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Specification :(In Japanese)細胞の培養方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4790944
Publication number P2003-093052A
Date of registration Jul 29, 2011
Date of issue Oct 12, 2011
Date of publication of application Apr 2, 2003
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)細胞の培養方法
IPC (International Patent Classification) C12N   5/077       (2010.01)
C04B  35/447       (2006.01)
C04B  38/00        (2006.01)
C04B  38/06        (2006.01)
FI (File Index) C12N 5/00 202G
C04B 35/00 S
C04B 38/00 303Z
C04B 38/06 D
Number of claims or invention 8
Total pages 10
Application Number P2001-288576
Date of filing Sep 21, 2001
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第1項適用 「2001年年会講演予稿集」社団法人日本セラミックス協会発行(2001年3月21日),第278頁に発表
Date of request for substantive examination Mar 10, 2008
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】相澤 守
Representative (In Japanese)【識別番号】100074675、【弁理士】、【氏名又は名称】柳川 泰男
Examiner (In Japanese)【審査官】▲高▼ 美葉子
Document or reference (In Japanese)特開平06-343456(JP,A)
特開平05-305134(JP,A)
特開平07-194688(JP,A)
日本バイオマテリアル学会シンポジウム予稿集(2000),p.96
日本セラミックス協会年会講演予稿集(2001.03.21),Vol.2001,p.278
Journal of the Ceramic Society of Japan(2000),Vol.108,No.3,p.249-253
第11回秋季シンポジウム講演予稿集(1998.10.01),日本セラミック協会,p.147
福岡県工業技術センター研究報告(1998),No.8,p.61-65
繊維学会誌(2000),Vol.56,No.4,p.205-209
Field of search C12N 1/00-7/00
C12M 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成された、直径が100~500μmの範囲にある気孔から構成される気孔連続体を含み、かつ全体の気孔率が90~99%の範囲にある多孔質リン酸カルシウム化合物シートを用いて、細胞を培養することを特徴とする細胞の培養方法。
【請求項2】
多孔質リン酸カルシウム化合物シートの全体の気孔率が95~99%の範囲にある請求項1に記載の細胞の培養方法
【請求項3】
細胞が肝細胞、軟骨細胞、または骨芽細胞である請求項1もしくは2に記載の細胞の培養方法。
【請求項4】
繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成された、直径が100~500μmの範囲にある気孔から構成される気孔連続体を含み、かつ全体の気孔率が90~99%の範囲にある多孔質リン酸カルシウム化合物シート。
【請求項5】
全体の気孔率が95~99%の範囲にある請求項4に記載の多孔質リン酸カルシウム化合物シート。
【請求項6】
繊維状リン酸カルシウム化合物が、水酸アパタイトからなることを特徴とする請求項4もしくは5に記載の多孔質リン酸カルシウム化合物シート。
【請求項7】
請求項4乃至6のうちのいずれかの項に記載の多孔質リン酸カルシウム化合物シートからなる骨芽細胞培養用シート。
【請求項8】
繊維状リン酸カルシウム化合物1質量部に対して、粒子径が100~500μmの範囲にある可燃性球状材料を100~2000質量部の範囲にて含む混合スラリを吸引ろ過により脱水して成形体を得て、次いで、該成形体を加熱して該可燃性球状材料を焼却除去する請求項4に記載の多孔質リン酸カルシウム化合物シートの製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨芽細胞の培養方法に関し、さらに詳しくは、骨芽細胞の培養基材として有用な多孔質リン酸カルシウム化合物シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
骨欠損部の修復方法として、従来より、工業的に製造した骨充填材や人工骨などのバイオマテリアルを適用する方法が行われている。しかし、バイオマテリアルは、通常、生体骨とは機械的強度などの特性が異なり、応力集中による疲労や緩みが生じ易い傾向にある。従って、バイオマテリアルを適用する方法では、半永久的な骨欠損部の修復が難しいという問題がある。
【0003】
このため、近年、組織工学的な骨欠損部の修復方法が注目されている。この方法は、骨芽細胞(造骨細胞ともいう)を生体外で培養して、骨芽細胞に骨組織を形成させ、この骨組織を骨欠損部に移植して、生体内にて骨欠損部の骨組織そのものを再生するものである[吉川の研究報告「骨髄間質細胞による骨軟部組織の再生」生体材料,Vol.19,No.1(2001),27~33頁参照]。
【0004】
骨芽細胞は、骨髄細胞を分化させた細胞の一種であるから、患者から採取した骨髄細胞を培養して、骨髄細胞を骨芽細胞に分化させることができる。そして、この骨芽細胞を人工的に培養して、骨芽細胞に骨組織を形成させれば、移植後に免疫拒絶が起こりにくい骨組織を得ることができる。従って、骨組織の形成が速やかに進行する骨芽細胞の培養方法が開発されれば望ましい。
【0005】
骨芽細胞を培養して、骨芽細胞に骨組織を形成させるには、一般に、細胞の足場となる気孔が形成された培養基材(マトリックス)が必要となる。
従来より、人工骨に細胞の足場となる気孔を形成し、生体内にて、気孔内に骨組織を形成させることによって、生体骨と人工骨との接合性を高めることが行われている。従って、従来の人工骨を用いても骨芽細胞を培養することができる。なお、細胞の足場となる気孔の直径は、100μm以上とすることが好ましいことが知られている。
【0006】
本発明者は、繊維状アパタイト(アパタイトファイバー)のスラリを調製し、これを吸引ろ過により脱水して、繊維状アパタイトを係合させて得たアパタイトシートを用いて骨芽様樹立細胞株を培養したところ、骨芽細胞が良好に増殖する傾向にあることを発見し、この発見を、マテリアルインテグレーション,Vol.12,No.75(1999.7)に発表している。但し、このアパタイトシートには、足場となるような気孔は形成されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
生体外にて骨芽細胞を培養する場合には、足場に培地(培養液)を供給することが必要となる。しかし、これまで知られている従来の人工骨では、気孔に骨組織が形成されるに従って、気孔の開口部が狭くなり、気孔内に培地を供給するのが困難となる傾向にあるという問題がある。
【0008】
一方、繊維状アパタイトを係合させて得たアパタイトシートは、繊維状アパタイトと繊維状アパタイトとの間に形成される隙間を多数有しているから、一つの開口部(隙間)が塞がっても、シート全体に培地を安定に供給することができる点で有利である。
【0009】
そこで、本発明者は、さらに研究を進め、繊維状アパタイトを用いて、直径が100~500μmの範囲にある気孔から構成される気孔連続体を含む多孔質アパタイトシートを作製し、これを用いて骨芽様樹立細胞株を培養したところ、上記の繊維状アパタイトを用いて作製した気孔を有しないアパタイトシートよりも骨芽細胞が良好に増殖する傾向にあることを見い出した。
【0010】
従って、本発明の目的は、細胞の足場に安定に培地を供給できる培養基材を得て、骨組織の形成が速やかに進行する、すわなち骨芽細胞を効率よく増殖させることができる骨芽細胞の培養方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成された、直径が100~500μmの範囲にある気孔から構成される気孔連続体を含み、かつ全体の気孔率が90~99%の範囲にある多孔質リン酸カルシウム化合物シートを用いて、細胞を培養することを特徴とする細胞の培養方法にある。
【0012】
本発明はまた、繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成された、直径が100~500μmの範囲にある気孔から構成される気孔連続体を含み、かつ全体の気孔率が90~99%の範囲にある多孔質リン酸カルシウム化合物シートにもある。
【0013】
本発明はさらに、上記多孔質リン酸カルシウム化合物シートからなる骨芽細胞培養用シートにもある。
【0014】
本発明はさらに、繊維状リン酸カルシウム化合物1質量部に対して、粒子径が100~500μmの範囲にある可燃性球状材料を100~2000質量部の範囲にて含む混合スラリを吸引ろ過により脱水して成形体を得て、次いで、該成形体を加熱して該可燃性球状材料を焼却除去する上記の多孔質リン酸カルシウム化合物シートの製造方法にもある。
【0015】
本発明において規定する気孔の直径は、電子顕微鏡による表面観察、および水銀ポロシメータを用いて測定することができる。
【0016】
また、本発明において規定する気孔率は、シートの総体積に対する全ての気孔の体積の割合であり、直径が100~500μmの範囲を超える気孔(例えば、繊維状リン酸カルシウム化合物と繊維状リン酸カルシウム化合物との隙間)も含めた値である。この気孔率は、次のようにして求めることができる。
【0017】
シートの寸法および重量からシートのかさ密度を算出する。次に、このかさ密度をリン酸カルシウム化合物の理論密度で除して相対密度(%)を算出する(下記の式(1)参照)。この相対密度(%)は、シートの総体積に対する全ての繊維状リン酸カルシウム化合物の体積の割合である。そして、最後に、気孔率(%)を、相対密度(%)を100から減じて算出する(下記の式(2)を参照)。
【0018】
【数1】
式(1)
相対密度(%)=かさ密度(g/cm3)/理論密度(g/cm3
【0019】
【数2】
式(2)
気孔率(%)=100-相対密度(%)
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のシートは、繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成されている。すなわち、本発明のシートは、繊維状アパタイトと繊維状アパタイトとの間に形成される隙間を多数有している。この隙間は、細胞を培養する際に、主として細胞の足場に培地を供給するための通路として機能する。
【0021】
本発明のシートはまた、直径が、通常は100~500μmの範囲にあり、好ましくは100~250μmの範囲にある気孔が複数個、互いに連通して構成される気孔連続体を含んでいる。気孔連続体は、細胞を培養する際に、主として細胞の足場として機能する。気孔連続体は、シート表面に沿った方向に延びるような形で形成されていてもよいが、シート表面から内部に向かう方向(シートの厚み方向)に延びるような形で形成されていることが好ましい。気孔連続体をシート表面から内部に向かう方向に延びるような形に形成することによって、3次元的な細胞の培養が可能となり、細胞を効率よく培養することができる。
【0022】
本発明のシートはさらに、気孔率が、通常は、90~99%の範囲にあり、95~99%の範囲にあることがより好ましい。
【0023】
本発明のシートは、例えば、繊維状リン酸カルシウム化合物と可燃性球状材料とを含む混合スラリを吸引ろ過により脱水して成形体を得て、次いで、該成形体を加熱して該可燃性球状材料を焼却除去することにより製造することができる。
【0024】
上記繊維状リン酸カルシウム化合物は、下記の式(3)で定義されるアスペクト比が40~200の範囲にあることが好ましい。
【0025】
【数3】
式(3)
アスペクト比=L/{(a+b)/2}
(Lは繊維状リン酸カルシウム化合物の長さ、aは繊維状リン酸カルシウム化合物の厚さ、bは繊維状リン酸カルシウム化合物の幅を示す。)
【0026】
繊維状リン酸カルシウム化合物の長さ(L)は、通常は、30~150μmの範囲にあり、60~100μmの範囲にあることが好ましい。
【0027】
繊維状リン酸カルシウムの材料としては、リン酸三カルシウム[Ca3(PO42]、リン酸水素カルシウム[CaHPO4]、リン酸二水素カルシウム[Ca(HPO42]、及び水酸アパタイト(ハイドロキシアパタイト)[Ca10(PO46(OH)2]の一種、もしくは二種以上の混合物を挙げることができる。なお、水酸アパタイトには、カルシウムの一部が水素原子置換したカルシウム不足水酸アパタイト[Ca10-xH2x(PO46(OH)2]などの非化学組成組成水酸アパタイトも含まれ、水酸アパタイトのリン酸イオン、または水酸化物イオンの一部が炭酸イオンで置換された炭酸含有水酸アパタイトも含まれる。
【0028】
上記繊維状リン酸カルシウム化合物のうちで好ましいのは繊維状水酸アパタイトであり、特に好ましいは、(100)、(200)および(300)面が発達したa面配向の繊維状水酸アパタイトである。a面配向の繊維状水酸アパタイトは、カルシウム塩およびリン酸塩を含む溶液を尿素の存在下にて加熱することにより製造することができる。
【0029】
上記可燃性球状材料は、500~1500℃の温度に加熱したときの灰分が1質量%以下となるものであることが好ましい。このような可燃性球状材料の材料の例としては、ポリメタルクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびカーボンを挙げることができる。これらのうちで好ましいはカーボンである。なお、可燃性球状材料は、真球であることが好ましいが、必ずしも真球である必要はなく、略球形状であればよい。可燃性球状材料の粒子径は、通常は、100~500μmの範囲にあり、好ましくは100~200μmの範囲にある。
【0030】
上記混合物スラリの溶媒には、水あるいは水とアルコールの混合溶液を用いることが好ましい。溶媒として水とアルコールの混合溶液を用いる場合、その比率は容積比で、水:アルコールが、通常は1:99~99:1の範囲にあり、好ましくは25:75~75:25の範囲にある。なお、溶媒として用いるアルコールの種類には特に制限はなく、メタノール、エタノールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコールを用いることができるが、エタノールが好ましい。
【0031】
上記混合スラリにおいて、繊維状リン酸カルシウム化合物と可燃性球状材料との配合割合は、繊維状リン酸カルシウム化合物1質量部に対して、可燃性球状材料が、通常は100~2000質量部の範囲にあり、好ましくは500~2000の範囲にある。
【0032】
上記混合スラリを吸引ろ過により脱水することによって、繊維状リン酸カルシウム化合物の物理的な係合により形成された成形体を得ることができる。この成形体は、複数個の可燃性球状材料を包含する。
成形体を加熱して、可燃性球状材料を焼却除去することによって、成形体に気孔ならびに気孔連続体が形成される。ここで、気孔は、1個の可燃性球状材料の焼却除去跡であり、気孔連続体は、互いに接触した複数個の可燃性球状材料の焼却除去跡である。形成体の加熱温度は、通常は500~1500℃の範囲にあり、好ましくは1000~1500℃の範囲にある。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
各実施例、及び比較例で得られたシートの物性は、次のようにして測定した。
【0034】
(1)気孔の直径は、電子顕微鏡による表面観察、および水銀ポロシメーター((株)島津製作所製、アポタイザ)を用いて測定した。
【0035】
(2)気孔率は、次のようにして求めた。シートの寸法および重量からシートのかさ密度を算出する。次に、このかさ密度をリン酸カルシウム化合物の理論密度で除して相対密度(%)を算出する(上記の式(1)参照)。そして、最後に、気孔率(%)を、相対密度(%)を100から減じて算出する(上記の式(2)を参照)。
【0036】
(3)吸水率(%)は、JIS-R-2205に記載の方法に準じて測定し、下記式(4)により算出した。
【0037】
【数4】
式(4)
吸水率(%)=(W2-W1)/W1×1/S×100
(W1は、試料を110℃で乾燥したときの乾燥試料の質量であり、W2は、1時間以上、媒液(精製水)に浸漬した試料を、媒液中から取り出して秤量したときの飽水試料の質量であり、そしてSは、媒液の比重である。)
【0038】
[実施例1]
(1)繊維状リン酸カルシウム化合物の製造
硝酸カルシウム四水和物、リン酸水素二アンモニウム、尿素及び硝酸を混合し、それぞれの濃度が、硝酸カルシウム四水和物0.167モル・dm-3、リン酸水素二アンモニウム0.100モル・dm-3、尿素0.500モル・dm-3、及び硝酸0.10モル・dm-3の混合水溶液を調整した。
次いで、得られた混合水溶液0.75dm3を三つ口フラスコに入れ、シリコンオイルバス中で80℃で24時間加熱し、次いで90℃で72時間加熱して、リン酸カルシウム化合物を合成した。得られたリン酸カルシウム化合物を精製水で洗浄し、110℃で乾燥した。
【0039】
上記リン酸カルシウム化合物の形態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維状であり、そのアスペクト比は30~150であり、長さは60~100μmの範囲であった。また、上記リン酸カルシウム化合物は、X線回折分析及び赤外線吸光(IR)スペクトルにより炭酸含有水酸アパタイトの単一相であることが確認された。
【0040】
(2)リン酸カルシウム化合物シートの製造
上記繊維状リン酸カルシウム化合物を、水とエタノールの混合溶液(容積比1:1)に懸濁して、固形分濃度が1質量%のリン酸カルシウム化合物スラリを調製した。このスラリに粒子径約150μmの球状カーボン(ニカビーズ、日本カーボン(株)製)を、繊維状リン酸カルシウム化合物1質量部に対して1000質量部となる量添加した。
【0041】
球状カーボンを添加したスラリ(混合スラリ)を、下側開口部にろ紙を備えた塩化ビニル管(直径16.3mm)に5cm3注ぎ、吸引ろ過により脱水した後、110℃で乾燥してシート状に形成した。次いで、このシートを水蒸気雰囲気下、1300℃の温度で5時間焼成して、リン酸カルシウム化合物シート(直径約15mm、厚さ:約10mm)を得た。
【0042】
上記リン酸カルシウム化合物シートの形態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、直径が約100~150μmの範囲の気孔から構成された気孔連続体が確認された。このリン酸カルシウム化合物シートの細孔径分布を図1に示す。図1の結果から求めた気孔のメジアン径(累積細孔体積50%の細孔直径)は112.8μmであった。また、このリン酸カルシウム化合物シートの気孔率は97.9±0.1%、吸水率は1308±13%であった。なお、上記リン酸カルシウム化合物シートのリン酸カルシウム化合物は、赤外線(IR)スペクトルにより、水酸アパタイト(炭酸イオンは焼失した)の単一相であることが確認された。
【0043】
[実施例2]
実施例1の(2)において、粒子径約150μmの球状カーボンを、繊維状リン酸カルシウム化合物1質量部に対して2000質量部となる量にて添加した以外は、実施例1と同様の操作を行って、リン酸カルシウム化合物シート(直径約15mm、厚さ:約10mm)を得た。
上記リン酸カルシウム化合物シートの形態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、直径が約100~250μmの範囲の気孔から構成された気孔連続体が確認された。このリン酸カルシウム化合物シートの細孔径分布を図2に示す。図2の結果から求めた気孔のメジアン径(累積細孔体積50%の細孔直径)は247.3μmであった。また、このリン酸カルシウム化合物シートの気孔率は98.8±0.1%、吸水率は1995±57%であった。なお、上記リン酸カルシウム化合物シートのリン酸カルシウム化合物は、IRスペクトルにより、水酸アパタイト(炭酸イオンは焼失した)の単一相であることが確認された。
【0044】
[比較例1]
実施例1の(2)において、粒子径約150μmの球状カーボンを、添加しない以外は、実施例1と同様の操作を行って、リン酸カルシウム化合物シート(直径約15mm、厚さ:約10mm)を得た。
上記リン酸カルシウム化合物シートの形態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、直径が約100μmを超える気孔は確認されなかった。このリン酸カルシウム化合物シートの細孔径分布を図3に示す。図3の結果から求めた気孔のメジアン径(累積細孔体積50%の細孔直径)は5.2μmであった。また、このリン酸カルシウム化合物シートの気孔率は94.2±0.1%、吸水率は343±37%であった。なお、上記リン酸カルシウム化合物シートのリン酸カルシウム化合物は、IRスペクトルにより、水酸アパタイト(炭酸イオンは焼失した)の単一相であることが確認された。
【0045】
[実施例3]
(細胞の培養)
上記実施例2、および比較例1で得たリン酸カルシウム化合物シート、及び参考例として、市販の細胞培養用ポリエチレン24孔プレート(直径15.5mm)を培養基材に用いて、下記(1)、(2)に示す細胞の培養評価を行った。
細胞には、新生児C57BL/6マウス頭蓋冠由来の骨芽細胞様樹立株MC3T3-E1を用い、シート1個に5×105個の細胞を播種した。
培地には、牛胎児血清(FBS)を10容量%添加したα-最小必須培地(α-MEM(+))を用いた。また、培地には抗生物質であるカナマイシンとストレプトマイシンとをそれぞれ10ng/cm3となるように添加した。細胞の培養中、培地は一日ごとに交換した。
培養は、37℃に維持された5%CO2インキュベータ内にて行った。
【0046】
(1)初期付着率
細胞を播種してから5時間後のリン酸カルシウム化合物シートに付着している細胞のDNA量を測定した。そして、下記式(5)により定義される初期付着率A(%)を算出した。その結果を図4に示す。なお、評価は各培養基材について3回ずつ行ない、図4に示した結果はその平均値である。
【0047】
【数5】
式(5)
初期付着率A(%)=N5/N0×100
(N5は、培養基材に付着している細胞のDNA量(μg・well-1)であり、N0は、培養基材に播種した細胞のDNA量(μg・well-1)である。)
【0048】
(2)細胞の増殖性
細胞を播種してから1日後、7日後、そして14日後の培養基材に付着している細胞のDNA量を測定した。その結果を図5に示す。なお、評価は各培養基材について4回ずつ行ない、図5に示した結果はその平均値である。
【0049】
図4、及び図5に示した結果から、直径が100~250μmの気孔連続体が形成されているリン酸カルシウム化合物シート(実施例2)は、細胞が付着し易く、細胞の増殖性も良好であり、培養基材として有用であることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
繊維状リン酸カルシウム化合物の係合により形成された、直径が100~500μmの範囲にある気孔から構成される気孔連続体を含み、かつ全体の気孔率が90~99%の範囲にある多孔質リン酸カルシウム化合物シートは、細胞の足場となる気孔連続体に培地を安定に供給することができる。従って、上記シートは、肝細胞、軟骨細胞、および骨芽細胞などの各種細胞の培養に有利に用いることができる。特に、上記シートは、骨芽細胞の培養用シートとして有利に用いることができる。
また、上記の多孔質カルシウムシートを用いる本発明の骨芽細胞の培養方法によれば、骨芽細胞を良好に増殖させることができる。
さらに、本発明の製造方法によれば、上記の多孔質リン酸カルシウム化合物シートを工業的に容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にて得られたシートの細孔径分布を示す図である。
【図2】実施例2にて得られたシートの細孔径分布を示す図である。
【図3】比較例1にて得られたシートの細孔径分布を示す図である。
【図4】実施例3の細胞の初期付着率の評価結果を示す図である。
【図5】実施例3の細胞の増殖性の評価結果を示す図である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4