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明細書 :補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3240323号 (P3240323)
公開番号 特開2000-164419 (P2000-164419A)
登録日 平成13年10月19日(2001.10.19)
発行日 平成13年12月17日(2001.12.17)
公開日 平成12年6月16日(2000.6.16)
発明の名称または考案の名称 補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法
国際特許分類 H01F  6/00      
H01F  6/06      
H01F  7/06      
FI H01F 7/06 ZAAL
H01F 7/22
H01F 5/08
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願平10-339134 (P1998-339134)
出願日 平成10年11月30日(1998.11.30)
審判番号 不服 2000-001893(P2000-001893/J1)
審査請求日 平成10年11月30日(1998.11.30)
審判請求日 平成12年2月17日(2000.2.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012394
【氏名又は名称】東北大学長
発明者または考案者 【氏名】渡邉 和雄
【氏名】本河 光博
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
参考文献・文献 特開 平9-289112(JP,A)
特開 平10-27707(JP,A)
特開 平6-224037(JP,A)
調査した分野 H01F 6/06
H01F 7/22
H01F 7/06
特許請求の範囲 【請求項1】
化合物系超伝導体を覆う安定化材として、補強材と安定化材とを兼ねた、銅ニオブ、アルミナ分散銅、銅銀合金及び銅タンタル繊維のうちから選ばれる補強安定化材を用いてなる補強安定化超伝導線材を、あらかじめ熱処理により超伝導物質とした後、張力の付与下にコイル状に巻いて成形することを特徴とする補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法。

【請求項2】
コイル状に巻く際、補強安定化超伝導線材に対する付与張力が、50~100 MPa であることを特徴とする請求項1記載の超伝導磁石の製造方法。

【請求項3】
補強安定化超伝導線材が、外寸法 0.3~2mmの丸線又は角線である請求項1または2記載の超伝導磁石の製造方法。

【請求項4】
コイル状に巻く際、エポキシ樹脂を塗布して各線材を接着して成形することを特徴とする請求項1,2または3記載の超伝導磁石の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法に関する。この発明の超伝導磁石は、単体あるいは、これを利用した製品、例えば、リニアモーター用の超伝導磁石、発電機用の超伝導磁石、加速器用の超伝導磁石、粒子検出用の超伝導磁石、物性測定用の高磁場超伝導磁石といった強磁場を発生させることが求められる用途に用いて好適である。

【0002】
【従来の技術】現在、一般的な超伝導磁石は、ニオブチタン合金に代表される合金系超伝導線材を用いて作製された磁石、ニオブ3スズ化合物に代表される化合物系超伝導線材を用いて作製された磁石、又はそれらの両方を用いる磁石の3種類があり、それぞれの特徴を生かして適宜使い分けられている。

【0003】
合金系超伝導線材は、化合物系超伝導線材に比べて機械的特性が良好であり、降伏応力が250 から300 MPa までは超伝導特性を損なうことがない。また、曲げ歪に対しても2 %程度までは十分に耐えることができる。このため、合金系超伝導線材を巻線として磁石を作製するときには張力をかけながら、隙間なく巻くことが可能であるため作製が容易であり、これまで超伝導磁石の大部分はこの合金系線材を用いて作製されてきた。

【0004】
しかしながら、この合金系超伝導線材は、超伝導特性、なかでも臨界磁界や高磁場中での臨界電流が化合物系超伝導線材ほど良好ではないため、線材を用いて作製した超伝導磁石が発生させる磁場の強さは、化合物系超伝導線材を用いた磁石に比べて劣っている。例えば、合金系超伝導線材のなかで最も多用されているニオブチタン合金線材を用いた超伝導磁石は、4.2 Kの液体ヘリウム温度で8 ~9 T(1 Tは10000 ガウス)、1.8 Kの超流動ヘリウム温度においても11~12Tの磁場を発生させることが限界である。したがって、これ以上の強磁場を発生させることが求められる高分解能の核磁気共鳴(MRI)磁石や物性測定用の高磁場磁石などの用途においては、合金系超伝導線材を用いた超伝導磁石では要求特性を満足し得ない。

【0005】
一方、化合物系超伝導線材は、合金系超伝導線材に比べて臨界磁場が高く、例えば、代表的なニオブ3スズ線材を用いた磁石は、発生磁場限界が4.2 Kの液体ヘリウム温度で約18T、また、1.8 Tの超流動ヘリウム温度で約21Tであり、合金系超伝導線材の使用限界をはるかに上回る。そのため、上述したような12T以上の高磁場を発生させるための磁石に好適である。しかしながら、化合物系超伝導線材は、金属間化合物であるが故に機械的応力に対して脆弱であり、降伏応力で150 MPa が特性の限界で設計値的には100 MPa が利用限界、曲げ歪で0.2 %程度が設計限界である。したがって、化合物系超伝導線材から超伝導磁石を得るには、合金系超伝導線材のように線材に張力を付与しつつ巻線にする製造方法を用いるのは極めて困難であった。

【0006】
化合物系超伝導線材を巻線に用いた磁石を製造するには、通常、巻線加工に伴う歪が化合物系超伝導線材に導入されるのを回避するために、あらかじめ未反応状態の超伝導化合物原料をコイル状に巻き、この状態で熱処理を実施してニオブとスズとを反応させることにより、コイル形状のままニオブ3スズ化合物を形成させ(ワインド・アンド・リアクト法)、しかる後に線材の不要な動きを止めてコイル形状を固定するためにエポキシ樹脂を線材の間隙に真空下で含浸させていた。したがって、化合物系超伝導磁石の作製には、コイルを均一に熱処理するための設備・技術が必要であり、また、真空含浸などのための特殊な処理設備も必要であった。特に大口径のコイルを必要とされる用途に用いられる磁石を製造する場合には、大型の熱処理炉や大型の真空含浸設備が必要となっていた。

【0007】
なお、歪に弱いこれまでのニオブ3スズ線材に対して、あらかじめ熱処理した線材をコイル状に巻いて磁石を製造する超伝導磁石技術は存在していた。これは、ダブルパンケーキ巻線法と呼ばれるコイル作製技術である。しかしながら、この方法は、製造時に許容される歪が、使用する線材の特質に依存してやはり0.2%以下に制限されるために、内径の大きな超伝導磁石にならざるを得ず、また、磁石の形状にも制限があった。更に、製造の際には大きな張力をかけることができないことに変わりはなかった。

【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来、化合物系超伝導磁石は、ダブルパンケーキ巻線法を除いてワインド・アンド・リアクト法で製造され、かかる方法では、巻線状態でニオブ3スズ化合物を生成させるための特殊な熱処理装置を必要とし、また、熱処理後にも歪や応力が加わらないように、慎重な取り扱いが必要とされていた。また、線材を固着させるためのエポキシ樹脂の真空含浸装置も必要であった。

【0009】
したがって、物性測定用の強磁場大口径磁石、加速器用の超伝導磁石、リニアモーター用の超伝導磁石、発電機用の超伝導磁石、粒子検出用の超伝導磁石などのように、大口径で強磁場を発生させることが要求される磁石には、化合物系超伝導線材を用いて強磁場化を図ることが切望されているにもかかわらず、化合物系超伝導磁石は従来、磁石が大型化してしまうこと、また、磁石が発生する電磁力にコイルが耐え得るために線径の太い超伝導線材を用いざるを得ないのに、線径の太い線材ではコイルの巻き径をますます大きくしなければならないこと、更に、製造が困難であること等の問題から、適用されていないのが現状であった。

【0010】
また、加速器用等の大口径超伝導磁石は、設備が大型化するため、できるだけコンクト化することが望まれているところである。また、液体ヘリウムを使わない冷凍機を実現するための冷却超伝導磁石は、超伝導磁石の小型軽量化が必須条件である。したがって、超伝導磁石は、製造が容易であることのみならず、小型化、軽量化が要請されている。更に、磁石の用途によっては、磁石形状についてパンケーキ形状ばかりなく、複雑な形状に製造できることが求められる場合がある。また、磁石に使用する線材は、その磁石が発生する電磁力に耐えられるだけの強度が必要とされる。

【0011】
この発明は、このような化合物系超伝導線材を用いた超伝導磁石が抱える問題を有利に解決するもので、磁石素材として化合物系超伝導線材を用いた場合であっても、合金系超伝導線材を用いた場合と同様、簡便かつ取り扱い容易に磁石を製造することのでき、しかも磁石の小型化、軽量化は勿論のこと、複雑形状への適応も可能な、超伝導磁石の新規な製造方法を提案することを目的とする。

【0012】

【0013】
【課題を解決するための手段】発明者は、従来の銅を安定化材とした極細多芯ニオブ3スズ線材の銅を銅ニオブやアルミナ分散銅などの補強安定化で置き換えた高強度の補強安定化ニオブ3スズ線材の開発に成功した。この線材を巻線に用いて磁石を製造する際には、線材が巻線時の曲げ加工に耐える強度を持っているために、合金系超伝導磁石の製造方法と同様に、超伝導体が形成されている線材を、張力の付与下にコイル状に巻線加工することにより、磁石を製造することができる。

【0014】
この発明は、上記の知見に立脚するものである。すなわち、この発明は、化合物系超伝導体を覆う安定化材として、補強材と安定化材とを兼ねた、銅ニオブ、アルミナ分散銅、銅銀合金及び銅タンタル繊維のうちから選ばれる補強安定化材を用いてなる補強安定化超伝導線材を、あらかじめ熱処理により超伝導物質とした後、張力の付与下にコイル状に巻いて成形することを特徴とする補強材と安定化材とを兼ねた超伝導磁石の製造方法である。この発明において、コイル状に巻く際の付与張力は50~100 MPa 程度とすることが好ましい。

【0015】
また、この発明において、補強安定化超伝導線材としては、外寸法 0.3~2 mmの丸線又は角線とするのが有利である。また、コイル状に巻く際には、エポキシ樹脂を塗布して各線材を接着成形すること好ましい。

【0016】
【発明の実施の形態】この発明においては、超伝導磁石のコイルとして、化合物系超伝導体を覆う安定化材として、従来用いられていた銅安定化材の代わりに、補強材と安定化材とを兼ねた、銅ニオブ、アルミナ分散銅、銅銀合金及び銅タンタル繊維のうちから選ばれる補強安定化材を用いてなる補強安定化超伝導線材を用いる。かような補強安定化材を使用した超伝導線材は、高安定性を維持しつつ高強度をそなえていて、例えば、ニオブ3スズの生成熱処理条件である約 700℃で10日間ほどの熱処理が施されても、超伝導体がニオブ3スズである補強安定化超伝導線材は、0.3mmから2mmの細線のままで 250から300 MPa までの降伏応力を有し、0.5 %までの曲げ歪まで許容できる。これは、従来の化合物系超伝導線材が 150 MPaの降伏応力、0.2 %の歪が限界であるのに比較して格段に優れている。したがって、かかる0.3 mmから2mm直径の細い線径で高強度安定を有する補強安定化ニオブ3スズ線材を用いることにより、新しい超伝導磁石の作製が可能となる。

【0017】
すなわち、ニオブ3スズ線材を、合金系超伝導線材と同様に、あらかじめ熱処理した線材としてコイルに巻くことができる(リアクト・アンド・ワインド法)。これまでのような銅を安定化材とした線材では、この銅が焼鈍軟化されてしまうような熱処理条件である約700 ℃で10日間のニオブ3スズ生成反応を実施した後であっても、この発明で用いる補強安定化超伝導線材は、機械的に強く、降伏応力で250 から300 MPa という特性を有するため、巻線張力をかけながらコイルに巻くことができる。高張力巻線方式によって磁石を作製することが可能となり、このために、合金系線材と同様にソレノイド密巻きの手法がニオブ3スズ線材で可能となり、このまま超伝導磁石とすることが可能となる。

【0018】
しかも、エポキシ樹脂を巻線時に塗布し、各線材を接着固定することにより、コイルを成形することができる。このエポキシ樹脂の塗布は、従来技術におけるエポキシの真空含浸と同等の効果を有する。したがって、大型の化合物系超伝導磁石を製造する場合であっても、従来のように未反応の超伝導体原料をコイル上に巻線加工する必要はなく、特殊な真空熱処理炉やエポキシ真空含浸炉が不要となる。これは、特にコイルが大型になる場合には過大な設備の必要がなくなるので、この発明の磁石が有利である。

【0019】
なお、既に述べたように、歪に弱いこれまでのニオブ3スズ線材に対しても、リアクト・アンド・ワインド法によってもゆるいパンケーキ巻きコイルを作製する超伝導磁石技術は存在していた。これは、ダブルパンケーキ巻線法と呼ばれるコイル作製技術である。しかしながら、この方法は、使用する線材の特質により製造時に許容される歪が、やはり0.2 %以下に制限されるために、非常に薄いテープによるダブルパンケーキ巻きを行う必要があった。そのため、電磁力に弱いために補強方法に難点があり、線材に機械的な強さを持たせると、曲げ歪に制限されるために内径の大きな超伝導磁石になるという問題点があったのである。

【0020】
この点、この発明の磁石は、上記線材を用いることにより、0.3 mmから2 mm直径の丸線又は角線のままで機械的にも強いため、、0.5 %までの曲げ歪の制限でリアクト・アンド・ワインド法が適用できる。そして、線材はテープ状ではなく、丸線又は角線であるから、超伝導磁石の形状が自由に設計でき、パンケーキ巻きのようなコイル寸法や形状の規制がない。したがって、これまでニオブ3スズ系超伝導磁石では困難とされている複雑な形状の超伝導磁石、例えば加速器などのダイポールコイルなどにも適用できる。

【0021】
ニオブ3スズに高張力巻線技術が適用できると、電磁力に見合った巻線技術が、超伝導特性にも反映させることができる。ニオブ3スズは歪に敏感であるために700 ℃で熱処理されたものが 4.2Kで使用されるとき、1000℃の温度差による熱収縮を受け、4.2 Kでは伝導特性を劣化させている。この熱収縮応力を巻線張力による応力および電磁応力とバランスさせることが可能となり、超伝導特性を応力緩和によって向上させることができる。これまでは、ニオブ3スズに大きな巻線張力を加えることができなかったため、この手法は不可能であった。この発明によれば、ニオブ3スズ線材の超伝導特性も高張力で制御できるようになる。

【0022】
以下、この発明をより詳細に説明する。この発明の磁石に用いる補強安定化超伝導線材は、超伝導体を覆う安定化材として通常用いられている高純度銅を、他の補強安定化材に置換してなるものである。

【0023】
この超伝導体には、公知の化合物系超伝導体を使用することができ、ニオブ3スズを代表例として、これにチタン、タンタル、ハフニウム、ガリウムの1種又は2種以上を添加することもできる。また、一部実用になっているニオブ3アルミやバナジウム3ガリウムなどのA15 型化合物系超伝導体などを使用することができることはいうまでもない。

【0024】
また、補強安定化材としては、銅ニオブ合金、アルミナ分散銅、銅銀合金、銅タンタル繊維がある。これらの補強安定化材は、高純度銅に比べて強度が高いため、線材にしたときに高強度の線材が得られる。また、ニオブ3スズを生成するための熱処理である約 700℃で1日以上の熱処理を行うと、安定化材として従来用いられてきた銅は焼鈍されてしまう結果、機械的な耐力が 50MPa程度になってしまうが、この発明で用いる補強安定化材は、かかる熱処理を施しても 250 MPa以上の耐力を保持する。そして、補強安定化材を用いた線材では、0.5 %程度までの歪に対して許容できる。

【0025】
かかる銅ニオブ合金の好適な組成範囲はCu-10wt%NbないしCu-40wt%Nbである。アルミナ分散銅の場合には、分散させるアルミナの好適な比率はおよそ0.5~0.7 wt%である。

【0026】
この発明の磁石に用いる超伝導線材を製造するには、いわゆるブロンズ法を用いることができ、極細多心線で外寸法0.3 ~2 mmの線材を製造することができる。このブロンズ法は、ニオブ3スズを生成反応させる際に、銅が反応の触媒的な役割を果たすことが発見されたことに基づき、ニオブの周りに配置したスズを直接ニオブと反応させるのではなく、銅を介して反応させる方法である。かくして、CuとSnとが合金化され、CuSn、すなわちブロンズとなった方がNbと反応しやすくなり、多くのニオブ3スズが作製できる方法である。なお、注意しなければならないことは、安定化のための銅をスズで汚さないようにするため、スズの拡散を防止するためのバリアとしてのタンタル層を設けて、反応中の安定化銅を守っていることである。このようなブロンズ法を、そのまま転用できる。

【0027】
外寸法は0.3 ~2 mmの範囲が好適である。従来、大口径磁石に用いられる超伝導線材は、巨大な電磁力に耐え得るべく線径を太くしており、3mmから5mmの導体が用いられていた。しかしながら、かかる線径3mmから5mmの線材では、曲げ歪を0.2 %に制限されると巻き径が1500mmから2500mmになってしまう問題がある。この点、この発明では、外寸法を0.3 ~2 mmの細線としても十分な耐力をそなえており、しかも、0.5 %の曲げ歪を許容することから、60mmから400 mm以上の巻き径とすることが可能となる。

【0028】
図1に、補強安定化材として銅ニオブ(CuNb)を用いた銅ニオブ/ニオブ3スズ(CuNb /Nb3Sn)線材の4.2 Kにおける臨界電流と引張応力との関係を、比較のための従来の銅/ニオブ3スズ(Cu /Nb3Sn)線材の場合と共にグラフに示す。なお、用いた線材の特性は、以下のとおりである。
線材の直径 1.0 mm
Cu/CuNb/非Cu比 0.41/0.63/1.0
フィラメント直径 4.0 μm
フィラメント数 7849
ブロンズ比 3.9
バリア材 Ta
Nb芯線への添加元素 Ti

【0029】
同図から、CuNb/Nb3Sn 線材は、応力が200 MPa ~300 MPa という従来の線材では臨界電流が半分以下になるほどの応力が付与される場合であっても、臨界電流は低下しないことが明らかである。

【0030】
図2に、化合物系超伝導線材の断面写真を示す。同図(a) はCuを安定化材として用いた銅/チタン添加ニオブ3スズ (Cu/(Nb,Ti)3Sn) 線材であり、同図(b)は、この発明の磁石に適合する、CuNbを補強安定化材として用いた銅ニオブ/チタン添加ニオブ3スズ (CuNb/(Nb,Ti)3Sn) 線材である。

【0031】
かかる補強安定化超伝導線材は、所定の熱処理にて超伝導体を形成させたのち、コイル状に巻いて超伝導磁石を成形する。この巻線工程の際には、あたかも合金系超伝導線材のように、例えば50~100MPa の張力を付与しつつ、成形することができる。ここに、補強安定化超伝導線材が外寸法 0.3~2 mmの丸線又は角線であるため、従来の化合物系超伝導テープ材とは異なり、取り扱いが容易であり、多様なコイル形状に成形することができる。また、コイル状に巻く際、エポキシ樹脂を塗布して各線材を接着して成形することにより、真空含浸などの設備が不要なのは既に述べたとおりである。

【0032】
より好ましくは、コイル状に巻く際、巻線張力を制御する。具体的には、熱収縮応力を巻線張力による応力および電磁応力とバランスさせるようにする。超伝導磁石は、通常は内コイルに大きな電磁力が作用し、外コイルに向かうほどその電磁力が弱くなる。また、磁石が発生する磁場を効率よく発生されるためにコイルは多数に分割されている。そこで、内側コイルは張力巻きができる最小限の巻き張力で巻くことにより、大きな電磁力が作用することに対処させて、その電磁力と巻き張力の合計が図1の臨界電流が最も大きいところになるようにさせる。外側コイルでは、逆に巻線張力を大きくして小さな電磁力との合計をやはり臨界電流が最も大きいところになるように各分割したコイルごとにできるようにする。かくして、超伝導特性を一層向上させることができる。

【0033】
この発明を用いることにより、以下のような磁石に用いて好適である。大口径超伝導磁石は大型化するためにコンパクト化が望まれているが、この発明に従い、補強安定化ニオブ3スズ線材を用いることで、二分の一から三分の一までのコンパクト化が可能となる。

【0034】
液体ヘリウムを使わない冷凍機冷却超伝導磁石は、超伝導磁石の小型軽量化が必須条件である。大口径強磁場磁石は、補強安定化ニオブ3スズ線材を用いることで、コンパクトに作製でき、冷凍機冷却超伝導磁石へ適用可能となる。

【0035】
大口径超伝導磁石をニオブ3スズ線材で作製するためには、コンパクトに作製するために巻線後に熱処理する製法しかなかった。このために、大型コイルを熱処理するための大型熱処理炉が必要であったが、補強安定化ニオブ3スズ線材を用いた超伝導磁石は、巻線前に線材のみ熱処理することになり、コイルが入るような大型熱処理炉は不要である。

【0036】
大口径超伝導磁石のような大型コイルをエポキシの真空含浸をすることは極めて困難なことであるが、補強安定化ニオブ3スズを高張力巻線で超伝導磁石を作製する場合)値は、巻線時にエポキシで接着しながら作製できるため、真空含浸炉は不要である。巻線張力制御によって、分割された超伝導磁石の最適化が可能となる。

【0037】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、化合物系超伝導磁石において、使用する線材に補強材と安定化材とを兼ねた補強安定化超伝導線材を用いることから、リアクト・アンドワインド法により超伝導磁石を製造することができ、特殊な真空熱処理炉やエポキシ真空含浸炉が不要となる。また、線材はこれまでの2.5 倍の曲げ径に対応する0.5 %までの曲げ加工をすることができるため、コイル形状を比較的自由に設計することができる。したがって、物性測定用の大口径超伝導磁石、加速器用の超伝導磁石、リニアモーター用の超伝導磁石、発電機用の超伝導磁石、粒子検出用の超伝導磁石などのように、大口径で強磁場を発生させることが要求される磁石などに特に有利に使用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1