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Specification :(In Japanese)波長走査型光干渉断層計及びその位相安定化プログラム

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5900950
Publication number P2013-140077A
Date of registration Mar 18, 2016
Date of issue Apr 6, 2016
Date of publication of application Jul 18, 2013
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)波長走査型光干渉断層計及びその位相安定化プログラム
IPC (International Patent Classification) G01N  21/17        (2006.01)
A61B   3/12        (2006.01)
A61B   3/10        (2006.01)
FI (File Index) G01N 21/17 630
A61B 3/12 E
A61B 3/10 R
Number of claims or invention 4
Total pages 16
Application Number P2012-000313
Date of filing Jan 5, 2012
Date of request for substantive examination Dec 22, 2014
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】安野 嘉晃
【氏名】伊藤 雅英
【氏名】洪 暎周
Representative (In Japanese)【識別番号】100110179、【弁理士】、【氏名又は名称】光田 敦
Examiner (In Japanese)【審査官】横尾 雅一
Document or reference (In Japanese)特表2008-545970(JP,A)
特開2010-014514(JP,A)
特開2008-175698(JP,A)
TSAI,M.-T. et.al.,“Microvascular Imaging Using Swept-Source Optical Coherence Tomography with Single-Channel Acquisit,APPLIED PHYSICS EXPRESS,2011年 8月12日,Volume 4, Number 9,Pages 097001-1 - 097001-3,< DOI:10.1143/APEX.4.097001 >
HONG,Y.-J. et.al.,“High-penetration swept source Doppler optical coherence angiography by fully numerical phase stabi,OPTICS EXPRESS,2012年 1月23日,Volume 20, Issue 3,Pages 2740-2760,< DOI:10.1364/OE.20.002740 >
Hong Y J , et.al.,Non-Invasive Three-Dimensional Angiography of Human Eye by Doppler Optical Coherence Tomography,IQEC/CLEO Pacific Rim 2011,2011年 8月28日,p.769-771
Field of search G01N 21/00-21/61
A61B 1/00- 1/32
A61B 3/00- 3/18
A61B 9/00-10/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
SS-OCTにおいて、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光とが重ねられて光検知器で検出されたスペクトル干渉信号に基づき、断層画像を生成するコンピュータを、スペクトル干渉信号の位相データを補正する補正手段として機能させるSS-OCTのスペクトル干渉信号の位相を安定化するプログラムであって、
前記補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCTの位相を安定化するプログラム。

Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N
但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。
【請求項2】
SS-OCTにおいて、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光とが重ねられて光検知器で検出されたスペクトル干渉信号に基づき、断層画像を生成するコンピュータを、スペクトル干渉信号の位相データを補正する第1の補正手段と第2の補正手段として順次機能させるSS-OCTのスペクトル干渉信号の位相を安定化するプログラムであって、
前記第1の補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式(1)に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行い、
前記第2の補正手段は、前記2つのA-スキャンで得られたスペクトル干渉信号に係るドップラー位相シフトを示す下記の式(2)において、ドップラー信号vz(ζ)がない領域における、ζの切片bm=4πτvb/λC、傾きam=-2πβ’/Nの1次関数について、下記の式(3)に示す誤差エネルギーを最小とする傾きamと切片bmを求めることで、バルクモーション及びジッターによるスペクトルシフトβの残差β’を求めて、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCTの位相を安定化するプログラム。

Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N ・・・(1)
但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。

Δφ(ζ)=(4πτ/λC)nvz(ζ)+(4πτ/λC)vb -2πζβ’/N
・・・(2)
但し、τは2つのA-スキャン間の時間、λC は光源の中心波長、nは屈折率、変数ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、vbはバルクモーションの速度、β’はジッターによるスペクトルシフトの残差、Nはサンプリング点数、ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、ζは被計測物体の深さを示す変数をそれぞれ示し、ζ=0,1,・・・・N-1である。

R22=ΣζWm(ζ)[Δφ(ζ)-(amζ+bm)]2 ・・・(3)
但し、m=0,1,2…… であり、ζは被計測物体の深さを示す変数であり、Wm(ζ)は重みである。
【請求項3】
波長走査型光源と、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光が重ねられたスペクトル干渉信号を検出する光検知器と、光検知器検出されたスペクトル干渉信号に基づき断層画像を生成するコンピュータと、を備えたSS-OCTであって、
前記コンピュータは、スペクトル干渉信号の位相データを補正してSS-OCTの位相を安定化する補正手段を備えており、
前記補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCT。

Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N
但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。
【請求項4】
波長走査型光源と、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光が重ねられたスペクトル干渉信号を検出する光検知器と、光検知器検出されたスペクトル干渉信号に基づき断層画像を生成するコンピュータと、を備えたSS-OCTであって、
前記コンピュータは、スペクトル干渉信号の位相データを順次補正してSS-OCTの位相を安定化する第1の補正手段と第2の補正手段を備えており、
前記第1の補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式(1)に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行い、
前記第2の補正手段は、前記2つのA-スキャンで得られたスペクトル干渉信号に係るドップラー位相シフトを示す下記の式(2)において、ドップラー信号vz(ζ)がない領域における、ζの切片bm=4πτvb/λC、傾きam=-2πβ’/Nの1次関数について、下記の式(3)に示す誤差エネルギーを最小とする傾きamと切片bmを求めることで、バルクモーション及びジッターによるスペクトルシフトβの残差β’を求めて、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCT。

Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N ・・・(1)
但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。

Δφ(ζ)=(4πτ/λC)nvz(ζ)+(4πτ/λC)vb -2πζβ’/N
・・・(2)
但し、τは2つのA-スキャン間の時間、λC は光源の中心波長、nは屈折率、変数ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、vbはバルクモーションの速度、β’はジッターによるスペクトルシフトの残差、Nはサンプリング点数、ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、ζは被計測物体の深さを示す変数をそれぞれ示し、ζ=0,1,・・・・N-1である。

R22=ΣζWm(ζ)[Δφ(ζ)-(amζ+bm)]2 ・・・(3)
但し、m=0,1,2…… であり、ζは被計測物体の深さを示す変数であり、Wm(ζ)は重みである。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、光源の波長を走査してスペクトル干渉信号を得る波長走査型光干渉断層計(Swept Source Optical Coherence Tomography、略して「SS-OCT」という。)及びその位相安定化プログラムに関し、特に、追加的なハードウェアを使用せず、一般的に用いられているSS-OCTと同じ構成のみにより位相を安定化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野等で用いられる非破壊断層計測技術の1つとして、時間的に低コヒーレンスな光をプローブ(探針)として用いる光断層画像化法「光コヒーレンストモグラフィー」(OCT)がある(特許文献1参照)。OCTは、光を計測プローブとして用いるため、被計測物体の屈折率分布、分光情報、偏光情報(複屈折率分布)等が計測できるという利点がある。
【0003】
基本的なOCT43は、マイケルソン干渉計を基本としており、その原理を図3で説明する。光源44から射出された光は、コリメートレンズ45で平行化された後に、ビームスプリッター46により参照光と物体光に分割される。物体光は、物体アーム内の対物レンズ47によって被計測物体48に集光され、そこで散乱・反射された後に再び対物レンズ47、ビームスプリッター46に戻る。
【0004】
一方、参照光は参照アーム内の対物レンズ49を通過した後に参照鏡50によって反射され、再び対物レンズ49を通してビームスプリッター46に戻る。このようにビームスプリッター46に戻った物体光と参照光は、物体光とともに集光レンズ51に入射し光検出器52(フォトダイオード等)に集光される。
【0005】
OCTの光源44は、時間的に低コヒーレンスな光(異なった時刻に光源から出た光同士は極めて干渉しにくい光)の光源を利用する。時間的低コヒーレンス光を光源としたマイケルソン型の干渉計では、参照アームと物体アームの距離がほぼ等しいときにのみ干渉信号が現れる。この結果、参照アームと物体アームの光路長差(τ)を変化させながら、光検出器52で干渉信号の強度を計測すると、光路長差に対する干渉信号(インターフェログラム)が得られる。
【0006】
そのインターフェログラムの形状が、被計測物体48の奥行き方向の反射率分布を示しており、1次元の軸方向走査により被計測物体48の奥行き方向の構造を得ることができる。このように、OCT43では、光路長走査により、被計測物体48の奥行き方向の構造を計測できる。
【0007】
このような軸方向の走査のほかに、横方向の機械的走査を加え、2次元の走査を行うことで被計測物体の2次元断面画像が得られる。この横方向の走査を行う走査装置としては、被計測物体を直接移動させる構成、物体は固定したままで対物レンズをシフトさせる構成、被計測物体も対物レンズも固定したままで、対物レンズの瞳面付近においたガルバノミラーの角度を回転させる構成等が用いられている。
【0008】
以上の基本的なOCTが発展したものとして、分光器を用いてスペクトル信号を得るスペクトルドメインOCT(SD-OCT)と、光源の波長を走査してスペクトル干渉信号を得る波長走査型OCT(Swept Source OCT、略して「SS-OCT」という。)がある。SD-OCTには、フーリエドメインOCT(Fourier Domain OCT、略して「FD-OCT」という。特許文献2参照)、及び偏光感受型OCT(Polarization-Sensitive OCT、略して「PS-OCT」という。特許文献3参照)がある。
【0009】
FD-OCTは、被計測物体からの反射光の波長スペクトルを、スペクトロメーター(スペクトル分光器)で取得し、このスペクトル強度分布に対してフーリエ変換することで、実空間(OCT信号空間)上での信号を取り出すことを特徴とするものであり、このFD-OCTは、奥行き方向の走査を行う必要がなく、x軸方向の走査を行うことで被計測物体の断面構造を計測可能である。
【0010】
SS-OCTは、高速波長スキャニングレーザーにより光源の波長を変え、スペクトル信号と同期取得された光源走査信号を用いて干渉信号を最配列し、信号処理を加えることで3次元光断層画像を得るものである。なお、光源の波長を変える手段として、モノクロメーターを利用したものでも、SS-OCTとして利用可能である。
【0011】
ドップラー光コヒーレンストモグラフィー(ドップラーOCT)による、網膜の血流の分布の計測が知られている。これは、上記FD-OCT等を用いて、網膜の血流の分布が計測を行うことのできる手段であり、同様に、スペクトルドメインOCTを使うことによって、横断面網膜血流画像形成が得られ、また次元の網膜の脈管構造も観察することができる。
【0012】
本発明者らは、従来よりドップラーOCTに着目し、生体内、特に眼底の血流を非侵襲で計測する手法の研究・開発を行って来た。従来本発明者らはSD-OCTを技術基盤上にドップラーOCTを実装し、眼底血流検査に成功してきたが、近年OCTの技術基板はSD-OCTから、次世代であるSS-OCTに移行しつつある。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開2002-310897号公報
【特許文献2】特開平11-325849号公報
【特許文献3】特開2004-028970号公報
【0014】

【非特許文献1】B. Vokoc et.al., “Phase-resolved optical frequency domain imaging,”OpticsExpress 13, 5483- (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らはSS-OCTによってもドップラー計測の研究開発を行ってきたが、ドップラー計測には、困難な問題がある。これは、SS-OCT特有の位相不安定性に起因するものである。
【0016】
SS-OCTの位相不安定性を補正する方法は Harvard Medical School により提案されているものの(非特許文献1参照)、この技術は、複雑なハードウェアを必要とし製品のコストの増大がさけられない。
【0017】
本発明は、上記SS-OCTの位相不安定性の問題を解決することを目的とするものであり、従来同様の標準的なSS-OCTの構成のみを前提とし、そこから得られる信号を適切に処理することで高い位相の安定性を得ることを課題とするものであり、これにより、従来のSS-OCTを利用して、SS-OCTによる計測及びドップラー計測を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記課題を解決するために、SS-OCTにおいて、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光とが重ねられて光検知器で検出されたスペクトル干渉信号に基づき、断層画像を生成するコンピュータを、スペクトル干渉信号の位相データを補正する補正手段として機能させるSS-OCTのスペクトル干渉信号の位相を安定化するプログラムであって、前記補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式(2’)に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCTの位相を安定化するプログラムを提供する。
Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N ・・・(2’)

但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。
【0019】
本発明は上記課題を解決するために、SS-OCTにおいて、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光とが重ねられて光検知器で検出されたスペクトル干渉信号に基づき、断層画像を生成するコンピュータを、スペクトル干渉信号の位相データを補正する第1の補正手段と第2の補正手段として順次機能させるSS-OCTのスペクトル干渉信号の位相を安定化するプログラムであって、前記第1の補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式(2’)に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行い、前記第2の補正手段は、前記2つのA-スキャンで得られたスペクトル干渉信号に係るドップラー位相シフトを示す下記の式(9)において、ドップラー信号vz(ζ)がない領域における、ζの切片bm=4πτvb/λC、傾きam=-2πβ’/Nの1次関数について、下記の式(10)に示す誤差エネルギーを最小とする傾きamと切片bmを求めることで、バルクモーション及びジッターによるスペクトルシフトβの残差β’を求めて、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCTの位相を安定化するプログラムを提供する。
Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N ・・・(2’)

但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。
Δφ(ζ)=(4πτ/λC)nvz(ζ)+(4πτ/λC)vb -2πζβ’/N
・・・(9)
但し、τは2つのA-スキャン間の時間、λC は光源の中心波長、nは屈折率、変数ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、vbはバルクモーションの速度、β’はジッターによるスペクトルシフトの残差、Nはサンプリング点数、ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、ζは被計測物体の深さを示す変数をそれぞれ示し、ζ=0,1,・・・・N-1である。
R22=ΣζWm(ζ)[Δφ(ζ)-(amζ+bm)]2 ・・・(10)
但し、m=0,1,2…… であり、ζは被計測物体の深さを示す変数であり、Wm(ζ)は重みである。
【0020】
本発明は上記課題を解決するために、波長走査型光源と、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光が重ねられたスペクトル干渉信号を検出する光検知器と、光検知器検出されたスペクトル干渉信号に基づき断層画像を生成するコンピュータと、を備えたSS-OCTであって、前記コンピュータは、スペクトル干渉信号の位相データを補正してSS-OCTの位相を安定化する補正手段を備えており、前記補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式(2’)に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCTを提供する。
Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N ・・・(2’)

但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。
【0021】
本発明は上記課題を解決するために、波長走査型光源と、波長走査型光源から出射されて分割され、固定参照鏡で反射された参照光と、被計測物体で反射された物体光が重ねられたスペクトル干渉信号を検出する光検知器と、光検知器検出されたスペクトル干渉信号に基づき断層画像を生成するコンピュータと、を備えたSS-OCTであって、前記コンピュータは、スペクトル干渉信号の位相データを順次補正してSS-OCTの位相を安定化する第1の補正手段と第2の補正手段を備えており、前記第1の補正手段は、隣接する2つのA-スキャンにおいて、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、下記の式(2’)に従い、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβを消去することにより、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行い、前記第2の補正手段は、前記2つのA-スキャンで得られたスペクトル干渉信号に係るドップラー位相シフトを示す下記の式(9)において、ドップラー信号vz(ζ)がない領域における、ζの切片bm=4πτvb/λC、傾きam=-2πβ’/Nの1次関数について、下記の式(10)に示す誤差エネルギーを最小とする傾きamと切片bmを求めることで、バルクモーション及びジッターによるスペクトルシフトβの残差β’を求めて、スペクトル干渉信号の位相データの補正を行うことを特徴とするSS-OCTを提供する。。
Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N ・・・(2’)
但し、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、Nはサンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数でζ=0,1,・・・・N-1であり、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式であり、Angle[]は[]内の位相を表す式であり、 は複素共約を示す。
Δφ(ζ)=(4πτ/λC)nvz(ζ)+(4πτ/λC)vb -2πζβ’/N
・・・(9)
但し、τは2つのA-スキャン間の時間、λC は光源の中心波長、nは屈折率、変数ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、vbはバルクモーションの速度、β’はジッターによるスペクトルシフトの残差、Nはサンプリング点数、ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、ζは被計測物体の深さを示す変数をそれぞれ示し、ζ=0,1,・・・・N-1である。
R22=ΣζWm(ζ)[Δφ(ζ)-(amζ+bm)]2 ・・・(10)
但し、m=0,1,2…… であり、ζは被計測物体の深さを示す変数であり、Wm(ζ)は重みである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る波長走査型光干渉断層計及びその位相安定化プログラによれば、次のような効果が生じる。
(1)位相安定化ミラー、複数チャンネルデジタイザ等の高価で複雑なハードウェアを追加的に使用せず、一般的に用いられているSS-OCTと同じ構成のみにより位相を安定化させることができる。
【0023】
(2)SS-OCTで取得された複数のA-スキャン(被計測物体の深さ方向のスキャン)のスペクトル干渉信号の時間ジッター(光源の波長スキャンと、光検知器でスペクトル干渉信号の収集のタイミングの不一致に基づく時間軸方向での信号波形の揺らぎ)を補正することができる。
【0024】
(3)SS-OCTで生体を撮影した際、生体の動き(バルクモーション)によるドップラー信号のアーチファクト(artifact(人工産物):偽の所見)を検出し、補正することができる。
(4)SS-OCTで生体を撮影した際、そのドップラーシフト情報を用いて、時間ジッターをさらに高精度に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るPS-OCTシステムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明に係る位相安定化プログラム及び該プログラムを搭載したSS-OCTの効果を実証するための実験の結果を示すグラフである。
【図3】従来の基本的なOCTを説明する図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係る波長走査型光干渉断層計及びその位相安定化プログラムを実施するための実施するための形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0027】
まず、本発明におけるSS-OCT(波長走査型光干渉断層計)の本体の構成を説明する。
【0028】
図1は、SS-OCT1の基本構成を示す図である。波長走査型光源2から出射された出力光を、ファイバー3を通してファイバーカップラー4に送る。この出力光を、ファイバーカップラー4において、ファイバー5を通して被計測物体6への照射する物体光と、ファイバー7を通して固定参照鏡8に照射する参照光に分割する。
【0029】
物体光は、ファイバー5、レンズ9、角度が可変な走査鏡10及びレンズ11を介して、被計測物体6に照射、反射され、同じルートでファイバーカップラー4に戻る。参照光は、ファイバー7、レンズ12及びレンズ13を介して固定参照鏡8に照射、反射されて同じルートでファイバーカップラー4に戻る。
【0030】
そして、これらの物体光と参照光はファイバーカップラー4で重ねられ、ファイバー14を通して光検知器15(PD(フォトダイオード)等のポイントセンサが使用される。)に送られ、スペクトル干渉信号として検出され、コンピュータ16に取り込まれる。
【0031】
光検知器15における検知出力に基づいて、被計測物体6の奥行き方向(A方向)と走査鏡の走査方向(B方向)の断面画像が形成される。コンピュータ16にはディスプレー17が接続されている。
【0032】
波長走査型光源2は、時間的に波長を変化させて走査する光源であり、即ち波長が時間依存性を有する光源である。これにより、A-スキャン(被計測物体の奥行き方向への走査)をするために、固定参照鏡8を走査(光軸方向に移動して行う光軸方向の走査)することなく、被計測物体6の奥行き方向の反射率分布を得て奥行き方向の構造を取得することができ、B-スキャン(光軸方向と直交する1次方向の走査)をするだけで、二次元の断層画像を形成することができる。
【0033】
ところで、SS-OCTでは、その光源は時間的に波長を変化させて走査するので、この光源の波長スキャン(波長の変化のタイミング)と、光検知器でスペクトル干渉信号としてデータを収集するタイミングとの間の(不一致により生じる)ジッター(Jitter:時間軸方向での信号波形の揺らぎや、その揺らぎにより生じる画像の乱れ)が問題になる。
【0034】
このジッターは、スペクトルサンプリングのランダムなシフトをもたらし、結果、SS-OCTで取得されるスペクトル干渉信号のジッターとなる。
【0035】
ドップラー計測では、ドップラー信号は2つのA-スキャン(B-スキャンで得られる第1のA-スキャンA1と第2のA-スキャンA2)で取得されるスペクトル干渉信号の位相差によって得られるため、上記SS-OCTで取得されるスペクトル干渉信号のジッターは、ドップラー計測におけるデータ誤差に直接影響する。
【0036】
本発明は、SS-OCTを構成するコンピュータに搭載され、そのコンピュータを、SS-OCTで取得されるスペクトル干渉信号の位相データを安定化する手段として機能させるプログラム、及びこのプログラムを搭載して成るSS-OCTに関する。
【0037】
(SS-OCTの位相データを安定化するプログラム)
本発明に係るSS-OCTのスペクトル干渉信号の位相データを安定化するプログラムは、SS-OCTにおけるコンピュータを、スペクトル干渉信号の位相データを安定化させるために、その補正処理を、第1の補正処理手段及び第2の補正処理手段という二段階で処理をさせる手段として機能させる構成を有している。
【0038】
第1の補正処理手段は、SS-OCTの参照光のみを数値的に取り出し、そこからSS-OCT光スペクトルの時間相関を計算することで、SS-OCTのスペクトル干渉信号の大まかなスペクトルシフト(具体的には、SS-OCTのスペクトル干渉信号のジッター)を補正する。
【0039】
第2の補正処理手段は、被計測物体のバルクモーション(例えば、人の目の動き等であり、計測画像のアーチファクト(artifact(人工産物):偽の所見)の原因となる。)等によるスペクトルシフトを検出して補正し、第1の補正処理手段よりもさらに高性能なSS-OCTのスペクトル干渉信号の位相データの補正を行う。
【0040】
本発明に係るSS-OCTの位相データを安定化するプログラムを、SS-OCTを構成するコンピュータに搭載すれば、従来例において必要であった「位相安定化ミラー」や「複数チャンネルデジタイザ」等の高価で複雑な装置を追加して使用する必要がない。
【0041】
以下、本発明に係るSS-OCTのスペクトル干渉信号の位相データを安定化するプログラムについて、その原理とともに説明する。
【0042】
<第1の補正処理手段>(大まかなスペクトルシフトの補正手段):
複数のA-スキャン(A-スキャン方向と直交する方向に移動(要するにB-スキャン)して行う複数のA-スキャン)によりSS-OCTのスペクトル干渉信号が得られるが、第1のA-スキャンA1と第2のスキャンA2の2つのA-スキャンで得られた2つのスペクトル干渉信号をS1(j)及びS2(j)とする。
【0043】
ここで、jはスペクトルのサンプリング点、即ちA-スキャンにおける深さ方向(光軸方向)の座標であり、波数kに比例するとする。なお波長λ、周波数f、角速度ωとすると、kω=λfであるから、波数kは、k=λf/ωであり、またf/ω=2πであるから、k=2πfで表される。
【0044】
そして、2つのスペクトル干渉信号S1(j)及びS2(j)間の相対的なスペクトルシフトを考える。スペクトル干渉信号S2(j)がジッターによるスペクトルシフトβを受け、その結果、S2(j)がS’2(j)となったとする。すると、S’2(j)は次の式(1)で表される。
【0045】
S’2(j)=S2(j)* δ(j-β) ・・・(1)
ここで、*はコンボリューション(畳み込み積分)である。
【0046】
両辺をフーリエ変換すると、次の式(2)となる。
F[S’2(j)](ζ)=F[S2(j)](ζ)exp(-2πζβ/N) ・・・(2)
ここで、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式である。Nは、サンプリング点数であり、ζは被計測物体の深さを示す変数で、ζ=0,1,・・・・N-1である。
【0047】
ところで、前記したとおり、ドップラー計測では、ドップラー信号は2つのA-スキャンで取得されるスペクトル干渉信号の位相差によって得られるが、仮に、2つのA-スキャンのスペクトル干渉信号の形状が一致する場合は、スペクトル干渉信号のジッターは、ドップラー計測におけるデータ誤差(位相誤差)に直接影響する。
【0048】
2つのA-スキャンによるスペクトル干渉信号S1(j)及びS2(j)が一致する場合(S1(j)=S2(j))は、S1(j)及びS2(j)から得られたドップラー信号は次の式(2’)で表される位相誤差をもつことになる。
【0049】
Angle[F[S’2(j)](ζ)F[S1(j)](ζ)]=-2πζβ/N ・・・(2’)
ここでの は複素共約を示し、Angle[]は[]内の位相を表す式である(Angle[]は位相角を表す)。
【0050】
この式は、ドップラー信号は、スペクトルシフトβに1次関数的に比例するため、この式で表されるドップラー信号のデータを1次関数でフィットすることで、そのフィット関数の傾きとしてジッターによるスペクトルシフトβを求めることができ、さらに、そのフィット値をこのドップラー信号から減算することで、ジッターの効果を除去することができる、ということを示している。
【0051】
しかしながら現実的には、次のような要因で誤差が生じ、そのために2つのA-スキャン間でスペクトルデータが異なる。
(1)2つのA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)、S2(j)それぞれについて一般的な誤差がある。
(2)血流などによるドップラーシフトがある。
(3)バルクモーション(人の目のような被検体のぶれや動きであり、アーチファクト(artifact(人工産物):偽の所見)を生じる)等の要因による誤差がある。
【0052】
そこで、本発明のプログラムでは、コンピュータが、式(2’)に従って、基準となる第1のA-スキャンのスペクトル干渉信号S1(j)と、第2のA-スキャンのスペクトル干渉信号であってジッターによるスペクトルシフトβを受けたスペクトル干渉信号S’2(j)とから、スペクトルシフトβを求め、このスペクトルシフトβによってスペクトル干渉信号の位相データの補正を行なわせる手段として機能させることを特徴とする。
【0053】
以上が、第1の補正処理手段であるが、これをさらに詳細に説明すると、実際に検出されるスペクトル干渉信号S1(j)は、次の式(3)で表される。
【0054】
S1(j)=│Er(j)│2+│Ep1(j)│2+Er(j)Ep1(j)+Er(j)Ep1(j)
・・・(3)
ここでの は、複素共約を示す。また、Er(j)及びEp1(j)は、それぞれA-スキャンにおける参照光及び物体光の光波の振幅である。
【0055】
この式において、第3項のEr(j)Ep1(j)及び第4項Er(j)Ep1(j)は光学系の調整により比較的高い搬送周波数を持つように設定されているのに対して、第1項の│Er(j)│2の搬送周波数はゼロであるので、数値的な周波数フィルタリングにより第3項、第4項を除去することが可能である。
【0056】
また、通常のSS-OCTでは、参照光のEr(j)Ep1(j)強度は、物体光の強度より十分大きい。即ち、│Er(j)│2≫│Ep1(j)│2である。
【0057】
従って、スペクトル干渉信号S1(j)は、S’1(j)≒│Er(j)│2 と書くことができる。そのフーリエ変換は、次の式(4)ようになる。
F[S’1(j)](ζ)≒F[│Er(j)│2](ζ) ・・・(4)
ここで、F[ ]は[ ]内をフーリエ変換した式である。
【0058】
S’2(j)は、実際のOCT計測では、次の式(5)で表される。
S’2(j)={│Er(j)│2+│Ep2(j)│2+Er(j)Ep2(j)
+Er(j)Ep2(j)}*δ(j-β) ・・・(5)
ここでの は複素共約を示す。また、*はコンボリューション(畳み込み積分)である。
Ep2(j)はプローブ光の振幅である。
【0059】
S’2(j)はS’1(j)の場合と同様な近似を用いて、次の式ように書くことができる。
S''2(j)≒│Er(j)│2 * δ(j-β)
【0060】
これをフーリエ変換すると次の式(6)となる。
F[S''2(j)](ζ)≒F[│Er(j)│2](ζ)exp(-2πζβ/N) ・・・(6)
【0061】
従って位相差は、次の式(7)で表される。
F[S''2(j)](ζ)F[S'1(j)](ζ)≒I(ζ)exp(-2πζβ/N) ・・・(7)
ここで、I(ζ)=F[│Er(j)│2 ](ζ)は、OCT強度信号である。
【0062】
理論的には、式(7)の誤差成分の位相-2πζβ/Nは、ζの1次関数になるはずであるが、実際には線形な傾きからのずれが生じる。この位相の勾配βは、次の式(8)で表される誤差を最小となるように決めるとよい。
【0063】
R21=ΣζI(ζ)[-2πζβ/N-φ(ζ)]2 ・・・(8)
ここで、φ(ζ)=∠F[S''2(j)](ζ)F[S'1(j)](ζ)である。
【0064】
強度I(ζ)がノイズレベルより低い場合は、I(ζ)=0とする。これ(前記段落0053~0063の記載内容)によりジッターによって発生する線形な誤差成分を数値的に補正することができる。
【0065】
発明者らは、本発明に係るプログラムをSS-OCTのコンピュータに搭載し第1の補正処理手段を使用した場合と、搭載せずに第1の補正処理手段を使用しない場合について、それぞれスペクトル干渉信号のスペクトルシフトを算出し、本発明に係るプログラム及び該プログラムを搭載したSS-OCTの効果を実証するための実験を行った。
【0066】
この実験では、互いに隣接するA-スキャンによってそれぞれ取得したスペクトル干渉信号間について、異なる深さ方向における位相差の標準偏差を算出した。
【0067】
この実験の結果を図2に示す。図2において、横軸はA-スキャン方向の被計測物体の深さ(Depth、単位はmm)を示し、縦軸はスペクトル干渉信号の位相差の標準偏差(σφ)を示し、単位は度(degree)である。そして、○印は第1の補正処理手段を使用した場合の算出値を示し、×印は第1の補正処理手段を使用しない場合の算出値を示している。
【0068】
この実験の結果によると、第1の補正処理手段を使用の有無にかかわらず、A-スキャン方向の被計測物体の深さによって位相差の標準偏差が異なり、より深い領域においては、位相差の標準偏差が大きくなる。
【0069】
そして、第1の補正処理手段を使用した場合は、使用しない場合より位相差の標準偏差は小さい。従って、第1の補正処理手段を使用すると、A-スキャン方向の被計測物体の深さ方向の全領域にわたって、スペクトル干渉信号の位相差の標準偏差が小さくなり位相の安定性が改善されることが実証された。
【0070】
<第2の補正処理手段>(スペクトルシフトの残差とバルクモーションの補正手段)
ドップラーOCT像である隣接したA-スキャンのスペクトル干渉信号間の位相差は、そのA-スキャンと隣のA-スキャンの複素共役を掛け合わせた信号の位相成分として得られる(前記式(2’)参照)。
【0071】
参照光と物体光の光路差がゼロ(ゼロディレイ)付近の大きなスペクトルシフトは、第1の補正処理手段で補正可能である。しかし、ゼロディレイから遠い信号はエラー(スペクトルシフトの残差)が残る。また、バルクモーションも補正されていない。
【0072】
そこで、SS-OCT計測のスペクトル干渉信号は、第1の補正処理手段で補正してからさらに、次の式(9)で表される「ドップラー位相シフトΔφ(ζ)」で補正する。
Δφ(ζ)=(4πτ/λC)nvz(ζ)+(4πτ/λC)vb -2πζβ’/N
・・・(9)
【0073】
ここで、τは2つのA-スキャン間の時間、λC は光源の中心波長、nは屈折率、変数ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、vbはバルクモーションの速度、β’はジッターによるスペクトルシフトの残差、Nはサンプリング点数、ζの関数vz(ζ)は光軸方向の速度、ζは被計測物体の深さを示す変数をそれぞれ示し、ζ=0,1,・・・・N-1である。
【0074】
この式において、第1項の(4πτ/λC)nvz(ζ)は、計測したいドップラー信号である。第2項の(4πτ/λC)vbは、バルクモーションに起因する信号であり、深さζに依存しない定数である。
【0075】
第1項の-2πζβ’/Nにおける「β’」は、前記のとおりジッターによるスペクトルシフトの残差であるが、第1の補正処理手段による補正しない状態のスペクトルシフトβは、第1の補正処理手段で補正すると、その大部分は、第1の補正処理手段による補正で取り除かれる。そして、その残差β’は小さいので、2πの位相のたたみ込みはここでは生じない。
【0076】
ドップラー信号vz(ζ)がない領域(血液等の動きのない領域)では、第1項は無視できるので、式(9)のΔφ(ζ)は、ζの切片が4πτvb/λCであり、傾きが-2πβ’/Nの1次関数となる。
【0077】
この切片と傾きは、次の式(10)で表される誤差エネルギーを最小とする傾きamと切片bmを反復法によって求めることで決めることができる。
R22=ΣζWm(ζ)[Δφ(ζ)-(amζ+bm)]2 ・・・(10)
ここで、m=0,1,2…… であり、Wm(ζ)は、反復法で誤差エネルギーを最小化する際の各ζにおける誤差の重要性を表す重み関数である。
【0078】
反復法の式(10)において、m=0、即ち初期値W0(ζ)は次の式(11)で示される。
I(ζ)>ε2 の場合:W0(ζ)=(I(ζ))1/2
その他の場合 :W0(ζ)=0
・・・ (11)
ここで、I(ζ)はOCTの強度信号,εはノイズレベルである。
【0079】
重みの更新は、次の式(12)で行う。
|Δφ(ζ)-(am-1ζ+bm-1)|≧π/2mの場合: Wm(ζ)=0
その他の場合: Wm(ζ)=Wm-1
・・・(12)
【0080】
ここで、m=1,2,…である。つまり、誤差エネルギーが所定の閾値、例えば、π/2mより小さい場合は、重みをゼロとする。それ以外の場合は重みは更新されない、ということである。閾値は繰り返し回数mが大きくなると低くなる。mの最大値は(たとえば6などに)予め決めておく。
【0081】
以上、本発明に係る波長走査型光干渉断層計及びその位相安定化プログラムを実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る波長走査型光干渉断層計及びその位相安定化プログラムは、眼底血流の検査に有用であり、これにより、緑内障、糖尿病網膜症の初期検出が可能である。また、腫瘍イメージングにも有用であり、悪性腫瘍における新生血管の三次元可視化が可能である。その他、消化器OCTなどへの応用、及び、動物実験への応用が期待される。
【符号の説明】
【0083】
1 波長走査型OCT
2 波長走査型光源
3、5、7、14 ファイバー
4 ファイバーカップラー
6 被計測物体
8 固定参照鏡
10 走査鏡
11、12、13 レンズ
15 光検知器
17 ディスプレー
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2