン(CETS)を、クロロホルム溶媒を用いて水面(pH5~6)上に展開した。その後、30分間保って、クロロホルム溶媒を蒸発させ、メトキシシリル基を加水分解させた。次いで、表面圧10mN/mにおいて垂直引き上げ法によりシリコンウエハ上に1層累積した。累積後、110℃で10分間熱処理により基板上に固定した。(実施例2)実施例1により得られた単分子固定化シリコンウエハを用いて、メチルメタクリレート(MMA)のリビングラジカル重合を行った。

【0016】
グラフト重合は、真空脱気下、CuBrと4,4′-ジ-n-ヘプチル-2,2′-ビピリジン(dHbipy)を含むジフェニルエーテル(DPE)に4-トルエンスルフォニルクロライド(TsCl)およびMMAを加え(〔CuBr〕=0.010M,〔dHbipy〕=0.020M,〔TsCl〕=0.0024M,〔MMA〕=4.7M)、これに上記基板を浸漬し90℃で所定時間行った。溶液中に生成したポリメチルメタクリレート(PMMA)の分子量および分子量分布はGPC法により、また、基板上にグラフトされたPMMA層の膜厚(d)はクロロホルムで十分に洗浄した後エリプソメトリー法により決定した。表面構造は、原子間力顕微鏡(セイコー電子SFA300)を用いて観察した。

【0017】
水温20℃において表面圧-占有面積曲線を測定した結果、CETSは安定な水面単分子膜を形成することが判明した。この水面単分子膜は、表面圧10mN/mにおいてシリコン基板上への良好な累積が可能であった(転写率≒1)。累積後、基板表面は疎水性を示した。TsClを含む溶液中でグラフト重合を行った結果、グラフト層の膜圧は重合時間とともに増大することが判明した(図2)。現時点では、グラフト鎖の分子量を直接測定することは困難であるが、溶液中に生成するPMMAホモポリマーの分子量がその指標となると考えられる。ホモポリマーの数平均分子量Mnも重合時間とともに増大し、10時間後には約10万に達した。また、分子量分布指数(Mw/Mn)は、1.3~1.7と比較的狭いものであった。図3に、得られたグラフト層の膜厚と溶液中に生成したホモポリマーのMnの関係を示す。膜厚はホモポリマーのMnに比例することがわかる。グラフト鎖の分子量がホモポリマーの分子量に等しいと仮定すると、グラフト密度は直線の傾きより約0.5/nm3 と見積られる。

【0018】
リビング重合されたグラフト表面が形成された。高いグラフト密度が得られていることがわかる。

【0019】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この発明によって、固体表面の所要領域において均一に、グラフト鎖の一次構造(分子量、分子量分布、モノマー配列様式など)と、表面グラフト密度が高度に制御されたグラフト表面固体が提供される。また、リビング重合の適用により、鎖長の揃った高分子鎖を高密度でグラフトすることが可能となるだけでなく、ラジカル重合ゆえの簡便性に加え、様々なモノマーの単独重合のみならず、ランダム、ブロック、組成傾斜型ブロック共重合により表面特性を任意にかつ精密に設計することが可能となり、グラフト密度および表面モルフォロジー制御と相まって、様々な分野への応用展開が期待される。例えば、超高感度センサーや高機能性分離膜などとしての応用が考えられる。また、単分子膜として固定化された開始剤を光分解した後グラフト重合を行うことにより、グラフト表面のパターニングが可能である。この場合、単分子鎖状態での露光とグラフト重合による増幅操作により高感度かつ高分解能の新しいリソグラフィー技術としての応用も期待される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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