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明細書 :切除機能付きフード及び内視鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5205612号 (P5205612)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月5日(2013.6.5)
発明の名称または考案の名称 切除機能付きフード及び内視鏡
国際特許分類 A61B   1/00        (2006.01)
FI A61B 1/00 300B
A61B 1/00 300J
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2006-548898 (P2006-548898)
出願日 平成17年12月15日(2005.12.15)
国際出願番号 PCT/JP2005/023033
国際公開番号 WO2006/064868
国際公開日 平成18年6月22日(2006.6.22)
優先権出願番号 2004365457
優先日 平成16年12月17日(2004.12.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年11月26日(2008.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】宮本 心一
【氏名】新田 孝幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100114616、【弁理士】、【氏名又は名称】眞下 晋一
審査官 【審査官】小田倉 直人
参考文献・文献 特開平09-094214(JP,A)
特開平10-328202(JP,A)
特開平11-009610(JP,A)
特開2001-321389(JP,A)
調査した分野 A61B 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
内視鏡の体内への挿入部の先端部に取り付けられる切除機能付きフードであって、
筒状に形成された本体部と、
前記本体部の先端から軸方向に突出する板状の切除部とを備え、
前記切除部は、すくい面と、先端電極と、切除用対向電極と、止血用対向電極とを備え、
前記すくい面は、前記本体部の内周面に隣接し、
前記先端電極は、前記切除部の先端部において幅方向に延び、
前記切除用対向電極は、前記すくい面において、前記先端電極と対向するように設けられ、
前記止血用対向電極は、前記すくい面と反対側の面において、前記先端電極と対向するように設けられ、
前記先端電極と前記切除用対向電極との間、及び、前記先端電極と前記止血用対向電極との間で、印加する電圧を切り替え可能に構成されている切除機能付きフード。
【請求項2】
前記切除部は、先端に向けて薄くなるように、前記すくい面の少なくとも一部がテーパ部とされており、
前記切除用対向電極は、前記テーパ部に設けられた請求項に記載の切除機能付きフード。
【請求項3】
前記先端電極は、前記切除部の幅方向両側に間隔をあけて複数配置されている請求項1に記載の切除機能付きフード。
【請求項4】
複数の前記先端電極は、同一直線上に配置されている請求項に記載の切除機能付きフード。
【請求項5】
前記切除部は、前記本体部の内周面に隣接するすくい面を備えており、
前記先端電極は、前記すくい面よりも上方に露出するように配置されている請求項に記載の切除機能付きフード。
【請求項6】
前記切除部は、先端に向けて薄くなるように、前記すくい面の少なくとも一部がテーパ部とされている請求項に記載の切除機能付きフード。
【請求項7】
複数の前記先端電極の少なくとも一つに、軸方向に突出する切開用突起が設けられている請求項に記載の切除機能付きフード。
【請求項8】
体内に挿入される挿入部を備え、請求項1に記載された切除機能付きフードが前記挿入部の先端部に設けられた内視鏡。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の一部を切除する機能を有する切除機能付きフード及びこれを備えた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大きな胃粘膜内病変の一括切除を目指して内視鏡的粘膜下剥離術(endoscopic submucosal dissection, ESD)が開発され、従来の内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection, EMR)に代わるものとして注目を集めている。ESDにおいては、先端にセラミック製の絶縁球が取り付けられたITナイフ(Insulated-tip diathermic knife)、フックナイフ、フレックスナイフなどが用いられ、マーキングされた病変周辺の外側を全周切開した後、同じナイフを用いて粘膜下層を剥離する。このようなESDの登場により、従来のEMRでは困難な2cm以上の大きな腫瘍の切除も、一括で行うことが可能になった。
【0003】
従来のESDは、内視鏡の鉗子孔に種々のナイフを挿入して施行されるのが一般的であるが、ナイフの操作性が良好でないことから作業に熟練を要し、時間がかかるという問題があった。このため、例えば特許文献1には、内視鏡の先端に装着されるフードから洗浄水を供給可能に構成することで、ナイフなどを用いた処置・治療中に洗浄することができ、処置・治療の容易化を図ることが開示されている。

【特許文献1】特開2003-204921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に記載された発明によっても、処置や治療は従来と同様に鉗子孔に挿入された器具によって行われるため、操作性の問題は依然として解消されておらず、更に改良の余地があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、生体組織に対する切除作業を容易且つ正確に行うことができる切除機能付きフード及びこれを備えた内視鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、内視鏡の体内への挿入部の先端部に取り付けられる切除機能付きフードであって、筒状に形成された本体部と、前記本体部の先端から軸方向に突出する板状の切除部とを備え、前記切除部は、先端部において幅方向に延びる先端電極を備える切除機能付きフードにより達成される。
【0007】
この切除機能付きフードによれば、切除部の突出方向に内視鏡を操作することにより、内視鏡の直線的な操作によって病変部分などの被切除部を除去することができる。また、切除作業のために内視鏡の鉗子孔を必要としないため、この鉗子孔から送水したり、止血処置具などを挿入することができる。
【0008】
この切除機能付きフードにおいて、前記切除部は、前記本体部の内周面に隣接するすくい面に、前記先端電極と対向する切除用対向電極を備えることが好ましい。この場合、前記切除部は、先端に向けて薄くなるように、前記すくい面の少なくとも一部がテーパ部とされるようにして、前記切除用対向電極を前記テーパ部に設けることがより好ましい。前記切除部は、前記すくい面と反対側の面に、前記先端電極と対向する止血用対向電極を更に備えることが好ましく、前記先端電極と前記切除用対向電極との間、及び、前記先端電極と前記止血用対向電極との間で、印加する電圧を切り替え可能に構成されていることが好ましい。これによって、切除作業と止血作業との切り替えを迅速に行うことができる。
【0009】
また、上記切除機能付きフードにおいて、前記先端電極は、前記切除部の幅方向両側に間隔をあけて複数配置された構成にすることも可能である。この構成によれば、複数の先端電極を被切除部に押し当てることにより、切除作業をスムーズに行うことができると共に、出血部を電極間に配置することで止血を容易に行うことができる。
【0010】
この構成において、複数の前記先端電極は、同一直線上に配置されていることが好ましい。また、前記先端電極は、穿孔を予防するため、前記本体部の内周面に隣接する前記切除部のすくい面よりも上方に露出するように配置されていることが好ましい。更に、前記切除部は、先端に向けて薄くなるように、前記すくい面の少なくとも一部がテーパ部とされていることがより好ましい。また、複数の前記先端電極の少なくとも一つに、軸方向に突出する切開用突起を設けることもできる。
【0011】
また、本発明の前記目的は、体内に挿入される挿入部を備え、上述した切除機能付きフードが前記挿入部の先端部に設けられた内視鏡により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体組織に対する切除作業を容易且つ正確に行うことができる切除機能付きフードを提供することができ、更に、この切除機能付きフードを備えた内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る切除機能付きフードを示す平面図である。
【図2】図1におけるA-A断面図である。
【図3】図1に示す切除機能付きフードの配線例を示す図である。
【図4】前記切除機能付きフードを用いた病変部分などの切除方法を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る切除機能付きフードを示す斜視図である。
【図6】図5に示す切除機能付きフードの平面図である。
【図7】図6におけるB-B断面図である。
【図8】高周波電流の凝固波の一例を示す波形図である。
【図9】図5に示す切除機能付きフードの変形例を示す正面図である。
【図10】図5に示す切除機能付きフードの他の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0014】
1,101 切除機能付きフード
2 本体部
4 切除部
6,6a,6b 先端電極
6c,6d 切開用突起
8 切除用対向電極
10 止血用対向電極
14 高周波発生装置
16 スイッチ切替ボックス
20 内視鏡
24 鉗子孔
41 すくい面
42 テーパ部
43 反対面
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る切除機能付きフードを示す平面図であり、図2は、図1におけるA-A断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、切除機能付きフード1は、筒状に形成された本体部2と、この本体部2の先端から突出する切除部4とを備えている。
【0017】
本体部2は、内視鏡20における体内への挿入部22に取り付け可能となるように、挿入部22の先端部に応じた大きさ、形状とされており、挿入部22の先端付近を覆うように、一部が挿入部22の先端からはみ出すようにして装着される。内視鏡20は、送水や各種器具の挿入が可能な鉗子孔24を備えており、更に、従来の内視鏡と同様、ライトガイドや照明レンズなどを含む照明系やCCDカメラなどを含む撮像系(いずれも図示せず)を備えている。切除機能付きフード1は、切除部4の先端部が内視鏡20の視野に入り易い位置で、テープ等により固定することができる。
【0018】
切除部4は、板状に形成されており、本体部2の端面の一部から軸方向に沿って延びるように設けられている。図2に示すように、切除部4における本体部2の内周面と隣接する面(すなわち、本体部2の軸線側の面)は、病変部分などを切除するためのすくい面41とされている。尚、本実施形態においては、本体部2の内周面と切除部4のすくい面とが滑らかに接続されているが、両者の間に段差が形成されていてもよい。
【0019】
すくい面41の一部には、本体部2側から先端側に向けて厚みが薄くなるようなテーパ部42を有している。テーパ部42の表面形状は、本実施形態においては表面が側面視において直線状となるように形成されているが、例えば、本体部2の端面から先端に向けて厚みの変化率が徐々に小さくなるような曲線状に形成されていてもよい。
【0020】
切除部4の断面形状は、本実施形態においては幅方向(図1において軸線方向と直交する方向)で略一定となるように形成されているが、例えば、すくい面41の幅方向両側部に対して中央部が窪んだ状態となるように、切除部4を曲板状に形成してもよい。切除部4の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性、加工性及び強度に優れるものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素系樹脂を挙げることができ、透明性や加工性の点からPFAを特に好ましく挙げることができる。切除部4は、本体部2と一体的に成形されていてもよく、或いは、本体部2と別部材から構成されていてもよい。
【0021】
切除部4の先端縁は、本実施形態においては平面視において直線状となるように形成されており、この先端縁に沿って幅方向に先端電極6が形成されている。切除部4の先端縁は、平面視において中央部が突出するように円弧状に形成されてもよい。
【0022】
切除部4におけるすくい面41には、先端電極6と間隔(例えば、1mm程度)をあけて対向するように、切除用対向電極8が設けられている。本実施形態においては、切除用対向電極8の表面積が、先端電極6の表面積よりも大きくなるように形成されている。
【0023】
一方、切除部4におけるすくい面41に対する裏面側の反対面43は、先端部が本体部2側から先端側に向けて厚みが薄くなるようなテーパ部44とされており、このテーパ部44に、先端電極6と間隔(例えば1~2mm程度)をあけて対向する止血用対向電極10が設けられている。止血用対向電極10も、切除用対向電極8と同様に、表面積が先端電極6の表面積よりも大きくなるように形成されている。先端電極6、切除用対向電極8及び止血用対向電極10は、例えば、銅や銀などの導電性材料から構成することができ、フッ素樹脂などにより絶縁コーティングを施すことが好ましい。先端電極6の幅長さは、例えば0.3~1mm程度であり、切除用対向電極8及び止血用対向電極10の幅長さは、例えば1~3mm程度である。
【0024】
先端電極6、切除用対向電極8及び止血用対向電極10は、切除部4及び本体部2の外面側に軸線方向に沿って固定された被覆配線12を介して、高周波発生装置14に接続される。より詳細には、図3に示すように、先端電極6が高周波発生装置14のプラス極側に接続される一方、切除用対向電極8及び止血用対向電極10がスイッチ切替ボックス16を介して高周波発生装置14のマイナス極側に接続される。スイッチ切替ボックス16は、スイッチ操作により、先端電極6と切除用対向電極8との間、及び、先端電極6と止血用対向電極10との間で、印加電圧を切り替えることができる。
【0025】
次に、上記構成を備える切除機能付きフード1を用いた病変部分などの切除方法として、図4を参照しながら、内視鏡的粘膜下層剥離術を例に説明する。まず、従来と同様に、病変周辺をマーキングした後、ITナイフを用いてマーキングの外側を全周切開する。次に、本実施形態の切除機能付きフード1を内視鏡20の挿入部22の先端部に取り付け、この内視鏡20を体腔に挿入する。そして、スイッチ切替ボックス16の操作により、先端電極6と切除用対向電極8との間に電圧を印加した状態で、内視鏡20の先端付近をモニタリングしながら切除機能付きフード1を操作し、図4(a)に示すように、切除部4のすくい面41側で病変部分を含む粘膜層Mを粘膜下層の深さで切除する。先端電極6と切除用対向電極8との間に粘膜下層が接触すると、先端電極6と切除用対向電極8との間の粘膜下層に高周波電流が流れるので、この電気エネルギーにより粘膜下層の剥離をスムーズに行うことができる。切除部4は、切除機能付きフード1の軸線方向に突出するように設けられているため、切除部4による粘膜下層の剥離は、基本的には内視鏡20の挿入操作によって切除機能付きフード1を直線的に移動させることにより行うことができ、特に熟練を要することなく、正確な切除作業を容易に短時間で行うことができる。
【0026】
また、本実施形態においては、先端電極6の表面積よりも切除用対向電極8の表面積が大きくなるように形成されているので、先端電極6側で電流密度が高くなり、粘膜下層の剥離をよりスムーズに行うことができる。また、切除用対向電極8がすくい面41のテーパ部42に設けられることにより、すくい面41側の粘膜下層に通電し易くなり、切除部4の粘膜下層内への侵入を容易にすることができる。
【0027】
図4(b)に示すように、粘膜下層の剥離により出血した場合には、スイッチ切替ボックス16の切り替えにより、先端電極6と止血用対向電極10との間に電圧を印加する。そして、図4(c)に示すように、切除部4の反対面43で出血部を押圧することにより、血液が通電により凝固され、止血が行われる。このように、本実施形態の切除機能付きフード1は、切除部4のすくい面41側による切開モードと、反対面43側による凝固モードとを、スイッチ切替ボックス16の操作により瞬時に切り替えることができ、一連の作業を迅速且つ確実に行うことができる。
【0028】
本実施形態においては、切除機能付きフード1の切除部4に先端電極6、切除用対向電極8及び止血用対向電極10を設け、先端電極6と切除用対向電極8との間、及び、先端電極6と止血用対向電極10との間で、印加電圧を切り替え可能に構成しているが、止血用対向電極10を設けずに、先端電極6と切除用対向電極8との間にのみ電圧を印加可能に構成してもよい。このような構成であっても、従来のように内視鏡の鉗子孔に種々のナイフを挿入することなく、切除作業を容易に行うことができる。また、鉗子孔24がフリーの状態で切除作業を行うことができるので、止血が必要になった場合には、鉗子孔24を介して送水したり、鉗子孔24に止血処置具を挿入することができ、切除作業と共に止血作業の容易化を図ることができる。この構成においては、先端電極6及び切除用対向電極8がいずれも切除部4のすくい面41に配置されるように構成してもよい。
【0029】
また、切除機能付きフード1として、切除部4が先端電極6のみを備えたモノポーラ型の構成にすることもできる。この場合、患者の体外に対極板を配置し、この対極板と先端電極6との間に高周波電流を通電することにより、バイポーラ型と同様に、組織の切除作業を容易且つ正確に行うことができる。

(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る切除機能付きフードを示す斜視図であり、図6はその平面図、図7は、図6におけるB-B断面図である。本実施形態の切除機能付きフードも、第1の実施形態と同様に、内視鏡における挿入部の先端部に取り付けられるものであるが、図5から図7においては、内視鏡は図示していない。また、図5から図7において、図1から図4に示す第1の実施形態の切除機能付きフードと同様の構成部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0030】
本実施形態の切除機能付きフード101は、切除部4のすくい面41の全体が、本体部2側から先端側に向けて厚みが薄くなるようなテーパ部(例えば、15°のテーパ角度)とされており、切除部4には、すくい面41の先端側から本体部2に向けて軸方向に平行に延びる一対の挿入孔61a,61bが形成されている。挿入孔61a,61bには、金属製の鉤状部材の一端側がそれぞれ嵌入されており、リード線Lを介して高周波発生装置(図示せず)のプラス極及びマイナス極にそれぞれ接続される。リード線Lは、本体部2の下部に形成された収容空間Sを経て本体部2の後方側に延びており、収容空間Sには、フッ素樹脂などの電気絶縁性を有する樹脂(図示せず)が封入されている。
【0031】
一方、鉤状部材の他端側は、すくい面41よりも上方に露出して、それぞれ先端電極6a,6bを構成している。2つの先端電極6a,6bは、切除部4の幅方向両側に間隔をあけてそれぞれ配置されている。2つの先端電極6a,6bは、本実施形態においては、直棒状に形成して切除部4の幅方向に延びる同一直線上にそれぞれ配置しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば、円弧状に形成して、本体部2の軸線を挟んで幅方向両側にそれぞれ配置するようにしてもよい。切除部4及び先端電極6a,6bの材質は、第1の実施形態における切除部4及び先端電極6と同様のものを例示することができる。
【0032】
図6において、先端電極6a,6bの幅aは0.5~1.5mm程度が好ましく、長さbは4~6mm程度が好ましい。また、先端電極6a,6bの間隔cは、放電を防止しつつスムーズな切除作業を可能にするために、1~2mm程度が適当である。先端電極6a,6bの遠位端側(すなわち、挿入孔61a,61bの近傍)は、切除作業時に組織などが付着しにくいように、フッ素樹脂などでコーティングしてもよい。
【0033】
本実施形態の切除機能付きフード101によれば、2つの先端電極6a,6bが幅方向両側に配置されているので、切除部4の先端部を薄くすることができ、内視鏡による視認性を良好にすることができると共に、軸方向への押圧による切除作業を容易に行うことができる。
【0034】
すなわち、図8に示すように、切除部4の先端を粘膜下層などの組織に当接させた状態で、一般の電気メスにおいて凝固波として利用される高周波電流の断続波(バースト波)を先端電極6a,6b間に印加して内視鏡の進行方向に押圧することにより、出血や組織の損傷などをほとんど生じさせることなく、切除作業をスムーズに行うことができる。また、切除作業中に出血が生じた場合であっても、先端電極6a,6b間に出血箇所を位置させて軽く押し当てることにより、先端電極6a,6b間に印加する高周波電流の波形を変えることなく止血を迅速に行うことができる。切除時及び止血時におけるバースト波の電力は、例えば15~20wであり、低消費電力での作業が可能である。
【0035】
本実施形態の構成においても、第1の実施形態と同様に、内視鏡に形成された鉗子孔を自由に利用することができるので、この鉗子孔を利用して送水や他の処置具の出し入れを自由に行うことができる。
【0036】
本実施形態において、先端電極6a,6bは、切除部4のすくい面41全体をテーパ部とすることで、切除部4の先端部を薄くして切除作業を容易にしているが、すくい面41のテーパ部を、先端側の一部にのみ形成してもよい。或いは、切除部4のすくい面41にテーパ部を有しない構成にすることも可能である。例えば、図9に示すように、すくい面41にテーパ部を有しない切除部4の先端面に切欠部45を形成し、この切欠部45に先端電極6a,6bを収容した構成にすることができる。図9に示す先端電極6a,6bは、切除部4の先端面に沿って鉤状部材が配置されることで、切除部4の幅方向に沿って同一直線上に間隔をあけて配置されており、各先端電極6a,6bは、すくい面41よりも上方に露出している。このような構成により、穿孔の危険性を極めて少なくすることができる。
【0037】
また、本実施形態において、先端電極6a,6bには、図10に示すように、先端部を折り曲げる等して切除機能付きフード101の軸線方向に突出する切開用突起6c,6dを設けた構成にしてもよい。この構成によれば、先端電極6a,6bへの電流印加により一対の切開用突起6c,6d間に通電可能となるので、例えば、切開用突起6c,6dを粘膜などの組織に押し当てて病変部位を全周切開した後、先端電極6a,6bを利用して組織の切除を行うことができ、一連の作業を効率良く行うことができる。図10に示す構成において、切開用突起6c,6dの突出幅eは、1~2mm程度が好ましい。また、切開用突起6c,6dは、一対の先端電極6a,6bの双方に設ける代わりにいずれか一方のみに設けてもよく、この場合も、一方の先端電極に設けられた切開用突起と他方の先端電極との間における通電により、切開作業を行うことができる。
【0038】
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明が本実施例に限定されるものではない。
【0039】
図5から図7に示す第2の実施形態における切除機能付きフード101の操作性、出血の程度および止血のコントロール性能を評価するため、生後2ヶ月の豚( 25kg)を用い、以下の手順で胃粘膜剥離実験を行なった。
【0040】
1.豚の臀部に前投薬として硫酸アトロピン(0.5mg/ml, 田辺製薬) 2ml、動物用ケタラール50 (50mg/ml, 三共製薬)6ml、動物用ストレスニル(40mg/ml, 三共製薬)4mlを混合したものを筋注し、その後速やかに経鼻カニューラからフローセン (武田薬品)にて吸入麻酔を開始した (0.32L/min)。同時に耳介静脈に23Gの留置針を用い、生理食塩水にてルート確保をし、側管から豚の麻酔状態に応じてサイアミナールナトリウム (日本医薬品工業)による静脈麻酔を追加した (2.5mg/kg/回)。
【0041】
2.心電図、酸素飽和度をモニターし、安定した麻酔を得られたことを確認した後、オーバーチューブ(フレキシブルオーバーチューブ、住友ベークライト)を豚の口腔内に留置し、内視鏡を挿入した。
【0042】
3.把持鉗子を用い、胃体下部大彎に2cmの紙片を置き仮想病変とした。その周囲をフックナイフ(Olympus, KD-620LR)にてマーキングした後、紙片を除去した。次にマーキングの周囲に0.01mg/ml エピネフリン(第一製薬)加10%グリセオール液(中外製薬)を局注し、十分な粘膜下膨隆を作り針状ナイフ(Olympus KD-1L )、ITナイフ(Insulated-tip diathermic knife, Olympus, KD-610L)を用いてマーキングの外側粘膜を円形に全周切開を行なった。
【0043】
4.次に切開層から粘膜下層内にエピネフリン加10%グリセオール液を十分に局注したのち、内視鏡を抜去し、切除機能付きフード101をテープにて内視鏡先端に固定した。モニター上における切除部4の先端付近の視認性はきわめて良好であった。
【0044】
5.内視鏡を再挿入し、直視下に粘膜下層にフードナイフを押し当て、フォースド凝固モード(ICC-200, ERBE, Germany) 15wで切開を進めた。切開はきわめてスムースで出血もわずかであり、出血があっても出血点を電極間に固定し、通電するのみで容易に止血された。基本操作は押すのみで、ある程度剥離が進みナイフ全体が粘膜下層に潜り込んだ後の操作は完全に直視下で可能となり極めて安全であった。剥離はおよそ20分で終了し、剥離面も平滑であった。
【0045】
切除標本の大きさは5cmで、従来の方法で剥離を完了するには短く見積もっても2時間はかかると想定されるのに対し、本発明の切除機能付きフードは、処置時間の短縮と安全性の向上を同時に可能にするものであることが実証された。なお同様の方法で食道の粘膜切除も試みた。食道は胃よりも壁が薄く、内腔も狭いため従来の方法においては胃よりも明らかに穿孔の危険性が高いが、本発明の切除機能付きフードは食道においても操作性、安全性に問題はなく、食道、大腸など今まで大きな粘膜の一括切除が困難とされていた臓器への応用も十分に期待された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の切除機能付きフードは、胃の粘膜内病変に対する粘膜切除術において好適に利用でき、胃腫瘍のみならず、食道や大腸などの粘膜内病変に対しても適用可能である。また、本発明の切除機能付きフードは、内視鏡に装着するのに好適であり、内視鏡は、消化管などを観察する軟性鏡、または、腹腔鏡や膀胱鏡などの硬性鏡のいずれであってもよい。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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