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明細書 :チョッパ回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5023338号 (P5023338)
登録日 平成24年6月29日(2012.6.29)
発行日 平成24年9月12日(2012.9.12)
発明の名称または考案の名称 チョッパ回路
国際特許分類 H02M   3/155       (2006.01)
FI H02M 3/155 H
H02M 3/155 F
請求項の数または発明の数 18
全頁数 37
出願番号 特願2007-508188 (P2007-508188)
出願日 平成18年3月15日(2006.3.15)
国際出願番号 PCT/JP2006/305150
国際公開番号 WO2006/098376
国際公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
優先権出願番号 2005075269
優先日 平成17年3月16日(2005.3.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年2月27日(2009.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
発明者または考案者 【氏名】河村 篤男
【氏名】弦田 幸憲
【氏名】伊藤 嘉啓
個別代理人の代理人 【識別番号】100101915、【弁理士】、【氏名又は名称】塩野入 章夫
審査官 【審査官】三島木 英宏
参考文献・文献 特開2003-033013(JP,A)
特開平07-095766(JP,A)
特開2002-034238(JP,A)
弦田幸憲 外2名,高効率大電力チョッパ回路QRAS,平成16年電気学会産業応用部門大会講演論文集,日本,電気学会産業応用部門大会委員会,2004年 9月14日,I-295頁-I-300頁
調査した分野 H02M 3/155
特許請求の範囲 【請求項1】
一端を直流電源の高電位側端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、
一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、
前記主スイッチの両極間に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、
前記スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した逆阻止特性を有する補助スイッチとを備え、
前記補助スイッチは、スナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とする、チョッパ回路。
【請求項2】
一端を出力平滑コンデンサに接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、
一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の他端に接続し、他方の極を直流電源の高電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記主スイッチと前記主リアクトルとの接続点と、直流電源の低電位側端子との間を接続する出力ダイオードと、
前記主スイッチの両極間に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、
前記スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した逆阻止特性を有する補助スイッチとを備え、
前記補助スイッチは、スナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とする、チョッパ回路
【請求項3】
一端を直流電源の低電位側端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、
一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の他端に接続し、他方の極を直流電源の高電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記2つの主リアクトルの直列接続体間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、
前記主スイッチの両極間に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、
前記スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した逆阻止特性を有する補助スイッチとを備え、
前記補助スイッチは、スナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とする、チョッパ回路
【請求項4】
第1の主スイッチの一方の極を直流電源の高電位側端子に接続し、第2の主スイッチの一方の極を直流電源の低電位側圧端子に接続し、両主スイッチの他方の極を接続してなる2つの主スイッチの直列接続体と、
前記2つの主スイッチの直列接続体間を接続するインバータと、
第1の主スイッチおよび第2の主スイッチの両極間に接続した、直流電源の高電圧から低電圧に向かって順方向に接続する第1のスナバダイオードと第1のスナバコンデンサの直列接続体および第2のスナバダイオードと第2のスナバコンデンサの直列接続体と、
一端を第1の主スイッチと第2の主スイッチの接続点に接続し、他端を出力コンデンサの一端に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、
第1のスナバダイオードと第1のスナバコンデンサとの接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間を接続した逆阻止特性を有する第1の補助スイッチと、
第2のスナバダイオードと第2のスナバコンデンサとの接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間を接続した逆阻止特性を有する第2の補助スイッチとを備え、
前記第1の補助スイッチは、第1のスナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより第1の主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、蓄積電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して、前記直流電源に回生して、第1の主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、インバータの過電圧を防止し、
前記第2の補助スイッチは、第2のスナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより第2の主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、蓄積電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、第2の主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、インバータの過電圧を防止することを特徴とする、チョッパ回路
【請求項5】
前記主スイッチは、ターンオン時に、当該スナバコンデンサと直流電源側に接続した主リアクトルとの回生共振によって、スナバコンデンサに蓄積された電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して、前記直流電源に回生することを特徴とする、請求項1乃至4に記載のチョッパ回路。
【請求項6】
前記補助スイッチをオン動作させた後に主スイッチをオン動作させることによって、主スイッチを零電圧かつ零電流の状態からオン動作させることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のチョッパ回路。
【請求項7】
前記主リアクトルは、相互インダクタンスを持つ結合リアクトルにより一体に構成することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のチョッパ回路。
【請求項8】
前記スナバコンデンサと出力コンデンサとの間に出力クランプダイオードを備えることを特徴とする、請求項に記載のチョッパ回路。
【請求項9】
一端を直流電源の高電位側端子に接続した主リアクトルと、
一方の極を前記主リアクトルの他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、
前記主スイッチの両極間に接続したスナバコンデンサ、
前記スナバコンデンサの高電位側と直流電源の高電位側端子との間に接続した回生リアクトルと逆阻止特性を有する補助スイッチとの直列接続体を備え、
前記補助スイッチは、スナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記回生リアクトルに、主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とするチョッパ回路。
【請求項10】
一端を直流電源の高電位側端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、
一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、
前記主スイッチと前記主リアクトルの直列接続体の他端との接続点と、前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に直接に接続した逆阻止特性を有する補助スイッチとを備え、
前記補助スイッチは、前記主スイッチの浮遊容量の電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とするチョッパ回路。
【請求項11】
一端を直流電源の高電位側端子に接続した主リアクトルと、
一方の極を前記主リアクトルの他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、
前記主スイッチと前記主リアクトルの他端との接続点と、直流電源の高電位側端子との間に接続した回生リアクトルと逆阻止特性を有する補助スイッチとの直列接続体を備え、
前記補助スイッチは、前記主スイッチの浮遊容量の電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記回生リアクトルに、主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とするチョッパ回路。
【請求項12】
一端を直流電源の高電位側端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、
一方の極を前記主リアクトルの他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、
前記主スイッチの両極間を直接に接続するスナバコンデンサと、
前記スナバコンデンサの高電位側と前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した逆阻止特性を有する補助スイッチとを備え、
前記補助スイッチは、スナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とするチョッパ回路。
【請求項13】
前記スナバコンデンサの低電位側と前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に、前記補助スイッチに対して並列接続したダイオードを備え、
前記ダイオードは、前記補助スイッチのオフ時において前記直流電源側の主リアクトルの電流を導通させ、前記補助スイッチを過電圧から保護することを特徴とする、請求項12に記載のチョッパ回路
【請求項14】
前記補助スイッチのゲート制御によって前記主スイッチによるハードスイッチングと前記補助スイッチによるソフトスイッチングを切り替え、
前記ハードスイッチングは、前記補助スイッチをゲートブロックして一時停止させ、前記主スイッチのみによりスイッチングを行い、
前記ソフトスイッチングは、前記補助スイッチを動作させてスイッチングを行うことを特徴とする請求項9乃至12の何れかに記載のチョッパ回路。
【請求項15】
前記主リアクトルは、直流電源の高電位側又は低電位側に設けることを特徴とする請求項9乃至14の何れかに記載のチョッパ回路。
【請求項16】
一端を直流電源の低電位側端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、
一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の他端に直接に接続し、他方の極を前記直流電源の高電位側端子に直接に接続した主スイッチと、
前記主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、
前記主スイッチの両極間に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、
前記スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、前記2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間を直接に接続する逆阻止特性を有する補助スイッチとを備え、
前記補助スイッチは、スナバコンデンサの電圧を零電圧とすることにより主スイッチのターオン時の電圧を零電圧とし、
ターンオン時に、前記出力ダイオードに蓄積される電荷を、前記2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、当該主リアクトルの主電流と逆方向に通流して前記直流電源に回生し、主スイッチのターオン時の電流を零電流とし、前記出力ダイオードの過電圧を防止することを特徴とするチョッパ回路。
【請求項17】
主スイッチの両極間にスナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体を接続し、主スイッチの一方の極を2つの主リアクトルの直列接続体もしくは等価的に2つのインダクタンスを直列接続した1つの主リアクトルの一端および出力ダイオードの一方の極に接続し、主スイッチの他方の極を直流電源の一方の電圧端子に直接接続し、前記出力ダイオードの他方の極に負荷が接続された構成であって、
前記スナバダイオードスナバコンデンサとの接続点と前記主リアクトルの直列接続体の接続点もしくは2つのインダクタンスの接続点との間に接続した補助スイッチとを備え、
主スイッチのターンオン前に、補助スイッチを主リアクトルによりソフトスイッチングでターンオンさせ、蓄積電荷を消してソフトスイッチングで前記出力ダイオードの逆阻止特性を回復させた後の前記スナバコンデンサと主リアクトルの共振動作により主スイッチをソフトスイッチングでターンオンし、
主スイッチは前記スナバコンデンサによりソフトスイッチングでターンオフさせ、
補助スイッチは零電流でソフトスイッチングでターンオフさせることを特徴とするチョッパ回路。
【請求項18】
前記補助スイッチは、逆並列ダイオード付きIGBTとダイオードの直列接続で構成することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のチョッパ回路。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、直流変換を行う電源を構成するチョッパ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車等の電気自動車駆動用では100kWの出力レンジで動作する高効率で大電力のチョッパ回路が用いられる。従来、この電気自動車の分野では、ハードスイッチングによる変換器が使用されている。
【0003】
燃料電池自動車に限らず、半導体電力変換装置を用いる分野では低損失が求められるため、ソフトスイッチングによるチョッパ回路が求められている。
【0004】
従来、大電力用チョッパ回路としては、図30に示すようなCブリッジチョッパ回路が知られている。図示するCブリッジチョッパ回路は、2つのスイッチと1つのコンデンサを用いた構成であり、ロスレススナバ回路による大電流遮断が可能で、無損失である点で大電流用途に適している。
【0005】
しかしながら、このCブリッジチョッパ回路は、主スイッチとダイオードが主回路に直列接続されているため、全体の電力損失が大きいという課題があり、また、主スイッチS1とS2を同時ターンオンすると、出力ダイオードD3の逆回復時のリカバリ電流により発生する過電圧と、スナバコンデンサの充電電圧が重畳することで、大きな過電圧が発生し、出力ダイオードD3が破損するおそれがあるという課題がある。
【0006】
そこで、本出願の発明者らは、準共振形回生アクティブスナバ(Quasi-resonant Regenerating Active Snubber:QRAS)方式のチョッパ回路を提案している(例えば、非特許文献1参照)。図31はこのQRASチョッパ回路の一構成例である。このQRASチョッパ回路では、主スイッチS1と補助スイッチS2を備え、主スイッチS1にリアクトルSL1を直列接続する構成によって、主スイッチングS1に流れる電流を遅延させて、主スイッチS1のターンオン時に電流が零となるようにしている(図32)。

【非特許文献1】電気学会産業応用部門大会講演論文集 弦田,神頭、河村「高効率大電力チョッパ回路QRAS」2004-6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したQRASチョッパ回路では、主スイッチS1にリアクトルSL1を接続することでソフトスイッチングを実現しているが、リアクトルSL1に電流が流れることによる内部抵抗で発生する熱損失によって変換効率が低下するという問題がある。
【0008】
また、QRASチョッパ回路の主スイッチS1のターンオンおよびターンオフ時に、主スイッチS1も過電流過電圧が発生するという問題がある。この主スイッチのターンオフ過電圧は、スナバコンデンサのクランプ電圧が(図32中の49.960~49.965secの間の電圧特性(Vで示す)を参照)主スイッチS1に過電圧として印加される。また主スイッチS1のターンオン時に、出力ダイオードD5の逆回復により主スイッチS1に過大な電流が流れる(図32中の49.940secの電流特性(Iで示す)を参照)。
【0009】
また、出力ダイオードD5の逆回復によって、出力ダイオードD5に大きな逆スパイク電圧が発生し(図33中の49.9400secの電圧特性(Vで示す)を参照)、出力ダイオード自体が破損するおそれがあるという問題もある。なお、図32,33はシミュレーション結果であり、図32中の111は主スイッチS1の電圧を示し、211は主スイッチS1の電流を示し、図33中の113は出力ダイオードD5の電圧を示している。
【0010】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、従来ソフトスイッチングのために備えるリアクトルで発生していた熱損失を無くし、変換効率を向上させることを目的とする。
【0011】
また、本発明は主スイッチのターンオン時における過電流過電圧を防ぐことを目的とする。
【0012】
また、本発明は出力ダイオードD5の逆回復による過電圧を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルと、一方の極を主リアクトルの直列接続体の一端に接続し、他方の極を直流電源の一方の電圧端子に直接に接続した主スイッチと、この主スイッチの両極間に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、このスナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した補助スイッチとを備え、スナバ補助ZVZCT(Snubber-Assisted Zero Voltage and Zero Current Transition chopper)チョッパ回路を構成する。
【0014】
主スイッチのターンオン時における電流を零とするために、従来はリアクトルを用いた構成とするのに対して、本発明は、補助スイッチを備えた構成とし、この補助スイッチをオンさせることによってスナバコンデンサの電圧を零電圧として、主スイッチのターンオン時の電圧を零電圧とし、また、補助スイッチを介してスナバコンデンサと主リアクトルとの回生共振を生成し、この零電圧となる時点で、主スイッチをオンさせることで、この回生共振による電流を主スイッチの主電流を打ち消す方向に通流させることで、ターンオン時の主スイッチの電流及び電圧を零とする。
【0015】
これによって、従来のチョッパ回路のようにリアクトルを用いることなく、主スイッチのターンオン時において零電圧で、かつ零電流でソフトスイッチングを行って、熱損失を無くしてチョッパ回路の変換効率を向上させることができ、また、過電流過電圧を防ぐことができる。
【0016】
また、補助スイッチにより、出力ダイオードに蓄積された電荷を直流電源に回生させることで、出力ダイオードの逆回復による過電圧を防ぐことができる。
【0017】
本発明は、降圧型、昇圧型、昇降圧型、CUK型、SEPIC型、ZETA型等の各種チョッパ回路に適用することができる。
【0018】
本発明を昇圧型チョッパ回路に適用した場合の、より詳細な形態は、一端を直流電源の高電位側端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、一方の極を主リアクトルの直列接続体の他端に接続し、他方の極を直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、主スイッチの両極間に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した補助スイッチとを備える構成である。

【0019】
本発明の補助スイッチは、ターンオン時に、出力ダイオードに蓄積される電荷を、2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに対して、主リアクトルの主電流と逆方向に通流して、直流電源に回生する。これによって、出力ダイオードの出力ダイオードの逆回復による過電圧を防ぐ他に、主リアクトルに通流させる方向を主リアクトルの主電流と逆方向とすることによって、主リアクトルで発生する熱損失を低減させることができる。
【0020】
本発明の主スイッチは、ターンオン時に、スナバコンデンサと直流電源側に接続した主リアクトルとの回生共振によって、スナバコンデンサに蓄積された電荷を、2つの主リアクトルの内の直流電源側の主リアクトルに、主リアクトルの主電流と逆方向に通流して、直流電源に回生する。この主リアクトルに通流させる回生電流を主リアクトルの主電流と逆方向とすることによって、主リアクトルで発生する熱損失を低減させることができる。
【0021】
主スイッチのターンオン時において、零電流かつ零電圧によるソフトスイッチングを行わせるために、補助スイッチをオン動作させた後に主スイッチをオン動作させる。これによって、主スイッチを零電圧かつ零電流の状態からオン動作させることができる。
本発明のチョッパ回路の他の一形態として、主リアクトルは、相互インダクタンスを持つ結合リアクトルにより一体に構成することができる。
【0022】
本発明のチョッパ回路の他の一形態は、スナバコンデンサと出力コンデンサとの間に出力クランプダイオードを備える。この構成によって、ハードスイッチングとソフトスイッチングの両動作を併用させることができる。
【0023】
本発明のチョッパ回路の他の一形態は、一端を直流電源の一方の端子に接続した主リアクトルと、一方の極を主リアクトルの他端に接続し、他方の極を直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、主スイッチの両極間に接続したコンデンサ、コンデンサの高電位側と直流電源の高電位側端子との間に接続した回生リアクトルと補助スイッチとの直列接続体を備える構成とする。この形態によれば、スナバダイオードとスナバコンデンサを不要とすることができ、主スイッチの両極間に接続したコンデンサは小容量で済むため、電圧が残留するモードでも動作させることができる。

【0024】
本発明のチョッパ回路の他の一形態は、一端を直流電源の一方の端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、一方の極を主リアクトルの直列接続体の他端に接続し、他方の極を直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、主スイッチと主リアクトルの直列接続体の他端との接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した補助スイッチとを備える構成とする。

【0025】
また、本発明のチョッパ回路の他の一形態は、一端を直流電源の一方の端子に接続した主リアクトルと、一方の極を前記主リアクトルの他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、主スイッチと主リアクトルの直列接続体の他端との接続点と、直流電源の高電位側端子との間に接続した回生リアクトルと補助スイッチとの直列接続体を備える構成とする。

【0026】
上記2つの形態は、主スイッチの浮遊容量を用いた構成であり2つのスイッチと主リアクトルの3要素のみでソフトスイッチングが可能とする。
【0027】
本発明のチョッパ回路の他の一形態は、一端を直流電源の一方の端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、一方の極を前記主リアクトルの他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、主スイッチの両極間に接続したコンデンサ、コンデンサの高電位側と2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した補助スイッチとを備える構成とする。この形態によれば、スナバダイオードを削除することができる。

【0028】
また、本発明のチョッパ回路の他の一形態は、補助スイッチのゲート制御によって、主スイッチをハードスイッチングとソフトスイッチングを切り替えるものである。
【0029】
本発明のチョッパ回路の他の一形態は、一端を直流電源の一方の端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の他端に接続し、他方の極を前記直流電源の低電位側端子に直接に接続した主スイッチと、主スイッチの両極間に接続した、出力ダイオードと出力平滑コンデンサとの直列接続体と、主スイッチの両極間に接続したスナバコンデンサと、スナバコンデンサの高電位との接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した補助スイッチとを備える構成とする。この形態によれば、スナバダイオードを削除することができる。

【0030】
本発明のチョッパ回路の形態では、主リアクトルは、直流電源の高電位側又は低電位側に設けることができる。
【0031】
また、本発明のチョッパ回路の昇降圧型の形態では、一方の主スイッチの一方の極を直流電源の高電位側端子に接続し、他方の主スイッチの一方の極を直流電源の低電位側端子に接続し、両主スイッチの他方の極を接続してなる2つの主スイッチの直列接続体と、各主スイッチの両極間に直流電源の高電位から低電位に向かって順方向に接続するスナバダイオードとスナバコンデンサの2つの直列接続体と、一端を前記2つの主スイッチの接続点に接続し、他端を直流電源の端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルの直列接続体と、スナバダイオードとスナバコンデンサとの2つの接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間をそれぞれに接続した2つの補助スイッチとを備える。
【0032】
また、本発明のチョッパ回路の他の形態では、主スイッチの両極間にスナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体を接続し、主スイッチの一方の極を2つの主リアクトルの直列接続体もしくは等価的に2つのインダクタンスを直列接続した1つの主リアクトルの一端およびダイオードの一方の極に接続し、主スイッチの他方の極を直流電源の一方の電圧端子に直接接続し、前記出力ダイオードの他方の極に負荷が接続された構成であって、前記スナバダイオードをスナバコンデンサとの接続点と前記主リアクトルの直列接続体の接続点もしくは2つのインダクタンスの接続点との間に接続した補助スイッチとを備え、主スイッチのターンオン前に、補助スイッチを主リアクトルによりソフトスイッチングでターンオンさせ、蓄積電荷を消してソフトスイッチングで前記ダイオードの逆阻止特性を回復させた後の前記スナバコンデンサと主リアクトルの共振動作により主スイッチをソフトスイッチングでターンオンし、主スイッチは前記スナバコンデンサによりソフトスイッチングでターンオフさせ、補助スイッチは零電流でソフトスイッチングでターンオフさせる構成とする。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、補助スイッチをオンさせることによって、スナバコンデンサの電圧を零電圧として主スイッチのターンオン時の電圧を零電圧とし、また、この零電圧となる時点で、補助スイッチをオンさせることで、補助スイッチを介してスナバコンデンサと主リアクトルとの回生共振を生成させ、この回生共振による電流を主スイッチの主電流を打ち消す方向に通流させることで、主スイッチを零電圧、零電流の状態でターンオンさせることができる。
【0034】
これによって、従来のチョッパ回路のようにリアクトルを用いることなく、主スイッチのターンオン時において零電圧で、かつ零電流でソフトスイッチングを行って、熱損失を無くしてチョッパ回路の変換効率を向上させることができ、また、過電流過電圧を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明によれば、補助スイッチにより、出力ダイオードに蓄積された電荷を直流電源に回生させることで、出力ダイオードの逆回復による過電圧を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のチョッパ回路の昇圧型の構成例を説明するための回路図である。
【図2】本発明のチョッパ回路における出力ダイオードD5の蓄積電荷の消滅を説明するための図である。
【図3】本発明のチョッパ回路におけるソフトスイッチング動作を説明するための図である。
【図4】本発明のチョッパ回路の主スイッチの電圧電流を示す図である。
【図5】本発明のチョッパ回路の補助スイッチの電圧電流を示す図である。
【図6】本発明のチョッパ回路の出力ダイオードの電圧電流を示す図である。
【図7】本発明のチョッパ回路の動作例を説明するための動作図である。
【図8】本発明のチョッパ回路の動作例を説明するための各部の基本動作波形図である。
【図9】本発明の第2の形態例を説明するための回路図である。
【図10】本発明の第3の形態例を説明するための回路図である。
【図11】本発明の第4の形態例を説明するための回路図である。
【図12】本発明の第5の形態例を説明するための回路図である。
【図13】本発明の結合リアクトルを用いた形態での主スイッチの電圧電流特性を示す図である。
【図14】本発明の結合リアクトルを用いた形態での補助スイッチの電圧電流特性を示す図である。
【図15】本発明の結合リアクトルを用いた形態での出力ダイオードの電圧電流特性を示す図である。
【図16】本発明の結合リアクトルを用いた形態での全体波形を示す図である。
【図17】本発明の第6の形態例を説明するための回路図である。
【図18】本発明の第6の形態例のハードスイッチング動作波形を示す図である。
【図19】本発明の第6の形態例のソフトスイッチング動作波形を示す図である。
【図20】本発明のチョッパ回路を各タイプに適用した回路例を示す図である。
【図21】本発明のチョッパ回路を昇降圧型に適用した回路例を示す図である。
【図22】本発明の第7の形態例を説明するための回路図である。
【図23】本発明の第8の形態例を説明するための回路図である。
【図24】本発明の第9の形態例を説明するための回路図である。
【図25】本発明の第10の形態例を説明するための回路図である。
【図26】本発明の第11の形態例を説明するための回路図である。
【図27】本発明の第12の形態例を説明するための回路図である。
【図28】本発明の第13の形態例を説明するための回路図である。
【図29】本発明の第14の形態例を説明するための回路図である。
【図30】従来のCブリッジチョッパ回路を説明するための回路図である。
【図31】QRASチョッパ回路を説明するための回路図である。
【図32】QRASチョッパ回路の主スイッチの電圧電流を説明するための回路図である。
【図33】QRASチョッパ回路の出力ダイオードの電圧を説明するための回路図である。
【符号の説明】
【0037】
E1…直流電源
S1…主スイッチ
S2…補助スイッチ
C1…スナバコンデンサ
D1…スナバダイオード
L1,L2…主リアクトル
D5…出力ダイオード
C0…平滑出力コンデンサ
101…電圧(主スイッチS1
102…電圧(補助スイッチS2
103…電圧(出力ダイオードD5
201…電流(主スイッチS1
202…電流(補助スイッチS2
203…電流(出力ダイオードD5
111…電圧(主スイッチS1
211…電流(主スイッチS1
213…電圧(出力ダイオードD5
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
以下本発明のチョッパ回路の昇圧型の構成例について、昇圧型チョッパ回路を例として図1~図20を用いて説明する。
【0040】
図1は本発明のスナバ補助ZVZCT(Snubber-Assisted Zero Voltage and Zero Current Transition chopper)チョッパ回路の昇圧型の構成例を説明するための回路図である。図1の構成例では、主スイッチS1と補助スイッチS2と、主リアクトルL1,L2と、スナバダイオードD1及びスナバコンデンサC1と、出力ダイオードD3及び出力平滑コンデンサC0とを備える。
【0041】
主リアクトルL1,L2は2分割したリアクトルを直列接続したものであるが、等価的に1つのリアクトルを構成し、一端を直流電源E1の高電位側端子に接続している。主スイッチS1は、一方の極を主リアクトルL1,L2の直列接続体の他端に接続し、他方の極を直流電源E1低電位側端子に直接に接続する。主スイッチS1の両極間は、出力ダイオードD5と出力平滑コンデンサC0との直列接続体を並列に接続し、出力平滑コンデンサC0には負荷が並列に接続される。また、主スイッチS1の両極間にはスナバダイオードD1とスナバコンデンサC1の直列接続体を接続している。補助スイッチS2は、スナバダイオードD1とスナバコンデンサC1との接続点と、2つの主リアクトルL1とL2の直列接続体の接続点との間に接続する。

【0042】
なお、このチョッパ回路の構成において、前記したQRASチョッパ回路とは、ダイオードD3,D4を削除した点、補助スイッチS2は逆阻止型のIGBTである点、リアクトルSL1を削除した点、主スイッチのターンオン時において零電流のみではなく、零電流でかつ零電圧によりスイッチングを行う点で相違している。補助スイッチS2として逆阻止型のIGBTを用いることで、従来必要であった回生ダイオードD3を削除することができる。
【0043】
また、このチョッパ回路の補助スイッチS2は、ターンオフ動作が零電流スイッチングとなるため、スイッチング手段S1と補助スイッチS2の共通スナバ保護機能を持たせるためのダイオードD4を削除することができる。
【0044】
本発明のチョッパ回路は、補助スイッチを介して主リアクトルの一部に出力ダイオードの蓄積電荷を通流させることで消滅させ、これにより逆回復電流を抑制することができる。
【0045】
図2は、図1のチョッパ回路における出力ダイオードD5の蓄積電荷の消滅を説明するための図である。図2において、補助スイッチS2のターンオン時において、出力ダイオードD5に蓄積していた電荷による電流IRは、主リアクトルL2を主リアクトルの主電流の方向とは逆方向に流れる。したがって、電流IRは主リアクトルL2の通電電流を減少させることになる。そのため、この主リアクトルL2で発生する有効電力分ΔPR=IR2・R2は、主リアクトルL2の抵抗分R2による損失分を減少させるものとして働く。なお、主スイッチS1をオンとする前に補助スイッチS2をオンとすることで、出力ダイオードD5に蓄積された電荷を入力側に回生する。
【0046】
したがって、本発明のチョッパ回路によれば、出力ダイオードD5の蓄積電荷が消滅する際の電流IRは主リアクトルの損失を減らす方向となり、チョッパ回路の効率を高める方向に作用する。
【0047】
従来のQRASチョッパ回路では、リアクトルL2が大きいため、出力ダイオードD5の蓄積電荷を消滅することができず、出力ダイオードのターンオフ時に、蓄積電荷による大きな逆回復サージ電圧が発生する。一方、本発明のチョッパ回路では、効率を高める方向に作用する蓄積電荷消滅電流が流れるため逆回復電流抑制回路とし、出力ダイオードによる大きな逆回復サージ電圧は発生しない。
【0048】
また、本発明のチョッパ回路は、回生共振現象を利用することで零電圧零電流の状態を作り出してターンオンさせることでスイッチング損失を低減することができる。
【0049】
図3は、図1のチョッパ回路におけるソフトスイッチング動作を説明するための図である。従来のQRASチョッパ回路では、主スイッチS1のターンオン時に電流がゆっくり立ち上がるように、リアクトルSL1を用いている。これに対して、本発明のチョッパ回路は、補助スイッチS2によって回生パスを形成することによって、このリアクトルSL1を削除している。この回生パスは、スナバコンデンサC1の回生共振現象を利用するものであり、これによって主スイッチS1に零電圧零電流の状態を作り出す。
【0050】
これによって、従来ターンオン時に発生していた電源電圧を大幅に越えるスナバコンデンサのクランプ電圧を電源電圧までの低い電圧に抑制することができる。そのため、スナバコンデンサの容量を主スイッチのターンオン時間に合わせて小さく選択することができ、スナバ回生電力自体を小さくすることができ、チョッパ回路全体の効率を向上させることができる。
【0051】
本発明のチョッパ回路では、主スイッチS1のターンオフをソフトスイッチング化するためにスナバコンデンサC1を設けているが、このスナバコンデンサC1に蓄積されたエネルギーを主スイッチS1のターンオン時に、補助スイッチS2及び入力側を通って、主スイッチS1に接続される逆並列ダイオードに流れることで主スイッチS1に流れ込む電流を零とし、さらにスナバコンデンサC1の放電によって主スイッチS1の両端にかかる電圧を零とする。
【0052】
また、本発明のチョッパ回路では、回生電流Isは、主リアクトルL2の通電電流を減少させる方向で回生するため、回生作用時に発生する有効電力分ΔPs=Is2・R2は、主リアクトルL2の損失を減らす方向になり、チョッパ回路の効率を高める方向に作用する。なお、R2は主リアクトルL2の内部抵抗である。
【0053】
上記したように、本発明のチョッパ回路は、出力ダイオードの蓄積電荷を消滅させる逆回復電流抑制回路として作用する他、回生共振を用いて回生リアクトルを不要とするソフトスイッチングとして作用する。
【0054】
また、本発明のチョッパ回路は、主リアクトルを分割した構成とすることで、回生リアクトルを不要とする他、出力ダイオードやスナバコンデンサの蓄積されるエネルギーを直接に電源側に回生するのではなく、主リアクトルの主電流を打ち消す方向で流すことで、主リアクトルでの電力損失を低減させることができる。
【0055】
本発明のチョッパ回路は、スナバコンデンサのエネルギーを、補助的な回生コンデンサを用いることなく、直接に主リアクトル移行させることができる。例えば、配線のリアクトルの影響でスナバコンデンサの充電電圧が出力電圧よりも高く充電された場合でも、入力電源方向へは主リアクトルL2に回生エネルギーを移行し、また、出力方向への回生エネルギーは、主リアクトルL1にそれぞれ移行させて回生させることができる。そのため、主リアクトルと別にリアクトルを用いて主回路以外の補助回路パスを介して回生する方式よりも高い効率とすることができる。
【0056】
なお、図4は主スイッチS1の電圧電流を示し、図5は補助スイッチS2の電圧電流を示し、図6は出力ダイオードD5の電圧を示している。
【0057】
図4に示す主スイッチS1の電圧電流特性では、電圧101は49.939secで電圧降下を開始した後49.941secで零電圧となる。一方、電流201は49.941secまでは零電流であるため主スイッチS1のターンオン時には零電圧零電流が実現される。
【0058】
図5に示す補助スイッチS2の電圧電流特性では、電圧102は、主スイッチS1がオンとなる前の時点でオンとなり、電流202は49.940secを挟んで増加し減少する。なお、ターンオフ時(図5中の49.960sec付近)において、電圧102にピークが見られるが、このピークはシミュレーション上発生しているが、実測では発生しないことが確認されており、問題ない。
【0059】
図6に示す出力ダイオードD5の電圧特性では、電圧103は、従来、主スイッチS1のターンオン時に発生していた逆回復電流によるピーク電圧が解消されている。
【0060】
次に、図7,図8を用いて本発明のチョッパ回路の動作例について説明する。図7は動作図であり、図8は各部の基本動作波形図である。
【0061】
モード1(図7のMODE1)では、-t2の時点で補助スイッチS2がオンし、主スイッチS1がオフして、出力ダイオードD5のキャリア消滅のモードが始まる。この瞬間、補助スイッチS2は電流零からのオンとなり、ソフトスイッチングでターンオンする。この間、スナバコンデンサC1の電圧は放電せずほぼ一定電圧を維持する。補助スイッチS2の電流が増加し、ほぼ負荷電流に達した時点から出力ダイオードD5のキャリアが消滅し、逆回復してオフ状態となることで、このモードは終了する。
【0062】
モード2(図7のMODE2)では、-t1の時点において、出力ダイオードD5がオフ、スナバコンデンサC1の電圧Vc1は正弦波状に共振を起こし正から零へと向かう。
【0063】
モード3(図7のMODE3)では、スナバコンデンサC1に蓄積していた電荷を全て放電し、電圧Vc1が零電圧となる時点t0において、主スイッチS1がオンとなり、共振回生電流は、主スイッチS1の主電流を打ち消す方向に通流する。このとき、主スイッチS1は電流零からのターンオンとなる。主リアクトルL2へモード1及びモード2の期間中に蓄えられた回生エネルギーは、負の電流源として主スイッチS1の電流を相殺しつつ、補助スイッチS2を介して入力電源へと回生され、ほぼ直線状に減少して零となる。
【0064】
モード4(図7のMODE4)では、t1において、主リアクトルL2の回生電流が減少して零となり、ダイオードD1がオフ、主リアクトルL1及びL2の電流は、主スイッチS1を介して再び直線状に増加に向かう。
【0065】
モード5(図7のMODE5)では、t2において、主スイッチS1、補助スイッチS2が同時にオフされる。このとき、主スイッチS1はスナバコンデンサC1による零電圧からのターンオフとなり、補助スイッチS2は零電流ターンオフとなり、共にソフトスイッチングでオフする。但し、本発明は同時オフに限定されない。補助スイッチS2は変電流となった時点で主スイッチS1より先に、ターンオフしてもよい。
【0066】
モード6(図7のMODE6)では、t3において、出力ダイオードD5がオンし、主リアクトルL1,L2に蓄えられたエネルギーが負荷へ供給される。t4で補助スイッチS2が再びオンし、モード1より次サイクルが開始される。
【0067】
以上のようにして、主スイッチ・補助スイッチともにソフトスイッチングで動作し、出力ダイオードD5の逆回復電流による過電流、過電圧が発生しない。
【0068】
以下、本発明のチョッパ回路の他の形態について、図9~図19を用いて説明する。
【0069】
図9は、第2の形態例を説明するための回路図である。なお、ここでは、図1に示す形態を第1の形態例とする。第2の形態例は、補助スイッチS2として逆阻止IGBTに代えて、通常の逆並列ダイオード付きIGBTとダイオードD3との直列接続を用いた例であり、第1の形態例と同様に動作する。

【0070】
図10~図12は、第3~第5の形態例を説明するための回路図である。第4~第6の形態例は、主リアクトルL1,L2を相互インダクタンスを持つ結合リアクトルで一体に構成する例であり、第1の形態例とほぼ同様に動作する。
【0071】
結合インダクタンスによる形態では、補助スイッチS2をオンすると、相互インダクタンスの作用で、主リアクトルL1への出力ダイオードD5のキャリア消滅に必要な電荷が流れ、その分、電流の減少が早まるので、補助スイッチS2と主スイッチS1間の時間差を少なくすることができ、結合がない場合と比較して、共振期間を短縮することができる。
【0072】
なお、図13は結合リアクトルを用いた形態での主スイッチS1の電圧電流特性を示し、図14は結合リアクトルを用いた形態での補助スイッチS2の電圧電流特性を示し、図15は結合リアクトルを用いた形態での出力ダイオードD5の電圧電流特性を示し、また、図16は結合リアクトルを用いた形態での全体波形を示している。
【0073】
図13に示す主スイッチS1の電圧電流特性において、主スイッチS1のターンオン時では、電圧101がほぼ零電圧となった後に電流201が発生し、また、ターンオフ時では、電流102がほぼ零電流となる状態で電圧202が立ち上がっている。
【0074】
図14に示す補助スイッチS2の電圧電流特性では、補助スイッチS2は、主スイッチS1よりわずかに早いタイミングの少ない時間差で動作している。図15に示す出力ダイオードD5の電圧電流特性では、補助スイッチS2のオンによって蓄積電荷が主リアクトル側に流れ、電圧103、電流203の特性を示す。なお、図15は、図13~図14を合わせて示している。
【0075】
図17は、第6の形態例を説明するための回路図である。前記した各形態では、すべての負荷条件に亘ってソフトスイッチングで動作するとは限らず、モードによっては一部ハードスイッチングとなる。この場合には、補助回路に電流が流れるため、従来のハードスイッチングよりも効率が低下する場合があり得る。
【0076】
そこで、ソフトスイッチングための補助回路をゲートブロックして、ある期間のみ、零電圧零電流動作を一時的に停止させ、主スイッチのみによるハードスイッチングを併用する制御としてもよい。
【0077】
図17に示す回路例は、このハードスイッチングとソフトスイッチングとを併用する場合の例であり、スナバコンデンサC1に出力クランプダイオードD6を追加する。この場合には、図18に示すハードスイッチング動作波形と、図19に示すソフトスイッチング動作波形との間で変化する。なお、図18のハードスイッチングは、補助スイッチS2を一時停止させることで行い、図19のソフトスイッチングは補助スイッチS2を動作させることで行う。
【0078】
なお、図18(a)は、補助スイッチS2を停止させた場合における主スイッチS1の電圧101と電流102を示し、図18(b)は、補助スイッチS2を停止させた場合における補助スイッチS2の電圧201と電流202を示している。また、図19(a)は、補助スイッチS2を停止させた場合における主スイッチS1の電圧101と電流102を示し、図18(b)は、補助スイッチS2を動作させた場合における補助スイッチS2の電圧201と電流202を示している。
【0079】
本発明のチョッパ回路を前記した昇圧型以外に、降圧型、昇圧型、昇降圧型、CUK型、SEPIC型、ZETA型、昇降圧型に適用することができる。
【0080】
図20は、本発明のチョッパ回路を降圧型(図20(a))、昇圧型(図20(b))、昇降圧型(図20(c))、CUK型(図20(d))、SEPIC型(図20(e))、ZETA型(図20(f))に適用した回路例を示し、図21は昇降圧型に適用した回路例を示している。
【0081】
図21に示す昇降圧型の回路例は、図20(a)に示す降圧型の回路と、図20(b)に示す昇圧型の回路を一体化したものと等価であり、一方の主スイッチS1の一方の極を直流電源E1の高電位側端子に接続し、他方の主スイッチS1´の一方の極を直流電源E1の低電位側端子に接続し、両主スイッチS1,S1´の他方の極を接続してなる2つの主スイッチS1, S1´の直列接続体と、各主スイッチS1, S1´の両極間に接続した、スナバダイオードD1,D1´とスナバコンデンサC1,C1´の2つの直列接続体と、一端を2つの主スイッチS1, S1´の接続点に接続し、他端を直流電源の端子に接続した、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルL1,L2の直列接続体と、スナバダイオードD1とスナバコンデンサC1と接続点と主リアクトルL1,L2の直列接続体の接続点との間を接続した補助スイッチS2と、スナバダイオードD1´とスナバコンデンサC1´と接続点と主リアクトルL1,L2の直列接続体の接続点との間を接続した補助スイッチS2´とを備える。
【0082】
上記したいずれの回路構成においても、第1の形態と同様に、等価的に1つのリアクトルを構成する2分割した2つの主リアクトルと、一方の極を前記主リアクトルの直列接続体の一端に接続し、他方の極を直流電源の一方の電圧端子に直接に接続した主スイッチと、主スイッチの両極間に接続した、スナバダイオードとスナバコンデンサの直列接続体と、スナバダイオードとスナバコンデンサとの接続点と、2つの主リアクトルの直列接続体の接続点との間に接続した補助スイッチとを備えた構成の点では共通している。
【0083】
また、本発明は以下に示す形態(第7の形態~第14の形態)とすることもできる。
【0084】
第7の形態は、図22に示すように、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列接続体を設けずに、主スイッチS1の並列に非常に小さなスナバコンデンサC1を接続し、また、回生リアクトルLxを別置きで備える構成であり、効率を向上させることができる。また、スナバコンデンサC1の容量は非常に小さくすることができるため、電圧が残留するモードであっても、動作させることができる。
【0085】
第8、9の形態は、図23,24に示すように、前記したスナバコンデンサを削除し、代わりに主スイッチS1の浮遊容量を用いてソフトスイッチングを行う構成である。主スイッチS1の半導体デバイスの浮遊容量を利用することで、2つのスイッチ素子と主リアクトルの3要素だけでソフトスイッチングを行うことができ、効率を高めることができる。なお、図24に示す第9の形態は、回生リアクトルLxを別置きした構成例である。
【0086】
第10の形態は、図25に示すように、従来のスナバダイオードを削除し、スナバコンデンサC1と補助スイッチS2のみの回路とするものであり、部品点数を削減し、効率を高めることができる。また、スナバコンデンサC1は、充電電圧が残留している状態から主スイッチS1がターンオンしても、主スイッチS1の半導体デバイスが破損しない程度の非常にちいさな容量とすることができる。
【0087】
第11の形態は、前記第10の形態と同様に、図26に示すように、従来のスナバダイオードを削除し、スナバコンデンサC1と補助スイッチS2のみの回路とするものであり、部品点数を削減し、効率を高めることができる。
【0088】
この第11の形態では、主リアクトルL2に電流が残留している状態で補助スイッチS2をオフした時、発生する過電圧を防止するために、ダイオードD4を追加している。
【0089】
なお、第10の形態では、補助スイッチS2の最小オン時間を設けることによって、ダイオードD4を削除することができる。
【0090】
第12の形態は、図27に示すように、ソフトスイッチングとハードスイッチングを切り替えるゲート制御を行う形態であり、スナバコンデンサC1に電圧が残留するモード(昇圧率が2以下)では、補助スイッチS2をゲートブロックして、主スイッチS1によるハードスイッチングを行い、効率が高くなる領域(昇圧率が2以上)ではソフトスイッチングを行う。
【0091】
なお、図27において、301はハードスイッチングの場合を示し、302は本発明において、ハードスイッチングとソフトスイッチングを併用した場合を示している。
【0092】
このソフトスイッチングとハードスイッチングは、前記した各形態に適用することができる。
【0093】
第13の形態は、図28に示すように、前記した第7の形態~第12の形態の主リアクトルL1,L2を直流電源の低電位側に配置する形態である。また、第14の形態は、図29に示すように、前記した第1の形態~第16の形態のスナバダイオードD1を備える構成において、主リアクトルL1,L2を直流電源の低電位側に配置する形態である。
【0094】
なお、本発明のチョッパ回路では、主スイッチS1の高電位側に配線部や低電位側の配線部に微小の配線インダクタンスが生じ、これらの影響によって、スナバコンデンサが出力電圧より若干上昇したり、高周波振動が生じる場合があるが、本発明はこのような寄生回生現象を伴っても有効に動作するものである。
【0095】
なお、以下の表は、昇圧型の場合を例とした場合の効率を比較したものである。
【0096】
【表1】
JP0005023338B2_000002t.gif

【0097】
また、本発明のチョッパ回路では、補助スイッチを主スイッチよりわずかに早くオンさせることでソフトスイッチングを行うが、主スイッチと補助スイッチを同時にもしくは補助スイッチを主スイッチよりも後にオンさせることでターンオンのソフトスイッチングを行わず、回生動作のみを行うように動作させることもできる。
【0098】
また、本発明のチョッパ回路は、主スイッチと補助スイッチを直並列接続して構成する他に、電源システム全体を多重化構成としてもよい。
【0099】
また、本発明のチョッパ回路の主リアクトルは分割構造としても、一体構造としてもよい。
【0100】
また、本発明のチョッパ回路において、主スイッチの逆並列ダイオードは、零電圧零電流のソフトスイッチングを行わない場合には、削除してもよい。
【0101】
また、本発明のチョッパ回路において、入力電源に回生する電流リプル吸収能力がある場合には、入力平滑コンデンサを削除してもよい。
【0102】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0103】
なお、本発明のチョッパ回路において、補助スイッチは逆阻止IGBTのみに限定されるものではない。ダイオードと逆耐圧のないIGBTの直列回路もしくは、ダイオードと逆並列ダイオード付きIGBTの直列回路であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のチョッパ回路は、燃料電池自動車に限らず、半導体電力変換装置を用いる分野に適用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図27】
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【図32】
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【図33】
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