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Specification :(In Japanese)放射性セシウム汚染土壌の分級・洗浄効果を向上させる除染方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6083591
Publication number P2014-006111A
Date of registration Feb 3, 2017
Date of issue Feb 22, 2017
Date of publication of application Jan 16, 2014
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)放射性セシウム汚染土壌の分級・洗浄効果を向上させる除染方法
IPC (International Patent Classification) G21F   9/28        (2006.01)
B03B   5/00        (2006.01)
B03B   1/04        (2006.01)
FI (File Index) G21F 9/28 521A
B03B 5/00 A
B03B 5/00 Z
B03B 1/04
G21F 9/28 Z
Number of claims or invention 5
Total pages 10
Application Number P2012-140943
Date of filing Jun 22, 2012
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第2項適用 粘土科学第50巻第2号(平成23年12月25日)日本粘土学会発行第52-57ページに発表
Date of request for substantive examination May 13, 2015
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】長縄 弘親
【氏名】柳瀬 信之
【氏名】永野 哲志
【氏名】三田村 久吉
Representative (In Japanese)【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100092967、【弁理士】、【氏名又は名称】星野 修
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
Examiner (In Japanese)【審査官】後藤 孝平
Document or reference (In Japanese)特開2013-190364(JP,A)
長縄弘親,ほか9名,ポリイオンコンプレックスを固定化剤として用いる土壌表層の放射性セシウムの除去,日本原子力学会和文論文誌,日本,一般社団法人 日本原子力学会,2011年 9月27日,Vol10, No.4,p227-234
“放射性物資による環境汚染の再生に対する総合的な支援体制を構築”,[online],株式会社熊谷組,2012年 3月29日,インターネット<URL:http://www.kumagaigumi.co.jp/news/2011/nw_120305_1.html>
Ron Anderson, 他2名,“Particle size separation via soil washing to obtain volume reduction”,Journal of Hazardous Materials,Elsevier,1999年 4月23日,Vol. 66, Issues 1-2,p. 89-98
Field of search G21F 9/28
B03B 1/04
B03B 5/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
放射性セシウムにより汚染された土壌にポリイオン水溶液を散布して、土壌中でポリイオンをゲル化させた後、土壌表層を剥がして、大粒の土壌粒子表面に付着している微細粒子を洗い出し、放射性セシウムが吸着・固定されている微細粒子を凝集させて大粒の粒子の表面への再付着を防止しながら分級・洗浄し、分級サイズが0.075mm未満の微細粒子分画を放射性廃棄土壌とする、放射性セシウム汚染土壌の除染方法。
【請求項2】
前記ポリイオン水溶液は、
カチオン化セルロース、カチオン化でんぷん、アミノ基を有するポリマーもしくは4級アンモニウム塩のポリマーから選択されるポリ陽イオンを含む水溶液;
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリスルホン酸およびその塩から選択されるポリ陰イオンを含む水溶液、もしくは
ポリ陽イオンとポリ陰イオンとを含む水溶液である、請求項1に記載の除染方法。
【請求項3】
前記ポリイオン水溶液は、ポリ陽イオン及び/又はポリ陰イオンを1~6wt%含む水溶液である、請求項2に記載の除染方法。
【請求項4】
前記ポリイオン水溶液は、ゲル状のポリイオン複合体を生じていない、請求項2又は3に記載の除染方法。
【請求項5】
前記ポリイオン水溶液は、ポリ陽イオンとポリ陰イオンの両方を含む場合には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウムから選択される塩をさらに含む、請求項4に記載の除染方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウム汚染土壌の分級・洗浄効果を向上させる除染方法に関する。特に、放射性セシウム汚染土壌の除染において、ポリイオンの有する土壌中微細粒子に対する凝集作用を利用して、分級・洗浄効果を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故で飛散した放射性物質により、広範囲にわたって土壌が汚染された。事故の発生から1年以上を経過した平成24年5月現在、半減期の短い放射性ヨウ素はほとんど存在せず、半減期の長い放射性セシウム(Cs-137:半減期30年、Cs-134:半減期約2年)が主たる汚染物質である。
【0003】
放射性セシウムは、粘土などの微細粒子に吸着固定化された状態で表層の土壌(表土)にとどまりやすい性質がある。よって、汚染土壌の除染には、多くの放射性セシウムが表土に存在しているうちに、表土のみを剥離することが最も有効である。剥離した表土は、放射性セシウムの半減期のおよそ10倍の長期間にわたって適切に遮蔽保管されなければならないが、発生する廃棄土の量は膨大である。国土面積の狭い日本では、廃棄土を遮蔽保管するための処分場の確保に限界があり、廃棄土の減容化が必須である。廃棄土の減容方法としては、酸抽出法(非特許文献1参照)、土壌燃焼法(非特許文献2参照)といった方法も知られているが、酸抽出法のような化学処理は環境負荷の大きさと安全面での問題があり、土壌燃焼法はコスト面での問題が大きい。
【0004】
一方、非放射性物質による汚染土壌の浄化方法として、分級(ふるい分け)と洗浄により土壌全体から有害成分(重金属イオンなど)及びそれを濃集する粘土などの微細粒子を分離・分別し、汚染土壌の量を減容する、土壌分級・洗浄法と呼ばれる土壌浄化技術が知られている(非特許文献3及び非特許文献4参照)。ところが、通常の分級・洗浄方法では、大粒の粒子の表面に微細粒子が付着することで、分級・洗浄が効率的に進行しないという難点があった。
【0005】
汚染土壌表層を必要最小限の深さで効果的かつ効率的に剥がすために、分子性ポリマーや自硬性セメントを散布して土壌表層を固化させる方法が知られている。分子性ポリマーは短時間で土壌表層を固化できるが、分級・洗浄の際には、水で固化状態を軟化させるために長時間を要する。自硬性セメントは、いったん固化してしまうと水で軟化させることができないため、水を用いて分級・洗浄することは不可能になる。
【0006】
水処理分野においては、汚水中の懸濁成分を凝集・フロック化して分離する高分子凝集剤が汎用されており、ポリ陽イオン系又はポリ陰イオン系の高分子凝集剤が知られている(特許文献1及び特許文献2)。一方、分級・洗浄技術においては、界面活性剤あるいは汚染物質(除去対象の物質)と結合する薬剤を利用して洗浄効果を向上させる工夫は経験的に行われているものの、分級・洗浄効果を向上させる目的で、微細粒子を凝集させる作用を持つ薬剤が利用されたことはない。
【0007】
本発明において、凝集剤は、粗い粒子の表面に付着した微細な粒子の再付着を防ぐことで分級・洗浄効果を向上させる働きをするが、分級・洗浄の分野において、今までこのような凝集剤の作用が注目されたことはなかった。分級・洗浄効果の向上には、もっぱら表面研磨法などの物理的な方法に基づいて、機械・装置の工夫がなされてきた。たとえば、機械的に粒子間の摩擦を発生させて研磨能力を向上させる方法がある(非特許文献4及び非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平9-164389号公報
【特許文献2】特開平7-224104号公報
【0009】

【非特許文献1】“土壌中のセシウムを低濃度の酸で抽出することに成功,” 産業技術総合研究所プレスリリース, 2011年8月31日
【非特許文献2】“福島県飯舘村で新たな除染試験:高濃度の土壌を焼却,” 共同通信, 2011年10月26日
【非特許文献3】“区域内措置優良化ガイドブック”, 環境省, 水・大気環境局土壌環境課, 43-46 (2011). http://www.env.go.jp/water/dojo/gb_me/
【非特許文献4】二見達也, “分級,比重選別,表面研磨等による重金属汚染土壌浄化実用技術の一例”, 地学雑誌, 116(6), 932-940 (2007)
【非特許文献5】平成23年度「除染技術実証試験事業」概要,独立行政法人日本原子力研究開発機構福島技術本部,第7回原子力委員会資料1-2号,p10,12,平成24年2月21日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、放射性セシウムで汚染された土壌の除染処理により産出される放射性廃棄土を減容する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、土壌処理剤としての利用が期待されているポリイオンが、廃棄土の分級・洗浄においても有効な作用を有し、その効率を大きく向上させることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
放射性セシウム汚染土壌の除染には、放射性セシウムの多くが存在する表層土壌(表土)の剥ぎ取りが最も有効である。放射性セシウムの多くは粘土質の微細粒子成分に強く吸着・固定化されているため、粗い粒子を洗浄しながら、微細粒子だけを分級して集め、放射性セシウムを含む微細粒子成分のみを放射性廃棄土として処理する。洗浄した粗い粒子成分は、放射性セシウムを含まないので、もとの場所に戻したり、セメントの骨材などとして再利用したりすることも可能である。
【0013】
本発明によれば、ポリイオン水溶液を土壌に散布後、表土を剥ぎ取り、次いで水を使って剥ぎ取った表土を分級・洗浄すると、大粒の粒子表面に付着している微細粒子が洗い出され、ポリイオンの有する微細粒子に対する凝集作用によって、洗い出された微細粒子が凝集して大粒の粒子に再付着することが防止される。こうして、従来の方法では大粒の粒子に付着して分離が困難であった微細粒子を大粒の粒子から排除し、分級・洗浄効果を向上させることができる。
【0014】
具体的には、放射性セシウムにより汚染された土壌にポリイオン水溶液を散布し、続いて当該土壌の表層を剥離除去した後、生じる放射性廃棄土壌を分級・洗浄し、分級サイズが0.075mm未満の微細粒子分画を放射性廃棄土壌とする、放射性セシウム汚染土壌の除染方法が提供される。実施例において詳述するように、本発明の方法によれば、たとえば、0.075mmメッシュの篩を用いることで、放射性セシウムの85%程度を0.075mm未満の微細粒子分画に濃縮できるため、放射性セシウムをあまり含まない0.075mm以上の粒子分画は放射性廃棄土壌を構成せず、大幅な減容が達成できる。放射性廃棄土壌としない分画は、洗浄後、埋め戻したり、骨材として再利用したりできる。なお、分級に用いる篩としては、0.075mmメッシュの規格のものが好ましいが、これよりも細かいメッシュ(たとえば、0.05mmメッシュ)の篩も、用いることは可能である。
【0015】
ポリイオンにはポリ陽イオンとポリ陰イオンの2種類があり、上記の方法においては、ポリ陽イオンとしては、カチオン化セルロース、カチオン化でんぷん、アミノ基を有するポリマーもしくは4級アンモニウム塩のポリマーなどが利用できる。ポリ陰イオンとしては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリスルホン酸およびその塩などが利用できる。また、ポリ陽イオンとポリ陰イオンとを混合して用いることもできる。この場合、土壌への散布時にゲル状のポリイオン複合体を生じさせないように、2~6wt%の塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムなど)を加えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、放射性セシウムにより汚染された土壌の表層を剥ぎ取った後に、これを減容するために行う分級・洗浄において、その効果を向上させることができる。
【好ましい実施形態】
【0017】
本発明の除染方法は、放射性セシウムにより汚染された土壌にポリイオン水溶液を散布し、当該土壌の表層を剥離除去し、生じる放射性廃棄土壌を分級し、分級サイズが0.075mm未満の微細粒子分画を放射性廃棄土壌とする。分級サイズが0.075mmを越える分級分画は洗浄し、埋め戻し又は再利用する。
【好ましい実施形態】
【0018】
ポリイオン水溶液としては、カチオン化セルロース、カチオン化でんぷん、アミノ基を有するポリマーもしくは4級アンモニウム塩のポリマーから選択されるポリ陽イオンを含む水溶液;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリスルホン酸およびその塩から選択されるポリ陰イオンを含む水溶液、もしくはポリ陽イオンとポリ陰イオンとを含む水溶液を好ましく用いることができる。特に、ゲル状のポリイオン複合体を形成させずにポリイオン水溶液として用いることで、汚染土壌への散布及び土壌中の微細粒子への拡散が容易になるので好ましい。ポリイオン複合体の形成は、ポリイオン水溶液に、ポリ陽イオンとポリ陰イオンとが結合することを防止する緩衝剤として、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムを1~6wt%含有させることで防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例及び比較例の各分画の重量割合を比較するグラフである。
【図2】図2は、実施例及び比較例の各分画の放射能濃度の分布率を比較するグラフである。

【実施例】
【0020】
以下、ポリイオンで処理した土壌の分級・洗浄におけるポリイオンの影響を1つの例として、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
剥離した表土を減容する目的で分級・洗浄を行う際、土壌処理剤が分級・洗浄に与える影響を把握する必要がある。そこで、ポリイオンで処理した土壌と未処理の土壌について、同一の方法で分級・洗浄を行い、その効果を比較した。
【0021】
具体的には、福島県飯舘村飯樋の畑の1m四方の範囲においてポリイオン処理した土壌(ポリイオン水溶液を散布して2日間放置した土壌)およびこれと近接する未処理の土壌を採取し、分級・洗浄試験に用いた。また、ポリ陽イオンとしてカチオン化セルロース、ポリ陰イオンとしてカルボキシメチルセルロースを用いて、ポリイオン水溶液を調製した。ポリイオン水溶液は、ポリ陽イオンとポリ陰イオンとを合わせて3wt%含む水溶液とし、ポリイオン複合体が生成しないように(ポリイオン複合体のゲルが発生していない通常の水溶液として散布できるように)3wt%の塩化ナトリウムを加えたものである。なお、ポリイオン水溶液は5L/m2の量で土壌に散布した。
【0022】
上記のポリイオン処理を行った土壌サンプルに対して、水(水道水)を用いて分級・洗浄を行った。なお、分級には、メッシュサイズが0.075mm、0.125mm、0.25mm、0.5mm、2.0mm、4.75mmのステンレスふるいを用い、振動などの機械力を利用しながら丁寧に水洗浄した。また、未処理の土壌についても、同一の方法で分級・洗浄を行い、ポリイオン処理した土壌の場合と比較した。分級サイズを<0.075mm、0.075-0.125mm、0.125-0.25mm、0.25-0.5mm、0.5-2.0mm、2.0-4.75mm、>4.75mmの7つの領域に分画し、それぞれの分級サイズについて、乾燥重量(g)、放射能(Bq)を測定した。これらの測定結果から、それぞれの分級サイズにおける重量割合(%)、放射能割合(%)を求めた。放射能は、NaIシンチレーション検出器により計測した。表1に未処理土壌の分級・洗浄の結果、表2にポリイオン処理した土壌の分級・洗浄の結果を示す。
【0023】
【表1】
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【0024】
【表2】
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【0025】
表1と表2を比べると、ポリイオン処理した土壌では、未処理の土壌と比較して、0.075mm未満の分級サイズにおける放射能割合が大きいことがわかる。このことは、ポリイオン処理した土壌の方が分級・洗浄の効率が高いことを意味している。ポリ陽イオン、ポリ陰イオンは、微細粒子に対して凝集作用を有していることから、大きい粒子の表面に付着した微細粒子を剥離・除去する効率が高められたと考えられる。すなわち、微細粒子が大きい粒子に再付着することを防ぎながら、微細粒子だけを効果的に凝集させることができるため、分級・洗浄の効率が向上したと考えられる。
【0026】
0.075mm未満の微細粒子成分が5割程度を占める飯舘村飯樋の畑土壌について本発明の除染方法を行うと、全放射能の9割近くが0.075mm未満の分級サイズに集まることがわかった。9割近くのセシウム除去率が十分と判断されるならば、廃棄土を半分程度に減容できることになる。なお、0.075mmよりも小さいサイズに分級することができれば、廃棄土の量を更に少なくできる可能性もある。
【0027】
廃棄土の減容率は、土壌に含まれる粘土質の割合に大きく左右される。0.075mm未満の微細粒子の多くは粘土質だからである。飯舘村飯樋の畑土壌では、粘土質の微細粒子成分が多いため、廃棄土の減容率は高くはならないが、粘土質が少ない土壌では、大きな減容が得られると考えられる。
【0028】
[比較例1]
ポリ酢酸ビニルのような分子性ポリマーは、ポリイオンよりも短い時間で土壌を乾燥・固化できる利点を持ち、短期間で汚染土壌を除染(表土を除去)する場合には有効である。そこで、ポリ酢酸ビニルの懸濁液についても、ポリイオン処理を行った土壌に近接した1m四方の土壌に散布し、乾燥を待って剥ぎ取った後、実施例1に示すのと同じ要領で分級・洗浄を行った。ただし、ポリ酢酸ビニルで処理した土壌は、固化したポリ酢酸ビニルを水で軟化するのに若干の時間を要するため、処理土壌を6時間、水に浸した後、分級・洗浄を行った。ポリ酢酸ビニルで処理した飯舘村飯樋の畑土壌の分級・洗浄の結果を表3に示す。
【0029】
【表3】
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【0030】
表1と表3を比較して、0.075mm未満の分級サイズにおける放射能割合は、分子性ポリマー(ポリ酢酸ビニル)で処理した土壌と未処理の土壌とで一見すると大きな差はない。
【0031】
実施例および比較例として、未処理土壌、ポリイオン処理土壌、分子性ポリマー処理土壌での分級・洗浄データを示したが、上記の表1~3に示した数値を直接比較しても、未処理、ポリイオン処理、分子性ポリマー処理の3者の違いを公平に比較したことにはならない。なぜなら、たとえ同じ畑で採取したサンプルを用いたとしても、土壌は均質ではないので、それぞれのサンプルで分級サイズの分布が異なるからである。一方、同一の畑の近接する位置の土壌であれば、それぞれの分画(分級サイズ)における粒子組成はほぼ同じとみなせる。ただし、粗い粒子に微細粒子が付着した状態を考慮すると、事実上、完璧な分画は不可能である。実際、洗浄後の粗い粒子(0.075mmを越える粒子)の分画にも、ある程度の放射能が測定されている。これは、放射性セシウムを濃縮した微細粒子がわずかに残存するためである。しかも、処理法によって各分画に残存する微細粒子の量が異なる。そこで、各分画の重量割合を、未処理、ポリイオン処理、分子性ポリマー処理の3者で比較した。その結果を図1に示す。上述したように、ポリイオン処理した土壌は0.075mm未満の分画における放射能割合が大きく(逆に粗い粒子の分画における放射能割合は小さく)、他の土壌と比べれば残存微細粒子の量は少ないはずである。もし、各分画に残存する微細粒子の重量が、その分画の全体重量に対して無視できないならば、微細粒子の残存量が少ないポリイオン処理土壌の場合は、粗い粒子(0.075mm以上の粒子)の分画の山が、他の土壌の場合と比べて低くなるはずである。ところが、図1を見る限り、粗い粒子の分画の山の高さに3者間で大きな差は見られない。よって、粗い粒子の分画における残存微細粒子の重量比は、その分画の全体重量に対して十分に小さいと推測した。
【0032】
以上のことから、分級・洗浄の効果を判断する指標として、放射能濃度の分布率の考え方を適用することが可能である。以下に、各分画における放射能濃度の分布率の求め方、および得られた放射能濃度と分布率の数値を示す。
【0033】
まず、未処理、ポリイオン処理、分子性ポリマー処理の3者について、各分画における放射能濃度を求め、各分画に対して計算された放射能濃度(Bq/g)を表4にまとめた。なお、放射能濃度とは、以下に定義される値である。
【0034】
【数1】
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【0035】
【表4】
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【0036】
放射能濃度から分布率(%)を求めるには、以下の式を用いる。
【0037】
【数2】
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【0038】
式中、Diは分画iにおける分布率(%)、Ciは分画iにおける放射能濃度(Bq/g)、ΣCi はすべての分画における放射能濃度の和(全放射能濃度)である。また、上記のように、すべての分画における分布率の和は100である。
【0039】
表5に、未処理土壌、ポリイオン処理土壌、分子性ポリマー処理土壌の各分画における放射能濃度の分布率(%)を比較した結果を示す。
【0040】
【表5】
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【0041】
表5のデータをグラフにして図2に示す。未処理の土壌では、分級サイズが大きくなるに従って、放射能濃度の分布率もほぼ一様に増加していく。それに対し、ポリイオン処理土壌では、0.075mm未満の分級サイズ(最小サイズの分画)で急激に放射能濃度の分布率が大きくなり、かつ0.075mm以上の分級サイズでは低い分布率が保たれている。このことから、ポリイオン処理土壌では未処理の土壌と比べると格段に分級・洗浄の効果が高いことがわかる。また、分子性ポリマー処理土壌と比較しても、ポリイオン処理土壌の方が分級・洗浄の効果が高いことがわかる。分子性ポリマー処理土壌は、未処理土壌とポリイオン処理土壌の中間に位置するが、傾向にはポリイオン処理土壌との類似性がある。よって、分子性ポリマー(ポリ酢酸ビニル)にも、微細粒子に対する若干の凝集作用がある可能性が示唆される。
【0042】
分級・洗浄では、微細粒子分画(最小サイズ分画)のみを集めることで廃棄土壌の減容を図ることから、0.075mm未満の分画への放射能濃度の分布率という観点で比較すると、未処理土壌では28.0%、分子性ポリマー処理土壌では36.3%であるのに対し、ポリイオン処理土壌では51.7%となり、最も大きな値を示す。未処理土壌に対して比較すれば、ポリイオン処理土壌での微細粒子分画(最小サイズ分画)への放射能濃度の分布率は、未処理土壌の約1.9倍となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
放射性セシウムに汚染された土壌の除染(表層土壌の除去)によって生じる廃棄土の量は膨大であり、処分場の不足が懸念されている。そこで、廃棄土を減容することができれば、処分場不足の問題を軽減できる。水による分級・洗浄法は、コスト、環境負荷の小ささ、安全性などの面から、最も現実的な汚染土壌の減容方法である。また、放射性セシウムの大部分が粘土などの微細粒子に強く吸着・固定されていることから、安定な状態(環境への流出リスクが低い状態)で処分できるという利点もある。
【0044】
分級・洗浄を効果的に行うためには、粗い粒子の表面に付着した微細粒子をいかにして排除するかが課題であり、ポリイオンの持つ微細粒子に対する凝集作用を利用する本発明は、この課題に対してきわめて有効である。また、ポリイオンは安価で大量に調達できる材料であり、食品分野、化粧品の分野などの日常生活で利用されている材料であることから、安全面での問題もないと考えられる。すなわち、水による分級・洗浄において、ポリイオンを添加することで(あるいは、土壌処理剤として加えられたポリイオンが存在していることで)、その効率を大幅に向上できることのメリットは大きく、廃棄土の減容を考慮した除染技術として、有用性はきわめて高い。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
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