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Specification :(In Japanese)結晶質シリコン内在SiOx成形体の製造方法とその用途

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4966486
Publication number P2006-089356A
Date of registration Apr 6, 2012
Date of issue Jul 4, 2012
Date of publication of application Apr 6, 2006
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)結晶質シリコン内在SiOx成形体の製造方法とその用途
IPC (International Patent Classification) C01B  33/18        (2006.01)
C01B  33/113       (2006.01)
FI (File Index) C01B 33/18 E
C01B 33/113 Z
Number of claims or invention 8
Total pages 12
Application Number P2004-280053
Date of filing Sep 27, 2004
Date of request for substantive examination Jan 12, 2007
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】野崎 真次
【氏名】内田 和男
【氏名】森崎 弘
【氏名】川崎 卓
【氏名】伊吹山 正浩
Representative (In Japanese)【識別番号】100096828、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 敬介
【識別番号】100110870、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 芳広
Examiner (In Japanese)【審査官】西山 義之
Document or reference (In Japanese)CARLISLE, J. A. et al.,Morphology, photoluminescence and electronic structure in oxidized silicon nanoclusters,J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom.,2001年,Vol. 114-116,p. 229-234
Field of search C01B 33/00-33/193
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子に、光を照射して、粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子とすることを特徴とするSiOx粒子の製造方法。
【請求項2】
光がレーザー光であることを特徴とする請求項1記載のSiOx粒子の製造方法。
【請求項3】
粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子が、モノシランガスとモノシランガスを酸化するための酸化性ガスとを、圧力10~1000kPa、温度500~1000℃の条件下で反応して得たものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のSiOx粒子の製造方法。
【請求項4】
粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子を含有する粉末を、成形して成形体とした後、当該成形体に光を照射して、粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子を含む成形体とすることを特徴とするSiOx成形体の製造方法。
【請求項5】
光がレーザー光であることを特徴とする請求項4記載のSiOx成形体の製造方法。
【請求項6】
粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子が、モノシランガスとモノシランガスを酸化するための酸化性ガスとを、圧力10~1000kPa、温度500~1000℃の条件下で反応して得たものであることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のSiOx成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載されたSiOx成形体の製造方法で得られ、粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子が光照射パターンに応じたパターンで配列されている成形体を用いてなることを特徴とする半導体素子。
【請求項8】
請求項7に記載された半導体素子を用いてなることを特徴とする発光素子。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質シリコンを内在するSiOx粒子の製造方法、前記製法で得られたSiOx粉末、成形体、更に前記成形体から得られる半導体素子、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルオーダーの粒径を有するシリコン粒子は、単結晶シリコンを初めとするバルクのシリコンとは著しく異なる物理的、化学的性質を有しており、新規機能性材料への応用が期待されている。
【0003】
半導体や金属等の超微粒子のうち、電子の波長(10nm程度)より小さい、言い換えればナノメートルオーダー以下の粒径を有するものは、電子の運動に対するサイズ有限性の影響が大きくなってくるため、バルク体とは異なる特異な物性を示すことが知られている。
【0004】
各種半導体材料の中で最も重要な位置を占めるシリコンについても、その粒径がナノサイズまで微細化された粒子について、シリコン単結晶のバルク体とは異なる波長の発光が報告されており、バンド構造や表面準位効果がバルク体とは異なるものになっていることが示されている(非特許文献1参照)。

【非特許文献1】日経先端技術2003.01.27号、1~4頁
【0005】
ナノメートルオーダー以下の粒径を有する結晶質シリコン粒子は、数個から数百個のシリコン原子からなる集合体で、その個数に応じて数オングストロームから数nmの粒径をとり、例えばSi10ならば6オングストローム(0.6nm)前後となる。
【0006】
また、構造的には、バルク体のシリコン単結晶と同様にダイヤモンド構造を有する結晶質シリコン粒子の他に、ダイヤモンド構造をとらない結晶質シリコン粒子も存在する。
【0007】
このように結晶質シリコン粒子は様々な大きさや原子配置をとることが出来、それぞれに異なる物性を発現する。したがってサイズや原子配列が適切に制御された結晶質シリコン粒子を作製することができれば、新機能性材料に適用できる可能性がある。
【0008】
従来、ナノメートルオーダー以下の粒径を有する結晶質シリコン粒子を製造する方法としては、気体状シリコン化合物に紫外光レーザービームを照射する方法(特許文献1参照)、シリコンターゲットのレーザーアブレーションを行う方法(特許文献2参照)、アルゴンプラズマ中でSiH2ラジカルからSi単結晶微粒子の核を生成した後に結晶成長させる方法(特許文献3参照)、非晶質シリコン膜にレーザー光を照射する方法(特許文献4参照)等、が知られている。

【特許文献1】特開平06-072705号公報。
【特許文献2】特開2001-257368公報。
【特許文献3】特開2002-076358公報。
【特許文献4】特開2002-176180公報。
【0009】
特許文献1、2の方法で得られる結晶質シリコン粒子は、単独のシリコン粒子である。特許文献3の方法で得られるシリコン粒子は、単独のシリコン粒子であるが必要に応じ表面が酸化物膜や窒化物膜等によって被覆される。これらの結晶質シリコン粒子は、基材上で特定のパターンに配列して半導体素子を形成させようとする場合、ナノメートルオーダーの微細な粒子であるため、配列が困難であるという問題点を有する。
【0010】
また、特許文献4の方法で得られる結晶質シリコン粒子は、非晶質シリコン膜中に存在するため、レーザー光の照射方法によって、粒子をパターン状に配列させて形成することも可能ではあるが、マトリックスが絶縁体ではなく、結晶質シリコン粒子と同様に半導体の非晶質シリコンであり、配列粒子とマトリックスの電気的特性が類似しているため、そのままでは半導体素子として機能させることが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたもので、ナノメートルオーダーの結晶質シリコン粒子を提供すること、そしてこれを半導体素子として利用できるようにすることを最終目的としてなされたものである。
【0012】
本発明者は、半導体素子として利用可能なように結晶質シリコン粒子を特定のパターンで容易に配列できる方法について種々検討していた経過において、SiOx(x=0.5~2.0)粉末を用いて、これに光を照射することによって、1~10nmの結晶質シリコン粒子が形成できるという新たな知見を得て、本発明に至ったものである。
【0013】
また、本発明者は、前記検討の過程に於いて、更に、前記の結晶質シリコン粒子はSiOx粒子中に形成されるため、結晶質シリコンを内在するSiOx粒子からなる粉末(以下、SiOx粉末という)を成形体(膜状或いは所望形状の肉薄の塊状体等を含む)にした後に、前記成形体に光をパターン状に照射することによって、絶縁性のSiOxマトリックス中に結晶質シリコン粒子が特定のパターンで配列した半導体素子が形成できること、及びこれが発光素子あるいは電子部品として利用できること、を新たに見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
即ち、本発明は、より具体的には、1~10nmの結晶質シリコン粒子を提供すること、また前記シリコン粒子がSiOxマトリックス中に配列してなり、発光素子或いは電子部品として利用可能な半導体素子を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子に、光、好ましくはレーザー光、を照射して、粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子とすることを特徴とするSiOx粒子の製造方法であり、好ましくは、粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子が、モノシランガスとモノシランガスを酸化するための酸化性ガスとを、圧力10~1000kPa、温度500~1000℃の条件下で反応して得たものであることを特徴とする前記のSiOx粒子の製造方法である。
【0017】
さらに、本発明は、粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子を含有する粉末を、成形して成形体とした後、当該成形体に光、好ましくはレーザー光、を照射して、粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子を含む成形体とすることを特徴とするSiOx成形体の製造方法であり、好ましくは、粒径0.3~0.8nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子が、モノシランガスとモノシランガスを酸化するための酸化性ガスとを、圧力10~1000kPa、温度500~1000℃の条件下で反応して得たものであることを特徴とする前記のSiOx成形体の製造方法であり、前記SiOx成形体の製造方法で得られ、粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子が光照射パターンに応じたパターンで配列されている成形体を用いてなることを特徴とする半導体素子である。
【0018】
加えて、本発明は、前記の半導体素子を用いてなることを特徴とする発光素子である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子を内包するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粉末、成形体又は膜が提供されるが、当該結晶質シリコン粒子はナノサイズの粒径であるが故に、電子の運動に対するサイズ有限性の影響を大きく受け、Si単結晶バルク体では見られない、発光、電子放出等の特異な現象を生ぜしめる特徴を呈する。そして、本発明の結晶質シリコン粒子を内包するSiOx粉末、成形体は半導体素子を提供することができ、新規な発光素子や電子部品等の機能性材料として種々の用途で好適に使用できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、特定のSiOx粒子に、光を照射して、前記SiOx粒子内に特定粒径の結晶質シリコン粒子を形成せしめることを本質的としている。
【0021】
本発明に用いられるSiOx粒子については、粒径0.5~5nm、更に好ましくは0.5~3nmの非晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子であれば良い。前記SiOx粒子は、前記の特徴を有するものであれば、その製造履歴には拠らないが、次に示す方法が容易に安定して得ることができるので、好ましい。
【0022】
即ち、原料にモノシランガスを用い、これを酸化する時に、低温でSiOx粒子を形成することが可能となり、モノシランガス以外のケイ素含有ガスを酸化する方法において発生しやすい、炉材等からの不純物混入を極限まで低下させることができる。そして、その結果として、原料にモノシランガスを用いて、これを酸化する時には、生成するSiOx粒子、それからなるSiOx粉末が高純度で、超微粉のものが得られる。更に、理由は明らかでないが、原料にモノシランガスを用いて、これを酸化する方法に拠る時には、広い製造条件範囲に於いて、得られるSiOx粒子中には粒径0.5~5nmの非晶質シリコンを内在させることができるので、本発明に用いるSiOx粒子が容易に安定して得られるという特徴がある。
【0023】
前記の方法で用いるモノシラン(SiH4)ガスは、市販品を用いることができる。モノシランガスは、塩素を構成成分としていない点でトリクロルシラン等のシラン系ガスよりも環境に及ぼす負荷が低く、優れている。また、モノシランの酸化性ガス(以下、単に「酸化性ガス」という。)としては、酸素ガス、乾燥空気の他に、モノシランに対して酸化性を有する例えばNO2、CO2、H2O等のガスを用いることができる。これらの酸化性ガスは、不純物が極限まで除去されていることが好ましい。
【0024】
モノシランガスと酸化性ガスの反応は、圧力10~1000kPaの非酸化性ガス雰囲気下、温度500~1000℃で行わせることが好ましい。圧力が10kPa未満であると、生成したSiOxが膜状に生成するので、反応容器壁面に付着成長し、排出部を閉塞することから、長期操業が容易でなくなることがある。一方、1000kPaをこえると、反応装置の耐圧を高めるのに大がかりな設備が必要になるうえ、不純物が増加する傾向となるから好ましくない。前記圧力範囲の中で、より好ましい圧力は、50~300kPaである。
【0025】
また、反応場の温度が500℃未満であると、主としてSiO2が生成し易く、また1000℃をこえるとSiの単体が生成し易くなると共に、炉材等からの不純物がより多く混入する恐れが高くなることから、いずれの場合も高純度・超微粉SiOx粉の製造が容易でなくなる。前記温度範囲の中では、550~950℃がより好ましく、更に650~850℃が一層好ましい範囲である。
【0026】
モノシランガスと酸化性ガスの反応は、必要に応じて、非酸化性ガスからなる希釈ガスの存在下で行われる。これによって、生成したSiOx粉の容器壁への付着をより少なくすることができる。非酸化性ガスとしては、アルゴン、ヘリウムのような不活性ガスが最適であるが、反応を妨げない範囲で、H2、N2、NH3、CO等を用いることもできる。
【0027】
酸化性ガスとして乾燥空気を用いた場合、非酸化性ガスと酸化性ガスの両方を用いたことになる。非酸化性ガスの量は、モノシランガス量と酸化性ガスの酸化反応に与る酸素量との合計量よりも多くすることが好ましく、モル比で2倍以上、特に10倍以上であることが好ましい。ここで、酸化性ガスの酸化反応に与る酸素量とは、たとえば乾燥空気の場合には、それに含まれる酸素量であり、NO2とCO2の場合は、それを構成する酸素原子分の酸素量である。
【0028】
モノシランガスを酸化する場合の反応容器としては、石英ガラス等の高純度材料で製作されたものが使用できる。その形状は、底付きのコップ形状とすることもできるが、管状が好ましく、その向きは縦型設置、横型設置のいずれであっても良い。反応容器の加熱方法については、抵抗加熱発熱体、高周波加熱、赤外輻射加熱等の手段を用いることができる。
【0029】
反応容器内で生成したSiOx粉末は、非酸化性ガス及び副成ガスと共に系外に排出され、バッグフィルター等の従来公知の粉末回収装置を用いて回収される。
【0030】
モノシランガスと酸化性ガスの比率を変えることによって、x値すなわちO/Siモル比の異なるSiOx粉末を制御して製造できる。
【0031】
本発明に係るSiOx粒子のx値は0.5以上2.0未満である。x値が0.5未満であると、内包される非晶質シリコン粒子の大きさが1nmを超えてしまい、レーザー光を照射しても粉末内部に粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子が生成しなくなるので望ましくない。本発明者の実験的検討に基づけば、好ましいx値は0.8~1.6である。尚、x値は、SiOx中のSiモル量をJIS-R;6124(炭化けい素質研削材の化学分析)に準じて測定し、また酸素モル量をO/N同時分析装置(例えばLECO社「TC-436」)を用いて測定し、それらのモル比から算出することができる。
【0032】
本発明の原料のSiOx粒子について、非晶質シリコン粒子を内包すること並びに当該非晶質シリコン粒子の大きさは、粉末X線回折測定及びラマン分光分析におけるシリコン粒子に帰属されるピークの有無、位置及び形態によって確認できる。内包されるシリコン粒子が非晶質の場合、X線回折図に結晶質シリコン特有の回折線が認められない。また、シリコンのラマンスペクトルのピーク位置(ラマンシフト値)及びラマンスペクトルの線幅は、粒子径が小さくなるにつれて、大型のシリコン結晶の値とは異なることが明らかにされており、これらのラマンシフト値や線幅を測定することによって、シリコン粒子径を算出することができる(非特許文献2~3参照)。
<nplcit num="2"> <text>Appl.Phys.Lett.,60,2086(1992)</text></nplcit><nplcit num="3"> <text>Appl.Phys.Lett.,69(2),200(1996)</text></nplcit>
【0033】
次に、前記SiOx粒子より、光を照射することによって、本発明の粒径1~10nmの結晶質シリコン粒子を内在するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子を得る方法について、詳述する。
【0034】
本発明において、光を照射する際におけるSiOxの形態は粉末のままでも良いが、膜や薄肉の塊状体等の成形体とすることが、後述する用途に直ぐに適用可能である成形体を容易に得られることから、好ましい。
【0035】
成形体を形成する方法は、例えば粉末を成形用金型に充填した後プレス成形する方法や、さらにその後冷間静水圧プレス(CIP)成形する方法等が挙げられる。一方、膜を形成する方法は、例えば水または有機溶剤及び必要に応じこれらに少量の結合剤(バインダー)を溶解させた溶媒中にSiOx粉末を分散させたスラリーを作製し、これを基材に塗布後加熱してバインダーを揮発させると同時に乾固させる方法等が挙げられる。
【0036】
前記の方法で得た成形体は、そのまま用いても良いが、機械的強度を付与するため加熱・焼成後に用いても良い。但し、加熱・焼成温度が600℃以上になると、SiOx中に結晶質シリコン粒子がランダムに発生し始め、SiOx中に結晶質シリコン粒子を所定の配置となるように形成できなくなるので、600℃未満の温度で加熱・焼成しなければならない。
【0037】
本発明において光を用いることが本質的であり、光が照射された場合に、好ましくはレーザー光が照射された場合に、結晶質シリコン粒子が形成される。この理由については明らかではないが、0.5~5nm、すなわちナノメートルオーダー以下の粒径を有する非晶質シリコン粒子は、電子の運動に対するサイズ有限性の影響が大きくなってくるため、バルク体とは異なる特異な光応答性を有すると考えられ、この特性が関与していると考えられる。
【0038】
本発明における光として特にレーザー光が好適に用いられる。この理由についても明らかではないが、レーザー光が他の光とは異なり、レーザー独自の性質を有すること、例えば色々な光が混じり合っておらず純粋な一つの色の光であること(単色性)や光の位相が揃っているため干渉性が良いこと(可干渉性)、或いは収束させれば太陽光の数百倍ものパワー密度が得られること(高出力性)等が関与していると考えられる。
【0039】
本発明で用いられる光としては、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、アークランプ、アルゴンランプ、クリプトンランプ、キセノンランプ、発光ダイオード等を光源とする光を用いることができる。これらの光はそのまま用いても良いが、分光した後フィルターを通して単色化して用いることもできるし、レンズを用いて集束させて用いることもできる。また、レーザー光としては、発振源がヘリウム-ネオン、アルゴン、二酸化炭素等からなる気体レーザー、有機色素溶液からなる液体レーザー、ルビー、ネオジム:イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)、ネオジム:イットリウムバナデート(Nd:YVO4)等からなる固体レーザー又はインジウムガリウム砒素(InGaAs)、インジウムガリウム砒素リン(InGaAsP)等からなる半導体レーザーの何れであっても用いることができる。
【0040】
以下、光に関しては、レーザー光の適用を中心に説明する。本発明において好適なレーザー光の出力値は、発振源の種類によって異なるが、例えば励起波長633nmのヘリウム-ネオンレーザーの場合には0.1~10mW、波長532.4nmのネオジム:イットリウムバナデートレーザーの場合には、5~100mW等である。出力値が小さいと結晶質シリコン粒子の径が1nm未満になるか又は結晶質粒子自体が形成しない。また出力値が大きいと結晶質シリコン粒子の粒径が10nmを超えてしまう。
【0041】
一方、好適なレーザー光の照射時間は、発振源の種類によって異なるが、大凡10秒~1時間程度である。照射時間が短いと結晶質シリコン粒子の径が1nmよりも小さくなるかシリコン粒子が形成しない。また照射時間を必要以上に長くしても、それ以上結晶質シリコン粒子が成長しなくなる。
【0042】
また、照射するレーザーのビーム径については、ミクロンオーダーまで微細化することが可能である。従って、SiOx成形体や膜に、微細なレーザービームの走査線を照射することによって、結晶質シリコン粒子を内在するSiOx粒子を非晶質シリコン粒子を内在するSiOx粒子のマトリックスの中に、パターン状に形成させることができる。この手法により、SiOxからなる絶縁性マトリックス上に、半導体の結晶質シリコン粒子を微細パターン状に形成させて、新規な電子部品等の半導体素子として使用することができる。また、当該SiOx粒子は、1~10nmの大きさの結晶質シリコンを含有していることから、橙色に発光するフォトルミネッセンス(PL)を呈するので、発光素子としても有用である。
【0043】
尚、SiOx粒子中の結晶質シリコン粒子の大きさは、先の非晶質シリコン粒子と同様、ラマンスペクトルから求めることができる。また粒子が結晶質であることは、X線回折測定又は透過型電子顕微鏡(TEM)観察等によって確認することができる。
【実施例1】
【0044】
以下、実施例、比較例をあげて更に詳細に本発明を説明する。
【0045】
(実施例1~5、比較例1~3)モノシランガス、窒素ガス、酸素ガス(いずれも、純度が99.999質量%以上)を用意し、それぞれのガスを、質量流量計を通じて石英ガラス製反応容器(内径60mm×長さ1500mm)に導入した。モノシランガスは、石英ガラス製のモノシランガス導入管(内径5mm)を通し、窒素ガスと混合して反応容器内に吹き出すようにして供給した。また酸素ガスは、石英ガラス製の酸化性ガス導入管(内径5mm)を通し、窒素ガスと混合して反応容器内に吹き出すようにして供給し、SiOx粉末を合成した。
【0046】
ここで、反応容器は、その外周を巻回させたニクロム線ヒーターに通電を行い、所定の反応温度に保たれるように加熱されている。温度調整は、反応容器中央部中心に設置された熱電対で測温し、ニクロム線ヒーターの電力を制御して行った。
【0047】
反応容器内の圧力は、多くの実験では大気圧下(101kPa)に近い80~100kPa程度で実施した。反応容器内の大気圧未満の減圧は、排出側に設けた真空ポンプで減圧しつつバルブの開度を調節することによって行った。反応温度、圧力及び他の反応条件は、表1にまとめて示した。
【表1】
JP0004966486B2_000002t.gif

【0048】
生成したSiOx粉末は、副生ガス、窒素ガスと共に、排出管から排出され、途中に設けられたバグフィルターで回収された。回収した粉末について、先ずX線回折測定によって結晶質シリコン粒子の存否を調べた。
【0049】
その後、シリコンのモル量をJIS-R;6124(炭化けい素質研削材の化学分析)に準じて測定し、酸素モル量をO/N同時分析装置(LECO社製、製品名TC-436)を用いて測定し、それらのモル比からSiOx粉のx値を算出した。
【0050】
また、比表面積計(日本ベル製、BELSORP-mini)を用い、BET多点法により前記粉末について、比表面積値を測定した。
【0051】
さらに、顕微ラマン分光装置(JOBIN YVON製 製品名LabRam HR-800)を用いて測定したSiのラマンスペクトルのシフト値から、SiOx粉が内包するシリコン粒子の径を算出した。それらの結果を表2に示す。
【表2】
JP0004966486B2_000003t.gif

【0052】
前記のいろいろなSiOx粉末に、He-Neレーザー(波長633nm、出力、サンプル位置における出力0.1mW~10mW)又はネオジム:イットリウムバナデート(Nd:YVO4)レーザー(波長532.4nm、出力5~100mW)を所定時間照射した後、先の実施例、比較例と同様にSiOx粉が内包するSi粒子について、X線回折測定による結晶質の存否調査及びラマン分光分析による粒子径算出を行った。それらの結果を表3に示した。
【表3】
JP0004966486B2_000004t.gif

【実施例2】
【0053】
(実施例6、比較例4)実施例1のSiOx粉末に、バインダーとして1質量%のポリビニルアルコールを含む水溶液を質量比で10:1の割合で混合し、粉末成形用金型及びプレス成形機を用いて10MPaの成形圧で直径15mm、厚さ2mmの成形体を作製した後、大気中250℃で2時間加熱してバインダーを揮発・乾固させ、さらに大気中500℃で30分間加熱・焼成した。
【0054】
こうして得たSiOx成形体の表面に、He-Neレーザービーム(ビーム径1μm、波長633nm、サンプル位置における出力1mW)を、特定のパターン状にスキャンして照射した。レーザービームを照射した個所を、顕微ラマン分光装置(JOBINYVON製 製品名LabRam HR-800)を用いて測定し、得られたSiのラマンスペクトルのシフト値から、SiOx成形体が内包するシリコン粒子の径を算出したところ2nmであった。その後、波長365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡で成形体表面を観察した。その結果レーザービームを照射した個所が、スキャンしたパターンと同形状で橙色に発光するフォトルミネッセンス(PL)が観測されたため、SiOx膜に内包される結晶質シリコン粒子が発光し、光学素子に適用できることが示された。
【0055】
一方、比較例1のSiOx粉末を用い、上記と同様に作製した成形体ではこのような発光(PL)は認められなかった。
【実施例3】
【0056】
(実施例7、比較例5)実施例2のSiOx粉末に、バインダーとして1質量%のポリビニルブチラールを含むエタノール溶液を、質量比で10:12の割合で混合してスラリーを作製した。これを用い、厚さ約0.5mmのタングステン(W)製の板上に、スクリーン印刷機により厚さ約20μmの塗膜を形成した。これをアルゴン中500℃で1時間加熱してバインダーを揮発させると共に焼成を行った。
【0057】
得られたSiOx膜の表面に、Nd:YVO4レーザービーム(ビーム径1μm、波長532.4nm、出力10mW)を、特定のパターン状にスキャンして照射した。レーザービームを照射した個所を、顕微ラマン分光装置(前出)を用いて測定し、得られたSiのラマンスペクトルのシフト値から、SiOx膜が内包するシリコン粒子の径を算出した結果、5nmであった。その後、SiOx膜の表面に金(Au)膜を蒸着した。
【0058】
前記のタングステン、SiOx膜及びAu膜からなる積層体を真空チャンバー内に装入し、次いでガラス板上に酸化インジウムスズ(ITO)層及び蛍光体層を順に形成させた積層体を、蛍光体層が先の積層体のAu膜面に2.5cmの空間を隔てて平行に対向するように配置した。
【0059】
真空チャンバー内を1.33×10-5Paまで真空排気した後、タングステン、SiOx膜及びAu膜からなる積層体のタングステンとAu膜との間に、Au膜が陽極となるように12Vの直流電圧を印加し、更にこのAu膜と、ガラス板、ITO層及び蛍光体層からなる積層体のITO層との間に、ITO層が陽極となるように500Vの直流電圧を印加した。その結果、SiOx膜のレーザービーム照射パターンに対応して、ガラス板上の蛍光体層がパターン状に発光したため、タングステン、SiOx膜及びAu膜からなる積層体のSiOx膜に内包される結晶質シリコン粒子が電子を放出し、電子部品の一種である冷陰極として適用できることが判った。
【0060】
一方、比較例2のSiOx粉末を用い、上記と同様に作製した膜ではこのような電子放出現象は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、粒径1~10nmの結晶質Si粒子を内包するSiOx(Xは0.5以上2.0未満)粒子、粉末、成形体が安定して提供される。そして、本発明の結晶質シリコン粒子はナノサイズの特定な粒径を有しているので、発光、電子放出等の面で特異な現象を生ぜしめるので、いろいろな特性を有する半導体素子が提供される特徴を有している。従い、本発明は、新規な発光素子や電子部品等の機能性材料として種々の用途で好適に使用でき、産業上非常に有用である。