TOP > 国内特許検索 > 磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法 > 明細書

明細書 :磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3141109号 (P3141109)
公開番号 特開2000-306228 (P2000-306228A)
登録日 平成12年12月22日(2000.12.22)
発行日 平成13年3月5日(2001.3.5)
公開日 平成12年11月2日(2000.11.2)
発明の名称または考案の名称 磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法
国際特許分類 G11B  5/65      
G11B  5/851     
FI G11B 5/65
G11B 5/851
請求項の数または発明の数 10
全頁数 6
出願番号 特願平11-110363 (P1999-110363)
出願日 平成11年4月19日(1999.4.19)
審査請求日 平成11年4月19日(1999.4.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012394
【氏名又は名称】東北大学長
発明者または考案者 【氏名】島田 寛
【氏名】北上 修
【氏名】岡本 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
審査官 【審査官】山下 達也
参考文献・文献 特開 平11-97224(JP,A)
特開 平8-83418(JP,A)
特開 平9-16934(JP,A)
調査した分野 G11B 5/65
G11B 5/851
H01F 10/10
H01F 41/14
特許請求の範囲 【請求項1】
非磁性物質からなるマトリックス中に、磁性微粒子が析出してなるグラニュラー型の磁気記録媒体であって、
前記非磁性物質は、希土類酸化物、希土類窒化物、及び希土類炭化物から選ばれる少なくとも1種であって、前記磁性微粒子は鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素とからなることを特徴とする、磁気記録媒体。

【請求項2】
前記磁性微粒子中における前記希土類元素は、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、又はツリウム(Tm)であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気記録媒体。

【請求項3】
前記磁性微粒子における前記希土類元素の含有量が5~75原子%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。

【請求項4】
磁気記録媒体中における前記非磁性物質の含有量が5体積%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載の磁気記録媒体。

【請求項5】
磁気記録媒体中における前記非磁性物質の含有量が40~70体積%であることを特徴とする、請求項4に記載の磁気記録媒体。

【請求項6】
室温における保磁力(Hc)が800エルステッド(Oe)以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の磁気記録媒体。

【請求項7】
前記磁性微粒子の平均粒径が20nm以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一に記載の磁気記録媒体。

【請求項8】
希土類酸化物、希土類窒化物、及び希土類炭化物から選ばれる少なくとも1種の非磁性物質と、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素とを含有してなる蒸発源から、物理蒸着法によって、基板上に前記非磁性物質を構成する元素と、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選ばれる前記少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる前記少なくとも1種の元素とがランダムに配列してなる薄膜を形成した後、この薄膜を10-2torr以上の真空度において、400℃以上で熱処理を行い、前記非磁性物質からなるマトリックス中に、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選ばれる前記少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる前記少なくとも1種の元素とからなる磁性微粒子を析出させることを特徴とする、グラニュラー型の磁気記録媒体の製造方法。

【請求項9】
前記蒸発源はターゲットであり、前記物理蒸着法はスパッタリング法であることを特徴とする、請求項8に記載の磁気記録媒体の製造方法。

【請求項10】
前記ターゲットは、前記非磁性物質を構成する希土類酸化物、希土類窒化物、及び希土類炭化物から選ばれる前記少なくとも1種からなるチップを、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選ばれる前記少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる前記少なくとも1種の元素とからなる合金ターゲット上に載置してなる複合ターゲットであることを特徴とする、請求項9に記載の磁気記録媒体の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法に関し、さらに詳しくはハードディスクなどの高記録密度媒体などに好適に使用することのできる、磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法に関する。

【0002】
【従来の技術】情報社会の発展に伴い、高密度記録技術の開発が切望されている。特に、ビット単価が安く、不揮発かつ大容量記録の可能な磁気記録においては、高密度記録の可能な磁気記録媒体の開発が強く要求され、種々の研究開発によりここ数年で著しい高密度化が実現された。しかし、将来的に更なる進化が期待される情報化社会において、例えば十年, 二十年先の市場要求に対応できる技術的見通しは殆ど得られていない。この技術的行き詰まりの最も大きな原因の一つに、現行磁気記録媒体が抱える以下のような原理的問題がある。

【0003】
現行の磁気記録媒体用薄膜は、CoCrを主体とする合金薄膜であるが、この薄膜においては磁性を担う微小領域の磁気的分離が不十分なため、磁気的に結合した比較的に大きな磁気集団(クラスター) が形成される。そのサイズはサブミクロンからミクロンオーダーにも達する。現行の磁気記録技術における最小ビットサイズがサブミクロンオーダーであり、上記磁気クラスターサイズと同程度であることを考えると、記録分解能という点では既に限界に近づいているということができる。現行技術のこのような限界を打破するには, 記録媒体内の磁性粒子を効率よく磁気絶縁し、磁気クラスターの極小化を図る必要がある。

【0004】
この間題に対する一つのブレークスルーとして、グラニュラー型の磁気記録媒体が提案された。グラニュラー媒体は、酸化物等の非磁性マトリクス中に磁性微粒子を析出させた構造を有し、磁性粒子間が非磁性物質の介在によりほぼ完全に磁気的に絶縁されている。したがって、個々の粒子(10~30nm程度) が最小の磁化単位となり、少なくともこの程度のサイズまで微小な高密度記録が可能となる。実際、最近の研究によれば、SiO2 非磁性マトリクス中に磁性粒子を分散析出させたグラニュラー媒体において、高密度記録が可能なこと、そして粗大クラスター形成の回避によるノイズの顕著な低減効果が確認されている。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、グラニュラー型の磁気記録媒体は次世代高密度記録媒体として大変有望な候補であるが、その反面、記録状態の熱擾乱という一層深刻な問題を抱えている。一般に磁性体は、結晶格子の空間的対称性を反映した結晶磁気異方性を示す。例えば、六方最密構造を有するコバルトでは, 結晶主軸(c軸)方向にスピンが向いた場合がもっとも磁気的エネルギーが低く、その方向からずれるとエネルギーが高くなり、直交方向では最大となる。つまり、外場による強制がなければ、常にスピンはc軸方向の二方向のいずれかを向くことになる。このスピンの向きの二値情報を活用したものが、磁気記録の基本である。

【0006】
一個の磁性粒子に着目した場合、その磁気異方性エネルギーは、物質そのものにより決まる磁気異方性定数に粒子体積を乗じたものが、全エネルギーとなる。このエネルギーが安定方向へのスピン拘束度を支配し、記録状態の保存につながるわけである。もし、磁性粒子の体積が極端に小さくなり、磁気異方性エネルギーが熱エネルギーと同程度になった場合を考えると、熱擾乱によりスピンの向き(つまり記録状態) は常に揺らいだものとなり、もはや記録状態を安定に維持できなくなる。上記グラニュラー媒体は、極微小な粒子が非磁性物によりほぼ完全に孤立化されてるため、この熱擾乱が極めて深刻な問題となる。このために、グラニュラー媒体では、記録情報の長期保存が困難となり、その実用化は困難視されていた。

【0007】
本発明は、非磁性マトリックス中に磁性微粒子が析出して磁気的に分離されてなる、いわゆるグラニュラー型の磁気記録媒体における記録状態の熱擾乱を抑制し、高密度記録が可能なグラニュラー型の磁気記録媒体を提供することを目的とする。

【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、非磁性物質からなるマトリックス中に、磁性微粒子が析出してなるグラニュラー型の磁気記録媒体であって、前記非磁性物質は、希土類酸化物、希土類窒化物、及び希土類炭化物から選ばれる少なくとも1種であって、前記磁性微粒子は鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素とからなることを特徴とする、磁気記録媒体である。

【0009】
本発明者らは、グラニュラー型の磁気記録媒体の熱擾乱を抑制して、この媒体が潜在的に有している高密度記録を達成すべく鋭意検討した。そして、広範な材料探索の過程において、以下の事実を発見した。すなわち、磁性微粒子の主成分であるFe、Co、Niに対し、希土類元素を所定量添加する。そして、グラニュラー型の磁気記録媒体を構成する非磁性物質マトリックスを希土類酸化物、希土類窒化物、及び希土類炭化物から選ばれる少なくとも1種から構成する。すると、驚くべきことに磁性微粒子の熱擾乱が著しく低減されることを見いだした。本発明は広範な研究過程において発見された上記事実に基づいてなされたものである。

【0010】
本発明によれば、非磁性物質からなるマトリックス中における磁性微粒子の粒子サイズを、例えば前記したような10~30nm程度以下に微細化した場合においても、以下の実施例において示すように十分大きな磁気異方性を有するため、磁性微粒子の熱擾乱による影響は極めて少ない。したがって、安定した高密度記録が可能となり、信頼性に富むいわゆるグラニュラー型の磁気記録媒体の提供が可能となる。

【0011】
このように安定した高密度記録のグラニュラー型磁気記録媒体が得られる理由については明確ではないが、以下のように考えられる。すなわち、本発明の磁性微粒子を構成する希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素は、3d遷移元素に比べ非常に大きいスピンと軌道との相互作用を有し、同時にこれらの元素の電子状態は主たる3d遷移元素のそれと強く混成する。そして、磁気モーメントを主として発現する3d元素のスピンは、上記元素との強い混成、そしてスピン-軌道相互作用を介して結晶格子状態(原子配列)を強く感じることになる。特に磁性体表面に於ては、電子配列の空間的対称性が破れるために、その効果は著しく、粒子表面には強い表面磁気異方性が現れる。

【0012】
換言すれば、本発明の微粒子では3d系が磁気モーメントを主に担い、希土類系がその強いスピン-軌道相互作用により、全体の表面磁気異方性を強調する。そして、本発明においては、マトリックスをも非磁性の希土類化合物から構成しているため、上記スピンー軌道相互作用はさらに強くなり、これによって上記表面磁気異方性がさらに増大するものと推察される。

【0013】
また、希土類元素は極めて反応性に富むため、非磁性物質を他の材料、例えば二酸化珪素(SiO2 )や、アルミナ(Al2 3 )などから構成すると、この酸素が解離して磁性微粒子中の希土類元素と結合して酸化してしまう。しかしながら、本発明においては、上記非磁性物質を前述したように希土類酸化物などから構成している。したがって、希土類酸化物などを構成する酸素などは、この希土類酸化物を構成している希土類自体と強く結合するため、前記希土類酸化物から解離しなくなる。このため、磁性微粒子中における希土類元素によるスピンー軌道相互作用はさらに増長され、これによって磁気記録媒体の表面磁気異方性はさらに増大する。この結果、磁性微粒子全体の表面磁気異方性の増加により保磁力が増大し、更に、熱擾乱を生じさせることなく高密度記録が可能となったものと考えられる。

【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。本発明の磁気記録媒体における磁性微粒子を構成する希土類元素としては、ランタノイド系列であるランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の他、周期律表第3A族であるスカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)などを例示することができる。

【0015】
前記同様に磁性微粒子の表面磁気異方性を向上させて、熱擾乱を抑制し、さらなる高密度記録を達成するためには、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びTmを使用することが好ましい。

【0016】
本発明の磁気記録媒体における、上記希土類元素などの含有量は、本発明の目的を達成することができれば特に限定されるものではない。しかしながら、前記磁性微粒子中における前記希土類元素の含有量の下限は5原子%であることが好ましく、さらには10原子%であることが好ましい。

【0017】
前記希土類元素の含有量の下限を上記のように設定することによって、本発明の磁気記録媒体を構成する磁気微粒子の表面磁気異方性をより効果的に向上させ、常温、すなわち室温における保磁力を十分に大きくすることができる。この結果、磁性微粒子の熱擾乱の影響をほとんど無視することができるため、磁性微粒子の大きさをnmオーダの大きさにまで小さくした場合においても、安定した記録が可能となる。

【0018】
また、磁性微粒子中における、前記希土類元素の含有量の上限は75原子%であることが好ましく、さらには55原子%であることが好ましい。前記希土類元素の含有量が上記値を超えてしまうと、磁性微粒子中に占めるFe、Co、及びNiの含有量が相対的に減少してしまう結果、磁性微粒子自体の磁化が減少してしまう。この結果、磁気記録媒体に実際に書き込みを行った場合において、信号強度が減少してしまう場合がある。

【0019】
本発明の磁気記録媒体中における非磁性物質の含有量ついても、本発明の目的を達成することができれば特に限定されるものではない。しかしながら、非磁性の物質の磁気記録媒体中における含有量の下限は、5体積%であることが好ましく、さらには40体積%であることが好ましく、特には50体積%であることが好ましい。これによって、磁性微粒子の磁気的分離を極めて完全に行うことができ、本発明の磁気記録媒体をグラニュラー型のものとすることができる。

【0020】
また、非磁性物質の磁気記録媒体中における含有量の上限は、80体積%であることが好ましく、さらには70体積%であることが好ましい。非磁性物質の含有量が上記値を超えると、磁気記録媒体中に占める磁性微粒子の含有量が減少していまうため、グラニュラー型磁気記録媒体に特有の高密度記録を行うことができなくなってしまう。

【0021】
本発明の磁気記録媒体は、上述したように室温において十分大きな保磁力を有し、これによって熱擾乱を抑制することができる。熱擾乱を防止することができれば、前記保磁力の大きさは特に限定されない。しかしながら、前記保持力の大きさが、800エルステッド(Oe)以上であることが好ましく、さらには1500エルステッド以上であることが好ましい。これによって、磁性微粒子の大きさをnmオーダにまで小さくした場合においても、熱擾乱を効果的に抑制することができ、安定した記録再生が可能となる。

【0022】
前記保磁力の値は、磁気記録媒体における磁性微粒子の粒子サイズ、及び磁性微粒子中における希土類元素の含有量、さらには磁気記録媒体を作製する際の諸条件を適宜に設定することによって達成することができる。

【0023】
本発明によれば、グラニュラー型の磁気記録媒体における熱擾乱を効果的に抑制することができるので、磁性微粒子を20nm以下、さらには15nm以下、特には10nm以下にまで微細化して書き込むことができる。したがって、従来は困難とされていた高密度記録が可能となる。

【0024】
磁性微粒子の大きさの制御は、磁気記録媒体を作製する際における基板温度や、成膜速度、あるいは熱処理温度及びその時間を、適宜に設定することによって行うことができる。また、磁性微粒子を構成するFeなどの含有量を非磁性物質に対して適宜に設定したりすることによっても行うことができる。一般に、磁性微粒子の大きさを小さくするためには、磁性金属元素の含有率を低くしたり、基板温度あるいは熱処理温度を低くしたりする。

【0025】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は特に限定されるものではなく、あらゆる手法を用いて形成することができる。しかしながら、膜厚制御の容易性や組成の均一性、さらには作製時間を短くすることができるという観点から、真空蒸着法、イオンプレーティング法、及びスパッタリング法などの物理蒸着法によって、基板上に厚さ2~100nmの薄膜状に形成することが好ましい。この場合においては、希土類酸化物、希土類窒化物、及び希土類炭化物から選ばれる少なくとも1種の非磁性物質と、Fe、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる少なくとも1種とを含有してなる蒸発源を用いる。

【0026】
スパッタリング法は組成制御性や膜全体における特性が均一となるという観点から、本発明の磁気記録媒体を作製するに当たって、特に好ましく用いることができる。したがって、この場合、蒸発源としてターゲットを用いる。ターゲットとしては、Fe又はCoなどの金属ターゲット上に、希土類酸化物などの非磁性物質のチップ、並びに希土類元素などからなるチップを所定量載置した複合ターゲットや、あらかじめFeや希土類元素などが所定量に配合された合金ターゲット上に、非磁性物質のチップを載置してなる複合ターゲットを用いることができる。特に、本発明の磁気記録媒体を作製するに当たっては、後者の形態の複合ターゲットを用いることが好ましい。

【0027】
そして、上記物理蒸着法によって前記元素をランダムに含有してなる薄膜を形成した後、この薄膜を好ましくは10-2torr、さらに好ましくは10-4torr以上の真空度において、好ましくは400℃以上、さらに好ましくは500℃以上で熱処理を行う。これによって、前記非磁性物質からなるマトリックス中にFeなどと希土類元素とからなる磁性微粒子が析出した、グラニュラー型の磁気記録媒体を作製することができる。熱処理時間は、熱処理温度及び得ようとする磁性微粒子の大きさに依存するが、一般には5~60分行う。

【0028】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
実施例1及び2
(磁気記録媒体の作製)
Fe-9原子%Tb及びFe-33原子%Tbの合金ターゲット上に、七酸化四テルビウム(Tb4 7 )(直径10ミリ)を42個載置した。基板としては、熱酸化Siウエハ(100)を使用した。この基板に60Wの高周波バイアスを印加しながら、高周波マグネトロンスパッタリングを実施し、前記基板上に厚さ50nmの薄膜を形成した。スパッタは、アルゴンガスを用いて行い、圧力は4mTorrに設定した。このようにして得た薄膜に対して、1×10—6Torr以下の圧力の真空中において熱処理を実施し、磁気記録媒体を作製した。なお、熱処理温度は600℃とし、処理時間は30分とした

【0029】
(磁気記録媒体の特性評価)
得られた磁気記録媒体をEPMA(電子線ブローブマイクロアナリシス)法によって分析したところ、Tb酸化物を主体とするマトリックス中に、FeとTbとからなる磁性微粒子が析出し、グラニュラー型の磁気記録媒体が作製されていることが判明した。同じく、磁気記録媒体における非磁性Tb酸化物の含有量を飽和磁気モーメントから評価したところ、50体積%であった。また、磁性微粒子中におけるTbの含有量はそれぞれ表1に示すような値を示した。さらに、各磁気記録媒体の室温に保磁力を(VSM)によって調べたところ、それぞれ表1に示すような値を示した。また、各磁気記録媒体における磁性微粒子の大きさを透過型電子顕微鏡によって実測したところ、それぞれ表1に示すような値を示した。

【0030】
得られた磁気記録媒体に記録密度200kFCI(1インチ当たりの書き込みビット数)、トラック幅2μmの条件で書き込みを行ったその後、この磁気記録媒体を大気中、60℃で1週間放置した後、再生出力の劣化を調べた。結果を表1に示す。

【0031】
比較例
直径100mmのCoターゲット上にWなどのチップ(5mm角)を載置することなく、Coのみからなる磁性微粒子を二酸化珪素マトリックス中に析出させて、グラニュラー型の磁気記録媒体を作製した。磁気記録媒体の作製条件は前記実施例と同条件にて実施した。磁気記録媒体の特性評価及び磁気記録媒体の熱擾乱性についても実施例同様に評価した。結果を表1に示す。

【0032】
【表1】
JP0003141109B2_000002t.gif【0033】以上、実施例1及び2、並びに比較例から明らかなように、本発明にしたがって磁性微粒子を、CoとTbなどの希土類元素とから構成することによって、磁気記録媒体の保磁力が向上し、熱擾乱の影響を極めて小さくできることが分かる。したがって、表1に示すような大きさの磁性微粒子に対して書き込むことができ、高密度記録が可能なことが分かる。

【0034】
以上、具体例を示しながら発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲において、あらゆる変形や変更が可能である。

【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁気記録媒体では、非磁性物質中にFe,Co,Niから選ばれる少なくとも1種の元素と、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる磁性微粒子が析出した、グラニュラー型を呈する。したがって、本発明の磁気記録媒体は磁性微粒子を小さくした場合においても、室温において十分高い保磁力を有する。このため、熱擾乱の影響が少なく、安定な高密度記録が可能となる。