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明細書 :フラーレン-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物およびその合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3318604号 (P3318604)
公開番号 特開2001-066651 (P2001-066651A)
登録日 平成14年6月21日(2002.6.21)
発行日 平成14年8月26日(2002.8.26)
公開日 平成13年3月16日(2001.3.16)
発明の名称または考案の名称 フラーレン-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物およびその合成方法
国際特許分類 C07F  5/02      
G02F  1/361     
FI C07F 5/02 E
G02F 1/361
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願平11-237028 (P1999-237028)
出願日 平成11年8月24日(1999.8.24)
審査請求日 平成11年8月24日(1999.8.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012394
【氏名又は名称】東北大学長
発明者または考案者 【氏名】山本 嘉則
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】河野 直樹
参考文献・文献 IMEBORON X,11th-14th July 1999,39,IB-2
調査した分野 C07F
特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式で表わされることを特徴とするフラーレン-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物。
【化1】

【請求項2】
JP0003318604B2_000002t.gif1-(4-ブロモフェニル)-1,2-カルボランとメチルヨウ素とを反応させて1-(4-ブロモフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを得る工程、
前記1-(4-ブロモフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランとトリメチルシリルアセチレンとを反応させて1-(4-(トリメチルシリルエチニル)フェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを得る工程、
前記1-(4-(トリメチルシリルエチニル)フェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを脱保護して、1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを得る工程、および
前記1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランのリチウムアセチリドを得、これとフラーレンとを反応させて1-ヒドロ-2-[1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボラン]フラーレンを得る工程を具備するフラーレン-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物の合成方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非線型材料としてのフラーレン-カルボランハイブリッド材料およびその合成方法に関する。

【0002】
【従来の技術】効率的な光遠隔通信ネットワークの開発においては電気-光信号変換が十分ではないが、二次非線形光学材料(NLO)は、直接な適用性を有しているので注目されている。主な目的は、与えられた長さのある種の共役結合を有するドナーπ-アクセプター(D-π-A)の分子設計を行い、π系の長さおよびドナー、アクセプターの最適なものを選択して一次超分極性(β)を最適化することにある。これに関しては、次の文献に記載されている。Nonlinear Optical Effectsin Molecules and Polymers (Prasad,P.N.; Willliams,D.J., Wiley, New York,1991)、J. Phys. Chem. 1991, 95, 10643(Cheng,L.-T.; Tam,W.; Marder,S.R.;Stiegman, A.E.; Rikken,G.; Spangler, C.W.)、J.Am.Chem.Soc.1993,115,3006(Marder, S.R.;Gorman,C.B.; Tiemann, B.G.;Cheng,L.-T.)、J.Chem.Soc.Chem.Comm.1992,672(Marder,S.R.;Cheng,L.-T.;Tiemann,B.G.)、J.Am.Chem.Soc. 1991, 113,7568 (Stiegman, A.E.;Graham,E; Perry,K.J.;Khundkar, L.R.Perry,J.W,; Cheng,L.-T.)、J.Chem.Soc.Chem.Comm.1993,1119(Rao,V.P.;Jen,A.K.-y,Wong, K.Y.;Drost,K.J.)、Science 1991,252, 103(Marder,S.R.;Beratan,D.N.;Cheng, L.-T.)、Chem.Phys.Lett.1992,191,245 (Stahelin, M.;Burland,D.M.;Rice.J.E.)、およびChem.Phys.1990,145,3433 (Ramasesha,S.; Dass, P. K.)である。

【0003】
フラーレンのシェル上の電子の高い非局在化のために、C60ベースの材料は、π共役ポリマーについてのそれらより大きな非線型光学効果を示すことが予測される。これに関してはNonlinear Optical Properties of Organic Materials (Prasad,P., Plenum, New York,1991)に記載されている。電子ドナー(D)部分と結合したフラーレン(A)は、広く報告されている(A-D)。(Chem.Rev. 1998, 98,2527 (Martin, N.;Sanchez,L.;Illescas,B.;Perez,I.))。現在のところ、電子アクセプター(A)部分と結合したフラーレン(A-A)については、ほとんど研究されていない。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、大きな二次高調波発生(SHG)を示す非線形光学材料として好適な化合物を提供することを目的とする。

【0005】
また本発明は、大きな二次高調波発生を示す非線形光学材料として好適な化合物の合成方法を提供することを目的とする。

【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、カルボランとフラーレンとが、共役架橋芳香族基により連結されていることを特徴とするフラーレン-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物を提供する。

【0007】
また本発明は、1-(4-ブロモフェニル)-1,2-カルボランとメチルヨウ素とを反応させて1-(4-ブロモフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを得る工程、前記1-(4-ブロモフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランとトリメチルシリルアセチレンとを反応させて1-(4-(トリメチルシリルエチニル)フェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを得る工程、前記1-(4-(トリメチルシリルエチニル)フェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを脱保護して、1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランを得る工程、および前記1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランのリチウムアセチリドを得、これとフラーレンとを反応させて1-ヒドロ-2-[1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボラン]フラーレンを得る工程を具備するフラーレン-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物の合成方法を提供する。

【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0009】
本発明者らは、共役スペーサーによってカルボランをフラーレンに共有結合させてA-π-A系と考えられるハイブリッド化合物を合成することによって、オルトカルボラン電子欠乏クラスターの電子構造と、その高い分極性σ部分(J. Mater.Chem.1993,3(2),139(Murphy,D.M.;Mingos,D.M.P.;Haggitt,J.L.;Powell, H.R.;Westcott,S.A.; Marder,T.B.; Taylor,N.J.;Kanis,D.R.)、J.Mater. Chem.1993,3,67(Murphy,D.M.; Forward, J.M.;Mingos,D.M.P.))のために、従来にない電気化学的挙動を示し、フラーレンがアクセプターとして、カルボランがドナーとして作用することを見出した。

【0010】
さらにこのフラーレン-π-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物は、 高い二次高調波発生(SHG)(J.Chem.Rev.1994,94,195 (Kanis,D.R.;Ranter, M. A.;Marks,T.J.))を有することが、本発明者らによって初めて見出された。

【0011】
本発明のフラーレン-カルボランリジッドロッドハイブリッド化合物は、下記化学式で表される。

【0012】
【化2】
JP0003318604B2_000003t.gif【0013】この化合物は、以下に示すような手順で合成することができる。

【0014】
【化3】
JP0003318604B2_000004t.gif【0015】まず、THF中で化合物1であるオルト-カルボラン誘導体(1当量)とMeI(1.1当量)との混合物に nBuLi(1.05当量)を加えて、化合物2を得る。原料となる化合物1は、J.Organomet.chem.1993,19 (Coult,R;Fox,M. A.;Gill, W. R.;Herbertson,P.L.;Macbride,J.A.H.;Wade,K.)に記載されている方法を若干改良して合成することができる。

【0016】
なお、 nBuLiを化合物1のTHF溶液に加えた後にMeIを加えた場合には、化合物2の収率は非常に低くなってしまうので、nBuLiは、化合物1とMeIとの混合物に加えるのが望ましい。本発明においては、化合物2は87%の収率で得ることができる。

【0017】
次いで、化合物2のTHF溶液を調製し、このTHF溶液に、触媒量のPd(PPh3 4 (2mol%)、CuI(4mol%)およびトリメチルアミン(1.5当量)の存在下でトリメチルシリルアセチレン(1.05当量)を加えて化合物3を得る。

【0018】
その後、フッ化カリウムでの化合物3の脱保護により、化合物4を得る。化合物4は80%の収率で得られる。

【0019】
本発明の化合物5は、BuLi(1当量)で化合物4を処理して化合物4(1当量)のリチウムアセチリドを得て、これを、トルエン溶液としたC60に縮合することにより合成することができる。(例えば、Tetrahedron Lett.1996, 52,4925 (Timmerman, P.; Anderson H.L.; Faust, R.; Nierengarten, J-F.; Habicher, T.; Seiler, P.; Diederich, T.)、J. Org. Chem. 1994, 59,6101 (Komatsu,K.; Murata, Y.; Takimoto, N.; Mori, S.; Sugita, N.; Wan, T. S.))。

【0020】
本発明のハイブリッド化合物である化合物5の構造は、 1H、および13C NMR、CVおよびESI- により特定することができる。

【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の化合物の合成例およびその分析結果の具体例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。

【0022】
なお、化合物は次の手法により分析した。蛍光スペクトルおよびUV可視スペクトルは、F-4500分光蛍光光度計(日立製)およびU-3000UV可視分光計(日立製)をそれぞれ用いて分析した。HRS測定は、q-スイッチNd:YAGレーザー(スペクロンLS-412,fwhm:6nm)を入射光ビームとして用いて行った。基本光強度(λ=1064nm、I(ω))は、2つの偏光板の間に設けた半波長板を回転させることにより変化させた。HRSシグナル、I(2ω)は、フォトマルチプライヤー(フィリップ社製、モデルXP2020Q)によりI(ω)の関数として検出した。基本入射光強度、およびHRS光信号は、2つのゲートインテグレーター(スタンフォードリサーチシステム、モデルSR250)に供給し、ゲートインテグレーターからの出力信号は、ADコンバートしてパーソナルコンピューターで解析した。

【0023】
(化合物1)の合成
KO tBu(5.61g、50mmol)を、窒素雰囲気下、乾燥グリム(80ml)およびCuI(8.57g、45mmol)とともに室温で5時間攪拌してピリジン(10ml)を加え、さらにオルト-カルボラン(4.26g、30mmol)を加えた。

【0024】
得られた混合物(銅(I)カルボラン溶液)を40℃で2時間攪拌し、4-ブロモヨードベンゼン(8.48g、30mmol)を一度に加えて100℃で5日間攪拌した。この時点で、カルボランがほぼ消費されたことをGC-MSにより確認した。

【0025】
その後、溶媒を留去し、粗オイルをエーテル/水系(120mlエーテル/40ml水)で抽出した。有機層を分離し、MgSO4 で乾燥・濃縮して、黄色の固体を得た。最後に、エタノールから再結晶化して63%収率で白色結晶(化合物1)を得た。

【0026】
得られた化合物1の 1H NMRスペクトルおよび13C NMRスペクトルを図1および図2のグラフにそれぞれ示し、その特性を以下にまとめる。

【0027】
1H NMR(300MHz、CD3 COCD3 ):δ 3.84(s,1H)、7.19-7.42(2d,4H)
13C NMR(75.45MHz、CD3 COCD3 ):δ 60.10,129.17,131.98
MS m/z:299(M+
HRMS:C8 1510Brの計算値、300.1288
実測値 300.1330
以上の分析結果から、本合成例で得られた化合物1は、下記化学式で表される1-(4-ブロモフェニル)-1,2-カルボランと同定した。

【0028】
【化4】
JP0003318604B2_000005t.gif【0029】(化合物2)の合成
上述の合成例で得られた1-(4-ブロモフェニル)-1,2-カルボラン(2.99g、10mmol)と、CH3 I(0.75ml,12mmol)との混合物のTHF溶液を調製した。得られたTHF溶液に、 nBuLiのヘキサン溶液(1.57M、6.7ml、10.5mmol)を乾燥Ar雰囲気下、-78℃で徐々に滴下した。溶液を一晩その温度で放置し、GC-Massで反応の進行を追跡した。

【0030】
出発物が消費された時点で溶媒を留去し、得られた粗オイルをH2 O/Et2O(20ml/60ml)で抽出した。有機層をMgSO4 で乾燥し、エーテルを留去して黄色の固体が得られた。最後に、シリカゲルPTLCクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2 Cl2 =9/1の溶媒)で精製して、87%(2.72g)の収率で白色固体(化合物2)を得た。

【0031】
得られた化合物2の 1H NMRスペクトル、13C NMRスペクトルおよびIRスペクトルを、図3、図4および図5のグラフにそれぞれ示し、その特性を以下にまとめる。

【0032】
IR(KBr):2601,2585,2509,1489,829,503cm-1
1H NMR(300MHz、CD3 COCD3 ):δ 1.80(s,3H)、7.70(s,4H)
13C NMR(75.45MHz、CD3 COCD3 ):δ 24.26,134.00,134.77
MS m/z:313(M+
HRMS:C9 1710Brの計算値314.1445
実測値 314.1483
以上の分析結果から、本合成例で得られた化合物2は、下記化学式で表される1-(4-ブロモフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランと同定した。

【0033】
【化5】
JP0003318604B2_000006t.gif【0034】(化合物4の合成)上述の合成例で得られた1-(4-ブロモフェニル)-2-メチル-1,2-カルボラン(3.13g、10mmol)、触媒量のPd(PPh3 4 (231mg、0.2mmol)、CuI(38mg、0.4mmol)、およびトリエチルアミン(2.1ml、15mmol)の混合物の乾燥THF(50ml)溶液を調製した。得られたTHF溶液に、トリメチルシリルアセチレン(2.1ml、15mmol)をAr雰囲気下、0℃で加えて混合物を調製し、混合物を100℃で24時間還流した。溶媒を留去した後、KF(2.32g、40mmol)とKOH(0.17g、3mol)とのメタノール(100ml)溶液を粗オイルに加えて、室温で2時間攪拌した。

【0035】
次いで、メタノールを留去し、残渣を塩水/エーテル(20ml/20ml)で洗浄した後、エーテル(20ml)で3回抽出した。

【0036】
エーテル抽出液をMgSO4 で乾燥し、濃縮して黄色の固体が得られた。最後に、ヘキサンを展開液としてシリカゲルカラムで精製して、80%(2.06g)の収率で白色固体(化合物4)が得られた。

【0037】
得られた化合物4の 1H NMRスペクトル、13C NMRスペクトルおよびIRスペクトルを、図6、図7および図8のグラフにそれぞれ示し、その特性を以下にまとめる。

【0038】
IR(KBr):3288,2584,2563,1508,844,664cm-1
1H NMR(300MHz、CD3 COCD3 ):δ 1.79(s,3H)、3.76(s,1H)、7.43(d,2H,J=8.7Hz)、7.57(d,2H,J=8.7Hz)
13C NMR(75.45MHz、CD3 COCD3 ):δ 80.49,82.97,122.31,123.39,132.57,134.46
MS m/z:258(M+
HRMS:C111810の計算値260.2339
実測値 260.2324
以上の分析結果から、本合成例で得られた化合物4は、下記化学式で表される1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボランと同定した。

【0039】
【化6】
JP0003318604B2_000007t.gif【0040】なお、この化合物は下記化学式で表される化合物の脱保護により合成されたものである。

【0041】
【化7】
JP0003318604B2_000008t.gif【0042】(化合物5の合成)上述の合成例で得られた1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボラン(51.6mg、0.2mmol)をTHFに溶解して、溶液(A)を調製し、このTHF溶液に1当量のnBuLiを0℃で加えて、紫色溶液を得た。得られた溶液を室温で1時間放置した。

【0043】
一方、C60(72mg、0.1mmol)をトルエンに溶解して溶液(B)を調製し、この溶液を極度に乾燥した窒素雰囲気下、35℃で加熱した。

【0044】
前述の溶液(A)を、徐々に溶液(B)に加えて混合物を得た。混合物は琥珀茶色に変化し、これを一晩反応させた。

【0045】
反応後の混合物にCF3 COOH(2ml)を加えた後、溶媒を蒸発して粗茶黒色の固体を得た。この固体をCHCl3 に溶解し、濾紙で濾過したところ、琥珀茶色の溶液と微細な固体(化合物5)とが得られた。この固体は新規なものであり、CS2 以外の溶媒には溶解しない。

【0046】
次いで、CHCl3 を蒸発し、茶色固体をヘキサンで洗浄して過剰の化合物4(43%)を除去した。

【0047】
得られた茶色固体をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン展開液、シリカゲル)により、未反応のC60(13%)を回収した。化合物5の収率は67%であった。

【0048】
得られた化合物5の 1H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、IRスペクトルおよびマススペクトルを、図9、図10、図11および図12のグラフにそれぞれ示し、その特性を以下にまとめる。

【0049】
IR(KBr):2583,1685,1508,1458,1429,1209,1182,1144,844,526cm-1
1H NMR(300MHz、CS2 /OD2 Cl2 ):δ 1.82(s,3H)、7.152(s,1H)(m,4H)
13C NMR(75MHz、CD3 Cl/CS2 ):
δ 151.292,151.135,147.410,147.146,146.479,146.231,146.207,146.050,146.033,145.638,145.546,145.490,145.300,145.259,145.176,144.509,144.336,143.042,142.869,144.440,142.407,141.904,141.880,141.847,141.674,141.509,141.451,140.174,135.905,134.948,107.487,88.152,61.919,55.318,22.788
CH2 Cl2 中でのマスエレクトロスプレーイオナイゼーション(ESI)、CH2 Cl2 中での化合物5についてのデータ:977.4(M- -H);817.0(M- -(1-Me-1,2-C2 1011);744.64(M- -(1-Me,2-Ph-1,2-C2 1010);257.3(1-(CC-Ph),2-Me-1,2-C2 1010);234.12(1-Me,2-Ph,1,2-C2 1010);158.14(1-Me-1,2-C2 1010)以上の分析結果から、本合成例で得られた化合物5は、下記化学式で表される1-ヒドロ-2-[1-(4-エチニルフェニル)-2-メチル-1,2-カルボラン]フラーレンと同定した。

【0050】
【化8】
JP0003318604B2_000009t.gif【0051】得られた化合物5およびC60のサイクリックボルタノグラムを図13のグラフに示す。グラフ中、曲線aは化合物5のサイクリックボルタノグラムを表しており、化合物5はオルト-ジクロロベンゼン中で5×10-3Mとして用いた。また、曲線bは、C60のサイクリックボルタノグラムを表し、C60はオルト-ジクロロベンゼン中で2.5×10-3Mとして用いた。

【0052】
条件は次のとおりである。

【0053】
支持電解質:0.1M nBu4 NClO4
作用電極:グラッシーカーボン
対向電極:Pt線
参照電解質:アセトニトリル中のAg/0.01N AgNO3 で0.1M nBu4 ClO4 を含む(E1/2(フェロセン/フェロセニウム)=180V)
走査速度:100mVs-1
曲線a(化合物5)には、曲線b(C60)と同様に3つの疑似可逆的還元波が示されている。具体的には、曲線aには、3つの疑似可逆的還元波(Ered oxmV;-1186:-549、-1657:-990、-2334:-1550)が示され、曲線b(C60)には、3つの疑似可逆的還元波(Ered:EoxmV;-1102:-549、-1534:-1040、-2002:-1599)が示されている。

【0054】
-165mVにおける非可逆的酸化波の存在は、共役スペーサーフラグメントに対応する。化合物5についての4つの明確な還元波の観測は、共有結合した2つの骨格の予測された電気化学プロセスに一致する。化合物5についての曲線aの3つの還元電位は、C60についての曲線bの還元電位よりも負の値に顕著にシフトしていることがわかる。これは、二重結合の飽和に起因するものである。これに関しては、次のような文献に記載されている。Helv.Chim.Acta.1995,78, 1334 (Boudon, C.; Gisselbrecht, J.-P; Gross, M.; Isaacs, L.; Anderson, H.L.; Faust, R.; Diederich,F.)、In Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers Nalwa H. S., Ed (Chlistunoff, J.; Cliffel, D.; Bard, A.J., John Wiley & Sons Ltd.; New York, 1997; Vol.1, Chapter 7)、J.Am.Chem.Soc.1994,116,1359(Suzuki,T.; Maruyama,Y.; Akasaka, T.; Ando,W.;Kobayashi,K.;Nagase,S.)。

【0055】
加えて、化合物5の電気化学的挙動は、C60クラスターの強い吸引効果によって支配され、カルボランスペーサー骨格の電荷引き抜き特性は、C60の存在下では効果がなくなることを示している。

【0056】
図14のグラフには、本発明の化合物5およびC60のUV吸収スペクトルを表す。グラフ中、曲線cは化合物5のUV吸収スペクトルを表しており、化合物5はクロロホルム中で10-6Mとして用いた。また、曲線dはC60のUV吸収スペクトルを表し、C60はクロロホルム中で5×10-6として用いた。

【0057】
曲線cに示されるように、UV可視領域での化合物5/CH3 Clの吸収スペクトルは、禁制遷移に起因した非常に弱い吸収バンドを430nmから620nmの間に有し、大きな2つの吸収バンドを257nmと330nmとに有している。クロロホルム中では、化合物4はUV-可視領域で透明であり、吸収は全く観測されない。

【0058】
図15のグラフには、本発明の化合物5のクロロホルム中での蛍光スペクトルを示す。グラフに示されるように、クロロホルム中での化合物5の蛍光スペクトルは、257nmおよび330nmにおける励起に続いて、350から390nmの範囲での広い発光バンドを示し、これはクロロホルムのラーマン散乱によるものである(蛍光発光は、THF中およびCH3 CN中でも存在する)。

【0059】
二重振動数532nmの範囲では、スペクトル吸収および/または発光は全く観測されず、化合物5のβ係数の同時測定を行いβ値を得ることができる。

【0060】
図16のグラフには、クロロホルム中における化合物5の超レイリー散乱(HRS)シグナルを示す。このグラフは、高調波強度への二次高調波信号強度の二次依存性を表し、横軸および縦軸は、それぞれ基本強度および二次高調波強度である。β値は、J.Phys.Rev.1987,A36,2210 (Kajzar, F.; Ledoux, I.; Zyss)に記載されている方法を参考にして計算した。

【0061】
なお、1014cm-3のユニット中の4種類の異なる数密度について示しており、曲線e、f、gおよびhの数密度は、それぞれ3.0、6.0、30および301である。

【0062】
この図16のグラフに示された結果に基づいて、化合物5の数密度と二次係数I(2ω)/I2 (ω)との関係を図17のグラフに示す。

【0063】
本発明の化合物5についてのβ値は、364×10-30esuと極めて大きい。なお、同様の条件下でのパラ-ニトロアニリンについてのβ値は23×10-30であることがわかった。

【0064】
図18のグラフには、C60のHRSシグナルを示す。グラフ中、横軸および縦軸は、それぞれ基本強度および二次高調波強度を表しており、2.2、4.4、22および44×1014cm-3の4種類の数密度について示している。

【0065】
また、293Kにおけるクロロホルム中のC60の数密度と二次係数との関係を図19のグラフに示す。C60のベーター値はゼロであり、これはC60の中心対称構造に起因するものである。

【0066】
ここで、従来の無機および有機非線形光学材料のχ/esuを、図20にまとめる。なお、図20中に略称で示した有機化合物は、下記化学式で表されるものである。

【0067】
【化9】
JP0003318604B2_000010t.gif【0068】これらの化合物のうち、尿素(urea)は従来の標準物質とされており、そのベーター値は0.5×10-30esuである。

【0069】
さらに、従来の他の非線形光学材料の典型例のベーター値を下記表1にまとめる。

【0070】
【表1】
JP0003318604B2_000011t.gif【0071】このように、従来の無機および有機材料の典型例のベーター値と比較しても、本発明のハイブリッド化合物のベーター値が極めて高いことがわかる。

【0072】
本発明のハイブリッドロッド化合物5の非線形光学特性は、非常に興味深いものである。適切なドナーと電荷移動錯体を形成することによって、C60の対称の中心がくずれて、顕著な二次光学非線型性の誘発すると推測されていた(例えば、J.Phys.Chem.1992,96,530(Wang,Y.;Cheng,L.-T.))。これに対して、本発明のロッドハイブリッド化合物5は、電荷錯体を形成せずに大きなβ値を示す。

【0073】
本発明のハイブリッドロッド化合物5の直接的な有用性は、対応するメタ-およびパラ-カルボランクラスターをオルトカルボランの代わりに用いて、対応するフラーレンカルボランリジッドロッド化合物を容易に合成することができ、さらなる研究に利用可能な同様の種類の化合物を得られることである。さらに、種々の共役架橋芳香族基(チオフェン、アニリン)によりC60とカルボラン、特にそのメタロカルボランアニオン錯体とをつないで、トリアードを形成することも可能である。

【0074】
本発明は、フラーレン-カルボラン(またはメタロカルボラン)ハイブリッドロッドの三次光学非線形材料にも適用することが考えられる。

【0075】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、大きな二次高調波発生(SHG)を示す非線形光学材料として好適な化合物が提供される。また本発明によれば、大きな二次高調波発生を示す非線形光学材料として好適な化合物の合成方法が提供される。

【0076】
本発明のハイブリッド化合物は、高いベーター値を有するのみならず安定性も高いので、空気中で通常の化合物と同様に扱うことができる。本発明は非線形光学材料として最適であり、波長変換素子、非線形材料および光ディスク等、多くの用途に好適に用いることができ、その工業的価値は絶大である。
図面
【図1】
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【図13】
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【図14】
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【図20】
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【図2】
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【図3】
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【図15】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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