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Specification :(In Japanese)カーボンナノチューブを用いたガス分離材及びその製造方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4450602
Publication number P2005-138028A
Date of registration Feb 5, 2010
Date of issue Apr 14, 2010
Date of publication of application Jun 2, 2005
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)カーボンナノチューブを用いたガス分離材及びその製造方法
IPC (International Patent Classification) B01D  71/02        (2006.01)
B01D  53/22        (2006.01)
B01D  69/10        (2006.01)
B01D  69/12        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
C04B  35/52        (2006.01)
C04B  41/89        (2006.01)
FI (File Index) B01D 71/02 500
B01D 53/22
B01D 69/10
B01D 69/12
B82B 3/00
C01B 31/02 101F
C04B 35/52 G
C04B 35/54 E
C04B 41/89 K
Number of claims or invention 12
Total pages 10
Application Number P2003-377427
Date of filing Nov 6, 2003
Date of request for substantive examination Oct 10, 2006
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】000173522
【氏名又は名称】財団法人ファインセラミックスセンター
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】楠 美智子
【氏名】本庄 千鶴
【氏名】鈴木 敏之
Representative (In Japanese)【識別番号】100094190、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 清路
Examiner (In Japanese)【審査官】目代 博茂
Document or reference (In Japanese)特開2002-255526(JP,A)
特表2002-537991(JP,A)
特開平05-301032(JP,A)
特開2000-109308(JP,A)
特開2003-171107(JP,A)
特開平10-265208(JP,A)
Field of search B01D61/00-71/82
B01D53/22
C01B31/00-31/36
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
多孔質基材の表面に、グラファイトを含む中間層及びカーボンナノチューブ層を、順次備え、
上記グラファイトを含む中間層及び上記カーボンナノチューブ層は、上記多孔質基材の表面に配設した炭化珪素からなる膜を真空下で又は炭化珪素を分解可能な雰囲気下で加熱し、該炭化珪素を完全分解させてなり、
上記多孔質基材の平均孔径は102~105nmであると共に、上記カーボンナノチューブ層の厚さは10~500nmであることを特徴とするガス分離材。
【請求項2】
上記多孔質基材は、炭素からなる請求項1に記載のガス分離材。
【請求項3】
上記中間層の厚さは、10~100μmである請求項1又は2に記載のガス分離材。
【請求項4】
上記中間層は、炭素6員環が連なる層状構造のグラファイトを95~100質量%含有する請求項1乃至3のうちいずれかに記載のガス分離材。
【請求項5】
上記多孔質基材の厚さは、0.1~10mmである請求項1乃至4のうちのいずれかに記載のガス分離材。
【請求項6】
少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆する被覆層を備える請求項1乃至5のうちのいずれかに記載のガス分離材。
【請求項7】
平均孔径が102~105nmである多孔質基材の表面に炭化珪素からなる膜を配設し、複合体とする工程と、該複合体を真空下で又は上記炭化珪素を分解可能な雰囲気下で加熱し、炭化珪素を完全分解させ、カーボンナノチューブを生成させる工程と、を備え、上記多孔質基材の表面に、グラファイトを含む中間層及び厚さ10~500nmのカーボンナノチューブ層を、順次備えたガス分離材を得ることを特徴とするガス分離材の製造方法。
【請求項8】
上記多孔質基材は、炭素からなる請求項7に記載のガス分離材の製造方法。
【請求項9】
上記中間層の厚さは、10~100μmである請求項7又は8に記載のガス分離材の製造方法。
【請求項10】
上記中間層は、炭素6員環が連なる層状構造のグラファイトを95~100質量%含有する請求項7乃至9のうちいずれかに記載のガス分離材の製造方法。
【請求項11】
上記基材の厚さは、0.1~10mmである請求項7乃至10のうちのいずれかに記載のガス分離材の製造方法。
【請求項12】
更に、少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆する工程を備える請求項7乃至11のうちのいずれかに記載のガス分離材の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを用いたガス分離材及びその製造方法に関する。更に詳しくは、非酸素系のガス分離に好適なガス分離材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー問題、環境問題等に基づいて、ガス分離膜、ガス分離材の性能への期待が高まっている。特に、燃料電池の水素分離膜、火力発電の二酸化炭素分離膜については、高性能の分離膜が要望されている。
ガス分離膜としては、2種以上の成分を含む混合ガスから特定のガス成分を選択的且つ効率的に分離するために、シリカ等無機材料からなる分離膜あるいはその製造方法の検討が活発に行われている。一方、炭素材料からなる分離膜については、アクリル系重合体、ポリイミド系重合体等からなる中空繊維等を炭化させてなるもの(特許文献1、2参照)や、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を、特定の条件で焼成することにより得られ、炭素含有率80%以上で、細孔直径0.3~4nmの多数の細孔が存在する分子ふるい炭素膜が開示されている(特許文献3参照)。
【0003】

【特許文献1】特開平1-221518号公報
【特許文献2】特開平4-11933号公報
【特許文献3】特開2000-237562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、カーボンナノチューブを用いてなり、且つ、水素ガス、窒素ガス、メタン、エチレン、アセチレン、アンモニア等の非酸素系のガス分離に好適なガス分離材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下に示される。
1.多孔質基材の表面に、グラファイトを含む中間層及びカーボンナノチューブ層を、順次備え、
上記グラファイトを含む中間層及び上記カーボンナノチューブ層は、上記多孔質基材の表面に配設した炭化珪素からなる膜を真空下で又は炭化珪素を分解可能な雰囲気下で加熱し、該炭化珪素を完全分解させてなり、
上記多孔質基材の平均孔径は102~105nmであると共に、上記カーボンナノチューブ層の厚さは10~500nmであることを特徴とするガス分離材。
2.上記多孔質基材は、炭素からなる上記1に記載のガス分離材。
3.上記中間層の厚さは、10~100μmである上記1又は2に記載のガス分離材。
4.上記中間層は、炭素6員環が連なる層状構造のグラファイトを95~100質量%含有する上記1乃至3のうちいずれかに記載のガス分離材。
5.上記多孔質基材の厚さは、0.1~10mmである上記1乃至4のうちのいずれかに記載のガス分離材。
6.少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆する被覆層を備える上記1乃至5のうちのいずれかに記載のガス分離材。
7.平均孔径が102~105nmである多孔質基材の表面に炭化珪素からなる膜を配設し、複合体とする工程と、該複合体を真空下で又は上記炭化珪素を分解可能な雰囲気下で加熱し、炭化珪素を完全分解させ、カーボンナノチューブを生成させる工程と、を備え、上記多孔質基材の表面に、グラファイトを含む中間層及び厚さ10~500nmのカーボンナノチューブ層を、順次備えたガス分離材を得ることを特徴とするガス分離材の製造方法。
8.上記多孔質基材は、炭素からなる上記7に記載のガス分離材の製造方法。
9.上記中間層の厚さは、10~100μmである上記7又は8に記載のガス分離材の製造方法。
10.上記中間層は、炭素6員環が連なる層状構造のグラファイトを95~100質量%含有する上記7乃至9のうちいずれかに記載のガス分離材の製造方法。
11.上記基材の厚さは、0.1~10mmである上記7乃至10のうちのいずれかに記載のガス分離材の製造方法。
12.更に、少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆する工程を備える上記7乃至11のうちのいずれかに記載のガス分離材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のガス分離材によると、水素ガス、窒素ガス、メタン、エチレン、アセチレン、アンモニア等の非酸素系のガスを高い選択性で分離することができる。
また、本発明のガス分離材の製造方法によると、カーボンナノチューブ層及びグラファイト層を、所望の厚さで効率よく形成することができ、安定なガス分離材を得ることができる。また、少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆する工程を備えることにより、強度に優れたガス分離材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
1.ガス分離材
本発明のガス分離材は、多孔質基材の表面に、グラファイトを含む中間層及びカーボンナノチューブ層を、順次備え、グラファイトを含む中間層及びカーボンナノチューブ層は、多孔質基材の表面に配設した炭化珪素からなる膜を真空下で又は炭化珪素を分解可能な雰囲気下で加熱し、炭化珪素を完全分解させてなり、多孔質基材の平均孔径は102~105nmであると共に、カーボンナノチューブ層の厚さは10~500nmであるものである。
【0008】
上記多孔質基材としては、一面から他面に貫通する孔を有し且つ多孔質であればどのような材料からなるものであってもよいが、その構成材料としては、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア、チタニア、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化ホウ素等のセラミックス、アルミニウム、チタン、ゲルマニウム、モリブデン、ニオブ、白金、タングステン、バナジウム、タンタル等の金属、これらの金属元素を含む合金、炭素、ガラス等が挙げられる。尚、これらの材料の結晶性、純度等は特に限定されない。上記材料のうち、炭素が好ましい。
【0009】
上記多孔質基材の平均孔径は、102~105nmである。上記孔径が大きすぎると、基材としての強度が十分でなく、変形する場合がある。尚、孔の形状は特に限定されない。
上記多孔質基材の形状は特に限定されず、多角形、円形、楕円形等の平板状、曲板状、円筒状、塊状、小片状等とすることができる。
また、上記多孔質基材の厚さは、好ましくは0.1~10mm、より好ましくは0.5~7mm、更に好ましくは1~5mmである。
【0010】
尚、以下で説明する中間層と接触する上記多孔質基材の表面部は、多孔質を維持した状態で、多孔質基材を構成する材料以外の成分(セラミックス、金属、ガラス、高分子、界面活性剤等)が付着していてもよいし、各種表面処理法により化学修飾されていてもよい。
また、上記多孔質基材の製造方法は特に限定されない。
【0011】
上記中間層としては、炭素6員環が連なる層状構造のグラファイトを含み、このグラファイトを少なくとも80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95~100質量%含有するものである。上記中間層が、グラファイト及び他の成分から構成される場合、他の成分は特に限定されない。尚、グラファイトは、化学修飾等されていてもよい。
【0012】
また、上記中間層の厚さは、好ましくは10~100μm、より好ましくは20~80μm、更に好ましくは30~50μmである。
【0013】
上記中間層は、グラファイトからなる膜をそのまま用いてもよいし、グラファイトを形成する前駆体(ポリフェニレンオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、モンモリロナイト/アクリロニトリル複合膜等)等の熱処理、木材成分の急速炭化等により形成してもよい。更に、上記中間層は、炭化珪素、炭化ホウ素等の熱処理、CVD法、プラズマCVD法等によって、以下で説明するカーボンナノチューブ層を構成するカーボンナノチューブと同時に形成してもよい。
【0014】
上記カーボンナノチューブ層は、炭素6員環が連なるカーボンナノチューブから構成される。尚、本発明において、この「カーボンナノチューブ」は、カーボンナノチューブ単体、及び、金属、金属化合物、フラーレン、フラーレン誘導体、アモルファスカーボン等が内包されたカーボンナノチューブを意味する。
上記カーボンナノチューブは、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。多層構造の場合、層数は、好ましくは2~10、より好ましくは3~5である。
また、上記カーボンナノチューブは、その外表面において、炭素原子の一部が金、珪素、アルミニウム等の金属原子と置換された構造を有するものであってもよい。
更に、上記カーボンナノチューブの外径も特に限定されない。
【0015】
上記カーボンナノチューブは、所定方向に、好ましくは、多孔質基板に対して垂直方向に配向してカーボンナノチューブ膜を構成してもよいし、各チューブが規則的あるいはランダムに絡み合って構成していてもよい。但し、カーボンナノチューブ層の表面は、カーボンナノチューブの先端部が閉じた状態で連続的に緻密に接合し配列していることが好ましい。このカーボンナノチューブの先端部は、尖っていても平坦であってもよい。ガス分離に関わる先端部の開口径の平均は、好ましくは0.7~5nm、より好ましくは0.7~3nmである。
また、上記カーボンナノチューブ層の厚さは、10~500nmであり、好ましくは30~300nm、より好ましくは50~200nmである。
【0016】
本発明のガス分離材は、上記構成に加え、少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆する被覆層を更に備えることができる。この被覆層は、炭素との接着力あるいは粘着力が高く、且つ、ガスを透過しない性質を有するものである。
上記被覆層を構成する材料は特に限定されず、有機材料を主とするもの、無機材料を主とするもの、のいずれでもよい。
【0017】
上記有機材料としては、例えば、樹脂、ゴム等を用いることができる。
樹脂としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。
更に、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマー等を用いることもできる。
また、上記無機材料としては、アスファルト、セメント、粘土等を用いることができる。
【0018】
上記被覆層は、カーボンナノチューブ層のみを被覆してなるもの、カーボンナノチューブ層と中間層とを同時に又は別々に被覆してなるもの、カーボンナノチューブ層と多孔質基材とを被覆してなるもの、及び、カーボンナノチューブ層と中間層と多孔質基材とを同時に又は別々に被覆してなるもの、いずれでもよい。カーボンナノチューブ層と中間層と多孔質基材とを同時に被覆した例を図1に示す。即ち、図1に示すガス分離材1は、多孔質基材11と、この多孔質基材11の表面に、中間層12及びカーボンナノチューブ層13を順次備え、これらの一体物の外周表面に被覆層14が形成されてなる。
【0019】
上記被覆層の厚さは、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.2~3mm、更に好ましくは0.5~2mmである。
本発明のガス分離材が、上記被覆層を備えることにより、ガス分離の際に、混合ガスあるいは分離後のガス等が側面から漏れ出すのを防ぐことができる。
【0020】
2.ガス分離材の製造方法
本発明のガス分離材の製造方法は、平均孔径が102~105nmである多孔質基材の表面に炭化珪素からなる膜を配設し、複合体とする工程(以下、「工程(A)」ともいう。)と、この複合体を真空下で又は上記炭化珪素を分解可能な雰囲気下で加熱し、炭化珪素を完全分解させ、カーボンナノチューブを生成させる工程(以下、「工程(B)」ともいう。)と、を備え、上記多孔質基材の表面に、グラファイトを含む中間層及び厚さ10~500nmのカーボンナノチューブ層を、順次備えたガス分離材を得るものである。即ち、炭化珪素をカーボンナノチューブの製造原料とし、加熱により生成するカーボンナノチューブ及び副製するグラファイトを利用してガス分離材を得る方法である。
【0021】
上記工程(A)において、多孔質基材としては、上記例示した材料からなるものを用いることができるが、工程(B)で加熱を行うため、変形、分解、変質等を引き起こさない耐熱性に優れた炭素からなるものが好ましい。
【0022】
上記工程(A)の具体的な方法、即ち、多孔性基材の表面に炭化珪素からなる膜が配設された複合体を得る方法としては、(1)多孔性基材の表面に炭化珪素からなる膜体を積載する方法、(2)多孔性基材の表面に、気相成長法(CVD法、スパッタ法、MBE法等)、液相成長法等により炭化珪素からなる膜を形成する方法、(3)炭化珪素からなる膜体に、上記性質を備える多孔性基材を形成する方法等が挙げられる。尚、上記炭化珪素は、単結晶でもよいし、多結晶でもよい。また、結晶形もα型でもβ型でもよい。
【0023】
上記方法(1)、(2)及び(3)において、炭化珪素からなる膜あるいは膜体は、平板状であることが好ましい。また、その厚さは、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは1~70μm、更に好ましくは10~30μmである。炭化珪素の膜が厚すぎると、分解してカーボンナノチューブ及びグラファイトとするために要する時間が長くなる傾向にある。一方、薄すぎると、亀裂が起こった場合、分離用ガスが漏れる場合がある。
【0024】
上記方法(2)において、多孔性基材の表面に平板状の膜を形成することは難しく、(i)多孔質基材の表層の孔を埋めて平坦化させた後、その表面に上記成長法による膜を形成する方法、(ii)多孔質基材の表面に薄膜を配置又は形成した後、その表面に上記成長法による炭化珪素膜を形成する方法等によればよい。尚、上記(i)において多孔質基材の孔を埋めた材料、及び、上記(ii)において多孔質基材の表面に配置又は形成した「薄膜(を構成する材料)は、その後、炭化珪素膜を形成する前に、酸、アルカリ等の溶液により除去してもよいし、上記成長法あるいは以下で説明する工程(B)における加熱による分解、気化(昇華)等、更には、酸、アルカリ等の溶液、有機溶剤等による残留物の溶解等によって除去することができる。これらの材料としては、珪素、アルミニウム、銅、金等の金属、高分子等が挙げられる。
【0025】
上記工程(A)において形成された複合体は、工程(B)において加熱されるが、この工程(B)の前に、炭化珪素の分解を効率よく進めるために炭化珪素の膜の表面に形成された酸化膜を除去する等の目的で、炭化珪素の膜の表面を化学処理してもよい。
炭化珪素の膜の表面を化学処理する方法は特に限定されない。通常は、炭化珪素を侵すおそれのない処理液を用いて行われる。上記処理液は炭化珪素の表面の酸化膜を腐食あるいは溶解させることができるものであれば特に限定されないが、酸又はアルカリの処理液が好ましく、ガラスの腐食に適した処理液が特に好ましい。例えば、腐食液としてフッ化水素酸水溶液、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化カリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、[フッ化水素酸+硝酸]水溶液等が挙げられる。これらのうち、フッ化水素酸水溶液、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化カリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び[フッ化水素酸+硝酸]水溶液が好ましい。但し、溶融酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム・硝酸カリウム混合液等は炭化珪素にダメージを与えるため好ましくない。上記処理液は、炭化珪素の形状や目的等に応じて処理条件(処理方法、処理液の濃度、温度、処理時間等)を選択すればよい。処理方法としては浸漬法、吹きつけ法等があるが、浸漬法が好ましい。浸漬法による化学処理は、上記処理液の1種のみを用いて行ってもよいし、複数種類の処理液を混合せずに別々の工程で用いて行ってもよい。尚、炭化珪素を化学処理した後は、超純水等で洗浄し、速やかに工程(B)へ進めることが好ましい。
【0026】
上記工程(B)において、上記複合体が加熱されることにより、炭化珪素の膜の表面からSiが蒸発しあるいはSiが酸化されてSiOとして蒸発し、残った炭素原子による筒状のチューブ構造が配列するカーボンナノチューブと、炭化珪素の膜の多孔質基材側のグラファイトとを形成させる。加熱手段としては、電気炉、レーザービーム照射、直接通電加熱、赤外線照射加熱、マイクロ波加熱、高周波加熱等が挙げられる。
【0027】
このカーボンナノチューブは、炭化珪素の分解により珪素原子を除去可能な限りにおいて、真空度及び加熱温度、あるいは、上記炭化珪素を分解可能な雰囲気とするためのガスの種類及び加熱温度を特に限定することなく得ることができる。
真空中で加熱する場合の好ましい真空度は5~10-10Torrであり、より好ましくは2~10-9Torrである。尚、この真空度を維持できる範囲で、3%以下、更には1%以下の酸素、あるいは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等の不活性ガスを含む雰囲気であってもよい。
また、好ましい加熱温度は800~2000℃であり、より好ましくは1200~1900℃、更に好ましくは1400~1900℃である。加熱は、上記範囲内において、一定温度で続けて行ってもよいし、異なる温度を組み合わせて行ってもよい。
【0028】
真空度及び加熱温度が高すぎると、炭化珪素から珪素原子が失われる速度が大きいため、カーボンナノチューブの配向が乱れやすくなるとともに径が大きくなる傾向がある。また、炭素原子自身もCOとなり蒸発し、カーボンナノチューブの長さが短くなり、更に消失してしまい、乱れたグラファイトが形成され、得られるガス分離材のガス分離性能が低下することがある。
尚、この加熱においては、炭化珪素を完全分解させる必要があり、上記加熱温度における加熱時間は、炭化珪素の膜の厚さによるが、通常、0.5~50時間、好ましくは0.5~30時間である。また、常温から上記加熱温度までの昇温速度等は特に限定されず、通常、平均速度は0.5~40℃/分、好ましくは1~30℃/分である。常温から上記加熱温度まで等速で昇温してもよいし、多段階で昇温してもよい。
このように、加熱の条件をうまく組み合わせることによって、カーボンナノチューブの長さ、即ち、カーボンナノチューブ層の厚さと、グラファイト層、即ち、中間層の厚さと、を所望の値とすることができる。
【0029】
上記工程(B)において、複合体を加熱すると、炭化珪素の分解ガスが炭化珪素の膜の上方に滞留あるいは残存し、真空排気が追いつかない場合、炭化珪素の分解速度を低下させることがある。そのため、炭化珪素の膜の上方に、炭化珪素及び上記分解ガスと反応しないガス(G1)、炭化珪素の酸化もしくは分解を促進するガス(G2)等を導入して、炭化珪素の分解をより効率よく進めることができる。
【0030】
上記ガス(G1)としては、上記例示した不活性ガス、即ち、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等を用いることができる。これらのガスは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ガス(G2)としては、一酸化炭素、二酸化炭素、テトラフルオロメタン、水蒸気等が挙げられる。これらのガスは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、これらのガス(G1)及び(G2)は、それぞれ単独で用いてもよいし、任意の割合で混合し用いてもよい。この場合の混合割合は特に限定されない。
【0031】
また、上記炭化珪素を分解可能な雰囲気とするためのガスとしては、上記ガス(G2)として例示したものを1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのガスを用いる場合には、真空中であってもよいし、大気圧下であってもよい。また、複合体の加熱温度、加熱時間及び昇温速度は、上記真空中における加熱と同様とすることができる。
【0032】
上記工程(B)が終了した後、室温まで降温されるが、その速度も特に限定されない。一定速度でもよいし、多段階で降温してもよい。
上記工程(A)及び(B)によって、多孔質基材の表面にはグラファイトからなる中間層及びカーボンナノチューブからなる層が順次されたガス分離材が得られる。
グラファイトからなる層、即ち、中間層の厚さは、好ましくは10~100μm、より好ましくは20~80μmである。また、カーボンナノチューブの長さ、即ち、カーボンナノチューブ層の厚さは、10~500nmであり、好ましくは30~300nmである。
【0033】
本発明の製造方法においては、少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆する工程(以下、「工程(C)」ともいう。)を更に備えることができる。この工程(C)においては、カーボンナノチューブ層のみを被覆してもよいし、カーボンナノチューブ層と中間層とを同時に又は別々に被覆してもよいし、カーボンナノチューブ層と多孔質基材とを被覆してもよいし、更には、カーボンナノチューブ層と中間層と多孔質基材とを同時に又は別々に被覆してもよい。
【0034】
上記工程(C)における被覆方法は、上記例示した材料を含む接着性組成物あるいは粘着性組成物を、公知の手段で塗布する等の方法によればよい。塗布により形成された被膜の乾燥が必要な場合は、カーボンナノチューブ層を構成するカーボンナノチューブが変形、変質、分解、反応等しない範囲で乾燥工程を進めればよい。
このように、少なくともカーボンナノチューブ層の外周側面を被覆することにより、強度に優れ且つ安定なガス分離材とすることができる。
【0035】
本発明のガス分離材は、カーボンナノチューブの先端部における炭素6員環の空隙を利用した分子ふるいによって、水素ガス、窒素ガス、メタン、エチレン、アセチレン、アンモニア等の非酸素系のガスを高い選択性で分離するものである。また、カーボンナノチューブの内壁において、ガス種による吸着能の差を利用して、ガス分離性能を調整することができる。
上記ガス分離性能は、室温から、例えば、600℃までの温度範囲で、多成分系混合ガスによる透過試験により得ることができる。本発明のガス分離材は、例えば、300℃における水素ガス及び窒素ガスの透過係数比の高い性能を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例
縦10mm、横10mm及び厚さ3mmであり、且つ、平均気孔径が50μmである多孔質グラファイト(東海カーボン社製、商品名「ポーラスカーボン」)を基材として、この表面に、縦10mm、横10mm及び厚さ0.05mmの炭化珪素板(CREE社製、商品名「6H-SiC Nタイプ」)を積載し、複合体を得た。
その後、この複合体を真空炉内にセットし、真空(1×10-4Torr)中、1900℃、30時間の条件で加熱し、炭化珪素を完全に分解させた。多孔質グラファイト基材の表面部の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、基材に対して垂直に配向したカーボンナノチューブからなり且つ厚さが30nmである膜、及び、その下部に、厚さが50μmであるグラファイト層(中間層)が形成されていた。カーボンナノチューブの先端部はすべて閉じており、先端部の開口径の平均は、5nmであった。
次いで、多孔質グラファイト基材、グラファイト層及びカーボンナノチューブ層の一体物の外周全体を、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤(ニチバン社製、商品名「アラルダイト」)により被覆し、厚さ1mmの被覆層を形成し、図1に示すガス分離材を得た。即ち、図1のガス分離材1は、多孔質基材11と、この多孔質基材11の表面に、中間層12及びカーボンナノチューブ層13を順次備え、これらの一体物の外周表面に被覆層14が形成されてなる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のガス分離材は、nmオーダーの孔径を有するため、ガス分離性能に優れ、しかも炭素からなるため、高い耐熱性を有する。これを利用して、燃料電池の水素分離膜、水素ガス製造装置、水素発酵装置、石油精製プラントにおける排気ガスからの水素ガスの回収、アンモニア合成プラントにおける排気ガスからの水素ガスの回収、脱水素反応における生成水素の除去、火力発電の二酸化炭素分離膜等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のガス分離材を示す説明断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1;ガス分離材、11;多孔質基材、12;中間層、13;カーボンナノチューブ層、14;被覆層。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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