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明細書 :プリオン病感染因子のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3421744号 (P3421744)
公開番号 特開2002-228665 (P2002-228665A)
登録日 平成15年4月25日(2003.4.25)
発行日 平成15年6月30日(2003.6.30)
公開日 平成14年8月14日(2002.8.14)
発明の名称または考案の名称 プリオン病感染因子のスクリーニング方法
国際特許分類 G01N 33/68      
A01K 67/027     
C07K 14/47      
C12N 15/09      
C12Q  1/02      
G01N 33/50      
G01N 33/569     
C12N  5/10      
C12R  1:91      
FI G01N 33/68
A01K 67/027
C07K 14/47
C12Q 1/02
G01N 33/50
G01N 33/569
C12R 1:91
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 26
出願番号 特願2001-024279 (P2001-024279)
出願日 平成13年1月31日(2001.1.31)
審査請求日 平成13年2月1日(2001.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012394
【氏名又は名称】東北大学長
発明者または考案者 【氏名】北本 哲之
【氏名】三好 一郎
【氏名】毛利 資郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
審査官 【審査官】宮澤 浩
参考文献・文献 特表2000-517193(JP,A)
北本哲之,マウス・プリオンのFDCにおける初期沈着,厚生省特定疾患 遅発性ウイルス感染調査研究班 平成8年度研究報告書,1997年 3月
中村健司,脳機能の異常の発現の解析モデル系の開発に関する研究,脳機能の外来因子による異常発現機構解明のための技術開発に関する研究(第II期: 平成7~9年度)成果,1999年 3月,221-228
糸原重美,アストロサイト変異マウスの作成と脳機能の解析,筋ジストロフィーモデル及び神経・筋疾患のモデル動物の開発とその病態解明への応用に関する研究 平成9~ ,日本,2000年,13-20
調査した分野 G01N 33/68
A01K 67/027
C07K 14/47
C12N 15/09 ZNA
C12Q 1/02
G01N 33/50
G01N 33/569
C12N 5/10
C12N 5/10
C12R 1:91
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒト化プリオンタンパク質遺伝子を発現するノックイン非ヒト動物の濾胞樹状細胞(FDC)における異常プリオンタンパク質の沈着を指標とすることを特徴とする、サンプル中のヒトのプリオン病感染因子のスクリーニング方法。

【請求項2】
サンプルを該非ヒト動物に腹腔内、脳内、血管内、または経口投与することを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。

【請求項3】
FDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着を、組織学的検出法、電気泳動法、及び/または結合アッセイによって検出することを特徴とする、請求項1または2に記載のスクリーニング方法。

【請求項4】
FDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着を、サンプル投与後14日~700日で検出することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【請求項5】
ヒト化プリオンタンパク質が、非ヒト動物プリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部をヒトプリオンタンパク質のエクソン3の一部と置換したものである、請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【請求項6】
ヒト化プリオンタンパク質が、ヒトプリオンタンパク質におけるヒト特異的アミノ酸残基のうちC末端側の6残基が上記スクリーニングに使用する非ヒト動物プリオンタンパク質の対応するアミノ酸残基と置換したものである、請求項1から5のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【請求項7】
ヒト化プリオンタンパク質が、配列番号6または7に示すアミノ酸配列を含むものである、請求項1から6のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。

【請求項8】
ヒト化プリオンタンパク質遺伝子を発現するノックイン非ヒト動物にヒトのプリオン病感染因子を投与すると共に、該感染因子の投与前、投与後、または感染因子の投与と同時に該動物に被験物質を投与し、異常プリオンタンパク質のFDCにおける沈着、またはFDCから脳への移行を阻害するか否かを判定することを含む、ヒトのプリオン病の予防及び/または治療のための薬剤のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サンプル中のヒトまたはヒト以外のプリオン病感染因子のスクリーニング方法、新規組み換えプリオンタンパク質、該タンパク質を発現するトランスジェニック動物及びノックイン動物に関する。

【0002】
【従来の技術】クロイツヘルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jacob病、以下CJDと略す)は、神経難病の一つであり、初老期に痴呆をきたす疾患である。発病すると、患者は約3-5ヶ月後にはいわゆる寝たきりの植物状態となりやがて死に至る。CJDに対する有効な治療法はなく、対症療法のみ行われているのが現状である。

【0003】
CJDは、単なる痴呆をきたす神経変性疾患という側面だけでなく、ヒトからヒトへ、または動物から動物へ感染することが知られている。ヒトの脳を食べることによって感染したと考えられているkuru病、成長ホルモン製剤によって感染したCJD、最近問題となっている硬膜移植後のCJD等がヒトからヒトへの感染の例である。また、イギリスで問題となっている新変異型CJD(new variant CJD, nvCJD)は牛海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy、BSEと略す。一般的には狂牛病と呼ばれている)のウシからヒトへの感染と考えられている。

【0004】
1982年、CJDの感染因子はタンパク質性のものであるという仮説から、プリオンという感染因子が命名された。1985年には感染因子プリオンを構成するプリオンタンパク質の遺伝子がクローニングされた。この結果、プリオンタンパク質は正常な動物の脳でも発現しており、発病した患者においては、正常型プリオンタンパク質とは明確に区別可能な異常型プリオンタンパク質が沈着していることが明らかになった。現在、ヒトにおけるプリオンの異常に起因するいわゆるプリオン病として、上記kuru病、CJDの他、Gerstmann-Straussler症候群(GSSと略す)、致死性家族性不眠症(Fatal familial insomnia;FFIと略す)が知られている。

【0005】
ヒトの場合、プリオンタンパク質は253個のアミノ酸から構成されており(配列番号2)、N末端の22アミノ酸からなるシグナル配列、C末端の23アミノ酸が除去された後、糖脂質GPI(Glycosyl-phosphatidyl-inositol)を介して細胞膜表面上に結合しているタンパク質である(配列番号3)。

【0006】
一方、1989年にプリオンタンパク質遺伝子の変異が発見され、家族性であるGSSや家族性のCJDがプリオンタンパク質のアミノ酸1個の変異のみで発病することが見出され、プリオンタンパク質がCJDにおいて重要な役割を持っていることが明らかとなった。

【0007】
また、上記nvCJDは、若年(10代から30代)で発病し、他のCJDで知られている中枢神経系における異常型プリオンタンパク質の沈着だけでなく、他のCJDでは認められなかったリンパ装置の濾胞樹状細胞(Follicular Dendritic Cell:FDC)への沈着も認められることが報告された(Hill A.F.ら、Lancet 1997, 349:99-100)。nvCJDは、キャリアー患者の存在がどの程度であるかが不明であり、イギリスにおいては血液製剤をイギリスの自国の血液で供給することを禁止する程の深刻な問題となっている。

【0008】
その理由の一つとして、同一種におけるプリオンの伝播(感染)は容易であり、感染率が高く、また潜伏期間も短いのに対し、一つの種から別の種への移行には長期の潜伏期間が必要であり、感染率も非常に低いという事実が挙げられる。この種間障壁のために、動物モデル等を用いてCJD等のヒトプリオン病の感染因子の存在を検出することは非常に困難なものであった。

【0009】
例えば、上記nvCJDについて、ヒト型トランスジェニックマウスへの感染実験が試みられている(Hill, A.F.ら、Nature 1997 Oct 2;389(6650):448-50)が、発症までに長い潜伏期間(228日以上)を要し、成功率も高いものではなかった(56匹中25匹のみ成功)。最近、ウシ型のトランスジェニックマウスを用い、約250日の潜伏期間で感染したことが報告されている(Scott M.R.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96:15137-42)。

【0010】
また、試料中のプリオンの検出方法として、トランスジェニック動物を用いた系が報告されている(特表平11-510496号)が、マウスを用いた例では50日前後でのスクレイピーの発症が報告されているが、ヒトのプリオン病に関しては発症までに200日近くを要している。

【0011】
一方、本発明者等は、オートクレーブ法という新しい免疫染色法を用いてCJD患者及びCJD感染マウスの中枢神経のシナプスに異常プリオンタンパク質が沈着することを証明した(Kitamoto, T.ら、Am. J. Pathol. 140:1285-1294 (1992);Muramoto, T.ら、Am. J. Pathol. 140:1411-1420 (1992))。また、中枢神経系以外の細胞、FDCでも異常プリオンタンパク質が沈着することも発見した(Kitamoto, T.ら、J. Virol. 65:6292-6295 (1991))。FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着は、マウスの発病よりずっと以前の段階から検出でき、発病前診断が可能である(Muramoto, T.ら、Am. J. Pathol. 140:1411-1420 (1992); Muramoto,T.ら、Am. J. Pathol. 143:1470-1479 (1993))。

【0012】
通常、感染因子(マウスプリオン)のマウスへの頭蓋内投与では、マウスは120-140日で発病するが、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着を指標とすると、投与30日後には感染因子を投与されたマウスの全てで検出が可能であった。

【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、血液製剤等の医薬品のプリオンによる感染の有無を迅速に決定するために、動物モデル等によるCJD等のヒトプリオン病感染因子の早期検出が必要とされている。

【0014】
また、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着はマウスの系でのみ証明されており、従来ヒトのCJDでは検出できなかった。また、野生型マウスにおいては、ヒト及びマウス間の種差が存在するために、ヒトCJDからの初代の感染実験ではFDCへの異常プリオンタンパク質の沈着が認められないことが知られている(Muramoto, T.ら、J. Virol. 67:6808-6810 (1993))。従って、ヒトのプリオンタンパク質の異常を直接検出する方法が必要とされていた。

【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、ヒト及びマウスのプリオンタンパク質由来の新規組み換えプリオンタンパク質を作製し、これを導入したトランスジェニック動物及びノックイン動物を作製した。その結果、これまでにない短期間でサンプル中のヒトプリオン病感染因子を検出できる、非常に有効なスクリーニング方法を開発することに成功した。

【0016】
すなわち、本発明は、以下の(1)~(26)を提供する。(1) 非ヒト動物の濾胞樹状細胞(FDC)における異常プリオンタンパク質の沈着を指標とすることを特徴とする、サンプル中のヒトまたはヒト以外のプリオン病感染因子のスクリーニング方法。
(2) 該非ヒト動物がヒト化プリオンタンパク質遺伝子を発現するトランスジェニック動物であることを特徴とする、上記(1)に記載のスクリーニング方法。

【0017】
(3) 該非ヒト動物がヒト化プリオンタンパク質遺伝子を発現するノックイン動物であることを特徴とする、上記(1)に記載のスクリーニング方法。
(4) サンプルを該非ヒト動物に腹腔内、脳内、血管内、または経口投与することを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれかに記載のスクリーニング方法。
(5) FDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着を、組織学的検出法、電気泳動法、及び/または結合アッセイによって検出することを特徴とする、上記(1)から(4)のいずれかに記載のスクリーニング方法。

【0018】
(6) FDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着を、サンプル投与後14日~700日で検出することを特徴とする、上記(1)から(5)のいずれかに記載のスクリーニング方法。
(7) ヒト化プリオンタンパク質が、非ヒト動物プリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部をヒトプリオンタンパク質のエクソン3の一部と置換したものである、上記(1)から(6)のいずれかに記載のスクリーニング方法。

【0019】
(8) ヒト化プリオンタンパク質が、ヒトプリオンタンパク質におけるヒト特異的アミノ酸残基のうちC末端側の6残基が上記スクリーニングに使用する非ヒト動物プリオンタンパク質の対応するアミノ酸残基と置換したものである、上記(1)から(6)のいずれかに記載のスクリーニング方法。
(9) ヒト化プリオンタンパク質が、配列番号6または7に示すアミノ酸配列を含むものである、上記(1)から(6)のいずれかに記載のスクリーニング方法。
(10) 非ヒト動物プリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部をヒトプリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部と置換した組み換え遺伝子によってコードされることを特徴とする、組み換えヒト化プリオンタンパク質。

【0020】
(11) ヒトプリオンタンパク質におけるヒト特異的アミノ酸残基のうちC末端側の6残基が非ヒト動物プリオンタンパク質の対応するアミノ酸と置換したものである、組み換えヒト化プリオンタンパク質。
(12) 配列番号6または7に示すアミノ酸配列を含む、組み換えヒト化プリオンタンパク質。
(13) 上記(10)から(12)のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子またはその断片。

【0021】
(14) 下記の(a)~(c)のヌクレオチド配列を含む遺伝子またはその断片。
(a)配列番号4に示すヌクレオチド配列、(b)配列番号4に示すヌクレオチド配列と縮重関係にあるヌクレオチド配列、(c)(a)または(b)の配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチド配列であって、上記(10)に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列。

【0022】
(15) 上記(13)または(14)に記載の遺伝子またはその断片を含有するベクター。
(16) 上記(13)または(14)に記載の遺伝子またはその断片が導入されたトランスジェニック動物。
(17) 上記(13)または(14)に記載の遺伝子またはその断片が導入されたノックイン動物。
(18) FDCにおいてヒト化プリオンタンパク質を発現することを特徴とするトランスジェニック動物。
(19) FDCにおいてヒト化プリオンタンパク質を発現することを特徴とするノックイン動物。

【0023】
(20) 脳及び/又はFDCにおいて上記(10)から(12)のいずれかに記載のタンパク質を発現してなるトランスジェニック動物。
(21) 脳及び/又はFDCにおいて上記(10)から(12)のいずれかに記載のタンパク質を発現してなるノックイン動物。
(22) 上記(10)から(12)のいずれかに記載のタンパク質を発現するトランスジェニック動物の作出方法。
(23) 上記(10)から(12)のいずれかに記載のタンパク質を発現するノックイン動物の作出方法。

【0024】
(24) 以下の(a)~(f)の工程:
(a)非ヒトプリオンタンパク質遺伝子またはその断片を含むベクターを構築し、(b)上記非ヒトプリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部をヒトプリオンタンパク質のエクソン3の一部と置換し、(c)3'非翻訳領域にloxpで囲まれた抗生物質耐性遺伝子を挿入し、(d)得られた改変ベクターを該非ヒトのES細胞に導入し、(e)相同組み換えの認められたクローンからキメラ動物を作成し、(f)F1動物の受精卵にCre酵素発現プラスミドを導入して抗生物質耐性遺伝子を削除する、ことを含む、上記(23)に記載のノックイン動物の作出方法。

【0025】
(25) 上記(18)若しくは(20)に記載のトランスジェニック動物、または上記(19)若しくは(21)に記載のノックイン動物を使用することを特徴とする、ヒトまたはヒト以外のプリオン病の予防及び/または治療のための薬剤のスクリーニング方法。
(26) 上記(18)若しくは(20)に記載のトランスジェニック動物、または上記(19)若しくは(21)に記載のノックイン動物を使用することを特徴とする、血液製剤等ヒトまたはヒト以外の動物の臓器に由来するあらゆる医薬品、食品、化粧品等の安全性試験を行うための方法。

【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明について更に詳細に説明する。本明細書において、「非ヒト動物」とは、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ等の哺乳動物、鳥類及び魚類をいう。本発明において、非ヒト動物は特に限定されるものではないが、飼育及び操作上の点から特に好ましくはマウスである。

【0027】
本明細書において、「異常プリオンタンパク質」とは、正常型プリオンタンパク質の立体構造が変化し、界面活性剤で不溶性となり、タンパク分解酵素で部分的に消化されなくなったプリオンタンパク質をいう。ヒトならびに動物のプリオン病では、正常プリオンタンパク質の他に必ずこの異常プリオンタンパク質が存在し、その存在の証明は、タンパク分解酵素処理後のウエスタンブロット法や、タンパク質抽出後の電子顕微鏡を用いた異常プリオンタンパク質から構成されるアミロイド繊維の検出、そして本発明者等が開発したオートクレーブ法を利用した免疫染色法(Shin, R. W.ら、Lab. Invest. 64:693-702 (1991); Kitamoto, T.ら、J. Virol. 65:6292-6295 (1991); Kitamoto, T.ら、Am. J. Pathol. 140:1285-1294 (1992))による検出などによって確かめられる。

【0028】
また、本明細書において、「感染因子」とは、ヒトまたは本発明のトランスジェニック動物またはノックイン動物に投与した場合にプリオン病を発症させる能力を有する因子をいい、具体的には、ヒト由来またはヒト以外の動物由来の異常プリオンタンパク質もしくはその断片、またはこれらを含有するものをいう。感染因子を含有するサンプルとしては、例えばヒトまたはヒト以外の動物由来の血液製剤等の医薬品、食品、化粧品等が挙げられる。

【0029】
更に、本明細書において、「ヒト化プリオンタンパク質」とは、発現させる宿主となる非ヒト動物が本来発現するプリオンタンパク質の一部がヒトプリオンタンパク質の配列と置き換わっているものをいい、例えば、非ヒト動物プリオンタンパク質遺伝子のコーディング領域の一部をヒトプリオンタンパク質遺伝子の対応領域と置換した組み換え遺伝子によってコードされる組み換えヒト化プリオンタンパク質、ヒトプリオンタンパク質におけるヒト特異的アミノ酸残基のうちの一部の残基が非ヒト動物プリオンタンパク質の対応するアミノ酸残基と置換した組み換えヒト化プリオンタンパク質等が挙げられる。

【0030】
本発明において好適に用いられるヒト化プリオンタンパク質として、特に非ヒト動物プリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部をヒトプリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部と置換した組み換え遺伝子によってコードされる組み換えヒト化プリオンタンパク質が挙げられる。この組み換えヒト化プリオンタンパク質は、マウス等の非ヒト動物のプリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部を組み換えによってヒトプリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部と置換することにより得られる遺伝子を、例えばベクターに組み込んで宿主に導入し、発現させることによって得ることができる。ここで、「エクソン3の一部」とは、エクソン3のプリオンタンパク質翻訳領域に存在するSmaI部位からBstEII部位までの領域を必須に含む配列のことをいう。尚、プリオンタンパク質遺伝子において、タンパク翻訳領域はエクソン3のみに存在する。

【0031】
このような遺伝子組み換え等の、本明細書に記載の遺伝子工学的手法は、当分野において通常用いられるものであり、当業者であれば、本明細書の記載に基づいて適宜行うことができる。

【0032】
本発明に係るヒト化プリオンタンパク質は、具体的には、例えば以下の(a)~(f)の工程:
(a)非ヒトプリオンタンパク質遺伝子またはその断片を含むベクターを構築し、(b)上記非ヒトプリオンタンパク質遺伝子のエクソン3の一部をヒトプリオンタンパク質のエクソン3の一部と置換し、(c)3'非翻訳領域にloxpで囲まれた抗生物質耐性遺伝子を挿入し、(d)得られた改変ベクターを該非ヒトのES細胞に導入し、(e)相同組み換えの認められたクローンからキメラ動物を作成し、(f)F1動物の受精卵にCre酵素発現プラスミドを導入して抗生物質耐性遺伝子を削除する、ことによって得られるノックイン動物により、上記ヒト化タンパク質が発現する。

【0033】
また、ヒト化プリオンタンパク質は、ヒトプリオンタンパク質において、ヒト特異的であることが知られているアミノ酸残基のうち、例えばC末端側の6残基が非ヒト動物プリオンタンパク質の対応するアミノ酸残基と置換したものとして、部位特異的突然変異誘発、または化学的合成等の当業者に公知の手法により得ることができる。

【0034】
ヒトプリオンタンパク質遺伝子の塩基配列は配列番号1に示す塩基配列として、そのアミノ酸配列は、配列番号2に示す全アミノ酸配列として知られているが、N末端の22アミノ酸からなるシグナル配列、C末端の23アミノ酸が除去された配列番号3のアミノ酸配列にプロセシングされて成熟タンパク質となる。この配列番号3において、33、34、50、58、75、87、90、116、121、123、133、144、146、193、197、198、205、206、及び208番目の残基がヒト特異的であるとされている(Kretzschmar, H.A.ら、DNA 1986, 5:315-24)。本発明者等は、これらヒト特異的アミノ酸の非ヒト動物の対応アミノ酸との置換について種々検討した結果、本発明に係るスクリーニング方法の使用において、特にC末端側の6残基が非ヒト動物プリオンタンパク質の対応するアミノ酸残基と置換したものが好適であることを見出した。この配列の一例を配列番号6または7に示す。配列番号6は、コドン129がメチオニンであり、配列番号7は、コドン129がバリンである。この多型は正常なヒトプリオンタンパク質でも見られるものであり、ヒトの各種プリオン病で見られる異常プリオンタンパク質においても存在する。

【0035】
本発明はまた、本発明に係る上記ヒト化プリオンタンパク質をコードする遺伝子またはその断片、及び該遺伝子またはその断片を含有するベクターを提供する。

【0036】
本発明に係るヒト化プリオンタンパク質をコードする遺伝子は、上記配列番号6または7に示すアミノ酸配列を含む組み換えヒト化プリオンタンパク質をコードするものであるが、他の態様として、例えば配列番号4に示すヌクレオチド配列を含む遺伝子、及び配列番号4に示すヌクレオチド配列と縮重関係にあるヌクレオチド配列を含む遺伝子、及びこれらの配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含む遺伝子を挙げることができる。ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成される条件をいう。例えば、相補性が高いヌクレオチド配列、すなわち90%以上、好ましくは95%以上の相補性を有するヌクレオチド配列同士はハイブリダイズし、それより相補性が低いヌクレオチド配列同士はハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が15~300mM、好ましくは15~75mMであり、温度が50~60℃、好ましくは55~60℃での条件をいう。遺伝子としては、DNA及びRNAのいずれでも良く、また合成によって得られるものであっても良い。また、「断片」とは、プリオンタンパク質遺伝子の一部であって、好ましくは配列番号2におけるコドン85からコドン230までをコードするヌクレオチド配列を含むが、この配列の欠損型であっても良く、最短300ヌクレオチド程度の長さのものをいう。

【0037】
該遺伝子またはその断片を含有するベクターとしては、該遺伝子が導入される宿主動物細胞中で発現し得るものであればいずれでも良く、当分野において使用されるものであれば特に限定されるものではないが、例えばアクチンプロモーターを利用したどの細胞でも発現が認められるベクター等が挙げられる。また、該遺伝子の発現を調節し得るプロモーター、エンハンサー、その他の調節遺伝子等を適宜組み込むことができる。本発明において好適に使用できるプロモーターとしては、例えばFDCにおける発現を促進するようなプロモーター、例えばCD21(Cr2)遺伝子のプロモーター等が挙げられ、文献として例えばZabel, M.D.ら、J. Immunol. 2000 Oct. 15;165(8):4437-45を参照すれば良い。

【0038】
一方、従来、プリオンタンパク質遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの作製は既に報告されている(Telling G.C.ら、Cell 1995, Oct. 6:83(1) 79-90)。一つは、図1Cに示すように、完全なヒト型のプリオンタンパク質の遺伝子を導入したものであり、CJD発病までの潜伏期間は約250日であった。もう一つは、図1Aに示すように、KpnIサイトからBstEIIサイトまでがヒトプリオンタンパク質由来の配列であり、N末端及びC末端がマウスプリオンタンパク質由来の配列となっているタンパク質の遺伝子を導入し、潜伏期間が約200日となったものである。これに対して本発明のトランスジェニックマウスは、図1Bに示すように、N末端からBstEIIサイトまでがヒトプリオンタンパク質由来の配列であり、C末端がマウスプリオンタンパク質由来の配列となっているタンパク質の遺伝子を導入したものである。

【0039】
本発明者等は、図1Bに模式的に示すタンパク質をコードする遺伝子(配列番号6または7)を導入したトランスジェニックマウスを作製し、ホモの場合で発病までの潜伏期間が平均147日のものを得ることができた。従って、本発明は、配列番号6または7に示す組み換えヒト化プリオンタンパク質を発現するトランスジェニック動物を提供する。本発明において、トランスジェニック動物は、ホモであってもヘテロであっても良いが、好ましくはホモ型である。

【0040】
しかしながら、トランスジェニック動物は、遺伝子がどの染色体上のどの位置に導入されているか不明であり、また、上記のような短い潜伏期間を示すものを得るためには、プリオンタンパク質遺伝子のノックアウト動物と交配しなければならない。本発明者等は、以前にマウス遺伝子をヒト型に置き換える、ES細胞を使った遺伝子置換法を確立している(Kitamoto, T.ら、Biochem. Biophys. Res.Commun. 222:742-747 (1996))。この方法を改良し、天然のマウス遺伝子の一部を上記配列番号1に示す配列を有するヒト遺伝子と置換したノックインマウスを作製した。このノックインマウスは、潜伏期間が平均151日であった。

【0041】
すなわち、本発明は、配列番号6、7あるいは10に示す組み換えヒト化プリオンタンパク質を発現するノックイン動物を提供する。本発明において、ノックイン動物は、ホモであってもヘテロであっても良いが、好ましくはホモ型である。組み換えヒト化プリオンタンパク質の発現は全身で見られるが、特に脳及び/又は脾臓において検出することができる。

【0042】
ES細胞を用いた遺伝子置換法の利点は、上記のようにトランスジェニック動物で問題となった、マウス内因性プリオンタンパク質を排除するためにノックアウト動物と交配しなくても良いという点である。また、遺伝子発現の分布・発現量も正常の動物と同様であり、全く自然な発現が得られるという利点も有する。

【0043】
ヒト化プリオンタンパク質を導入したモデル動物では、ヒトまたはヒト以外の動物由来の感染因子を投与すると異常プリオンタンパク質の沈着がFDCで検出できることが予想される。従って、ヒト型のトランスジェニック動物は、FDCでの異常プリオンタンパク質の沈着を指標とした、感染因子の迅速なスクリーニング方法に使用することができる。

【0044】
上記予想に基づき、本発明者等が得られたトランスジェニックマウス及びノックインマウスの発病後にFDCを調べたところ、トランスジェニックマウスでは異常プリオンタンパク質はほとんど検出されなかったが、ノックインマウスでは脾臓、リンパ節、腸管のリンパ装置(パイエル氏板)のFDCにヒト型の異常プリオンタンパク質の沈着を認めた(図2A)。

【0045】
従来、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着が、感染実験の際に投与した材料に含まれている異常プリオンタンパク質が集められているのか、またはFDCで正常プリオンタンパク質から異常プリオンタンパク質への変換が生じているのかを決定することはできなかった。本発明に係る配列番号6または7に示す組み換えプリオンタンパク質は、上記のようにC末端がマウス型であるため、本発明者等は次に、ヒト型プリオンタンパク質のC末端に対する抗体を作製した。この抗体でFDCを調べたところ、FDCを染めることはできなかった(図2B)。このことから、FDCに沈着した異常プリオンタンパク質は、感染因子中に含まれていたヒト型の異常プリオンタンパク質が単に集められているのではないことが示された。

【0046】
本発明者等は更に、免疫染色で確認した脾臓への異常プリオンタンパク質の沈着を、ウエスタンブロット法においても検討し、ノックインマウスの脾臓において異常プリオンタンパク質の存在を確認した(図3)。更に、直接感染実験において、脾臓において感染性が存在することも証明された(表2、接種実験3)。

【0047】
本発明者等が作製したノックインマウスは、発病までに平均151日の潜伏期間を有していたが、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着が検出できるまでの最短期間を検討した。その結果、本発明のノックインマウスを使用したアッセイ系においては、14日という非常に短期間で検出が可能であることが明らかになった(表6)。

【0048】
一方、完全なヒトプリオンタンパク質(配列番号10、8アミノ酸の欠損)を発現するKi-HuMでは、全例発病したものの非常に長い潜伏期間643日を要した。腹腔内接種75日後の脾臓のFDCにおける免疫組織染色も80%(5頭中4頭)の検出率にとどまったが、Ki-ChMと同様にFDCへの異常プリオンタンパク質の沈着を確認した(表7)。すなわち、FDCにプリオンタンパク質が有効に発現するノックイン法を使えば、脳でプリオンタンパク質の異常化の起こりにくい完全ヒト型の動物でも、FDCではある程度有効に異常化が見とめられることが明らかになった。これらのことから、FDCにプリオンタンパク質が有効に発現する本発明者等の請求する方法によるノックイン動物を用いれば、特定の領域を置換したプリオンタンパク質遺伝子のみならず、ウシ等のヒト以外の動物のプリオンタンパク質を発現するノックイン動物において、FDCにおけるウシ等のヒト以外の動物の異常プリオンタンパク質の沈着も検出可能である。

【0049】
本発明のノックイン動物は、上記のように従来にないプリオン高感受性動物であることが明らかとなった。従って本発明はまた、本発明のノックイン動物を使用して、そのFDCへの異常プリオンタンパク質の沈着を指標とし、サンプル中のヒトまたはヒト以外の動物のプリオン病発症の有無を検出するバイオアッセイを提供する。このアッセイは、サンプル中のプリオン病感染因子のスクリーニング方法として利用することができる。

【0050】
サンプルとしては、例えば血液、血液製剤等、ヒトまたはヒト以外の動物の臓器に由来するあらゆる医薬品、食品、化粧品等が挙げられる。サンプルを非ヒト動物、好ましくはヒト化プリオンタンパク質を発現するトランスジェニック動物、特に好ましくは本発明のノックイン動物に感染させる。サンプルの投与は、腹腔内、脳内、若しくは血管内投与、または経口投与のいずれでも良いが、腹腔内投与の場合には、後に記載するように、相対的に多量のサンプルを投与することができ、好ましい。具体的には、血液・臓器等、またはそれに由来する製剤を含む溶液をノックイン動物の腹腔内へ、例えば2ml程度投与し、感染させる。

【0051】
感染後、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着を検出することによって、サンプルによるプリオン病発症の有無を決定することができる。検出方法としては、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着を検出し得るものであればいずれでも良いが、例えば脾臓、リンパ節、腸管のリンパ装置であるパイエル氏板のFDCへの異常プリオンタンパク質の沈着を、電子顕微鏡等によって観察する組織学的検出法、電気泳動法、及び/または異常プリオンタンパク質に対する抗体を放射性または非放射性標識し、結合アッセイを行う方法、例えばin situハイブリダイゼーション、ウエスタンブロット法、ELIZA法等が挙げられる。検出は、感染後経時的に行っても良いが、予め感染因子存在時のFDCへの異常プリオンタンパク質の沈着までの期間を対照サンプルによって決定し、サンプル感染からその期間、例えば75日経過後にFDCへの異常プリオンタンパク質の沈着の有無を検出する方法であっても良い。検出時期は特に限定するものではなく、投与から14日~700日の間であればいずれでも良い。FDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着を指標とすることで、従来と比較して非常に短期間で感染因子の存在を決定することができる。

【0052】
ヒトのプリオン病、とりわけCJDにおいては、マウスモデルのようにFDCに異常プリオンタンパク質の見られる症例はこれまで全く報告されていなかった。このことは、CJDがほとんど孤発例によるもので、外からの感染によらないという事実と一致する。しかし、1996年にイギリスで起こったnvCJDは牛海綿状脳症由来の感染因子が関係していると考えられ、感染性プリオン病に位置付けられている。従って、感染因子の検出は非常に重要となっている。

【0053】
本発明はまた、感染因子を腹腔内、脳内、血管内、または経口投与することによるスクリーニング方法を提供する。従来、感染実験は、主として脳内投与により行われていた。感染因子を含むサンプルを脳内に投与する場合には、投与量が制限されるという制約がある。マウスの脳内には最大限20μlしか投与できないが、腹腔内であれば2mlのサンプルでも投与可能であり、しかも複数回の投与も可能である。

【0054】
感染因子の濃度が低いと考えられている血液を含む一般臓器のバイオアッセイでは、この100倍に及ぶ量的な差は大きくその検出感度に影響する。例えばCJD感染マウスの場合、脳内投与による感染実験では、脳ではLD50が10-8/gであり、血液は10-3/g以下である。これは、脳内投与として20μlを使用した結果であるが、腹腔内投与では100倍量のサンプルを投与することが可能となり、これによって10-3/gの臓器(血液)の感染実験を10-5/gに相当する高い感染性臓器(脾臓等)と同じレベルにすることができる。従って、腹腔内投与は、サンプル中の感染因子のスクリーニング方法において、今後非常に期待される投与方法である。

【0055】
これまで、ヒトのトランスジェニックマウスモデルでは、感染因子の腹腔内投与での発病は報告されていない。本発明者等のトランスジェニックマウスのデータから、FDCに異常プリオンタンパク質が沈着しないと、腹腔内投与等の末梢からの発病は困難であることが示唆された。また、頭蓋内投与では発病するが、腹腔内投与では発病しないSCIDマウス(T細胞及びB細胞が欠損)では、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着は認められない。このことは、FDCへの異常プリオンタンパク質の沈着が生じないと脳へ異常プリオンタンパク質が伝播されないことを示す。

【0056】
本発明のノックインマウスは、感染因子投与によって初めてヒト型異常プリオンタンパク質が沈着したものであり、これを用いて腹腔内投与を行った。投与後平均283日において、11匹全ての発病が確認された。すなわち、本発明において、末梢からのヒトプリオン感染が初めて成功したのである(表5)。

【0057】
更に、本発明は、本発明のトランスジェニック動物、または本発明のノックイン動物を使用することを特徴とする、ヒトまたはヒト以外のプリオン病の予防及び/または治療のための薬剤のスクリーニング方法を提供する。

【0058】
上記のように、本発明のトランスジェニック動物またはノックイン動物を用いて、短期間かつ高感度でFDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着を検出することができる。この手法を用い、異常プリオンタンパク質のFDCへの沈着、またはFDCから脳への移行をブロックし得る薬剤を、感染因子投与の前後、あるいは感染因子と同時に被検動物に投与することによって、スクリーニングすることができ、それによって現在非常に大きな問題となっており、有効な薬剤が報告されていないヒトまたはヒト以外のプリオン病の予防及び/または治療のための薬剤を開発することができる。

【0059】
【実施例】[実施例1] ノックインベクターの作製
組み換えヒトプリオンタンパク質を調製するために、遺伝子置換ベクターとして、マウスのプリオンタンパク質遺伝子(配列番号8、配列番号9はアミノ酸配列)のエクソン3の翻訳領域の40番目のアミノ酸であるグリシン(118番目のヌクレオチド)から187番目のアミノ酸であるスレオニン(561番目のヌクレオチド)までをヒトのプリオンタンパク質遺伝子と置換したエクソン3を中心とした約10Kbpのコンストラクトを選択した。ノックインベクターは、20Kbpに及ぶ長いイントロンをもつことを特徴とするマウスプリオンタンパク質遺伝子のイントロン2のBamHI部位からエクソン3のSmaI部位までの3.5Kbpを利用し、エクソン3のSmaI部位からBstEII部位までをヒトプリオンタンパク質遺伝子に置換し、エクソン3の3'側非翻訳領域であるApaI部位にloxpで囲まれたPGK-neo遺伝子を挿入した(図4)。ApaIからEcoRVまでの4Kbpに及ぶ3’領域はマウスの遺伝子を用いた。

【0060】
ネガティブ選択として、ジフテリア毒素であるDTA遺伝子を3'側に挿入し、NotIでプラスミドを線状化した後、エレクトロポレーションでES細胞に導入した。ES細胞は、G418選択(ネオマイシン選択)の後、120クローンを選び、サザンブロットで解析した。解析した120クローン中4クローンで相同組み換えを確認した。これは、以前本発明者等がloxP-neo-gpt-loxPを用いて行った実験で、陽性率が288クローン中1クローンであったのに比較して、効率が良いものであった。

【0061】
得られたノックインベクターで更に相同組み換えの効率を検討したところ、陽性率は1クローン/60クローン、6クローン/180クローン、5クローン/175クローン、2クローン/98クローンと、効率良く陽性クローンが得られることが確認された。

【0062】
[実施例2] ノックインマウスの作製
マウスへの遺伝子導入は、エレクトロポレーション法でES細胞に導入し、G418耐性のクローンをサザンブロット法によって解析した。相同組み換えの認められた陽性クローン(ES細胞)を桑実胚に導入してキメラマウスを作製し、キメラマウスの交配によってF1マウスを作製した(germ-line化)。陽性F1マウスの交配によって得られた受精卵にCre酵素を発現するプラスミドを導入し、不要になったneo遺伝子を削除し、ヒト型への置換を終了した。

【0063】
得られたヘテロ接合体のヒト型ノックインマウス(Ki-ChM)同士を交配してホモ接合体マウスを作製した。得られたノックインマウスは、配列番号6に示す組み換えプリオンタンパク質を発現した(Ki-ChM)。同様にして、完全なヒトプリオンタンパク質(配列番号10、通常5回ある8アミノ酸の繰り返し配列が4回となっている)を発現するノックインマウスも対照として作製した(Ki-Hu)。

【0064】
[実施例3] トランスジェニックマウスの作製
マウスのプリオンタンパク質遺伝子を、2種類のマウス、129SVマウス及びI/Lnマウスからクローニングした。129SVマウスのイントロン2は20Kbp以上と長いものであるので、イントロン2が短いI/Lnマウスの遺伝子も利用した。129SV由来の5’側の5Kbp、I/Lnマウス由来のエクソン1及び2を含む12KbpのBamHI断片、及び129SV由来のエクソン3領域7Kbpを連結した(図5)。エクソン3は実施例2のノックインマウスと同様にSmaIからBstEII部位までをヒトのプリオンタンパク質に置き換えている。このようにして作製したトランスジェニックベクターをプラスミドから切り出し、BDF1マウスの受精卵に直接導入した。導入に成功したF0マウスを交配し、F1マウスを作製した。このF1マウスで発現量を解析後、ノックアウトマウスと2回交配し、マウスのプリオンタンパク質を発現しない、組み換えプリオンタンパク質(配列番号6または7)のみを発現するマウスを作製した(Tg-ChM及びTg-ChV)。

【0065】
[実施例4] ノックインマウス及びトランスジェニックマウスへの脳内投与による感染の確立
ヒト孤発性CJD患者の凍結脳から、リン酸緩衝液(PBS)を用いて10%の濃度になるようにガラスホモゲナイザーで脳乳剤を作成し、麻酔下で実施例2で得られたノックインマウス(Ki-ChM, Ki-HuM)と実施例3で得られたトランスジェニックマウス3系統(Tg-ChM#30, Tg-ChV#12, Tg-ChV#21)の右脳半球に27ゲージ針のシリンジを用いて20マイクロリットルずつ脳内接種を行った。接種後の観察記録で自発運動の減少、歩行失調、異常歩行、挙尾反応などの神経症状が現れ、進行し、削痩、衰弱がみられた個体は安楽死の後、剖検した。神経症状が現れて安楽死までの期間は平均21日程度を要した。潜伏期間は接種日を0日とし安楽死までの期間とした。剖検時に緩衝ホルマリン固定以外に、主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。

【0066】
また、すべてのマウスは、プリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、HE染色ならびに本発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、病変と異常プリオンタンパク質沈着による組織診断を行い、プリオン病の有無を確認した。

【0067】
その結果、ノックインマウスのうち、コドン129がメチオニンホモ型であるヒト孤発例CJD(129M/M)-H3を接種されたマウスでは、組み換えヒトプリオンタンパク質を発現するKi-ChMマウスの潜伏期間は151± 6.7日であった。同じ材料接種のトランスジェニックマウス3系統(Tg-ChM#30, Tg-ChV#12, Tg-ChV#21)はそれぞれ、156±14.2日、175±15.3日、192± 4.0日を示した(表1)。全ヒトプリオンタンパク質を発現するKi-HuMマウスの潜伏期間が643±42.9日であるのに対して、著しく潜伏期間が短縮された。一方、導入遺伝子をもたないWild(野生型)マウスにおいては、発病したのは14例中わずか5例36%の発病率であり、その潜伏期間も759±69.8日間であった。

【0068】
また、コドン129がバリンとメチオニンのヘテロ型のヒト孤発例CJD(129V/M) -Suを接種されたノックインマウスでは潜伏期間141± 5.3日であり、同じくヘテロ型の孤発例CJD(129V/M)-Phを接種されたトランスジェニックマウス3系統(Tg-ChM#30, Tg-ChV#12, Tg-ChV#21)ではそれぞれ、154±20.8日、171± 9.2日、188± 1.4日の潜伏期間であった(表1)。

【0069】
【表1】
JP0003421744B2_000002t.gif【0070】これらのことから、実施例2及び3で得られた本発明のノックインマウス及びトランスジェニックマウスはヒトプリオンに対して非常に高い感受性を要し、これまでの野生型マウスでは長い期間を要し、不確定であったヒトプリオンの感染性の証明が短期間で確実に実施できることが明らかとなった。特に、ノックインマウスではヒトプリオンタンパク質遺伝子の多型である129番目のコドンがメチオニンあるいはバリンヘテロ型どちらのヒトプリオンに対しても150日前後と、今までに見られない短い潜伏期間で感染が成立した。これは、ヒトのプリオンタンパク質遺伝子多型に対応できることを示す結果である。同時にこれらの感染潜伏期間はマウス順化株プリオンのマウスからマウスの感染潜伏期間に匹敵し、プリオン感染に存在する‘種の壁’を越えたと考えられる。さらに、全ヒト型のノックインマウスKi-HuMの長い潜伏期間に対して、ノックインマウスKi-ChMが著しい潜伏期間の短縮を示したことは、導入されたベクターとそれにより発現した組み換えヒトプリオンタンパク質が、このマウスの感受性を支配していることが明らかである。

【0071】
[実施例5] FDCにおける異常プリオンタンパク質の組織学的検出
実施例2及び3で得られたノックインマウス及びトランスジェニックマウスの発病後にFDCを調べたところ、トランスジェニックマウスでは異常プリオンタンパク質は検出されなかったが、ノックインマウスでは脾臓、リンパ節、腸管のリンパ装置(パイエル氏板)のFDCにヒト型の異常プリオンタンパク質の沈着を認めた(図2A)。

【0072】
[実施例6] ウエスタンブロット法による異常プリオンタンパク質の検出
本発明者等は更に、免疫染色で確認した脾臓への異常プリオンタンパク質の沈着を、ウエスタンブロット法においても検討し、ノックインマウスの脾臓において異常プリオンタンパク質の存在を確認した。実施例2で得られたノックインマウスを用い、感染させた脾臓、非感染(対照)の脾臓、及び感染させた脳のウエスタンブロットを分析した。

【0073】
プロテイナーゼK処理後にウエスタンブロットにかけた場合、異常プリオンタンパク質からは3本のバンドが形成されることが知られている。図3に示すように、感染させた脾臓及び脳由来のサンプルでは、下から糖鎖のつかないもの、1ヶ所糖鎖がついたもの、2ヶ所糖鎖がついたものの3本のバンドが認められ、異常プリオンタンパク質が存在することが明らかであったが、非感染サンプルでは、相当するバンドは認められなかった。また、脳と比較して、脾臓での異常プリオンタンパク質の量は少ないことも示された。

【0074】
[実施例7] ヒト型プリオンタンパク質C末端に対する抗体によるFDCの免疫染色実験
ヒト型プリオンタンパク質のC末端に対するモノクローナル抗体を作製した。この抗体は、ヒトプリオンタンパク質(配列番号2)のコドン215、219、220を認識する抗体であり、マウスプリオンタンパク質のそれに相当するコドンのアミノ酸配列とは反応しない。実施例2で得られたノックインマウス(Ki-ChM)はこのコドン215、219、220がヒト型ではなく、マウス型に置換しているため、このモノクローナル抗体では反応せず、完全ヒト型プリオンタンパク質とのみ反応する。このノックインマウスを、完全ヒト型の異常プリオンタンパク質をもつ孤発例のCJDの脳乳剤で感染させた。FDCが単に接種した完全ヒト型の異常プリオンタンパク質を集積したのであれば、この抗体で染色されるはずであるが、実験ではノックインマウスの異常プリオンタンパク質を全く染めなかった。つまり、単に接種した完全ヒト型のプリオンタンパク質が集まったのではなく、ノックインマウス自身のC末がマウス型となったヒト型プリオンタンパク質が異常になったものがFDCで沈着していたのである。

【0075】
[実施例8] トランスジェニックマウスとノックインマウスの比較
実施例5でトランスジェニックマウスではFDCへの異常プリオンタンパク質の沈着が検出できず、ノックインマウスで検出できた理由を検討するために、脾臓での組み換えプリオンタンパク質の発現をウエスタンブロットで測定した。

【0076】
ノックインマウス(Ki-ChM)の脾臓、及び脳においてノックインマウスと比較して組み換えプリオンタンパク質を2倍量発現しているトランスジェニックマウス(Tg-ChV#12)の脾臓での正常型プリオンタンパク質の発現量をウエスタンブロットで検討した。結果を図6に示す。図6において、a-dはノックインマウス、eはトランスジェニックマウスである。d及びeは同じ組織重量の脾臓の分画を電気泳動したもので、dに対してcはその50%、bは25%、aは12.5%の組織重量の分画を電気泳動している。eの免疫反応の強度はbにほぼ相当すると考えられ、トランスジェニックマウスではノックインマウスの約25%程度しか発現していないことが明らかとなった。

【0077】
この結果から、トランスジェニックマウスにおける発現分布は野生型マウスの発現分布と異なることが明らかとなり、トランスジェニックマウスでは、脾臓(FDC)での組み換えプリオンタンパク質の発現が見られないのではなく、発現量が極めて少ないことから、トランスジェニックマウスでの脾臓のFDC陰性結果につながったものと考えられる。従って、適当な検出方法を用いることにより、本発明のトランスジェニック動物を用いてもFDCでの異常プリオンタンパク質の沈着を検出できることが示された。

【0078】
[実施例9] ヒトプリオン感染後発病マウスの感染性の確認
直接感染実験において、マウスの脳、脾臓に証明された異常プリオンタンパク質の感染性について証明した。孤発性CJD症例の10%脳乳剤を実施例2で得られたノックインマウス(Ki-ChM)に脳内接種し、発病したノックインマウス(Ki-ChM)の脳、脾臓をリン酸緩衝液(PBS)を用いて10%の濃度になるようにガラスホモゲナイザーで脳乳剤作成し、麻酔下でノックインマウス(Ki-ChM)の右脳半球に27ゲージ針のシリンジを用いて20マイクロリットルずつ脳内接種を行った。本明細書中に記載の実施例すべてのマウス接種実験で行われている定法通り、接種後の観察記録で自発運動の減少、歩行失調、異常歩行、挙尾反応などの神経症状が現れ、進行し、削痩、衰弱がみられた個体は安楽死の後、剖検、診断した。

【0079】
その結果、発病マウス脳乳剤を接種したマウスでは6頭中6頭(100%)が発病し、潜伏期間は123±10.0日であった。一方、発病マウス脾臓乳剤を接種したマウスでも、5頭中5頭(100%)が発病し、潜伏期間は156±7.9日でであった。この結果から明らかなごとく、ヒト脳乳剤を接種後発病したノックインマウス(Ki-ChM)の脳、脾臓(FDC)には、異常タンパク質の沈着のみならず、感染力もあることが証明された(表2)。

【0080】
【表2】
JP0003421744B2_000003t.gif【0081】[実施例10] FDCにおけるCJD患者の異常プリオン検出実験
CJD患者の凍結脳をリン酸緩衝液(PBS)を用いて10%の濃度になるようにガラスホモゲナイザーで脳乳剤作成し、ノックインマウス(Ki-ChM)腹腔内に26ゲージ針のシリンジを用いて50マイクロリットルずつ接種を行った。接種後75日に安楽死を施し、剖検した。剖検時に緩衝ホルマリン固定を行った。主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。また、すべてのマウスは、プリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、HE染色ならびに発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、FDCにおける異常プリオンタンパク質沈着を検査した。

【0082】
その結果、コドン129がメチオニンホモ型のヒト孤発例CJD(129M/M)-H3、バリンとメチオニンのヘテロ型ヒト孤発例CJD(129V/M)-Su、ヒト硬膜移植例CJD-TMD-Du/cのいずれの症例のヒトプリオン接種においても、全てのKi-ChMマウスでFDCにおける異常プリオンタンパク質が検出され、検出率100%であった(表3)。

【0083】
【表3】
JP0003421744B2_000004t.gif【0084】[実施例11] 硬膜移植例CJDの感染
硬膜移植後CJDを発症し確定診断された患者の凍結脳(CJD-TMD-Du/c)をリン酸緩衝液(PBS)を用いて10%の濃度になるようにガラスホモゲナイザーで脳乳剤作成し、ノックインマウス(Ki-ChM)の腹腔内に26ゲージ針のシリンジを用いて50マイクロリットルずつ接種を行った。接種後75日に安楽死を施し、剖検した。剖検時に緩衝ホルマリン固定を行った。主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。また、すべてのマウスは、プリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、HE染色ならびに発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、FDCにおける異常プリオンタンパク質沈着を検査した。その結果、5頭接種した全Ki-ChMマウスの脾臓FDCに異常プリオンタンパク質が検出された(表3)。

【0085】
[実施例12] 英国nvCJD患者由来の異常プリオン検出
英国で牛のBSE由来ではないかと推定されている変異型CJD(以下、nvCJDと略す)患者の凍結脳をリン酸緩衝液(PBS)を用いて10%の濃度になるようにガラスホモゲナイザーで脳乳剤を作成し、プリオン以外の感染性因子を除去するために摂氏60度30分間を保持した後、接種までの間、摂氏マイナス70度に凍結保存した。接種に際して、解凍し、ノックインマウス(Ki-ChM)腹腔内に26ゲージ針のシリンジを用いて50マイクロリットルずつ接種を行った。接種後75日に安楽死を施し、剖検した。剖検時に緩衝ホルマリン固定を行った。主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。また、すべてのマウスは、プリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、HE染色ならびに発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、FDCにおける異常プリオンタンパク質沈着を検査した。

【0086】
その結果、3例のnvCJD患者脳、nv-96/02、nv-96/07、nv-96/45について、それぞれ5頭中5頭、4頭中4頭、4頭中4頭と、100%の検出率で異常プリオンタンパク質が検出された。本発明のノックインマウス(Ki-ChM)のFDCを用いた新しいバイオアッセイ法は英国のnvCJD患者由来プリオンの診断にも有用であった(表4)。

【0087】
【表4】
JP0003421744B2_000005t.gif【0088】[実施例13] アッセイ系の検討1(脳内投与及び腹腔内投与)
ヒトCJD患者の凍結脳をリン酸緩衝液(PBS)を用いて10%の濃度になるようにガラスホモゲナイザーで脳乳剤を作成し、プリオン以外の感染性因子を除去するために摂氏60度30分間を保持した後、接種までの間、摂氏マイナス70度に凍結保存した。接種時に解凍し、麻酔下で実施例2で得られたノックインマウス(Ki-ChM)の右脳半球に27ゲージ針のシリンジを用いて20マイクロリットルずつ脳内接種を行った。接種後の観察記録で自発運動の減少、歩行失調、異常歩行、挙尾反応などの神経症状が現れ、進行し、削痩、衰弱がみられた個体は安楽死の後、剖検した。神経症状が現れて安楽死までの期間は平均21日程度を要した。潜伏期間は接種日を0日とし安楽死までの期間とした。剖検時に緩衝ホルマリン固定以外に、主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。また、すべてのマウスは、プリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、HE染色ならびに発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、病変と異常プリオンタンパク質沈着による組織診断を行い、プリオン病の有無を確認した。

【0089】
【表5】
JP0003421744B2_000006t.gif【0090】その結果、ノックインマウスのうち、コドン129がメチオニンホモ型であるヒト孤発例CJD(129M/M)-H3を接種されたマウスでは、潜伏期間は151± 6.7日であり、腹腔内接種では潜伏期間は延長したが、283± 9.2日で11頭全てが発病した。また、コドン129がバリンとメチオニンのヘテロ型のヒト孤発例CJD(129V/M) -Suを接種されたノックインマウスでは潜伏期間141± 5.3日であった。ヘテロ型でコドン232のメチオニンがアルギニンに変換した遺伝子変異をもつヒト脳乳剤では潜伏期間はやや延長し、177±4.9日を呈したが、全例発病した。硬膜移植後のCJDヒト10%脳乳剤TMD-Du/Cも167±24.7日の潜伏期間で発病した。

【0091】
これらのことから、本発明のノックインマウス、Ki-ChMは種々のタイプのヒトプリオンに対して高い感受性を有することが明らかになった。また、接種ルートも脳内のみならず、腹腔内接種でも感受性を有することから、様々の末梢からの感染に関してもヒトプリオンの感受性を有することが予測できる。

【0092】
[実施例14] アッセイ系の検討2-経時的観察
孤発例CJDヒト凍結脳をリン酸緩衝液(PBS)を用いて10%の濃度になるようにガラスホモゲナイザーで脳乳剤を作成し、プリオン以外の感染性因子を除去するために摂氏60度30分間を保持した後、接種までの間、摂氏マイナス70度に凍結保存した。接種時に解凍し、実施例2で得られたノックインマウス(Ki-ChM)の腹腔内に26ゲージ針のシリンジを用いて50マイクロリットルずつ接種を行った。接種後14日、31日、44日、60日、75日、150日に安楽死させた。剖検時に緩衝ホルマリン固定以外に、主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。また、すべてのマウスは、プリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、HE染色ならびに本発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、病変と異常プリオンタンパク質の検出を行った。

【0093】
その結果、免疫組織染色で接種後14日のノックインマウス(Ki-ChM)4頭中2頭(50%)のFDCに異常プリオンタンパク質の沈着が認められた。以降、31日から150日まで、全ての接種マウスのFDCに異常プリオンタンパク質が陽性であった。しかしながら、標的臓器である中枢神経系においては14日から150日に至るまで異常プリオンタンパク質の検出、その他の病理組織学的変化は認められなかった。

【0094】
本発明のノックインマウス(Ki-ChM)を用いたFDCによるバイオアッセイ法では14日という非常に短い期間で、異常プリオンタンパク質が検出でき、これは持続して検出できることが明らかである(表6)。

【0095】
【表6】
JP0003421744B2_000007t.gif【0096】[実施例15] アッセイ系の検討3-濃度の検討
実施例14により、孤発性CJDヒト10%脳乳剤を使い、最短14日で本発明のノックインマウス(Ki-ChM)のFDCで異常プリオンタンパク質の沈着が検出できることを明らかにしたが、次に、接種材料の希釈によりどのくらいの濃度まで検出できるかを検討した。

【0097】
上述の孤発性CJDヒト10%(10倍希釈)凍結脳乳剤を解凍し、同じPBSにて1%(100倍希釈)、0.1%(1,000倍希釈)、0.01%(10,000倍希釈)液を調整し、実施例2で得られたノックインマウス(Ki-ChM)の腹腔内に26ゲージ針のシリンジを用いて50マイクロリットルずつ接種を行った。接種後75日に安楽死させ、緩衝ホルマリン液に固定した。標本はプリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、本発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、異常プリオンタンパク質の検出を行った。

【0098】
その結果、0.01%(10,000倍希釈)でも80%以上の個体でFDCに異常プリオンタンパク質が検出された。このことから、本発明のノックインマウス(Ki-ChM)のFDCを用いることによって、10,000倍以上の希釈を行っても孤発性CJDヒト脳の感染性を検出することが可能であることが示された。

【0099】
[実施例16] ノックインマウスKi-ChMとKi-HuMの感受性の比較
実施例2で作製した2系統のノックインマウスKi-ChMとKi-HuMを用いて脳内接種と腹腔内接種による感受性の比較試験を行った。すなわち、孤発性CJD症例CJD(129M/M)-H3の10%脳乳剤を実施例2で得られたノックインマウスKi-ChMとKi-HuMの右脳半球に27ゲージ針のシリンジを用いて20マイクロリットルずつ脳内接種を行った。また、腹腔内には26ゲージのシリンジを用いて50マイクロリットルずつ接種した。

【0100】
脳内接種では、本明細書中に記載の実施例すべてのマウス接種実験で行われている定法通り、接種後の観察記録で自発運動の減少、歩行失調、異常歩行、挙尾反応などの神経症状が現れ、進行し、削痩、衰弱がみられた個体は安楽死の後、剖検、診断した。潜伏期間は接種日を0日とし安楽死までの期間とした。剖検時に緩衝ホルマリン固定以外に、主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。

【0101】
腹腔内接種では接種後75日に安楽死を施し、剖検した。剖検時に緩衝ホルマリン固定を行った。主要臓器の一部は摂氏マイナス70度に凍結保存した。また、すべてのマウスは、プリオン専用の病理標本作製室にてパラフィン包埋、薄切後、HE染色ならびに発明者の考案したオートクレーブ法による免疫組織染色により、FDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着を検査した。

【0102】
その結果、ヘテロ接合体のヒト型ノックインマウスKi-ChMは151±6.7日の潜伏期間で全例発症した。一方、完全なヒトプリオンタンパク質(配列番号10、通常5回ある8アミノ酸の繰り返し配列が4回となっている)を発現するノックインマウスKi-HuMでは、全例発症したものの非常に長い潜伏期間643±42.9日を要した。腹腔内接種75日後の脾臓のFDCにおける免疫組織染色ではKi-ChMは100%(5頭中5頭)に異常プリオンタンパク質を検出できたが、Ki-HuMでは80%(5頭中4頭)の検出率にとどまった(表7)。

【0103】
【表7】
JP0003421744B2_000008t.gif【0104】脳内接種の潜伏期間と75日後のFDCにおける異常プリオンタンパク質検出率をあわせて考えると、ノックインマウスではコンストラクトの如何に関わらずFDCにおける異常プリオンタンパク質沈着が必ず起こることが明らかとなった。つまり、FDCにプリオンタンパク質が有効に発現するノックイン法を使えば、脳でプリオンタンパク質の異常化の起こりにくい完全ヒト型の動物でも、FDCではある程度有効に異常化が見とめられることが明らかになったわけである。また同時に、潜伏期間の長い系統、すなわち脳での異常化が起こりにくい完全ヒト型の動物でのFDCの陽性率が100%とならないことは、FDCにおける異常プリオンタンパク質の沈着も、マウスのヒトプリオンに対する感受性を反映しており、完全ヒト型のプリオンタンパク質の異常化の起こりにくさの反映でもある。

【0105】
【発明の効果】上記の如く、本発明により、ヒトのプリオンタンパク質に対して従来になく非常に高い感受性を有する動物モデルを作製することができた。また、この動物モデルの使用により、ヒトに対するプリオン病の安全性試験において使用できる新規なスクリーニング方法を提供することができた。

【0106】
本発明によって得られたノックイン動物は、nvCJDの異常プリオンタンパク質のアッセイ系としても非常に優れたものである。特に、腹腔内投与においては、脳内投与と比較して感染因子の接種量を100倍に上げることができ、感染力が低いと考えられる血液でも大量に投与することによって、その感染力を調べることができる。従って本発明のノックイン動物は、ヒトまたはヒト以外の動物由来の血液または臓器から作られる製剤の最終的な安全性試験に必須のものとなることが期待される。

【0107】
nvCJDは、ウシ・プリオンタンパク質を経口接種することによってまず扁桃、及び消化器官のリンパ装置のFDCに異常プリオンタンパク質が沈着し、このFDCから脳へ異常プリオンタンパク質が運ばれると考えられている。本発明で得られたノックイン動物は、このnvCJDと同様に末梢の経路からFDCに異常プリオンタンパク質の沈着を起こし、脳へ異常プリオンタンパク質が運ばれて発病することがヒトプリオン感染で証明できたものである。従ってこのモデルは、単に迅速なバイオアッセイの確立だけでなく、将来的にはFDCから脳への異常プリオンタンパク質の移行をブロックする薬剤の開発のスクリーニング系としても役立つものと考えられる。

【0108】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> President of Tohoku University
<120> Method of Screening for Infection Factor of Prion
Disease
<130> P00-0219
<160> 10
<170> PatentIn Ver. 2.0
<210> 1
<211> 762
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<220>
<221> CDS
<222> (1)..(762)
<400> 1
atg gcg aac ctt ggc tgc tgg atg ctg gtt ctc ttt gtg gcc aca tgg 48
Met Ala Asn Leu Gly Cys Trp Met Leu Val Leu Phe Val Ala Thr Trp
1 5 10 15
agt gac ctg ggc ctc tgc aag aag cgc ccg aag cct gga gga tgg aac 96
Ser Asp Leu Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn
20 25 30
act ggg ggc agc cga tac ccg ggg cag ggc agc cct gga ggc aac cgc 144
Thr Gly Gly Ser Arg Tyr Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg
35 40 45
tac cca cct cag ggc ggt ggt ggc tgg ggg cag cct cat ggt ggt ggc 192
Tyr Pro Pro Gln Gly Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
50 55 60
tgg ggg cag cct cat ggt ggt ggc tgg ggg cag ccc cat ggt ggt ggc 240
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
65 70 75 80
tgg gga cag cct cat ggt ggt ggc tgg ggt caa gga ggt ggc acc cac 288
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His
85 90 95
agt cag tgg aac aag ccg agt aag cca aaa acc aac atg aag cac atg 336
Ser Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys His Met
100 105 110
gct ggt gct gca gca gct ggg gca gtg gtg ggg ggc ctt ggc ggc tac 384
Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr
115 120 125
atg ctg gga agt gcc atg agc agg ccc atc ata cat ttc ggc agt gac 432
Met Leu Gly Ser Ala Met Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly Ser Asp
130 135 140
tat gag gac cgt tac tat cgt gaa aac atg cac cgt tac ccc aac caa 480
Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro Asn Gln
145 150 155 160
gtg tac tac agg ccc atg gat gag tac agc aac cag aac aac ttt gtg 528
Val Tyr Tyr Arg Pro Met Asp Glu Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val
165 170 175
cac gac tgc gtc aat atc aca atc aag cag cac acg gtc acc aca acc 576
His Asp Cys Val Asn Ile Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr
180 185 190
acc aag ggg gag aac ttc acc gag acc gac gtt aag atg atg gag cgc 624
Thr Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg
195 200 205
gtg gtt gag cag atg tgt atc acc cag tac gag agg gaa tct cag gcc 672
Val Val Glu Gln Met Cys Ile Thr Gln Tyr Glu Arg Glu Ser Gln Ala
210 215 220
tat tac cag aga gga tcg agc atg gtc ctc ttc tcc tct cca cct gtg 720
Tyr Tyr Gln Arg Gly Ser Ser Met Val Leu Phe Ser Ser Pro Pro Val
225 230 235 240
atc ctc ctg atc tct ttc ctc atc ttc ctg ata gtg gga tga 762
Ile Leu Leu Ile Ser Phe Leu Ile Phe Leu Ile Val Gly
245 250
<210> 2
<211> 253
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 2
Met Ala Asn Leu Gly Cys Trp Met Leu Val Leu Phe Val Ala Thr Trp
1 5 10 15
Ser Asp Leu Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn
20 25 30
Thr Gly Gly Ser Arg Tyr Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg
35 40 45
Tyr Pro Pro Gln Gly Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
50 55 60
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
65 70 75 80
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His
85 90 95
Ser Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys His Met
100 105 110
Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr
115 120 125
Met Leu Gly Ser Ala Met Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly Ser Asp
130 135 140
Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro Asn Gln
145 150 155 160
Val Tyr Tyr Arg Pro Met Asp Glu Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val
165 170 175
His Asp Cys Val Asn Ile Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr
180 185 190
Thr Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg
195 200 205
Val Val Glu Gln Met Cys Ile Thr Gln Tyr Glu Arg Glu Ser Gln Ala
210 215 220
Tyr Tyr Gln Arg Gly Ser Ser Met Val Leu Phe Ser Ser Pro Pro Val
225 230 235 240
Ile Leu Leu Ile Ser Phe Leu Ile Phe Leu Ile Val Gly
245 250
<210> 3
<211> 208
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 3
Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn Thr Gly Gly Ser Arg Tyr
1 5 10 15
Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg Tyr Pro Pro Gln Gly Gly
20 25 30
Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly
35 40 45
Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly
50 55 60
Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His Ser Gln Trp Asn Lys Pro
65 70 75 80
Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys His Met Ala Gly Ala Ala Ala Ala
85 90 95
Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Met Leu Gly Ser Ala Met
100 105 110
Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly Ser Asp Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr
115 120 125
Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro Asn Gln Val Tyr Tyr Arg Pro Met
130 135 140
Asp Glu Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val His Asp Cys Val Asn Ile
145 150 155 160
Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr Thr Lys Gly Glu Asn Phe
165 170 175
Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg Val Val Glu Gln Met Cys
180 185 190
Ile Thr Gln Tyr Glu Arg Glu Ser Gln Ala Tyr Tyr Gln Arg Gly Ser
195 200 205
<210> 4
<211> 768
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Chimera-type prion gene
<220>
<221> CDS
<222> (1)..(768)
<400> 4
atg gcg aac ctt ggc tac tgg ctg ctg gcc ctc ttt gtg act atg tgg 48
Met Ala Asn Leu Gly Tyr Trp Leu Leu Ala Leu Phe Val Thr Met Trp
1 5 10 15
act gat gtc ggc ctc tgc aaa aag cgg cca aag cct gga ggg tgg aac 96
Thr Asp Val Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn
20 25 30
acc ggt gga agc cgg tat ccc ggg cag ggc agc cct gga ggc aac cgc 144
Thr Gly Gly Ser Arg Tyr Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg
35 40 45
tac cca cct cag ggc ggt ggt ggc tgg ggg cag cct cat ggt ggt ggc 192
Tyr Pro Pro Gln Gly Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
50 55 60
tgg ggg cag cct cat ggt ggt ggc tgg ggg cag ccc cat ggt ggt ggc 240
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
65 70 75 80
tgg gga cag cct cat ggt ggt ggc tgg ggt caa gga ggt ggc acc cac 288
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His
85 90 95
agt cag tgg aac aag ccg agt aag cca aaa acc aac atg aag cac atg 336
Ser Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys His Met
100 105 110
gct ggt gct gca gca gct ggg gca gtg gtg ggg ggc ctt ggc ggc tac 384
Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr
115 120 125
rtg ctg gga agt gcc atg agc agg ccc atc ata cat ttc ggc agt gac 432
Xaa Leu Gly Ser Ala Met Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly Ser Asp
130 135 140
tat gag gac cgt tac tat cgt gaa aac atg cac cgt tac ccc aac caa 480
Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro Asn Gln
145 150 155 160
gtg tac tac agg ccc atg gat gag tac agc aac cag aac aac ttt gtg 528
Val Tyr Tyr Arg Pro Met Asp Glu Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val
165 170 175
cac gac tgc gtc aat atc aca atc aag cag cac acg gtc acc acc acc 576
His Asp Cys Val Asn Ile Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr
180 185 190
acc aag ggg gag aac ttc acc gag acc gat gtg aag atg atg gag cgc 624
Thr Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg
195 200 205
gtg gtg gag cag atg tgc gtc acc cag tac cag aag gag tcc cag gcc 672
Val Val Glu Gln Met Cys Val Thr Gln Tyr Gln Lys Glu Ser Gln Ala
210 215 220
tat tac gac ggg aga aga tcc agc agc acc gtg ctt ttc tcc tcc cct 720
Tyr Tyr Asp Gly Arg Arg Ser Ser Ser Thr Val Leu Phe Ser Ser Pro
225 230 235 240
cct gtc atc ctc ctc atc tcc ttc ctc atc ttc ctg atc gtg gga tga 768
Pro Val Ile Leu Leu Ile Ser Phe Leu Ile Phe Leu Ile Val Gly
245 250 255
<210> 5
<211> 255
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:Chimera-type prion protein
<220>
<221> VARIANT
<222> 129
<223> Xaa=Met or Val
<400> 5
Met Ala Asn Leu Gly Tyr Trp Leu Leu Ala Leu Phe Val Thr Met Trp
1 5 10 15
Thr Asp Val Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn
20 25 30
Thr Gly Gly Ser Arg Tyr Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg
35 40 45
Tyr Pro Pro Gln Gly Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
50 55 60
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly
65 70 75 80
Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His
85 90 95
Ser Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys His Met
100 105 110
Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr
115 120 125
Xaa Leu Gly Ser Ala Met Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly Ser Asp
130 135 140
Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro Asn Gln
145 150 155 160
Val Tyr Tyr Arg Pro Met Asp Glu Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val
165 170 175
His Asp Cys Val Asn Ile Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr
180 185 190
Thr Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg
195 200 205
Val Val Glu Gln Met Cys Val Thr Gln Tyr Gln Lys Glu Ser Gln Ala
210 215 220
Tyr Tyr Asp Gly Arg Arg Ser Ser Ser Thr Val Leu Phe Ser Ser Pro
225 230 235 240
Pro Val Ile Leu Leu Ile Ser Phe Leu Ile Phe Leu Ile Val Gly
245 250 255
<210> 6
<211> 209
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:ChM-type prion protein
<400> 6
Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn Thr Gly Gly Ser Arg Tyr
1 5 10 15
Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg Tyr Pro Pro Gln Gly Gly
20 25 30
Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly
35 40 45
Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly
50 55 60
Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His Ser Gln Trp Asn Lys Pro
65 70 75 80
Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys His Met Ala Gly Ala Ala Ala Ala
85 90 95
Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Met Leu Gly Ser Ala Met
100 105 110
Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly Ser Asp Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr
115 120 125
Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro Asn Gln Val Tyr Tyr Arg Pro Met
130 135 140
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145 150 155 160
Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr Thr Lys Gly Glu Asn Phe
165 170 175
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195 200 205
Ser
<210> 7
<211> 209
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence:ChV type prion protein
<400> 7
Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn Thr Gly Gly Ser Arg Tyr
1 5 10 15
Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg Tyr Pro Pro Gln Gly Gly
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Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly
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Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly
50 55 60
Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His Ser Gln Trp Asn Lys Pro
65 70 75 80
Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys His Met Ala Gly Ala Ala Ala Ala
85 90 95
Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Val Leu Gly Ser Ala Met
100 105 110
Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly Ser Asp Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr
115 120 125
Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro Asn Gln Val Tyr Tyr Arg Pro Met
130 135 140
Asp Glu Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val His Asp Cys Val Asn Ile
145 150 155 160
Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr Thr Lys Gly Glu Asn Phe
165 170 175
Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg Val Val Glu Gln Met Cys
180 185 190
Val Thr Gln Tyr Gln Lys Glu Ser Gln Ala Tyr Tyr Asp Gly Arg Arg
195 200 205
Ser
<210> 8
<211> 765
<212> DNA
<213> Mus musculus
<220>
<221> CDS
<222> (1)..(765)
<400> 8
atg gcg aac ctt ggc tac tgg ctg ctg gcc ctc ttt gtg act atg tgg 48
Met Ala Asn Leu Gly Tyr Trp Leu Leu Ala Leu Phe Val Thr Met Trp
1 5 10 15
act gat gtc ggc ctc tgc aaa aag cgg cca aag cct gga ggg tgg aac 96
Thr Asp Val Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn
20 25 30
acc ggt gga agc cgg tat ccc ggg cag gga agc cct gga ggc aac cgt 144
Thr Gly Gly Ser Arg Tyr Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg
35 40 45
tac cca cct cag ggt ggc acc tgg ggg cag ccc cac ggt ggt ggc tgg 192
Tyr Pro Pro Gln Gly Gly Thr Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp
50 55 60
gga caa ccc cat ggg ggc agc tgg gga caa cct cat ggt ggt agt tgg 240
Gly Gln Pro His Gly Gly Ser Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Ser Trp
65 70 75 80
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Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His Asn
85 90 95
cag tgg aac aag ccc agc aaa cca aaa acc aac ctc aag cat gtg gca 336
Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Leu Lys His Val Ala
100 105 110
ggg gct gcg gca gct ggg gca gta gtg ggg ggc ctt ggt ggc tac atg 384
Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Met
115 120 125
ctg ggg agc gcc gtg agc agg ccc atg atc cat ttt ggc aac gac tgg 432
Leu Gly Ser Ala Val Ser Arg Pro Met Ile His Phe Gly Asn Asp Trp
130 135 140
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Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met Tyr Arg Tyr Pro Asn Gln Val
145 150 155 160
tac tac agg cca gtg gat cag tac agc aac cag aac aac ttc gtg cac 528
Tyr Tyr Arg Pro Val Asp Gln Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val His
165 170 175
gac tgc gtc aat atc acc atc aag cag cac acg gtc acc acc acc acc 576
Asp Cys Val Asn Ile Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr Thr
180 185 190
aag ggg gag aac ttc acc gag acc gat gtg aag atg atg gag cgc gtg 624
Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg Val
195 200 205
gtg gag cag atg tgc gtc acc cag tac cag aag gag tcc cag gcc tat 672
Val Glu Gln Met Cys Val Thr Gln Tyr Gln Lys Glu Ser Gln Ala Tyr
210 215 220
tac gac ggg aga aga tcc agc agc acc gtg ctt ttc tcc tcc cct cct 720
Tyr Asp Gly Arg Arg Ser Ser Ser Thr Val Leu Phe Ser Ser Pro Pro
225 230 235 240
gtc atc ctc ctc atc tcc ttc ctc atc ttc ctg atc gtg gga tga 765
Val Ile Leu Leu Ile Ser Phe Leu Ile Phe Leu Ile Val Gly
245 250 255
<210> 9
<211> 254
<212> PRT
<213> Mus musculus
<400> 9
Met Ala Asn Leu Gly Tyr Trp Leu Leu Ala Leu Phe Val Thr Met Trp
1 5 10 15
Thr Asp Val Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn
20 25 30
Thr Gly Gly Ser Arg Tyr Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg
35 40 45
Tyr Pro Pro Gln Gly Gly Thr Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp
50 55 60
Gly Gln Pro His Gly Gly Ser Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Ser Trp
65 70 75 80
Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly Thr His Asn
85 90 95
Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Leu Lys His Val Ala
100 105 110
Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly Gly Tyr Met
115 120 125
Leu Gly Ser Ala Val Ser Arg Pro Met Ile His Phe Gly Asn Asp Trp
130 135 140
Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met Tyr Arg Tyr Pro Asn Gln Val
145 150 155 160
Tyr Tyr Arg Pro Val Asp Gln Tyr Ser Asn Gln Asn Asn Phe Val His
165 170 175
Asp Cys Val Asn Ile Thr Ile Lys Gln His Thr Val Thr Thr Thr Thr
180 185 190
Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met Glu Arg Val
195 200 205
Val Glu Gln Met Cys Val Thr Gln Tyr Gln Lys Glu Ser Gln Ala Tyr
210 215 220
Tyr Asp Gly Arg Arg Ser Ser Ser Thr Val Leu Phe Ser Ser Pro Pro
225 230 235 240
Val Ile Leu Leu Ile Ser Phe Leu Ile Phe Leu Ile Val Gly
245 250
<210> 10
<211> 200
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 10
Lys Lys Arg Pro Lys Pro Gly Gly Trp Asn Thr Gly Gly Ser Arg Tyr
1 5 10 15
Pro Gly Gln Gly Ser Pro Gly Gly Asn Arg Tyr Pro Pro Gln Gly Gly
20 25 30
Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly
35 40 45
Gly Gly Trp Gly Gln Pro His Gly Gly Gly Trp Gly Gln Gly Gly Gly
50 55 60
Thr His Ser Gln Trp Asn Lys Pro Ser Lys Pro Lys Thr Asn Met Lys
65 70 75 80
His Met Ala Gly Ala Ala Ala Ala Gly Ala Val Val Gly Gly Leu Gly
85 90 95
Gly Tyr Met Leu Gly Ser Ala Met Ser Arg Pro Ile Ile His Phe Gly
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Ser Asp Tyr Glu Asp Arg Tyr Tyr Arg Glu Asn Met His Arg Tyr Pro
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Asn Gln Val Tyr Tyr Arg Pro Met Asp Glu Tyr Ser Asn Gln Asn Asn
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Thr Thr Thr Lys Gly Glu Asn Phe Thr Glu Thr Asp Val Lys Met Met
165 170 175
Glu Arg Val Val Glu Gln Met Cys Ile Thr Gln Tyr Glu Arg Glu Ser
180 185 190
Gln Ala Tyr Tyr Gln Arg Gly Ser
195 200

【0109】
【配列表フリーテキスト】
配列番号4:キメラ型プリオン遺伝子
配列番号5:キメラ型プリオンタンパク質
配列番号6:ChM-型プリオンタンパク質
配列番号7:ChV-型プリオンタンパク質
図面
【図3】
0
【図1】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図2】
5