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Specification :(In Japanese)癌の検出方法および検出用キット、ならびに癌治療剤

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5513375
Date of registration Apr 4, 2014
Date of issue Jun 4, 2014
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)癌の検出方法および検出用キット、ならびに癌治療剤
IPC (International Patent Classification) C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI (File Index) C12Q 1/68 ZNAZ
C12N 15/00 A
G01N 33/50 P
G01N 33/53 M
C07K 14/47
Number of claims or invention 16
Total pages 51
Application Number P2010-511025
Date of filing May 7, 2009
International application number PCT/JP2009/002007
International publication number WO2009/136501
Date of international publication Nov 12, 2009
Application number of the priority 2008121671
Priority date May 7, 2008
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination May 7, 2012
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】307014555
【氏名又は名称】北海道公立大学法人 札幌医科大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】鈴木 拓
【氏名】豊田 実
【氏名】今井 浩三
【氏名】篠村 恭久
【氏名】時野 隆至
Accelerated examination, or accelerated appeal examination (In Japanese)早期審査対象出願
Representative (In Japanese)【識別番号】100135943、【弁理士】、【氏名又は名称】三橋 規樹
【識別番号】100102842、【弁理士】、【氏名又は名称】葛和 清司
Examiner (In Japanese)【審査官】伊達 利奈
Document or reference (In Japanese)LEHMANN, U., et al.,,Epigenetic inactivation of microRNA gene hsa-mir-9-1 in human breast cancer.,The Journal of Pathology, 2008 (Published Online: October 18, 2007), Vol.214, pp.17-24
GRADY, WM., et al.,,Epigenetic silencing of the intronic microRNA hsa-miR-342 and its host gene EVL in colorectal cancer,Oncogene, 2008 (published online: February 11, 2008), Vol.27, pp.3880-3888
LUJAMBIO, A., et al.,,CpG Island Hypermethylation of Tumor Suppressor microRNAs in Human Cancer.,Cell Cycle, 2007, Vol.6, No.12, pp.1455-1459
CORNEY, DC., et al.,MicroRNA-34b and MicroRNA-34c Are Targets of p53 and Cooperate in Control of Cell Proliferation and,Cancer Research, 2007, Vol.67, No.18, pp.8433-8438
AUER, RL., et al.,,Identification of a potential role for POU2AF1 and BTG4 in the deletion of 11q23 in chronic lymphocy,Genes, Chromosomes and Cancer, 2005, Vol.43, pp.1-10
Cell Cycle,2007, Vol.6, No.9, pp.1001-1005
Nature Genetics,1996, Vol.14, pp.482-486
Field of search C12Q 1/68
C12N 15/00-15/90

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
被検対象における癌を検査する方法であって、
被検対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出すること、および
前記領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGの割合が健常対象より多い場合に、被検対象において癌が存在するとの検査結果とすること
を含み、癌が大腸癌および胃癌からなる群から選択される、前記方法。
【請求項2】
癌が大腸癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被検対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGの割合が所定の値以上の場合に、被検対象における大腸癌の深達度がsm(submucosa)以深であるリスクを有するとの予測結果とすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
被検対象における多発性胃癌を検査する方法であって、
被検対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出すること、および
前記領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGの割合が非癌対象より多い場合に、被検対象において多発性胃癌が存在するとの検査結果とすること
を含む、前記方法。
【請求項5】
対象における大腸癌の度を予測する方法であって、
対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出すること、および
前記領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGの割合が所定の値以上の場合に、大腸癌の深達度がsm以深であるリスクを有するとの予測結果とすること
含む、前記方法。
【請求項6】
被検対象における胃癌の再発リスクおよび/または発癌リスクを予測する方法であって、
被検対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出すること、および
前記領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGの割合が非癌対象より多い場合に、被検対象が胃癌の再発リスクおよび/または発癌リスクを有するとの予測結果とすること
を含む、前記方法。
【請求項7】
被検対象における大腸腺腫を検査する方法であって、
被検対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出すること、および
前記領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGの割合が健常対象より多い場合に、被検対象において大腸腺腫が存在するとの検査結果とすること
を含む、前記方法。
【請求項8】
生物学的試料が、血清、糞便、大腸組織、胃組織、胃洗浄液、膵液および胆汁からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
メチル化されたCpGの検出を、配列番号10、11、13~15および17~20からなる群から選択される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出するオリゴヌクレオチドおよび試薬を含む、大腸癌および胃癌からなる群から選択される癌を検出するためのキット。
【請求項11】
癌が大腸癌である、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
癌が多発性胃癌である、請求項10に記載のキット。
【請求項13】
miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出するオリゴヌクレオチドおよび試薬を含む、大腸癌の深度を予測するためのキット。
【請求項14】
miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出するオリゴヌクレオチドおよび試薬を含む、胃癌の再発リスクおよび/または発癌リスクを予測するためのキット。
【請求項15】
miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出するオリゴヌクレオチドおよび試薬を含む、大腸腺腫を検出するためのキット。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドが、配列番号10、11、13~15および17~20のいずれかに記載の塩基配列を含む、請求項10~15のいずれか一項に記載のキット。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を検出する方法および癌の検出用キット、また癌の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
microRNA(以下、miRNAと表記する場合がある)は、21~22塩基の短いノンコーディング(non-coding)RNAであり、前駆体であるprimary miRNAがDroshaによって切り出されてpre-miRNAとなり、さらにDICERを含む RISC複合体によってプロセシングを受けることで成熟型miRNAとなる。そして、相同性のある多数の標的遺伝子のmRNAからタンパク質への翻訳を阻害することで、様々な遺伝子の発現を抑制的に制御する(図1)。
【0003】
近年、癌におけるmiRNAの関与が示唆されて以降、癌とmiRNAとの関連に着目した研究が盛んに行われており、miRNAが癌遺伝子や癌抑制遺伝子の発現を制御することで癌において重要な役割を担っていることが明らかにされつつある。癌組織においては、正常組織と比較して、数多くのmiRNAの発現が低下していることが示されるとともに(非特許文献1および2参照)、癌細胞において発現が低下しているある種のmiRNAは、癌遺伝子の発現を抑制することで癌抑制遺伝子的に機能することも報告されている(非特許文献3参照)。その一方で、腫瘍組織において過剰に発現しているmiRNAに関しては、その発現が癌遺伝子により誘導されること、また、癌遺伝子的に機能して腫瘍の形成に関与することなどを示唆する報告もなされている(非特許文献4および5参照)。
【0004】
これに対し、miRNAが癌抑制遺伝子や癌遺伝子の標的として機能するという面からmiRNAと癌との関連を解明しようとする研究も行われている。例えば、癌遺伝子産物であるMycは、B細胞リンパ腫において高い発現を示すmiR17-92というmiRNAクラスター遺伝子を標的としており、その発現を誘導することが示されている(非特許文献4および5参照)。そしてまた、一方で、癌抑制遺伝子産物であるp53は、miR-34a、miR-34bおよび miR-34cから構成される miR-34ファミリーに属するmiRNA遺伝子を直接的な標的としており、p53が、miR-34a遺伝子およびmiR-34b/c遺伝子のプロモーター領域に存在するp53結合部位に結合し、miR-34ファミリーの各miRNAの発現を制御していることが明らかにされている(非特許文献6参照)。そしてまた、miR-34ファミリーの各miRNAは、細胞増殖抑制作用やG1停止を誘導する作用を有することも示されている(非特許文献6および7参照)。
【0005】
このように、miRNAについては、癌との関連について数多くの研究がなされており、その研究結果から、癌におけるmiRNAの解析は、発癌のメカニズムを解明するためだけでなく、新しい癌の診断法や治療法の開発の基礎的知見を得るためにも重要であると考えられてきた。
【0006】
一方、癌の発生・進行の要因の1つに、癌抑制遺伝子の不活性化が挙げられるが、このメカニズムとしては、エピジェネティックな遺伝子の発現抑制(サイレンシング)が広く知られている。特に、遺伝子の転写開始領域におけるCpGのシトシンメチル化(DNAメチル化)はほぼあらゆる癌において見られる現象であり、既知の癌抑制遺伝子の多くが、DNAメチル化によりサイレンシングを受けることが報告されている。近年、癌において特異的にDNAメチル化が認められる遺伝子が次々と発見され、癌におけるDNAメチル化は、癌の発生・進行に関与する遺伝子異常のメカニズムとして、変異や欠失と並ぶ重要性を持っていると考えられるようになっており、上記のようなmiRNAと癌との関連もふまえ、miRNA遺伝子のメチル化によるサイレンシングと癌との関係についても徐々に研究が進められてきた(非特許文献8および9参照)。
【0007】
しかしながら、数百種類以上も存在するmiRNAのうち、その遺伝子のDNAメチル化について特定の癌との関連がこれまでに解明されたものはごく少数にとどまっており、また、miRNA自体の機能も具体的に解明されていないものが多いことから、癌におけるエピジェネティックな遺伝子の発現制御とmiRNAとの関連についても、大多数のmiRNAについては、未だ詳細な解析が行われておらず、不明な部分が多いのが現状である。
【0008】

【非特許文献1】Lu J. et al., Nature, 435: 834 -838, 2005
【非特許文献2】Thomson J. M. et al., Genes & Development, 20: 2202-2207, 2006
【非特許文献3】Johnson S. M. et al., Cell, 120: 635-647, 2005
【非特許文献4】He L. et al., Nature, 435: 823-833, 2005
【非特許文献5】O’Donnell K. A. et al., Nature, 435: 839-843, 2005
【非特許文献6】He L. et al., Nature, 447: 1130 -1134, 2007
【非特許文献7】Corney D.C. et al., Cancer Research, 67: 8433-8438, 2007
【非特許文献8】Lujambio A. et al., Cancer Research, 67: 1424-1429, 2007
【非特許文献9】Lujambio A. et al., Cell Cycle, 15: 1455-1459, 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、癌においてエピジェネティックなサイレンシングを受けるmiRNAについて網羅的な解析を行うことにより、癌に関連するmiRNAを同定してその癌における役割を解明し、該miRNAに関連した新規な癌の検出方法および癌の治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行う中で、癌細胞において特異的にエピジェネティックな遺伝子サイレンシングによる制御を受けて発現が低下しているmiRNAとしてmiR-34bおよびmiR-34cを初めて同定し、その遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化が、正常組織ではほとんど認められないのに対し、癌組織では高いレベルで認められることから、対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出することにより、対象における癌の検出が可能となることを見出し、本発明を完成させた。そして、かかる知見に基づいてさらに検討を進めた結果、miR-34bおよびmiR-34cが、癌遺伝子や細胞周期調節遺伝子等を標的としてそれらの発現を抑制していることをも見出し、さらにまた、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドが、miR-34b遺伝子やmiR-34c遺伝子とは逆方向に転写されるBTG4遺伝子のプロモーターとしても機能することを見出すとともに、BTG4遺伝子が癌細胞においてエピジェネティックなサイレンシングにより発現が低下しており、その遺伝子産物であるBTG4が細胞増殖抑制能を有することを初めて見出し、本発明の癌治療剤を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、対象における癌を検出する方法であって、
対象から得た生物学的試料中のmicroRNA34b遺伝子および/またはmicroRNA34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出することを含む、前記方法に関する。
また、本発明は、対象から得た生物学的試料中のmicroRNA34b遺伝子および/またはmicroRNA34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGが、前記対象から得た生物学的試料中のmicroRNA34b遺伝子および/またはmicroRNA34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドの全てのCpG中、少なくとも10%を超えて含まれることを基準として癌を検出する、前記方法に関する。
さらに、本発明は、microRNA34b遺伝子および/またはmicroRNA34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドが、配列番号5で表わされる塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を有するDNA領域である、前記の方法に関する。
【0012】
本発明はまた、癌が、大腸癌、胃癌、膵癌または乳癌である、前記の方法に関する。
さらに、本発明はまた、生物学的試料が、血清、糞便、大腸組織、胃洗浄液、膵液および胆汁からなる群から選択される1種または2種以上である、前記の方法に関する。
また、本発明は、メチル化特異的PCR法、バイサルファイトシークエンス法、パイロシークエンス法、コブラ法およびメチライト法からなる群より選択される1つまたは2つ以上の方法を用いて、メチル化されたCpGを検出する、前記の方法に関する。
そしてまた、本発明は、配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて、メチル化されたCpGを検出する、前記の方法に関する。
本発明はさらに、配列番号10、11、13~15および17~20のいずれかに記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを用いて、メチル化されたCpGを検出する、前記の方法に関する。
【0013】
加えて、本発明は、配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを含んでなる、癌検出用キットにも関する。
また、本発明は、配列番号10、11、13~15および17~20のいずれかに記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含んでなる、癌検出用キットに関する。
本発明はさらに、配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを含んでなる、前記の方法により癌を検出するための、癌検出用キットに関する。
そしてまた、本発明は、配列番号10、11、13~15および17~20のいずれかに記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含んでなる、前記の方法により癌を検出するための、癌検出用キットに関する。
【0014】
本発明はまた、BTG4遺伝子をコードする核酸を含んでなる癌治療剤に関する。
本発明はさらに、BTG4遺伝子をコードする核酸が、配列番号21で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸である、前記癌治療剤に関する。
さらにまた、本発明はBTG4を含んでなる癌治療剤に関する。
また、本発明は、BTG4が、配列番号21で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質である、前記癌治療剤に関する。
【0015】
加えて、本発明は、microRNA34b遺伝子および/またはmicroRNA34c遺伝子をコードする核酸を含んでなる癌治療剤にも関する。
また、本発明は、microRNA34b遺伝子をコードする核酸が、配列番号1で表わされるポリヌクレオチド配列と同一もしくは実質的に同一のポリヌクレオチド配列をコードしており、microRNA34c遺伝子をコードする核酸が、配列番号3で表わされるポリヌクレオチド配列と同一もしくは実質的に同一のポリヌクレオチド配列をコードしている、前記癌治療剤に関する。
さらに、本発明は、microRNA34bおよび/またはmicroRNA34cを含んでなる癌治療剤に関する。
そしてまた、本発明は、microRNA34bが、配列番号2で表わされるポリヌクレオチド配列と同一もしくは実質的に同一のポリヌクレオチド配列を有し、microRNA34cが、配列番号4で表わされるポリヌクレオチド配列と同一もしくは実質的に同一のポリヌクレオチド配列を有する、前記癌治療剤に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による癌の検出方法は、対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出することに基づくものである。miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子は、正常組織では高い発現が維持され、癌組織特異的に発現が低下していることから、その発現を直接制御しているプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出する本願発明の方法によれば、極めて正確に癌の検出を行うことが可能である。また、検出に用いる生物学的試料は、対象から得た大腸組織もしくは大腸癌組織、胃組織もしくは胃癌組織等の各組織や癌組織の他、血清、糞便、胃洗浄液、膵液、胆汁など比較的容易に入手可能なものを用いることができるため、本発明の方法によれば、簡便に癌の検出を行うことができる。さらに、本発明による方法は、メチル化特異的PCR法、バイサルファイトシークエンス法、パイロシークエンス法、コブラ法およびメチライト法などを用いて行うことができるから、極めて少量の生物学的試料を用いて高い検出感度で、短時間のうちに精度の高い検出結果を得ることができ、対象に対して負担をかけることがなく、また、癌の早期発見、癌の達度予測、癌再発リスクの予測、発癌リスクの予測にも資するものである。
【0017】
また、同様に、本発明による癌の検出用キットは、検出の標的であるmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGが、癌組織において特異的に上昇している一方で、正常組織においてはほとんど認められないことから、良好な精度で簡便に癌を検出することを可能にし、極めて初期の段階での癌の検出や、癌の再発のモニタリング、癌リスクの検出、癌の進行度予測などに適したものである。加えて、本願発明の方法およびキットは、内視鏡検査等の他の検査方法との併用にも有用であり、より精密な検査結果を得ることを可能にするものである。
【0018】
さらに、本発明の治療剤は、BTG4もしくはBTG遺伝子をコードする核酸、あるいは、miR-34bおよび/またはmiR-34c、もしくはmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子をコードする核酸を含んでなるものである。したがって、本発明の治療剤は、BTG4もしくはmiR-34bおよび/またはmiR-34cの癌細胞への導入、あるいは、癌細胞におけるBTG4遺伝子もしくはmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子の発現を介して、癌細胞の増殖を抑制することができ、優れた治療効果を得ることが可能である。また、本発明の治療剤に含まれるBTG4もしくはBTG4遺伝子、あるいは、miR-34bおよび/またはmiR-34c、もしくはmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子は、癌組織において発現が抑制されている一方で、正常組織においては高い発現が認められるものであることから、本発明の治療剤は、エピジェネティックな異常により不活性化されている遺伝子もしくはその遺伝子産物の発現を、癌細胞において特異的に回復させることを可能にするものであって、正常組織に毒性を与えることなく、治療が必要な標的癌組織において特異的に効果を発揮することができる、副作用が少なく安全性が高いものであり、より効果的で副作用の少ない治療法の開発にも役立つものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書中に別記のない限り、本発明に関して用いられる科学的および技術的用語は、当業者に通常理解されている意味を有するものとする。一般的に、本明細書中に記載された細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子およびタンパク質および核酸化学に関して用いられる用語、およびその技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものとする。また、別記のない限り、本発明の方法および技術は、当該技術分野においてよく知られた慣用の方法に従って、本明細書中で引用され、議論されている種々の一般的な、およびより専門的な参考文献に記載されたとおりに行われる。かかる文献としては、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Press(2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates(1992,および2000の補遺); Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology - 4th Ed., Wiley & Sons(1999);Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1990);およびHarlow andLane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor LaboratoryPress(1999)などが挙げられる。
【0020】
本明細書中に記載された分析化学、合成有機化学ならびに医薬品化学および薬化学に関して用いられる用語、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、薬剤の製造、製剤および送達、ならびに対象の処置に用いるものとする。
なお、本発明における用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、癌に対する処置が企図される場合には、該疾患に罹患している対象または実験的に罹患させた対象、例えばマウス、ラット、スナネズミ、モルモットなどの齧歯類、ネコ、ピューマ、トラなどのネコ科動物、シカ、オオシカなどのシカ科動物等の他、ウサギ、イヌ、ミンク、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、サル、ヒトなどであることが好ましい。
【0021】
本明細書においては、別記のない限り、タンパク質の名称はアルファベット(もしくはアルファベットと数字)等で表記し、そのタンパク質をコードする遺伝子は、前記のアルファベット(もしくはアルファベットと数字)等で表記したものに「遺伝子」と付記するか、または前記のアルファベット(もしくはアルファベットと数字)等で表記したものに下線を付して表記するものとする。したがって、別記のない限り、例えば、単に「BTG4」と表記した場合には、BTG4(B cell translocation gene 4)そのもの自体であるタンパク質を意味し、「BTG4遺伝子」と表記した場合には、BTG4をコードする遺伝子を意味し、また、「BTG4」と表記した場合もBTG4をコードする遺伝子を意味する。
【0022】
また、microRNA(miRNA)の表記については、miRNA自体を表す場合には、その名称を表記し、それをコードするDNAを表記する場合には、その名称に「遺伝子」を付記するか、前記の名称に下線を付して表記するものとする。したがって、別記のない限り、例えば、「microRNA34b」もしくは「miR-34b」と表記した場合には、microRNA34b であるmiRNA自体を表し、「microRNA34b遺伝子」もしくは「miR-34b遺伝子」と表記した場合には、miRNA-34bをコードするDNAを意味し、また、「miRNA-34b」と表記した場合もmiRNA-34bをコードするDNAを意味する。
【0023】
本発明においては、対象における癌を検出する方法であって、
対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出することを含む、前記方法が提供される。
【0024】
本発明において用いられるmicroRNA34b(本明細書中、miRNA-34bとも表記する)および microRNA34c(本明細書中、miRNA-34cとも表記する)は、ヒトでは染色体11q23.1から転写される単一の前駆体RNAに由来するmiRNAであり、例えば、miRNA-34bとしては、配列番号1で表わされるDNA配列と同一もしくは実質的に同一のDNA配列によりコードされるもの(前駆体(precursor)miRNA-34b)が挙げられ、その成熟型miRNA-34bとしては、
UAGGCAGUGUCAUUAGCUGAUUG (配列番号2)(miRNA accession number MI0000742)
で表わされる塩基配列と同一もしくは実質的に同一のRNA塩基配列を有するものが挙げられ、また、miRNA-34cとしては、配列番号3により表わされるDNA配列と同一もしくは実質的に同一のDNA配列によりコードされるもの(前駆体(precursor)miRNA-34c)が挙げられ、その成熟型miRNA-34cとしては、
AGGCAGUGUAGUUAGCUGAUUGC (配列番号4)(miRNA accession number MI0000743)
で表わされる塩基配列と同一もしくは実質的に同一のRNA塩基配列を有するものが挙げられる。
【0025】
ここで、配列番号1もしくは3で表わされるDNA配列と実質的に同一のDNA配列としては、配列番号1もしくは3で表されるDNA塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列等を例示することができる。そしてさらに、本発明において、miRNA-34bに包含される、配列番号1で表わされるDNA配列と実質的に同一のDNA配列によりコードされる前駆体miRNA-34bとしては、miRNAの機能として、配列番号1で表わされる塩基配列によりコードされるmiRNAが有する機能が実質的に同等に保持されているものが好ましく用いられる。同様に、本発明においては、miRNA-34cに包含される、配列番号3で表わされるDNA配列と実質的に同一のDNA配列によりコードされる前駆体miRNA-34cとしては、miRNAの機能として、配列番号3で表わされる塩基配列によりコードされるmiRNAが有する機能が実質的に同等に保持されているものが好ましく用いられる。
また、同様に、配列番号2もしくは4で表される塩基配列と実質的に同一の塩基配列としては、配列番号2もしくは4で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列等を例示することができる。そしてさらに、本発明においては、miRNA-34bに包含される、RNA塩基配列が配列番号2で表される塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有するものとしては、miRNAの機能として、配列番号2で表わされる塩基配列からなるmiRNAが有する機能、すなわち、例えば、MET遺伝子やMYB遺伝子などの癌遺伝子に対する発現抑制機能などが実質的に同等に保持されているものが好ましく用いられる。同様に、本発明においては、miRNA-34cに包含される、RNA塩基配列が配列番号4で表される塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有するものとしては、miRNAの機能として、配列番号4で表わされる塩基配列からなるmiRNAが有する機能、すなわち、例えば、MET遺伝子やMYB遺伝子等の癌遺伝子に対する発現抑制機能などが実質的に同等に保持されているものが好ましく用いられる。
【0026】
また、本発明において用いられるmiR-34b遺伝子には、例えば、配列番号1で表される塩基配列を含有するDNA、または、配列番号1で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ前記の配列番号2で表される塩基配列を含有するmiRNAと実質的に同等の性質を有するmiRNAをコードするDNAなどが含まれる。ここで、配列番号1で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有するDNAとしては、例えば、配列番号1で表される塩基配列に対して相補的な塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等を用いることができる。
【0027】
同様に、本発明において用いられるmiR-34c遺伝子には、例えば、配列番号3で表される塩基配列を含有するDNA、または、配列番号3で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ前記の配列番号4で表される塩基配列を含有するmiRNAと実質的に同等の性質を有するmiRNAをコードするDNAなどが含まれる。ここで、配列番号3で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有するDNAとしては、例えば、配列番号3で表される塩基配列に対して相補的な塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等を用いることができる。
【0028】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、通常、42℃、2×SSCおよび0.1%SDSの条件であり、好ましくは、65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件である。
なお、異種動物間はもちろんのこと、同種動物間でも、多型、アイソフォーム等によってmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子の塩基配列に相違が見られる場合があるが、塩基配列が相違する場合であってもmiR-34bまたはmiR-34cをコードする限り、miR-34b遺伝子またはmiR-34c遺伝子に含まれる。
【0029】
本発明においては、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域は、染色体上でmiR-34b遺伝子の5’端から1000bp上流までの全長1000bpの領域を意味し、例えば、ヒトでは、miR-34b遺伝子の5’端から867bp上流までの領域であり、特に好ましくはmiR-34b遺伝子の5’端から756bp上流までの領域である。
本発明において、CpGアイランドとは、CpG(すなわち、5’側にシトシン、3’側にグアニンが隣接して互いにホスホジエステル結合により結合しているもの)に富む領域であり、GC含量が50%以上で、存在するCpGの割合が、期待される量の60%以上であるDNA領域を意味する。
【0030】
miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドは、上記で述べたプロモーター領域のうちCpGアイランドに該当する領域であれば、限定されることなく本発明の方法による癌の検出に用いることができるが、例としては、ヒトの場合では、miR-34b遺伝子の5’端より748bp上流から、miR-34b遺伝子の5’端より230bp下流までの、全長978bpの領域であり、その塩基配列の例としては配列番号5で表わされるものもしくはこれと実質的に同一の塩基配列を有するものなどが挙げられる。
【0031】
前記のヒトmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのうち、本発明による癌の検出方法において、好ましいのは、例えば、第111~第372塩基までの全長262bpの領域であり、その例としては配列番号5で表わされる配列の第111番目の塩基~第372番目の塩基までの全長262bpの領域(配列番号6で表わされる塩基配列からなる領域)もしくはこれと実質的に同一の塩基配列を有する領域であり、より好ましいのは、第144~第366塩基までの全長223bpの領域であり、その例としては配列番号5で表わされる配列の第144番目の塩基~第366番目の塩基までの全長223bpの領域(配列番号7で表わされる塩基配列からなる領域)もしくはこれと実質的に同一の塩基配列を有する領域であり、最も好ましいのは第214~第347塩基までの全長134bpの領域であり、その例としては配列番号5で表わされる配列の第214番目の塩基~第347番目の塩基までの全長134bpの領域(配列番号8で表わされる塩基配列からなる領域)もしくはこれと実質的に同一の塩基配列を有する領域である。
【0032】
ここで、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と実質的に同一の塩基配列としては、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列等を例示することができる。
【0033】
なお、本発明者らは、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域は、同じ染色体上においてmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子とは逆向き(アンチセンス方向)にコードされているBTG4 (B cell translocation gene 4)遺伝子のプロモーター領域と重なっており(図3B、図7および図8A)、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドは、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子に対してだけでなく、BTG4遺伝子に対してもプロモーター活性を有することを見出している(図8AおよびB)。
したがって、本発明により提供される、
対象における癌を検出する方法であって、
対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出することを含む、前記方法は、すなわち、
対象における癌を検出する方法であって、
対象から得た生物学的試料中のBTG4遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出することを含む、前記方法と言い換えることができる。
【0034】
本発明の方法において、「メチル化されたCpGを検出する」とは、DNA塩基配列中のメチル化されたシトシン(すなわち、DNAメチル化)を検出することを意味する。
本発明の方法は、「対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出することを含む」限り、その対象において癌が存在すると判断する基準は特に限定されることなく実施することができ、個々の状況や癌の種類等に応じて適宜選択した基準を採用して癌を検出してもよいが、正常組織では前記CpGアイランドにおけるメチル化されたCpGの割合は低く、癌組織では前記CpGアイランドにおけるメチル化されたCpGの割合は高い傾向にあることから、対象から得た生物学的試料中の前記CpGアイランドのメチル化されたCpGが、前記対象と同種の健常な対象から得た生物学的試料中のCpGアイランドのメチル化されたCpGと比較して、あるいは、前記対象と同一の個体から得た対照とする正常組織である生物学的試料中のCpGアイランドのメチル化されたCpGと比較して、定量的に多いことを基準として、対象において癌が存在するとの検出結果とすることが好ましい。
【0035】
さらに、本願発明者らの研究によれば、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGは、対象から得た生物学的試料が正常組織である場合には、試料中の全CpGに占める割合は高くても5~6%程度に止まるのに対し、対象から得た生物学的試料が癌組織である場合には、試料中の全CpGに占める割合はこれをはるかに上回り50%を超える場合が多いことが見出されている。しかしながら、生物学的試料として、生検組織などを用いる場合には、癌組織と正常組織とが混在している場合が多いため、癌の部分のみが高値であっても正常組織の部分の低値により平均化されて、試料中の全CpGに占めるメチル化されたCpGの割合は、実際に癌が存在する場合でも低値として表れる傾向にある。したがって、より好適な態様としては、本発明の方法は、対象から得た生物学的試料中のmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGが、前記対象から得た生物学的試料中の前記領域におけるCpGアイランドの全てのCpG中(すなわち、前記試料中の全アレル中)、少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%を超えて含まれることを基準として癌を検出し、癌が存在するとの検出結果とすることができる。
【0036】
本発明の方法において、メチル化されたCpGの検出は、特に限定されず、どのような方法を用いて行ってもよいが、メチル化特異的PCR法、バイサルファイト(bisulfite)シークエンス法、パイロシークエンス法、コブラ(cobra)法およびメチライト(methylight)法といったDNAメチル化(メチル化シトシン)を検出するための公知の方法を用いるのが好ましく、これらの方法は、いずれかを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。前記で挙げた方法のうち、メチライト法は微量の検体から高い感度でメチル化を検出できるという点から特に好ましく用いられ、また、定量的なメチル化検出を目的とする場合にはパイロシークエンス法が特に好ましく用いられる。
【0037】
メチル化特異的PCR法は、バイサルファイト反応の際、メチル化の有無により、シトシンからウラシルへの変換の感受性を利用して、メチル化アレル及び非メチル化アレル特異的なプライマーを作製し、PCR法により増幅して検出するものであり、得られたPCR産物はアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドによる染色を行って、バンドの有無によりメチル化の有無を判定する(Methods Mol Med. 2005;113:279-91および鈴木拓、豊田実、今井浩三:bisulfite PCR法 新 遺伝子工学ハンドブック改訂第4版(村松正實・山本雅編)、羊土社、pp99-106, 2003を参照)。
【0038】
バイサルファイトシークエンス法は、バイサルファイト処理したDNAを用いてメチル化アレルと非メチル化アレルを同時に増幅し、得られたPCR産物をTOPO-cloning vector(Invitorogen)などにクローニングした後、シークエンス反応によりメチル化の有無を検出するものである。増幅した領域内の全てのCpG配列のメチル化の状態が分かるという利点があるが、一方で、解析に労力を要するので、多数の検体の解析には向いていない場合もある(Methods. 2002 Jun;27(2):101-7および鈴木拓,豊田実,今井浩三:bisulfitePCR法.新遺伝子工学ハンドブック改訂第4版(村松正實・山本雅編),羊土社,pp99-106,2003を参照)。
【0039】
パイロシークエンス法は、バイサルファイト処理したDNAを用いてメチル化アレルと非メチル化アレルを同時に増幅し、得られたPCR産物をパイロシークエンス法により解析するものである。メチル化の割合は、シトシンとチミンの塩基多型として検出され、シトシンの蛍光強度/シトシンの蛍光強度とチミンの蛍光強度の合計、として算出する。定量的かつハイスループットなメチル化解析法として有用である(Nat Protoc. 2007;2(9):2265-75を参照)。
【0040】
コブラ法は、バイサルファイト処理したDNAを用いてメチル化アレルと非メチル化アレルを同時に増幅し、得られたPCR産物を制限酵素で切断した後、アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドによる染色を行い、制限酵素で切断されるバンドの有無により、メチル化の有無を判定するものである(Methods Mol Biol. 2002;200:71-85および鈴木拓,豊田実,今井浩三:bisulfitePCR法.新 遺伝子工学ハンドブック改訂第4版(村松正實・山本雅編),羊土社,pp99-106, 2003を参照)。
【0041】
メチライト法は、メチル化特異的PCR 法とTaqMan PCR法の組み合わせによりメチル化アレルを検出する方法である。高感度なメチル化検出が可能であり、微量の検体からメチル化検出を行う際に有用である(Methods. 2001 Dec;25(4):456-62を参照)。
【0042】
メチル化特異的PCR法、バイサルファイトシークエンス法、パイロシークエンス法、コブラ法、メチライト法等を用いる場合には、バイサルファイト処理により、メチル化されていないシトシンが特異的にウラシルに変換され、メチル化されているシトシンはウラシルに変換されないことから、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのうち、配列番号6、7または8で表わされる領域は、バイサルファイト処理により、それぞれ、例えば、配列番号9、12または16で表わされる配列に変換される。
【0043】
したがって、例えば、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドとして配列番号6に記載の領域を用いて、バイサルファイトシークエンス法により本願発明の方法を実施する場合には、試料をバイサルファイト処理することによって、試料中の配列番号6で表わされる配列が配列番号9で表わされる配列に変換され、このバイサルファイト処理した配列について
フォワードプライマー:5’-GTTTTAAGAATTTGGGTTTTTATTTTTTAG-3’(配列番号10)
および
リバースプライマー:5’-CAAACTTCAATTCCCAACCCCAAAC-3’(配列番号11)
を用いてシークエンス反応を行いメチル化CpGを検出することができる。
【0044】
また、例えば、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドとして配列番号7に記載の領域を用いて、パイロシークエンス法により本願発明の方法を実施する場合には、試料をバイサルファイト処理することによって、試料中の配列番号7で表わされる配列が配列番号12で表わされる配列に変換され、このバイサルファイト処理した配列について
フォワードプライマー:5’-TTAGTTTTTAGTTTTAAATTTTAGAGTTGG-3’(配列番号13)
および
リバースプライマー:5’-TCTCCCTTAAAAACCCTTCAAAAACC-3’(配列番号14)
を用いてPCR反応を行い、さらに、
シークエンスプライマー:5’-TAATYGTTTTTGGAATTT-3’(配列番号15)
を用いてメチル化CpGを検出することができる。
なお、上記プライマーを用いてパイロシークエンス法によりDNAメチル化解析を行う場合には、配列番号7で表わされる配列をバイサルファイト処理して得られるDNAのアンチセンス鎖(配列番号12により表わされる塩基配列)を増幅することで解析を行うことになる。バイサルファイト処理は、2本鎖DNAを1本鎖にした後、シトシンをウラシルに変換することから、処理後のDNAは相補性を失い、処理後のセンス鎖に基づいてPCR増幅した場合と、アンチセンス鎖に基づいてPCR増幅した場合とでは、PCR産物の配列が一部異なる。これは、バイサルファイト処理の化学的性質に基づく現象で、どちらの鎖に基づいてPCRを行っても、理論的には同一の解析結果が得られる。通常は、遺伝子のセンス鎖の塩基配列に基づいてPCRプライマーを設計するが、繰り返し配列が多いなどの理由でPCR増幅やシークエンス反応が困難な場合には、アンチセンス鎖の塩基配列に基づいてプライマーを設計することにより、かかる技術的な困難性を解決することが可能な場合もあり、上記のパイロシークエンスの例はこれに当たる(実施例7参照)。
したがって、上記のパイロシークエンスの例では、上記フォワードプライマー(センスプライマー:配列番号13)は、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランド中の配列番号7に記載の塩基配列から見るとアンチセンス側の配列からなっており、同様に、上記リバースプライマー(アンチセンスプライマー:配列番号14)は、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランド中の配列番号7に記載の塩基配列から見るとセンス側の配列からなっており、また、上記シークエンスプライマー(配列番号15)は、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランド中の配列番号7に記載の塩基配列から見るとアンチセンス側の配列からなっている。
【0045】
さらに、例えば、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドとして配列番号8に記載の領域を用いて、メチル化特異的PCR法により本願発明の方法を実施する場合には、試料をバイサルファイト処理することによって、試料中の配列番号8で表わされる配列が配列番号16で表わされる配列に変換され、このバイサルファイト処理した配列について、メチル化特異的反応を、
フォワードプライマー:5’-ATTCGTTTCGTTTCGCGTTCGTTTC-3’(配列番号17)
および
リバースプライマー:5’-CTAAAACTAACTCTCTCGACCCCG-3’(配列番号18)
により行い、さらに、非メチル化特異的反応を、
フォワードプライマー:5’-TTTTTATTTGTTTTGTTTTGTGTTTGTTTTG-3’(配列番号19)
および
リバースプライマー:5’-CCTAAAACTAACTCTCTCAACCCCA-3’(配列番号20)
により行い、メチル化特異的バンドおよび非メチル化特異的バンドの有無に基づいてメチル化CpGを検出することができる。
【0046】
本発明においてはまた、上記のメチル化されたCpGの検出は、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドの塩基配列に特異的な一対のプライマー、例えば、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と同一または実質的に同一の塩基配列の一部を含むセンスプライマー、およびそれぞれ配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と同一または実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列の一部を含むアンチセンスプライマーを用いて行うことができる。ここで、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と実質的に同一の塩基配列としては、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列等を例示することができる。前記プライマーの塩基長は、例えば、15~40塩基、好ましくは17~35塩基である。
【0047】
したがって、好ましい態様においては、本発明による上記のメチル化されたCpGの検出は、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドの塩基配列に特異的な一対のプライマー、例えば、配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて、より好ましくは、配列番号6で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号6で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて、さらに好ましくは、配列番号7で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号7で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて、特に好ましくは、配列番号8で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号8で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて、行われる。
【0048】
また、本発明の方法において、試料のバイサルファイト処理を行う場合には、試料中に含まれる配列番号6、7もしくは8で示される塩基配列を有するDNA領域は、それぞれ配列番号9、12もしくは16で示される塩基配列を有する領域に変換されることから、本発明による上記のメチル化されたCpGの検出は、好ましくは、配列番号9で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号9で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて、より好ましくは、配列番号12で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号12で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて、特に好ましくは、配列番号16で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号16で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーを用いて行うことができる。
【0049】
本発明の方法に用いられる特に好ましいプライマーの組み合わせの例としては、センスプライマーが、配列番号10で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであり、アンチセンスプライマーが、配列番号11で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであるもの、センスプライマーが、配列番号13で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであり、アンチセンスプライマーが、配列番号14で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであるもの、センスプライマーが、配列番号17で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであり、アンチセンスプライマーが、配列番号18で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであるもの、ならびに、センスプライマーが、配列番号19で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであり、アンチセンスプライマーが、配列番号20で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであるもの、などが挙げられる。
配列番号10、11、13~15および17~20により示される配列を有するオリゴヌクレオチドは、いずれも、本発明の実施において好ましく用いられるものであるが、好ましい態様においては、上記で述べたメチル化特異的PCR法、バイサルファイトシークエンス法およびパイロシークエンス法、コブラ法およびメチライト法による本発明の方法の実施に用いられ、例えば、バイサルファイトシークエンス法による解析を行う場合には、配列番号10で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号11で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとのPCRプライマーの組み合わせが好ましく用いられ、パイロシークエンス法による解析を行う場合には、配列番号13で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとのPCRプライマーの組み合わせが好ましく用いられ、また、パイロシークエンスの際のシークエンス用プライマーとして配列番号15で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが好ましく用いられ、メチル化特異的PCR法による解析を行う場合は、メチル化特異的反応には、配列番号17で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号18で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとのPCRプライマーの組み合わせが好ましく、非メチル化特異的反応には、配列番号19で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号20で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとのPCRプライマーの組み合わせが好ましく用いられる。
【0050】
またさらに、本発明によれば、対象から採取した生物学的試料における上記のメチル化されたCpGを検出もしくは定量するための試薬として、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドの塩基配列に特異的な一対のプライマーであるオリゴヌクレオチドを含む、癌検出用キットが提供される。
【0051】
上記癌検出用キットに含まれる、メチル化されたCpGを検出もしくは定量するために用いられるプライマーとして、例えば、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と同一または実質的に同一の塩基配列の一部を含むセンスプライマー、および、それぞれ配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と同一または実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列の一部を含むアンチセンスプライマーが挙げられる。ここで、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と実質的に同一の塩基配列としては、配列番号5、6、7もしくは8で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列等を例示することができる。前記プライマーの塩基長は、例えば、15~40塩基、好ましくは17~35塩基である。
【0052】
したがって、好ましい態様においては、本発明の上記キットに含まれる、上記のメチル化されたCpGの検出もしくは定量するための試薬として用いられるオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号5で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマー、好ましくは、配列番号6で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号6で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマー、より好ましくは、配列番号7で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号7で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマー、特に好ましくは、配列番号8で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号8で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーである。
【0053】
本発明の癌検出用キットは、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化されたCpGを検出するのに好適なものであるから、該キットを用いて本発明による癌の検出方法を実施することができる。
したがって、上記プライマーは、好ましくは、上記のメチル化特異的PCR法、バイサルファイトシークエンス法およびパイロシークエンス法、コブラ法およびメチライト法等を用いた本発明の方法の実施に使用することができる。試料のバイサルファイト処理を伴うこれらの方法を用いる場合には、試料中に含まれる配列番号6、7もしくは8で示される塩基配列を有するDNA領域は、例えば、それぞれ配列番号9、12もしくは16で示される塩基配列を有する領域に変換されるため、本発明のキットにおいて、上記のメチル化されたCpGの検出もしくは定量するための試薬として用いられるオリゴヌクレオチドとしては、好ましくは、配列番号9で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号9で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマー、より好ましくは、配列番号12で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号12で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマー、特に好ましくは、配列番号16で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列中の連続する15~40塩基を含むセンスプライマー、および配列番号16で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列に相補的な塩基配列中の連続する15~40塩基を含むアンチセンスプライマーが例示される。
【0054】
また、本発明によれば、対象から採取した生物学的試料における上記のメチル化されたCpGを検出もしくは定量するための試薬として、配列番号10、11、13~15、および17~20のいずれかにより表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチド1種または2種以上を含む、癌検出用キットが提供され、かかるキットは本願発明の方法を実施するために使用することができる。
さらに、本発明のキットに含まれる特に好ましいオリゴヌクレオチドの組み合わせの例としては、配列番号10で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号11で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとの組み合わせ、配列番号13で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとの組み合わせ、もしくは、配列番号13で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、配列番号14で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドおよび配列番号15で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとの組み合わせ、配列番号17で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号18で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの組み合わせ、ならびに、配列番号19で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号20で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの組み合わせ、などが挙げられる。
上記オリゴヌクレオチドは、上記で述べたメチル化特異的PCR法、バイサルファイトシークエンス法およびパイロシークエンス法、コブラ法およびメチライト法による本発明の方法の実施に用いることができ、したがって、本発明のキットは、例えば、バイサルファイトシークエンス法による解析を目的とするキットである場合には、配列番号10で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号11で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとのPCRプライマーの組み合わせを含むことが好ましく、パイロシークエンス法による解析を目的とするキットである場合には、配列番号13で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとのPCRプライマーの組み合わせを含むことが好ましく、また、パイロシークエンスの際のシークエンス用プライマーとして配列番号15で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含んでもよく、メチル化特異的PCR法による解析を目的とする場合は、メチル化特異的反応用には、配列番号17で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドおよび配列番号18で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドのPCRプライマーの組み合わせを含み、非メチル化特異的反応用には、配列番号19で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドおよび配列番号20で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドのPCRプライマーの組み合わせを含むことが好ましい。
【0055】
本発明の癌検出用キットは、上記いずれかのオリゴヌクレオチドもしくはプライマーを含む限り、いかなる形態であってもよく、試薬、器具、取扱説明書等を適宜含むことができ、組織や細胞等の生物学的試料からのDNAの抽出に用いられる溶液(例えば、組織もしくは細胞溶解用のバッファー、フェノール/クロロホルム、エタノール等)や器具、PCRに必要な試薬(例えばH2O、バッファー、MgCl2、dNTPミックス、Taqポリメラーゼ等)、PCR増幅断片の定量に必要な試薬(例えばRI、蛍光色素等)などの1種または2種以上を含むことができる。
【0056】
また、本発明において、癌とは、悪性腫瘍をいい、一般的に癌の概念に含まれるものを包含する。
さらに、大腸癌とは、一般的に大腸癌の概念に含まれるものを包含し、大腸上皮粘膜から発生する悪性腫瘍のほか、大腸腺腫などが含まれる。胃癌とは、一般的に胃癌の概念に含まれるものを包含し、胃上皮粘膜から発生する悪性腫瘍などが含まれ、また、膵癌とは、一般的に膵癌の概念に含まれるものを包含する。
そしてまた、乳癌とは、一般的に乳癌の概念に含まれるものを包含し、乳房組織を構成している乳腺、脂肪層、皮膚において発生する悪性の腫瘍を意味し、浸潤性乳癌、非浸潤性乳癌、パジェット病に分類されるものを含む。
【0057】
本発明における「対象から得た生物学的試料」としては、癌を検出することが可能な限りにおいて、特に限定されることなく、例えば、血液、血清、腹水、尿、糞便、胃洗浄液、膵液、胆汁、あるいは、消化管組織(胃、小腸、大腸、膵臓等)、乳房を構成する乳腺、脂肪層もしくは皮膚等の組織、乳腺から分泌される分泌物、乳腺から分泌される洗浄液(乳管洗浄液(ductal fluid))等を利用することができる。miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子の発現レベルは、一般に、いずれの正常組織でも高く、癌組織において顕著に低下している傾向にあることから、対象から得た生物学的試料は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大腸癌の検出を目的とする場合には、血清、糞便、大腸組織等であることが好ましく、胃癌の検出を目的とする場合には、血清、胃洗浄液、胃組織等であることが好ましく、膵癌の検出を目的とする場合には、血清、膵液、膵臓組織等であることが好ましく、乳癌の検出を目的とする場合には、血清、乳房を構成する乳腺、脂肪層もしくは皮膚等の組織、乳腺から分泌される分泌物、乳腺から分泌される洗浄液(乳管洗浄液(ductal fluid))であることが好ましく、胆管癌・胆嚢癌の検出を目的とする場合には、血清、胆汁、胆管癌組織、胆嚢癌組織等であることが好ましい。
【0058】
また、かかる生物学的試料は、どのような方法で採取されたものでも本発明の方法に用いることができ、例えば、外科手術により採取されたものでもよく、組織採取用の穿刺針により採取されたものでもよく、あるいは、膵液、胆汁の他、胃洗浄液、乳腺から分泌される分泌物または乳腺から分泌される洗浄液(乳管洗浄液(ductal fluid))として採取されたものでもよい。
【0059】
本発明の方法を実施するにあたっては、上記のような対象から得た生物学的試料について、DNA抽出等の前処理を行わずに、直接、上記のメチル化CpGの検出を行うことも可能であるが、生物学的試料中のDNAを抽出してから上記の方法、例えば、メチル化特異的PCR法、バイサルファイトシークエンス法、パイロシークエンス法、コブラ法、メチライト法等によってメチル化CpGの検出を行うことが好ましい。生物学的試料からDNAを抽出する方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、フェノール・クロロホルムやエタノール、市販のDNA抽出試薬を用いて行うことができる。
【0060】
さらに、本発明者らは、miR-34bおよび/またはmiR-34cが、正常組織においては高い発現レベルが認められるのに対し、癌組織においては、顕著に発現が抑制されていること、また、MYB遺伝子やMET遺伝子等の癌遺伝子やCDK4遺伝子などの細胞周期調節遺伝子の発現を抑制することを発見した。したがって、miR-34bおよび/またはmiR-34cは癌細胞の増殖や転移の抑制に有効であると考えられるから、本発明はまた、miR-34bおよび/またはmiR-34c を含んでなる癌治療剤、さらにまた、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子をコードする核酸を含んでなる癌治療剤を提供する。
【0061】
ここで、上記で述べた通り、miR-34bとしては、具体的には、配列番号1で表わされるDNA配列と同一もしくは実質的に同一のDNA配列によりコードされるRNA(前駆体(precursor)miRNA-34b)の他、配列番号2で表わされるRNA塩基配列と同一もしくは実質的に同一のRNA塩基配列を有するRNA(成熟型miRNA-34b)が挙げられ、miR-34cとしては、具体的には、配列番号3で表わされるDNA配列と同一もしくは実質的に同一のDNA配列によりコードされるRNA(前駆体(precursor)miRNA-34c)の他、配列番号4で表わされるRNA塩基配列と同一もしくは実質的に同一のRNA塩基配列を有するRNA(成熟型miRNA-34c)が挙げられる。
また、miR-34b遺伝子をコードする核酸としては、例えば、配列番号1で表される塩基配列を含有するDNA、または、配列番号1で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ前記の配列番号2で表される塩基配列を含有するmiRNAと実質的に同等の性質を有するmiRNAをコードするDNAなどが含まれる。同様に、miR-34c遺伝子をコードする核酸としては、例えば、配列番号3で表される塩基配列を含有するDNA、または、配列番号3で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ前記の配列番号4で表される塩基配列を含有するmiRNAと実質的に同等の性質を有するmiRNAをコードするDNAなどが含まれる。ここで、配列番号1もしくは3で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有するDNAとしては、例えば、配列番号1もしくは3で表される塩基配列に対して相補的な塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等を用いることができる。
【0062】
加えて、本発明者らは、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドが、同じ染色体上においてmiR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子とは逆向き(アンチセンス方向)にコードされているBTG4 (B cell translocation gene 4)遺伝子のプロモーターとして活性を有することを発見するとともに、BTG4が、細胞増殖抑制能を有すること、また、正常組織においては高い発現レベルが認められるのに対し、癌細胞においては、顕著に発現が抑制されていることを見出した。したがって、BTG4は、癌細胞の増殖や転移を抑制することができると考えられるから、本発明によれば、BTG4を含んでなる癌治療剤、ならびにBTG4遺伝子をコードする核酸を含んでなる癌治療剤が提供される。
【0063】
ここで、本発明において用いられるBTG4は、B cell translocation gene 4(別名PC3BまたはMGC33003)と呼ばれるタンパク質であり(accession number NM_017589)、例として、配列番号21で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる。ここで、配列番号21で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号21で表されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列等を例示することができる。また、本発明においては、BTG4に包含されるアミノ酸配列が配列番号21で表されるポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドのうち、BTG4の機能として、配列番号21で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質が有する性質や機能(例えば、癌細胞増殖抑制作用など)を、実質的に配列番号21で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等に保持しているものが好ましく用いられる。
【0064】
また、本発明において用いられるBTG4遺伝子をコードする核酸には、例えば、配列番号21で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸の他、配列番号22で表される塩基配列を含有するDNA、または、配列番号22で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有しかつ前記の配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同等の性質(例えば、癌細胞増殖抑制作用など)を有するタンパク質をコードするDNAなどが含まれる。ここで、配列番号22で表される塩基配列とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする塩基配列を含有するDNAとしては、例えば配列番号22で表される塩基配列に対して相補的な塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNA等を用いることができる。
【0065】
なお、異種動物間はもちろんのこと、同種動物間でも、多型、アイソフォーム等によってBTG4遺伝子の塩基配列に相違が見られる場合があるが、塩基配列が相違する場合であってもBTG4をコードする限り、BTG4遺伝子に含まれる。
【0066】
本発明による上記癌治療剤は、いずれも、どのような癌に対しても用いることができるが、上記で述べたような大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌に対して特に好ましく用いられる。
【0067】
本発明の癌治療剤は、医薬上許容可能な担体(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、防腐剤、pH調整剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等)と組み合わせて癌のための治療剤として製剤化して提供することができる。また、本発明の治療剤は、特異的に標的組織へ送達させることを可能にする標識やナノカプセル等を含有してもよい。なお、本発明の治療剤には、miR-34b、miR-34b遺伝子をコードする核酸、miR-34c、miR-34c遺伝子をコードする核酸、BTG4およびBTG4遺伝子をコードする核酸のいずれかが単独で含まれていてもよく、2つ以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0068】
さらに、本発明の治療剤は、癌の治療に有効な公知の抗癌剤(例えば、フルオロウラシル、タモキシフェン、アナストロゾール、アクラルビシン、ドキソルビシン、テガフール、シクロホスファミド、イリノテカン、シタラビン、パクリタキセル、ドセタキセル、エピルビシン、カルボプラチン、シスプラチン、チオテパ、またはこれらの医薬上許容される塩等)などの他の薬効成分をさらに含んでもよく、また、これらの有効成分と組み合わせて用いることもできる。
【0069】
本発明の治療剤の投与経路としては、例えば、経口投与、非経口投与(静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、局所投与等)が挙げられ、投与剤形としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、懸濁剤等が例示される。具体的には、局所投与の場合、外科手術にて患部を露出し、癌組織に注射器等の手段で本発明の治療剤を直接投与することができ、また、非局所投与の場合、腫瘍栄養血管内投与により行うことができる。好ましい投与経路は、局所投与である。
【0070】
また、特に、miR-34b遺伝子をコードする核酸、miR-34c遺伝子をコードする核酸、もしくはBTG4遺伝子をコードする核酸を含む本発明の癌治療剤については、それぞれ、miR-34b遺伝子、miR-34c遺伝子、もしくはBTG4遺伝子を癌細胞に導入して発現させることを目的とした遺伝子治療剤として用いることができる。
【0071】
遺伝子治療剤として用いられる本発明の癌治療剤は、HVJリポソーム法、前記遺伝子の塩基配列を注射等によってそのまま投与する方法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、エレクトロポレーション法、遺伝子銃による方法、リポフェクション法によって投与する方法、適当な発現ベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター等)を使う方法等によって、非経口的投与経路で対象に投与することができる。
【0072】
本発明の癌治療剤の投与量及び投与回数は、目的とする作用効果、投与方法、治療期間、対象の年齢、体重、性別等により異なるが、miR-34bおよび/またはmiR-34c、あるいはBTG4を利用する場合の投与量は、対象がヒトである場合には成人1日当たり通常100μg~100mg、好ましくは1~20mgの範囲から適宜選択でき、miR-34b遺伝子をコードする核酸、miR-34c遺伝子をコードする核酸、もしくはBTG4遺伝子をコードする核酸、またはこれらを含む発現ベクターを利用する場合の投与量は、対象がヒトである場合には成人1日当たり通常0.01mg/kg~1g/kg、好ましくは0.1mg/kg~500mg/kgの範囲から適宜選択でき、投与回数は、1日1回から数回の範囲から適宜選択できる。但し、投与量は、種々の条件により変動し得るため、上記範囲に限定されない。
【0073】
また、本発明によれば、miR-34b、miR-34b遺伝子をコードする核酸、miR-34c、miR-34c遺伝子をコードする核酸、BTG4、またはBTG4遺伝子をコードする核酸の使用、特に、本発明による治療剤の製造における使用および本発明による治療剤としての使用、が提供される。
【0074】
さらにまた、本発明によれば、miR-34b、miR-34b遺伝子をコードする核酸、miR-34c、miR-34c遺伝子をコードする核酸、BTG4、またはBTG4遺伝子をコードする核酸を投与することを含んでなる、癌の治療方法が提供される。この場合の有効投与量、投与方法、および投与形態等は、上記に準ずることができる。
【実施例】
【0075】
本発明を以下の実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
<実施例1>miRNAの発現解析
癌細胞においてエピジェネティックな遺伝子サイレンシングを受けるmiRNAを同定するため、大腸癌細胞株であるHCT116細胞、DNAメチル化酵素阻害剤である5-アザ-2’-デオキシシチジン(5-aza-2’-deoxycytidine(DAC))による処理(2μM 、72時間)を行ったHCT116細胞、およびDNAメチル化酵素遺伝子であるDNMT1遺伝子およびDNMT3B遺伝子をダブルノックアウトしたHCT116細胞(以下、DKO2細胞とも表記することがある;この細胞では、ゲノム全体のDNAメチル化がほぼ消失していることが知られている)から、mirVana miRNA isolation kit(Ambion)あるいはTrizol(Invitrogen)を用いてmiRNAを回収し、TaqMan miRNA Assay System(Applied Biosystems))とABI7900real-timePCR解析装置(Applied Biosystems)を用いてdelta/delta CT法により、157種類のmiRNAの発現レベルを比較した。内因性コントロールとしてはU6 snRNAを用いた。
【0076】
各miRNAの発現レベルは、U6 snRNAの発現量に対する各miRNAの発現量の比(すなわち、各miRNAの発現量/U6 snRNAの発現量)に換算して解析したところ、図2に示すように(図2中、各miRNAに対し、1番上のバーがHCT116細胞(HCT116)、2番目のバーがDAC処理を行ったHCT116細胞(HCT116+DAC)、3番目のバーがDNAメチル化酵素遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(DNMTノックアウト)を示す)、37種類のmiRNA(hsa-miR-34b、hsa-miR-34c、hsa-miR-105、hsa-miR-124a、hsa-miR-124b、hsa-miR-127、hsa-miR-129、hsa-miR-134、hsa-miR-137、hsa-miR-138、hsa-miR-142-3p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-146、hsa-miR-150、hsa-miR-154、hsa-miR-154、hsa-miR-155、hsa-miR-184、hsa-miR-187、hsa-miR-199a、hsa-miR-205、hsa-miR-296、hsa-miR-299、hsa-miR-302a、hsa-miR-302b、hsa-miR-302c、hsa-miR-302d、hsa-miR-323、hsa-miR-337、hsa-miR-338、hsa-miR-367、hsa-miR-368、hsa-miR-370、hsa-miR-371、hsa-miR-372、hsa-miR-373およびhsa-miR-373)がDNAメチル化酵素阻害剤処理およびDNAメチル化酵素遺伝子のノックアウトにより発現が誘導されることが明らかになった。
【0077】
上記で同定された37種類のmiRNAのうち、miR-34bとmiR-34cは、図3Bに示すように染色体11q23から転写される単一の前駆体RNAがプロセシングを受けて各々の成熟型miRNAになることが知られている。このことから理解される通り、miR-34bおよびmiR-34cのいずれも、HCT116細胞(HCT116)では発現レベルが極めて低いが、DNAメチル化酵素阻害剤処理(HCT116+DAC)により発現が回復するとともに、DKO2細胞(DKO2)で高い発現が観察され、miR-34bとmiR-34cとがほぼ同様の誘導パターンを示した(図3A)。
【0078】
<実施例2> 大腸癌細胞株におけるmiR-34bおよびmiR-34cの発現解析
さらに、miR-34bおよびmiR-34c (以下、miR-34b/cと表記することがある)のDACによる発現誘導がHCT116細胞以外の他の大腸癌細胞株でも観察されるかどうか調べるため、大腸癌細胞9株(CaCO2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48およびSW480)ならびにDAC処理(2μM、72時間)をそれぞれ行った前記大腸癌細胞9株について、mirVana miRNA isolation kit(Ambion)あるいはTrizol(Invitrogen)を用いてmiRNAを回収し、TaqMan miRNA Assay System(Applied Biosystems)とABI7900real-timePCR解析装置(Applied Biosystems)とを用いてdelta/delta CT法により、miR-34 b/cの発現レベルを解析した。また、コントロールとしてDKO2細胞を用い、内因性コントロールとしてU6 snRNAを用いた。
【0079】
miRNAの発現レベルは、U6 snRNAの発現量に対する各miRNAの発現量の比(すなわち、各miRNAの発現量/U6 snRNAの発現量)に換算して解析したところ、図4(3回の繰り返し実験の平均値および標準偏差により示されている)に示す通り、前記の大腸癌細胞9株全てにおいて、miR-34b(図4A)およびmiR-34c(図4B)がDAC処理(DAC+)により発現誘導されることが明らかになった。したがって、大腸癌細胞においては、miR-34b/c遺伝子はDNAメチル化によるエピジェネティックなサイレンシングを受けて発現が抑制されている可能性が示唆された。
【0080】
<実施例3> p53の標的としてのmiR-34b/c遺伝子の解析
miR-34b遺伝子とmiR-34c遺伝子は、染色体11q23から転写されるBC021376というnon-coding RNAのイントロン1およびエキソン1と重なるため、BC021736がmiR-34b/cの前駆体RNA候補と考えられている。そして、BC021736の転写開始点の直近には癌抑制遺伝子産物p53の結合配列が存在するとともに、miR-34b/cに対してアンチセンス方向にはB-cell translocation gene 4 (BTG4)遺伝子という別の遺伝子がコードされており、BTG4遺伝子のエキソン1とmiR-34 b/cの近傍にはCpGアイランドが存在する(図3B)。
【0081】
そこで、まず、HCT116細胞またはp53遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞を、DACのみで処理した場合(2μM、72時間)、DAC処理(2μM、72時間)した後さらにp53の発現を誘導することが知られているアドリアマイシン(ADR)処理(0.5μg/ml、24時間)した場合、また、アドリアマイシン(ADR)のみで処理した場合(0.5μg/ml、24時間)のmiR-34b/cの発現レベルについて、TaqMan miRNA Assay System(Applied Biosystems)とABI7900real-timePCR解析装置(Applied Biosystems)とを用いてdelta/delta CT法により解析した。内因性コントロールとしてはU6 snRNAを用いた。
【0082】
図5A(3回の繰り返し実験の平均値および標準偏差により示されている)に示すように、HCT116細胞を低濃度のDACで処理した場合、および、ADRで処理した場合には、いずれもmiR-34b/cの発現誘導が認められ、また、DACとADRの両方で処理した場合には、miR-34b/cの発現は相乗効果的に上昇した。
さらに、図5B(3回の繰り返し実験の平均値および標準偏差により示されている)に示すように、p53遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞では、DACで処理した場合には、miR-34b/cの発現誘導がみられるが、ADRで処理した場合には、miR-34b/cの発現誘導が全く認められず、また、DACとADRの両方で処理した場合には、DACのみで処理した場合と同程度のmiR-34b/cの発現が誘導されるにとどまった。
【0083】
次に、前記と同様に、HCT116細胞またはp53遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞を、DACのみで処理した場合(2μM、72時間)、DAC処理(2μM、72時間)した後さらにADR処理(0.5μg/ml、24時間)を行った場合、またADRのみで処理した場合(0.5μg/ml、24時間)のp53の発現誘導について、抗p53抗体を用いたウェスタンブロッティングによりタンパク質レベルで解析を行った。コントロールとして、β-アクチンの発現を確認するとともに、p53の代表的な標的として知られているp21遺伝子の発現についても同様に確認した。
その結果、図5Cに示すように、HCT116細胞(WT)では、ADR処理によるp53の発現誘導が確認されたが、DAC処理によってはp53は誘導されず、また、p53の標的遺伝子であるp21遺伝子の発現もp53と同様のパターンで誘導がみられた。一方、p53遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(p53KO)では、いずれの処理によってもp53もp21も全く変化がみられなかった。
【0084】
続いて、SV40プロモーターを持つルシフェラーゼベクターであるpGL3-promoter(Promega)にmiR-34b/c遺伝子の近傍領域に存在するp53結合配列(配列番号23)を挿入したベクター(pGL3-promoter-p53RE)を作成した(図6A)。このpGL3-promoter-p53REをp53発現ベクターと同時にHCT116細胞に導入し、トランスフェクションから48時間後にルシフェラーゼ活性を測定したところ、ルシフェラーゼ活性の上昇が認められた(図6B)。
これらの結果から、miR-34b/c遺伝子は、p53の標的遺伝子であり、p53とエピジェネティックな遺伝子サイレンシングとの両者により発現制御を受けていることが確認された。
【0085】
<実施例4> miR-34b/c遺伝子のプロモーター解析
miRNA-34b/c遺伝子の近傍にはCpGアイランドが存在する(図7)。RNAの転写開始点では、ヒストンH3の4番目のリジン(H3-K4)がトリメチル化していることが一般的であるため、H3-K4のトリメチル化は転写開始点の指標となることが知られている。そこで、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドがmiR-34b/c遺伝子の転写開始点か否かを検討するため、HCT116細胞、DAC処理(2μM、72時間)を行ったHCT116細胞およびDKO2細胞について、miRNA-34b/c遺伝子の上流約4.5 kbまでの範囲におけるH3-K4トリメチル化を、Chromatin Immunoprecipitation kit(Upstate)を用いてクロマチン免疫沈降法により解析した。具体的には、細胞をフォルマリンで固定し、溶出バッファーに溶解した後、DNAを超音波破砕機で破砕し、次いで抗トリメチルH3-K4抗体で免疫沈降し、沈降したDNAをPCRによって検出した。その結果、図7グラフに示す通り、横軸に示すmiR-34b/c遺伝子近傍の配列においてCpGアイランドと一致してH3-K4トリメチル化が認められ(図7上部:miR-34b/c遺伝子近傍の配列模式図参照)、このCpGアイランド近傍にmiR-34b/c遺伝子の転写開始点が存在することが示唆された。
【0086】
次いで、このmiR-34b/c近傍のCpGアイランドは、図8Aの模式図に示すように、テロメア方向にはmiR-34b/c遺伝子がコードされ、セントロメア方向にはB-cell translocation gene 4 (BTG4)遺伝子という別の遺伝子がコードされていることから、プロモーター領域予測プログラム(WWW Promoter Scan、http://www-bimas.cit.nih.gov/molbio/proscan/)を用いて解析を行ったところ、このCpGアイランドには両方向にプロモーター活性があることが示唆された。そこで、このCpGアイランド領域をクローニングし、ルシフェラーゼベクターpGL3-Basic(Promega)に、配列番号24に記載のmiR-34b/c方向の配列を挿入したベクター(pGL3miR-34b)と、配列番号25に記載のBTG4方向の配列を挿入したベクター(pGL3-BTG4)とをそれぞれ作製し(図8A;グレーの太矢印)、大腸癌細胞株であるHCT116細胞およびDLD1細胞に導入して、トランスフェクションから48時間後に各配列のプロモーター活性を測定した。その結果、図8Bに示される通り、いずれの細胞においても、ネガティブコントロールとして用いたプロモーターのないルシフェラーゼベクターであるpGL3-Basicを導入した場合と比較して、pGL3-miR34bを導入した場合も、pGL3-BTG4を導入した場合も、ルシフェラーゼ活性の上昇が認められたことから、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドは、miR-34b/c遺伝子方向とBTG4遺伝子方向のどちらにもプロモーター活性があることが確認された。
【0087】
<実施例5> メチル化特異的PCR(MSP)法によるDNAメチル化解析
まず、大腸癌細胞株9株(CaCO2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48およびSW480)に加え、DKO2細胞およびヒトの正常な大腸組織について、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化を、メチル化特異的PCR(MSP)法により解析した。具体的には、EpiTect Bisulfite Kits (Qiagen)を用いてバイサルファイト処理した後、メチル化特異的プライマー:
5’-ATTCGTTTCGTTTCGCGTTCGTTTC-3’(配列番号17)および
5’-CTAAAACTAACTCTCTCGACCCCG-3’(配列番号18)
でメチル化を検出し、また、非メチル化特異的プライマー:
5’-TTTTTATTTGTTTTGTTTTGTGTTTGTTTTG-3’(配列番号19)および
5’-CCTAAAACTAACTCTCTCAACCCCA-3’(配列番号20)
で非メチル化を検出した。プライマーは、前記CpGアイランド中、図8AにMSPで示した太線部位(配列番号8で表わされる塩基配列からなる領域)を特異的に増幅するように設計された。
【0088】
その結果、図9Aに示すように、上記の大腸癌細胞9株の全てにおいて、メチル化部位が特異的に増幅されたバンドが強く検出され(M)、非メチル化部位が特異的に増幅されたバンドはほとんど検出されず(U)、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドの高度なDNAメチル化が認められた。一方、DNMT遺伝子がノックアウトされているDKO2細胞および正常な大腸組織では、メチル化特異的なバンドはほとんど検出されず(M)、非メチル化特異的なバンドが強く検出され(U)、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドはほとんどメチル化していないことが確認された(図9A)。
【0089】
次いで、大腸癌臨床検体(手術により入手した凍結組織)126例(このうち97例について年齢の情報が得られ、平均年齢65.3歳であった。また102例について性別の情報が得られ、男性67例、女性35例であった。)について、DNAを抽出し、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化を、上記と同様にしてメチル化特異的PCR(MSP)法により解析した。
その結果、前記CpGアイランドのDNAメチル化は、図9Bの7検体(CRC1~7)に示すように、多くの検体で癌部大腸組織(T)において検出され、対照の非癌部大腸組織(N)では検出されないか、もしくは検出されてもごくわずかにとどまった。また、図9Cに示す通り、前記126例のうち、90%にあたる114例において、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化が検出された。
以上の結果より、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドは、大腸癌細胞および大腸癌組織において特異的にメチル化されていることが示唆された。
【0090】
<実施例6> バイサルファイトシークエンス法によるDNAメチル化解析
大腸癌細胞株HCT116細胞(HCT116)およびDKO2細胞(DKO2)、ヒトの正常な大腸組織(normal colon)、ヒト大腸癌組織(Tumor#1およびTumor#2)(手術により入手した凍結組織。実施例5で用いた組織と同じもの。)について、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化を、バイサルファイトシークエンス法により解析した。具体的には、EpiTect Bisulfite Kits (Qiagen)を用いてバイサルファイト処理したのち、バイサルファイトシークエンス用のプライマー:
5’-GTTTTAAGAATTTGGGTTTTTATTTTTTAG-3’(配列番号10)および
5’-CAAACTTCAATTCCCAACCCCAAAC-3’(配列番号11)
で目的の領域をPCRにより増幅した。続いて、増幅したPCR産物をTOPO TA Cloning Kit (Invitroen)でクローニングした後、ABI3130xシークエンサー(Applied Biosystems)で塩基配列を解析した。プライマーは、前記CpGアイランド中、図8Aにbisulfite seqで示した太線部位(配列番号6で表わされる塩基配列からなる領域)を特異的に増幅するように設計された。
【0091】
その結果、図10に示す通り(図10の横軸はCpG配列の数を示し、縦軸は解析したクローン数を示す)、約200bpの範囲に存在する22か所のCpGのうち、大腸癌細胞株であるHCT116細胞(HCT116)では全てのCpGにおいて高度なメチル化がみられたのに対し、DNMT遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞であるDKO2細胞(DKO2)ではいずれの箇所においてもメチル化はほぼ完全に消失しており、上記実施例5におけるMSP法による解析結果と完全に一致する結果が得られた。また、大腸癌組織(Tumor#1およびTumor#2)においては、ほぼすべてのCpGが高度にメチル化されていたが、正常大腸組織(normal colon)ではごく一部のCpGにおいてわずかなメチル化がみられるにとどまった。大腸癌組織においては、メチル化の程度がHCT116細胞よりも低く、メチル化と非メチル化が混合したパターンとして表れたが、これは、組織中に癌細胞と非癌細胞とが混在しているためと考えられる。
【0092】
<実施例7> パイロシークエンス法によるDNAメチル化解析
大腸癌細胞株HCT116細胞およびDNMT遺伝子をノックアウトしたDKO2細胞、ヒトの正常な大腸組織(normal colon)、ヒト大腸癌組織(Tumor#1(上記実施例6と同じもの))のmiR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化を、パイロシークエンス法により定量的に解析した。具体的には、EpiTect Bisulfite Kits(Qiagen)を用いてバイサルファイト処理した後、パイロシークエンス用のプライマー:
5’-TTAGTTTTTAGTTTTAAATTTTAGAGTTGG-3’(配列番号13)および
5’-TCTCCCTTAAAAACCCTTCAAAAACC-3’(配列番号14)
で目的の領域をPCRにより増幅し、Pyro Goldリージェント(Biotage)およびシークエンス用プライマー(5’-TAATYGTTTTTGGAATTT-3’(配列番号15))を用いてシークエンス解析を行った。プライマーは、前記CpGアイランド中、図8Aにpyro seqで示した太線部位(配列番号7で表わされる塩基配列からなる領域)を特異的に増幅するように設計された。
なお、このパイロシークエンスの例は、配列番号7からなる塩基配列を有する領域を特異的に増幅することで解析を行うものであるが、配列番号7で表わされる塩基配列を有する領域をバイサルファイト処理した後のDNAのセンス鎖に基づいて設計されたプライマーを用いた場合には、繰り返し配列が多い等の理由からPCR増幅およびシークエンス反応が困難であったため、配列番号7で表わされる塩基配列を有する領域をバイサルファイト処理した後のDNAのアンチセンス鎖の配列(配列番号12により表わされる塩基配列を有する配列)に基づいて設計されたプライマーを用いることにより、上記配列番号7で表わされる目的領域のDNAメチル化解析を達成した。
その結果、図11に示す通り(図11の横軸は塩基配列を示し、縦軸は蛍光強度、すなわち相対的なメチル化の強さを示す)、MSP法およびバイサルファイトシークエンス法による解析結果と一致する結果が得られた。
【0093】
また、正常大腸組織(normal colon)17検体、実施例5においてMSP法による解析でメチル化陰性と判定された大腸癌組織(tumor(U))10検体、実施例5においてMSP法による解析でメチル化陽性と判定された大腸癌組織(tumor(M))101検体、および大腸癌細胞9株(CaCO2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48およびSW480)(cell lines)について、上記と同様にパイロシークエンス法により解析を行った。結果を図12に示す。
図12のグラフでは、1個のドットが1検体を示し、縦軸はメチル化のレベルを示している。図12から理解される通り、MSP法およびバイサルファイトシークエンス法により得られたのと同様の結果が得られ、パイロシークエンス法を用いた場合には、ハイスループットかつ定量的にDNAメチル化の解析が可能であることが確認された。
【0094】
さらに、パイロシークエンス法を用いて胃癌細胞16株(MKN1, MKN7, MKN74, SH101, SNU1, SNU638, JRST, KatoIII, AZ521, MKN28, MKN45, NUGC3, NUGC4, AGS, NCI-N87, SNU16)、膵癌細胞9株(BxPC-3, Capan2, CFPAC, KLM-1, KP1-NL, MIAPaCa, Panc-1, PK-8, PK-9)、乳癌細胞9株(MCF7, MDA-MB-231, MDA-MB-435S, MDA-MB-436, MDA-MB-468, T-47D, SK-BR-3, MDA-MB-453, ZR-75-1)について、上記と同様にmiR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化を解析したところ、胃癌細胞では15株(MKN1, MKN7, MKN74, SH101, SNU1, SNU638, JRST, KatoIII, AZ521, MKN28, MKN45, NUGC3, NUGC4, AGS, NCI-N87)(94%)、膵癌細胞では5株(BxPC-3, KLM-1, MIAPaCa, PK-8, PK-9)(56%)、乳癌細胞では7株(MCF7, MDA-MB-231, MDA-MB-435S, MDA-MB-468, T-47D, MDA-MB-453, ZR-75-1)(78%)においてメチル化が認められた。
【0095】
以上の結果より、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化は、大腸癌細胞および大腸癌組織において高いレベルで検出され、正常組織においてはほとんど検出されなかったことから、大腸癌においてmiR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドが特異的にメチル化されていることが明らかになるとともに、大腸癌特異的にmiR-34b/c遺伝子がサイレンシングされていることが示唆された。また、大腸癌のみならず、胃癌、膵癌および乳癌においても、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドがメチル化され、miR-34b/c遺伝子がサイレンシングされている可能性が示唆された。
【0096】
<実施例8>miR-34b/cの機能解析
miR-34b/c遺伝子は癌細胞特異的にサイレンシングされていることが示唆されたことをふまえ、miR-34b/c遺伝子が癌遺伝子産物の発現を抑制する癌抑制遺伝子として機能する可能性について検討した。まず、miR-34b/cの発現により発現が低下する遺伝子を調べるため、コントロールmiRNA (control miRNA (Ambion))、miR-34b(miR-34b precursor (Ambion))、miR-34c(miR-34c precursor (Ambion))をHCT116細胞にエレクトロポレーション法で導入し、48時間後にRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。また、無処置のHCT116細胞(mock)およびDNAメチル化酵素阻害剤DAC(2μM、72時間)で処理したHCT116細胞(DAC)についてもRNAを抽出して同様にマイクロアレイ解析を行った。
【0097】
結果を図13Aに示す。コントロールmiRNA(miRNA-control)、miR-34b(miR-34b)およびmiR-34c(miR-34c)をそれぞれ発現させた場合のパターンを比較すると、miR-34b/cの発現により発現が低下する遺伝子は、図A上部の大きな括弧により示された部分にみられ、これらがmiR-34b/cの標的遺伝子に該当すると考えられる。また、無処置のHCT116細胞(mock)とDACで処理したHCT116細胞(DAC)とを比較し、変動がみられた遺伝子について解析したところ、miR-34b/cの発現により発現が低下する遺伝子の多くがDAC処理によっても発現が低下することが明らかになった。これは、DAC処理により、内在性のmiR-34b/cの発現が増加するためと考えられる。
【0098】
次に、上記のマイクロアレイの結果を検証するため、代表的な癌遺伝子であるMET(肝細胞増殖因子受容体)遺伝子およびMYB(v-myb myeloblastosis viral oncogene homolog)遺伝子、細胞周期関連遺伝子であるCDK4(cyclin-dependent kinase 4)遺伝子およびCCNE2(Cyclin E2)遺伝子、また、SFRS2(splicing factor, arginine/serine-rich 2)遺伝子の発現について、コントロールmiRNA (control miRNA (Ambion))、miR-34b(miR-34b precursor (Ambion))、miR-34c(miR-34c precursor (Ambion))をHCT116細胞にエレクトロポレーション法で導入し、48時間後にRNAを抽出して、TaqMan Gene Expression Assay(Applied Biosystems)を用い、リアルタイムRT-PCRにより解析した。また、無処置のHCT116細胞(mock)およびDNAメチル化酵素阻害剤DAC(2μM、72時間)で処理したHCT116細胞(DAC)についてもRNAを抽出して同様に解析を行った。その結果、図13Bに示す通り、上記いずれの遺伝子のmRNA発現レベルも、miR-34b/cの発現により低下すること、また、DAC処理により低下することが明らかになった。
【0099】
さらに、上記遺伝子について、タンパク質レベルにおける変化を検証するため、図13Cに示すように、抗MET抗体(MET)、抗CDK4抗体(CDK4)、抗SFRS2抗体(SFRS2)、ならびにコントロールとして抗アクチン抗体(actin)を用い、ウェスタンブロッティングにより解析を行ったところ、上記いずれのタンパク質(MET、CDK4およびSFRS2)の発現レベルも、miR-34b/cの発現により低下すること、また、DAC処理により低下することが示された。miRNAは、その作用として、RNAを分解する作用よりもタンパク質への翻訳を阻害する作用のほうが強いことが知られており、上記結果においてもRNAレベルの低下よりもタンパク質レベルの低下のほうが顕著に表れている。
【0100】
以上の結果から、癌遺伝子であるMET遺伝子やMYB遺伝子、細胞周期関連遺伝子であるCDK4遺伝子やCyclin E2遺伝子、また、SFRS2遺伝子などがmiR-34b/cの標的遺伝子であることが示唆された。さらに、癌細胞においては、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドが特異的にメチル化されることによるサイレンシングを受けてmiR-34b/cの発現が抑制され、その標的であるこれら遺伝子の発現が上昇していると考えられることから、miR-34b/cは、癌抑制的に機能するmiRNA(tumor suppressive miRNA)であると考えられる。
【0101】
これまで、DNAメチル化により転写抑制を受ける癌抑制遺伝子や癌関連遺伝子が多数同定されているが、これらの遺伝子はデシタビン(decitabine)のようなDNAメチル化酵素阻害剤により発現が回復することから、DNAメチル化酵素阻害剤は有効な癌治療剤として注目されている。今回、本願発明者らの研究により、癌細胞において、DNAメチル化酵素阻害剤が、癌抑制作用を有するmiRNAの発現を回復した結果、癌遺伝子産物の発現が抑制されて、抗癌作用を示すというメカニズムも明らかになった。
【0102】
<実施例9>BTG4の機能解析
上記実施例4において示されたとおり、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドは、両方向にプロモーター活性を持っていることから、miR-34b/cに対して反対方向に転写されるBTG4遺伝子もまた、癌細胞においてサイレンシングされている可能性が考えられるため、BTG4についても解析を行った。
最初に、大腸癌細胞9株(CaCO2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48およびSW480)、DKO2細胞およびヒトの正常な大腸組織におけるBTG4の発現、ならびに、前記大腸癌細胞にDAC処理(2μM、72時間)を行った場合のBTG4の発現について、
フォワードプライマー:5’-GTTTCTCTTTCTGATCTAGCAGGA-3’(配列番号26)および
リバースプライマー:5’-TCAGAGTGCCAGTGACTTCTGTA -3’(配列番号27)
を用いてRT-PCR法により調べた。結果を図14Aに示す。
【0103】
図14Aの結果に示される通り、上記大腸癌細胞9株すべてにおいて、BTG4遺伝子のmRNAの発現は消失しているかもしくは極めて低レベルでしか認められないが、DAC処理によりBTG4遺伝子のmRNAの発現は大きく増加(回復)する傾向にあることが示された。また、DKO2細胞でもBTG4遺伝子は高レベルに発現していた。したがって、大腸癌細胞では、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化によりBTG4遺伝子がサイレンシングされ、発現が抑制されていることが示唆された。
【0104】
次いで、BTG4の細胞増殖能を解析するため、コロニーフォーメーションアッセイを行った。BTG4発現ベクターまたはコントロールベクターを大腸癌細胞株であるDLD1細胞およびHCT116細胞に導入し、遺伝子が導入された細胞を薬剤G418により選別し、遺伝子導入から10~14日後に細胞をメタノールで固定し、ギムザ液により染色してコロニー数を計測した。結果を図14BおよびCに示す。図14Cは、図14Bの結果をグラフ化したものであり、3回の実験結果の平均値および標準偏差を示している。
【0105】
図14BおよびCの結果から理解される通り、BTG4発現ベクターを導入した大腸癌細胞(BTG4)では、コントロールベクターを導入した細胞(vector)と比較してコロニー形成能が低下していた。したがって、BTG4には腫瘍増殖抑制作用があることから、BTG4遺伝子は癌抑制遺伝子として機能する可能性が示された。
以上の通り、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化はmiR-34b/c のみならず、BTG4の転写制御にも関与し、細胞の癌化に大きく関与していることが示された。
【0106】
<実施例10>胃癌症例におけるmiR-34b/cのDNAメチル化
上記実施例において大腸癌においてmiR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドは、大腸癌細胞および大腸癌組織において特異的にメチル化されていることが示唆されたことから、さらに、胃癌症例における同部位のDNAメチル化についても解析を行った。
胃癌多発症例、胃癌単発症例および非癌症例について、胃前庭部の粘膜を採取して、DNAを抽出し、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化を、実施例7と同様にパイロシークエンス法により定量的に解析した。
その結果、図15に示す通り、胃前庭部の背景粘膜におけるmiR-34b/cのDNAメチル化は、胃癌多発症例(15検体)において平均33.8%、胃癌単発症例(39検体)において平均21.3%、非癌症例(46検体)において平均22.3%であった。したがって、胃癌多発症例においては、胃癌単発症例もしくは非癌症例と比較して、有意に高いレベルでmiR-34b/cのDNAメチル化が認められた(p<0.0001)ことから、胃前庭部の粘膜におけるmiR-34b/cのDNAメチル化のレベルに基づいて、胃癌多発症例を検出することが可能であることが示唆された。
【0107】
同様の実験を、胃体部の粘膜についても行ったところ、図16に示す通り、胃体部の粘膜におけるmiR-34b/cのDNAメチル化は、胃癌多発症例(15検体)において平均21.6%、胃癌単発症例(39検体)において平均19.1%、非癌症例(45検体)において平均17.2%であった。したがって、胃癌多発症例においては、胃癌単発症例もしくは非癌症例と比較して、有意に高いレベルでmiR-34b/cのDNAメチル化が認められた(p=0.045)ことから、胃体部の粘膜におけるmiR-34b/cのDNAメチル化のレベルに基づいて、胃癌多発症例を検出することが可能であることが示唆された。
さらに、胃前庭部と胃体部におけるmiR-34b/cのDNAメチル化レベルを平均すると、図17に示す通り、胃癌多発症例において平均27.7%、胃癌単発症例において平均19.9%、非癌症例において平均19.6%であった。したがって、胃癌多発症例においては、胃癌単発症例もしくは非癌症例と比較して、有意に高いレベルでmiR-34b/cのDNAメチル化が認められ(p<0.0001)、胃前庭部および胃体部の粘膜におけるmiR-34b/cのDNAメチル化の平均値を採用することで、より高い精度で胃癌多発症例を検出することが可能であることが示唆された。
また、これらの結果より、miR-34b/cのDNAメチル化のレベルが胃癌多発症例で高値を示すことが明らかになり、胃粘膜におけるmiR-34b/cのDNAメチル化レベルの検出が胃癌の再発予測にも有用である可能性が示された。さらに、単発癌症例や非癌症例の一部においても高いレベルのメチル化が検出されることから、miR-34b/cのDNAメチル化レベルに基づいて発癌リスクの予測も可能であることが示唆された。
【0108】
<実施例11>大腸癌症例におけるmiR-34b/cのDNAメチル化
上記実施例においてmiR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドは、大腸癌細胞および大腸癌組織において特異的にメチル化されていることが示唆されたことから、大腸癌症例における同部位のDNAメチル化と大腸癌の達度との関係についても解析を行った。
大腸腺腫(Adenoma)症例(12検体)、浸潤癌(Cancer)症例(18検体)および高度異型腺腫・粘膜内癌(Sev-m)症例(5検体)について、大腸組織(大腸生検組織)を採取して、DNAを抽出し、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化を、実施例7と同様にパイロシークエンス法により定量的に解析した。
その結果、図18に示す通り、大腸生検組織におけるmiR-34b/cのDNAメチル化は、大腸腺腫(Adenoma)症例において平均22.9%、浸潤癌(Cancer)症例において平均41.9%、高度異型腺腫・粘膜内癌(Sev-m)症例において平均34.8%であった。したがって、浸潤癌症例においては、大腸腺腫症例と比較して、有意に高いレベルでmiR-34b/cのDNAメチル化が認められた(p=0.0011)ことから、大腸生検組織におけるmiR-34b/cのDNAメチル化のレベルに基づいて、大腸癌の達度を予測するとともに、浸潤癌症例を検出することが可能であることが示唆された。
【0109】
さらに、拡大内視鏡を用いた検査においては、IV型Pitを示す症例は、癌か腺腫かの判断がしばしば困難であることから、IV型Pit症例を、4b(同一病変内にV型Pitを持ち、高度異型、腺腫内癌、癌などを伴う)症例およびIVb(単純な中等度腺腫などを持つ)症例に分類して、上記と同様の実験を行いmiR-34b/cのDNAメチル化レベルを調べた。すると、図19に示す通り、4b症例(10検体)では平均44.5%、IVb症例(6検体)では平均22.4%であった。したがって、内視鏡検査では同一に見えるIV型pitにおいても、癌を伴っている症例(4b)では、癌を伴っていない症例(IVb)と比較して有意に高いレベルでmiR-34b/cのDNAメチル化が認められ(p=0.0028)、miR-34b/cのDNAメチル化に基づいて、内視鏡検査で診断が困難な症例でも高い精度で発癌リスクを予測し得る可能性が示唆された。
これらの結果より、miR-34b/cのDNAメチル化のレベルが大腸癌において特に浸潤癌症例で高値を示すことが明らかになり、大腸(生検)組織を試料としてmiR-34b/cのDNAメチル化レベルの検出を行うことで大腸癌の達度予測や発癌リスクの予測が可能となることが示された。
【0110】
以上の通り、本願発明者らは、大腸癌細胞においてDNAメチル化によるエピジェネティックなサイレンシングを受けるmiRNAとして新たにmiR-34b/cを同定し、さらに、染色体11q23.1に存在するmiR-34b/c遺伝子近傍のCpG アイランドのDNAメチル化を詳細に解析した結果、前記CpGアイランドは、miR-34b/c遺伝子のプロモーターであることを見出すとともに、大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌などの種々の癌において特異的にメチル化されることにより、miR-34b/c遺伝子の不活性化に直接的に関与していることを初めて発見した。また、miR-34b/c遺伝子が、癌抑制遺伝子産物であるp53により発現誘導を受けること、Cyclin E2遺伝子やCDK4遺伝子などの細胞周期調節遺伝子ならびにMET遺伝子やMYB遺伝子などの癌遺伝子の発現を抑制することも明らかにしたことから、p53がmiR-34b/cを介して癌遺伝子の発現等を間接的に制御することにより、癌抑制遺伝子産物としての機能を果たしていることをも示した。そしてさらに、miR-34b/c遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドは、miR-34b/c遺伝子とは反対の方向に転写されるBTG4遺伝子のプロモーターとしても活性を有しており、大腸癌細胞において前記CpGアイランドのメチル化によりBTG4遺伝子もサイレンシングされていることを見出した。加えて、BTG4は癌細胞増殖抑制作用を有することから、BTG4遺伝子が癌抑制遺伝子として機能する可能性も示された。
【0111】
これらの結果から、本願発明の方法により、あるいは、本発明のキットを用いることにより、対象から得た生物学的試料を用いて、対象における癌、特に、大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌を、容易にしかも正確に検出することが可能であることが示された。また、本願発明の方法または本願発明のキットは、癌の検出のみならず、癌の達度予測、発癌リスクの予測、再発リスクの予測にも極めて有用であることが示唆された。前記CpGアイランドは、上記の通り癌細胞においてmiR-34b/c遺伝子およびBTG4遺伝子という癌組織特異的に発現が低下しているの2つの遺伝子の発現を直接調節していることから、この領域のメチル化を基準として癌を検出する本願発明の方法は、極めて精度の高いものであると考えられる。
さらにまた、本願発明の癌治療剤は、大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌等の癌において、癌抑制遺伝子産物的に機能するmiR-34b/cまたはBTG4の発現を増加させるものであることから、有効に癌細胞の増殖を抑制し得るものであることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0112】
miR-34b/c遺伝子は、大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌等の癌において特異的に発現が抑制されており、本発明によれば、かかるmiR-34b/c遺伝子の発現抑制を直接的に制御するmiR-34b/c遺伝子プロモーター領域のCpGアイランドにおけるDNAメチル化を検出することを含む癌の検出方法、およびかかる方法に基づく癌検出用キットを提供することができる。したがって、本発明は、大腸癌、胃癌、膵癌、乳癌等の癌の診断に加え、その治療や研究にも大いに貢献するものである。
また、miR-34bおよび/またはmiR-34cは、癌細胞において特異的に発現が低下しているとともに、癌遺伝子等の発現を抑制する作用を有することから、miR-34bおよび/またはmiR-34c、あるいは、miR-34b遺伝子および/またはmiR-34c遺伝子をコードする核酸を含む癌の治療剤を提供することができ、かかる癌の治療剤は高い治療効果が得られるものとして医薬品への応用が期待される。さらに、BTG4は、癌細胞において特異的に発現が低下しているとともに、細胞増殖抑制作用を有することから、BTG4もしくはBTG4遺伝子をコードする核酸を含む癌の治療剤を提供することができ、かかる癌の治療剤は優れた治療効果を示すものとして医薬品への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】microRNAの機能を示す模式図である。
【図2】大腸癌細胞株HCT116(HCT116)、DNAメチル化酵素阻害剤処理をしたHCT116細胞(HCT116+DAC)、およびDNAメチル化酵素遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(DNMTノックアウト)において、37種類のmiRNA発現を解析した結果を示す図である。
【図3A】大腸癌細胞株HCT116(HCT116)、DNAメチル化酵素阻害剤処理をしたHCT116細胞(HCT116+DAC)、およびDNAメチル化酵素遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(DKO2)における、hsa-miR-34bおよびhsa-miR-34cの発現レベルを示す図である。
【図3B】染色体11q23.1におけるmiR-34b/c遺伝子近傍の配列を示す模式図である。

【0114】
【図4A】大腸癌細胞9株(CaCo2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48、SW480)およびDAC処理した前記の細胞株、ならびにコントロールとしてDNAメチル化酵素遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(DKO2)における、miR-34bの発現レベル示す図である。
【図4B】大腸癌細胞9株(CaCo2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48、SW480)およびDAC処理した前記の細胞株、ならびにコントロールとしてDNAメチル化酵素遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(DKO2)における、miR-34cの発現レベル示す図である。

【0115】
【図5A】HCT116細胞において、処理をしなかった場合、DAC処理をした場合、ADR処理をした場合、ならびに、DAC処理およびADR処理をした場合の、miR-34bおよびmiR-34cの発現レベルを示す図である。
【図5B】p53遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞において、処理をしなかった場合、DAC処理をした場合、ADR処理をした場合、ならびに、DAC処理およびADR処理をした場合の、miR-34bおよびmiR-34cの発現レベルを示す図である。
【図5C】HCT116細胞(WT)およびp53遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(p53KO)において、処理をしなかった場合、DAC処理をした場合、ADR処理をした場合、ならびに、DAC処理およびADR処理をした場合の、p53、p21およびβ-actinのタンパク質発現レベルを示す図である。

【0116】
【図6A】SV40プロモーターを持つルシフェラーゼベクターであるpGL3-promoterに、miR-34b/c遺伝子近傍に存在するp53結合配列を挿入したベクター(pGL3-promoter-p53RE)の模式図を示す図である。
【図6B】pGL3-promoter-p53REを、コントロール発現ベクターと同時に、またはp53発現ベクターと同時に、HCT116細胞へ導入した場合のルシフェラーゼ活性を示す図である。
【図7】miR-34b/c遺伝子近傍の配列を示す模式図(上段)、ならびに、miR-34b/c遺伝子近傍の配列とヒストンH3の4番目のリジン(H3-K4)のトリメチル化との関係を示すグラフ(下段)を表す図である。

【0117】
【図8A】miR-34b/c遺伝子近傍におけるCpGアイランドを示す模式図である。
【図8B】大腸癌細胞株HCT116およびDLD1に、コントロールルシフェラーゼベクター(pGL3-Basic)またはmiR-34b/c遺伝子近傍のプロモーター領域を挿入したルシフェラーゼベクター(pGL3-miR-34b/cもしくはpGL3-BTG4)を導入し、ルシフェラーゼ活性を測定した結果を示す図である。
【図9A】大腸癌細胞株(CaCo2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48、SW480)およびDNAメチル化酵素遺伝子をノックアウトしたHCT116細胞(DKO2)における、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化をメチル化特異的PCR法により解析した結果を示す図である。
【図9B】大腸癌臨床検体7例(CRC1~7)の癌部組織(T)および非癌部組織(N)における、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化をメチル化特異的PCR法により解析した結果を示す図である。
【図9C】大腸癌臨床検体126例におけるmiR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化を解析した結果を示す図である。

【0118】
【図10】HCT116細胞(HCT116)、DKO2細胞(DKO2)、正常大腸組織(normal colon)、および大腸癌組織2例(Tumor#1およびTumor#2)における、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化をバイサルファイトシークエンス法により解析した結果を示す図である。
【図11】HCT116細胞(HCT116)、DKO2細胞(DKO2)、正常大腸組織(normal colon)、および大腸癌組織(Tumor#1)における、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化をパイロシークエンス法により解析した結果を示す図である。
【図12】正常大腸組織(n=17)(normal colon)、MSP法でメチル化陰性と判定された大腸癌組織(n=10)(tumor(U))、MSP法でメチル化陽性と判定された大腸癌組織(n=101)(tumor(M))、大腸癌細胞株(n=9)(cell lines)における、miR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化をパイロシークエンス法により解析した結果を示す図である。

【0119】
【図13A】コントロールmiRNA(miR-control)、miR-34b(miR-34b)またはmiR-34c(miR-34c)を導入したHCT116細胞、あるいは、処置をしていないHCT116細胞(mock)またはDAC処理をしたHCT116細胞(DAC)について、マイクロアレイ解析を行った結果を示す図である。
【図13B】コントロールmiRNA(control)、miR-34b(miR-34b)またはmiR-34c(miR-34c)を導入したHCT116細胞、あるいは、処置をしていないHCT116細胞(mock)またはDAC処理をしたHCT116細胞(DAC)について、癌遺伝子であるMET遺伝子およびMYB遺伝子、細胞周期調節遺伝子であるCDK4遺伝子およびCCNE2遺伝子、ならびにSFRS2遺伝子の発現をリアルタイムPCRで解析した結果を示す図である。
【図13C】コントロールmiRNA(miR-cont)、miR-34b(miR-34b)またはmiR-34c(miR-34c)を導入したHCT116細胞、あるいは、処置をしていないHCT116細胞(mock)またはDAC処理をしたHCT116細胞(DAC)について、癌遺伝子産物MET、細胞周期調節遺伝子産物CDK4、およびSFRS2のタンパク質発現をウェスタンブロッティングで解析した結果を示す図である。

【0120】
【図14A】大腸癌細胞9株(CaCo2、Colo320、DLD1、HCT116、HT29、LoVo、RKO、SW48、SW480)およびDAC処理した前記の細胞株、ならびにDKO2細胞(DKO2)および正常大腸組織(normal colon)における、BTG4遺伝子の発現レベル示す図である。
【図14B】コントロールベクター(vector)またはBTG4発現ベクター(BTG4)を導入したDLD1細胞またはHCT116細胞におけるコロニーフォーメーションアッセイの結果を示す図である。
【図14C】コントロールベクター(vector)またはBTG4発現ベクター(BTG4)を導入したDLD1細胞またはHCT116細胞におけるコロニーフォーメーションアッセイの結果(n=3)を示すグラフである。

【0121】
【図15】胃癌多発症例、胃癌単発症例または非癌症例の胃前庭部粘膜におけるmiR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化を、パイロシークエンス法により解析した結果を示す図である。
【図16】胃癌多発症例、胃癌単発症例または非癌症例の胃体部粘膜におけるmiR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化を、パイロシークエンス法により解析した結果を示す図である。
【図17】胃癌多発症例、胃癌単発症例または非癌症例の、胃前庭部粘膜および胃体部粘膜におけるmiR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化を、パイロシークエンス法により解析した結果の平均を示す図である。
【図18】大腸癌(Adenoma:中等度腺腫まで、Cancer:sm以深の(浸潤)癌、Sev-m:高度異型腺腫・粘膜内癌)症例から採取した生検組織におけるmiR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化を、パイロシークエンス法により解析した結果を示す図である。
【図19】大腸癌IV型pit症例から採取したDNAサンプルにおけるmiR-34b/c遺伝子近傍のCpGアイランドのDNAメチル化について、4b症例(同一病変内にV型Pitを持つ場合であって、高度異型、腺腫内癌、癌を伴うものなど)およびIVb症例(単純な中等度腺腫を持つものなど)に分けて、パイロシークエンス法により解析した結果を示す図である。
Drawing
(In Japanese)【図15】
0
(In Japanese)【図16】
1
(In Japanese)【図17】
2
(In Japanese)【図18】
3
(In Japanese)【図19】
4
(In Japanese)【図1】
5
(In Japanese)【図2】
6
(In Japanese)【図3A】
7
(In Japanese)【図3B】
8
(In Japanese)【図4A】
9
(In Japanese)【図4B】
10
(In Japanese)【図5A】
11
(In Japanese)【図5B】
12
(In Japanese)【図5C】
13
(In Japanese)【図6A】
14
(In Japanese)【図6B】
15
(In Japanese)【図7】
16
(In Japanese)【図8A】
17
(In Japanese)【図8B】
18
(In Japanese)【図9A】
19
(In Japanese)【図9B】
20
(In Japanese)【図9C】
21
(In Japanese)【図10】
22
(In Japanese)【図11】
23
(In Japanese)【図12】
24
(In Japanese)【図13A】
25
(In Japanese)【図13B】
26
(In Japanese)【図13C】
27
(In Japanese)【図14A】
28
(In Japanese)【図14B】
29
(In Japanese)【図14C】
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