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明細書 :エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6274490号 (P6274490)
公開番号 特開2015-068861 (P2015-068861A)
登録日 平成30年1月19日(2018.1.19)
発行日 平成30年2月7日(2018.2.7)
公開日 平成27年4月13日(2015.4.13)
発明の名称または考案の名称 エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法
国際特許分類 G02F   1/15        (2006.01)
G09F   9/30        (2006.01)
FI G02F 1/15 505
G02F 1/15 508
G09F 9/30 380
G09F 9/30 330Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 19
出願番号 特願2013-200664 (P2013-200664)
出願日 平成25年9月26日(2013.9.26)
審査請求日 平成28年3月24日(2016.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
発明者または考案者 【氏名】星野 勝義
【氏名】大熊 将史
審査官 【審査官】廣田 かおり
参考文献・文献 国際公開第2009/147924(WO,A1)
特開昭59-217791(JP,A)
特開2012-194411(JP,A)
米国特許出願公開第2012/0050838(US,A1)
調査した分野 G02F 1/15
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
アルミニウムがドープされた酸化スズナノ粒子及び酸化亜鉛ナノ粒子の少なくともいずれかの導電性ナノ粒子と下記式で示されるビオロゲン化合物とを含む溶液を調製する調製工程と、
前記溶液を基板上に塗布する塗布工程と、
前記基板と他の基板を、水と支持塩を含む媒体層を挟んで対向配置させる工程、を有するエレクトロミック表示素子の製造方法。
【化1】
JP0006274490B2_000003t.gif
(R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数6~20のアリール又は炭素数7~20のアリールアルキルを表す)
【請求項2】
前記溶液は、導電性ナノ粒子を5wt%以上30wt%以下の範囲で含む請求項1記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項3】
前記ビオロゲン化合物は、前記ナノ粒子の重量を1とした場合に、0.01以上0.5以下の範囲で前記溶液に含まれている請求項1記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記溶液を基板上に塗布する塗布工程の後、
前記基板に光を照射する工程を含む、請求項1記載のエレクトロクロミック表示素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等情報処理装置の普及に伴い、情報処理装置による処理結果を表示するための表示素子(例えば、液晶表示素子など)が非常に重要となっている。
【0003】
現在、新たな表示素子として、いわゆるエレクトロクロミック特性を利用した表示素子(エレクトロクロミック表示素子)が提案されている。エレクトロクロミック特性とは、電圧の印加により電気化学的酸化還元反応が起こり、物質の色が可逆的に変化する特性をいう。この特性を利用したディスプレイは、(1)視野性に優れる、(2)大型化が可能である、(3)視野角依存性が少ない、(4)鮮明な表示が可能である、といった利点があり、特に、いわゆる電子ペーパーといった極薄型のディスプレイへの応用が期待されている。
【0004】
エレクトロクロミック特性を利用した表示素子としては、例えば酸化チタンナノ粒子からなる膜にビオロゲン化合物を化学修飾し、酸化チタンナノ粒子-ビオロゲンナノコンポジット電極を用いたエレクトロクロミック表示素子が一部実用化されている。
【0005】
また、下記特許文献1には、ナノ粒子とビオロゲンを混合して塗布膜電極を作製してなるエレクトロクロミック表示素子が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2013-117704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、酸化チタン-ビオロゲンナノコンポジット電極を用いるエレクトロクロミック表示素子は、ビオロゲン化合物に特殊な置換基(リン酸又はカルボキシル基)を付加する必要があり、汎用性の高い技術であるとは言えない。
【0008】
一方、上記特許文献1に記載の技術は、特殊なビオロゲン化合物を用いる必要がなく、極めて汎用性の高い技術となっているが、レアメタルであるインジウムを用いる必要があるため、今後の安定的な原料入手に課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、汎用性が高く、レアメタルを用いずとも消え残りが少ない良好な表示を可能とするエレクトロクロミック表示素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点に係るエレクトロクロミック表示素子の製造方法は、酸化スズナノ粒子及び酸化亜鉛ナノ粒子の少なくともいずれかの導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物とを含む溶液を調製する調整工程と、溶液を基板上に塗布する塗布工程を有する。
【0011】
また、上記課題を解決する本発明の他の一観点に係るエレクトロクロミック表示素子は、一対の基板と、基板の対向する一対の面にそれぞれ形成される電極と、一対の基板間に挟持される媒体層と、を有するエレクトロクロミック表示素子であって、電極の少なくとも一方は、酸化スズナノ粒子及び酸化亜鉛ナノ粒子の少なくともいずれかの導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物とを含む膜を有する。
【0012】
以上、本発明によれば、汎用性が高く、レアメタルを用いずとも消え残りが少ない良好な表示を可能とするエレクトロクロミック表示素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係るエレクトロクロミック表示素子の一部断面の概略図である。
【図2】実施例において用いた電解セルの構造を示す図である。
【図3】実施例1に係るサイクリックボルタンモグラムの結果を示す図である。
【図4】実施例1に係るサイクリックボルタンメトリー測定時の吸光度測定の結果を示す図である。
【図5】実施例1において作成した膜の表面を示す写真図である。
【図6】実施例1において作成した膜のSEM像(1000倍)を示す図である。
【図7】実施例1において電極の消色時と着色時の吸収スペクトルを示す図である。
【図8】実施例1において一定の時間DDVが還元され着色する電位を印加し、その後一定の時間DDVカチオンラジカルが酸化され消色する電位を引加した場合における吸光度の時間変化(応答速度)を示す図である。
【図9】実施例1に係る膜1の着色効率CEの測定結果を示す図である。
【図10】図9から導かれる電気量と吸光度の関係を示す図である。
【図11】実施例1において消色過程におけるCEの測定を行った結果を示す図である。
【図12】図11から導かれる電気量と吸光度の関係を示す図である。
【図13】実施例2に係るサイクリックボルタンモグラムの結果を示す図である。
【図14】実施例2に係るサイクリックボルタンメトリー測定時の吸光度測定の結果を示す図である。
【図15】実施例2において作成した膜の表面を示す写真図である。
【図16】実施例2において作成した膜のSEM像(1000倍)を示す図である。
【図17】実施例2において電極の消色時と着色時の吸収スペクトルを示す図である。
【図18】実施例2において一定の時間DDVが還元され着色する電位を印加し、その後一定の時間DDVカチオンラジカルが酸化され消色する電位を引加した場合における吸光度の時間変化(応答速度)を示す図である。
【図19】実施例2に係る膜の着色効率CEの測定結果を示す図である。
【図20】図19から導かれる電気量と吸光度の関係を示す図である。
【図21】実施例2において消色過程におけるCEの測定を行った結果を示す図である。
【図22】図21から導かれる電気量と吸光度の関係を示す図である。
【図23】実施例3に係るサイクリックボルタンモグラムを示す図である。
【図24】実施例3において作成した膜の表面を示す写真図である。
【図25】実施例3において作成した膜のSEM像(5000倍)を示す図である。
【図26】図23で示したサイクリックボルタンメトリー測定時の吸光度測定の結果を示す図である。
【図27】着色時における膜の表面を示す写真図である。
【図28】実施例3においてDDVのFT-IRスペクトルを示す図である。
【図29】実施例3において露光前、露光後それぞれにおけるFT-IRスペクトルを示す図である。
【図30】実施例3において露光前と30分間露光した膜それぞれについて着色を行った際の吸光度変化を比較したグラフを示す図である。
【図31】実施例3において露光前と45分間露光した膜それぞれについて着色を行った際の吸光度変化を比較したグラフを示す図である。
【図32】実施例3において露光前と60分間露光した膜それぞれについて着色を行った際の吸光度変化を比較したグラフを示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例において記載される例示にのみ限定されるわけではない。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子(以下「本表示装置」ともいう)1の一部断面の概略図である。図1に示すとおり、本表示素子1は、一対の基板2a、2bと、一対の基板の対向する面のそれぞれに形成される電極3a、3bと、一対の基板の間に挟持される媒体層4と、を有する。
【0016】
本実施形態において、一対の基板2a、2bは、電極3a、3b及び媒体層4を保持する機能を有するものである。一対の基板2a、2bそれぞれの材質は同一であっても異なっていてもよいが、ビオロゲン化合物による発色及び消色が確認できるように少なくとも一方が透明な部材で構成されていることが好ましい。本実施形態における一対の基板の材質としては、限定されるわけではないが、例えばガラス、プラスチック、金属等を用いることが好ましい。なお金属等を基板として用いる場合は、必要に応じて絶縁性の酸化膜を形成することでこの上に形成される電極と絶縁しておくことが好ましい。
【0017】
また本実施形態において、一対の基板2a、2bの上に形成される電極の少なくとも一方は、酸化スズナノ粒子及び酸化亜鉛ナノ粒子の少なくともいずれかの導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物とを含む導電性の膜を含む。
【0018】
本実施形態において導電性ナノ粒子は、上記のとおり、酸化スズ(SnO)ナノ粒子及び酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子の少なくともいずれかを含む。また本実施形態において導電性なの粒子の平均粒径は、限定されるわけではないが、5nm以上900nm未満であることが好ましく、より好ましくは5nm以上500nm以下であり、更に好ましくは50nm以下の範囲である。
【0019】
また本実施形態において、酸化亜鉛ナノ粒子は、アルミニウムが添加(ドープ)されたものであってもよい。なおアルミニウムの添加量としては、導電性を良好に保つことができる限りにおいて限定されるわけではないが、2%以上15%以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは2%以上10%以下である。
【0020】
また、本実施形態において、膜にはビオロゲンが含まれている。ここでビオロゲン化合物は、具体的には下記式(1)で表される化合物である。
【化1】
JP0006274490B2_000002t.gif

【0021】
上記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数6~20のアリール又は炭素数7~20のアリールアルキルを表す。
【0022】
また上記R及びRがアルキルである場合、C2n+1(n=1~20)で示される鎖状または分岐状のアルキルであることが好ましく、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル又はオクタデシルであることが特に好ましい。また上記R及びRがアリールである場合、フェニル、ナフチル、エテニルフェニルであることが好ましく、エテニルフェニルであることがより好ましい。なおビオロゲン化合物の具体例としては、1,1’-ジベンジル-4,4’-ビピリジニウム、1,1’-ジヘキシル-4,4’-ビピリジニウム、1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウム、1,1’-ジノニル-4,4’-ビピリジニウム、1,1’-ジデシル-4,4’-ビピリジニウムが挙げられ、中でも、1,1’-ジベンジル-4,4’-ビピリジニウムまたは1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムが好ましい。
【0023】
本実施形態に係るビオロゲン化合物は、電子を一つ受け取ることで着色状態となる一方、その後電子一つを放出して上記式(1)で表されるビオロゲン化合物(無色)に戻る。このため、電子の授受によって着色状態、消色状態を実現することができる。
【0024】
また、本実施形態の電極において、ビオロゲン化合物の含量は、発色状態および消色状態を行うことができる限りにおいて限定されるわけではないが、導電性ナノ粒子の重量を1とした場合に、0.01以上0.5以下の範囲で前記溶液に含まれていることが好ましく、より好ましくは0.01以上0.2以下の範囲である。0.001以上とすることで優れた視認性が得られるといった効果を得ることができ、0.01以上とするとこの効果がより顕著となる。
【0025】
また、本実施形態において、電極の膜厚は、発色状態および消色状態を行うことができる限りにおいて限定されるわけではなく適宜調整可能であるが、1μm以上1mm以下の範囲内にあることは好ましく、より好ましくは100μm以下である。
【0026】
また本実施形態において、電極3a、3bは、一対の基板2a、2bの対向する面にそれぞれ形成されるものであって、この間に所定の電圧を印加することでビオロゲン化合物の発色及び消色を制御することができる。電極の占める領域が一画素領域となり、この電極を複数設けることで、文字等の複雑な画像表示を実現することができる。画素領域の形状は予め表示したい形状となっているセグメントであってもよいし、マトリクス状に並べやすい多角形(例えば四角形)であってもよい。なお複数の画素領域をマトリクス状に配置し、画像表示をより細かく表示する場合、一対の基板の対向する画素領域毎に独立した複数の電極(画素電極)を設けておくことが好ましいが、製造を容易にする等の観点から、一方の電極を全画素共通のいわゆる共通電極とすることとしてもよい。
【0027】
ここで、独立した複数の電極が一対の基板の一方に配置されている場合の一例について説明しておく。基板2aには、複数の電極3aが配置されており、各電極3aは、略平行に配置される複数の走査電極と、これら複数の走査電極と交差して配置される複数の信号電極とにより形成される空間に配置されており、各画素電極は例えば走査電極にゲートが接続されたスイッチング素子を介して信号電極と接続される。
【0028】
さらに、本実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子は、画素電極の間に所望の電圧を印加するために、信号電極、走査電極(間接的に画素電極)と接続される外部電源を有することも好ましい。このようにすることで、上記ビオロゲン化合物及び必要に応じてフェロセン等に電子の授受を可能とし、画像表示が可能となる。
【0029】
なお画像表示が可能となる限りにおいて限定されるわけではないが、一対の電極の間には、0.01V/cm以上、2000V/cm以下の電界が印加されるように電圧を印加することが好ましく、より好ましくは0.1V/cm以上、200V/cm以下である。
【0030】
また本実施形態において、他方の電極は、上記と同様の構成としてもよいが、着色及び消色の双方の状態を実現するため異なる構成としておくことが好ましい。この場合において電極は、導電性を有するものである限りにおいて限定されるものではないが、例えば金、銀、銅、ニッケル等の金属、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等の金属酸化物、及び、カーボン等の炭素材料等を用いることができる。
【0031】
なお、本実施形態において、一対の電極の間の距離としては、媒体層に用いる材料、画素電極の厚さ、印加する電圧等に依存し適宜調整可能であるが、概ね10μm以上1cm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上5mm以下である。
【0032】
また本実施形態において、上記導電性ナノ粒子を含む膜はそのままのみで電極とすることもできるが、別途導電性の金属又は金属酸化膜を形成し、その上に配置する構成としてもよい。このようにすることで、電極としての十分な導電性を確保することができる。
【0033】
また本実施形態において、一対の電極の間には媒体層が配置されている。媒体層は一対の電極の間に電圧を印加した場合に、一対の電極それぞれにおいて電子の授受が可能となるよう配置されるものであって、限定されるわけではないが、少なくとも溶媒と支持電解質とを含む。
【0034】
本実施形態において、溶媒は、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、水及び有機溶媒の少なくともいずれかを含んでいることが好ましい。有機溶媒の場合、限定されるわけではないが、例えばアセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール(メタノール、エタノール等)、無水酢酸及びこれらの混合溶媒を例示することができる。有機溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アルコールであることがさらに好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、アルコールであることが特に好ましい。なお 溶媒は、視認性の観点から無色透明であることが好ましい。
【0035】
また本実施形態において、溶媒が水である場合、水のみであってもよいが、溶媒の全重量を100重量部とした場合、40重量部以上100重量部以下としておくことが好ましく、より好ましくは50重量部以上、更に好ましくは80重量部以上である。溶媒に水以外のものを含ませる場合、溶媒は、水以外に上記の有機溶媒を含んでいることができ、この場合水に可溶な溶媒であることが好ましい。この範囲は、上記水以外の重量部の範囲である。
【0036】
また、本実施形態において、媒体層には、支持電解質を加えておくことが好ましい。支持電解質としては、電極間に電圧を印加した場合に自身が電気分解によって析出等してしまわないよう電気分解しにくい塩であることが好ましく、この限りにおいて限定されるわけではないが、NaCl、NaBr、NaI、NaSO、NaNO、CHCOONaなどのナトリウム塩、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、LiNO、CHCOOLiなどのリチウム塩、KCl、KBr、KI、KSO、KNO、CHCOOKなどのカリウム塩、さらには二価の金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩、要するにアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属の塩、及びテトラアルキルアンモニウムの塩)が挙げられる。
【0037】
また、上記支持電解質の濃度は、限定されるわけではないが、媒体層において0.01M以上5M以下であることが好ましく、より好ましくは0.05M以上1M以下である。0.01M以上とすることで十分な電気化学反応の進行が可能となり、0.05M以上とすることでこの効果がより顕著となる。また、1M以下とすることで溶液粘度の上昇を抑制し応答速度の低下を回避でき、1M以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0038】
また、本実施形態では、溶媒の種類および配合量を適宜設定することにより、ビオロゲン化合物を発色状態とした場合にビオロゲン化合物の凝集状態を効率よく維持することができる。
【0039】
更に、媒体層には電位差を調整し酸化還元を媒介する酸化還元助剤を含有させてもよい。このような酸化還元助剤の具体例としては、フェロセン、フェロシアンイオン、ナフトキノン、ナフトヒドロキノン、ヒドロキノン及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0040】
以上、本実施形態に係るエレクトロクロミック表示装置によると、消え残りを抑制することができる。
【0041】
次に、本実施形態に係るエレクトロクロミック表示素子の製造方法(以下「本方法」ともいう。)について説明する。 本方法は、(1)酸化スズナノ粒子及び酸化亜鉛ナノ粒子の少なくともいずれかの導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物とを含む溶液を調製する調整工程と、(2)溶液を基板上に塗布する塗布工程を有する。
【0042】
まず、酸化スズナノ粒子及び酸化亜鉛ナノ粒子の少なくともいずれかの導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物とを含む溶液を調製する調整工程は、基板に電極を形成するための準備工程であり、上記導電性ナノ微粒子、ビオロゲン化合物はいずれも上記の構成及び比率を備えていることが好ましい。
【0043】
また、本工程において調整溶液には、導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物とを分散させるための溶媒を含んでいることが好ましい。溶媒としては、上記ビオロゲン化合物及び酸化物ナノ粒子を分散させることができるものである限りにおいて限定されるわけではないが、有機溶媒であることは好ましい一例である。有機溶媒の場合、特に限定されるわけではないが、アルコールであることは好ましく、例えばメタノール、エタノール、及びブタノール等を例示することができる。なおこの溶媒に対する導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物の量は、十分に分散できる程度であればよく、特に限定されるものではないが、導電性ナノ粒子を5wt%以上30wt%以下の範囲で含むこととしておくことが好ましい。
【0044】
また、本実施形態において、溶液を基板上に塗布する塗布工程を有する。本実施形態において、基板上に溶液を塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、様々な方法を用いることができる。例えばディッピング、スピンコーティング、バーコーティング等を採用することができる。
【0045】
そして、塗布の後、室温で乾燥することにより電極とすることができる。本実施形態に係る膜は、焼成しない場合であってももともと白色状態を維持することができるため、消色状態においては自然に白色状態となる。
【0046】
なお、限定されるわけではないが、乾燥後、電気炉等の中で焼成処理を行ってもよい。ただし、本実施形態において、膜中にはビオロゲン化合物を有するものであるため、このビオロゲン化合物が分解しない程度の温度範囲である必要がある。
【0047】
この場合において、膜の膜厚は、ディッピングと室温での乾燥工程を繰り返すことにより調整することができるし、焼成処理の後改めて塗布工程及び焼成工程を繰り返してもよい。
【0048】
また本実施形態では、この膜に対して光を照射する工程を含んでいてもよい。より具体的には、画素領域に応じて光の照射量を異ならせ、これにより色の濃淡による画像形成が可能となる。
【0049】
この光の照射波長としては、限定されるわけではないが、ビオロゲン化合物の着色時における吸収ピーク波長を含む範囲であることが好ましく、限定されるわけではないが400nm以上700nm以下の範囲であることが好ましい。この範囲とすることで、ビオロゲン化合物のアルキル鎖が外れ、分解反応を生じさせることができ、色の濃淡による画像形成が可能となる。
【0050】
そして、本工程の後、更に、他方の基板を用意してその上に電極を配置した後、所定の距離を置いて対向配置させ、この間に電解液を注入することでエレクトロクロミック表示素子を製造することができる。
【0051】
以上、本実施形態によって、より消え残りを低減したエレクトロクロミック表示素子を提供することができる。
【実施例】
【0052】
以下、上記実施形態にかかるエレクトロクロミック表示素子の効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0053】
(実施例1)
まず、分散溶媒として1-ブタノールを用い、この分散溶媒に平均粒径50nm以下のAlドープ酸化亜鉛(AZO)ナノ粒子(Aldrich社製)を10wt%添加し、ビオロゲン化合物として1,1’-ジドデシル-4,4’-ビピリジニウムジブロマイド(以下「DDV」)を酸化亜鉛ナノ粒子の重量の1/20だけ添加し、バス型超音波で30分間分散させた後、ITOガラス上にディップ法によって塗布を行い、乾燥させて6μmの厚さの膜を得た。
【0054】
次いで、水に支持電解質LiSO0.5M含んだ電解液を電解セルに充填し、上記膜が形成された基板を浸漬した。電解セルの構造について図2に示しておく。
【0055】
セルは直方体の主室5と円柱形の副室6からなり、G4ガラスフィルター10で隔てられている。主室5には動作電極7(上記作成した膜を備えた電極)と対向電極8(白金板)が浸漬されている。一方、副室6には、KCl溶液が入っており、参照電極(飽和カロメル電極,SCE)13へとつながるKCl塩橋14が浸漬されている。なお図中7は参照光、10はガラスフィルター、15は窒素ガス入り口である。
【0056】
塗布膜が電解液に浸漬している面積(電極面積)を1.0cm、電解掃引範囲を-0.65Vから0V、掃引速度を20mV/sとして、サイクリックボルタンメトリー(CV)及びCV測定時の吸光度変化を測定し塗布膜の着消色挙動の検討を行った。この結果を図3、4に示しておく。図3は、サイクリックボルタンモグラムを、図4は、サイクリックボルタンメトリー測定時の吸光度測定の結果を示している。なお、本測定前においては、電解液に対し30分間の窒素バブリングを施し、測定中は電解液上部に窒素ガスをフローする窒素雰囲気下で測定を行った。また、電位掃引の繰り返し回数を10サイクルとした。また、測定波長は後述するが、紫色の着色膜のピーク波長である510nmとした。
【0057】
これらの図によると、本膜においては、まず、負方向への掃引で-0.45V近傍で還元波が現れている。そして、それとほぼ同時に電極上に紫色の膜が析出し、ビオロゲンの極大吸収波長である510nmの吸光度が上昇していることが確認できた。またその着色膜は、-0.32V近傍での酸化反応によってほぼ消色している。これらの結果から、本膜を電極として用いることでエレクトロクロミック(EC)特性を示すということが判明した。
【0058】
次に、上記作製した膜の表面を観察した。写真図5に、膜の表面写真を示す。本図からわかるようにAZOナノ粒子を用いた系は、焼結処理を施さなくても充分な白色度を有していることが確認できた。
【0059】
また、図6に、本膜のSEM像(1000倍)を示しておく。本図からわかるように、本膜は多孔質な構造となっていることが確認できるが、かなり緻密な構造となっていることが確認できた。
【0060】
また本膜を用いた電極における色変化の詳細について検討した。この結果を図7に示す。本図は電極の消色時と着色時の吸収スペクトルである。なお、本吸収スペクトルの測定においても、上記と同様の電解セル、電解液を用いたが、着色時の吸収スペクトルは-0.5Vの電位を10秒間印加した際のスペクトルであり、消色時の吸収スペクトルは電圧を印加する前に測定した際のスペクトルである。なお、バックグラウンドのスペクトルは、電解セルと、支持電解質(LiSO)を含む電解液の寄与を含んだものとなっている。
【0061】
本図により、電圧の印加によって、DDVのカチオンラジカルがAZO上に膜を形成し、510nm付近にピークを持つ紫色の着色反応が起きることを確認した。一方、電圧を印加しない状態(0Vの電圧印加)においては、DDVカチオンラジカルは酸化され無色透明となっていることが確認できる。なお、ナノコンポジット膜の消色時の吸収スペクトルから本系は無色透明の背景では無く、はっきりとした白の背景を持つことが確認でき、AZOナノ粒子を用いることで、焼結を行わなくても白色背景を実現することが出来ることを確認した。この結果はエレクトロクロミック表示素子に必須とされる白色スペーサーが不要となることが期待されるものである。
【0062】
次に、一定の時間DDVが還元され着色する電位を印加し、その後一定の時間DDVカチオンラジカルが酸化され消色する電位を印加した場合における吸光度の時間変化(応答速度)の測定を行った。この結果を図8に示しておく。なお測定において用いた系は上記と同様であり、着色電位は-0.65V、消色電位は0V、着色電位の印加時間は10s、消色電位の印加時間は30sとした。
【0063】
本図によると、グラフの立ち上がりの部分から着色までの応答時間は約3s、減少の部分から消色までの応答速度は約6sであることがわかった。なお、消色時の応答時間は着色時の吸光度増加分が最大増加分のe-1倍まで下がる時間とした。
【0064】
次に、本膜における着色効率CEの測定を行った。具体的には、動作電極に-0.65Vの電位を印加してDDV膜を形成していくときの吸収ピークの吸光度と電解時間及び単位電極面積あたりの通電電気量と電解時間の関係を同時測定した。なお測定において用いた系及び処理は上記と同様とした。また着色電位の印加時間は10sとした。この結果を図9に示しておく。本図は、DDVの吸収ピーク(510nm)における吸光度(ABS)と、電解時間tの関係、及び通電電気量(Q)と電解時間tの関係を示している。
【0065】
本図によると、膜厚6μmのDDVの着色過程は、3s程度で吸光度1.17に達し、その後は安定している。通電電気量については、着色電位を印加した直後は大量の電流が流れたが、吸光度が安定した後は緩やかな増加を示していることが確認できた。
【0066】
次に、CEの算出を行った。図10に、図9から導かれる電気量と吸光度の関係を示す。なおこのプロットの傾きは着色反応に対するCEの値そのものとなる。この結果、CEの値は70cm/Cであることが確認できた。
【0067】
次に、消色過程におけるCEの測定を行った。この測定は、上記の着色過程におけるCEの測定と同様に行った。なお動作電極への電圧の印加は、0Vの電圧を15秒印加することで行った。図11にこの結果を示しておく。本図は、DDVの吸収ピーク(510nm)における吸光度(ABS)と、電解時間tの関係、及び通電電気量(Q)と電解時間tの関係を示している。
【0068】
本図の結果、着色時の吸光度増加分が最大増加分のe-1倍まで下がった時間をDDVの消色過程における応答時間と定義すると6sになる。
【0069】
続いて、上記と同様、CEの算出を行った。図12に、図11から導かれる電気量と吸光度の関係を示す。このプロットの傾きが消色反応に対するCEの値であり、その値は約80cm/Cとなることが確認できた。
【0070】
以上、本実施例により、AlドープZnO(AZO)ナノ粒子を含む導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物により消え残りの少ない良好な表示素子を得ることができるのを確認した。
【0071】
(実施例2)
本実施例では、SnOナノ粒子を用いた点が上記実施例1と異なるが、それ以外はほぼ実施例1と同様である。具体的に本実施例では、分散溶媒として1-ブタノールを用い、この分散溶媒に平均粒径21nm以下の酸化スズ(SnO)ナノ粒子(Nano Tech社製)を10wt%添加し、ビオロゲン化合物としてDDVを酸化スズナノ粒子の重量の1/20だけ添加し、バス型超音波で30分間分散させた後、ITOガラス上にディップ法によって塗布を行い、乾燥させて6μmの厚さの膜を得た。
【0072】
次いで、水に支持電解質LiSO0.5M含んだ電解液を電解セルに充填し、上記膜が形成された基板を浸漬した。電解セルの構造等も上記実施例1と同様である。
【0073】
次に、塗布膜が電解液に浸漬している面積(電極面積)を1.0cm、電解掃引範囲を-0.5Vから0V、掃引速度を20mV/sとして、サイクリックボルタンメトリー(CV)及びCV測定時の吸光度変化を測定し塗布膜の着消色挙動の検討を行った。この結果を図13、14に示しておく。図13は、サイクリックボルタンモグラムを、図14は、サイクリックボルタンメトリー測定時の吸光度測定の結果を示している。なお、本測定前においては、電解液に対し30分間の窒素バブリングを施し、測定中は電解液上部に窒素ガスをフローする窒素雰囲気下で測定を行った。また、電位掃引の繰り返し回数を10サイクルとした。また、測定波長は後述するが、紫色の着色膜のピーク波長である510nmとした。
【0074】
これらの図によると、本膜においては、まず、負方向への掃引で-0.38V近傍で還元波が現れている。そして、それとほぼ同時に電極上に紫色の膜が析出し、ビオロゲンの極大吸収波長である510nmの吸光度が上昇していることが確認できた。またその着色膜は、-0.4V近傍での酸化反応によってほぼ消色している。これらの結果から、本膜を電極として用いることでエレクトロクロミック(EC)特性を示すということが判明した。
【0075】
次に、上記作製した膜の表面を観察した。写真図15に、膜の表面写真を示す。本図からわかるようにSnOナノ粒子を用いた系は、薄い黄色味がかった灰色になることが確認された。
【0076】
また、図16に、本膜のSEM像(1000倍)を示しておく。本図からわかるように、本膜は多孔質な構造となっていることが確認できるが、かなり緻密な構造となっていることが確認できた。
【0077】
また本膜を用いた電極における色変化の詳細について検討した。この結果を図17に示す。本図は電極の消色時と着色時の吸収スペクトルである。なお、本吸収スペクトルの測定においても、上記と同様の電解セル、電解液を用いたが、着色時の吸収スペクトルは-0.5Vの電位を5秒間印加した際のスペクトルであり、消色時の吸収スペクトルは電圧を印加する前に測定した際のスペクトルである。なお、バックグラウンドのスペクトルは、電解セルと、支持電解質(LiSO)を含む電解液の寄与を含んだものとなっている。
【0078】
本図により、電圧の印加によって、DDVのカチオンラジカルがSnO上に膜を形成し、510nm付近にピークを持つ紫色の着色反応が起きることを確認した。一方、電圧を印加しない状態(0Vの電圧印加)においては、DDVカチオンラジカルは酸化され無色透明となっていることが確認できる。
【0079】
次に、一定の時間DDVが還元され着色する電位を印加し、その後一定の時間DDVカチオンラジカルが酸化され消色する電位を印加した場合における吸光度の時間変化(応答速度)の測定を行った。この結果を図18に示しておく。なお測定において用いた系は上記と同様であり、着色電位は-0.5V、消色電位は0V、着色電位の印加時間は3s、消色電位の印加時間は3sとした。
【0080】
本図によると、グラフの立ち上がりの部分から着色までの応答時間は約1.5s、減少の部分から消色までの応答速度は約0.5sであり、AZO粒子に比べてきわめて高速に応答できていることが確認できた。なお、消色時の応答時間は着色時の吸光度増加分が最大増加分のe-1倍まで下がる時間とした。
【0081】
次に、本膜における着色効率CEの測定を行った。具体的には、動作電極に-0.5Vの電位を印加してDDV膜を形成していくときの吸収ピークの吸光度と電解時間及び単位通電電気量と電解時間の関係を同時測定した。なお測定において用いた系及び処理は上記と同様とした。また着色電位の印加時間は3sとした。この結果を図19に示しておく。本図は、DDVの吸収ピーク(510nm)における吸光度(ABS)と、電解時間tの関係、及び通電電気量(Q)と電解時間tの関係を示している。
【0082】
本図によると、膜厚6μmのDDVの着色過程は、1.5s程度で吸光度1.3に達し、その後は安定している。通電電気量については、着色電位を印加した直後は大量の電流が流れたが、吸光度が安定した後は緩やかな増加を示していることが確認できた。
【0083】
次に、CEの算出を行った。図20に、図19から導かれる電気量と吸光度の関係を示す。なおこのプロットの傾きは着色反応に対するCEの値そのものとなる。この結果、CEの値はAZOの場合と同様、70cm/Cであることが確認できた。
【0084】
次に、消色過程におけるCEの測定を行った。この測定は、上記の着色過程におけるCEの測定と同様に行った。なお動作電極への電圧の印加は、0Vの電圧を3秒間印加することで行った。図21にこの結果を示しておく。本図は、DDVの吸収ピーク(510nm)における吸光度(ABS)と、電解時間tの関係、及び通電電気量(Q)と電解時間tの関係を示している。
【0085】
本図の結果、本膜では0.5sで完全に消色していることが確認できた。
【0086】
続いて、上記と同様、CEの算出を行った。図22に、図21から導かれる電気量と吸光度の関係を示す。このプロットの傾きが消色反応に対するCEの値であり、その値は最高で約200cm/Cとなることが確認できた。これは上記実施例1に比べて非常に高い値である。
【0087】
以上、本実施例により、SnOナノ粒子を含む導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物により消え残りの少ない良好な表示素子を得ることができるのを確認した。
【0088】
(実施例3)
本実施例では、AlドープのないZnOナノ粒子を用いた点が上記実施例1と異なるが、それ以外はほぼ実施例1と同様である。具体的に本実施例では、分散溶媒として1-ブタノールを用い、この分散溶媒に平均粒径34nm以下の酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子(Nano Tech社製)を10wt%添加し、ビオロゲン化合物としてDDVを酸化スズナノ粒子の重量の1/20だけ添加し、バス型超音波で30分間分散させた後、ITOガラス上にディップ法によって塗布を行い、乾燥させて6μmの厚さの膜を得た。
【0089】
次いで、水に支持電解質LiSO0.5M含んだ電解液を電解セルに充填し、上記膜が形成された基板を浸漬した。電解セルの構造等も上記実施例1と同様である。
【0090】
次に、塗布膜が電解液に浸漬している面積(電極面積)を1.0cm、電解掃引範囲を-0.6Vから0V、掃引速度を20mV/sとして、サイクリックボルタンメトリー(CV)を測定し塗布膜の着消色挙動の検討を行った。この結果を図23に示しておく。図23は、サイクリックボルタンモグラムを示している。なお、本測定前においては、電解液に対し30分間の窒素バブリングを施し、測定中は電解液上部に窒素ガスをフローする窒素雰囲気下で測定を行った。また、電位掃引の繰り返し回数を10サイクルとした。ただし、本実施例では、窒素バブリングの際、この膜に測定用の光(波長510nm)を当てたままとした。
【0091】
本図によると、本膜においては、まず、負方向への掃引で-0.45V近傍で還元波が現れている。そして、それとほぼ同時に電極上に紫色の膜が析出した。またその着色膜は、-0.4V近傍での酸化反応によってほぼ消色している。これらの結果から、本膜を電極として用いることでエレクトロクロミック(EC)特性を示すということが判明した。
【0092】
次に、上記作製した膜の表面を観察した。写真図24に、膜の表面写真を示す。本図からわかるようにZnOナノ粒子を用いた系は、焼結処理を施さなくても十分な白色度を有していることが確認できた。
【0093】
また、図25に、本膜のSEM像(5000倍)を示しておく。本図からわかるように、本膜は多孔質な構造となっていることが確認できるが、かなり緻密な構造となっていることが確認できた。このナノポーラス空間の存在によってナノ粒子膜の“ふるい分け”効果がZnO/DDVナノコンポジット膜においても発揮されるものと考えられる。また、この緻密なナノ粒子の散らばりによって、光散乱の効果が大きくなるため白色度は極めて高い膜となっているといえる。
【0094】
ここで、図26に、図23で示したサイクリックボルタンメトリー測定時の吸光度測定の結果を示す。なお測定波長は紫色の着色膜のピーク波長である510nmとした。また、図27に着色時における膜の表面の写真図を示しておく。
【0095】
上記サイクリックボルタンメトリーから本実施例の電極においても着消色のサイクルが確認された。しかしながら、吸光度を測定したところ吸光度はほぼ変化しないという結果が得られた。一方、上記着色時の表面は、吸光度を測定するための光を当てていた部分のみが着色していないことわかる。これは、窒素バブリングの際に測定用の光を照射していることによる効果と考えられる。
【0096】
そこで、光を照射した(露光した)ZnOナノ粒子と測定用の光を照射していない(露光しなかった)ZnOナノ粒子とを用いた膜それぞれに対してFT-IR測定を行い、比較することで露光により膜中で起こる変化についての検討を行った。この結果を図28、図29に示しておく。図28はDDVのFT-IRスペクトルであり、図29は膜を電解液に浸漬しただけの膜を削り取り測定したFT-IRスペクトル、及び膜を電解液に浸漬し、そして露光した後に膜を削り取り測定したFT-IRスペクトルを示す。
【0097】
この結果、DDVは2900cm-1付近にC-H伸縮振動による吸収ピークを、1450cm-1付近にC-H変角振動による吸収ピークをもつことがわかる。しかし、露光前はこれらのピークが確認できるが露光後の測定結果ではピークが消失してしまっている。この結果から、露光によってDDVのアルキル基が外れ、分解反応が生じたことがわかる。これは、露光によって酸化亜鉛で生じた光生成ホールがDDVを酸化分解したものと推測できる。したがって、露光部の膜中ではDDVが光分解されたために、着色のための電圧を印加しても着色にいたらなかったものと考えられる。
【0098】
次に、本実施例における膜を用いた電極における吸光度変化と露光時間の関係について検討を行った。一定の時間DDVが還元され着色する電位を印加して吸光度を測定し、露光前と露光後の膜の着色時の吸光度を比較した。図30に、露光前と30分間露光した膜それぞれについて着色を行った際の吸光度変化を比較したグラフを示す。また、図31に、露光前と45分間露光した膜それぞれについて着色を行った際の吸光度変化を比較したグラフを示す。更に図32に、露光前と60分間露光した膜それぞれについて着色を行った際の吸光度変化を比較したグラフを示す。なおこの場合において測定条件は上記と同様とし、着色電位は-0.6Vとした。また、光強度は4W/mとした。
【0099】
この結果、30分間の露光によると、露光前の膜に比べ吸光度上昇幅が54%まで低下したことがわかる。また、露光時間を45分間、60分間と長くしていくとそれに伴い吸光度上昇幅は露光前の39%、29%となり、露光時間が長くなるにつれ吸光度の上昇幅が小さくなることが確認できた。これは、露光時間が長い膜のほうが光生成ホールの数が多くなり、それに伴いDDVの酸化分解がより進行したためと思われる。これにより、ZnOナノ粒子とDDVを含む膜電極では露光時間を調節することで色の濃淡による画像形成が可能であると考えられる。
【0100】
以上、本実施例により、ZnOナノ粒子を含む導電性ナノ粒子とビオロゲン化合物により消え残りの少ない良好な表示素子を得ることができるのを確認した。また膜形成の際、この膜に対し露光工程を含ませ更に露光時間を調整することで、色の濃淡による画像形成が可能となることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、エレクトロクロミック表示素子及びその製造方法として利用可能である。




図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31