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明細書 :赤色発光半導体素子とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6450061号 (P6450061)
公開番号 特開2013-120847 (P2013-120847A)
登録日 平成30年12月14日(2018.12.14)
発行日 平成31年1月9日(2019.1.9)
公開日 平成25年6月17日(2013.6.17)
発明の名称または考案の名称 赤色発光半導体素子とその製造方法
国際特許分類 H01L  33/32        (2010.01)
C09K  11/08        (2006.01)
C09K  11/62        (2006.01)
C09K  11/64        (2006.01)
FI H01L 33/32
C09K 11/08 A
C09K 11/08 J
C09K 11/62
C09K 11/64 CQF
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2011-268141 (P2011-268141)
出願日 平成23年12月7日(2011.12.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行者 :電子材料シンポジウム運営委員会 刊行物名:30th Electronic Materials Symposium (EMS-30) EXTENDED ABSTRACTS 発行日 :平成23年6月29日
審判番号 不服 2017-007552(P2017-007552/J1)
審査請求日 平成26年12月2日(2014.12.2)
審判請求日 平成29年5月25日(2017.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
発明者または考案者 【氏名】藤原 康文
【氏名】西川 敦
【氏名】寺井 慶和
個別代理人の代理人 【識別番号】100078813、【弁理士】、【氏名又は名称】上代 哲司
参考文献・文献 国際公開第2010/128643(WO,A1)
特開2004-288757(JP,A)
調査した分野 H01L33/00-33/64
特許請求の範囲 【請求項1】
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子の製造方法であって、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料として、有機金属気相エピタキシャル法を用いて、900~1100℃の温度条件の下で、EuまたはPrを、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層を、p型層とn型層の間に、p型層とn型層の形成と一連の形成工程において形成するに際して、
uまたはPrと共に、不純物としてMgを添加して、
光出力が100μW以上の赤色発光半導体素子を製造する
ことを特徴とする赤色発光半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記母体材料に添加される元素が、Euであることを特徴とする請求項1に記載の赤色発光半導体素子の製造方法。
【請求項3】
Euが、Eu{N[Si(CHまたはEu(C1119により供給されることを特徴とする請求項2に記載の赤色発光半導体素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は赤色発光半導体素子とその製造方法に関し、詳しくはGaN、InN、AlN等の特定の母体材料(母材)にEuまたはPrが添加された活性層をn型層とp型層との間に設けた優れた発光特性を備えた赤色発光半導体素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などの窒化物半導体は、青色発光デバイスを構成する半導体材料として注目されており、近年では、GaNにインジウム(In)を高濃度添加することにより、緑色さらには赤色発光デバイスを実現できると期待されている。しかし、高In組成になるに従い、In組成の揺らぎやピエゾ電界効果が顕著になるため、窒化物半導体を用いた赤色発光デバイスの実現には至っていないのが現状である。
【0003】
一方、窒化物半導体のワイドギャップに着目し、GaNを添加母体としてユーロピウム(Eu)やプラセオジム(Pr)が添加された半導体が赤色発光デバイスとして有望視されている。
【0004】
このような状況下、本発明者らは、世界に先駆けてEuまたはPr添加GaNを活性層とする赤色発光ダイオード(LED)の実現に成功した(特許文献1)。
【0005】
そして、このような赤色発光ダイオードの実現により、既に開発されている青色発光ダイオードおよび緑色発光ダイオードと併せて、同一基板上に窒化物半導体を用いた光の三原色の発光ダイオードを集積化することが可能となるため、小型で高精細なフルカラーディスプレイや、現在の白色LEDには含まれていない赤色領域の発光が加えられたLED照明などの分野への応用が期待されている。
【0006】
しかしながら、前記した赤色発光ダイオードの光出力は、現状では50μW程度に留まっており、実用化には発光強度(光出力)の更なる向上が求められている。
【0007】
光出力の向上を図るためには、前記した活性層の発光中心であるEuイオンやPrイオンの発光遷移確率を高めることが必須である。しかし、EuイオンやPrイオンの発光は4f殻内遷移によっており、これらの希土類元素における4f殻内遷移は禁制遷移であるため、発光遷移確率を高めて、高い発光強度を得るためには結晶場内にEuやPrを取り込むことにより、結晶場におけるEuイオンやPrイオンの周辺局所構造の対称性を低下させる必要がある。
【0008】
しかし、単にEuやPrを添加した場合には、EuイオンやPrイオンの周辺局所構造の対称性が充分に低くなっているとは言えず、発光強度(光出力)が低く抑えられていた。
【0009】
従って、EuやPr以外の不純物を意図的に共添加することにより、EuイオンやPrイオンの周辺局所構造を制御することができれば、EuイオンやPrイオンによる高い発光強度(光出力)が実現できる可能性がある。
【0010】
例えば、非特許文献1には、Eu添加GaN作製時にSiを意図的に共添加することにより、高い発光強度のEu、Si共添加GaNを得ることが報告されている。しかしながら、このような高い発光強度が得られているのはSi濃度が0.06原子%程度のときのみであり、また、その発光強度も充分とは言えない。
【0011】
このように、不純物(共添加不純物)の添加により発光輝度の向上を図ることが一部試みられているが、不純物の添加が発光輝度に与える影響については、未だ充分に解明されていない。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】WO2010/128643 A1公報
【0013】

【非特許文献1】R.Wang,A.J.Steckle,E.E.Brown,U.Hommerich,and J.M.Zavada、「Effect of Si codoping on Eu3+ luminescence in GaN」、J.Appl.Phys.105,043107(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点に鑑み、EuイオンやPrイオンの発光遷移効率を増大させ、優れた発光強度の赤色発光半導体素子とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の本発明に関連する各技術により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明に関連する第1の技術は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子の製造方法であって、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料として、有機金属気相エピタキシャル法を用いて、900~1100℃の温度条件の下で、EuまたはPrを、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層を、p型層とn型層の間に、p型層とn型層の形成と一連の形成工程において形成するに際して、
EuまたはPrと共に、MgまたはAlを添加する
ことを特徴とする赤色発光半導体素子の製造方法である。
【0017】
本発明者は、上記課題の解決について、種々の実験、検討を行った。その結果、有機金属気相エピタキシャル法(OMVPE法)を用いてEu添加GaN層(活性層)を作製する際に、MgやAlを不純物として添加した場合、これらの元素がEuの周囲に選択的に配置されて、Euイオンの周辺局所構造を劇的に変化させ、Euイオンの対称性を大きく低下させることが分かった。
【0018】
これは、通常、GaNに0.1原子%程度添加されたEuに、不純物元素を0.1原子%程度添加したとしても、上記のように、Euの周囲に選択的に配置されて、Euと隣り合う確率は非常に低いと従来考えられていたため、極めて考え難かった現象であり、本発明者は、実験と検討の繰り返しにより、上記のような現象を発見し、本技術に至ったものである。
【0019】
そして、所定の成長温度の下、活性層のEuは、Gaと置換する形で配置されて、Euイオンの置換サイトがGaサイトおよびその極近傍となるように制御されるため、そのフォトルミネセンススペクトル(Photoluminescence Spectrum:PLスペクトル)において、Euイオンに起因する621nm付近のピークが支配的となり、充分に発光して高い光出力を得ることができる。
【0020】
なお、「621nm付近のピークが支配的」とは、621nmを中心とした618~623nmの範囲の波長での発光がEuイオンに起因する発光であるため、621nm付近のピークをできるだけ大きくすることを意味している。
【0021】
そして、本技術においては、活性層の形成に用いるOMVPE法における温度条件が重要である。即ち、温度が低すぎると異なる結晶場を有するEuイオンが増加して621nmにおけるピークが減少する一方、温度が高すぎるとEuイオンが表面から脱離してEu添加が困難となる。好ましい温度条件は900~1100℃であり、950~1050℃であるとより好ましい。
【0022】
また、p型層と活性層とn型層の形成を一連の形成工程、即ち途中で反応容器から取り出すことなく、反応容器内において順次p型層、活性層、n型層(p型層、n型層の順番の前後は問わない)を形成することにより、各層間に界面準位が存在せず、キャリアを効率的に注入できる。これらのため、数V程度の低電圧動作が可能となる。
【0023】
なお、前記の観点から、n型層、p型層もOMVPE法により形成することが好ましいが、他の成長法を排除するものではない。
【0024】
以上においては、母材としてGaN、添加元素としてEuを挙げて本技術を説明してきたが、母材としてはGaNに限定されず、InN、AlNまたはこれらの混晶(InGaN、AlGaN等)を母材としても上記の効果と同様の効果を得ることができる。また、添加元素もEuに限定されず、Prを添加元素としても上記の効果と同様の効果を得ることができる。
【0025】
なお、添加元素をEuまたはPrとしているのは、これらの元素は外殻電子が内殻電子により遮蔽されており、内殻遷移に伴う発光が590nm以上の波長であり、これがNTSC色域、HDTV色域に限定されず、赤みが感じられる光であるからである。
【0026】
そして、本技術により、前記したような大きな経済的効果を提供することができる。即ち、Eu添加GaNを用いた高い光出力のデバイス特性に優れた赤色発光ダイオードの実現により、「赤・緑・青」の光の三原色の発光ダイオードを実用化レベルで集積化することが可能となるため、小型かつ高精細な高出力の発光ダイオードを用いたフルカラーディスプレイを実現することができる。
【0027】
また、現在の白色LEDには含まれていない赤色領域の強度の高い発光を加えることにより、現在赤色LEDとして使用されているAlGaInP系LEDの代替のみならず、周囲の温度によって発光波長が変化しないという希土類元素の特性を生かした高輝度LED照明が可能となる。
【0028】
なお、本請求項の発明を実施するにあたり、Mg供給源としては、CpMg(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム:Mg(C)を挙げることができ、Al供給源としては、TMA(トリメチルアルミニウム:(CHAl)などを挙げることができる。
【0029】
本発明に関連する第2の技術は、
前記母体材料に添加される元素が、Euであることを特徴とする第1の技術に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
【0030】
Euは、Prに比べて赤色発光効率が高いため、添加元素としてより好ましい。また、Euはカラーテレビの赤色蛍光体としての実績もあり、Prに比べてEu化合物の入手も容易であるため添加元素として好ましい。
【0031】
本発明に関連する第3の技術は、
Euが、Eu{N[Si(CHまたはEu(C1119により供給されることを特徴とする第2の技術に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
【0032】
Eu源としては、例えば、Eu[C(CH、Eu[C(CHH]、Eu{N[Si(CH、Eu(C、Eu(C1119等を挙げることができるが、これらの内でも、Eu{N[Si(CHやEu(C1119は、反応装置内での蒸気圧が高いため、効率的な添加を行うことができる。
【0033】
本発明に関連する第4の技術は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料に用いた赤色発光半導体素子であって、
基板上に、p型層とn型層に挟まれた活性層を有しており、
前記活性層は、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶に、E
uまたはPrが、Ga、InあるいはAlと置換するように添加して形成され、さらに、EuまたはPrと共に、MgまたはAlが添加された活性層である
ことを特徴とする赤色発光半導体素子である。
【0034】
前記の通り、MgやAlは、発光遷移効率をより向上させることができるため、これらの元素のいずれかEuと共添加されている赤色発光半導体素子は、Euイオンの周辺局所構造が変化して、Euイオンの対称性が大きく低下しているため、高い発光強度の赤色発光半導体素子を提供することができる。
【0035】
なお、活性層が形成される基板としては、通常サファイアが用いられるが、これに限定されるものではなく、例えば、Si、GaN、GaAs等を用いることもできる。
【0036】
本発明に関連する第5の技術は、
前記活性層において、Mgの添加量が、1×1018~1×1020cm-3であることを特徴とする第4の技術に記載の赤色発光半導体素子である。
【0037】
Mgの添加量が少なすぎる場合には、Euイオンの対称性を充分に低下させることができないため、発光強度を充分に向上させることが困難となり、高い光出力を得ることができない。一方、添加量が多すぎる場合には、母体材料であるGaNにおける結晶性を劣化させる恐れがある。好ましいMgの添加量は、5×1018~5×1019cm-3である。
【0038】
本発明に関連する第6の技術は、
前記活性層において、Alの添加量が、0原子%を超え40原子%を超えないことを特徴とする第4の技術に記載の赤色発光半導体素子である。
【0039】
Alが添加されることにより赤色発光半導体素子の発光強度は増大されるが、40原子%を超えると、母体の結晶性が低下して、却って発光強度が低下する恐れがある。好ましいAlの添加量は、15~35原子%である。
【0040】
本発明に関連する第7の技術は、
光出力が、100μW以上であることを特徴とする第4の技術ないし第6の技術のいずれかに記載の赤色発光半導体素子である。
【0041】
不純物共添加元素が添加された赤色発光半導体素子は、Euイオンの周辺局所構造が劇的に変化して、Euイオンの対称性が大きく低下するため、発光強度が大きく向上し、従来にない100μW以上の高い光出力の赤色発光半導体素子を提供することができる。
【0042】
本発明に関連する第8の技術は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子であって、
基板上に、p型層とn型層に挟まれた活性層を有しており、
前記活性層は、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶に、EuまたはPrが、Ga、InあるいはAlと置換するように添加して形成され、さらに、EuまたはPrと共に、Mgが1×1018~1×1020cm-3添加された活性層であり、
光出力が100μW以上であることを特徴とする赤色発光半導体素子である。
【0043】
上記のような赤色発光半導体素子は、Mgが不純物共添加元素として適切な量添加されているため、前記したように発光強度が大きく向上し、100μW以上の高い光出力の赤色発光半導体素子を提供することができる。
【0044】
本発明に関連する第9の技術は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子であって、
基板上に、p型層とn型層に挟まれた活性層を有しており、
前記活性層は、GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶に、EuまたはPrが、Ga、InあるいはAlと置換するように添加して形成され、さらに、EuまたはPrと共に、Alが0原子%を超え40原子%を超えない量添加された活性層であり、
光出力が100μW以上であることを特徴とする赤色発光半導体素子である。
【0045】
上記のような赤色発光半導体素子は、Mg共添加の場合と同様、Alが不純物共添加元素として適切な量添加されているため、前記したように発光強度が大きく向上し、100μW以上の高い光出力の赤色発光半導体素子を提供することができる。
【0046】
本発明は、上記した各技術に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を用いた赤色発光半導体素子の製造方法であって、
GaN、InN、AlNまたはこれらのいずれか2つ以上の混晶を母体材料として、有機金属気相エピタキシャル法を用いて、900~1100℃の温度条件の下で、EuまたはPrを、Ga、InあるいはAlと置換するように添加した活性層を、p型層とn型層の間に、p型層とn型層の形成と一連の形成工程において形成するに際して、
uまたはPrと共に、不純物としてMgを添加して、
光出力が100μW以上の赤色発光半導体素子を製造する
ことを特徴とする赤色発光半導体素子の製造方法である。
【0047】
請求項2に記載の発明は、
前記母体材料に添加される元素が、Euであることを特徴とする請求項1に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
【0048】
請求項3に記載の発明は、
Euが、Eu{N[Si(CHまたはEu(C1119により供給されることを特徴とする請求項2に記載の赤色発光半導体素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、EuイオンやPrイオンの発光遷移効率を増大させ、優れた発光強度の赤色発光半導体素子とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態の赤色発光半導体素子の基本的な構造を示す図である。
【図2】実験例1の赤色発光半導体素子のフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図3】実験例2の赤色発光半導体素子のフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。

【0052】
(赤色発光半導体素子の構造)
図1に本実施の形態における赤色発光半導体素子の基本的な構造を示す。図1において、10はGaN母材にEuおよび不純物共添加元素が添加されたEu、不純物共添加GaN層、20はアンドープGaN層、30はGaNバッファ層、40はサファイア基板である。

【0053】
(実験例1)
本実験例においては、不純物共添加元素としてMgが共添加されたEu、Mg共添加GaN層が活性層として形成された赤色発光半導体素子を作製し、その発光強度を測定した。

【0054】
1.赤色発光半導体素子の作製
最初に、有機金属気層成長法(OMVPE法)を用いて、サファイア基板40上にGaNバッファ層(厚さ30nm)30を成長させた。

【0055】
次に、GaNバッファ層30の上に、同様に、OMVPE法を用いて、アンドープGaN層(厚さ3.4μm)20を成長させた。

【0056】
次に、アンドープGaN層20の上に、活性層となるEu、Mg共添加GaN層(厚さ300nm)10を積層した。

【0057】
Ga原料、及びN原料としては、それぞれトリメチルガリウム、アンモニアを用い、Eu有機原料としてはEu(DPM)、即ち、Eu(C1119を用いた。また、Mg有機原料としては、CpMgを用いた。

【0058】
Eu、Mg共添加GaN層10の形成は、温度1030℃、圧力100kPaの成長条件下、キャリアガス流量40SLM、成長速度0.8μm/hとなるように制御した。なお、キャリアガスとして水素を用いた。

【0059】
なお、OMVPE装置の配管バルブ等を通常仕様のもの(耐熱温度80~100℃)から高温特殊仕様のものに変更することにより、シリンダー温度を135℃に保つことを可能にさせて、十分な量のEuを反応管に供給することが可能となるようにした。

【0060】
そして、各層の形成は、途中で試料を反応管より取り出すことなく、成長の中断がないように一連の工程で行った。

【0061】
作製された活性層におけるEu濃度およびMg濃度を、二次イオン質量分析(SIMS)により測定したところ、Eu濃度は3×1019cm-3であり、Mg濃度は5×1019cm-3であった。

【0062】
2.比較試験体の作製
別途、比較のために、上記と同じ条件で、活性層としてEuしか添加されていないEu添加GaN層を有する赤色発光半導体素子を作製した。

【0063】
3.発光特性
次に、得られた各赤色発光半導体素子について、ヘリウム・カドミウムレーザーを用いて、各活性層からのフォトルミネッセンススペクトル(PLスペクトル)を測定した(室温)。

【0064】
図2に結果を示す。なお、図2において、縦軸はPL強度(任意単位、a.u.)であり、横軸は波長(nm)である。また、実線はMg共添加された活性層からのPLスペクトルであり、破線はEuのみが添加された活性層からのPLスペクトルである。

【0065】
図2に示すように、不純物元素としてMgをEuに共添加することによって、619nm付近に新規発光ピークが発生していることが分かる。これは、従来のEuしか添加されていないEu添加GaN層のピークがシフトしたものではなく、EuとMgの複合体により新たに発生したピークである。そして、その発光強度が室温において従来のピークより5倍強く、Mgを共添加してEuイオンの局所構造の対称性を低下させることにより、発光強度が増大することを示している。

【0066】
(実験例2)
本実験例においては、不純物共添加元素としてAlが共添加されたEu、Al共添加GaN層が活性層として形成された赤色発光半導体素子を作製し、その発光強度を測定した。

【0067】
1.赤色発光半導体素子の作製
実験例1と同様にして、サファイア基板40上にGaNバッファ層(厚さ30nm)30、およびアンドープGaN層(厚さ3.4μm)20を成長させた。

【0068】
次に、アンドープGaN層20の上に、活性層となるEu、Al共添加GaN層(厚さ300nm)10を積層した。なお、このとき、Al濃度が、8原子%、16原子%、24原子%、35原子%、40原子%となるように制御、即ち、形成される活性層がそれぞれ、Al0.08Ga0.92N、Al0.16Ga0.84N、Al0.24Ga0.76N、Al0.35Ga0.65N、Al0.40Ga0.60Nとなるように制御して、5種類の赤色発光半導体素子を作製した。

【0069】
Ga原料、及びN原料としては、それぞれトリメチルガリウム、アンモニアを用い、Eu有機原料としてはEu(DPM)を用いた。また、Al有機原料としては、トリメチルアルミニウムを用いた。

【0070】
成長温度は1030℃とした。また、成長圧力については、実験例1の場合と同様に100kPaとした場合にはEu有機原料とAl有機原料との間に気相反応が生じてEuがAlGaN相に取り込まれなくなるため、減圧させて20kPaとした。

【0071】
そして、キャリアガス流量は40SLM、成長速度は0.8μm/hとなるように制御した。なお、キャリアガスとして水素を用いた。

【0072】
なお、OMVPE装置の配管バルブ等を通常仕様のもの(耐熱温度80~100℃)から高温特殊仕様のものに変更することにより、シリンダー温度を135℃に保つことを可能にさせて、十分な量のEuを反応管に供給することが可能となるようにした。

【0073】
そして、各層の形成は、途中で試料を反応管より取り出すことなく、成長の中断がないように一連の工程で行った。

【0074】
作製された活性層におけるEu濃度を、二次イオン質量分析(SIMS)により測定したところ、いずれの試験体も3×1019cm-3であった。

【0075】
2.比較試験体の作製
別途、比較のために、成長圧力を100kPaとした他は上記と同じ条件で、活性層としてEuしか添加されていないEu添加GaN層を有する赤色発光半導体素子を作製した。

【0076】
3.発光特性
次に、得られた各赤色発光半導体素子について、実験例1と同様に、PLスペクトルを測定した(室温)。

【0077】
図3に結果を示す。なお、図3において、縦軸はPL強度(任意単位、a.u.)であり、横軸は波長(nm)である。なお、図3における「×2」、「×3」などの記載は、それぞれのPL強度が縦軸方向に「2倍」、「3倍」に拡大されていることを示す。

【0078】
図3より、はじめは、Al組成(濃度)が高くなるにつれてPL強度が増大し、Al組成24%で最大となった後は、Al組成が高くなるにつれてPL強度が減衰していることが分かる。これは、高Al組成になるほど、母体の結晶性が低下することと関係している。また、Al組成が増大するに従って、発光ピークのブロード化、長波長化が観測されることから、Eu発光にはAlが関与していることが分かる。以上より、Eu添加GaN形成(製膜)時にAlを共添加することによっても、発光強度が増大することが分かった。

【0079】
以上のように、本発明においては、適切な不純物元素を共添加することにより、優れた光出力の赤色発光半導体素子を製造して提供することが可能となる。

【0080】
そして、これにより、前記したような小型かつ高精細な高出力の発光ダイオードを用いたフルカラーディスプレイや、高輝度LED照明の実現が可能となる。
【符号の説明】
【0081】
10 EuドープGaN層
20 アンドープGaN層
30 GaNバッファ層
40 サファイア基板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2