TOP > 国内特許検索 > スケジューリング装置、スケジューリング方法、スケジューリングプログラム、記録媒体、および質量分析システム > 明細書

明細書 :スケジューリング装置、スケジューリング方法、スケジューリングプログラム、記録媒体、および質量分析システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5709155号 (P5709155)
公開番号 特開2011-232258 (P2011-232258A)
登録日 平成27年3月13日(2015.3.13)
発行日 平成27年4月30日(2015.4.30)
公開日 平成23年11月17日(2011.11.17)
発明の名称または考案の名称 スケジューリング装置、スケジューリング方法、スケジューリングプログラム、記録媒体、および質量分析システム
国際特許分類 G01N  27/62        (2006.01)
FI G01N 27/62 D
G01N 27/62 C
G01N 27/62 X
請求項の数または発明の数 14
全頁数 32
出願番号 特願2010-104563 (P2010-104563)
出願日 平成22年4月28日(2010.4.28)
審査請求日 平成25年4月18日(2013.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】澤田 有司
【氏名】平井 優美
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】藤田 都志行
参考文献・文献 特開2008-128720(JP,A)
特開平08-129001(JP,A)
特開平08-129002(JP,A)
特開平04-294271(JP,A)
和気 弘明,「液体クロマトグラフィー/質量分析計」,色材協会誌,2005年 9月20日,Vol. 78, No. 9,p. 441-449
調査した分野 G01N 27/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
質量分析装置における物質の複数の特徴を示す物質データを、前記物質データに含まれる保持時間、検出開始時間、検出終了時間の少なくとも一つに基づいてソートし、予め定められたチャンネル数を上限としてソート後の順序が連続する物質データによって構成されている複数の第1のデータグループを作成する第1グルーピング部と、
第1のデータグループに含まれる前記物質データの最も早い検出開始時間と最も遅い検出終了時間に基づいて規定される範囲を第1のデータグループの測定時間領域とし、前記第1のデータグループの測定時間領域間の間隔が予め定められた第1の規定値以上となるように、前記第1のデータグループをグルーピングして第2のデータグループを作成する第2グルーピング部と、
前記第2のデータグループに基づき測定する試料を物質分離装置に導入し、前記第1のデータグループに含まれる物質の質量分析を行うための前記質量分析装置のチャンネルを制御する測定スケジュールを生成する出力データ生成部と、
を備えており、
前記第1の規定値として1つの値または複数の異なる値を受け付け、
前記第2グルーピング部が、前記1つの値または前記複数の異なる値のそれぞれを第1の規定値として、各第1のデータグループをグルーピングし、
前記出力データ生成部は、前記1つの値または前記複数の異なる値のそれぞれに対する測定スケジュールを生成することを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスケジューリング装置において、前記第1グルーピング部は、前記第1のデータグループに含まれる物質データの数が、前記質量分析装置のチャンネル数以下である予め指定された第2の規定値を超えないように、前記ソートされた順序に基づいて前記物質データをグルーピングすることを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスケジューリング装置において、前記物質データは、物質の検出に要する時間を示す最短検出時間をさらに含んでおり、
前記第1グルーピング部は、前記第1のデータグループに含まれる前記物質データが示す前記最短検出時間の総和が、予め定められた第2の規定値を超えないように、前記ソートされた順序に基づいて前記物質データをグルーピングすることを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のスケジューリング装置において、前記第1グルーピング部は、前記物質データに含まれる検出開始時間から検出終了時間までの範囲を検出時間範囲とし、前記ソートされた順序において連続している任意の2つの上記物質データに含まれる検出時間範囲が重ならない前記2つの物質データのそれぞれを、異なる第1のデータグループとしてグルーピングすることを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のスケジューリング装置において、前記第2グルーピング部が、第2のデータグループ内における第1のデータグループの測定時間領域に含まれていない期間を、近傍の第1のデータグループの測定時間領域に付加し、該第1のデータグループの測定時間領域を拡大することを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項6】
請求項2または3に記載のスケジューリング装置において、第2の規定値として複数の異なる値が設定されており、
前記第1グルーピング部が、前記複数の異なる値のそれぞれを前記第2の規定値として、各物質データをグルーピングし、
前記第2グルーピング部が、前記第1グルーピング部における各々の第2の規定値に対応したグルーピング結果をグルーピングし、
前記出力データ生成部が、各々の第2の規定値に対応した測定スケジュールを生成する、ことを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項7】
請求項1~の何れか1項に記載のスケジューリング装置において、前記測定時間領域は、前記質量分析装置が指定された1以上の測定対象物質の測定を実施するファンクションの時間区間であることを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項8】
請求項1~の何れか1項に記載のスケジューリング装置において、前記第1の規定値を入力データとして受け付ける第1データ受付部をさらに備えていることを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項9】
請求項2または3に記載のスケジューリング装置において、前記第2の規定値を入力データとして受け付ける第2データ受付部をさらに備えていることを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項10】
請求項1~の何れか1項に記載のスケジューリング装置と、物質分離装置と、質量分析装置とを備えており、
前記スケジューリング装置が、前記測定スケジュールを出力データとして前記物質分離装置と前記質量分析装置に出力し、
前記物質分離装置は、前記第2のデータグループ毎に測定試料を受け付け、
前記質量分析装置は、前記第1のデータグループに対応して前記チャンネルを制御して質量分析を実行することを特徴とする質量分析システム。
【請求項11】
請求項10に記載の質量分析システムにおいて、前記スケジューリング装置によって生成される1以上の前記測定スケジュールの何れを質量分析に用いるかについての選択を受け付ける選択受付部をさらに備えており、
前記質量分析装置が、受け付けた前記測定スケジュールを用いて、質量分析を実行することを特徴とする質量分析システム。
【請求項12】
質量分析装置における物質の複数の特徴を示す物質データを、前記物質データに含まれる保持時間、検出開始時間、検出終了時間の少なくとも一つに基づいてソートし、予め定められたチャンネル数を上限としてソート後の順序が連続する物質データによって構成されている複数の第1のデータグループを作成する第1グルーピング工程と、
第1のデータグループに含まれる前記物質データの最も早い検出開始時間と最も遅い検出終了時間に基づいて規定される範囲を第1のデータグループの測定時間領域とし、前記第1のデータグループの測定時間領域間の間隔が予め定められた第1の規定値以上となるように、前記第1のデータグループをグルーピングして第2のデータグループを作成する第2グルーピング工程と、
前記第2のデータグループに基づき測定する試料を物質分離装置に導入し、前記第1のデータグループに含まれる物質の質量分析を行うための前記質量分析装置のチャンネルを制御する測定スケジュールを生成する出力データ生成工程と、
を包み、
前記第1の規定値は1つの値または複数の異なる値であり、
前記第2グルーピング工程では、前記1つの値または前記複数の異なる値のそれぞれを第1の規定値として、各第1のデータグループをグルーピングし、
前記出力データ生成工程では、前記1つの値または前記複数の異なる値のそれぞれに対する測定スケジュールを生成することを特徴とするスケジューリング方法。
【請求項13】
コンピュータを請求項1~に記載のスケジューリング装置として動作させるスケジューリングプログラムであって、前記コンピュータを前記スケジューリング装置の前記各部として機能させるためのスケジューリングプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のスケジューリングプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の処理対象それぞれに関する複数のデータについてスケジューリングするスケジューリング装置およびスケジューリング方法に関する。また、そのようなスケジューリング装置としてコンピュータを動作させるためのプログラム、およびそのようなプログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる物質の同定、および定量を行う技術として、質量分析技術が知られている。特に、試料が複数の物質の混合系である場合には、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、およびキャピラリー電気泳動(CE)等の分離装置と組み合わされた、例えば、液体クロマトグラフィー/質量分析装置(LC/MS)、および液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析装置(LC/MS)等が用いられることが多い。
【0003】
近年、LC/MS等の分析装置における性能が向上してきており、分析速度が向上した分析装置、検出感度が向上した分析装置、広範囲な分析が可能となった分析装置が開発されてきている。分析速度の向上により、一つあたりの物質の検出に要する時間が短縮化され、その結果多くの検体を処理することが可能となる。また、検出感度の向上により、生体試料中の微量の物質等を検出できるようになる。また、広範囲な分析が可能となったことにより、いわゆるオーム解析が部分的ではあるが可能となりつつある。
【0004】
このような装置を利用して一斉分析を行うアプリケーションも、例えば、ウォーターズ社によって開発されている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】「Quanpedia」、[online]、ウォーターズ社、[平成22年3月30日検索]、インターネット<URL: http://www.waters.com/waters/nav.htm?cid=10148049>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、分析速度の向上、検出感度の向上、および広範囲分析の実現は、互いに相反関係にある。例えば、全体の分析速度を向上させようとすると、一度の測定でより多くの物質の検出を行う必要があり、その結果、1つの物質に割り当てられる検出のための時間が減少することによって検出感度が低下してしまう。また、検出感度を向上させようとすると、1つの物質に割り当てられる検出のための時間を長くとる必要があり、一定の時間内に検出できる物質の数も減少することとなる。その結果、複数回の測定が必要になるため分析速度が低下してしまう。一方、広範囲分析を行う場合、多くの種類の物質を測定するために、検出感度を維持すると分析速度が低下する。また、分析速度を速くしようとすると、1つの物質に割り当てられる検出のための時間が減少するため検出感度が低下することになる。
【0007】
そのため、分析速度、検出感度、および広範囲性をマネジメントするためには、測定スケジュールの管理が重要となる。例えば、1検体あたり400個の物質を測定する場合、1回の測定で検出可能な物質数の上限を40個とすれば10回の測定で全物質の検出が可能になる。
【0008】
質量分析装置はパラレルに複数の物質の検出が可能であり、パラレルに検出するために複数のチャンネルを設定できる。本明細書において「チャンネル」とは、質量分析装置において各物質を検出するための物質ごとの条件を指し、「チャンネルの数」または「チャンネル数」とは、特定の条件(質量数等)における条件値の個数であり、測定する物質の数と同義である。また、本明細書では、同時に検出する物質に対応するチャンネルをまとめたものをファンクションとする。複数のチャンネルで構成されたファンクションの開始時間および終了時間は、各チャンネルに含まれる最も早い検出開始時間および最も遅い検出終了時間によって規定される。このファンクションの開始時間から終了時間までの範囲を本明細書では「ファンクション範囲」と呼ぶ。また、1以上のファンクションをまとめたものを「測定グループ」と呼ぶ。なお、各物質が質量分析装置に導入される時間には一定の幅(ピーク幅)があり、このピーク幅によって規定される時間帯の開始時間および終了時間をそれぞれ検出開始時間および検出終了時間と呼ぶ。
【0009】
質量分析装置では測定グループごとに1回の測定を行う。パラレルに検出可能に設定されるチャンネル数が40個の場合、これらをまとめたファンクションを2つ含んだ測定グループを構成すれば、結果的に80個のチャンネルを1回の測定で測定することが可能になる。
【0010】
1つの測定グループに2つ以上のファンクションを含む場合、各ファンクション間の時間間隔(F-Ftime)が、F-Ftime>0であれば各ファンクション範囲を拡張することができる。一方、F-Ftime<0となるファンクションどうしでは、ファンクション範囲が重複している時間帯では検出時間が低下するため、検出感度が低下する。従って、1つの測定グループに2つ以上のファンクションを含む場合、各ファンクションは、F-Ftime>0となるように設定されることが望ましい。
【0011】
以上のようにして検出感度および1回での測定対象物質数を考慮しながら測定グループを作成しようとすると、測定対象物質が複数の場合、測定グループの組み合わせ数は膨大になる。そのため、手作業で測定スケジュールを構成することは実質的に不可能である。一方、測定スケジュールの構成が自動化されれば、分析速度、検出感度、広範囲性をマネジメントすることが可能になる。
【0012】
既存アプリケーション(上述のウォーターズ社Quanpedia等)では、分析速度の向上、検出感度の向上、および広範囲分析を実現するための測定スケジュールの自動的なマネジメントは不可能であった。そのため、複数のチャンネルでの検出を行う場合、測定グループの構成(チャンネル数、ファンクション数)、および測定回数などの測定スケジュールを自動でマネジメントする装置、およびこの測定スケジュールに基づいて質量分析を行うシステムの開発が望まれる。
【0013】
なお、上述したスケジュール管理の問題は、質量分析装置に限らず、会議室や会場などのスケジュール管理、およびアルバイト人員のスケジュール管理等、複数の処理対象についてどの時間で処理を実行するかといったスケジュール管理全般にあてはまることである。
【0014】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の処理対象データの処理実行時間についてのスケジューリングを行うことができるスケジューリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、測定の回数分だけの測定グループを事前に作成するスケジューリング装置、およびこの測定スケジュールに基づいて質量分析を実施するための質量分析システムを開発した。
【0016】
このスケジューリング装置では、チャンネルとして設定される物質の保持時間(検出開始時間から検出終了時間で構成される検出ピークのピークトップの時間)を参照して、保持時間が近いチャンネルを同一ファンクションにグルーピングする(第1のグルーピング)。
【0017】
スケジューリング装置はさらに、第1のグルーピングにより生成された各ファンクションの開始時間および各ファンクション終了時間からF-Ftimeを算出し、スケジューリング装置に記録されている所定の条件(ユーザが任意に指定)を参照して、近接しないファンクションを同じ測定グループにする(第2のグルーピング)。
【0018】
物質分離装置および質量分析装置では、スケジューリング装置からデータを受け取り、構成された測定グループに基づき必要な回数、試料導入および測定を実行する。
【0019】
以上のように、スケジューリング装置が第1のグルーピングおよび第2のグルーピングを実行して、測定スケジュールを決定し、物質分離装置および質量分析装置では、この情報に従って、試料導入および測定が実行される。
【0020】
本発明に係るスケジューリング装置は、上記課題を解決するために、質量分析装置における物質の複数の特徴を示す物質データを、前記物質データに含まれる保持時間、検出開始時間、検出終了時間の少なくとも一つに基づいてソートし、予め定められたチャンネル数を上限としてソート後の順序が連続する物質データによって構成されている複数の第1のデータグループを作成する第1グルーピング部と、第1のデータグループに含まれる前記物質データの最も早い検出開始時間と最も遅い検出終了時間に基づいて規定される範囲を第1のデータグループの測定時間領域とし、前記第1のデータグループの測定時間領域間の間隔が予め定められた第1の規定値以上となるように、前記第1のデータグループをグルーピングして第2のデータグループを作成する第2グルーピング部と、前記第2のデータグループに基づき測定する試料を物質分離装置に導入し、前記第1のデータグループに含まれる物質の質量分析を行うための前記質量分析装置のチャンネルを制御する測定スケジュールを生成する出力データ生成部と、を備えている構成である。
【0021】
上記の構成によれば、スケジューリング装置は、検出時間が互いに近い物質の物質データを同一の第1のデータグループとしてまとめる(第1のグルーピング)。さらに、各第1のデータグループに含まれる物質データの最も早い検出開始時間および最も遅い検出終了時間に基づいて各第1のデータグループの測定時間領域を規定し、同一の第2のデータグループに属する第1のデータグループの測定時間領域間の間隔が予め定められた第1の規定値以上となるように、各第1のデータグループを第2のデータグループに振り分ける(第2のグルーピング)。これにより、測定時間領域が互いに近いデータグループをそれぞれ別の第2のデータグループとして振り分ける。第2のデータグループに基づき測定する試料を物質分離装置に導入し、上記第1のデータグループに含まれる物質の質量分析を行うための上記質量分析装置のチャンネルを制御する測定スケジュールを生成して出力データとする。質量分析装置では、この出力データに基づいて質量分析を実施し得る。各データ物質はいずれかの第1のデータグループに含まれており、各第1のデータグループはいずれかの第2のデータグループに含まれている。そのため、各物質を、物質分離装置におけるどの試料導入に対応させて測定し、その測定においてどのようにチャンネルを制御するかの質量分析のスケジューリングを実施できる。
【0022】
より具体的にいえば、例えば、物質データに、質量分析装置におけるその物質の質量分離の際に質量分析装置に設定される取り込み電圧(例えばコーン電圧)の値が含まれている場合に、その物質データに対応する第1のデータグループおよび第2のデータグループに関連付けて、その取り込み電圧の値を質量分析装置に出力することができる。したがって、ある特定の試料導入に対する測定における特定の第1のデータグループの測定時間領域において質量分析装置にどのような取り込み電圧を設定するかのスケジューリングを実現できる。
【0023】
また、物質データに、質量分析装置に検出させる特定の質量数の値が含まれている場合に、その物質データに対応する第1のデータグループおよび第2のデータグループに関連付けて、その質量数の値を質量分析装置に出力することができる。したがって、ある特定の試料導入に対する測定における特定の第1のデータグループの測定時間領域において質量分析装置にどのような質量数を検出させるべきかのスケジューリングを実現できる。なお、特定の質量数を検出するよう設定された質量分析装置において、具体的に設定される質量数に対応したパラメータは、質量分析装置における質量分離方法に応じて異なるものである。例えば四重極型の分離部を備えている質量分析装置では、4つの電極に印加される電圧であり、飛行時間型の分離部を備えている質量分析装置では、測定すべき飛行時間である。一般的には、質量分析装置に質量数に関する情報が入力されることによって、質量分析装置においてこの質量数の情報に対応したパラメータが設定されることになる。
【0024】
また、質量分析装置がタンデム質量分析装置であり、物質データに、質量分析装置に設定される加速電圧(例えばコリジョンエネルギー)の値が含まれている場合に、その物質データに対応する第1のデータグループおよび第2のデータグループに関連付けられて、その加速電圧の値を質量分析装置に出力することができる。したがって、ある特定の試料導入に対する測定における特定の第1のデータグループの測定時間領域において質量分析装置にどのような加速電圧を設定するかのスケジューリングを実現できる。
【0025】
なお、複数の物質データは、スケジューリング装置が物質データ蓄積部をさらに備えている場合には、該物質データ蓄積部に物質データを記録、蓄積し、第1のグルーピングの際に該物質データ蓄積部から取得するものであり得る。あるいは、スケジューリングを実施する直前にユーザからの入力により取得するものでもあり得る。あるいは、通信ネットワークを介して外部から取得するものであってもよい。
【0026】
また、本発明に係るスケジューリング方法は、上記課題を解決するために、質量分析装置における物質の複数の特徴を示す物質データを、前記物質データに含まれる保持時間、検出開始時間、検出終了時間の少なくとも一つに基づいてソートし、予め定められたチャンネル数を上限としてソート後の順序が連続する物質データによって構成されている複数の第1のデータグループを作成する第1グルーピング工程と、第1のデータグループに含まれる前記物質データの最も早い検出開始時間と最も遅い検出終了時間に基づいて規定される範囲を第1のデータグループの測定時間領域とし、前記第1のデータグループの測定時間領域間の間隔が予め定められた第1の規定値以上となるように、前記第1のデータグループをグルーピングして第2のデータグループを作成する第2グルーピング工程と、前記第2のデータグループに基づき測定する試料を物質分離装置に導入し、前記第1のデータグループに含まれる物質の質量分析を行うための前記質量分析装置のチャンネルを制御する測定スケジュールを生成する出力データ生成工程と、を包含している。
【0027】
上記構成によれば、上述のスケジューリング装置と同様の効果を得ることができる。
【0028】
本発明に係るスケジューリング装置において、前記第1グルーピング部は、前記第1のデータグループに含まれる物質データの数が、前記質量分析装置のチャンネル数以下である予め指定された第2の規定値を超えないように、前記ソートされた順序に基づいて前記物質データをグルーピングする構成であり得る。
【0029】
本発明に係るスケジューリング装置において、前記物質データは、物質の検出に要する時間を示す最短検出時間をさらに含んでおり、前記第1グルーピング部は、前記第1のデータグループに含まれる前記物質データが示す前記最短検出時間の総和が、予め定められた第2の規定値を超えないように、前記ソートされた順序に基づいて前記物質データをグルーピングする構成であり得る。
【0030】
本発明に係るスケジューリング装置において、前記第1グルーピング部は、前記物質データに含まれる検出開始時間から検出終了時間までの範囲を検出時間範囲とし、前記ソートされた順序において連続している任意の2つの上記物質データに含まれる検出時間範囲が重ならない前記2つの物質データのそれぞれを、異なる第1のデータグループとしてグルーピングすることが好ましい。
【0031】
本発明に係るスケジューリング装置において、前記第2グルーピング部が、第2のデータグループ内における第1のデータグループの測定時間領域に含まれていない期間を、近傍の第1のデータグループの測定時間領域に付加し、該第1のデータグループの測定時間領域を拡大することが好ましい。
【0032】
本発明に係るスケジューリング装置において、前記第1の規定値として複数の異なる値を受け付け、前記第2グルーピング部が、前記複数の異なる値のそれぞれを第1の規定値として、各第1のデータグループをグルーピングし、前記出力データ生成部は、前記複数の異なる値のそれぞれに対する測定スケジュールを生成することが好ましい。
【0033】
同様に、本発明に係るスケジューリング装置において、第2の規定値として複数の異なる値が設定されており、前記第1グルーピング部が、前記複数の異なる値のそれぞれを前記第2の規定値として、各物質データをグルーピングし、前記第2グルーピング部が、前記第1グルーピング部における各々の第2の規定値に対応したグルーピング結果をグルーピングし、前記出力データ生成部が、各々の第2の規定値に対応した測定スケジュールを生成することが好ましい。
【0034】
本発明に係るスケジューリング装置において、前記測定時間領域は、前記質量分析装置が指定された1以上の測定対象物質の測定を実施するファンクションの時間区間であり得る。
【0035】
本発明に係るスケジューリング装置において、前記第1の規定値を入力データとして受け付ける第1データ受付部をさらに備えていることが好ましい。
【0036】
同様に、本発明に係るスケジューリング装置において、前記第2の規定値を入力データとして受け付ける第2データ受付部をさらに備えていることが好ましい。
【0037】
本発明に係る質量分析システムは、上記課題を解決するために、上述のスケジューリング装置と、物質分離装置と、質量分析装置とを備えており、前記スケジューリング装置が、前記測定スケジュールを出力データとして前記物質分離装置と前記質量分析装置に出力し、前記物質分離装置は、前記第2のデータグループ毎に測定試料を受け付け、前記質量分析装置は、前記第1のデータグループに対応して前記チャンネルを制御して質量分析を実行する構成を備えている。
【0038】
本発明に係る質量分析システムでは、前記スケジューリング装置によって生成される1以上の前記測定スケジュールの何れを質量分析に用いるかについての選択を受け付ける選択受付部をさらに備えており、前記質量分析装置が、受け付けた前記測定スケジュールを用いて、質量分析を実行することが好ましい。
【0039】
なお、本発明に係るスケジューリング装置は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを前記各部として動作させることにより、本発明に係るスケジューリング装置をコンピュータにおいて実現するプログラム、およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0040】
本発明に係るスケジューリング装置は、上記課題を解決するために、処理対象に対する処理を実施可能な処理実施時間を含む処理対象データを記録して蓄積する処理対象データ蓄積部と、処理対象データを、各処理対象データに含まれる前記処理実施時間に基づいてソートし、ソート後の順序が連続する処理対象データによってそれぞれが構成されている複数の第1のデータグループを作成する第1グルーピング部と、第1のデータグループに含まれる前記処理対象データの処理実施時間が示す処理実施時間の範囲を第1のデータグループの処理実施時間領域とし、前記第1のデータグループの処理実施時間領域間の間隔が予め定められた第1の規定値以上となるように、前記第1のデータグループをグルーピングし、第2のデータグループを作成する第2グルーピング部と、前記第1のデータグループおよび前記第2のデータグループに基づいて各処理対象データに対応する処理対象に対する処理を実行するための処理実施スケジュールを生成する出力データ生成部と、を備えている構成でもあり得る。
【0041】
上記構成によれば、処理すべき対象が複数ある場合に、どの処理対象をどの処理実施グループのどの区間で処理すればよいかのスケジューリングを実現できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係るスケジューリング装置によれば、質量分析のスケジューリングを容易に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、(a)は質量分析システムの構成を示すブロック図であり、(b)は(a)に示す質量分析装置の内部構成も示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、スケジューリング装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態におけるスケジューリング装置における処理の流れを示す図である。
【図4】(a)~(f)は、本発明の実施形態におけるスケジューリング装置において用いられるデータのデータ構造を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるスケジューリング装置によるファンクションの生成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態におけるスケジューリング装置による、図5に示す場合とは異なる物質データに基づくファンクションの生成を模式的に示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるスケジューリング装置によって生成される測定グループを模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施形態におけるスケジューリング装置によるファンクション範囲の拡張を説明する模式図である。
【図9】本発明の実施形態におけるスケジューリング装置によるファンクション範囲の拡張を説明する別の模式図である。
【図10】本発明の実施形態における出力データの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態における出力データの別の例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態における質量分析装置の解析結果を示す図である。
【図13】本発明の実施形態における入力画面を示す図である。
【図14】本発明の実施形態を示すものであり、コンピュータを用いて実現されたスケジューリング装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の別の実施形態におけるデータに含まれるシフト希望時間範囲を模式的に示す図である。
【図16】本発明の別の実施形態における出力データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について、図1~図14に基づいて説明すれば以下の通りである。

【0045】
(質量分析システムの構成)
はじめに、本実施の形態に係る質量分析システムについて、図1を参照して以下に説明する。

【0046】
図1(a)は、本実施の形態に係る質量分析システムの概略構成図である。図1(a)に示すように、質量分析システム1は、スケジューリング装置100、液体クロマトグラフ(物質分離装置)200、および質量分析装置300を含んで構成されている。

【0047】
(液体クロマトグラフの構成)
液体クロマトグラフ200は、解析対象となる試料中に複数の検出対象物質が混在している場合に、導入された試料中の各物質をその物性に基づいて分離するための装置である。本実施形態においては、液体クロマトグラフ200として超高速液体クロマトグラフ(ultra performance liquid chromatograph)を用いているが、この他にも、高速液体クロマトグラフ、キャピラリーフロー液体クロマトグラフ、ナノフロー液体クロマトグラフ等でもよい。また、液体クロマトグラフの代わりに、ガスクロマトグラフ(GC)、キャピラリー電気泳動装置等の電気泳動分離装置、イオンクロマトグラフィー等の分離装置を用いることが可能である。導入時間tにおいて液体クロマトグラフ200に導入された試料中の各物質は、その物質の物性に応じた保持時間δtに亘って液体クロマトグラフ200内に保持された後、時間t+δtにおいて液体クロマトグラフ200に連結された質量分析装置300に導入される。すなわち、液体クロマトグラフ200に導入された試料中の各物質は、保持時間の短いものから順に質量分析装置300に導入される。

【0048】
なお、質量分析装置300を検出器として測定を行う場合、各物質の保持時間は、その物質の質量分析装置300への導入速度(単位時間あたりの導入量)が最大となる時間(ピークトップ)で定義される。また、検出開始時間および検出終了時間はそれぞれ、物質の質量分析装置300への導入速度が所定の閾値よりも大きくなる時間および所定の閾値よりも小さくなる時間と規定できるが、保持時間およびピーク幅から推定した値であってもよい。

【0049】
(質量分析装置の構成)
質量分析装置300は、液体クロマトグラフ200から導入された物質をイオン化し、質量数/電荷(m/z)比によって、このイオンを分離および検出する装置である。本実施の形態における質量分析装置300は、試料中の目的物質のイオンに対応する質量数、および当該イオンがアルゴン等の不活性ガスの衝突を受け開裂することにより得られるイオンの質量数を選択的に測定する選択反応検出法(SRM:Selected Reaction Monitoring;または多重反応検出法(MRM:Multiple Reaction Monitoring)ともいう)により測定を行うタンデム質量分析装置(MS/MS)である。なお、本明細書では、説明の便宜上、「質量数/電荷」のことを単に「質量数」と呼ぶ。質量分析装置300としては、この他にも、試料中の目的物質のイオンに対応する質量数を選択的に測定する選択イオン測定法(SIM:Selected Ion Monitoring)により測定を行う質量分析装置、および所定の質量数範囲内で質量数を走査し、その質量数範囲に含まれる全てのイオンを検出する、いわゆるスキャンモードの測定などにも使用できる。

【0050】
図1(b)は、本実施形態における質量分析装置300の構成を示すブロック図である。図1(b)に示すように、質量分析装置300は、データ受信部310、制御部320、イオン化装置330、質量分離装置340、イオン検出装置350、および検出データ処理部350を備えている構成である。図1(b)中、各装置間および液体クロマトグラフ200とイオン化装置330との間の二重線は、液体クロマトグラフ200から導入される試料(物質またはそれに由来するイオン)の流れを表しており、各装置と各部との間の実線、および各部間の実線は、データの流れを表している。

【0051】
データ受信部310は、スケジューリング装置100から送信される出力データを受信する処理部である。受信したデータは、制御部320に送信される。

【0052】
制御部320は、データ受信部310から送信されたデータを受信して、受信したデータに含まれる情報を参照して、イオン化装置330、質量分離装置340、イオン検出装置350を制御する処理部である。

【0053】
イオン化装置330は、液体クロマトグラフ200から導入される物質を受け付け、導入された物質をイオン化する装置部分である。イオン化装置330においてイオン化された目的物質は、質量分離装置340に導入される。

【0054】
質量分離装置340は、イオン化装置330でイオン化された目的物質を質量分離する装置部分である。一般的に使われる質量分離装置340としては、磁場型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間型およびイオンサイクロトロン型などが挙げられる。質量分離装置340を通り抜けて質量分離されたイオンは、イオン検出装置350に到達する。

【0055】
イオン検出装置350は、質量分離装置340によって分離されたイオンを検出するための装置部分である。イオン検出装置350は、検出したイオンの情報を検出データ処理部360に出力する。

【0056】
検出データ処理部360は、イオン検出装置350から出力されたイオンの情報を、マススペクトル情報に変換する。なお、検出データ処理部360における変換によって獲られる情報は、モニタやプリンタなどの出力手段(不図示)を用いてユーザに提示し得る。

【0057】
(スケジューリング装置の構成および動作)
スケジューリング装置100は、液体クロマトグラフ200から導入される各物質の検出をどのタイミングで質量分析装置300が検出するかのスケジュールを作成し、作成したスケジュールおよび各物質の測定条件を質量分析装置300に出力する装置である。質量分析装置300は、スケジューリング装置100から取得した、測定スケジュールに基づいて、質量分析を実行する。さらに、スケジューリング装置100は、測定スケジュールに基づき、液体クロマトグラフ200および質量分析装置300にて実行される測定回数を制御する。

【0058】
スケジューリング装置100の構成および動作について、図2および図3を参照して説明する。図2は、スケジューリング装置100の構成を示すブロック図である。図3は、スケジューリング装置100における処理の流れを示す図である。

【0059】
図2に示すように、スケジューリング装置100は、ファンクション生成部(第1グルーピング部)11、測定グループ生成部(第2グルーピング部)12、ファンクション範囲拡張部(第2グルーピング部)13、出力データ生成部14、条件受付部(第1データ受付部、第2データ受付部)15、物質データ蓄積部16、および条件記録部17を備えている構成である。

【0060】
スケジューリング装置における各構成の詳細を説明する前に、まず、スケジューリング装置100の動作の概要について図2および図3を参照して説明する。

【0061】
まず、条件受付部15は、どの物質の測定を行うかを指定する情報、ファンクションに含めるチャンネル数(第2の規定値)およびファンクション間の間隔(第1の規定値)に関する情報を、ユーザから受け付ける(図3のS1)。受け付けた条件は、ファンクション生成部11に送られる。または条件記録部17に記録される。

【0062】
ファンクション生成部11は、条件受付部15が受け付けた、どの物質の測定を行うかを指定する情報に従って、物質データ蓄積部16から測定対象物質の物質データを取得する(図3のS2)。

【0063】
ファンクション生成部11は、条件記録部17に記録されている条件(ファンクションに含めるチャンネル数)を参照して、取得した物質データ群について各チャンネルの保持時間を用いてソートし、検出時間範囲が重なるものを同一ファンクションとしてグルーピングを行ない、ファンクションを生成する。(図3のS3)(第1のグルーピング)。ファンクション生成部11は、生成したファンクション情報を物質データのテーブルに書き込む。次いで、ファンクション情報が書き込まれた物質データのテーブルを測定グループ生成部12に出力する。

【0064】
測定グループ生成部12は、決定されたファンクションのテーブル、および条件記録部17に記録されている条件を参照して、ファンクション生成部11によって生成された各ファンクションをファンクション間の間隔(ユーザが任意に指定できる閾値を指定可能)を基準にグルーピングして、測定グループを生成する(図3のS4)(第2のグルーピング)。測定グループ生成部12は、生成した測定グループ情報を、ファンクション生成部11から出力された物質データのテーブルに書き込む。次いで、測定グループ情報が書き込まれた物質データのテーブルをファンクション範囲拡張部13に出力する。

【0065】
ファンクション範囲拡張部13は、測定グループ生成部12から出力された測定グループ情報が書き込まれたテーブルを参照して、測定グループ内のファンクションの開始時刻および終了時刻を再設定する。これにより、ファンクション範囲(詳細は後述する)が拡張する(図3のS5)。ファンクション範囲拡張部13は、設定したファンクション範囲の情報を、測定グループ生成部12から出力された物質データのテーブルに書き込む。次いで、設定したファンクション範囲の情報が書き込まれた物質データのテーブルを出力データ生成部14に出力する。

【0066】
出力データ生成部14は、ファンクション範囲拡張部13から出力されてきた物質データのテーブルを、質量分析装置300およびユーザが利用できるように、出力データとして生成する(図3のS6)。出力データ生成部14は、生成した出力データを、質量分析装置300あるいはユーザに対して出力する(図3のS7)。

【0067】
以下、スケジューリング装置100における各構成の詳細について説明する。

【0068】
(物質データ蓄積部)
物質データ蓄積部16は、物質データとして各物質に対応するチャンネルが蓄積されたデータベースである。物質データ蓄積部16は、ファンクション生成部11から与えられた物質データ要求(クエリ)に応じてチャンネルを読み出し、ファンクション生成部11に提供する。各チャンネルには、(1)物質ID、(2)物質名、(3)保持時間、(4)検出開始時間(保持時間およびピーク幅から推定)、(5)検出終了時間(保持時間およびピーク幅から推定)、(6)dwell time(検出感度によって推定)、(7)イオン化モード(ポジティブ、ネガティブ)、(8)プリカーサイオンの質量数、(9)プロダクトイオンの質量数、(10)コーン電圧(CV)、(11)コリジョンエネルギー(CE)を示す情報を含んでいる。ここで、ある物質のdwell timeとは、質量分析装置300がその物質(イオン)を検出するために要する1データポイントあたりの取り込み時間のことを指す。また、コーン電圧(CV)とは、標的イオンを質量分離装置340に取り込む電圧のことを指す。また、コリジョンエネルギー(CE)とは、タンデム質量分離において第1段階目の質量分離によって分離されてきたイオンを不活性ガスなどの衝突によって開裂させるために用いられるエネルギー(加速電圧)のことを指す。

【0069】
なお、物質データ蓄積部16により参照される物質データファイルとしては、例えば、属性値(1)~(10)をカンマで区切って記載したCSV(Comma-Separated Values)ファイルを用いることができる。ただし、物質データファイルの形式は、これに限定されるものではない。例えば、各属性値(1)~(10)を、予め属性名と関連付けられたタグで囲んで記載したXML(Extensible Markup Language)ファイル、タブで区切って記述したTSV(Tab-Separated Values)などを用いてもよい。

【0070】
また、物質データ蓄積部16にから与えられる物質データ要求には、物質データファイルから読み出すべき物質データが満たすべき条件を示す条件式が含まれ得る。物質データ蓄積部16は、物質データファイルに格納された物質データのうち、与えられた物質データ要求に含まれる条件式に該当する物質データのみを選択的に読み出し、読み出した物質データをファンクション生成部11に提供する。なお、与えられた物質データ要求に含まれる条件式に該当するデータのみを選択的にデータファイルから読み出す技術は、公知のデータベースにて頻用されている技術であるため、その詳細についての詳細な説明は省略する。

【0071】
また、本実施の形態においては、図2に示すように、スケジューリング装置100が物質データ蓄積部16を内蔵している構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ファンクション生成部11が、スケジューリング装置100に内蔵された物質データ蓄積部16(内部データベース)から物質データを取得する構成に代えて、ファンクション生成部11が、通信ネットワークを介してスケジューリング装置100に接続された物質データ蓄積部16(外部データベース)から物質データを取得する構成を採用することにより測定に適した物質データを得ることができ良好な測定結果となる。

【0072】
(ファンクション生成部)
ファンクション生成部11は、ユーザにより指定された、どの物質の測定を行うかの情報に対応する物質データを物質データ蓄積部16から取得すると共に、データ蓄積部16から取得した物質データからデータグループであるファンクションを生成するためのモジュールである。ここで、ファンクション生成部11によって生成される各ファンクションは、保持時間、検出開始時間または検出終了時間順にソートした物質データの集合である。つまり、ファンクション生成部11は、保持時間、検出開始時間または検出終了時間順に配列したときに互いに隣接する物質データ同士が同じファンクションに属するように、物質データ蓄積部16から取得した物質データをファンクションに割り当てる。

【0073】
ファンクション生成部11は、(1)各ファンクションに属する物質データの個数が予め設定されたチャンネル数(以下、設定チャンネル数)以下となり、かつ、(2)検出時間範囲が互いに重複しない物質データが同じファンクションに属さないという条件の下で、各ファンクションに割り当てる物質データの個数をできるだけ多くするよう割り当てる。なお、設定チャンネル数は、質量分析装置に設定し得るチャンネル数以下である。設定チャンネル数は、予め条件記憶部17に記憶されており、ファンクション生成部11は、ファンクションの生成において参照すべき設定チャンネル数を条件記憶部17から読み出すことができる。

【0074】
ファンクション生成部11の機能は、例えば、以下のステップによって実現することができる。以下のステップは、何れも、主記憶装置(後述する図14における主記憶装置130)に記憶されたテーブル(配列)に対する、ファンクション生成部11を処理主体とする情報処理である。以下では、保持時間順にソートする場合について説明する。

【0075】
STEP1:データ蓄積部16から取得した物質データ群を、テーブル(配列)として主記憶装置に記憶させる。主記憶装置にテーブルとして記憶された物質データ群の例を、図4(a)に示す。物質データが物質ID順にソートされている場合、a〔i、j〕によって、物質ID順でi番目の物質データのj番目の属性を参照することができる。例えば、物質ID順で2番目の物質データの3番目の属性である保持時間a〔2、3〕は、0.15(min)である。

【0076】
STEP2:主記憶装置にテーブルとして記憶された物質データ群を、各物質データに含まれる保持時間に基づいてソートする。ソート後の物質データ群の例を、図4(b)に示す。以後、a〔i、j〕によって、保持時間順でi番目の物質データのj番目の属性を参照することができる。例えば、保持時間順で2番目の物質データの3番目の属性である保持時間a〔2、3〕は、0.17(min)である。なお、ソートのアルゴリズムは特に限定されず、公知のアルゴリズムのうち任意のものを利用すればよい。

【0077】
STEP3:各変数を初期化する。具体的には、生成中のファンクションのファンクション番号を示す変数kを1に設定し、生成中のファンクションに属する物質データの個数を示す変数mを0に設定する。また、設定チャンネル数を示す変数Mに条件記憶部17から読み出した設定値を代入する。その後、各iについて、以下のSTEP4~STEP6の処理を繰り返す。1以上n以下の全てのiについて、以下のSTEP4~STEP6の処理を終えると、図4(c)に示すテーブル(配列)が得られる。

【0078】
STEP4:「m<M」、かつ、「a〔i、4〕<a〔i-1、5〕」であるか否かを判定する。前者は、生成中のファンクションに含まれている物質データの個数mが設定チャンネル数Mよりも小さいか否かの判定であり、後者は、i番目の物質データの検出時間範囲の開始時間(検出開始時間)a〔i、4〕がi-1番目の物質データの検出時間範囲の終了時間(検出終了時間)a〔i-1、5〕よりも小さいか、すなわち、i番目の物質データの検出時間範囲がi-1番目の物質データの検出時間範囲と重複しているか否かの判定である。この判定の結果が真である場合、STEP5へと進む。一方、この判定の結果が偽である場合、STEP6へと進む。なお、i=1の場合、この判定の如何に依らず、ステップ5へと進む。ファンクションに含まれるチャンネル数がユーザが任意に設定した数値であることを確認し、物質の検出時間範囲が他の物質の検出時間範囲に重複することを確認する。

【0079】
STEP5:i番目の物質データが属すべきファンクションのファンクション番号a〔i、12〕の値をkに設定した後、k番目のファンクションに属する物質データの個数mを1だけインクリメントする。

【0080】
STEP6:kを1インクリメントさせる。そして、i番目の物質データが属すべきファンクションのファンクション番号a〔i、12〕の値をkに設定した後、k番目のファンクションに属する物質データの個数mの値を1に設定する。

【0081】
ファンクション生成部11は、このような処理によって、各ファンクションに属する物質データの個数が設定チャンネル数以下になり、かつ、検出時間範囲が互いに重複しない物質データが同じファンクションに属さないという条件を満たすように、ファンクションを生成することができる。

【0082】
次に、各物質データに含まれる検出時間範囲を時間軸上に実線で表すことによって各物質データを図示している図5および図6を参照して、ファンクション生成部11の上記処理により得られるファンクションのファンクション構成について説明する。図5は、保持時間順に配列したときに互いに隣接する物質データの全部について検出時間範囲が重複している場合のファンクション構成を例示し、図6は、保持時間順に配列したときに互いに隣接する物質データの一部について検出時間範囲が重複していない場合のファンクション構成を例示している。図5および図6において、時間軸に沿って配列されている各太線の左端が検出開始時間を示しており、右端が検出終了時間を示しており、その間の区間が検出時間範囲を示している。また、例えば、図5における物質データdの検出開始時間から物質データdの検出終了時間までが、ファンクションFn1のファンクション範囲である。図5および図6に表されている物質データでは、いずれも検出時間範囲の大きさは等しく、各検出時間範囲の中央に保持時間が位置している。図5および図6においては、設定チャンネル数が「5」に設定されている場合を想定している。

【0083】
保持時間順にソートしたときに互いに隣接する物質データの全部について検出時間範囲が重複している場合、ファンクション生成部11によって生成される各ファンクションに属する物質データ(検出時間範囲)同士の相互関係は、図5に示す通りである。ファンクション生成部11は、物質データ蓄積部16から取得したn個の物質データd、d、…、dから、保持時間の早いものから順に5つの物質データd、d、…、dを抽出し、抽出した5つの物質データd、d、…、dからなる第1のファンクションFn1を生成する。次いで、ファンクション生成部11は、未だ何れのファンクションにも振り分けていないn-5個の物質データd、d、…、dから、保持時間の早いものから順に5つの物質データd、d、…、d10を抽出し、抽出した5つの物質データd、d、…、d10からなる第2のファンクションFn2を生成する。ファンクション生成部11は、このような処理を繰り返すことによって、各ファンクションに含まれる物質データの個数が設定チャンネル数以下になるという条件を満たすように、ファンクションを生成することができる。したがって、検出時間範囲を時間軸上に実線で表すことによって各物質データd、d、…、dを図示している図5においては、各物質データは、保持時間が早いものから5つずつ順に、ファンクションFn1、Fn2、…に振り分けられている。図5に表されている物質データでは、いずれも検出時間範囲の大きさは等しく、保持時間は各検出時間範囲の中央に位置しているため、検出開始時間順にソートした場合であっても、同様の結果となる。

【0084】
一方、保持時間順に配列したときに互いに隣接する物質データの対の一部について検出時間範囲が重複していない場合、ファンクション生成部11によって生成される各ファンクションに属する物質データ(検出時間範囲)同士の相互関係は、図6に示す通りである。図6において、物質データdは、物質データdから数えて5番目に保持時間が早いものであり、本来であれば、物質データd、d、…、dと共に第1のファンクションFn1に含まれるものであるところ、直前の物質データdと検出時間範囲が重複していないため、第1のファンクションFn1には含めない。

【0085】
そこで、物質データdは第2のファンクションFn2にグルーピングされている。同様に、物質データdは、物質データdから数えて2番目に保持時間が早いものであり、本来であれば、物質データdと同じ第2のファンクションFn2に含まれるものであるところ、直前の物質データdと検出時間範囲が重複していないため、ファンクションFn2には含めない。そこで、物質データdは第3のファンクションFn3にグルーピングされている。同様に、物質データdは、物質データdから数えて3番目に保持時間が早いものであり、本来であれば物質データdと同じ第3のファンクションFn3に含まれるものであるところ、直前の物質データdと検出時間範囲が重複していないため、第3のファンクションFn3に含めない。そこで、物質データdは第4のファンクションFn4にグルーピングされている。なお、本実施の形態では、できるだけ検出時間範囲が重複するようにファンクションを生成しているため、検出時間範囲が重複していない物質データを異なるファンクションにグルーピングしているが、検出時間範囲が重複していない物質データを含むファンクションが生成されてもよい。この場合に、どの程度まで許容するか(例えば、重複していない検出時間範囲間の間隔、ファンクション内に含まれる検出時間範囲が重複していない物質データの数、および検出時間範囲が重複していない物質データを含むファンクションの数等)は、ユーザが適宜設定すればよい。

【0086】
以上のように、ファンクション生成部11によって、各ファンクションに属する物質データの個数が設定チャンネル数以下になり、かつ、検出時間範囲が互いに重複しない物質データが同じファンクションに属さないという条件を満たすように、ファンクションが生成される。

【0087】
(測定グループ生成部)
測定グループ生成部12は、ファンクション生成部11によって生成されたファンクションをグループにまとめた測定グループを生成するためのモジュールである。上述のように、各測定グループは、ファンクション範囲(測定時間領域)同士が互いに近接しないファンクションの集合である。つまり、測定グループ生成部12は、ファンクション範囲同士が互いに近接する物質データが異なる測定グループに属するように、ファンクション生成部11によって生成されたファンクションを各測定グループに振り分ける。ここで、各ファンクションのファンクション範囲とは、そのファンクションに含まれる各チャンネルの検出開始時間のうちで最も早い時間から、そのファンクションに含まれる各チャンネルに含まれる検出終了時間のうちで最も遅い時間までの時間範囲のことを指す。また、ファンクション範囲同士が互いに近接しているとは、先のファンクション範囲の終点(以下、ファンクション終了時間と呼称)から後のファンクション範囲の始点(以下、ファンクション開始時間と呼称)までの時間間隔F-Ftimeが予め設定された時間間隔(以下、設定ギャップ)よりも小さいことを指す。なお、この設定ギャップは、予め条件記録部17に記録されており、測定グループ生成部12は、参照すべきファンクション間の設定ギャップを条件記録部17から読み出すことができる。

【0088】
測定グループ生成部12の機能は、例えば、以下のステップにより実現することができる。以下のステップは、何れも、主記憶装置(後述する図14における主記憶装置130)に記憶されたテーブル(配列)に対する、測定グループ生成部12を処理主体とする情報処理である。

【0089】
p番目のファンクションFnpのファンクション範囲を設定するために、以下のSTEP1~3の処理を実行する。これらの処理を各ファンクションに対して実行することにより、全てのファンクションのファンクション範囲が設定される。全てのファンクションのファンクション範囲(ファンクション開始時刻およびファンクション終了時刻)を設定し終えると、図4(d)に示すテーブル(配列)が得られる。

【0090】
STEP1:ファンクション番号a〔i、12〕=pとなるiについての検出開始時間a〔i、4〕の最小値を求め、求めた最小値をp番目のファンクションFnpのファンクション開始時間とする。

【0091】
STEP2:ファンクション番号a〔i、12〕=pとなるiについての検出終了時間a〔i、4〕の最大値を求め、求めた最大値をp番目のファンクションFnpのファンクション終了時間とする。

【0092】
STEP3:ファンクション番号a〔i、12〕=pとなる全てのiについて、ファンクション開始時間a〔i、14〕を、STEP1に算出したファンクション開始時間に設定し、ファンクション終了時間a〔i、15〕を、STEP2に算出したファンクション終了時間に設定する。

【0093】
ファンクション番号a〔i、12〕=pとなる全てのiについて、ファンクション番号a〔i、12〕を1に設定することによって、第1のファンクションFn1を第1の測定グループIn1に振り分ける。その後、2以上の各pについて以下のSTEP4を繰り返すことによって、各ファンクションFnpを何れかの測定グループに振り分ける。測定グループに振り分けが完了すると、図4(e)に示すテーブル(配列)が得られる。

【0094】
STEP4:ファンクションFnpがファンクションFn1と近接しているか否かを判定する。具体的には、Fn1のファンクション終了時間とファンクションFnpのファンクション開始時間との差F-Ftimeが所定の閾値以上であるか否かを判定する。ファンクションFnpがファンクションFn1と近接していない場合、ファンクションFnpをファンクションFn1と同じ測定グループに割り当てる。すなわち、ファンクション番号a〔i、12〕=pとなる全てのiについて、測定グループ番号a〔i、13〕=1に設定する。ファンクションFnpがファンクションFn1と近接している場合、ファンクションFn2に対して同様の処理を行う。ファンクションFnpがファンクションFn2と近接している場合、ファンクションFn3に対して同様の処理を行う。ファンクションFnpと近接していないファンクションFnqが見つかるまでこれを繰り返す(q<p)。ファンクションFnpと近接していないファンクションFnqが見つかった場合、ファンクションFnpをファンクションFnqと同じ測定グループに設定する。ファンクションFnpと近接していないファンクションが見つからなかった場合、ファンクションFnpのみを含む新たな測定グループを設定する。

【0095】
以上のようにして、測定グループ生成部12は、各ファンクションを何れかの測定グループに振り分ける。

【0096】
図7は、5つのファンクションFn1~Fn6が、2つの測定グループIn1~In2に振り分けられた場合の例を模式的に示す図である。図7における横軸が時間軸に対応し、各ファンクションを模式的に表現する矩形領域の横幅がファンクション範囲に対応する。なお、図7に示される各ファンクションは、図5および図6に示したファンクションとは異なる物質データ群から生成されたものである。図7では、説明の便宜上、隣接するファンクション範囲間にはギャップが存在するものとしているが、隣接するファンクション範囲同士が重複を有していてもよい。例えば、図5における物質データdにおける検出時間範囲と物質データdにおける検出時間範囲とでは重複部分があるため、図5におけるファンクションFn1とファンクションFn2とは重なりを有するものとなる。

【0097】
図7において、I1~I4は、ファンクション間のギャップを示しており、ここでは、I1=0.20min、I2=0.19min、I3=0.20min、およびI4=0.19minとする。また、ユーザの指定した設定ギャップを0.20minとする。I1の値が設定ギャップと同じ(設定ギャップ以上)であるため、ファンクションFn1およびFn2が何れも同じ測定グループIn1に振り分けられている。一方、I2の値が設定ギャップよりも小さいため、ファンクションFn3は、ファンクションFn2を含む測定グループIn1とは異なる測定グループIn2に振り分けられている。ファンクションFn4とファンクションFn3とのギャップI3は0.20minであり、設定ギャップ以上である。その一方で、ファンクションFn4とファンクションFn2とのギャップも設定ギャップ以上である。本実施形態においては、より小さい番号の測定グループに含ませるものとする。そのため、ファンクションFn4は測定グループIn1に振り分けられている。ファンクションFn4とファンクションFn5とのギャップI4は、0.19minであり、設定ギャップよりも小さい。そのため、ファンクションFn5は、ファンクションFn4が含まれる測定グループIn1とは別の測定グループに振り分けられている。ここで、ファンクションFn3とファンクションFn5とのギャップは、0.20min以上である。そのため、ファンクションFn5はファンクションFn3と同一の測定グループIn2に振り分けられている。

【0098】
なお、本実施の形態では、各ファンクションは、2つの測定グループの何れかに振り分けられているが、設定ギャップの値によって、3つ以上の測定グループが形成され得る。例えば、ファンクションFn2のファンクション範囲の時間幅が0.3minであり、設定ギャップが0.8minである場合には、ファンクションFn1、Fn2およびFn3は互いに別の測定グループに振り分けられることになる。

【0099】
(ファンクション範囲拡張部)
ファンクション範囲拡張部13は、同一の測定グループ内で互いに隣接するファンクションのファンクション範囲が重複しないようにして各ファンクションのファンクション開始時刻およびファンクション終了時刻を再設定するモジュールである。これにより、同一の測定グループ内で互いに隣接するファンクション間のギャップの一部を、これらファンクションに付加することができ、各ファンクションのファンクション範囲を拡張することができる。質量分析装置300は、検出すべき質量数に対応するチャンネルをこの拡張されたファンクション内で指定することができる。本実施の形態において質量分析装置300は、元来ファンクション間にあったギャップまで物質の検出を行うことができるため、液体クロマトグラフ200によって実際に分離されてくる物質の保持時間が、物質データに含まれる保持時間情報の値から遅れている場合であっても、より確実にこの物質の検出を行うことが可能となる。同様に、物質の内生量が多く、液体クロマトグラフ200によって実際に分離されてくる物質の検出終了時間が、物質データに含まれる検出終了時間情報の値から遅れている場合であっても、より確実にこの物質の検出を行うことが可能となる。

【0100】
ファンクション範囲拡張部13によるファンクション範囲の拡張例を、図8および図9に模式的に示す。図8および図9では、各ファンクションを矩形領域として模式的に表現している。また、矩形領域の横幅がファンクション範囲の時間幅に対応する。図8において、(a)は、同一の測定グループ内で互いに隣接する2つのファンクションFn1およびFn2を示し、(b)は、ファンクションFn1およびFn2のファンクション範囲をそれぞれ拡張したファンクションFn’1およびFn’2を示している。ファンクション範囲拡張部13は、ファンクションFn2の始点であるスタートタイムTFn2s、およびファンクションFn1の終点であるエンドタイムTFn1eを抽出する(図8(a))。ファンクション範囲拡張部13は、ファンクションFn’1の終点であるエンドタイムTFn’1eを、TFn’1e=(TFn2s-TFn1e)/2として設定する(図8(b))。また、ファンクション範囲拡張部13は、ファンクションFn’2の始点であるスタートタイムTFn’2sを、TFn’2s=((TFn2s-TFn1e)/2)+0.01として設定する(図8(b))。ここで、ファンクションFn’1とファンクションFn’2との間に設けた0.01minの間隔は、あるファンクションにおける測定から次のファンクションにおける測定に移る際にイオンを除去するためのオーバーヘッドタイムである。なお、このオーバーヘッドタイムは、0.01minに限定されるものではない。

【0101】
ファンクション範囲拡張部13は、このようにしてファンクション範囲が拡張された後のファンクションにおけるファンクション範囲の情報に基づき、図4(e)に示すテーブル(配列)のファンクション開始時刻およびファンクション終了時刻を書き換えて、ファンクション開始時刻およびファンクション終了時刻の再設定を行う。これにより、図4(f)に示すテーブル(配列)が得られる。

【0102】
以上のようにして、(1)物質ID、(2)物質名、(3)保持時間、(4)検出開始時間、(5)検出終了時間、(6)dwell time、(7)イオン化モード、(8)プリカーサイオンの質量数、(9)プロダクトイオンの質量数、(10)コーン電圧(CV)および(11)コリジョンエネルギー(CE)を示すチャンネルの情報を含む各物質データと、ファンクション番号、測定グループ番号およびファンクション範囲の情報(ファンクション開始時刻、ファンクション終了時刻)とが関連付けられたテーブルが得られる。

【0103】
なお、質量分析システム1を用いて物質の検出を行う場合、内部標準物質(internal standard、以後「IS」と呼ぶ)を試料中に含めることも可能である。ISは、各測定グループにおいて正しく測定が行なわれているかを判別するために、試料中に予め一定量添加され、これを検出することで分析誤差を算出できる。また、検出されるISの量を指標として他の検出対象の試料中での量を判別するためにも用いられる。本実施の形態では、測定グループ生成部12が各ファンクションを測定グループに振り分けた後、ファンクション範囲拡張部13がファンクション範囲の拡張をする前に、時間軸上、ISの保持時間と最も近い位置にあるファンクション範囲を有するファンクションにISの物質データを含ませる処理を行っている。図9は、ISを利用した場合のファンクション範囲の拡張を説明するための模式図である。

【0104】
図9(a)は、時間軸上のファンクションの位置、およびISの検出時間範囲の位置を示している。なお、図9では、時間軸上、ISの保持時間と最も近い位置にあるファンクション範囲を有するファンクションがファンクションFn2である場合を示している。この場合に、ファンクション範囲拡張部13は、ISの物質データをファンクションFn2に付加してから、ファンクションFn’2を設定する。図9に示す場合では、ISの保持時間が、ファンクションFn2のスタートタイム(ファンクション開始時刻)TFn2sよりも前である。そのため、ISがファンクションFn2に付加されることにより、ファンクション範囲拡張部13は、ファンクションFn2のスタートタイムTFn2sの代わりにISのスタートタイムTISsを用いてファンクションFn’1およびFn’2を設定する(図9(b))。すなわち、ファンクション範囲拡張部13は、ファンクションFn’1のエンドタイム(ファンクション終了時刻)TFn’1eを、TFn’1e=(TISs-TFn1e)/2として設定し、ファンクションFn’2のスタートタイムTFn’2sを、TFn’2s=((TISs-TFn1e)/2)+0.01として設定する(図9(c))。なお、ここで、ISのスタートタイムとは、液体クロマトグラフ200において、ISのピークが検出され始める時間であり、エンドタイムとは、ISのピークが見えなくなる時間である。すなわち、それぞれ、ISにおける検出開始時間および検出終了時間に相当する。

【0105】
(出力データ生成部)
出力データ生成部14は、各チャンネル、ファンクション、および測定グループが互いに関連付けられた出力データを生成するモジュールである。この出力データは、質量分析装置300および液体クロマトグラフ200に出力される。あるいは、ユーザがモニタを介して出力データを見ることができるよう、テーブルのデータを映像信号に変換して、モニタなどの出力装置に出力され得る。図10は、出力データ生成部14によって生成された出力データの例を示す図である。図10に示す例において各行はチャンネルの情報、およびスケジューリングされた測定グループ情報を示している。図10に示すように、出力データは、質量分析装置300における測定に用いられる各チャンネルが、ファンクションおよび測定グループに関連づけられている。スケジューリング装置100は、この出力データを質量分析装置300に出力する。質量分析装置300はスケジューリング装置から出力された出力データを測定スケジュールとして用いて条件設定を行ない、液体クロマトグラフ200を通過してくる試料について質量分析を実行する。図11は、モニタの画面に出力された出力データを示す図である。図11においては、ある測定グループにおける1つのファンクションのみを表している。ここでは、出力データ生成部14によって生成された出力データの情報を質量分析装置の制御アプリケーションに導入した例を示している。

【0106】
スケジューリング装置100は、測定グループの数だけ、液体クロマトグラフ200において試料導入がなされるように、液体クロマトグラフ200を制御する。

【0107】
ここで、出力データを用いて質量分析装置300がどのように制御されるかについて説明する。

【0108】
質量分析装置300では、スケジューリング装置100から出力される出力データをデータ受信部310が受信し、受信した出力データを制御部320に送信する。制御部320は、出力データに含まれる測定グループ番号情報、ファンクション番号情報、チャンネル情報および物質ID情報を参照して、各測定グループに属する物質データを識別する。制御部320は、各測定グループにおいて、各ファンクションのファンクション範囲を参照し、当該ファンクションのファンクション範囲ごとにイオン化装置330、質量分析装置340およびイオン検出装置350を制御する。

【0109】
具体的には、制御部320は、測定グループの各ファンクション範囲において、質量分離装置340がどのようなコーン電圧およびコリジョンエネルギーを設定すべきかについて、各ファンクションのファンクション範囲の情報、ならびに当該ファンクションに属する物質のコーン電圧情報およびコリジョンエネルギー情報を参照して、ファンクション毎に質量分離装置340を制御する。質量分離装置340はこの制御によって、あるファンクションにおいて、特定のコーン電圧およびコリジョンエネルギーに設定され、物質の質量分離を実行する。

【0110】
また、制御部320は、測定グループにおける各ファンクション範囲において、イオン検出装置350がどのような質量数のイオンを検出すべきかについて、各ファンクション範囲の情報、ならびに当該ファンクションに属する物質のチャンネル情報に基づいて測定グループごとにイオン検出装置350を制御する。当該ファンクションに複数のチャンネルが含まれている場合、対応するファンクションにて複数の質量数を検出するように制御する。イオン検出装置350はこの制御によって当該イオンの検出を行う。検出されたイオンの情報は、検出データ処理部360に送信される。

【0111】
上述のように、検出データ処理部360は、イオン検出装置350から出力されたイオンの情報を、マススペクトル情報に変換する。マススペクトル情報は、モニタやプリンタなどの出力手段を用いてユーザに提示し得る。モニタは、質量分析装置300に直接接続されていてもよく、あるいは、スケジューリング装置100に接続されているモニタであってもよい。スケジューリング装置100のモニタにマスクロマトグラフィーを表示させる場合、検出データ処理部360は、マスクロマトグラフィーを表示させるためのデータを、スケジューリング装置100に出力する。図12は、モニタの画面に表示させた解析結果の一例を示す図である。

【0112】
本実施の形態において、検出データ処理部360は、解析結果を測定グループ毎にモニタに表示させている。また、ある測定グループに属する各ファンクションに対応する結果を同一ウィンドウ上にて表示させている。図12に示す解析結果は、2つのファンクションを含むある測定グループにおける解析結果を示しており、図12中、下側のマスクロマトグラフィーは、2つのファンクションのうち早い時間に検出処理がなされたファンクションにおけるマスクロマトグラフィーを示しており、図12中、上側のマスクロマトグラフィーは、2つのファンクションのうちのもう一方のファンクション(遅い時間に検出処理がなされたファンクション)におけるマスクロマトグラフィーを示している。図12に示す解析結果では、横軸に時間を示し、各ファンクションにおいてトータルイオン数が最も多かった質量数におけるイオンの強度を100として、その相対値を縦軸に示している。図12に示されるように、異なるファンクション間では、検出されるイオンが占める時間軸上の範囲が異なっている。すなわち、図12に示される例では、下側のマスクロマトグラフィーでは、検出対象となったイオンは時間軸上早い時間帯に位置しており、上側のマスクロマトグラフィーでは、検出対象となったイオンは時間軸上遅い時間帯に位置している。これらをマネジメントした結果、異なるファンクション範囲を有する2つのファンクションを含む測定グループを生成し、各ファンクションに含まれる多チャンネルの同時検出に成功している。

【0113】
(条件受付部および条件記録部)
条件受付部15は、ファンクションおよび測定グループを生成するための上記した各条件をユーザが設定する場合に、ユーザ入力手段19によってユーザが入力した各条件を受け付けるためのモジュールである。条件受付部15が受け付けた条件の情報は、条件記録部17に記録される。

【0114】
条件記録部17は、ファンクション生成部11および測定グループ生成部12が参照する各条件を記録しておくための記録部である。これらの条件の情報は、条件受付部15がユーザから受け付けたものであってもよいし、条件記録部17に予め記録されているものであってもよい。

【0115】
上述の実施の形態では、設定チャンネル数および設定ギャップは、何れも1つの値を用いていた。しかしながら、例えば、ユーザが、複数個の設定チャンネル数、および複数個の設定ギャップを入力して、ファンクション生成部11が各設定チャンネル数を用いて、複数パターンのファンクションを生成し、測定グループ生成部12が各設定ギャップを用いて、複数パターンの測定グループを生成するものであってもよい。図13は、ユーザが複数個の設定チャンネル数、および複数個の設定間隔を入力する際の、モニタにおける入力および結果表示の画面を示す図である。なお、ユーザが設定チャンネル数として複数の値を入力する際、全ての値を入力するのではなく、例えば最小値として「5」および最大値として「10」を入力することにより、設定チャンネル数として「5、6、7、8、9および10」を入力したものとすることもできる。図13中の破線枠Aで囲った入力部分は、このように最小値および最大値を入力するものとしている。同様に、設定ギャップについても、例えば、最小値として「0.10」および最大値として「0.20」ならびに増加ステップとして「0.05」を入力することにより、設定間隔として「0.10、0.15および0.20」を入力したものとすることもできる。図13中の破線枠Bで囲った入力部分は、このように最小値および最大値ならびにステップ数を入力するものとしている。

【0116】
設定チャンネル数として複数の値が入力されると、ファンクション生成部11は入力されたそれぞれの設定チャンネル数について上述の処理を行う。また、複数の設定ギャップが入力されると、測定グループ生成部12は入力されたそれぞれの設定ギャップについて上述の処理を行う。したがって、設定チャンネル数の値がx個入力され、設定ギャップの値がy個入力された場合には、最終的に出力データ生成部によって、(x×y)個の出力データが生成されることになる。(x×y)個の出力データは、測定グループ数(すなわち、必要な試料投入の回数)、ファンクションあたりに設定されるチャンネルの数、各ファンクションのファンクション範囲、ファンクションに属する物質データの組み合わせ、および測定グループに属する物質データの組み合わせなどが膨大なパターンを含んで構成されるものである。なお、この中には同一パターンとして重複しているものが含まれる場合もあり得る。ユーザは、出力された複数の出力データの中から、調製し得る試料の量、測定対象物質の数、求める検出感度および精度、かけられるコストおよび時間、ならびに質量分析装置の性能(同時にいくつの質量数を検出できるか、すなわちいくつのチャンネルを指定できるか)などを考慮して、いずれの測定スケジュールを使用するかを決めることができる。スケジューリング装置100は、ファンクションあたりの物質データの数、設定ギャップ、および測定グループ数などの限られた情報のみを示す出力データを、図13中の破線枠Cで囲った結果表示部分に表示させる。なお、測定グループ数の数だけ試料投入が必要となるので、図13中の破線枠Cでは、測定グループ数の数を、必要なインジェクション(試料投入)の回数として表示している。ユーザは、結果表示部分に表示された情報を参考に、実際の質量分析に用いる測定スケジュールを選択することができる。

【0117】
スケジューリング装置100は、ユーザ入力手段19から入力されるユーザの選択結果を選択受付部18において受け付け、受け付けた情報を出力データ生成部14に出力する。出力データ生成部14は、選択受付部18からの情報に基づき、ユーザが選択した出力データを質量分析装置300に出力する。ユーザからの受け付けとしては、例えば、図14中の破線枠Dで囲った入力部分のように、選択するチャンネルの数および設定ギャップをユーザに入力させてもよい。

【0118】
(コンピュータを用いた構成例)
スケジューリング装置100は、例えば、コンピュータ(電子計算機)を用いて実現することができる。図14は、コンピュータを用いて実現されたスケジューリング装置100のハードウェア構成を例示したブロック図である。

【0119】
スケジューリング装置100は、図14に示したように、バス110を介して互いに接続された演算装置120と、主記憶装置130と、補助記憶装置140と、入出力インタフェース150とを備えている。演算装置120として利用可能なデバイスとしては、CPU(Central Processing Unit)を挙げることができる。また、主記憶装置130として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(random access memory)を挙げることができる。また、補助記憶装置140として利用可能なデバイスとしては、例えば、ハードディスクドライブを挙げることができる。

【0120】
入出力インタフェース150には、図14に示したように、質量分析装置300、入力装置400、および出力装置500が接続される。質量分析装置300との間のインタフェースは、例えば、USB(Universal Serial Bus)および通信ワークなどにより実現することができる。

【0121】
入力装置400は、設定チャンネル数などおよび設定ギャップをユーザがスケジューリング装置100に入力するための手段であり、例えば、キーボードである。キーボードとの間のインタフェースとしては、USBなどが一般的である。入力装置400を介して入力された各条件値は、演算装置120がこれを参照することができるよう主記憶装置130に格納される。すなわち、主記憶装置130は、条件記録部17として利用される。一方、出力装置500は、出力データを出力するための手段であり、例えば、モニタである。モニタとの間のインタフェースとしては、DVI(Digital Visual Interface)などが一般的である。なお、出力データを出力装置500を介して出力する代わりに、補助記憶装置140に格納するようにしてもよい。

【0122】
補助記憶装置140には、コンピュータをスケジューリング装置100として動作させるための各種プログラムが格納されている。具体的には、コンピュータを図2に示すファンクション生成部11、測定グループ生成部12、ファンクション範囲拡張部13、出力データ生成部14、条件受付部15、および選択受付部18として動作させるための、ファンクション生成プログラム、測定グループ生成プログラム、ファンクション範囲拡張プログラム、出力データ生成プログラム、条件受付プログラム、および選択受付プログラムが格納されている。

【0123】
主記憶装置130上に展開され、命令キャッシュにロードされたファンクション生成プログラムに含まれる命令を演算装置120に実行させることによって、コンピュータをファンクション生成部11として動作させることができる。コンピュータをファンクション生成部11として動作させる場合と同様、測定グループ生成プログラム、ファンクション範囲拡張プログラム、出力データ生成プログラム、条件受付プログラム、および選択受付プログラムに含まれる命令を演算装置120に実行させることによって、コンピュータを測定グループ生成部12、ファンクション範囲拡張部13、出力データ生成部14、条件受付部15、および選択受付部18として動作させることができる。

【0124】
また、補助記憶装置140には、コンピュータをデータベースモジュールとして動作させるためのデータベースプログラムと、このデータベースモジュールにより参照される物質データファイルとが格納されている。コンピュータをファンクション生成部11として動作させる場合と同様、データベースプログラムに含まれる命令を演算装置120に実行させることによって、コンピュータをデータベースモジュールとして動作させることができる。この物質データファイルは、複数の物質に関する物質データが記録されたファイルであり、このデータベースモジュールは、ファンクション生成部11からの要求に応じて、物質データファイルに記録された物質データを読み出したり、物質データファイルに物質データを書き込んだりするモジュールである。図2に示す物質データ蓄積部16は、このような物質データファイルとデータベースモジュールとにより実現することができる。

【0125】
本発明の目的は、上記各プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体をスケジューリング装置100に供給し、スケジューリング装置100がその記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても達成可能である。

【0126】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD-ROM/MO/MD/DVD/CD-R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。

【0127】
また、スケジューリング装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介してスケジューリング装置100に供給するようにしてもよい。この通信ネットワークとしては、とくに限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、とくに限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。

【0128】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態で用いたものと同じ機能を有する部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。

【0129】
前述の実施の形態では、ファンクション生成部11が各物質データを振り分けてファンクションを生成する際に用いていた条件は、各ファンクションに何個のチャンネルを含めることができるかを指定する値(設定チャンネル数)であった。本実施の形態では、この条件は、各ファンクションのファンクション範囲の時間幅をどの程度にするかを指定する値(第2の規定値、ファンクション設定幅)である。また本実施の形態においては、物質データに、測定に際しどの程度のdwell timeで検出されることが必要かを表す最短検出時間の情報が含まれている。

【0130】
ファンクション生成部11は、抽出した各物質データを、各物質データに含まれている各物質の保持時間に基づいて時間軸上に配列する。ファンクション生成部11は、条件記録部17からファンクションを生成するための条件であるファンクション設定幅の情報を取得する。ファンクション生成部11は、配列順序の前方の物質データから順に、物質データに含まれる最短検出時間を積算してゆく。ファンクション生成部11は、積算された最短検出時間がファンクション設定幅を超えることになる物質データの直前の物質データまでを、同一のファンクションとして振り分ける。生成されたファンクションに含まれる最も後の物質データの次の物質データから、再び、最短検出時間を積算してゆき、積算された最短検出時間がファンクション設定幅を超えることになる物質データの直前の物質データまでを、同一のファンクションとして振り分ける。これを繰り返すことによって、配列順序が連続している物質データが含まれるファンクションを順に生成する。ただし、ファンクション生成部11が、各物質の検出時間範囲が時間軸上で重なっていない物質データどうしを、相違するファンクションに振り分けることは、前述の実施形態と同様である。

【0131】
一般に測定する物質の種類が増え、ファンクションに含ませるチャンネルの数が増えると、dwell timeが減少し、検出感度が低下する。したがって、試料における存在量が非常に微量で、検出下限に近いか、これを下回っているような物質を検出する場合には、同一区間で測定する物質の数を減らして、設定するチャンネル数を減らしてdwell timeを大きくすることにより、検出感度を高くすることが望ましい。本実施の形態によれば、最短検出時間が大きい物質データがファンクションに含まれている場合には、そのグループに含まれる物質データの数が少なくなる。これにより、そのファンクションにおいては、dwell timeが大きくなり、検出感度よく測定を行うことができる。一方、試料中の存在量が多く、検出感度が低くても十分に検出できる場合には、最短検出時間を小さく設定することにより、1ファンクションに多くの物質データを含ませることができる。これにより、そのファンクションにおいては、多くの物質の検出を行うことができるため、総測定時間を短くすることができる。また、試料中の存在量が多く、検出上限を超えていると考えられる物質に対しては、最短検出時間を小さく設定することにより、1ファンクション内の物質データ数を多くすればよい。検出感度が下がることにより、検出上限を下回るようにすることが可能となる。

【0132】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について、図15および図16に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態で用いたものと同じ機能を有する部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。

【0133】
前述の実施の形態では、試料中の物質の質量数を測定して物質を検出する質量分析システムにおいて、測定スケジュールのスケジューリングを実行する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本実施の形態では、アルバイト人員やパート人員などのシフトについて、マネジメントしている。

【0134】
本実施の形態の前提として、1つの店舗において、100人のパート人員を雇っており、各パート人が希望する勤務時間は相違している。本実施の形態におけるスケジューリング装置は、100人のパート人員の勤務シフト(処理実施スケジュール)、すなわち、どの営業日のどの時間範囲に勤務させればよいかを自動でマネジメントするものである。

【0135】
本実施の形態において、スケジューリング装置の処理対象となるデータは、各パート人員に関する情報が含まれる人員データ(処理対象データ)である。各人員データは、(1)そのパート人員を他と識別するための人員ID、(2)パート人員の氏名、(3)パート人員が希望する勤務時間を表すシフト希望時間の開始時刻(処理実施時間)、(4)パート人員が希望する勤務時間を表すシフト希望時間の終了時刻(処理実施時間)を示す情報を含んでいる。なお、シフト希望時間の開始時刻および終了時刻の中央値を表す時刻をさらに含んでいてもよい。シフト希望時間はそれぞれ0時~23時における任意の時間範囲を指定するものである。スケジューリング装置には、各人員データが予め入力されている。なお、ここで、シフト希望時間は、各人が最低限勤務したい時間範囲を示しており、勤務時間がその前後に亘る場合も各人において許容されるものとする。図15は、各パート人員のシフト希望時間を、時間軸上に沿って、各人毎に実線で示すものの一部を示す図である。図15における縦軸(数値が記載された軸)が時間軸を表している。図15に示すように、各パート人員のシフト希望時間の時間範囲(開始時刻、終了時刻)は様々である。

【0136】
各パート人員の勤務シフトのマネジメントにあたって、店長などの店舗におけるスケジュール管理者は、同一時間範囲に勤務させるパート人員の数(以下、「勤務人数」という)(第2の規定値)、ならびに各勤務シフト間の時間(第1の規定値)をそれぞれ1以上設定して、スケジューリング装置に入力する。以下、入力されている、人員データ、勤務人数、各勤務シフト間の時間のそれぞれを参照してのスケジューリング装置の動作について説明する。

【0137】
STEP1:スケジューリング装置は、人員データに含まれるシフト希望時間の情報を参照して、各パート人員のデータを、シフト希望時間順にソートする。なお、ここで用いられるシフト希望時間の情報は、シフト希望時間の開始時刻である。

【0138】
STEP2:スケジューリング装置は、勤務人数を参照して、勤務人数毎に、シフト希望時間が早いものから順にパート人員のデータをグループ化してゆく。本実施の形態では、上述の実施形態と異なり、配列順序において連続している任意の2つのパート人員のデータにおいて、シフト希望時間範囲が重複しないデータがあっても、形成されるデータグループ(第1のデータグループ:上述の実施形態における「ファンクション」に相当)に含まれるパート人員のデータの数が、入力された勤務人数を下回っていれば、スケジューリング装置はそれぞれを同一のグループに振り分ける。なお、シフト希望時間範囲とは、シフト希望時間の開始時刻から終了時刻までの範囲をいう。

【0139】
STEP3:スケジューリング装置は、各グループに属する人員データに含まれるシフト希望時間の中から、最も早いシフト希望開始時刻、および最も遅いシフト希望終了時刻を見つけ出し、この最も早いシフト希望開始時刻から最も遅いシフト希望終了時刻までをシフト時間範囲(処理実施時間領域)として設定する。

【0140】
STEP4:スケジューリング装置は、勤務人数毎にグループ化されている人員データのデータグループを、さらにグルーピングする。このグルーピングによって、勤務人数毎にグループ化されている人員データの各データグループが何れかの営業日(第2のデータグループ:上述の実施形態における「測定グループ」に相当)に振り分けられる。このときに、スケジューリング装置は、同一営業日に属する各データグループにのシフト時間範囲同士の時間間隔が、予め入力されている各シフト間の時間以上となるように、各データグループを振り分ける。なお、パート人員の勤務シフトのマネジメントの場合、各データグループの時間範囲が重ならなければよいので、各勤務シフト間の時間としては小さな値(例えば0.5分)を入力しておけばよい。

【0141】
STEP5:スケジューリング装置は、各営業日におけるシフト時間範囲に含まれていない時間を、近傍のデータグループのシフト時間範囲に付加して、当該データグループのシフト時間範囲を拡大する。これにより、営業しているすべての時間においてパート人員が配置されることになる。

【0142】
上述の一連の処理は、スケジューリング装置に含まれるグルーピング部(第1グルーピング部、第2グルーピング部)によって実行することができる。

【0143】
SETP6:スケジューリング装置は、人員データ、各パート人員が属しているデータグループの情報、および各パート人員における勤務する営業日の情報が互いに関連付けられた出力データを生成する。この処理は、スケジューリング装置に含まれる出力データ生成部によって実行することができる。図16は、100人のパート人員を7営業日にシフト分けした結果の一部(第1営業日から第4営業日まで)を示している。例えば、第1営業日(図中「営業日:1」の群)では、グループ1、7および13にグループ分けされた人員データに対応するパート人員が勤務することとなる。図16では、拡大後のシフト時間範囲の開始時刻(就業開始時間)および終了時刻(就業終了時間)をそれぞれ、PSTおよびPETとして表示しているが、管理の都合上、それぞれにおいて小数点を切り上げて、シフト時間範囲を時間単位で管理してもよい。したがって、グループ1に属する人員データに対応するパート人員は、第1営業日において0時~9時まで勤務し、グループ7に属する人員データに対応するパート人員は、第1営業日において9時~17時まで勤務するシフトである。一方、第3営業日(図中「営業日:3」の群)では、グループ3および10の2つのグループにグループ分けされた人員データに対応するパート人員が勤務することとなる。

【0144】
なお、スケジュール管理者が、勤務人数について、複数の値をスケジューリング装置に入力していた場合には、スケジューリング装置は、勤務シフトについて、複数のパターンを出力する。そのため、スケジュール管理者は、複数の勤務シフトパターンの中から適宜選択することができる。

【0145】
以上により、本実施の形態によれば、シフト希望時間(開始時間、終了時間)が様々な複数のパート人員に対して、勤務シフトを決定することができる。

【0146】
なお、本実施の形態では、質量分析におけるスケジューリング以外の例として、複数のパート人員の勤務シフトのマネジメントについて説明したが、本発明は、この他にも、会議室や会場の利用希望者への会議室等の割り振り、および宅配業者の宅配スケジューリングなどにも適用することができる。会議室や会場の利用希望者への会議室等の割り振りでは、例えば、会場利用希望時間の異なる複数の会場利用希望者について、提供し得る会場等の数や、会場の設営および清掃などに要する時間などの各利用者間の間で確保すべき時間を指定することにより、各会場利用希望者をどの営業日に、どの会場に割り振るのかのスケジューリングを実行することができる。また、宅配スケジューリングでは、例えば、宅配希望時間の異なる荷物について、一人で集配可能な個数、地域の移動時間などを指定することにより、配送に必要な人数、各配送員の配送スケジュールのスケジューリングを実行することができる。

【0147】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、複数の処理対象が処理される時間をスケジューリングできるため、例えば、質量分析装置における分析スケジュールの作成、アルバイトのシフトマネジメント、および会場利用のマネジメントなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0149】
1 質量分析システム
11 ファンクション生成部(グルーピング部)
12 測定グループ生成部(グルーピング部)
13 ファンクション範囲拡張部(グルーピング部)
14 出力データ生成部
15 条件受付部(第1データ受付部、第2データ受付部)
16 物質データ蓄積部
17 条件記録部
18 選択受付部
19 ユーザ入力手段
100 スケジューリング装置
200 液体クロマトグラフ(物質分離装置)
300 質量分析装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15