TOP > 国内特許検索 > 銀ナノワイヤの製造方法 > 明細書

明細書 :銀ナノワイヤの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6266859号 (P6266859)
公開番号 特開2013-234341 (P2013-234341A)
登録日 平成30年1月5日(2018.1.5)
発行日 平成30年1月24日(2018.1.24)
公開日 平成25年11月21日(2013.11.21)
発明の名称または考案の名称 銀ナノワイヤの製造方法
国際特許分類 B22F   9/24        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   1/02        (2006.01)
D01F   9/08        (2006.01)
H01B   5/02        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
FI B22F 9/24 E
B22F 1/00 K
B22F 1/02 B
D01F 9/08 D
H01B 5/02 A
H01B 13/00 501Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2012-105786 (P2012-105786)
出願日 平成24年5月7日(2012.5.7)
審判番号 不服 2016-009692(P2016-009692/J1)
審査請求日 平成27年3月24日(2015.3.24)
審判請求日 平成28年6月29日(2016.6.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
発明者または考案者 【氏名】バラチャンドラン ジャヤデワン
【氏名】クヤ ウアマン ジョン レマン
【氏名】藤野 剛聡
【氏名】兒玉 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100101557、【弁理士】、【氏名又は名称】萩原 康司
【識別番号】100096389、【弁理士】、【氏名又は名称】金本 哲男
【識別番号】100095957、【弁理士】、【氏名又は名称】亀谷 美明
参考文献・文献 国際公開第2012/022332(WO,A2)
特開2009-129732(JP,A)
調査した分野 B22F 1/00- 8/00, 9/24
D01F 9/08
H01B 5/02,13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
1価のアルコールのみから成る溶媒と、ハロゲン化合物と、1分子中に10以上のCを含有する有機アミンとから成る溶液Aに、1価のアルコールのみから成る溶媒と、銀化合物とから成る溶液Bを添加することにより銀ナノワイヤを生成する、銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記有機アミンは、オレイルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記1価のアルコールは、1分子中に7~12のCを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記1価のアルコールは、ベンジルアルコール、ヘプタノール、オクタノールのいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記溶液Bを前記溶液Aに添加する際の前記溶液Aの温度を70℃以上、かつ、前記1価のアルコールの沸点以下とした状態で、10分間以上保持することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項6】
前記溶液Bの温度は、5~50℃であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化合物中のハロゲン元素と前記銀化合物中の銀とのモル比が0.01~0.1であり、前記有機アミンと前記銀化合物中の銀とのモル比が0.5~6.0であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項8】
前記溶液Bを前記溶液Aに添加した後の溶液中の銀濃度は、0.04~1mol/lであることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜の導電体として用いられる銀ナノワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス等の各種ディスプレイや各種太陽電池において、透明導電膜を用いた透明電極は必須の構成技術となっている。この透明導電膜の材料としては、ITOをはじめとする金属酸化物薄膜が主に用いられている。金属酸化物薄膜は、光透過性と導電性との両立が可能で耐久性にも優れており、特に、ITOは、光透過性と導電性とのバランスが良く、ウェットエッチングによる電極微細パターン形成が容易であることから、各種オプトエレクトロニクス用の透明電極として多用されている。
【0003】
透明導電膜に使用される金属酸化物薄膜は、一般的に真空蒸着法やスパッタ法により製造されるが、薄膜は金属酸化物であることから、曲げに弱く、最終製品のフレキシブル化の障害になる場合がある。また、真空蒸着法やスパッタ法は真空環境を必要とするため、処理装置が大掛りかつ複雑なものとなることや、成膜に大量のエネルギーを消費する等の課題があり、これらの課題に対する改善技術の開発が要請されている。
【0004】
このような要請に対して、透明導電膜の導電体として金属ナノワイヤを用いることが提案されている。太さが300nm以下であり、長さが3μm以上である金属ナノワイヤを用いることにより、透明導電膜の導電性と透明性の両立が可能となる。金属ナノワイヤを構成する金属については、Ag、Cu、Au等が検討されているが、電気導電性や耐酸化性に優れ、かつ金属価格が著しく高くないことからAgが好ましいと考えられ、銀ナノワイヤに関する技術が盛んに開発されている。このような銀ナノワイヤの製造方法としては、例えば、特許文献1~3および非特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】US2005/0056118号公報
【特許文献2】特開2009-242880号公報
【特許文献3】特開2009-299162号公報
【0006】

【非特許文献1】J.of Solid State Chem.1992,100,272~280
【非特許文献2】Chem.Mater.2002,14,4736~4745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および非特許文献1,2に開示されている方法は、ポリオールを溶媒とし、銀化合物および保護剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)を使用して銀ナノワイヤを得る技術である。しかしながら、この製造方法では、合成された銀ナノワイヤの表面にPVPが多く残留してしまう。銀ナノワイヤの表面に有機物が多く付着している場合、銀ナノワイヤを導電性フィルムの導電材として使用した時に、フィルムの導電性や透光性を劣化させる要因となる。これを回避するために、銀ナノワイヤを洗浄して、ワイヤ表面のPVP残留量を低減する必要があるが、その洗浄工程では多量の有機溶媒が必要となり、有機溶媒の処理コストが嵩む課題があった。
【0008】
また、PVPを使用しない銀ナノワイヤの製造方法としては、特許文献2、3に開示されている方法がある。これらの製造方法は、溶媒として水を用いて銀ナノワイヤを生成する方法であるが、水を溶媒としていることにより、銀ナノワイヤを生成させる際の溶液中の銀濃度が低く、生産性の点で課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決し、銀ナノワイヤの洗浄工程で使用される有機溶媒量の低減と銀ナノワイヤの生産性を両立させることができる銀ナノワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、1価のアルコールのみから成る溶媒とハロゲン化合物と、1分子中に10以上のCを含有する有機アミンとから成る溶液Aに、1価のアルコールのみから成る溶媒と銀化合物とから成る溶液Bを添加することにより銀ナノワイヤを生成する、銀ナノワイヤの製造方法が提供される。
【0011】
このとき、前記有機アミンは、オレイルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンのいずれかであることが好ましい。
【0012】
また、前記1価のアルコールは、1分子中に7~12のCを含有しているものであれば、さらに好ましい。このようなアルコールの例として、ベンジルアルコール、ヘプタノール、オクタノールなどが挙げられる。
【0013】
また、前記溶液Bを前記溶液Aに添加する際の前記溶液Aの温度を70℃以上、かつ、前記1価のアルコールの沸点以下とした状態で、10分間以上保持することがより好ましい。また、前記溶液Bの温度は、5~50℃であることが好ましい。
【0014】
また、前記ハロゲン化合物中のハロゲン元素と前記銀化合物中の銀とのモル比が0.01~0.1であり、前記有機アミンと前記銀化合物中の銀とのモル比が0.5~6.0であることが好ましい。また、前記溶液Bを前記溶液Aに添加した後の溶液中の銀濃度は、0.04~1mol/lであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、銀ナノワイヤの洗浄工程で使用される有機溶媒の量を確実に低減させることができる。また、アルコールを溶媒とすることにより、水を溶媒として用いた場合に比べて、溶液中の銀濃度を高くすることができる。これにより、洗浄工程で使用される有機溶媒量の低減と生産性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】SEMで観察した実施例1の条件で製造された銀ナノワイヤの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、銀ナノワイヤの製造方法に基づいて説明する。本発明の実施の形態では、加熱した溶液Aに溶液Bを添加し、反応させることにより銀ナノワイヤを製造する。

【0021】
まず、溶液Aの調液について説明する。溶液Aは溶媒、ハロゲン化合物および有機アミンから成る。

【0022】
溶液Aの溶媒は、1価のアルコールを用いる。このとき、1分子中に7~12のCを含有する1価のアルコールを用いることが好ましい。好適なアルコールの例として、ベンジルアルコール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。これらのアルコールは、銀に対して適度な還元力があり、銀ナノワイヤの生成に適している。さらに、これらのアルコールは沸点が比較的高く、常圧下で銀ナノワイヤを生成することが可能であるという利点がある。なお、多価アルコールを用いることもできる。また、アルコールを溶媒とすることにより、水を溶媒として用いた場合に比べて、溶液中の銀濃度を高くすることができる。

【0023】
溶液Aに含まれるハロゲン化合物の種類は特に限定されず、例えばCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TBAC(テトラブチルアンモニウムクロライド)、NaCl、KCl、HClを用いることができる。なお、使用するアルコールへの溶解度を考慮するとCTAB、TBAC、HClを使用することが好ましい。

【0024】
溶液Aに含まれる有機アミンは、Cが10以上(1分子中にCを10以上含む)のものを用いる。Cの原子数をこのように設定した理由は次の通りである。すなわち、銀が還元された際に特定の結晶面に有機アミンが付着しやすいことによって、還元により生成する銀がワイヤ状になると考えられるが、有機アミンの分子中のC原子数が少ないと、還元された銀の表面に有機アミンが付着したことによる銀の成長抑制効果が十分得られず、還元される銀がワイヤ状とならないおそれがあるためである。

【0025】
以上のように、溶液Aは、1価のアルコール、ハロゲン化合物および1分子中にCを10以上含む有機アミンを混合することにより得られる。

【0026】
次に、溶液Bの調液について説明する。溶液Bは溶媒および銀化合物から成る。

【0027】
溶液Bの溶媒は、1価のアルコールを用いる。好適なアルコールの例として、ベンジルアルコール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。これらのアルコールは、銀に対して適度な還元力があり、銀ナノワイヤの生成に適している。さらに、これらのアルコールは沸点が比較的高く、常圧下で銀ナノワイヤを生成することが可能であるという利点がある。なお、多価アルコールを用いることもできる。また、アルコールを溶媒とすることにより、水を溶媒として用いた場合に比べて、溶液中の銀濃度を高くすることができる。

【0028】
また、溶液Bに含まれる銀化合物の種類は、溶液Bの溶媒に溶解すれば特に限定されるものではなく、例えば、硝酸銀、酢酸銀、酸化銀を使用することができる。なお、溶媒に対する溶解度とコストの観点から、硝酸銀を用いることが好ましい。

【0029】
以上のように、溶液Bは、1価のアルコールおよび銀化合物を混合することにより得られる。なお、溶液Bの温度は、室温と同じ温度としておくことが好ましい。これは、液温が低すぎると銀化合物の溶解工程に時間がかかり、液温が高すぎると溶媒であるアルコールによる銀の還元反応が進行してしまうことがあるためである。よって、溶液Bの温度は、5~50℃、好ましくは10~40℃が望ましい。

【0030】
次に、銀ナノワイヤの生成反応工程について説明する。

【0031】
まず、溶液Aを加熱する。このとき、溶液Aの温度は、70℃以上、かつ、使用するアルコールの沸点以下とすることが好ましい。この温度の範囲外となる場合には、銀ナノワイヤが十分生成しないことがある。また、銀ナノワイヤの生成に要する時間を短縮するためには、溶液Aの温度は、90℃以上、かつ、使用するアルコールの沸点以下とすることが更に好ましい。

【0032】
その後、加熱された溶液Aに溶液Bを添加して攪拌する。そして、その状態を保持することにより、銀ナノワイヤを含有するスラリーを得ることができる。このとき、溶液Aに溶液Bを添加した後の液温を70℃以上、かつ、使用するアルコールの沸点以下とした状態で、10分間以上保持することが好ましい。これにより、銀ナノワイヤを十分に生成させることができる。このとき、銀ナノワイヤの表面には、1分子中に10以上のCを含有する有機アミンが付着している。この有機アミンは、銀から適度に脱離しやすい性質を有している。

【0033】
また、溶液Aに溶液Bを添加した後の液中の銀濃度は、0.04~1mol/lであることが好ましい。これは、銀濃度が0.04mol/l未満の場合には銀ナノワイヤの生産性が低くなり、1mol/lを超える場合には銀ナノワイヤが十分生成しないためである。また、ハロゲン化合物、有機アミン、銀化合物の量は、それぞれのモル数の比率として以下の比率とすることが好ましい。
ハロゲン化合物(ハロゲン元素として)/銀=0.01~0.1
有機アミン/銀=0.5~6.0
これは、ハロゲン化合物と銀のモル比が上記範囲外の場合や有機アミンと銀のモル比が上記範囲より小さい場合には、銀ナノワイヤの収率が低下する場合があり、有機アミンと銀のモル比が上記範囲より大きい場合には、後述する銀ナノワイヤの洗浄工程において、洗浄効率が低下するおそれがあるためである。

【0034】
次に、銀ナノワイヤの洗浄工程について説明する。

【0035】
まず、銀ナノワイヤを含有するスラリーを遠心分離もしくはデカンテーションにより固液分離する。そして、固液分離した銀ナノワイヤに有機溶媒を添加して攪拌することにより、有機溶媒に分散した銀ナノワイヤの分散液を得る。この分散液を遠心分離もしくはデカンテーションにより再び固液分離し、有機溶媒を添加・攪拌することにより、再び銀ナノワイヤの分散液を得る。このような作業を数回繰り返すことにより、銀ナノワイヤは洗浄される。なお、前述のように、洗浄前の銀ナノワイヤの表面には、銀から脱離しやすい有機アミンが付着している。このため、この洗浄工程において、銀ナノワイヤ表面に付着する余分な有機アミンを少量の有機溶媒で容易に脱離させることができる。

【0036】
そして、洗浄工程終了後に、銀ナノワイヤが分散した分散液から有機溶媒を除去することにより、本発明の実施の形態に係る銀ナノワイヤを得ることができる。なお、有機溶媒として、例えばアセトン、トルエン、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等を使用することができる。

【0037】
以上のように、本発明によれば、銀ナノワイヤの生成反応にPVPを使用せず、銀ナノワイヤの表面から脱離しやすい有機アミンを使用しているため、洗浄工程で容易に有機アミンを脱離させることができる。これにより、洗浄時に多量の有機溶媒を使用する必要がなく、洗浄工程で発生する有機溶媒の処理コストを抑えることができる。また、本発明に係る銀ナノワイヤは、表面に残存する有機物量が少ないため、透明導電膜の導電体として用いる場合に高い導電性を発現する。

【0038】
また、銀ナノワイヤの生成反応における溶媒としてアルコールを用いることにより、水を溶媒として用いた場合に比べて、溶液中の銀濃度を高くすることができる。これにより、銀ナノワイヤの洗浄工程で使用される有機溶媒量の低減と銀ナノワイヤの生産性を両立させることができる。

【0039】
なお、銀ナノワイヤは、透明導電膜の導電体に適用される場合に、銀ナノワイヤが接触し合うことによって導電ネットワークを形成し、導電性を発現する。ワイヤが長い方が導電ネットワーク形成に有利であり好ましいが、ワイヤが長すぎるとワイヤ同士が絡み合って凝集体を生じ、光散乱を劣化させる場合がある。このため、銀ナノワイヤの長軸方向の長さの平均値(以下、「長さ」と称する場合もある)は、3μm以上であることが好ましく、特に、3~500μmが好ましい。5~300μmであれば、より一層好ましい。

【0040】
また、本発明の銀ナノワイヤを透明導電膜の導電体として用いる場合、光散乱の影響を軽減し透明性を高めるために金属ナノワイヤの短軸方向の長さの平均値(以下、「幅」と称する場合もある)は300nmより小さいことが好ましく、一方で、幅の値が小さすぎる場合には導電性の低下要因になることがある。銀ナノワイヤの幅は10~300nmが好ましく、10~200nmが更に好ましい。

【0041】
なお、銀ナノワイヤの長さおよび幅は、十分な数の銀ナノワイヤを電子顕微鏡写真で撮影し、個々の銀ナノワイヤ像の長さおよび幅を測値し、算術平均することにより求めることができる。また、計測対象の銀ナノワイヤ数は、100個以上が好ましい。
【実施例】
【0042】
銀ナノワイヤの生成反応における分散剤として、従来のようなPVPを用いて、銀ナノワイヤを製造した。
(比較例1)
0.479gの硝酸銀とエチレングリコール30mlからなる溶液(溶液X)と、の0.492gポリビニルピロリドン(平均分子量55000、N-ビニル-2-ピロリドンのモル濃度として0.144mol/l)と0.0233gの鉄(III)-アセチルアセトナートと0.105gのNaClとエチレングリコール30mlからなる溶液(溶液Y)を準備した。50mlのエチレングリコールを160℃まで加熱、攪拌し、ここに液温25℃の溶液Xと液温25℃の溶液Yを同時に4分間かけて添加して、銀ナノワイヤを含有する分散液を得た。
【実施例】
【0043】
この分散液にアセトン300mlを添加、攪拌した後、500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去した。その後、ポリビニルピロリドンを溶解するために純水100mlを添加し攪拌した。そこにアセトンを300ml(純水の3倍容量)加えて攪拌した後、静置することにより、固形物を沈殿させた。前記のアセトン添加から静置する工程までを更に2回繰返しおこなった。沈殿させた固形物を取り出し、イソプロピルアルコール100mlを加えて分散させて分散液を得た。この分散液を500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去し、その後イソプロピルアルコール100mlを加えて分散させた。この遠心分離およびイソプロピルアルコールを添加する操作をさらに1回実施することにより、銀ナノワイヤを洗浄した。
【実施例】
【0044】
その後、分散液を分取し、溶媒を観察台上で揮発させて、銀ナノワイヤをSEMで観察した。SEM写真で得られた100個の銀ナノワイヤを測定対象として、銀ナノワイヤの長さおよび幅を求めた結果、長さは30μm、幅は100nmであった。同様に、塗布液を分取し試料台の上で溶媒を揮発させて、X線回折装置(フィリップス社製、X’Pert)を用いて、X線としてCu-Kaを使用し、管電圧40V、管電流40A、スキャンスピード0.0435度/sの条件で測定をおこなった結果、金属銀のピークが認められた。これらの結果から、比較例1の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。なお、比較例1で用いた有機溶媒の量は「1610ml」であった。
【実施例】
【0045】
(比較例2)
1回あたりに添加するアセトンの量を300mlから100mlに変更した以外は比較例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価を試みた。結果、アセトン100mlを加えて攪拌した後、24時間静置しても固形物が十分沈殿せず、洗浄を進めることができなかった。
【実施例】
【0046】
(比較例3)
1回あたりに添加するアセトンの量を300mlから100mlに変更し、アセトンを加えて攪拌した後に静置することに変えて500rpm、45分間の条件で遠心分離することに変更した以外は比較例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価を試みた。結果、500rpm、45分間の条件で遠心分離しても固形物が十分沈殿せず、洗浄を進めることができなかった。
【実施例】
【0047】
(比較例4)
1回あたりに添加するアセトンの量を300mlから100mlに変更し、アセトンを加えて攪拌した後に静置することに変えて3000rpm、45分間の条件で遠心分離することに変更した以外は比較例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価を試みた。銀ナノワイヤをSEMで観察したところ、銀ナノワイヤ同士が接合したような形態であり、一部は板状の形態となっていた。
【実施例】
【0048】
以上のように、比較例1では銀ナノワイヤを合成することができたが、比較例2~4では使用する有機溶媒の量を比較例1よりも少なくしたことにより、銀ナノワイヤを合成することができなかった。すなわち、PVPを分散剤として用いる限り、使用される有機溶媒の量を低減できないことが確認された。
【実施例】
【0049】
次に、表1に示す条件で、本発明の実施の形態に係る銀ナノワイヤを製造した。
【実施例】
【0050】
【表1】
JP0006266859B2_000002t.gif
【実施例】
【0051】
(実施例1)
70mlのベンジルアルコールにオレイルアミン(シグマアルドリッチ製)4.8gとテトラブチルアンモニウムクロライド(和光純薬工業製)0.083gを添加し、溶解させて溶液Aを得た。次に、20mlのベンジルアルコールに硝酸銀0.85gを添加し、溶解させて溶液Bを得た。
【実施例】
【0052】
その後、溶液Aの全量を室温から130℃まで攪拌しながら加熱した。そこに、溶液の温度を130℃で維持しながら、液温が25℃の溶液Bを20minかけて20ml添加して、反応液を得た。この反応液を100rpmの攪拌速度で1時間攪拌しながら、130℃の温度を維持した。その後、反応液を25℃まで冷却し、銀ナノワイヤを含有する溶液を得た。この溶液を500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去し、その後、アセトン30mlを加えて攪拌し、銀ナノワイヤを分散させ、分散液を得た。この分散液に対し、500rpm、2分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去した後、トルエン10mlとイソプロピルアルコール10mlを混合した溶媒を添加して攪拌し、再び遠心分離を行った。このようにして、遠心分離および溶媒添加・攪拌の操作を3回繰り返すことにより、銀ナノワイヤを洗浄し、銀ナノワイヤを含む分散液を得た。
【実施例】
【0053】
この分散液を分取し、溶媒を観察台上で揮発させて、銀ナノワイヤを電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図1に示す。SEM写真で得られた100個の銀ナノワイヤを測定対象として、銀ナノワイヤの長さおよび幅を求めた結果、長さは20μm、幅は55nmであった。同様に、分散液を分取し試料台の上で溶媒を揮発させて、比較例1と同様にしてX線回折装置を用いて測定をおこなった結果、金属銀のピークが認められた。これらの結果から、実施例1の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。なお、実施例1で用いた有機溶媒の量は、「180ml」であった。
【実施例】
【0054】
(実施例2)
溶液Bの添加時間を20分間から2秒間に変更し、加熱温度を130℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。なお、溶液Bの添加直後の液温は、一時的に100℃まで低下した。実施例2の製造方法で得られた銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例2の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。なお、実施例2~15について、SEM写真で得られた100個の銀ナノワイヤを測定対象として、銀ナノワイヤの長さおよび幅を求めた結果、いずれの実施例も、長さは15~20μm、幅は45~60nmの範囲内であった。
【実施例】
【0055】
(実施例3)
溶液Bの添加時間を2秒間から4分間に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例3の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0056】
(実施例4)
溶液Bの添加時間を2秒間から8分間に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例4の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0057】
(実施例5)
溶液Bの添加時間を20分間から8分間に変更し、加熱温度を130℃から110℃に変更し、遠心分離の回転数を100rpmから500rpmに変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの添加量を0.081gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例5の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0058】
(実施例6)
硝酸銀の添加量を0.085gに変更し、添加するアミンをオレイルアミン4.8gからドデシルアミン(和光純薬工業製)3.7gに変更し、溶液Bの添加時間を20分間から8分間に変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの添加量を0.081gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例6の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0059】
(実施例7)
添加するアミンをドデシルアミン3.7gからヘキサデシルアミン(和光純薬工業製)4.8gに変更した以外は、実施例6と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例7の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された
【実施例】
【0060】
(実施例8)
添加するアミンの種類をヘキサデシルアミンからオクタデシルアミン(和光純薬工業製)に変更し、攪拌回転数を100rpmから130rpmに変更し、130℃の温度を維持する時間を1時間から30分間に変更した以外は、実施例7と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例8の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0061】
(実施例9)
溶液Bの添加時間を20分間から15分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例9の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0062】
(実施例10)
硝酸銀の量を0.85gから1.7gに変更し、有機アミンをオレイルアミン4.8gからドデシルアミン7.4gに変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの量を0.083gから0.17gに変更し、加熱温度を130℃から150℃に変更し、加熱温度の維持時間を1時間から30分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例10の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0063】
(実施例11)
硝酸銀の量を1.7gから3.4gに変更し、ドデシルアミンの量を7.4gから14.8gに変更し、テトラブチルアンモニウムクロライドの量を0.17gから0.32gに変更した以外は、実施例10と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例11の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0064】
(実施例12)
ドデシルアミンの量を7.4gから6.8gに変更し、使用するハロゲン化合物をテトラブチルアンモニウムクロライド0.17gから塩化ナトリウム(NaCl)0.034gに変更した以外は、実施例10と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例12の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0065】
(実施例13)
使用するハロゲン化合物を塩化ナトリウム(NaCl)0.034gから塩化カリウム(KCl)0.044gに変更した以外は、実施例12と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例13の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0066】
(実施例14)
使用するハロゲン化合物を塩化ナトリウム(NaCl)0.034gから塩化アンモニウム(NHCl)0.032gに変更した以外は、実施例12と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例14の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0067】
(実施例15)
使用するハロゲン化合物を塩化ナトリウム(NaCl)0.034gからHClを0.022g含む濃塩酸水溶液に変更した以外は、実施例12と同様の方法で、銀ナノワイヤの合成と評価をおこなった。合成された銀ナノワイヤをSEMで観察した結果、実施例1と同様にワイヤ状の生成物が確認された。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例15の製造方法により、正常に銀ナノワイヤが得られることが確認された。
【実施例】
【0068】
以上のように、実施例1~15では、銀ナノワイヤの生成反応における分散剤として、1分子中に10以上のCを含有するオレイルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンのいずれかを用いて銀ナノワイヤを合成することができた。また、実施例では、合成過程において使用された有機溶媒の量(180ml)が、比較例1で使用された有機溶媒の量(1610ml)に比べて、非常に少ないことがわかる。すなわち、本発明によれば、銀ナノワイヤの生成反応における分散剤として1分子中に10以上のCを含有する有機アミンを用いることにより、使用される有機溶媒量を低減できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、透明導電膜の導電体として用いられる銀ナノワイヤの製造に適用できる。
図面
【図1】
0