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Specification :(In Japanese)相同組換えを行わせる方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4050712
Publication number P2005-237316A
Date of registration Dec 7, 2007
Date of issue Feb 20, 2008
Date of publication of application Sep 8, 2005
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)相同組換えを行わせる方法
IPC (International Patent Classification) C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/01        (2006.01)
FI (File Index) C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/00 X
Number of claims or invention 6
Total pages 23
Application Number P2004-052952
Date of filing Feb 27, 2004
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第1項適用 2003年9月1日 日本遺伝学会第75回大会準備委員会発行の「日本遺伝学会第75回大会プログラム・予稿集」に発表
Date of request for substantive examination Nov 14, 2006
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】井上 弘一
Accelerated examination, or accelerated appeal examination (In Japanese)早期審査対象出願
Representative (In Japanese)【識別番号】100137512、【弁理士】、【氏名又は名称】奥原 康司
Examiner (In Japanese)【審査官】松田 芳子
Document or reference (In Japanese)国際公開第02/052026(WO,A1)
特表2003-526376(JP,A)
Mol. Gen. Genet., 1994, Vol.242, No.4, p.490-4
Field of search C12N 15/09
BIOSIS/WPI(DIALOG)
JSTPlus(JDream2)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
以下の(a)~(b);
(a)KU70、KU80、LigIV、またはXRCC4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の機能喪失を誘導したニューロスポラ属又はアスペルギルス属に属する糸状菌細胞を作製する段階、
(b)前記細胞に外来性DNAを導入し相同組換えを行わせる段階、
を含むことを特徴とする相同組換えを行わせる方法。
【請求項2】
前記機能喪失が、KU70、KU80、LigIV、またはXRCC4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子中に突然変異または欠失を導入することで達成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能喪失が、KU70、KU80、LigIV、またはXRCC4からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の全体を破壊することで達成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記外来性DNAを導入する段階が、電気ショック法、スフェロプラスト法またはTiプラスミド法のいずれかの方法によって達成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ニューロスポラ属に属する糸状菌が、少なくともニューロスポラ・クラッサ、ニューロスポラ・シトフィラ、ニューロスポラ・テトラスペルマ、ニューロスポラ・インターメディア、ニューロスポラ・ディスクレータからなる群から選択される1種である請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記アスペルギルス属に属する糸状菌が、少なくともアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・パラシティク、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ノミウス、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・ニジュランスからなる群から選択される1種である請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく相同組換えを行わせる方法、およびその方法によって取得された相同組換え体細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、真核生物細胞では、主な2つの組換え経路、相同組換え、および非相同組換えによる経路が同定されている。相同組換えは、DNAの相同な配列間における相互作用により誘起されるのに対し、非相同組換えは、DNAの相同性とは無関係に、切断された二重鎖端の直接的なライゲーションにより引き起こされると考えられている。出芽酵母では、組換えの機構として、主に相同組換えのシステムが使用されており、外来DNAがその両端に組込む相手のゲノム配列の一部を有していれば、その配列と相同なゲノム部位に外来DNAが組み込まれる(Takataら, 1997、Wachら、1994)。この過程において、Rad51、Rad52、Rad54が必須であることが報告されている(NickoloffおよびHoekstra, 1998)。一方、ヒト、植物、昆虫および分裂酵母を含む他の多くの生物は、組換えの機能として非相同組換えのシステムを主として利用している。これらの生物においては、外来DNAがたとえゲノム上の特定領域と相同な長いDNA配列部分を有していたとしても、当該特定領域に組み込まれる頻度は低く、ゲノム上の不特定部分に組み込まれる場合が多い。
【0003】
相同組換えは、既存の遺伝子を効率よく改変することが可能であり、新種株の作出や、細胞の機能低下を改善するなどの目的に利用することができるため、出芽酵母を除く真核生物細胞において、相同組換え率を上昇させる試みがこれまでに数多く行われてきた。
例えば、出芽酵母の相同組換えにおいて重要な役割を果たしている、RAD51遺伝子あるいはRAD52遺伝子またはそのホモログ遺伝子の高発現系を構築する試みがなされているが、RAD51あるいはRAD52を高発現させても相同組換え頻度は2~3倍程度しか上昇せず、むしろ、細胞に対して悪影響を及ぼすことが知られている(Yanezおよび Porter, 2002、Reissら, 2000)。また、導入するベクターの相同組換え率を増大させるために多様なターゲティングベクターが開発されてきた。例えば、哺乳類細胞や植物細胞における、ネガティブ-ポジティブ選択法による相同組換え個体濃縮法(特許文献1、非特許文献1、2を参照のこと)は、代表的な例であるが、このような方法によっても依然として相同組換え頻度は極めて低く(1%以下)、かつ、このような方法を実施すること自体煩雑な操作が必要であることから、実用的な方法ではなかった。
【0004】
出芽酵母以外の真核生物細胞における遺伝子組換えの研究は、遺伝学的アプローチが容易に行えることから、分裂酵母の他、真菌、例えば、糸状菌などを用いて行われている。糸状菌であるニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)も組換え研究に多く用いられる生物の一つである。ニューロスポラ・クラッサのmei-3mus-11mus-25遺伝子は、出芽酵母の相同組換えにおいて機能するRAD51RAD52およびRAD54とそれぞれ、相同であることが知られている。そこで、これらの遺伝子に欠損をもつ変異体の相同組換え率に関し、プラスミドpMTR(Schroederら, 1995)に含まれるmtr遺伝子の、染色体mtr遺伝子座への組換え頻度を指標にして、検討された(Handaら, 2000)。これらの遺伝子に欠損を持たない野生型株においては、形質転換体の3から5%のみが相同組換えを示したのに対し、mei-3およびmus-25変異体では、相同組換えはほとんど起こらなかった。これらのデータからも、ニューロスポラ・クラッサにおいては相同組換え率が非常に低く、遺伝子ターゲティングにより特定の遺伝子を破壊することは容易ではないことが示されていた。
【0005】
一方、非相同組換えの過程は、DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PKcs)、Ku70-Ku80ヘテロダイマー、DNAリガーゼIV-Xrcc4複合体を介して進行することが報告されている(非特許文献3、4、5を参照のこと)。そこで、発明者は、非相同組換え機構を阻害することによって、相同組換え率が増大するのではないかとの作業仮説に基づき研究を進めた。
【0006】

【特許文献1】特開2001-046053号公報
【非特許文献1】Teradaら,Nature biotech. 20, 1030-1034. 2002
【非特許文献2】Jeannotteら,EJ.Mol.Cell Biol.11,5578-5585.1991
【非特許文献3】Gallegoら, The Plant Journal, 35, 557-565 2003
【非特許文献4】Walkerら, Nature 412, 607-614. 2001
【非特許文献5】CritchlowおよびJackson, TIBS, 23, 394-398. 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記事情に鑑み、真核細胞における相同組換え率を上昇させる方法がないかについて鋭意研究を行った結果、意外にも非相同組換えに必要な遺伝子であるKU70KU80の機能を喪失もしくは機能低下させることで、真核細胞における相同組換え頻度を上昇させることができることを見出した。
よって、本発明は、相同組換え率を上昇させる方法を提供することを目的とする。
さらに、上記方法を用いて作出された高効率相同組換え細胞を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかして、本発明において、相同組換え率を上昇させるために、非相同組換えに必要であることが知られている遺伝子に、突然変異導入、遺伝子破壊などの手法により機能低下、機能喪失を引き起こし、次いで、相同組換えを起こさせたい所望の外来DNAを該細胞に導入することで、効率よく相同組換えを行わせる方法が提供される。
本発明の方法を用いて実現される相同組換えの効率は、例えば、70%以上、より好ましくは80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上であり、最も好ましくは100%の相同組換え頻度が実現される。
本発明で用いられる細胞は、一般に、真核細胞であれば組織由来の細胞であっても、株化培養細胞であってもよく、限定はしないが、相同組換え率の低い、動物細胞、植物細胞、真菌細胞などが適している。
動物細胞としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、イヌなどの哺乳類細胞の他、鳥類、は虫類、両生類などの細胞であっても使用可能である。
また、植物細胞としては、例えば、イネ、ダイズ、コムギ、オオムギ、ライムギ、綿花、トウモロコシ、イモ、ピーナッツ、アラビドプシスが適している。
さらに、遺伝子操作が比較的容易な真菌細胞なども使用可能であり、糸状菌細胞などが好ましい。使用可能な糸状菌としては、ニューロスポラ属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属、トリコデルマ属またはムコール属などを挙げることができる。中でも好適な糸状菌としては、ニューロスポラ属に含まれるニューロスポラ・クラッサ、ニューロスポラ・シトフィーラ、ニューロスポラ・テトラスペルマ、ニューロスポラ・インターメヂアなど、また、アスペルギルス属に含まれるアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・パラシティク、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ノミウス、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・ニジュランスなどが好適に使用可能である。
【0009】
本発明に使用される非相同組換えに必要な遺伝子は、当該技術分野において知られているものであれば使用可能であり、限定はしないが、DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PKcs)、Ku70-Ku80ヘテロダイマー、DNAリガーゼIV-Xrcc4複合体などをコードする遺伝子が好ましく、特に、KU70遺伝子および/またはKU80遺伝子が最も好ましい。
本発明で用いられるKU70KU80には、任意の真核生物のKU70およびKU80ホモログが含まれる。例えば、ヒトKU70(P12956)(配列番号1)、ヒトKU80(P13010)(配列番号2)、ニューロスポラ・クラッサのKU70(NCU08290.1)(配列番号3)、KU80(NCU00077.1)(配列番号4)などを含む遺伝子、およびこれらの遺伝子産物の一または数個のアミノ酸に欠失、付加もしくは置換を含むアミノ酸配列をコードする遺伝子であって、その産物が非相同組換えに必要な活性を有するものが本発明のKU70ホモログ、KU80ホモログとして使用可能である。
【0010】
本発明で使用される細胞へのDNAの導入方法は、当該技術分野において周知の方法であれば使用可能であるが、例えば、スフェロプラスト法、電気ショック法(エレクトロポレーション法)、リン酸カルシウム法、カチオン性脂質による方法などが利用可能であるが、電気ショック法(エレクトロポレーション法)がもっとも好ましい。
【0011】
また、本発明による方法によって作製された、相同組換え率が顕著に上昇した細胞も、本発明により提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、対象の細胞において、ほぼ100%の相同組換え頻度を達成することができるため、目的の遺伝子の破壊、置換等を効率よく行うことができる。さらに、異種生物の遺伝子を対象の細胞のゲノムの特定域に挿入し、発現させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.対象の細胞における非相同組換えに必要な因子をコードする遺伝子の同定
本発明においては、非相同組換えに必要な因子をコードする遺伝子に機能低下または機能喪失を導入するために、対象とする細胞に由来する非相同組換えに必要な因子をコードする遺伝子を同定する必要がある。例えば、KU70またはKU80のホモログを同定する場合、対象とする細胞由来のKU70またはKU80のホモログの遺伝子配列が公知でない場合は、公知の他の種、例えば、ヒトなどのKU70(配列番号1)またはKU80(配列番号2)のホモログ遺伝子配列を基にして、対象細胞のcDNAライブラリーなどに対してスクリーニングを行う。スクリーニングの方法としては、核酸ハイブリダイゼーション及びクローニングに関する技術分野において周知の方法を用いて、低い、中程度又は高い緊縮性のハイブリダイゼーションにより得ることができる。ハイブリダイゼーションの「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な条件である。当業者であれば、ホモログを同定するためのハイブリダイゼーションスクリーニングを行うにあたり、プローブの長さなどを考慮して、温度、イオン強度等を如何に調節するか容易に理解することができる。
【0014】
さらに、対象とする細胞由来のORFのデーターベースが存在する場合には、該データーベースに対してBLASTサーチ等を行い既知のKU70またはKU80に対するホモログを同定することも可能である。この場合、検索された配列に基づいて該当する遺伝子全体を増幅するために適当なPCR用のプライマーを作製し、得られたPCR産物を適当なクローニング用のベクターに挿入することによって、目的のKU70またはKU80をクローン化させることも可能である。
同定されたKU70またはKU80は適当なクローニング用ベクター(例えば、pUC19など)にサブクローニングして配列確認を行う。
【0015】
2.非相同組換えに必要な遺伝子の機能低下または機能喪失
本発明は、細胞に内在する非相同組換えに必要な遺伝子の機能低下または機能喪失させることにより、染色体上における相同組換え頻度を上昇させる方法を提供するものである。そのために、細胞に内在する非相同組換えに必要な遺伝子の機能改変することができる。該機能を改変する方法としては、限定はしないが、例えば、内在する非相同組換えに必要な遺伝子に突然変異を導入する方法、RNA干渉(RNAi)を利用する方法、非相同組換えに必要な遺伝子全体を破壊する方法、非相同組換えに必要な遺伝子に対するアンチセンスを細胞内に導入する方法等、当業者にとって周知の方法が使用可能である。好ましくは、非相同組換えに必要な遺伝子に突然変異を導入する方法、RNA干渉(RNAi)を利用する方法、または非相同組換えに必要な遺伝子全体を破壊する方法であり、より好ましくは、RNA干渉(RNAi)を利用する方法、非相同組換えに必要な遺伝子全体を破壊する方法があり、最も好ましくは、非相同組換えに必要な遺伝子全体を破壊する方法である。
【0016】
遺伝子全体を破壊する方法にはクローン化した標的遺伝子の必須領域にマーカー遺伝子を挿入したDNAを細胞に形質転換する方法がある。細胞内に導入されたDNAは標的遺伝子の両隣接配列を介した相同組換えを誘発し染色体上の標的遺伝子をマーカー遺伝子により破壊することができる(Alfaら, 1993)。
また、遺伝子機能の喪失の目的において、RNA干渉(RNAi)を利用する。この場合、機能喪失を引き起こすべき目的の因子の機能ドメインに関する塩基配列をもとに、短いRNA二本鎖もしくは該RNAを産生するベクターを細胞内に導入することで、当該因子の機能低下または機能喪失をもたらすことができる。
また、インビトロおいて突然変異を導入する方法としては、部位特異的突然変異導入法、及びPCR突然変異導入法などの当該技術分野において既知の方法を用いて行うことができる。部位特異的突然変異導入法(Carter, 1986;ZollerおよびSmith, 1987)、カセット突然変異導入法、限定的選択突然変異導入法(Wellsら, 1985)または他の既知の技術は、目的の遺伝子に変異を導入するために調製され、クローン化されたDNA上で実施することができる(Ausbelら, 1987;Sambrook, 1989)。
KU70またはKU80に突然変異を導入することで機能改変を行う場合、Ku70タンパク質またはKu80タンパク質活性を欠失させるように変異を導入すること、またはKu70タンパク質とKu80タンパク質が相互作用を行うのに必要な部位に変異を導入し該相互作用を消失させるような変異を導入することなどが望ましい。
【0017】
3.組換え活性の測定
相同組換えの程度は、細胞外から導入したDNAにより形質転換された細胞のうち、相同配列部位での組換えによって形質転換をおこしているものの割合で測定する。
【0018】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
ニューロスポラ・クラッサ
1.実験材料
表1に、本実験で用いたニューロスポラ株を示す。C1-T10-37AおよびC1-T10-28aを野生型として用いた(TamuraおよびInoue, 1989)。大腸菌株DH1およびXL-1Blueはプラスミドの増幅に用いた(Sambrookら, 1989)。
プラスミドpBlescript SK(Stratagene社)およびpGEM(Promega社)は、通常、新しいベクターの構築に用いた。2つのプラスミドpBARGEM7-1(PallおよびBrunelli, 1993)、pCSN43(Stabenら, 1989)および2つのコスミドG7H3,G8B12はFungal Genetics Stock Center, University of Kansas Medical School, Kansas City, KS 66160-7420から入手した。
【0020】
表1.本発明において用いられるニューロスポラ・クラッサ株
【表1】
JP0004050712B2_000002t.gif

【0021】
2.方法
(1)ニューロスポラにおける遺伝子研究法
遺伝子解析はDavisおよびde Serres(1970)の記載に従って行った。
(2)PCR法
PCR増幅はExpandTM High-Fidelity PCR system(Roche Diagnositics Corp., Switzerland)を用いて指示書に従って行った。
【0022】
(3)Hygr遺伝子によるニューロスポラ・クラッサのKUホモログ遺伝子(以下、ncKU70遺伝子およびncKU80と記述する)の置換を行うためのプラスミド構築
ハイグロマイシン耐性遺伝子HygrによるncKU70およびncKU80の置換方法を図1Aおよび1Bに示す。
(a)ncKU70の置換のためのDNAの調製
ニューロスポラKU70遺伝子の各2kbpの5’および3’フランキングDNAを、コスミドG7H3をテンプレートに用いてPCRにより増幅した(PCRの条件は:94℃2分のあと94℃15秒、58℃30秒、72℃2分のサイクルを10回、さらに94℃15秒、58℃15秒、72℃2分(サイクルごとに72℃の時間を5秒づつ増やしていく)を20サイクル, さらに72℃7分、その後4℃で保存)。
5’フランキングDNAのプライマー
(p-1)5’GTGCTGTAGCCGTTTTGGGTATCGC3’(配列番号5)
(p-2)5’GGCGTAATAGCGAAGAGATAGTTGCTGGAAATAA3’(配列番号6)
3’フランキングDNAのプライマー
(p-3)5’AAGCATAAAGTGTAAAGGCTTGTTGATGACCGT3’(配列番号7)
(p-4)5’TTGGACGCCGCACACCTCTCGCTCT3’(配列番号8)
【0023】
次に、Hygr遺伝子プラスミドpCSN43をテンプレートとして用いてPCR増幅を行った(条件は上記と同じ)。
(p-5)5’TTATTTCCAGCAACTATCTCTTCGCTATTACGCC3’(配列番号9)
(p-6)5’CACGGTCATCAACAAGCCTTTACACTTTATGCTT3’(配列番号10)
【0024】
上記3つのPCR産物を混合して融合PCRテンプレートとして用い(Kuwayamaら, 2002)、また、プライマーとして、(p-1)(配列番号5)及び(p-4)(配列番号8)を用いて、融合PCRを以下の条件下で行った;
94℃2分、94℃15秒、60℃30秒、68℃5分を10サイクル、94℃15秒、60℃30秒、68℃5分(1サイクルごとに68℃の時間を1分づつ延長する)を20サイクル、72℃7分、4℃で保持。
得られた融合PCR産物を0.7%のアガロースゲルで電気泳動したのち、野生型のニューロスポラに形質転換した。
【0025】
(b)ncKU80の置換のためのDNAの調製
ニューロスポラKU80の各2kbpの5’および3’フランキングDNAをコスミドG8B12をテンプレートに用いてPCRにより増幅した(条件はncKU70の場合と同じ)。
5’フランキングDNAのプライマー
(p-7)5’GCGCCGGGAGGTTGTTCGTAAGCTG3’(配列番号11)
(p-8)5’GGCGTAATAGCGAAGAGGCTTTTCGGCTTTGCTG3’(配列番号12)
3’フランキングDNAのプライマー
(p-9)5’AAGCATAAAGTGTAAAGCAGGGTTGGAGACAGGT3’ (配列番号13)
(p-10)5’AAGGCGGAGTTGTTGGCTGCGAAGG3’ (配列番号14)
【0026】
次に、Hygr遺伝子プラスミドpCSN43をテンプレートとして用いてPCR増幅を行った(条件はncKU70の場合と同じ)。
(p-11)5’CAGCAAAGCCGAAAAGCCTCTTCGCTATTACGCC3’(配列番号15)
(p-12)5’ACCTGTCTCCAACCCTGCTTTACACTTTATGCTT3’(配列番号16)
【0027】
融合PCRは(p-7)(配列番号11)および(p-10)(配列番号14)を用いて、上記条件下と同様に行った。
【0028】
(4)電気ショック法(エレクトロポレーション法)
分生子懸濁液は1Mソルビトール中2.0x109濃度で調製した。融合PCR産物、30μlを分生子懸濁液50μlと混合し、氷上にて5分間インキュベートした。混合液40μlエレクトロポレーター(BTX Electro Cell Mnipulaion 600 Genetronics Inc.)上の細胞へ添加した。電気ショックの条件を以下のようにして行った;チャージ電圧1.5kV、最高電圧/計時モード2.5kV/抵抗、計時キャパシタンス50μF、計時抵抗R6(186オーム)。
【0029】
(5)ncKU70およびncKU80の置換
電気ショックの後、1.2%スクロースを含有するVogels’最小培地1mlを加え、30℃で2時間インキュベートした。この溶液200μlをハイグロマイシンB(500μg/ml)を含む寒天培地に塗り広げた。ハイグロマイシン耐性のコロニーを単離し、標的遺伝子座において置換が生じているかどうかをPCRを用いて検討した。さらに、余分なHygr遺伝子コピーを含んでいるかどうか、サザンブロット法により確認した。
(6)変異原感受性
UV及びメチルメタンスルホン酸塩(MMS)に対する感受性について既刊の文献に記載の方法に従って行った(InoueおよびIshii, 1984)。
【0030】
3.結果
(1)ncKU70およびncKU80の置換実験
ヒトKU70およびKU80に対するニューロスポラ・クラッサスのホモログを見つけるために、ニューロスポラゲノムデータベース(http://www-genome.wi.mit.edu/annotation/fungi/neurospora)に対してサーチを行った。検索された候補遺伝子を仮にncKU70およびncKU80と名づけた。ncKU70およびncKU80遺伝子は各々645および661アミノ酸をコードする。図2には、ヒトKu70のアミノ酸配列とncKu70のアミノ酸配列の比較を示す。ヒトKu70とncKu70は23%の同一性、42%の類似性を有していた。図3には、ヒトKu80とncKu80の比較を示す。ヒトKu80とncKu80は23%の同一性、41%の類似性を有していた。Orbach/Sachsコスミドライブラリー(Orbach, 1994)から得たG7H3及びG8B12は、各々ncKU70およびncKU80を含んでいる。従って、これらのコスミドをテンプレートとして用い、ncKU70およびncKU80のPCR増幅を行った。材料および方法のところで記載したように、ncku遺伝子に由来する2kbpの5’および3’フランキングDNAを結合したHygr遺伝子を保持するDNA断片は、融合PCRによって調製した。融合PCR産物を野生型ニューロスポラ・クラッサに中に導入し、ハイグロマイシン耐性コロニーを単離した。約200の形質転換体をサブクローニングして、ゲノムDNAを抽出し、ncKU遺伝子がHygr遺伝子によって置換されているかどうかをPCRによって決定した。このPCRのプライマーは、図1Bに示されるように、一方をncKU遺伝子の外側に、他方をHygr遺伝子の内側に設定した。ハイグロマイシン耐性コロニーの約10%がncKU遺伝子の位置にHygr遺伝子を有していた。ncKU70::Hygrを保持する54yo-728株およびncku80::Hygrを保持する54yo-828株を各々ncku70およびncku80変異体として用いた。これら株は、栄養生長およびホモ接合交雑増殖は正常であるが、僅かにUVに感受性であり、明らかにMMSに感受性であった(図4)。
【0031】
(2)野生型、ncku70ncku80mei-3mus-11変異株におけるmtr遺伝子およびad-3A遺伝子のターゲティング
染色体IVおよびI上のmtr遺伝子およびad-3A遺伝子を、置換実験の標的に選んだ。mtr遺伝子に欠損を持つ変異体は、アミノ酸アナログであるp-フルオロフェニルアラニン(PFP)に耐性を示す。ad-3A遺伝子に欠損を持つ変異体は、紫色の色素の蓄積を示す(The Neurospora Conpendium, Academic Press 2001を参照のこと)。mtrORFまたはad-3AORFをブラストサイジン耐性遺伝子barに置換することによってターゲティングベクターを構築した。bar遺伝子を含有する2.7kbDNAをpBARGEM7-1から制限酵素ScaIおよびSmaIで切り出した。
(2)-1
mtr遺伝子の場合、ターゲティングベクターの構築および導入は以下のように行った。mtr遺伝子を含有するpMTRをMscIで消化し、mtr遺伝子のプロモーターとORFの一部を含んだ約1kbpを除去した。次いで、2.7kbpのbar断片をその部分に挿入して、プラスミドpGS1(9.5kbp)を作製した。pGS1をNotIで消化し、その結果得られたbar遺伝子の両サイドにmtr遺伝子の1.8kbp5’および1.9kbp3’フランキングDNAを保持した6.7kbpの直鎖状断片を異なる遺伝的バックグラウンドを持つ株にエレクトロポローション法により導入した。ブラストサイジン(200μg/ml)に耐性をもつ形質転換体を単離し、それらがPFP(20μg/ml)に耐性であるかどうか検討した。bar-DNAがmtr遺伝子座に組換えられていれば、PFPに対して耐性を示すはずである。そこで、組換えが相同的置換によって行われたかどうかをさらに検討した。表2は、野生型株においてブラストサイジン耐性形質転換体のうち10から30%が相同組換えにより生じたことを示す。これに対し、ncku70およびncku80株の形質転換体全てが相同的組換えによって生じた。相同組換え修復に欠損を持つmei-3およびmus11株では、相同的組み込みがほとんど起こらなかった。
【0032】
【表2】
JP0004050712B2_000003t.gif

【0033】
(2)-2
ad-3Aの1.6kbp5’および2kbp3’フランキングDNAをbar遺伝子の両サイドに保持するad-3Aターゲティングベクターの構築は、上述のmtr遺伝子の場合と同様に行い、種々の株に導入した。ブラストサイジン耐性の形質転換体を単離し、アデニンを添加した最小培地中10日間サブカルチャーを行った。ad-3Aの機能を喪失したことを示す、紫色の菌糸体のコロニー数をカウントした。表3に示すように、野生型のブラストサイジン耐性形質転換体の約50%が紫色の菌糸体であり、これに対し、ncku70およびncku80株の形質転換体では100%が紫色を呈していた。これらの形質転換体が相同的置換による破壊株であることをPCRにより確認した(表3)。
【0034】
【表3】
JP0004050712B2_000004t.gif

【0035】
4.ターゲティング率と相同配列の長さとの関係
ターゲティング率と相同配列の長さとの関係を調べるために、mtr遺伝子の5’および3’フランキングDNAと相同な50,100,500,1000bpsをPCRで増幅し、bar遺伝子の両サイドに結合させた。ブラストサイジン耐性形質転換体について、PFPに対し耐性であるかどうか調べた(表4)。50bpおよび100bp長の相同DNAを導入されたブラストサイジン耐性形質転換体は、ncku70ncku80ならびに野生型株においてPFP耐性をほとんど示さなかった。500bp長の相同性の場合、野生型株においてPFP耐性を示したブラストサイジン耐性形質転換体が10%未満であるのに対し、ncku70およびncku80株においては90%以上がPFP耐性を示した。1000bp長の相同性の場合、野生型株においてPFP耐性を示したブラストサイジン耐性形質転換体が20%未満であるのに対し、ncku70およびncku80株においては全てがPFP耐性を示した。従って、相同部分が少なくとも1000bp長あれば標的遺伝子を完全に置換することができる。
【0036】
【表4】
JP0004050712B2_000005t.gif

【実施例2】
【0037】
アスペルギルス
1.アスペルギルス・ニジュランスのKU70遺伝子のクローニング
アスペルギルス・ニジュランス のゲノムデータベース(http://www-genome.wi.mit.edu/annotation/fungi/aspergillus/index.html) に対して BLAST ネットワークサービスを用いて、ニューロスポラ・クラッサのKU70遺伝子と相同性の高いクローン情報を検索した。その結果、Contig 1.132 は アスペルギルス・ニジュランスのKU70遺伝子全長を含んでいると考えられた。アスペルギルス・ニジュランスの推定Kuタンパク質は、ニューロスポラ・クラッサのKu70タンパク質と約 50%の相同性を示した。A. nidulans FGCS A89 株のゲノムDNAを鋳型に以下のプライマーを用いてPCRにより、KU70遺伝子全長を含む4045bpの断片を増幅した。
KU70/For 5’GAGAACTGATCATGCGATGCGTGGC 3’(配列番号17)
KU70/Rev 5’CATTCGCTTGATCGACATGGTTGGC 3’(配列番号18)
【0038】
ゲノムDNA 1(50ng)
プライマーForward 1(100pmol)
プライマーReverse 1(100pmol)
10×反応用バッファー 5
dNTP混合物 4
Ex Taq 1
DDW(蒸留水) 37
総量 50μl
上記のような反応系を作製し、TaKaRa PCR Thermal Cycler PERSONAL(宝酒造 (株))にてPCR反応を行った。反応条件は、96℃2分、1サイクル;96℃ 30秒、58℃30秒、72℃7分、30サイクルとした。PCR反応後、アガロースゲル電気泳動に供し、目的断片をゲルから回収した。これをpGEM-T Easy ベクター(Promega 社)にTAクローニング法によりライゲーションを行い、pGEMku70 を得た。
【0039】
2.アスペルギルス・ニジュランスのKU70遺伝子破壊-oliC31
pGEMku70を鋳型に以下のプライマーを用いてQuikChange site-directed mutagenesis(部位特異的突然変異導入法)法によりHindIIIサイトを導入した。下線部はHindIIIサイトを示す。
KU70(HindIII)/For 5’CACATTGTCCAAGCTTACTGTGGCTACCC 3’(配列番号19)
KU70(HindIII)/Rev 5’GGGTAGCCACAGTAAGCTTGGACAATGTG 3’(配列番号20)
【0040】
pGEMku70 2(20ng)
プライマーForward 2(200ng)
プライマーReverse 2(200ng)
10×反応用バッファー 5
dNTP混合物 4
Pfu Turbo 1
DDW (蒸留水) 34
総量 50μl
TaKaRa PCR Thermal Cycler PERSONAL を用いて、95℃2分、1サイクル;95℃30秒、54℃30秒、70℃15分、18サイクルとした。得られた変異プラスミドを pGEMku70(H)とし、このプラスミドをBlnIとHindIIIで消化し、アスペルギルス・ニジュランス由来オリゴマイシン耐性遺伝子oliC31をBlnIとHindIIIで消化した断片を挿入し、pGEMku70::oliC31とした。このプラスミドをApaI消化によって直鎖状にした後、A. nidulans FGSC A89 株にプロトプラストPEG法を用いて導入した。形質転換体の選択は、オリゴマイシン(3μg/ml)を含むポテトデキストロース培地で行った。得られた形質転換体について、PCR及びサザンブロット解析によりKU70遺伝子破壊株を選抜した。
【0041】
3.アスペルギルス・ニジュランスのKU70遺伝子破壊-ptrA
pGEMku70を鋳型に以下のプライマーを用いてQuikChange site-directed mutagenesis法によりHindIIIサイトを導入した。下線部はHindIIIサイトを示す。
KU70(HindIII)/For 5’CACATTGTCCAAGCTTACTGTGGCTACCC 3’(配列番号21)
KU70(HindIII)/Rev 5’GGGTAGCCACAGTAAGCTTGGACAATGTG 3’(配列番号22)
【0042】
pGEMku70 2(20ng)
プライマーForward 2(200ng)
プライマーReverse 2(200ng)
10×反応用バッファー 5
dNTP混合物 4
Pfu Turbo 1
DDW(蒸留水) 34
総量 50μl
TaKaRa PCR Thermal Cycler PERSONAL を用いて、95℃2分、1サイクル;95℃30秒、54℃30秒、70℃15分、18サイクルとした。得られた変異プラスミドを pGEMku70(H)とし、このプラスミドをBlnIとHindIIIで消化し、アスペルギルス・オリゼ由来ピリチアミン耐性遺伝子ptrAをBlnIとHindIIIで消化した断片を挿入し、pGEMku70::ptrAとした。このプラスミドをSpeI消化によって直鎖状にした後、A. nidulans FGSC A89株にプロトプラストPEG法を用いて導入した。形質転換体の選択は、ピリチアミン (100μg/ml) を含むCzapek-Dox培地で行った。得られた形質転換体について、PCR及びサザンブロット解析によりku70遺伝子破壊株を選抜した。
【0043】
4.任意遺伝子の破壊効率 -kexB
野生株あるいはku70破壊株を宿主にした遺伝子破壊効率を調べるにあたり、kexB遺伝子破壊によって効率を求めた。kexB遺伝子はプロセッシングプロテアーゼ KexBをコードしており、kexB遺伝子破壊株は野生株と比較してコンパクトなコロニーを形成することが分かっている。野生株とku70破壊株にkexB遺伝子破壊用プラスミドを導入し、得られた形質転換体がどのくらいの割合でkexB遺伝子破壊株の表現型を示すかどうか調べた結果を以下に示した。
kexB遺伝子破壊効率
野生株 (FGSC A89)宿主 6/83 形質転換体(7.2%)
ku70遺伝子破壊株宿主 90/100形質転換体(90%)
このように非常に高い効率でkexB遺伝子を破壊することに成功したことから、ku70 遺伝子破壊株は遺伝子破壊などの遺伝学的解析において非常に有用株であることが示された。
【実施例3】
【0044】
アラビドプシス
1.実験材料
表5に本実験で用いるアラビドプシス株を示す。
標的遺伝子はどのようなものでもよいが、今回は、AG(At4G18960) 及びLFY(At5g61850)とする。形質転換マーカーとして、プラスミドCaMV35S-sGFP(S65T)-NOS3’由来のGFP遺伝子を用いる。プラスミドから、HindIIIとEcoRIでGFP遺伝子を切り出し、平滑末端化してpBluescript SK+のEcoRV部位に挿入する(pSKGFP)。制限酵素部位をつけたプライマーでAG遺伝子の読み出しコドン上流約2kbを増幅し、pSKGFPのGFP上流に挿入する。同様にAG遺伝子読み出しコドンの下流約2kbもGFP下流に挿入する。このようにして得られたpSKAG::GFPからAG::GFP部分を切り出して形質転換に使用する。LFY遺伝子についても同様の操作を行う。
【0045】
【表5】
JP0004050712B2_000006t.gif

【0046】
2.遺伝子ホモ破壊株の確認
(1)各系統の種子を5%次亜塩素酸で滅菌し、ハイポネックスとショ糖を加えた寒天培地に播種する。
(2)10日後、子葉を一枚切り取りトミー精工社マイクロスマッシュにてDNAを分離する。そのDNAを鋳型にし、T-DNA挿入部位前後のゲノムDNA500ベースに合わせたプライマーでPCRを行う。ゲノムDNAの増幅が見られなかった個体をとりあえず遺伝子破壊ホモ個体として以後の実験に使用する。
【0047】
3.KU及びLig4破壊株の維持
ホモ破壊株と確認された個体は定法に従って栽培し、系統維持する。
【0048】
4.細胞培養系の確立と形質転換
(1)播種後2週間の幼植物(前述の方法で育てた無菌のもの)から胚軸と葉を切り取り、1mm程度の幅に切り刻む。
(2)カルス誘導培地(CIM培地:B5培地にMES、糖、固化剤、植物ホルモンを加えたもの)に置床する。
(3)カルスが十分に成長したら、液体培地(MS培地:MS基本培地に糖、植物ホルモンを加えたもの)に移し振とう培養する。
(4)一週間ごとに植え替える。
(5)細かいカルスを直接形質転換に使用する。(塊が大きい場合はプロトプラスト化して後述の5.に記載の手法を用いる。)
(6)カルスを遠心で集め、EPバッファー(70mMKCL,0.3Mマニトール,5mM 2-morpholinoethanesulfonic acid,pH5.8)に懸濁する。濃度を1.5x106/mlに調整する。800μlを電気穿孔用キュベット(4mmギャップ)に入れる。BTX社 ECM 600を使用し、モード:LV、キャパシタンス:125μF、抵抗:0、チャージ電圧:300ボルト、フィールド強度:750V/cm、パルス長:22-26msecの条件で電気穿孔を行う。DNAは一度の穿孔に10μgを使用する。
(7)穿孔後、0.5Mマニトールを加えた液体培地5mlに懸濁し、1時間静置する。
(8)液体培地に寒天を入れ固化したシャーレ培地に播く。
【0049】
5.プロトプラストの作製と形質転換
(1)種後2週間の幼植物(前述の方法で育てた無菌のもの)から胚軸と葉を切り取り、1mm程度の幅に切り刻む。
(2)0.5Mマニトール溶液に1時間浸潤した後、酵素溶液(1%セルラーゼ Onozuka RS、0.25%マセロザイム R-10、0.5Mマニトール、8mM塩化カルシウム、pH5.5 )で5-10時間処理し、0.5Mマニトールで3回洗浄する。
(3)細胞数を2x106 /mlに調整し、400μlを電気穿孔用キュベット(2mmギャップ)に入れる。導入するDNAを5-10μg/mlとなるよう加える。BTX社 ECM600を使用し、モード:LV、キャパシタンス:500μF、抵抗:R3(48オーム)、チャージ電圧:106ボルト、フィールド強度:530V/cm、パルス長:22-26 msecの条件で電気穿孔を行う。
(4)穿孔後、修正8p培地3mlに懸濁し、1時間静置する。
(5)修正8p培地をアガロースで固めた培地に広げ、培養する。
【0050】
6.形質転換体の確認
(1)形質転換実験後に生育したカルスに紫外線を照射する。
(2)GFP発現が認められた細胞塊を一つずつ分けて、植え替える。
(3)細胞塊が5mmぐらいに成長したら2つに分け、一方は再分化用培地(RIM:B5培地にMES、糖、植物ホルモンを加えたもの)に移し、もう一方からDNAを分離する。DNA分離の方法は実験1と同様である。得られたDNAを鋳型として、GFP遺伝子内部と標的遺伝子部位に設定したプライマーでPCRを行う。予定サイズの断片が出現した細胞塊は、遺伝子が破壊されたものと数える。
【0051】
7.アグロバクテリウムを利用した形質転換
(1)TiベクターpBI221Hを制限酵素処理し、35Sプロモーター:GUS構造遺伝子:NOSターミネ-ター部分を切り出す。
(2)切り出した部分に上記の形質転換用DNAを挿入し、エレクトロポレーションでアグロバクテリウムに導入する。アンピシリン耐性で目的のプラスミドをもつアグロバクテリウムを選択する。
(3)形質転換用DNAを持つアグロバクテリウムを28℃で一晩培養した後、浸潤用懸濁培地にOD600が0.8になるよう懸濁する。
(4)植物体を使用する場合は、鉢を逆さにし、花芽部分を15分間浸す。その後約1ヶ月培養し、種子を集める。集めた種子を発芽させ、GFPによる発光が見られるものについてPCRによる確認を行う。
(5)カルスを使用する場合は、菌懸濁液に2-3分浸した後共存培養培地(N6CO培地)で3日間培養する。カルベニシリンで滅菌した後GFP発光の有無について調査する。発光部分のみを植物ホルモンを含むMS培地で1ヶ月培養し、再度発光を確認した後、DNAを分離しPCRによる確認を行う。
【0052】
8.その他の形質転換実験
直鎖化された形質転換用DNAは、パーティクルガンによる形質転換及びプロ トプラストを利用する細胞融合形質転換にも使用される。
【実施例4】
【0053】
ヒトKU70遺伝子の破壊について
1.ヒトKU70遺伝子情報の取得
Ensemblプロジェクト(http://www.ensembl.org/)のヒトゲノムデータベースよりヒトKU70(G22P1)遺伝子の塩基配列およびエキソン、イントロンなどの情報をhttp://www.ensembl.org/Homo_sapiens/geneview?gene=ENSG00000100419より取得した。
【0054】
2.繰り返し配列位置の特定
得られた塩基配列情報をREPEATMASKER WEB SERVER(http://ftp.genome.washington.edu/cgi-bin/RepeatMasker)に送り、繰り返し配列の検索を行い、KU70遺伝子内に存在する繰り返し配列の位置を特定した。
【0055】
3.ターゲッティングベクター用プライマーの設定
1および2の塩基配列情報をもとにターゲッティングベクターに用いるホモロジーアーム作製用PCRプライマーの設定を行った。以下にプライマー配列を示す。(下線部は、サブクローニング用の制限酵素認識配列)
(1)ポリAセレクション法ベクター構築の場合
5’側ホモロジーアーム用プライマー対
Ku70 P2 AscI 5’-GCTATAGGCGCGCCTCTGCATTTAAGGAGAGAATAGCTGTG-3’(配列番号23)
Ku70 P3 NotI 5’-AGAACAGCGGCCGCAAGAGATCTCGATCACTGCTTATGATC-3’(配列番号24)
3’側ホモロジーアーム用プライマー対
Ku70 P4 NotI 5’-CTTTAGGCGGCCGCAATTCAAGATGAGTCATAAGAGGATC-3’(配列番号25)
Ku70 P5 SalI 5’-CATGTCGACATTTCAAGACAGGTGAAGAGGTGACAAG-3’(配列番号26)
(2)プロモーターレス法ベクター構築の場合
5’側ホモロジーアーム用プライマー対
Ku70 P2 SalI 5’-GCTATAGTCGACTCTGCATTTAAGGAGAGAATAGCTGTG-3´(配列番号27)
Ku70 P3 NotI 5’-AGAACAGCGGCCGCAAGAGATCTCGATCACTGCTTATGATC-3’(配列番号28)
3’側ホモロジーアーム用プライマー対
Ku70 P4 NotI 5’-CTTTAGGCGGCCGCAATTCAAGATGAGTCATAAGAGGATC-3’(配列番号29)
Ku70 P5 SalI 5’-ATCGCAGGCGCGCCAGACAGGTGAAGAGGTGACAAGATAC-3’(配列番号30)
【0056】
4.PCR法によるホモロジーアームの合成
(1)材料および使用機器
ヒト大腸癌由来HCT116 genomic DNA (500ng/μl)
KOD-Plus (東洋紡績株式会社製の熱耐性DNA Polymerase)
PCR用サーマルサイクラー(TaKaRa Thermal Cycler MP,Model No. TP-3000 宝酒造株式会社)
それぞれのプライマー対を各々10pmolに調整したPrimer Mix(上記3を参照)
PCR反応液の組成
HCT116 ゲノムDNA (500ng/μl ) 1μl
10xPCR buffer for KOD-Plus 5μl
2mM dNTPs 5μl
25mM MgSO4 2μl
Primer mix(10pmol各) 1.5μl
DMSO 2.5μl
KOD-Plus-DNAポリメラーゼ 1μl
滅菌水 32μl
総量 50μl
上記の反応系をPCR用サイクルサイクラーにてPCR反応を行った。
反応条件は、94℃2分、1サイクル、94℃15秒;60℃30秒;68℃5分、30サイクルで行った。
反応後、PCR産物DNA 断片を精製し、それぞれのプライマーに付加してある制限酵素認識配列の制限酵素で消化を行った。
【0057】
(2)ポリAセレクション法ベクター構築の場合
5’側ホモロジーアーム用プライマー対(Ku70 P2 AscI/Ku70 P3 NotI)のPCR産物DNA断片では、AscIとNotIの両制限酵素で消化を行った。このDNA断片名をKu70 F2とした。
3’側ホモロジーアーム用プライマー対(Ku70 P4 NotI/ Ku70 P5 SalI)のPCR産物DNA断片では、SalIとNotIの両制限酵素で消化を行った。このDNA断片名をKu70 F3とした。
(3)プロモーターレス法ベクター構築の場合
5’側ホモロジーアーム用プライマー対(Ku70 P2 SalI/ Ku70 P3 NotI)のPCR産物DNA断片では、SalIとNotIの両制限酵素で消化を行った。このDNA断片名をKu70 F2Bとした。
3’側ホモロジーアーム用プライマー対(Ku70 P4 NotI/ Ku70 P5 AscI)のPCR産物DNA断片では、NotIとAscIの両制限酵素で消化を行った。このDNA断片名をKu70 F3Bとした。
それぞれのDNA断片をpBCサブクローニング用ベクターにサブクローニングし、DNA断片の両端部分のシークエンスを行ってKU70遺伝子を含むDNA断片であることを確認した。
【0058】
5.ターゲッティングベクタープラスミドの構築
(1)ポリAセレクション法ベクター構築の場合
クローニングサイト改良pMC1DT-3上にKu70 F2、プロモーター付ピューロマイシン耐性遺伝子、Ku70 F3の順になるようにDNA断片を挿入してポリAセレクション用ベクターを構築した。プラスミド名を pPAS-Ku70 Puroとした。
(2)プロモーターレス法ベクタープラスミド構築の場合
クローニングサイト改良pMC1DT-ApA上にKu70 F2B、プロモーター無しポリAシグナル付ネオマイシン耐性遺伝子、Ku70 F3Bの順になるようにDNA断片を挿入してポリAセレクション用ベクターを構築した。プラスミド名をpBDTA-Ku70 neoとした。
両ターゲッティングベクタープラスミドともに制限酵素AscIで消化することによってプラスミドDNAの直線化を行った。
【0059】
6.KU70遺伝子破壊細胞の選抜
(1)ポリAセレクション法ベクターでの遺伝子破壊
上記5で作製した直線化pPAS-Ku70 Puro DNAをHCT116細胞にエレクトロポーレーション法にて細胞に導入した。相同組換えによってKU70遺伝子が破壊された細胞を選抜するために、ピューロマイシン(最終濃度0.3μg/ml)添加マッコイ5A培地で培養をおこないコロニーを形成させた。得られた形質転換細胞コロニーをピックアップし、PCR法およびサザンブロット解析により二つあるKU70遺伝子座のうち一方の遺伝子座を破壊した細胞の選抜を行った。
(2)プロモーターレス法ベクタープラスミドでの遺伝子破壊
次に、一方の遺伝子座を破壊するために、直線化pBDTA-Ku70 neoを同様の方法で導入し、G418(最終濃度300μg/ml)添加マッコイ5A培地で培養を行いコロニーを形成させ、先の(1)と同様の方法で形質転換細胞の解析を行い2つ目の遺伝子座も破壊された細胞株の選抜を行った。
【0060】
7.任意遺伝子の破壊効率-HPRT-
ヒト細胞株HCT116あるいは由来のku70破壊細胞を用いて遺伝子破壊効率を調べるためHPRT(hypoxanthine guanine phosphoribosyl transferase)遺伝子破壊により効率を求めた。
HPRTは核酸前駆体合成のサルベージ経路で働く酵素なので、HPRT遺伝子が破壊されても細胞の増殖に影響しないため、正確に遺伝子破壊効率を測定することができる。HCT116および由来のku70破壊細胞にハイグロマイシン抵抗性遺伝子を有するHPRT遺伝子破壊用のプラスミドDNAを導入し、得られたハイグロマイシン抵抗性クローンがどれくらいの割合でHPRT遺伝子が破壊されているかを、PCR法およびサザンブロッティング法で調べた。
HPRT遺伝子破壊効率(遺伝子破壊細胞数/ハイグロマイシン抵抗性細胞数)
親株HCT116 : 6/120 (5 %)
ku70破壊細胞株: 30/120(25 %)
このように非常に高い効率でHPRT遺伝子を破壊することができることから、ku70遺伝子破壊細胞株は、遺伝子破壊などの遺伝学的解析においてきわめて有用な細胞株であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により、自由にデザインしたDNAを所望の細胞のゲノムの特定の位置に高い確率で組み込むことが可能となるため、精度の高い遺伝子改変技術を提供することができる。また、組み換え時に生じ得る不要な組み込みに対し、例えば、Cre/loxを利用した切り出し系を開発が可能となることから、不要な組み込みを排除することもできる。その結果、特定の遺伝子を確実に導入し、該遺伝子を所望の細胞の中で安定に発現させることができる。また、特定の遺伝子を確実に破壊することも可能となる。従って、本発明に係る方法を用いることで、微生物を用いて食料等を生産する分野においては、容易に新品種の改良を実施することができるようになる。
また、本発明により、物質生産を阻害する遺伝子や、細胞毒素生産系に関与する遺伝子など、産業上利用可能な生物にとって不利益を及ぼす遺伝子の除去を容易に行うことができる。
さらに、本発明により提供される方法を高等動植物に応用することにより、動植物の品種改良はもとより、医療分野における創薬および遺伝子治療においても新たな技術の提供が期待できる。
【0062】
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【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】HygrncKU70およびncKU80を置換する方法を示す。AはncKUターゲットベクターの構築法を示す。ncKU遺伝子の5’領域を(p-1)(配列番号5)および(p-2)(配列番号6)で増幅し、3’領域を(p-3)(配列番号7)および(p-4)(配列番号8)で増幅した。Hygr遺伝子は(p-5)(配列番号9)および(p-6)(配列番号10)で増幅した。Bは融合PCR産物の標的遺伝子への相同組込みを示す。
【図2】ncKu70タンパク質の予想アミノ酸配列とヒトKu70タンパク質の予想アミノ酸配列との比較を示す。実線による枠内は、KU70/80のDNA結合ドメインを、破線による枠内はKU80結合領域を、点線による枠内はSAPドメインを示す。また、各種生物のKuにおいて特に保存されている領域PHRは斜字体に下線を付して示した。
【図3】ncKu80タンパク質の予想アミノ酸配列とヒトKu80タンパク質の予想アミノ酸配列との比較を示す。実線による枠内は、KU70/80のDNA結合ドメインを、破線による枠内はKU80結合領域を、点線による枠内はDNA-PKcs結合領域を示す。また、各種生物のKuにおいて特に保存されている領域PHRは斜字体に下線を付して示した。
【図4】野生型およびncku70およびncku80株のUVおよびMMS感受性を示す。白抜きの三角は野生型、黒丸はncku70、黒四角はncku80を示す。実験は少なくとも3回行い、各点はこれらのデータの平均値である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3