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Specification :(In Japanese)高周波の超音波を使用したオイルサンド由来のビチューメンの抽出方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5504536
Publication number P2011-256353A
Date of registration Mar 28, 2014
Date of issue May 28, 2014
Date of publication of application Dec 22, 2011
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)高周波の超音波を使用したオイルサンド由来のビチューメンの抽出方法
IPC (International Patent Classification) C10G   1/00        (2006.01)
E21B  43/24        (2006.01)
FI (File Index) C10G 1/00 A
E21B 43/24
Number of claims or invention 9
Total pages 13
Application Number P2010-142041
Date of filing Jun 4, 2010
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第1項適用 平成21年度 秋田大学工学資源学部地球資源学科(Bコース)卒業課題研究発表審査会、国立大学法人秋田大学、平成22年2月9日 社団法人 資源・素材学会、「社団法人 資源・素材学会 春季大会講演集 2010年(I)資源編」、2010年3月30日
Date of request for substantive examination May 31, 2013
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】大川 浩一
【氏名】斉藤 知直
【氏名】細川 亮太
Representative (In Japanese)【識別番号】100129838、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 典輝
Examiner (In Japanese)【審査官】澤村 茂実
Document or reference (In Japanese)特開2007-186659(JP,A)
特公昭50-004001(JP,B1)
特開2002-338968(JP,A)
特開昭57-128787(JP,A)
特開昭51-124104(JP,A)
国際公開第2009/038728(WO,A1)
Field of search C10G 1/00- 1/10
E21B 43/24-49/10
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
オイルサンドに熱水又は水蒸気を加えて60~300℃とし、周波数が150~800kHzの超音波を照射して、オイルサンドから分離したビチューメンを回収することを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの抽出方法。
【請求項2】
前記熱水又は水蒸気が、熱水であることを特徴とする、請求項1に記載の抽出方法。
【請求項3】
超音波の照射時間が15分以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の抽出方法。
【請求項4】
前記熱水に0.004~0.04Mの塩を添加することを特徴とする、請求項2又は3に記載の抽出方法。
【請求項5】
前記塩が、強塩基であることを特徴とする、請求項4に記載の抽出方法。
【請求項6】
前記強塩基が水酸化ナトリウムであることを特徴とする、請求項5に記載の抽出方法。
【請求項7】
注入管により地下のオイルサンド層に水蒸気又は熱水を注入して、地下のオイルサンド層を60~300℃に加熱するとともに、地下のオイルサンド層に埋設した超音波発生装置により、周波数が150~800kHzの超音波を照射し、分離したビチューメンを地下に埋設した採油管から汲み上げることを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの採油方法。
【請求項8】
オイルサンドに熱水又は水蒸気を加えることができる分離槽と、該分離槽中のオイルサンドの温度を測定する温度測定装置と、周波数が150~800kHzのうちいずれかの波長の超音波を該分離槽に照射可能な超音波発生装置と、気体注入装置とを備えることを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの抽出装置。
【請求項9】
地下のオイルサンド層に水蒸気又は熱水を注入する注入管と、地下のオイルサンド層に埋設する温度測定装置と、周波数が200~600kHzのうちいずれかの波長の超音波を照射可能な地下のオイルサンド層に埋設する超音波発生装置と、地下に埋設する採油管とを備えることを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの採油装置。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルサンド(油砂)から、半固形の炭化水素(重質油)であるビチューメンを抽出する方法及びそのための装置に関する。また、本発明は、地下に埋蔵されているオイルサンド層からビチューメンを分離して採掘する方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油燃料代替資源の1つとしてオイルサンドが注目されている。オイルサンドとは砂、粘土、水と油の混合物であり、石油を含んだ油層が地殻変動で地表近くに移動し、揮発や水・バクテリアの影響により軽質分を失ったものである。砂や粘土の中に10%程度のビチューメンと呼ばれるアスファルトに近い重質油分が含まれている。オイルサンドは主にカナダのアルバータ州とベネズエラのオリノコ地域に分布している。オイルサンドの埋蔵量は、通常の石油資源の2倍以上と推定されており、エネルギーの安定供給確保が可能であるとされる。
【0003】
オイルサンドからビチューメンを回収するためには、露天掘りでオイルサンドを採掘後、抽出過程において熱水・加熱蒸気を加えて攪拌し、ビチューメンを回収している。抽出過程において、熱水または加熱蒸気を利用するため、水の加熱工程が必要となる。したがって、加熱工程で高エネルギーを消費するため、開発コストが従来の原油と比べ高いという問題がある。最近は、原油価格の高騰で、採算ラインを上回ったことから、オイルサンドの生産量が増加しているが、原油価格は不安定なため、下落した時に安定に供給できない可能性が出てくる。
【0004】
オイルサンド開発を安定的に行うために、より低エネルギーでビチューメンを回収する技術が開発されている。
その技術の1つとして、ビチューメン抽出の際に、アルカリ試薬などの薬剤添加を行う方法が報告されている(非特許文献2及び非特許文献4)。
【0005】
また、より低エネルギーでビチューメンを抽出する他の方法として、超音波を利用した技術が開発されている(特許文献1及び2並びに非特許文献1~3)。
しかし、これらの文献に記載されているいずれの方法においても、攪拌能力と剥離作用の高い18~40kHzの低周波の超音波が用いられおり、攪拌能力の低い200kHz以上の高周波の超音波は使用されていない。
尚、超音波は、超音波を照射した時に発生する微細気泡による振動、衝撃力などを利用して物の表面から汚れを取る作用があるため、洗浄の目的で広く産業に用いられている。
しかし、半導体の洗浄等の特殊な用途を除き、通常の洗浄の目的に使用する超音波洗浄機では、20~40kHzの超音波が主に用いられている。
【0006】

【特許文献1】米国特許第4,054,506号
【特許文献2】米国特許第4,443,322号
【非特許文献1】O.V.Abramovら他3名、2009年発行、Ultrasonics Sonochemistry、vol.16、pp.408-416
【非特許文献2】K.M.Sadeghiら他5名、1992年発行、Chemical Engineering Communications、vol.117、pp.191-203
【非特許文献3】K.M.Sadeghiら他2名、1994年発行、Energy Sources、vol.16、pp.439
【非特許文献4】Socrates Acevedoら他2名、2001年発行、Journal of Colloid and Interface Science、vol.242、pp.230-238
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の状況に鑑み、より効率よくオイルサンドからビチューメンを抽出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、45℃程度の温度においては、高周波の超音波を照射してもオイルサンドからビチューメンを抽出することができず、低周波の超音波を照射したときのみビチューメンが抽出できるものであったが、60℃以上の高温では、高周波の超音波を照射してもオイルサンドからビチューメンを抽出することができ、しかも、低周波の超音波を照射したときよりも抽出効率が高いことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記の(I)~(VI)に記載のオイルサンド由来のビチューメンの抽出方法、オイルサンド由来のビチューメンの採油方法(VII)、オイルサンド由来のビチューメンの抽出装置(VIII)及びオイルサンド由来のビチューメンの採油装置(VIII)を提供する。
【0010】
(I)オイルサンドに熱水又は水蒸気を加えて60~300℃とし、周波数が150~800kHzの超音波を照射して、オイルサンドから分離したビチューメンを回収することを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの抽出方法。
(II)前記熱水又は水蒸気が、熱水であることを特徴とする、上記(I)に記載の抽出方法。
(III)超音波の照射時間が15分以上であることを特徴とする、上記(I)又は(II)に記載の抽出方法。
(IV)前記熱水に0.004~0.04Mの塩を添加することを特徴とする、上記(II)又は(III)に記載の抽出方法。
(V)前記塩が、強塩基であることを特徴とする、上記(IV)に記載の抽出方法。
(VI)前記強塩基が水酸化ナトリウムであることを特徴とする、上記(V)に記載の抽出方法。
(VII)注入管により地下のオイルサンド層に水蒸気又は熱水を注入して、地下のオイルサンド層を60~300℃に加熱するとともに、地下のオイルサンド層に埋設した超音波発生装置により、周波数が150~800kHzの超音波を照射し、分離したビチューメンを地下に埋設した採油管から汲み上げることを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの採油方法。
(VIII)オイルサンドに熱水又は水蒸気を加えることができる分離槽と、該分離槽中のオイルサンドの温度を測定する温度測定装置と、周波数が150~800kHzのうちいずれかの波長の超音波を該分離槽に照射可能な超音波発生装置と、気体注入装置とを備えることを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの抽出装置。
(IX)地下のオイルサンド層に水蒸気又は熱水を注入する注入管と、地下のオイルサンド層に埋設する温度測定装置と、周波数が200~600kHzのうちいずれかの波長の超音波を照射可能な地下のオイルサンド層に埋設する超音波発生装置と、地下に埋設する採油管とを備えることを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの採油装置。

【発明の効果】
【0011】
本発明のオイルサンド由来のビチューメンの抽出方法、採油方法、抽出装置及び採油装置は、高周波の超音波を利用するものであるが、この高周波の超音波は低周波の超音波より攪拌能力が低いものの、水中に発生させる気泡数が多く、微細振動と作用範囲の広さに優れ、また、低周波の超音波にはない過酸化水素発生作用があることから、本発明の実施例に示されるように、より効率よくオイルサンドからビチューメンを抽出又は採油することを可能とするものである。さらには、低周波の超音波を用いる場合と異なり、砂粒子の微細化を抑制できるため、回収したビチューメン中に微細砂粒子が混合することも抑制できるものである。
【0012】
本発明において、特に、高周波の超音波の照射時間を15分以上とするとともに、0.004~0.04Mの塩を加えた場合には、本発明の実施例2及び3に示されるように、さらに効率よくオイルサンドからビチューメンを抽出・採油することが可能になるものである。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 本発明のビチューメン抽出装置を概略的に示す図である。
【図2】 オイルサンドの熱重量分析(TGA)の結果を示す図である。
【図3】 各条件により、オイルサンドからのビチューメンの回収率、抽出率及び純度を測定した結果を示す図である。
【図4】 温度によるビチューメン粘度の変化を測定した結果を示す図である。
【図5】 処理時間別にスターラー撹拌を行った場合の回収率、抽出率および純度を測定した結果を示す図である。
【図6】 処理時間別に28kHz超音波を照射した場合の回収率、抽出率および純度を測定した結果を示す図である。
【図7】 処理時間別に200kHz超音波を照射した場合の回収率、抽出率および純度を測定した結果を示す図である。
【図8】 スターラー攪拌および超音波照射(28kHz、200kHz)を15分行った後の粒径を測定した結果を示す図である。
【図9】 スターラー攪拌および超音波照射(28kHz、200kHz)を30分行った後の粒径を測定した結果を示す図である。
【図10】 濃度別にスターラー撹拌を行った場合の回収率、抽出率および純度を測定した結果を示す図である。
【図11】 濃度別に28kHz超音波を照射した場合の回収率、抽出率および純度を測定した結果を示す図である。
【図12】 濃度別に200kHz超音波を照射した場合の回収率、抽出率および純度を測定した結果を示す図である。
【図13】 抽出後の懸濁液に200kHz超音波を2時間照射した時のpH変化を測定した結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明のオイルサンド由来のビチューメンの抽出方法は、オイルサンドに熱水又は水蒸気を加えて60~300℃とし、150~800kHzの超音波を照射して、オイルサンドから分離したビチューメンを回収することを特徴とするものである。
【0015】
本発明で用いるオイルサンドとは、油砂又はタールサンドとも呼ばれる天然資源であり、極めて粘性が高く半固形状ともいえる炭化水素(重質油)を含む砂岩である。
本発明で用いるオイルサンドとしては、特に限定されず、カナダ産、ベネズエラ産、コンゴ産、マダガスカル産、日本産等のオイルサンドを用いることができるが、カナダのアルバータ州のものが多量に存在するため、これを好適に用いることができる。
【0016】
本発明で用いる熱水又は水蒸気としては、地下水、温泉水、鉱泉水、地熱水、河川水、雨水、湖水、廃水など、特に限定されずに用いることができ、これらの水を加熱し、又は、加熱して水蒸気化することにより用いるものである。また、加熱せずにオイルサンドに加えた上で、オイルサンドと一緒に加熱する形態であってもよい。
本発明のビチューメンの抽出方法は、オイルサンドに熱水を加える方法と、オイルサンドに水蒸気を加える方法とがあるが、オイルサンドに熱水を加える方法が好ましい。
オイルサンドに熱水を加える方法としては、オイルサンドに熱水を直接添加する形態であってもよいが、分離槽内の熱水中にオイルサンドを浸漬する形態が好ましい。あるいは、分離槽内の水中にオイルサンドを浸漬し、水を加熱して熱水とする形態であってもよい。
熱水又は水蒸気を加えたオイルサンドの温度は、60℃~300℃とするが、65℃~100℃とするのがより好ましく、さらに好ましくは、70℃~90℃とするのがよい。温度を300℃以上にすると、投入するエネルギーが大きくなりすぎるという問題がある。
【0017】
本発明で使用する超音波とは、空気などの媒体中で伝達する振動のうち、人間の耳で聞くことができる20Hz~20kHzの周波数の音よりも、さらに周波数の高い振動のことである。
液体に超音波を照射すると、定在波が生成し、その振幅の腹の位置で液体が激しく揺さぶられて、局所的に圧力が高い部分と低い部分が出てくる。その圧力が低くなったときに、液体中に微細な気泡が発生する。そして、圧力変動に伴い、気泡は膨張と収縮を繰り返し、収縮の限界に達すると気泡は崩壊(圧壊)する。その崩壊した時に液体中に強力な衝撃力が発生する。超音波洗浄機はこの衝撃力を利用し、固体表面に付着した汚れを落としている。
また、超音波作用には物理作用のみならず化学作用もある。定在波の周波数が高くなると微細気泡のサイズが小さくなる。そのため、気泡が収縮し圧壊するときに、気泡内部の温度が数千度、数千気圧を超える。そのときに気泡内部の水蒸気や空気等の気体はラジカル化される。水からは酸化力の強いOHラジカルや還元力が強いHラジカルが生成する。その後、OHラジカルとHラジカルは再結合し、水素分子や過酸化水素になるとされる。
これらの物理作用と化学作用は超音波の周波数に依存し、周波数が低いと物理作用が大きく、高いと化学作用が大きくなるとされる。また、高周波の超音波の場合には、定在波の腹の位置間隔が短くなるため、そこから発生する微細気泡が及ぼす作用がより均一になる。本発明は、この高周波の超音波の作用を利用して、低周波の超音波よりもより効率よくオイルサンドからビチューメンを抽出するものである。
【0018】
本発明では、周波数150kHz~800kHzの超音波を使用するが、より好ましくは、周波数が200~600kHzの超音波を用いるのがよい。
周波数が150~800kHzの超音波を発生させる方法としては、これに限定されるわけではないが、例えば、圧電体などからなる超音波振動子に、高周波での電流を印加することにより超音波を発生させることができる。
超音波の照射時間としては、5分以上の照射時間があればビチューメンを抽出することができるが、後期の実施例2の実験からも明かなように、15分以上照射することにより、効率よくビチューメンを抽出することが可能である。
また、本発明では、150kHz~800kHzの高周波を低周波の超音波を組み合わせて使用してもよい。例えば、まず、撹拌力の強い低周波の超音波を照射して十分に懸濁した後に、ビチューメンの抽出作用の強い150kHz~800kHzの超音波を照射する形態であってもよい。
【0019】
本発明の方法により得られるビチューメンとは、オイルサンドに含有されている、極めて粘性が高く半固形状ともいえる炭化水素であり、有機溶媒に溶解可能な重質な油性物質である。ビチューメンは、精製・改質することにより、汎用燃料等として利用可能であり、通常の原油に代わる資源として有用である。
【0020】
本発明のオイルサンド由来のビチューメンの抽出方法においては、さらに、塩を添加することにより、より効率よくビチューメンを抽出することが可能である。
としては、強基を用いるのがより好ましい。
強塩基とは、塩基解離定数の大きい塩基であり、これらに限定されるわけではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムなどを用いることができる。
これらの強塩基のうち、入手が容易なこと等から、水酸化ナトリウムを用いることが最も好ましい。
本発明で用いる強塩基は、本発明の実施例3の実験からも明かなように、濃度を0.004~0.04Mとした場合に、特に効率よくオイルサンドからビチューメンを抽出することが可能である。より好ましくは、濃度を0.010~0.020Mとするのがよい。
【0021】
本発明はまた、上記のオイルサンドからビチューメンを抽出する方法に使用する装置であって、オイルサンドに熱水又は水蒸気を加えることができる分離槽と、該分離槽中のオイルサンドの温度を測定する温度測定装置と、周波数が150~800kHzのうちいずれかの波長の超音波を該分離槽に照射可能な超音波振動子と、気体注入装置を備える抽出装置を提供する。
本発明の抽出装置で使用する分離槽は、オイルサンドを収容できる容器であって、該容器内でオイルサンドに熱水又は水蒸気を添加できるものであればいかなるものであってもよいが、熱水を貯めることができ、該熱水中にオイルサンドを浸漬できる容器が好ましい。また、本発明で使用する分離槽は、水を100℃以上に加熱するための加圧・密閉機構を備えたものであってもよい。
【0022】
また、本発明の抽出装置で使用される温度測定装置は、分離槽内の熱水の温度を計測する機能を備えているものであれば、いかなる装置・機器であってもよい。また、本発明の温度測定装置は、別に設けられた温度制御盤や分離槽加熱装置とともに温度調節機構を構成し、温度測定装置によって測定された温度が温度制御盤に出力され、温度制御盤によりコントロールされる分離槽加熱装置によって、分離槽内の温度を設定温度に保つ機能を果たすものであってもよい。
【0023】
本発明の抽出装置で使用される超音波発生装置は、150~800kHzの周波数のうち、いずれかの周波数の超音波を発生できるものであればいかなるものであってもよい。例えば、これに限定されるわけではないが、圧電体などからなる超音波振動子と、それに高周波電流を印加することができる電源とを備えた超音波発生装置を用いることができる。超音波発生装置で発生させることができる超音波の周波数は、超音波振動子の固有振動数により制限があることから、150~800kHzのすべての周波数の超音波を発生させることができるものでなくてよい。
【0024】
本発明の抽出装置で使用される気体注入装置は、オイルサンドと水の混合物に気体を注入できる装置であれば、いかなるものであってもよい。従来の低周波の超音波を利用したビチューメン抽出装置においては、このような気体注入装置は不要なものであった。しかし、高周波の超音波を利用する本発明の抽出装置においては、超音波の撹拌力が低周波の場合に比べて弱いため、気体をバブリングすることにより生じる撹拌力によって、これを補うことができるものである。
【0025】
本発明の抽出装置は、水を加熱するための加熱装置や、分離処理後に熱水を廃棄するための排水機構、排水を再利用するための循環機構、分離槽の上澄み中にあるビチューメンを回収するビチューメン採取機構、強塩基や過酸化水素などの薬剤を注入するための薬剤注入装置、熱水を製造・注入するための熱水注入機構などを、さらに備えていてもよい。
【0026】
本発明は、また、注入管により地下のオイルサンド層に水蒸気又は熱水を注入して、地下のオイルサンド層を60~300℃に加熱するとともに、地下のオイルサンド層に埋設した超音波発生装置により、周波数が150~800kHzの超音波を照射し、分離したビチューメンを地下に埋設した採油管から汲み上げることを特徴とする、オイルサンド由来のビチューメンの採油方法を提供する。
【0027】
本発明の採油方法は、地下のオイルサンド層からビチューメンを採油する方法として広く使用されているSAGD(Steam-Assisted Gravity Drainage)法に、高周波の超音波の利用を組み合わせることにより、実施することができる。例えば、これに限定されるわけではないが、次のように実施することができる。
まず、燃焼機構を有する水蒸気発生装置又は熱水発生装置により、地下帯水層や河川などの水を用いて、水蒸気又は熱水を製造する。そして、この水蒸気又は熱水を、あらかじめオイルサンド層に埋設した注入管を使って、オイルサンド層に吹き込む。水蒸気又は熱水の注入を開始してある程度時間が経過すると、オイルサンド層の温度が上昇しビチューメンが流動化し、また、オイルサンドが熱水と混合して60~300℃となり、ビチューメンが砂岩から分離しやすい状態となる。ここでさらに、オイルサンド層に埋設した超音波発生装置を用いて150~800kHzの高周波の超音波を照射することにより、ビチューメンの分離を促進させることができる。流動化して砂岩から分離したビチューメンは、注入管よりさらに下部に埋設された採油管に達し、ポンプを駆動してこの採油管によりビチューメンを地上のタンクに汲み上げることにより、オイルサンド由来のビチューメンを採油することができる。
【0028】
次に、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
(超音波の周波数・処理温度・化学作用がビチューメン抽出に与える効果)
オイルサンドからビチューメンを高効率で抽出することを目的とし、従来の熱水中の撹拌と超音波照射について、抽出効率の比較を行った。また、超音波の照射条件(周波数)と、抽出条件(処理溶液温度・化学作用)がビチューメン抽出におよぼす影響について検討した。
【0030】
(1-1)実験方法
図1に示す実験装置を用いて、オイルサンドからビチューメンを抽出する実験を行った。
実験試料にはカナダアルバータ産のオイルサンドを使用した。粒子サイズは3~5mmを使用した。また、このオイルサンドに含まれるビチューメンの含有量を後述の熱重量分析により測定した。
超音波照射は多周波超音波発生装置(TA-4021型;カイジョー製)と28kHzおよび200kHzの超音波振動子(カイジョー製)を用いて行った。超音波発生装置の出力は200Wとした。
また、撹拌法の確認として、スターラー(REXIM RSH-1A;アズワン製)を利用した。
処理溶液は、45℃および85℃のイオン交換水60mlにオイルサンド2.97gとNaOH0.03g(純正化学製)を入れることで作成した。
抽出処理中のフラスコ内の溶液温度は循環装置(CW-05G;ビスコテック株式会社製)を利用して維持できるようにした。
まず、スターラー撹拌および超音波照射を行なう前に、処理溶液を空気で20分間置換した。ガスの流量は100ml/minとした。その後に、スターラー撹拌(750RPM)および超音波照射(28kHz、200kHz)を、空気を流しながら15分間行なった。
処理後、水面に浮遊したビチューメン(微細な砂を含む)を回収し、乾燥させた後に重量を測定し、それを回収量とした。回収後のビチューメンの乾燥は、真空ポリカデジケーターに入れて、容器内をダイヤフラム式ドライ真空ポンプ(DAH-60;ULVAO社製)で真空にすることにより行った。そのあと熱重量分析(Thermo Gravimetry Analysis以降TGA)(TG8120;理学電機株式会社製)にて、純度を算出した。
ビチューメンの回収率および抽出率を以下に定義する。
水面で回収した砂粒子を含んだビチューメンの重量を回収量とし、砂粒子を含まないビチューメンの重量を抽出量とした。また、抽出量を回収量でわり、百分率で標記したものを純度(P)とした。純度は、回収したビチューメンに含有する砂の量が少ないほど高くなる。なお、回収量および抽出量を、加えたオイルサンド重量で割り、百分率標記したものを回収率(S)、抽出率(B)とした。
TGAとは、試料および基準物質を電気炉の中にいれ、一定の速度で加熱または冷却し、基準物質との重量変化を測定するものである。以下に性能仕様を示す。
測定温度範囲 : 室温~1100℃
最大昇温速度 : 100℃/min
最大測定試料量: 1g
測定雰囲気 : 大気、不活性ガス、真空(ガスフロー可)
【0031】
(1-2)実験結果
オイルサンドのTGA結果を図2に示す。100℃から600℃へ温度を上昇させるに従い、蒸発に伴う重量減少が確認できる。総減少量は12.3%であった。これより、オイルサンド中のビチューメン含有量は12.3wt.%であるとわかった。
処理温度45℃および85℃においてスターラー攪拌を15分行った場合の回収率、抽出率および純度を図3に示す。85℃の場合、回収率及び抽出率は1%で純度は90%であった。また、45℃の場合、回収率及び抽出率は0%であった。これより、スターラー撹拌を15分行った場合のビチューメン抽出は難しいと考えられる。
28kHz超音波の場合を図3に示す。85℃の場合、回収率は5.8%であった。また、純度は、90%であった。45℃の場合、回収率は3.2%で、純度は70%となった。両温度において、スターラー攪拌の場合と比較すると明らかに回収率や純度の向上が見られる。
200kHz超音波の場合を図3に示す。45℃の場合、回収率は0%であった。また、85℃の場合、回収率が8%で、純度は90%であった。
85℃において、28kHz超音波より高い回収率が得られた理由として、(I)ビチューメンの粘度が低下(図4)したこと、(II)波長が28kHzより短いため、気泡圧壊に伴う剥離作用を提供する領域が広いこと(III)OHラジカルや過酸化水素の生成による化学作用が考えられる。Sadeghiらは、超音波照射と過酸化水素の添加を組み合わせることは、ビチューメンの抽出に効果的であると報告している(非特許文献2)。彼らによると、過酸化水素を添加することで油が改質され、軽質分の浮遊量が増加するとされる。
【実施例2】
【0032】
(超音波の照射時間がビチューメン抽出に与える効果)
次に、超音波の照射時間がビチューメン抽出におよぼす影響について検討した。
(2-1)実験方法
利用した実験装置は実施例1と同じものを利用した。
処理溶液は、85℃のイオン交換水60mlにオイルサンド2.97gとNaOH0.03gを入れることで作成した。
処理前に、溶液をアルゴンで20分間置換した。その後に、スターラー撹拌(750RPM)および超音波照射(28kHz、200kHz)を10分、15分および30分行なった。
処理後は実施例1と同様に回収率と純度を算出した。また、照射後の砂粒子の粒径をMicrotrac II(Microtrac MT3300EX II;日機装社製)で測定した。
この装置は、レーザ回析・散乱法によるもので、分散媒体中に懸濁した試料粒子にレーザ光が当てられた時に起こる光の散乱現象を利用している。
散乱光の強度および散乱角度は、粒子の大きさに大きく依存しており、散乱光の強度分布を複数の光学検出器で測定し、収集された散乱光情報をA/D変換した後、コンピュータによる解析・演算処理によって粒度分布に変換される。以下に性能仕様を示す。
測定範囲 : 0.02~2.800μm
測定時間 : 10~999秒
試料必要量: 0.05~2g
溶媒 : 有機溶媒対応可能
電源 : 100VAC 50/60Hz
【0033】
(2-2)実験結果
処理時間別にスターラー攪拌を行った場合の回収率、抽出率および純度を図5に示す。処理時間に関係なく回収率が1%で、純度は90%であった。スターラー攪拌の場合は処理時間による影響は少ないと考えられる。
28kHz超音波の場合を図6に示す。10分および15分照射した時の回収率はそれぞれ3.8%、7.3%となり、約4%回収率が上昇した。また、30分照射した場合は、6.1%となり15分と比較して大きな変化がみられなかった。
200kHz超音波の場合を図7に示す。こちらも28kHz超音波と同様に15分までは回収率が上昇しているが、30分では変化がみられなかった。
これらの結果より、超音波照射を行う時間は、15分が効率的であると考えられる。
また、Abramovらは、微粒子のサイズが小さくなると、残査油の回収率が減少すると報告している(非特許文献1)。よって、その影響を確認するため15分と30分照射後の微粒子を回収し、Microtrac IIで粒径を測定した。
スターラー攪拌および超音波照射を15分、30分行った場合の粒度分布を図8及び9に示す。15分の場合の平均粒径は210μmで両音波とも同じであった。また、スターラーと比較しても変化は見られなかった。30分の場合においても粒子の微細化は見られなかった。この結果から、本実験において超音波照射による粒子の微細化は抑制されており、粒子微細化に伴うビチューメン回収率の低下は起こっていないと考えられる。しかし、28kHzの低周波の超音波を照射した場合には、超音波の定在波の腹の位置での粒子の凝集現象により、粒子径の増大が見られた。これは、低周波の超音波の場合には、粒子が凝集しやすいということを意味し、このことからも200kHzの方が優れた効果を奏するといえる。
【実施例3】
【0034】
(アルカリ(NaOH)濃度がビチューメン抽出に与える効果)
アルカリ濃度とpHが高くなることで次の効果が期待される。
(I)ビチューメン(油)と砂の表面張力が減少する
(II)ビチューメン(油)と砂の表面電荷を高めて分散しやすくする
これらの効果がビチューメンと砂の分離を促進するとされる。
よって、アルカリ試薬の添加量を変更することで、ビチューメン回収率への影響を検討した。
(3-1)実験方法
処理溶液は85℃のイオン交換水60mlにオイルサンドとNaOHを加える。NaOHの添加量は0、0.033、0.33、1、3.3wt%とした。なお、それぞれのNaOH濃度は0、0.0004、0.004、0.012、0.04mol/lである。
まず、処理前にアルゴンで20分間置換した。その後に、スターラー撹拌(750RPM)および超音波照射(28kHz、200kHz)を15分間行なった。処理後は実施例1と同様に回収率と純度を算出した。
【0035】
(3-2)実験結果
NaOH濃度別にスターラー攪拌を15分行った場合の回収率、抽出率および純度を図10に示す。NaOHを添加すると、純度に関しては45%から90%まで上昇しているが、回収率は、添加が増加すると(0.004~0.012mol/l)減少する傾向がみられた。
28kHz超音波の場合を図11に示す。濃度が高くなるほど、回収率と純度が上昇するのがわかった。また、0.012mol/lの時に回収率が一番高くなったが、その後の0.04mol/lで回収率の減少が見られた。
200kHz超音波の場合を図12に示す。200kHzの場合はNaOHの効果がよくあらわれている。無添加時の回収率は0%であったが、0.012mol/lの時に8%まで上昇した。これは、NaOHの濃度が高くなるに従い、ビチューメンと砂の静電反発力が大きくなり、溶液中に分散しやすくなったことで、超音波効果が促進されたからと考えられる。また、200kHzにおいても同様に0.04mol/lで回収率の減少が見られた。
Abramovらは、アルカリ濃度を0.02-0.03MおよびpHを10.5-11以上にすることで、エマルジョンが起こり、ビチューメンの液滴が小さくなり、回収率が減少すると報告している(非特許文献1)。そこで、超音波照射後のビチューメンの液滴を観察した。
Abramovらの報告と同様に、0.012Mから0.04MへNaOH濃度が増加した際に、液滴のサイズが小さくなることが、高周波の超音波を処理した際にも確認された。
【実施例4】
【0036】
(高周波による砂の沈殿作用)
実施例1と同じく、200kHzの超音波を照射してオイルサンドからビチューメンを抽出後、懸濁液に200kHz超音波をさらに2時間照射した。その結果を図13に示す。照射前のpHは6.7であるが、15分照射するとpHが4.5まで低下しているのがわかる。照射後、数時間経過すると砂が沈殿しているのが観測された。これにより、高周波の超音波を用いた場合には、超音波化学作用による酸性化作用で、オイルサンド懸濁粒子の沈殿回収処理が可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のオイルサンド由来のビチューメンの抽出方法及びそのための装置、並びに、オイルサンド由来のビチューメンの採掘方法及びそのための装置は、石油燃料代替資源であるオイルサンドからエネルギー資源を得るために有用である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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(In Japanese)【図10】
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(In Japanese)【図11】
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(In Japanese)【図12】
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(In Japanese)【図13】
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