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Specification :(In Japanese)HLA-DR1拘束性Tax特異的CD4+T細胞エピトープ

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5999703
Publication number P2014-133712A
Date of registration Sep 9, 2016
Date of issue Sep 28, 2016
Date of publication of application Jul 24, 2014
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)HLA-DR1拘束性Tax特異的CD4+T細胞エピトープ
IPC (International Patent Classification) C07K   7/08        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI (File Index) C07K 7/08 ZNA
C07K 19/00
A61K 37/02
A61K 39/00 Z
A61K 48/00
A61K 31/7088
A61P 35/02
A61P 43/00 111
G01N 33/48 M
C12N 15/00 A
Number of claims or invention 16
Total pages 33
Application Number P2013-002127
Date of filing Jan 9, 2013
Date of request for substantive examination Sep 10, 2015
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】玉井 洋太郎
【氏名】長谷川 温彦
【氏名】神奈木 真理
【氏名】田野崎 隆二
Representative (In Japanese)【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
Examiner (In Japanese)【審査官】長部 喜幸
Document or reference (In Japanese)国際公開第2010/009465(WO,A1)
米国特許第05717058(US,A)
米国特許第05420244(US,A)
Field of search C07K 14/00
C07K 7/00
A61K 31/7088
A61K 38/00
A61K 39/00
A61K 48/00
A61P 35/02
A61P 43/00
G01N 33/48
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed

Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド
【請求項2】
HLA-DR1に拘束されるTaxエピトープである請求項1に記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド。
【請求項3】
CD4T細胞がTh1型ヘルパーT細胞である請求項1又は2に記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド。
【請求項4】
HLA-DR1と請求項1~3のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体。
【請求項5】
HLA-DR1と請求項1~3のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体の4量体。
【請求項6】
以下の(A)~(E)のいずれかのアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドを有効成分として含有する、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤:
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有し、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列。
【請求項7】
プロモーターと、以下の(a)~(e)のいずれかに示されるポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとを含み、該ポリヌクレオチドがプロモーターの下流に作動可能に連結されている発現ベクターを有効成分として含有するHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤:
(a)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列:
(b)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列:
(c)前記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチド配列に対して80%以上の同一性を有するポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有し、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むペプチドをコードするポリヌクレオチド配列:
(d)前記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチド配列において、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有し、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むペプチドをコードするポリヌクレオチド配列:
(e)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有するHTLV-I特異的免疫応答誘導用ワクチン。
【請求項9】
以下の(A)~(E)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドを有効成分として含有する、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬:
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有し、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列。
【請求項10】
HLA-DR1とHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体を有効成分として含有する、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬であって、
前記HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドが以下の(A)~(E)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなる、前記免疫機能検査診断薬:
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有し、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列
【請求項11】
HLA-DR1とHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体の4量体を有効成分として含有する、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬であって、
前記HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドが以下の(A)~(E)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなる、前記免疫機能検査診断薬:
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有し、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、かつ、配列番号32に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を少なくとも含むアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列
【請求項12】
HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドが、HLA-DR1に拘束されるTaxエピトープである請求項9~11のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬。
【請求項13】
CD4T細胞がTh1型ヘルパーT細胞である請求項9~12のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬。
【請求項14】
HSCT前のATL患者に由来するHTLV-I感染T細胞を用いて、同種のHLAタイプのドナー由来のHSCT後の同じ患者のPBMCをインビトロ又はエクスビボで刺激することを特徴とするHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法。
【請求項15】
請求項6又は7に記載のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤を用いて、HLA-DR1陽性のATL患者のPBMCをインビトロ又はエクスビボで刺激することを特徴とするHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法。
【請求項16】
HLA-DR1陽性のATL患者のPBMCを、以下の(X)及び(Y)を用いてインビトロ又はエクスビボで刺激することを特徴とする、HTLV-I特異的CD4T細胞応答及びHTLV-I特異的CTL応答を含むHTLV-I特異的免疫応答を誘導する方法:
(X)請求項6又は7に記載のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤:
(Y)前記ATL患者のHLA-A座の型に適合する、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチド。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)に特異的なCD4T細胞を誘導する活性を有するHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドや、該ペプチドを含有するHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)は、極めて難治性のCD4T細胞悪性腫瘍である成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL:adult T cell leukemia/lymphoma)の原因ウイルスである(非特許文献1及び2)。世界中で1000~2000万人がこのウイルスに感染し、特に日本の南方地域、カリブ海地域、南米、メラネシア、及び赤道アフリカでの感染例が多い。HTLV-I血清反応陽性者の約5%がATLを発症し、それ以外にも2~3%がHTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺症まひ(HAM/TSP:HTLV-I associated myelopathy/ tropical spastic paraparesis)として知られる緩徐進行性神経疾患や種々の慢性炎症性疾患を発症する(非特許文献3)。HTLV-I感染者の大多数は、その生涯にわたって無症候性キャリアの状態にある。
【0003】
ATLは予後が非常に悪いことを特徴とするが、これは主としてATLには抗癌剤への薬剤耐性が本質的に備わっているためである。自己造血幹細胞移植では果たせなかったATLの予後改善が、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT:Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation)では認められたと報告されている(非特許文献4及び5)。血縁者を含む他人の幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植の場合、患者のがん細胞を根絶やしにすると同時に、患者自身の免疫力を弱め、ドナー細胞を患者骨髄に生着させやくする目的で、移植前に大量抗がん剤投与や全身放射線照射を行い、患者の骨髄細胞を極限まで減らす前処置が従来行われていた。しかし近年、移植後に患者体内で増えるドナーリンパ球が、前処置によっても殺されずに残った患者がん細胞を非自己の異物として攻撃することで、やがては完治に導かれる移植片対白血病効果(GVL効果)が知られるようになると、前処置として従来用いられていた抗がん剤や放射線の量を減らす(minimize)代わりに、ドナー造血幹細胞を生着させる為の免疫抑制剤を用いる緩和的前処置(RIC:reduced intensity conditioning)が行われるようになった。緩和的前処置による同種造血幹細胞移植は、ミニ移植、あるいは、骨髄非破壊的移植とも呼ばれ、今まで同種造血幹細胞移植を受けられなかった高齢者、臓器障害のある患者にも適応可能な治療法として、広く認められつつある。
【0004】
ATL allo-HSCT研究グループが以前に実施した臨床試験では、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植から3年以内の全生存率は36%だった(非特許文献6)。同種造血幹細胞移植後に完全寛解を得たATL患者の一部ではHTLV-Iプロウイルスが検出されなくなり、かかる未検出の状態が継続したが、これにより同種造血幹細胞移植がATLの有効な治療であることが示唆された(非特許文献6~8)。これらの研究に関連して、本発明者らは、同種造血幹細胞移植後に完全寛解を得たATL患者の一部で、ドナー由来のHTLV-ITax特異的CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL:cytotoxic T lymphocyte)が誘導されたことを報告し(非特許文献9)、ヒトHLA-A24に拘束されるHTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド(Tax特異的CTLのエピトープ)を見いだしている(特許文献1)。前述のCTLは、自己HTLV-I感染T細胞をインビトロで溶解させることができた。このことから、CTLが移植片対白血病効果に寄与する可能性が示唆された。また、本発明者らは、ヒトHLA-A11に拘束されるHTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド(Tax特異的CTLのエピトープ)も見いだしている(特許文献2)。一般にCD8T細胞、特にCTLは、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)等が関与する種々の感染症においてウイルス複製の制御に重要な役割を果たしている。HTLV-I感染では、HTLV-I特異的CD8T細胞がTax抗原(pX遺伝子産物)をプレドミナントに認識し、感染細胞の制御に寄与すると考えられている(非特許文献10及び11)。HAM/TSP患者及び一部の無症候性キャリア(AC:asymptomatic carrier)では、機能的なTax特異的CD8T細胞が高頻度で検出できたが、ATL患者の大多数及びACの小集団では、Tax特異的CD8T細胞応答が著しく低減していた(非特許文献12及び13)。これらの患者でHTLV-I特異的CD8T細胞応答が抑制される機構についてはまだ十分には解明されていない。
【0005】
ウイルス特異的CTLを誘導及び維持するため、多くのウイルス感染症においてウイルス特異的CD4ヘルパーT細胞応答が必要であるが(非特許文献14~18)、HTLV-I特異的ヘルパーT細胞応答についての報告は数少なかった(非特許文献19~22)。これは恐らくHTLV-I特異的ヘルパーT細胞がインビボ及びインビトロでHTLV-I感染に対して感受性であり(非特許文献23)、感染細胞は培養後数時間でHTLV-I抗原を産生してしまう(非特許文献24及び25)ためと考えられる。他方、HAM/TSP患者では、IFN-γ及び腫瘍壊死因子(TNF)-α等の炎症性神経毒性サイトカインの自然産生を伴う初期進行性の炎症性脊髄損傷部位(非特許文献26)でCD4T細胞がプレドミナントに認められ(非特許文献27~28)、これがHAM/TSPの発症に関与することが示唆される。しかし、HTLV-I感染におけるHTLV-I特異的CD4T細胞の正確な役割は未だ解明されていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2004/092373号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/035681号パンフレット
【0007】

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【非特許文献2】Poiesz BJ, Ruscetti FW, Gazdar AF, Bunn PA, Minna JD, Gallo RC. Detection and isolation of type C retrovirus particles from fresh and cultured lymphocytes of a patient with cutaneous T-cell lymphoma. Proc Natl Acad Sci U S A. 1980;77(12):7415-7419.
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【非特許文献25】Sakai JA, Nagai M, Brennan MB, Mora CA, Jacobson S. In vitro spontaneous lymphoproliferation in patients with human T-cell lymphotropic virus type I-associated neurologic disease: predominant expansion of CD8+ T cells. Blood. 2001;98(5):1506-1511.
【非特許文献26】Umehara F, Izumo S, Ronquillo AT, Matsumuro K, Sato E, Osame M. Cytokine expression in the spinal cord lesions in HTLV-I-associated myelopathy. J Neuropathol Exp Neurol. 1994;53(1):72-77.
【非特許文献27】Umehara F, Izumo S, Nakagawa M, et al. Immunocytochemical analysis of the cellular infiltrate in the spinal cord lesions in HTLV-I-associated myelopathy. J Neuropathol Exp Neurol. 1993;52(4):424-430.
【非特許文献28】Iwasaki Y, Ohara Y, Kobayashi I, Akizuki S. Infiltration of helper/inducer T lymphocytes heralds central nervous system damage in human T-cell leukemia virus infection. Am J Pathol. 1992;140(5):1003-1008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
背景技術にも記載したように、HTLV-Iに特異的なCD8T細胞(CTL)を誘導する活性を有するペプチドはこれまでにいくつか見いだされており、HTLV-I特異的CTL誘導用ワクチンとしての実用化が期待されている。しかし、ウイルス特異的CTLを誘導及び維持するためには、多くのウイルス感染症においてウイルス特異的CD4ヘルパーT細胞応答が必要であるとされているため、より優れたワクチン開発などのためには、HTLV-Iに特異的なCD4T細胞を誘導する活性を有するペプチドが必要となる。しかし、HTLV-I感染はHTLV-I特異的CD4T細胞で優先的に生じることなどから、かかるCD4T細胞についての解析はあまり進んでおらず、HTLV-Iに特異的なCD4T細胞を誘導する活性を有するペプチドはこれまでに見いだされていなかった。
【0009】
本発明の課題は、HTLV-Iに特異的なCD4T細胞を誘導する活性を有するHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドや、該ペプチドを含有するHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤や、これらを利用したHTLV-I特異的免疫応答誘導用ワクチン並びに免疫機能検査診断薬等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の背景技術の状況下で鋭意研究を行った結果、以下の(a)~(c)などの知見を見いだし、本発明を完成するにいたった。
(a)緩和的前処置による同種造血幹細胞移植前のATL患者に由来するHTLV-I感染T細胞に対する、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植後の同じ患者の細胞性免疫応答を調査したところ、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植後のATL患者において、Tax特異的なCD4T細胞応答及びCD8T細胞応答がいずれも誘導されていること。
(b)ヒトHLA-DRB10101(以下、本明細書において「HLA-DR1」とも表示する。)に拘束されるTax特異的CD4T細胞の最小エピトープ、すなわち、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドを特定したこと。
(c)かかるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドと、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドとを併用したところ、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド単独で用いた場合と比較して、HTLV-I特異的CTLが顕著に増殖したこと。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)以下の(A)~(E)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド:
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列や、
(2)HLA-DR1に拘束されるTaxエピトープである上記(1)に記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドや、
(3)CD4T細胞がTh1型ヘルパーT細胞である上記(1)又は(2)に記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドや、
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドと、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合ペプチドや、
(5)HLA-DR1と上記(1)~(3)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体や、
(6)HLA-DR1と上記(1)~(3)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体の4量体や、
(7)上記(5)に記載のタンパク-ペプチド結合体又は上記(6)に記載のタンパク-ペプチド結合体の4量体と、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質に関する。
【0012】
また、本発明は、
(8)以下の(A)~(E)のいずれかのアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドを有効成分として含有する、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤:
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列や、
(9)プロモーターと、以下の(a)~(e)のいずれかに示されるポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとを含み、該ポリヌクレオチドがプロモーターの下流に作動可能に連結されている発現ベクターを有効成分として含有するHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤:
(a)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列:
(b)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列:
(c)前記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチド配列に対して80%以上の同一性を有するポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列:
(d)前記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチド配列において、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列:
(e)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列や、
(10)上記(8)又は(9)に記載のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有するHTLV-I特異的免疫応答誘導用ワクチンに関する。
【0013】
さらに、本発明は、
(11)以下の(A)~(E)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドを有効成分として含有する、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬:
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列や、
(12)HLA-DR1と上記(1)~(3)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体を有効成分として含有する、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬や、(13)HLA-DR1と上記(1)~(3)のいずれかに記載のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体の4量体を有効成分として含有する、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬に関する。
【0014】
また、本発明は、
(14)HSCT前のATL患者に由来するHTLV-I感染T細胞を用いて、同種のHLAタイプのドナー由来のHSCT後の同じ患者のPBMCを刺激することを特徴とするHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法や、
(15)上記(8)又は(9)に記載のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤を用いて、HLA-DR1陽性のATL患者のPBMCを刺激することを特徴とするHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法や、
(16)HLA-DR1陽性のATL患者のPBMCを、以下の(X)及び(Y)を用いて刺激することを特徴とする、HTLV-I特異的CD4T細胞応答及びHTLV-I特異的CTL応答を含むHTLV-I特異的免疫応答を誘導する方法:
(X)上記(8)又は(9)に記載のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤:
(Y)前記ATL患者のHLA-A座の型に適合する、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチド:に関する。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明により、HLA-DR1に拘束されるTax特異的CD4T細胞の最小エピトープが見いだされた。かかるエピトープは、HTLV-Iに特異的なCD4T細胞を誘導する活性を有している。したがって、かかるエピトープペプチドは、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドとして有用である。
(2)現在では、それぞれのHLAについて親和性のあるアミノ酸アンカーモチーフからエピトープをある程度は予測可能である。しかしながら、生体内の病原体に対する宿主の免疫反応は必ずしもこの予測と一致しない。本発明により同定されたエピトープは感染個体から得られたものであり、しかも他のエピトープよりも非常に強い選択性を持って認識されている。
(3)本発明者らはこれまでにTax特異的CTLエピトープを見いだし、かかるエピトープペプチドがHTLV-I特異的CTL誘導活性を有すること、及び、HTLV-I認識CTL誘導用ワクチンとして用い得ることを見いだしている。本発明者らが今回見いだしたHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドを、前述のHTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドと併用したところ、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド単独で用いた場合と比較して、HTLV-I特異的CTLが顕著に誘導された。したがって、本発明のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドは、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤などとしても有用である。
(4)本発明のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドや、HLA-DR1と本発明のペプチドとが結合したタンパク質-ペプチド結合体や、該タンパク-ペプチド結合体の4量体は、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬としても有用である。かかる免疫機能検査診断薬を用いて、ATL患者やHAM/TSP患者などのHTLV-I感染者におけるTax特異的CD4T細胞応答を観察することにより、ATLに対する新規のペプチドワクチンストラテジーの開発や、ATLの進行又は再発の防止ストラテジーの開発や、HAM/TSPの病態解明などに有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】緩和的前処置による同種造血幹細胞移植後のATL患者におけるTax特異的なT細胞の免疫応答を示す図である。(A~B)緩和的前処置による同種造血幹細胞移植後180日目におけるATL患者18名から得たPBMC(A)又は緩和的前処置による同種造血幹細胞移植後540日目の患者2名(#350及び#341)から得た全PBMC及びCD8細胞枯渇PBMC(B)を、GSTタンパク質非存在下(白抜き)、GSTタンパク質存在下(グレー)、又はGST-Taxタンパク質存在下(黒)で4日間培養し、上清中のIFN-γ濃度をELISAで定量した。(A)の横点線は、検出限界(23.5pg/ml)を示す。誤差範囲は、二重測定値の標準偏差を表す。(P<0.05)
【図2】患者#350から作製したCD4T細胞株(T4)の表現型及び機能を示す図である。(A)T4細胞の細胞表面における表現型をフローサイトメトリーにより解析した。(B)LCL-#350(レーン1)、T4細胞(レーン2)、ILT-#350(レーン3)及びMT-2(レーン4)から全RNAを抽出した。各細胞型のTax mRNA発現をRT-PCRにより分析した。GAPDHを内部標準として使用した。(C)ホルムアルデヒドで固定したILT-#350細胞又はLCL-#350細胞の存在/非存在下で、T4細胞を24時間刺激した。上清中のサイトカイン濃度は、サイトメトリービーズアレイシステムにより定量した。
【図3】樹立したT4細胞に認識される優位なTax由来エピトープの同定過程を示す図である。(A)GST、GST-Tax-A、GST-Tax-B、GST-Tax-C、又はGST-Tax-A、-B及び-Cの混合物(GST-TaxABC)でドナー由来LCL-#350を24時間ペプチド刺激し、その後、レスポンダー細胞/刺激細胞(R/S)比3にて、T4細胞との共培養を24時間行った。T4細胞のIFN-γ産生量をELISAで定量した。(B、C)Tax-B領域中の25mer(B)又は15mer(C)のオーバーラッピング合成ペプチド(10μg/ml)を用いてLCL-#350を1時間ペプチド刺激し、レスポンダー細胞(T4)/刺激細胞(LCL-#350)の、R/S比率3にて共培養を6時間行い、上清中のIFN-γをELISAで測定した。(B)ホルムアルデヒドで固定したILTは、ポジティブコントロールの刺激細胞として用いた。(D、E)12~25merのオーバーラッピング合成ペプチド(100ng/ml)を用い、(B、C)同様に、T4細胞のIFN-γ産生能を調べた。(F)各濃度の13~15merペプチドに対するT4細胞のIFN-γ産生を、(B、C)同様に測定した。各図、3回繰り返した実験のうちの1例を代表として示す。誤差範囲は、三重測定値の標準偏差を表す。統計的有意差は、独立t検定で解析した。「ns」は有意差のないことを示す。
【図4】樹立したT4細胞に認識されるTax155-167のHLA-DRB10101拘束性を示す図である。(A)ブロッキング抗体(10μg/mlの抗ヒトHLA-DR抗体、抗ヒトHLA-DQ抗体、抗HLA-クラスI抗体又はアイソタイプ対照抗体)の存在/非存在下で、T4細胞とILT-#350との共培養を6時間行い、培養上清中に放出されたT4細胞の産生するIFN-γを、ELISAにより定量した。(B)Tax155-167ペプチド刺激有り(黒)またはペプチド刺激無し(白抜き)の条件で1時間パルスした各LCL(#350;自己、#307 #341 Kan;同種)と、T4細胞(#350由来)を6時間共培養した。各LCL株のHLA-DR対立遺伝子を括弧内に示す。T4細胞のIFN-γ産生量をELISAで測定した。誤差範囲は、三重測定値の標準偏差を示す。統計的有意差は、独立t検定で解析した。(C)Taxの155~167残基からなるアミノ酸配列には、HLA-DRB10101の推定アンカーモチーフが含まれていた。
【図5】CTL誘導エピトープとTax155-167ペプチドとの共刺激によるTax特異的CD8T細胞の増殖亢進を示す図である。緩和的前処置による同種造血幹細胞移植を受け、Major Histocompatibility Complex(MHC)クラスIとクラスIIがそれぞれ、HLA-A24/HLA-DRB10101であるATL患者(#350、#364及び#341)から得たPBMCを、100nMのCTLエピトープ(Tax301-309)単独、Tax301-309ペプチド(100nM)とTax155-167ペプチド(100nM)の混合物、又は、DMSOのみ(ネガティブコントロール)の存在下で、13日間培養した。データは、CD3CD8T細胞に占めるHLA-A2402/Tax301-309テトラマー陽性細胞の割合(%)を示す。
【図6】HLA-DRB10101HTLV-I感染者検体中のTax155-167特異的CD4T細胞の検出を示す図である。(A)緩和的前処置による同種造血幹細胞移植を受けたATL患者2名(#350及び#364)及びHLA-DRB10101血清反応陰性ドナー(#365)由来の検体を用い、新鮮PBMCと、Tax155-167ペプチド(100nM)存在下で13~14日間培養したPBMCとにおいて、HLA-DRB10101/Tax155-167テトラマーに結合するCD4T細胞の頻度を分析した。データは、CD3CD4T細胞に占めるテトラマー陽性細胞の割合(%)を示す。(B)無症候性キャリア#310及びHTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺患者#294から得た新鮮PBMCにおけるHLA-DRB10101/Tax155-167テトラマーに結合するCD4T細胞の頻度を分析した。データは、CD3CD4T細胞に占めるテトラマー陽性細胞の割合(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド、すなわち、HTLV-Iに特異的なCD4T細胞を誘導する活性を有するペプチドとしては、以下の(A)~(E)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド(以下、「本発明のペプチド」とも表示する。)であれば特に制限されるものではない。
(A)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列:
(B)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列:
(C)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(D)前記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列:
(E)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列:

【0018】
上記(A)に列挙されている配列番号のアミノ酸配列はいずれも、HLA-DRB10101拘束性Tax特異的CD4T細胞エピトープであり、配列番号4はHTLV-IのTaxの154番目から178番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax154-178)であり、配列番号10はHTLV-IのTaxの151番目から165番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax151-165)であり、配列番号11はHTLV-IのTaxの154番目から168番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax154-168)であり、配列番号12はHTLV-IのTaxの155番目から169番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax155-169)であり、配列番号13はHTLV-IのTaxの156番目から170番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax156-170)であり、配列番号16はHTLV-IのTaxの155番目から168番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax155-168)であり、配列番号17はHTLV-IのTaxの155番目から167番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax155-167)であり、配列番号19はHTLV-IのTaxの151番目から178番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列(Tax151-178)である。これらのアミノ酸配列からなるペプチドは、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性に優れている点で、本発明のペプチドの中でも好適に例示することができ、中でも、配列番号11(Tax154-168)、配列番号12(Tax155-169)、配列番号16(Tax155-168)、配列番号17(Tax155-167)、配列番号4(Tax154-178)、配列番号13(Tax156-170)を好適に例示することができ、中でも、配列番号11(Tax154-168)、配列番号12(Tax155-169)、配列番号16(Tax155-168)、配列番号17(Tax155-167)をより好適に例示することができ、HLA-HLA-DR1拘束性Tax特異的CD4T細胞エピトープの最小エピトープ(以下、単に「最小エピトープ」とも表示する。)である点で配列番号17(Tax155-167)を特に好適に例示することができる。なお、HTLV-I特異的CD4T細胞の好適な誘導を得る観点から、本発明のHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドは、HLA-HLA-DRB1のタイプがHLA-DRB10101である対象に用いることが好ましい。

【0019】
上記(B)のアミノ酸配列は、Taxのアミノ酸配列(配列番号32)おける連続する14~30個、好ましくは14~25個、より好ましくは14~20個、さらに好ましくは14~15個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列である。かかるアミノ酸配列は最小エピトープを含んでいるため、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドである。

【0020】
上記(C)のアミノ酸配列は、上記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上さらにより好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列である。かかるアミノ酸配列は、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドである蓋然性が高い。

【0021】
上記(D)のアミノ酸配列は、上記(A)又は(B)に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるペプチドがHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するアミノ酸配列である。ここで、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」とは、例えば1~20個、好ましくは1~15個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個の任意の数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を意味し、アミノ酸の「置換、欠失若しくは付加」の程度及びそれらの位置などは、改変されたペプチドが、上記(A)に列挙されているアミノ酸配列からなるペプチドと同様にHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有する同効物であれば特に制限されず、アミノ酸配列の改変(変異)は、例えば突然変異や翻訳後の修飾などにより生じることもあるが、人為的に改変することもできる。本発明においては、このような改変・変異の原因及び手段などを問わず、上記特性を有する全ての改変ペプチドを包含する。

【0022】
上記(E)のアミノ酸配列は、配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列である。上記(E)のアミノ酸配列における連続する14~30個のアミノ酸の個数としては、好ましくは18~30個、より好ましくは22~30個であることを好適に例示することができる。

【0023】
本明細書における「HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド」としては、HTLV-Iに特異的なCTLを誘導する活性を有するペプチドである限り特に制限されず、中でも、Tax特異的なCTL誘導活性ペプチドを好適に例示することができ、中でも、HLA-A2402拘束性CTLエピトープであるTax301-309(配列番号34)(特許文献1参照)などを特に好適に例示することができる。近年、ヘルパーT細胞であるCD4T細胞に対する癌抗原エピトープと、CTLであるCD8T細胞に対する癌抗原エピトープを結合させた融合ペプチド(Helper/Killer-Hybrid Epitope Long Peptide)を被験対象に投与することによって、被験対象の癌細胞に対する免疫を効果的に高めることが知られている(例えばCancer Science (2012) 103, 150-153など)。本願発明においても、上記Eのアミノ酸配列のペプチドを用いることによって、HTLV-I特異的CD4T細胞と共に、HTLV-I特異的CTLを誘導し、HTLV-Iに対する免疫を効果的に高めることができると考えられる。

【0024】
なお、本明細書におけるCD4T細胞としては、ヘルパーT細胞を好適に例示することができ、中でもTh1型ヘルパーT細胞をより好適に例示することができる。

【0025】
本発明のペプチドは、化学的又は遺伝子工学的手法により製造することができる。化学的方法には、通常の液相法及び固相法によるペプチド合成法が包含される。かかるペプチド合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていくステップワイズエロゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包含する。本発明のペプチドの合成は、そのいずれによることもできる。

【0026】
上記ペプチド合成に採用される縮合法も、公知の各種方法に従うことができる。その具体例としては、例えばアジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシサクシンアミド、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド等)、ウッドワード法等を例示できる。これら各方法に利用できる溶媒もこの種ペプチド縮合反応に使用されることがよく知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。

【0027】
なお、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸及至ペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第三級ブチルエステル等の低級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p-メトキシベンジルエステル、p-ニトロベンジルエステルアラルキルエステル等として保護することができる。また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばTyrの水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第三級ブチル基等で保護されてもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要はない。更に例えばArgのグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、2-メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン-2-スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の適当な保護基により保護することができる。上記保護基を有するアミノ酸、ペプチド及び最終的に得られる本発明のペプチドにおけるこれら保護基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸等を用いる方法等に従って、実施することができる。

【0028】
本発明のペプチドは、上記のように化学合成により得られる他、遺伝子工学的手法を用いて常法により製造することもできる。このようにして得られた本発明のペプチドは、通常の方法に従って、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、向流分配法等のペプチド化学の分野で汎用されている方法に従って、適宜その精製を行うことができる。

【0029】
本発明の融合ペプチドとしては、本発明のペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合しているものであればどのようなものでもよく、マーカータンパク質としては、従来知られているマーカータンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、アルカリフォスファターゼ、抗体のFc領域、HRP、GFPなどを具体的に挙げることができ、またペプチドタグとしては、HA、FLAG、Myc等のエピトープタグや、GST、マルトース結合タンパク質、ビオチン化ペプチド、オリゴヒスチジン等の親和性タグなどの従来知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。かかる融合ペプチドは、常法により作製することができ、Ni-NTAとHisタグの親和性を利用した本発明のペプチドの精製や、本発明のペプチドの検出や、本発明のペプチドに対する抗体の定量や、その他当該分野の研究用試薬としても有用である。

【0030】
本発明のタンパク-ペプチド結合体としては、HLA-DR1と本発明のペプチドとの結合体であれば特に制限されるものではなく、例えばHLA-DR1分子と、上記(A)~(E)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドとの結合体など、かかる結合体を認識するCD4T細胞に結合できる形態のものが好ましい。また、本発明のタンパク-ペプチド結合体の4量体としては、HLA-DR1と本発明のペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体の4量体であれば特に制限されるものではなく、上記タンパク-ペプチド結合体を、ストレプトアビジンを核として4量体(テトラマー)としたものを例示することができ、例えばHLA-DR1のC末端に酵素Bir-Aの基質を発現させておき、Bir-A-dependent biotinilation法でビオチン化したHLA-DR1と、フィコエリトリン(PE)標識脱グリコシル化アビジンを4:1で混合することにより得ることができる(Altman, J.D., et al.: Science 274, 94-96, 1996)。これらタンパク-ペプチド結合体及びその4量体は、化学合成された本発明のペプチドと、HLA-DR1遺伝子(GenBank アクセッションナンバーAF142457)を利用した遺伝子工学的手法を用いて常法により作製したHLA-DR1のα鎖及びβ鎖とを、リフォールディングバッファー中、インビトロで結合させることにより、あるいは本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドとHLA-DR1遺伝子とをそれぞれ利用した遺伝子工学的手法を用いて常法により本発明のペプチドとHLA-DR1のα鎖及びβ鎖とを同一宿主細胞内で共発現させ、精製後にこれらを結合させることにより作製することができる。

【0031】
本発明の融合タンパク質としては、上記タンパク-ペプチド結合体又はタンパク-ペプチド結合体の4量体とマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合しているものであればどのようなものでもよく、マーカータンパク質としては、従来知られているマーカータンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、蛍光色素、アルカリフォスファターゼ、抗体のFc領域、HRP、GFPなどを具体的に挙げることができ、またペプチドタグとしては、HA、FLAG、Myc等のエピトープタグや、GST、マルトース結合タンパク質、ビオチン化ペプチド、オリゴヒスチジン等の親和性タグなどの従来知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。かかる融合タンパク質は、常法により作製することができ、Ni-NTAとHisタグの親和性を利用したタンパク-ペプチド結合体の精製や、HTLV-I特異的CD4T細胞の検出や、その他当該分野の研究用試薬としても有用である。

【0032】
本発明のペプチドに特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体を具体的に挙げることができ、これらは上記本発明のペプチドを抗原として用いて常法により作製することができるが、その中でもモノクローナル抗体がその特異性の点でより好ましい。かかるモノクローナル抗体等の本発明のペプチドに特異的に結合する抗体は、例えば、ATLやHAM/TSPなどの診断に有用であるばかりでなく、本発明のペプチドのHTLV-I特異的CD4T細胞誘導の活性機構や分子機構を明らかにする上で有用である。

【0033】
本発明のペプチドに対する抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に、本発明のペプチド、該本発明のペプチドと免疫原性を有するタンパク質との複合体、該本発明のペプチドを膜表面に提示した細胞等を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV-ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc., 1985)など任意の方法を用いることができる。

【0034】
また、本発明のポリヌクレオチドは、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドをコードするポリヌクレオチド、すなわち、以下の(a)~(d)のいずれかに示されるポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド(以下、「本発明のポリヌクレオチド」とも表示する。)であれば特に制限されるものではない。
(a)配列番号4、10、11、12、13、16、17、19のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列:
(b)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列:
(c)前記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチド配列に対して80%以上の同一性を有するポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列:
(d)前記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチド配列において、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列:
(e)配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列:

【0035】
上記(a)のポリヌクレオチド配列は、列挙されているいずれかのアミノ酸配列をコードしている限り特に制限されないが、配列番号4に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列として配列番号24に示されるポリヌクレオチド配列を好適に例示することができ、配列番号10に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列として配列番号25に示されるポリヌクレオチド配列を好適に例示することができ、配列番号11に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列として配列番号26に示されるポリヌクレオチド配列を好適に例示することができ、配列番号12に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列として配列番号27に示されるポリヌクレオチド配列を好適に例示することができ、配列番号13に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列として配列番号28に示されるポリヌクレオチド配列を好適に例示することができ、配列番号16に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列として配列番号29に示されるポリヌクレオチド配列を好適に例示することができ、配列番号17に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列として配列番号30に示されるポリヌクレオチド配列を好適に例示することができる。

【0036】
上記(b)のポリヌクレオチド配列は、配列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列である。かかるポリヌクレオチド配列は、前述のアミノ酸配列をコードしている限り特に制限されないが、配列番号33に示すTaxのポリヌクレオチド配列において、前述のアミノ酸配列に対応する部分のポリヌクレオチド配列を好適に例示することができる。かかるポリヌクレオチド配列は、Tax全体のアミノ酸配列を示す配列番号32と、Tax全体のポリヌクレオチド配列を示す配列番号33を比較することにより、把握することができる。

【0037】
上記(c)のポリヌクレオチド配列は、上記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチド配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上さらにより好ましくは98%以上の同一性を有するポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。

【0038】
上記(d)のポリヌクレオチド配列は、上記(a)又は(b)に示されるポリヌクレオチドにおいて、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列であって、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。ここで、「1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列」とは、例えば1~20個、好ましくは1~15個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個の任意の数のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチド配列を意味し、ヌクレオチドの「置換、欠失若しくは付加」の程度及びそれらの位置などは、改変されたポリヌクレオチド配列がコードするペプチドが、上記(A)に列挙されているアミノ酸配列からなるペプチドと同様にHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性を有する同効物であれば特に制限されず、かかるヌクレオチドの改変(変異)は、例えば突然変異や翻訳後の修飾などにより生じることもあるが、人為的に改変することもできる。本発明においては、このような改変・変異の原因及び手段などを問わず、上記特性を有する全ての改変ポリヌクレオチド配列を包含する。

【0039】
上記(e)のポリヌクレオチド配列は、列番号32に示されるアミノ酸配列おける連続する14~30個のアミノ酸からなるアミノ酸配列であって、少なくともアミノ酸番号155から167までのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドのアミノ酸配列とを結合させたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列である。かかる(e)のポリヌクレオチド配列は、上記(E)のアミノ酸配列に対応するポリヌクレオチド配列である。

【0040】
また、本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子工学的手法を用いた常法により本発明のペプチドを作製するときに有利に用いることができる他、特に本発明のポリヌクレオチドのアンチセンス鎖は、ATL等のHTLV-I腫瘍の診断用プローブとして有用である。

【0041】
本発明のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤あるいはHTLV-I特異的CTL誘導作用増強用組成物(好ましくは医薬組成物)としては、「上記(A)~(E)のいずれかのアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド」や、「プロモーターと、以下の(a)~(e)のいずれかに示されるポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとを含み、該ポリヌクレオチドがプロモーターの下流に作動可能に連結されている発現ベクター」を有効成分として含有していれば特に制限されるものではない。

【0042】
かかる本発明のペプチドや、かかる本発明の発現ベクターから発現する本発明のペプチドは、HTLV-I特異的CD4T細胞を誘導し、かかるCD4T細胞が、HTLV-I特異的CTL誘導作用を増強する。本明細書において「HTLV-I特異的CTL誘導作用を増強する」ものとは、HTLV-I特異的CD4T細胞の誘導を介して、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド(HTLV-I特異的なCTLを誘導する活性を有するペプチド)が発揮するHTLV-I特異的CTL誘導作用を増強する能力を有しているものを意味する。HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドが発揮するHTLV-I特異的CTL誘導作用を増強する能力をある物質が有するか否かは、例えば、その物質とHTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドとを併用した場合に、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド単独で用いた場合と比較して、HTLV-I特異的CTLがより顕著に誘導されるかどうかを調べることによって容易に確認することができる。併用した場合にHTLV-I特異的CTLがより顕著に誘導されれば、その物質はHTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドが発揮するHTLV-I特異的CTL誘導作用を増強する能力をある物質が有するといえる。

【0043】
上記発現ベクターとしては、プロモーターと、上記の(a)~(e)のいずれかに示されるポリヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとを含み、該ポリヌクレオチドがプロモーターの下流に作動可能に連結されている発現ベクターであればどのようなものでもよく、大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミド(例えばpET28、pGEX4T、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、及び他のプラスミドDNA)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5、及び他のプラスミドDNA)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEp24、YCp50、及び他のプラスミドDNA)、λファージ(λgt11、λZAP等)、哺乳動物用プラスミド(pCMV、pSV40)、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどの動物ウイルスベクター、バキュロウイルスベクターなどの昆虫ウイルスベクター等)、植物用ベクター(バイナリベクターpBI系等)、コスミドベクターなどを用いることができる。

【0044】
上記プロモーターとしては特に制限されず、宿主に応じて適するプロモーターを選択すればよく、また当該技術分野で公知の構成的プロモーター、誘導性プロモーターのいずれを用いてもよい。プロモーターとして具体的には、CMVプロモーター、SV40プロモーター、CAGプロモーター、シナプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、CaMVプロモーター、解糖系酵素プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、GAPDHプロモーター、GAL1プロモーター、PH05プロモーター、PGKプロモーターなどを挙げることができる。また、上記発現ベクターは、目的ポリヌクレオチドの下流にターミネーターをさらに含んでいてもよい。

【0045】
上記の「ポリヌクレオチドがプロモーターの下流に作動可能に連結されている」とは、プロモーターがそのポリヌクレオチド配列の転写を開始することができるように、プロモーターと該ポリヌクレオチドが機能的に結合されていることを意味する。

【0046】
上記発現ベクターを用いて本発明のペプチドを発現させる場合に用いる宿主細胞としては、該発現ベクターが本発明のペプチドを発現し得る宿主細胞であればどのようなものでもよく、例えば大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス等の細菌原核細胞や、酵母、アスペルギルス等の真核細胞や、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9等の昆虫細胞や、L細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、C127細胞、BALB/c3T3細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼやチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)、BHK21細胞、HEK293細胞、Bowesメラノーマ細胞、卵母細胞等の動植物細胞などを挙げることができる。また、本発明のペプチドを発現することができる発現ベクターの宿主細胞への導入は、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング (scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、感染等により行うことができる。

【0047】
本発明のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤あるいはHTLV-I特異的CTL誘導作用増強用組成物(好ましくは医薬組成物)に含まれる本発明のペプチドや上記発現ベクター以外の任意成分として、例えば、医薬的に容認可能な担体又は希釈剤、免疫賦活剤、添加剤等を含んでいてもよく、かかる担体又は希釈剤としては、例えば、SPGAなどの安定化剤や、ソルビトール、マンニトール、澱粉、スクロース、グルコース、デキストラン等の炭水化物や、アルブミン、カゼイン等のタンパク質や、ウシ血清、スキムミルク等のタンパク質含有物質や、リン酸緩衝液、生理食塩水、水等の緩衝液などを具体的に挙げることができる。免疫賦活剤としては、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-12(IL-12)、腫瘍壊死因子α(THF-α)等のサイトカインを具体的に例示することができ、添加剤としては、低分子量のポリペプチド(約10残基未満)、タンパク質、アミノ酸、グルコース又はデキストランを含む炭水化物、EDTAなどのキレート剤、蛋白質安定化剤、微生物増殖阻止若しくは抑制剤等を例示することができるがこれらに限定されるものではない。

【0048】
また、本発明のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤あるいはHTLV-I特異的CTL誘導作用増強用組成物(好ましくは医薬組成物)は、経口、静脈内、腹腔内、鼻腔内、皮内、皮下、筋肉内等により投与することができる形態のものが好ましい。投与すべき有効量は、医薬品や医薬組成物の種類・組成、投与方法、患者の年齢や体重等を考慮して適宜決定することができ、これらを1日あたり1~数回投与することが好ましい。また、経口投与する場合、通常、製剤用担体と混合して調製した製剤の形で投与される。この際、製剤に用いることができる担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明のペプチドと反応しない物質が用いられる。また、剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等を具体的に例示することができ、これらの製剤は常法に従って調製され、特に液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形態とすることもできる。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明のペプチドを水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。またこれらの製剤は、治療上価値のある他の成分を含有していてもよい。

【0049】
本発明のHTLV-I特異的免疫応答誘導用ワクチンとしては、前述の本発明のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有していれば特に制限されるものではない。HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドについては前述したとおりである。かかるワクチンによれば、HTLV-I特異的CD4T細胞と、HTLV-I特異的CTLを共に誘導することができ、しかも、そのHTLV-I特異的CTLの誘導を顕著に行うことができる。本発明の免疫応答誘導用ワクチンはATL等のHTLV-I腫瘍の治療に用いることができる。なお、HTLV-I特異的CTLの好適な誘導を得る観点から、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドは投与対象のHLA-Aのタイプに適合したものを用いることが好ましい。また、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤として、上記(E)のアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド、又は、上記(e)のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含有する場合は、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいるため、別個に含める必要はない。本明細書において、「本発明のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤と、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する」ことには、上記(E)のアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドの態様や、上記(e)のポリヌクレオチドを含む発現ベクターの態様も便宜上含まれる。

【0050】
また、本発明の免疫応答誘導用ワクチンとしては、さらに細胞性の又は局所的な免疫を増強する種々のアジュバントを含むものがより好ましく、かかるアジュバントとしては、例えば、効率よくペプチド特異的なCD4T細胞やCTLを誘導することができる樹状細胞、CpGモチーフを含むISS-ODN(Immunostimulatory DNAsequences-oligodeoxynucleotide;Nat. Med. 3, 849-854, 1997)、細胞傷害性T細胞を刺激するQS21(Quil1aia saponaria、Cambridge Biotech,Worcester,MAより商業的に入手可能)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、油性エマルジョン、サポニン、ビタミンE溶解物等を具体的に挙げることができる。アジュバントを用いる場合、アジュバントとなる種々の菌体成分や毒素等と、前記本発明の本発明のペプチドとを連続してコードするポリヌクレオチドから作製した組換え融合タンパクあるいは組換え融合ペプチドとして用いることもできる。

【0051】
本発明の免疫機能検査診断薬としては、本発明のペプチド、本発明の発現ベクター、HLA-DR1と本発明のペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体、又は、該タンパク-ペプチド結合体の4量体を有効成分とし、免疫機能、特にHTLV-Iに対する免疫機能を検査・診断しうるものであれば特に制限されるものではないが、通常は、本発明のペプチドの標識体、発現産物が標識体となる本発明のペプチドを発現させることができる発現ベクター、HLA-DR1と本発明のペプチドとが結合したタンパク-ペプチド結合体の標識体、又は該タンパク-ペプチド結合体の4量体の標識体を用いることが好ましい。標識体とするために用いられる標識化物質しては、上記のマーカータンパク質やペプチドタグの他、放射性同位元素を用いることができる。本発明の免疫機能検査診断薬としては、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬を好適に例示することができる。本発明の免疫機能検査診断薬を用いた免疫機能検査診断は、対象被験者の末梢血白血球(リンパ球)に本発明の免疫機能検査診断薬を接触させ、本発明のペプチド等におけるエピトープを認識するCD4T細胞と結合させることによりHTLV-I Tax特異的CD4T細胞を識別することができる。免疫機能検査診断薬の中でも、上記タンパク-ペプチド結合体の4量体のPE等の蛍光標識体はフローサトメトリーによるCD4T細胞の検出・定量を可能にするため、免疫機能検査診断薬の他、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導効果の判定に特に有用である。例えば、ヘパリン末梢血検体から単核球分画を分離し、PE標識テトラマー(タンパク-ペプチド結合体の4量体)と、FITCやPE-Cy5で標識したCD4抗体等の活性化マーカー抗体とで2重染色し、フローサイトメーターでCD4陽性テトラマー陽性の細胞数を計算することにより、対象被験者の免疫機能の検査・診断を行うことができる。また、新鮮血液検体ではテトラマー陽性細胞数が非常に少ないことがよくあることから、新鮮血液検体だけでなく、本発明のペプチドやその発現細胞などで一回刺激をした後、数日~1週間培養後に同様の染色解析をすることもできる。

【0052】
本発明のHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法としては、HSCT前のATL患者に由来するHTLV-I感染T細胞を用いて、同種のHLAタイプ、すなわちHLA-DR1タイプのドナー由来のHSCT後の同じ患者のPBMCをインビトロ、インビボ又はエクスビボで刺激することを特徴とする、HTLV-I特異的CD4T細胞を誘導する方法や、本発明のペプチドを用いて、HLA-DR1陽性のATL患者のPBMCをインビトロ、インビボ又はエクスビボで刺激することを特徴とするHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法や、上記本発明の発現ベクターを用いて、例えばPBMC中の抗原提示細胞に遺伝子工学的にペプチドを発現させるなど、HLA-DR1陽性のATL患者のPBMCをインビトロ、インビボ又はエクスビボで刺激することを特徴とするHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法であれば特に制限されるものではなく、かかる誘導方法により得られるHTLV-I特異的CD4T細胞は、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤として用いることができる他、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導の活性機構や分子機構を明らかにしたり、HTLV-I特異的CD4T細胞誘導とATLやHAM/TSPとの関連を調べる上でも有用である。

【0053】
本発明のHTLV-I特異的CD4T細胞応答及びHTLV-I特異的CTL応答を含むHTLV-I特異的免疫応答を誘導する方法としては、HLA-DR1陽性のATL患者のPBMCを、以下の(X)及び(Y)を用いて刺激することを特徴とする方法である限り特に制限されない。
(X)本発明のHTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤:
(Y)前記ATL患者のHLA-A座の型に適合する、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチド:

【0054】
なお、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤として、上記(E)のアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチド、又は、上記(e)のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分として含有する場合は、HTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチド又は該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいるため、別個に用意してそれでPBMCを刺激する必要はない。上記PBMCを、上記(X)及び(Y)を用いて刺激することには、上記(E)のアミノ酸配列からなるHTLV-I特異的CD4T細胞誘導活性ペプチドでPBMCを刺激することや、上記(e)のポリヌクレオチドを含む発現ベクターでPBMCを刺激することも便宜上含まれる。

【0055】
本発明の他の態様には、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強のための、本発明のペプチドの使用や、HTLV-I特異的免疫応答誘導のための、本発明のペプチド及びHTLV-I特異的CTL誘導活性ペプチドの使用や、本発明のHTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法により得られるHTLV-I特異的CD4T細胞を、哺乳動物に投与することを特徴とするATLの予防、治療又は改善方法や、本発明のHTLV-I特異的免疫応答を誘導する方法により得られるHTLV-I特異的CD4T細胞及びHTLV-I特異的CTLを哺乳動物に投与することを特徴とするATLの予防、治療又は改善方法なども含まれる。

【0056】
[参考例]
本発明者らは以前、HLA型が同じ兄弟姉妹をドナーとして緩和的前処置による同種造血幹細胞移植(ミニ移植)を受けたATL患者の一部でTax特異的CD8T細胞が誘導されたことを報告した(非特許文献9)。本発明では、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植を受けたATL患者多数におけるTax特異的T細胞応答を調べた。表1は、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植から180日後のATL患者18名から末梢血を採取し、Tax/HLAテトラマーを使用したフローサイトメトリーでTax特異的CD8T細胞(CTL)を検出した結果を臨床情報と併せて示している。前記期間中、全ての患者は、ドナー由来造血幹細胞が95%を上回るという完全なキメラ状態にあった。入手可能な4種類のテトラマー(HLA-A0201/Tax11-19,HLA-A2402/Tax301-309,HLA-A1101/Tax88-96,HLA-A1101/Tax272-280)を使用し、14名の患者でTax特異的CD8T細胞を認めた(後述の表1の「テトラマ-陽性細胞(%)」の項目を参照)。殆どの症例でドナーは未感染者だったことから(表1の「ドナー血清抗HTLV-I抗体反応の(-)を参照)、Tax特異的なドナー由来CD8T細胞がレシピエントにおいて誘導されたことは、HTLV-Iに対する新たな免疫応答がレシピエントに生じたことを示している。かかる証拠は本発明者らの以前の知見を補強するものである(非特許文献9や、Harashima N, Tanosaki R, Shimizu Y, et al. Identification of two new HLA-A*1101-restricted tax epitopes recognized by cytotoxic T lymphocytes in an adult T-cell leukemia patient after hematopoietic stem cell transplantation. J Virol. 2005;79(15):10088-10092)。

【0057】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0058】
A[方法と材料]
A-1 被験者
本実施例で用いた、ATL患者の検体は、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植を受けた18例、抗HTLV-I抗体血清反応陰性者1例(#365)、及びHLA-DRB10101を保有する抗HTLV-I抗体血清反応陽性ドナー2例(無症候性キャリア1例:#360、及びHTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺(HAM/TSP)患者1例:#294)から書面によるインフォームドコンセントを得た上で末梢血の提供を受けた。
【実施例1】
【0059】
【表1】
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【実施例1】
【0060】
上記表1中、「キメリズム(%)」は、患者由来T細胞キメリズム(移植細胞の生着率を示す)の割合を示し、「テトラマ-陽性細胞(%)」は、CD8陽性T細胞中のテトラマー陽性細胞(Tax抗原特異的CTL)の割合を示し、「感染細胞率」は、核酸定量的に割り出した、末梢血単核球(PBMC)1000あたりの感染細胞数を示し、「M」は男性を表し、「F」は女性を表し、「NT」は未検を表し、「r-PB」は血縁者間末梢血幹細胞移植を行ったことを示し、「ur—BM」は、非血縁者間骨髄細胞移植を行ったことを示す。
【実施例1】
【0061】
上記表1中のATL患者の約半数が、HLA-A-、B-及びDR-が一致する兄弟姉妹ドナーからの同種末梢血幹細胞移植を受けており、残りの半数は、HLA-A-、B-及びDR-が一致する抗HTLV-I抗体血清反応陰性の非血縁ドナーによる同種骨髄細胞移植を受けている(表1参照)。これらの患者は、日本の厚生労働省の支援による、ATL同種造血幹細胞移植研究グループが実施した臨床試験の参加者であり、本願実施例の実験を行うにあたって、東京医科歯科大学倫理審査委員会の承認を得ている。
【実施例1】
【0062】
A-2 患者及びドナー由来細胞株の樹立
Ficoll-Paque(登録商標)PLUS(GE Healthcare UK社製)を用いた密度勾配遠心分離法によりPBMCを単離し、Bambankerストック溶液(日本ジェネティクス株式会社製)中に懸濁したPBMCを、必要時まで液体窒素中に保存した。これらストック細胞の一部を使用して、IL-2依存性HTLV-I感染T細胞株(ILT)及びEpstein-Barrウイルス(EBV)形質転換リンパ芽球B細胞株(LCL)を樹立した。患者#350から、同種造血幹細胞移植前に得たPBMCの長期培養によって、自発的に不死化(がん化)したILT-#350を、20%ウシ胎仔血清(FCS;Sigma Aldrich社製)と組換えヒトインターロイキン-2(rhIL-2;塩野義製薬株式会社製)30U/mlを含むRPMI1640(Life Technologies, Inc.社製)で継代培養した。同種造血幹細胞移植後のATL患者#307、#341及び#350からそれぞれ得たPBMCより、LCL-#307、LCL-#341及びLCL-#350を樹立した。これらのPBMCを20%FCS含有RPMI1640で継代培養し、その後、EBVを含有するB95-8細胞株培養上清を用いて感染させた。同様に健常者由来のPBMCより、LCL-Kanを樹立した。
【実施例1】
【0063】
A-3 合成ペプチド
Tax抗原の中央領域(103~246残基)における、長さが12~25merのオーバーラッピングペプチドをScrum Inc.社から合計で18種類購入し(表2参照)、エピトープマッピングに使用した。HLA-A2402拘束性CTLエピトープ(Tax301-309)(配列番号34)(非特許文献9)は、Tax特異的CTL(株式会社ホクドー社製)のインビトロ・ペプチド刺激に使用した。
【実施例1】
【0064】
【表2】
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【実施例1】
【0065】
A-4 GST-Tax融合タンパク質を用いたイムノアッセイ
HTLV-IのTaxのN末端、中央、及びC末端の各領域におけるグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質(それぞれGST-Tax-A、-B及び-C)(非特許文献13、Kurihara K, Shimizu Y, Takamori A, et al. Human T-cell leukemia virus type-I (HTLV-I)-specific T-cell responses detected using three-divided glutathione-S-transferase (GST)-Tax fusion proteins. J Immunol Methods. 2006;313(1-2):61-73.)を使用し、HTLV-ITax特異的なT細胞の免疫応答を評価した。
【実施例1】
【0066】
<ELISA>
GST-Tax-A、-B及び-Cタンパク質の混合物(GST-TaxABC)の存在/非存在下(存在又は非存在下)において、PBMC(1×106細胞/ml)を、10%FCS含有RPMI1640(200μl)で培養した。4日後に上清を回収し、OptiEIA Human IFN-γ ELISA Kit(BD Biosciences社製)を用いて上清中のIFN-γ濃度を測定した。このアッセイにおけるIFN-γの最少検出量は、23.5pg/mlであった。
【実施例1】
【0067】
<サイトカイン定量測定>
Dynabeads M-450 CD8(インビトロゲン社製)を、製造者のプロトコールに従ったネガティブセレクション法により、上記培養PBMCからCD8細胞を除去した。HTLV-I特異的CD4T細胞株のサイトカインプロファイリングを行うため、ホルムアルデヒドで固定したILT-#350で上記分離細胞を48時間刺激した。培養上清を回収し、Cytokine Beads ArrayのヒトTh1/Th2/Th17サイトカインキット(BD Biosciecnes社製)を使用して種々のサイトカインを測定した。
【実施例1】
【0068】
A-5 HTLV-I特異的CD4+T細胞株(T4細胞)の誘導
緩和的前処置による同種造血幹細胞移植から180日目に完全寛解を得た、患者#350のPBMC(1×106細胞/ml)を、Tax301-309ペプチド(100nM)存在下で2週間培養した。培養PBMCは、次に、Human CD4 T lymphocyte Enrichment Set-DM(BD Biosciecnes社製)を用いたネガティブセレクションにより、CD4細胞が単離され、20%FCS及びrhIL-2(100U/ml)を含むRPMI1640で継代培養された。その後2~3週間毎に、ホルムアルデヒドで固定したILT-#350で単離CD4細胞を刺激した。
【実施例1】
【0069】
A-6 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
ISOGEN(株式会社ニッポンジーン社製)及びTURBO DNA-free(Life Technologies, Inc.社製)を用いて、細胞から全RNAを単離した。ReverTra Ace-α-kit(TOYOBO社製)に含まれるReverTra Aceプライマー及びOligo(dt)20プライマーを使用し、RNA0.5μgから第1鎖相補的DNA(cDNA)を調製した。ReverTra Dash(TOYOBO社製)、HTLV-IpX特異的プライマー(pX1:5'-CCA CTT CCC AGG GTT TAG ACA GAT CTT C-3'(配列番号20)及びpX4:5'-TTC CTT ATC CCT CGA CTC CCC TCC TTC CCC-3'(配列番号21))各0.5μM、及びcDNA2μlを含む反応混合液50μl中でPCRを行った。内部標準として、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)特異的プライマー(GAPDH5’:5'-ACC ACA GTC CAT GCC ATC AC-3'(配列番号22)、及びGAPDH3’:5'-TCC ACC ACC CTG TTG CTG TA-3'(配列番号23))を使用した。熱サイクル条件として、初期活性化ステップを94℃で1分間行い、その後、変性(98℃、10秒)、アニーリング(60℃、2分)及び伸長(74℃、30秒)からなるサイクルを30サイクル行った。2%(w/v)アガロースゲルで電気泳動を行った後、エチジウムブロマイドによりPCR産物を可視化した。
【実施例1】
【0070】
A-7 フローサイトメトリー
細胞表面染色には、以下の蛍光色素標識マウス抗ヒトモノクローナル抗体(mAb)を使用した。CD3-FITC(UCHT1、BioLegend社製);CD4-FITC(RPA-T4、BioLegend社製);CD8-FITC(RPA-T8、BioLegend社製)及びCD8-PE-Cy5(HIT8a、BD Biosciences社製)。テトラマー染色用に、フィコエリスリン(PE)で標識したHLA-A0201/Tax11-19、HLA-A1101/Tax88-96、HLA-A1101/Tax272-280、HLA-A2402/Tax301-309の各テトラマーをMBL社(Medical & Biological Laboratories Co. Ltd.、株式会社医学生物学研究所)から購入した。PE標識HLA-DRB10101/Tax155-167テトラマーはMBLに特別注文して新たに作製した。PE標識Tax/HLAテトラマーはCD3-FITCと、CD8-PE-Cy5またはCD4-PE-Cy5の組み合わせで、全血又は培養細胞を染色した。全血試料は赤血球を溶血させ、BD FACS溶解液(BD Biosciences社製)で固定してから洗浄した。FACS Calibur(Becton Dickinson社製)を用いて試料を分析し、データ解析には、FlowJoソフトウエア(Tree Star, Inc.社製)を用いた。
【実施例1】
【0071】
A-8 エピトープマッピング
T4細胞(3×105細胞/ml)は、種々の合成ペプチドおよび濃度条件下のもと37℃で1時間ペプチド刺激されたLCL-#350と、レスポンダー細胞(T4)/刺激細胞(LCL-#350)のR/S比率3にて、6時間共培養された。回収した培養上清を用いてELISAを行い、T4細胞が種々のペプチド特異的な刺激により産生したIFN-γを定量した。
【実施例1】
【0072】
A-9 HLAクラスII拘束性の解析
抗ヒトHLA-DR抗体(10μg/ml;L423、BioLegend社製)、抗ヒトHLA-DQ抗体(10μg/ml;SPVL3、Beckman Coulter, Inc.社製)又は抗HLA-ABC抗体(10μg/ml;W6/32、BioLegend社製)の存在/非存在下で、T4細胞(5×105細胞/ml)とILT-#350(1×105細胞/ml)との共培養を6時間行った。上清中のIFN-γをELISAで定量した。
T4細胞に対する抗原提示に関与するHLAクラスII分子を同定するため、種々のHLA型LCL(LCL-#350、LCL-#341、LCL-#307及びLCL-Kan)を用いて、Tax155-167ペプチド特異的なIFN-γ産生応答を評価した。これらのLCL(1×105細胞/ml)を100ng/mlのTax155-167ペプチドで1時間刺激し、2%ホルムアルデヒドで固定した後、T4細胞(3×105細胞/ml)の存在下で6時間培養した。培養上清を回収し、上清中のIFN-γをELISAで測定した。
【実施例1】
【0073】
A-10 増殖能の解析
100nMの抗原ペプチドの存在/非存在下で、PBMC(1.0×106細胞/ml)を13日間又は14日間培養した。HLA/Taxテトラマー-PE、CD3-FITC、CD8-PE-Cy5またはCD4-PE-Cy5の組み合わせで細胞を染色し、フローサイトメトリー分析を行った。
【実施例1】
【0074】
A-11 統計解析
統計的有意性は、Graphpad Prism 5(Graphpad Prism Software, Inc.社製)により、独立t検定を用いて評価した。全ての症例において、両側P値が0.05未満を有意とした。
【実施例1】
【0075】
B[結果および考察]
B-1 緩和的前処置による同種造血幹細胞移植後のATL患者におけるTax特異的なT細胞の免疫応答
Tax特異的T細胞応答を評価するために、GST-Tax融合タンパク質を用いたイムノアッセイ(上記A-4参照)を行った。GST-Tax融合タンパク質を用いた免疫学的機能測定法は、HLA型に関係なくCD4T細胞応答とCD8T細胞応答の両方について解析可能である。かかるアッセイの結果を図1に示す。図1Aの患者PBMC16例の結果から、IFN-γ産生を基準としたTaxタンパク質刺激に対する免疫応答の程度が、多様であることが明らかとなった。また、かかるアッセイにより、患者16名中11名(#239,#241,#301,#317,#341,#344,#350,#351,#352,#358,#364)、すなわち、68.8%もの患者のTax特異的T細胞応答を検出できることが分かった。更に、T細胞が産生するIFN-γのうち、Tax特異的CD4T細胞の寄与を明確にするため、CD8細胞枯渇PBMC(”CD8(-)”)と比べて解析したところ、全PBMC(”whole”)と比較してIFN-γ産生量は低下しているものの、#350および#341の2検体ともに、CD8細胞枯渇PBMCすなわちCD4を主とするT細胞が、Taxタンパク質刺激に応答して有意にIFN-γ産生を行っていることが示された(図1B)。
【実施例1】
【0076】
B-2 患者#350からのHTLV-I特異的CD4T細胞株の誘導
HTLV-I感染T細胞株(ILT-#350)を抗原提示細胞として使用し、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植後180日目の同患者#350PBMCから、HTLV-I特異的CD4T細胞を誘導した。単離したばかりの患者PBMCをTax301-309(HLA-A2402に提示されるCTL優位なエピトープ)で2週間ペプチド刺激することで、Tax特異的CTLを誘導し、患者PBMC中に元々存在していたHTLV-I感染細胞を除去した。次に、培養細胞からCD4細胞を単離し、ホルムアルデヒドで固定したILT-#350で2~3週間毎に刺激した。樹立した細胞株の細胞表面における表現型をフローサイトメトリー(上記A-7参照)により解析したところ、その細胞がCD3及びCD4を発現するもののCD8は発現しなかったことから(図2A)、CD4T細胞株であることが確認された。以下、これをT4細胞と呼ぶ。
【実施例1】
【0077】
HTLV-Iは、インビボとインビトロの両方でCD4T細胞を優先的に感染させることが知られる(非特許文献23)。RT-PCR(上記A-7参照)により、前述のT4細胞でのHTLV-I感染を調べたところ、pXで示される位置にバンドは確認されず(図2B)、HTLV-Iに感染していないHTLV-I特異的CD4T細胞であることが示された。なお、TaxはpX遺伝子産物であり、細胞中にTaxがないことはHTLV-Iに未感染であることを示す。また、EBウイルス形質転換B細胞株のLCL-#350は、ネガティブコントロールとして、HTLV-I感染T細胞株のILT-#350と、ATL細胞株のMT-2は、ポジティブコントロールとして使用した。
【実施例1】
【0078】
次に、T4細胞における様々なサイトカイン産生を調べるために、ホルムアルデヒドで固定したILT-#350細胞又はLCL-#350細胞の存在/非存在下で、T4細胞を24時間刺激し、その上清中のサイトカイン濃度をサイトメトリービーズアレイシステムにより定量した。その結果、T4細胞はILT-#350に応答してIFN-γ及びTNF-αを大量に産生し、IL-2、IL-4及びIL-10も低量だが産生したが、LCL-#350に対する産生は認められなかった(図2C)。従って、T4細胞がHTLV-I特異的であり、Th1型のCD4細胞株であることが示された。
【実施例1】
【0079】
B-3 T4細胞が認識する最小エピトープの決定
T4細胞に認識されるTaxタンパク質の抗原エピトープを調べるため、GST-Taxタンパク質で刺激したLCL-#350を抗原提示細胞として用い、それぞれのTaxペプチドに対する、T4細胞の応答性を調べた(上記A-4やA-8参照)。その結果を図3に示す。
【実施例1】
【0080】
T4細胞は、GST-TaxABC及びGST-TaxB(TaxB:配列番号32のアミノ酸番号113~237のアミノ酸配列)に対しては、GSTタンパク質(コントロール)と比べ、著しく高い値のIFN-γを産生したが、GST-TaxA(TaxA:配列番号32のアミノ酸番号1~127のアミノ酸配列)やGST-TaxC(TaxC:配列番号32のアミノ酸番号224~353のアミノ酸配列)に対しては、有意に高い産生はみられなかった(図3A)。このことは、T4細胞が、Taxタンパクの主に中央領域を、抗原として認識したことを示す。
【実施例1】
【0081】
次に、Taxの中央部(103~246残基)を領域とする、25merのオーバーラッピングペプチド8種類を合成し(配列番号1~8;上記A-3及び表2参照)、それらペプチドのT4細胞に対する刺激能を分析した。その結果、Tax154-178(配列番号4)でペプチド刺激した場合のみ、T4細胞株のIFN-γ産生は高い値を示した(図3B)。
【実施例1】
【0082】
次に、更にエピトープの領域を狭め、Taxの154~178残基の領域から、15merのオーバーラッピングペプチドを4種類作製し(配列番号10、13、14、15;上記A-3及び表2参照)、各エピトープペプチドに対するT4細胞のIFN-γ産生能を調べた。その結果、Tax151-165(配列番号10)及びTax156-170(配列番号13)は、Tax154~178(配列番号4)に匹敵する水準ではなかったものの、有意にT4細胞のIFN-γ産生を誘導した(図3C)。これらの結果から、T4細胞に認識されるエピトープが、Tax154-178のN末端側の半分に存在している可能性が示唆された。
【実施例1】
【0083】
そこで、Tax154-168(配列番号11)、Tax155-169(配列番号12)、Tax156-170(配列番号13)のエピトープペプチドを作製又は用意し(上記A-3及び表2参照)、同様に調べたところ、Tax156-170ではTax154~178と同程度のIFN-γ産生が認められ、Tax154-168やTax155-169ではTax156-170に対して有意に高いIFN-γ産生が誘導された。これらの結果から、最小エピトープが、Taxの155~168残基中に存在する可能性が示唆された(図3D)。
【実施例1】
【0084】
次に、T4細胞に認識される最小エピトープを同定するため、Taxの155残基から始まり、長さが12~14merのオーバーラッピングペプチドを3種類合成した(配列番号16~18;上記A-3及び表2参照)。Tax155-167では、Tax155-169及びTax155-168と同レベルのIFN-γ産生が誘導されたが、Tax155-166では同等のレベルに至らなかった(図3E)。
【実施例1】
【0085】
さらに、Tax155-169、Tax155-168、Tax155-167、Tax146-160(ネガティブコントロール)について、その濃度条件を変えてIFN-γ産生を調べた。Tax155-167に対し濃度依存性にT4細胞で産生されるIFN-γの量は、Tax155-169及びTax155-168に対する産生量に匹敵していることが分かった(図3F)。
【実施例1】
【0086】
上記B-3の一連の実験結果により、T4細胞に認識される最小エピトープはTax155-167であることが明確に示された。
【実施例1】
【0087】
B-4 Tax特異的T4細胞のHLA-DRB10101拘束性
上記B-3で判明した最小エピトープ(Tax155-167)の抗原提示に関与するHLAクラスII分子の種類を調べるため、抗HLA-DR、抗HLA-DQ及び抗HLAクラスIブロッキング抗体の存在/非存在下で、ILT-#350刺激によるT4細胞の免疫応答を解析した(上記A-9参照)。HLA-DRのブロッキングにより、ILT-#350からの刺激に対するT4細胞のIFN-γ産生が抑制されたため、このエピトープがHLA-DR拘束性であることが示された(図4A)。
【実施例1】
【0088】
さらに、異なるHLA-DRをディスプレイする4種類のHLA型LCLを使用し、最小エピトープの提示に関与するHLA-DR対立遺伝子を調べた(上記A-9参照)。Tax155-167が自己LCL-#350(DR1/14)及び同種LCL-#341(DR1/15)によって提示されると、T4細胞によるIFN-γの産生が確認された(図4B)。この結果は、このエピトープが、HLA-DRB10101によって抗原提示細胞上に提示されることを明確に示している。同定したエピトープTax155-167中に、公知のHLA-DRB10101モチーフ(Rammensee HG, Friede T, Stevanoviic S. MHC ligands and peptide motifs: first listing. Immunogenetics. 1995;41(4):178-228.)の有無を探索したところ、このエピトープがHLA-DRB10101モチーフを含むことが分かった(図4C)
【実施例1】
【0089】
B-5 Tax155-167特異的CD4T細胞のヘルプによるTax特異的CD8T細胞増殖の亢進
次に、患者#350の新鮮PBMCにおけるTax特異的CTL増殖に対する、Tax155-167特異的CD4T細胞のヘルパー機能を評価した。緩和的前処置による同種造血幹細胞移植から540日後に患者#350から単離されたばかりのPBMC(A24/26、DR1/14)を、HLA-A24拘束性CTLエピトープであるTax301-309ペプチド及び/又はHLA-DRB10101拘束性Th1型エピトープであるTax155-167ペプチドで13日間刺激し、Tax特異的CD8T細胞の増殖をHLA-A2402/Tax301-309テトラマーを用いて測定した(上記A-10参照)。これは、かかるテトラマーがTax特異的CD8T細胞に結合する性質を利用するものである。この測定の結果を図5に示す。Tax301-309特異的CD8T細胞は、Tax301-309単独で刺激した場合、9.26%まで増殖したのに対し(図5の上段の中央パネル)、Tax301-309及びTax155-167の両方を用いてインビトロ刺激したところ、Tax特異的CD8T細胞が62.3%まで著しく増加した(図5の上段の右パネル)。その他2名の緩和的前処置による同種造血幹細胞移植を受けたHLA-DRB10101HTLV-I感染患者についても同様の方法で測定を行った。患者#364では、移植から180日後に同患者から単離されたばかりのPBMC(A24/26、DR1/-)を用い、患者#341では、移植から360日後の同患者から単離されたばかりのPBMC(A24/33、DR1/15)を用いた。HLA-A24拘束性CTLエピトープであるTax301-309単独でPBMCを刺激した場合、Tax301-309特異的CD8T細胞は0.85%(患者#364)及び7.7%(患者#341)に増殖したのに対し(図5の中段の中央パネル、下段の中央パネル)、Tax301-309及びTax155-167の両方でPBMCを共刺激した場合、Tax301-309特異的CD8T細胞は15.5%(患者#364)及び59.6%(患者#341)まで著しく増加した(図5の中段の右パネル、下段の右パネル)。また、3人の患者(#350、#364、#341)のPBMCには、Taxエピトープで刺激する前の段階で、前述のテトラマーに結合するTax特異的CD8T細胞が検出可能なレベルで存在した。
以上の結果から、緩和的前処置による同種造血幹細胞移植を受けたHLA-DRB10101HTLV-I感染者において、Tax155-167特異的CD4T細胞が存在し、Tax301-309/Tax155-167の混合エピトープ刺激により、Tax301-309単独刺激に比してCD8T細胞応答が顕著に亢進されることが示された。
【実施例1】
【0090】
B-6 HLA-DRB10101HTLV-I感染者ではTax155-167特異的CD4T細胞が維持される
次に、HLA-DRB10101/Tax155-167テトラマーを作製し、Tax155-167特異的CD4T細胞を直接検出することで、同種造血幹細胞移植を受けたHLA-DRB10101患者2名から単離したばかりのPBMC中に、Tax155-167特異的CD4T細胞が存在するかどうかを確認した。患者#350では、移植から540日後に同患者から単離されたばかりのPBMC(A24/26、DR1/14)を用い、患者#364では、移植から180日後に同患者から単離されたばかりのPBMC(A24/26、DR1/-)を用い、患者#341では、移植から360日後の同患者から単離されたばかりのPBMC(A24/33、DR1/15)を用いた。患者#350では、Tax155-167特異的CD4T細胞が培養や刺激無しに(ex vivo)検出可能な水準で存在し(0.11%)(図6Aの上段の左パネル)、Tax155-167ペプチドによる刺激から13日後では、11.6%まで増殖した(図6Aの上段の右パネル)。患者#364では、ex vivoではTax特異的CD4T細胞は検出されなかったが(図6Aの中段の左パネル)、Tax155-167ペプチドによりインビトロで刺激したところ、0.37%まで増殖した(図6Aの中段の右パネル)。HLA-DRB10101血清反応陰性ドナー#365(ネガティブコントロール)では、ex vivoではTax特異的CD4T細胞は検出されず(図6Aの下段の左パネル)、Tax155-167ペプチドによる刺激13日後でも検出不可能だった(図6Aの下段の右パネル)。
【実施例1】
【0091】
さらに、HLA-DRB10101を保有するHTLV-I感染者2名(無症候性キャリア(AC)#310及びHTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺患者#294)での、Tax155-167特異的CD4T細胞の存在の有無を調べたところ、末梢CD4T細胞中それぞれ0.18%と0.31%のテトラマー陽性細胞を検出した(図6B)。
【実施例1】
【0092】
以上の結果から、HLA-DRB10101対立遺伝子を発現するHTLV-I感染者において、造血幹細胞移植の有無に関係なく、Tax155-167特異的CD4T細胞が維持されていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)に特異的なCD4T細胞の誘導に関連する分野などに利用することができる。より詳細には、HTLV-I特異的CTL誘導作用増強剤や、HTLV-I特異的免疫応答誘導用ワクチンや、HTLV-I特異的CD4T細胞を識別するための免疫機能検査診断薬や、HTLV-I特異的CD4T細胞の誘導方法などに関する分野に好適に利用することができる。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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