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明細書 :Ti-Al系合金の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3054697号 (P3054697)
公開番号 特開2000-017360 (P2000-017360A)
登録日 平成12年4月14日(2000.4.14)
発行日 平成12年6月19日(2000.6.19)
公開日 平成12年1月18日(2000.1.18)
発明の名称または考案の名称 Ti-Al系合金の製造方法
国際特許分類 C22C 14/00      
C22C 11/00      
C22C 11/02      
C30B 11/00      
C30B 29/52      
FI C22C 14/00 Z
C22C 11/00
C22C 11/02
C30B 11/00
C30B 29/52
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願平10-184384 (P1998-184384)
出願日 平成10年6月30日(1998.6.30)
審査請求日 平成10年6月30日(1998.6.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012442
【氏名又は名称】京都大学長
発明者または考案者 【氏名】山口 正治
【氏名】乾 晴行
【氏名】デイビッド レイ ジョンソン
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】長者 義久
参考文献・文献 特開 平5-230568(JP,A)
特開 平8-283890(JP,A)
STRUCTURAL INTERMETALLICS 1997,pp.287-294(1997)
金属,Vol.1990,No.7,pp.34-40
材料,Vol.47,No.5,pp.540-541(1998)
調査した分野 C22C 14/00
C22C 1/00
C22C 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
Al:45.0~47.5at%を含み、さらにCr、Mo、W、V、Nb、Ta、MnおよびReから選ばれる1種または2種以上を合計で0.5 ~ 2.0at%、そしてB、C、SiおよびNから選ばれる1種または2種以上を合計で0.2 ~ 1.0at%、含有する、Ti溶湯を、10~80℃/cmの固液界面の温度勾配の下に、50~250 mm/hの凝固速度で一方向凝固させることを特徴とするTi-Al系合金の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主にTiAlおよびTiAl3 の金属間化合物からなるTi-Al系合金の製造方法に関する。このTi-Al系合金は、ジェットエンジンおよび陸上タービンのコンプレッサー並びにタービンのブレードおよびベーンの他、自動車エンジンの排気バルブおよびピストンや、ロケット、超音速航空機および宇宙航空機のエンジン並びに耐熱構造材、さらにはボイラーの耐熱管並びに耐熱構造材など、新しい軽量耐熱材料としての用途が期待される。

【0002】
【従来の技術】例えば、高圧タービンのブレードおよびベーンに供される超合金として、よく知られているNi基超合金には、一方向凝固技術による鋳造材料が用いられるのが、通例である。すなわち、一方向凝固技術は、図1に示すように、高周波コイル1にて加熱されたるつぼ2に、溶融金属3を装入し、該るつぼ2の下端を冷却水4にて強制的に冷却することによって、溶融金属3を一方向に凝固させる、手法である。なお、5は、溶融金属3の凝固に応じて高周波コイル1を移動するための駆動用ねじである。

【0003】
ここで、重要なことは、個々の柱状結晶粒を構成するNi合金相および金属間化合物であるNi3Al 相が共晶凝固して溶湯中から直接晶出すること、かつ両相が共に立方晶の構造であるから、<001>方向が凝固方向に配向して成長すること、である。この<001>方向は、耐クリープ性の高い方位であるため、Ni基超合金の一方向凝固材は、必然的に優れたクリープ強度を有することになる。

【0004】
このように、一方向凝固技術によって得られるNi基超合金は、とりわけ優れたクリープ強度を有することから、近年、この一方向凝固技術をTi-Al系合金についても適用することが検討されている。

【0005】
すなわち、Ti-Al系合金を通常の溶解鋳造凝固法により製造すると、得られる鋳片は、γ相およびα2 相からなるラメラ組織を有する結晶粒がランダムに配向した組織となる。このラメラ粒の機械的性質は、極めて異方性が強いため、ラメラ粒がランダムに配向されると、とくに常温延性に乏しいものとなる。

【0006】
一方、ラメラ組織の界面を引張り応力の加わる方向に揃えれば、少なくとも常温延性および常温から900 ℃程度までの温度範囲における降伏強さを両立できることが、予想される。従って、Ti-Al系合金を一方向凝固技術にて製造し、例えば図2に示すインゴットのように、ラメラ組織の界面を凝固方向に揃えることができれば、優れた常温延性に優れた高温強度特性を併せ持つTi-Al系合金の提供が実現するのである。

【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Ti-Al系合金に一方向凝固技術を単に適用すると、図3に示すインゴットのように、ラメラ粒が極端に粗大化するとともに、個々のラメラ粒のラメラ界面が凝固方向と垂直に配向する傾向が強くなり、図2に示した組織を得ることはできない。なお、図3に示した組織は、インゴットの凝固方向に応力が作用した場合に、極めて脆弱である。

【0008】
ここで、Ti-Al系合金の場合、その凝固過程において、最終的な(γ+α2 )の2相のラメラ組織が形成されるまでには、合金成分および凝固条件によって、1または2の包晶反応と、β→β+α→αおよびα→α+γなる固相反応と、が関与する。なお、β相はTiを主成分とする固溶体相、α相はα2 相の不規則相である。

【0009】
従って、一方向凝固過程において、上記の2反応を状態図に基づいて制御して、図2に示した一方向凝固組織を得る必要があり、この制御は極めて難しく、Ni基超合金における一方向凝固技術を単に模倣することでは、その実現は困難であった。すなわち、Ti-Al系合金を対象とした一方向凝固については、確立された技術がないのである。

【0010】
そこで、この発明は、Ti-Al系合金における一方向凝固技術を確立することによって、優れた常温延性および高温強度特性を併せ持つTi-Al系合金を提供しようとするするものである。

【0011】
【課題を解決するための手段】発明者らは、ラメラ粒の極端な粗大化を抑制し、個々のラメラ粒のラメラ組織の界面を凝固方向に揃えた配向を実現するための方途を鋭意検討したところ、成分組成並びに一方向凝固条件を規制することによって、所期した組織が得られることを見出し、ここに始めてTi-Al系合金の一方向凝固材の提供が可能となった。

【0012】

【0013】
すなわち、この発明は、Al:45.0~47.5at%を含み、さらにCr、Mo、W、V、Nb、Ta、MnおよびReから選ばれる1種または2種以上を合計で0.5 ~ 2.0at%、そしてB、C、SiおよびNから選ばれる1種または2種以上を合計で0.2 ~ 1.0at%、含有する、Ti溶湯を、10~80℃/cmの固液界面の温度勾配の下に、50~250 mm/hの凝固速度で一方向凝固させることを特徴とするTi-Al系合金の製造方法である。

【0014】
【発明の実施の形態】さて、Ti-Al系合金の一方向凝固において、まずα相を初晶として凝固が始まると、稠密六方構造であるα相の(0001)面が凝固方向に垂直に配向するため、α相とγ相との結晶方位関係に従って、γ相の{111}面が凝固方向に配向する結果、図3に示したような配向の組織となる。この問題を解消するには、β相が初晶として優勢となる成分組成を選択することが肝要であり、その成分組成について、次に詳しく述べる。

【0015】
ここで、図4に、Ti-(44~56at%)Al-2at%Mo合金について、Ti-Al-Mo3元状態図とScheilのモデルにより計算した、100 %凝固時の各構成相の体積率を示す。同図から、Moを2at%で添加する場合、つまり第3成分を添加する場合、β相の割合を少なくとも50 vol%確保するためには、Al濃度を47.5at%以下にする必要のあることがわかる。同様に、Moを添加しない場合を調査したところ、β相の割合を50 vol%以上にするためには、Al濃度は44at%以下にする必要のあることが判明した。一方、Al濃度が45.0at%未満になると、良好な機械的性質を得られないことも確認した。

【0016】
従って、機械的性質を犠牲にすることなしに、つまりAl濃度:45.0at%以上の下に、β相を少なくとも50 vol%確保するためには、第3成分を添加した上でAl濃度を47.5at%以下に規制する必要がある。

【0017】
さらに、第3成分には、β相を安定化すること、さらに当該第3元素を含む3元系のTi-Al2元系近傍の液相面の傾向を検討した結果、同様の作用効果を有する、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、MnおよびReから選ばれる1種または2種以上を、使用する。

【0018】
なお、その含有量は、いずれか1種または2種以上を合計で0.5 ~ 2.0at%とする。なぜなら、0.5 at%未満では、所期した効果が得られず、一方 2.0at%をこえると、B2相が出現し易くなる。このB2相は、体心立方構造をベースとする規則構造を持った金属間化合物相で、一般に室温付近では脆く、高温では容易に強度を失って簡単に変形する。従って、その出現によって室温延性の低下と共に、高温強度の低下が生じる。これら不利を回避するには、このB2相の体積率を1.0 ~1.5 vol%に抑制するのが有効であり、そのためには、添加成分を 2.0at%以下に制限する必要がある。

【0019】
以上で述べたところから、Tiに、Al:45.0~47.5at%およびCr、Mo、W、V、Nb、Ta、MnおよびReから選ばれる1種または2種以上を合計で0.5 ~ 2.0at%添加したものを、基本成分とした。

【0020】
また、Huntのモデルによれば、一般に一方向凝固時の凝固速度と固液界面の温度勾配との間には、図5に示す関係があり、凝固速度および固液界面の温度勾配の値によって、等軸晶、柱状晶または両者の混合状態での凝固が生じる。ここに、Ti-Al系状態図によれば、α相に対応する図5に示した曲線は、β相に対応する同曲線より、図5において左上に位置するのが普通であるが、α相に対して優先的に核生成サイトとなる物質が存在すれば、図6に示すように、α相に対応する同曲線をβ相に対応する同曲線より右側にシフトさせることが可能である。この核生成サイトとなる物質としては、Tiの硼化物、炭化物、窒化物並びに珪化物がある。

【0021】
そして、図6に斜線で示す領域に適合する条件にて一方向凝固すれば、図7に示すような、凝固過程が実現する。すなわち、β相は体心立方晶であるから<001>方向が凝固方向に配向し、このβ相デンドライト間でα相が微細なTiの硼化物、炭化物、窒化物または珪化物を核として、次々と晶出する。晶出するα相は、相互に作用するとともに、β相デンドライトにも成長を阻害されるため、粗大化することなく(0001)面を凝固方向と平行に保ちつつ成長する。一方、β相は、いずれβ→α→(α+γ)の反応を経て、ラメラ組織を形成するが、このβ→α反応が周囲に存在するα相の方位による影響を受け、やはり(0001)面が凝固方向と平行に配向する。さらに、β相デンドライトも、Tiの硼化物、炭化物、窒化物並びに珪化物により、粗大化が抑制されるため、結果として、図2に示したような、所期する一方向凝固組織が得られる。ただし、図7に示した凝固過程が実現する理由の詳細については、未だ不明である。

【0022】
従って、この発明では、Tiの硼化物、炭化物、窒化物または珪化物の存在が必須であるところから、上記した基本成分に、B、C、SiおよびNから選ばれる1種または2種以上を添加する必要がある。その添加量は、いずれか1種または2種以上を合計で0.2 ~ 1.0at%とする。なぜなら、添加量が0.2 at%未満では、上記作用を期待することができず、一方 1.0at%をこえると、これら添加元素とTiとからなる粗い析出物が形成され、常温延性を阻害するためである。

【0023】
ここで、上記の図6に斜線で示した領域に適合する条件を具体的に示すと、固液界面の温度勾配は10~80℃/cm、および凝固速度は50~250 mm/hの範囲となる。ちなみに、この温度勾配は、カルシアおよびイットリア等から成る、るつぼを高周波熱源または抵抗加熱熱源により加熱すると共に、るつぼ底部をチル板にて冷却する、通常の一方向凝固炉において実現することができる。従って、この発明に従う一方向凝固材では、特殊な一方向凝固炉を必要としない利点がある。

【0024】
【実施例】表1に示す成分組成のTi溶湯を、図8に示す一方向凝固炉にて、固液界面の温度勾配:10~80℃/cmの下に、表1に示す種々の凝固速度で凝固させて、直径20mmおよび長さ120 mmのインゴットを製造したところ、表1に併記する組織が得られた。さらに、かくして得られたインゴットの数例の機械的性質について調査した結果を、表2に示す。

【0025】
なお、図8において、符号6は水冷チル板、7はグラファイトヒーター、8はCaO るつぼおよび9はMo製の注湯口である。

【0026】
ここで、組織は、インゴットの縦断面および数箇所の横断面をそれぞれ研磨し、光学顕微鏡並びに走査型電子顕微鏡によって、調査した。

【0027】
また、機械的性質は、インゴットから採取した5×2×1(mm)の試験片を用いて、常温降伏応力および引張延性を評価し、さらに2.5 ×2.5 ×5(mm)の圧縮試験片を用いて、25~1000℃の温度範囲にて圧縮試験を行い、高温強度を評価した。

【0028】
【表1】
JP0003054697B2_000002t.gif【0029】
【表2】
JP0003054697B2_000003t.gif【0030】ここで、表1におけるNo. 15の組成、つまりAl:46.5at%、Mo:1.5 at%およびB:0.7 at%を含むTi溶湯を100 mm/hの凝固速度で一方向凝固させて得られた、ラメラ組織を、図9に示す。同図に示されたラメラ粒のラメラ界面は、観察面とほぼ平行であるために、ラメラ間隔が広く凝固方向に垂直に見えるが、実際は凝固方向に沿って配向している。

【0031】
【発明の効果】この発明によって、Ti-Al系合金における一方向凝固技術が始めて確立されるから、優れた常温延性および高温強度特性を併せ持つことが予想されていた、Ti-Al系合金の一方向凝固材を現実のものとして提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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