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明細書 :水溶性ポルフィリン誘導体とそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6281901号 (P6281901)
公開番号 特開2015-137303 (P2015-137303A)
登録日 平成30年2月2日(2018.2.2)
発行日 平成30年2月21日(2018.2.21)
公開日 平成27年7月30日(2015.7.30)
発明の名称または考案の名称 水溶性ポルフィリン誘導体とそれらの製造方法
国際特許分類 C08F  20/54        (2006.01)
C07D 487/22        (2006.01)
A61K  31/409       (2006.01)
A61K  31/787       (2006.01)
A61K  47/32        (2006.01)
FI C08F 20/54
C07D 487/22
A61K 31/409
A61K 31/787
A61K 47/32
請求項の数または発明の数 5
全頁数 20
出願番号 特願2014-009210 (P2014-009210)
出願日 平成26年1月22日(2014.1.22)
審査請求日 平成28年12月22日(2016.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】松岡 浩司
【氏名】石丸 雄大
【氏名】鈴木 美穂
【氏名】幡野 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100137512、【弁理士】、【氏名又は名称】奥原 康司
【識別番号】100178571、【弁理士】、【氏名又は名称】関本 澄人
審査官 【審査官】柳本 航佑
参考文献・文献 特開2004-238305(JP,A)
特開2010-229126(JP,A)
特表2002-515081(JP,A)
米国特許第05891862(US,A)
国際公開第2004/055072(WO,A1)
特開昭48-005891(JP,A)
特開2004-022424(JP,A)
特開2012-087141(JP,A)
特開2010-006763(JP,A)
調査した分野 C08F 20/00-20/70
A61K 31/409
A61K 31/787
A61K 47/32
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式( I ):
【化1】
JP0006281901B2_000014t.gif

[式中、Rは糖又はグリコシドを表し、Rはポルフィリンを表し、U、V、W及びXは、グリコシド結合、チオグリコシド結合、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、カーボネート結合又は尿素結合のいずれか又はこれらの組み合わせの結合を含んでもよく、同一でも相異なってもよい酸素、窒素、硫黄、芳香環及び/又はカルボニル基を含んでもよい炭化水素鎖を含んでもよく、Yは同一でも相異なってもよい酸素、窒素、硫黄、芳香環及び/又はカルボニル基を含んでもよい炭化水素鎖を表し、Zはカルボキシル基若しくはその塩、水酸基、エチル基、CONH又はCONHCHCHOHを表し、l、m及びnは1以上の整数であって同一でも相異なってもよく、a、b、c、d、e及びfは0又は1以上の整数であって同一でも相異なってもよい]で表される糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマー、若しくはその薬学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項2】
下記式(III)で表される、請求項1に記載の糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマー、若しくはその薬学上許容される塩又はそれらの水和物。
【化2】
JP0006281901B2_000015t.gif

[式中、lは10、mは100、nは1である]
【請求項3】
請求項1又は2に記載の式(I)又は(III)で表される糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマー、若しくはその薬学上許容される塩又はそれらの水和物を含有する医薬。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の式(I)又は(III)で表される糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマー、若しくはその薬学上許容される塩又はそれらの水和物を含有する抗癌剤。
【請求項5】
糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマーを製造する方法であって、
ラジカル重合性置換基を結合させた糖又はグリコシドとラジカル重合性置換基を結合させたポルフィリンを、ラジカル重合を生じるモノマーの共存下において、ラジカル重合反応を行うことにより、製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ポルフィリン誘導体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポルフィリンは、4つのピロール環がα位置で4つのメチン基と交互に結合した環状化合物とその誘導体の総称である。ポルフィリン環には26のπ電子が含まれている。ポルフィリンは、26π電子共役系におけるπ電子の遷移に基づいて、紫外領域(400 nm付近)にπ-π遷移に起因する強いピーク(ソーレ帯)と、480~650 nmを中心とした可視領域に分子構造の振動に共役した禁制遷移である強い吸収帯(Q帯)をもっている。
環の中心部の窒素は、鉄やマグネシウムをはじめとする多くの元素と安定な錯体を形成することが知られている。ポルフィリンや類似化合物の金属錯体は、体内では、鉄の錯体として酸素の運搬をするヘモグロビンのヘムや、電子移動および物質代謝をするシトクロムとして存在する。また、光合成生物の葉緑体中に見られるクロロフィルもポルフィリン骨格を有するマグネシウム錯体である。光を吸収し、その励起状態から高エネルギーの電子を放出し、正電荷がいくつかの酸化還元を経てニコチンアミドの還元をする。
このようにポルフィリンおよびその類縁体は、いずれも生体内において重要な役割を担う。
【0003】
ポルフィリンは正常細胞に比べ、癌細胞に蓄積しやすい(非特許文献1)。ポルフィリンのソーレー帯、Q帯が組織透過性の比較的高い630 nmのレーザー光によって励起されるエネルギーにより、一重項酸素を生成し、癌細胞を死滅させることが知られている。ポルフィリンを利用した癌の検査・治療方法には、光線力学診断 (photodynamic diagnosis ; PDD)と光線力学的療法(photodynamic therapy ; PDT)がある。PDDはプロトポルフィリンが腫瘍細胞に蓄積しやすい性質を利用して、その赤色蛍光を指標にして癌組織を特定し、皮膚癌、肺癌、大腸癌等に応用することができる。一方、PDTは光感受性物質とレーザー光線との併用で悪性腫瘍内に光化学反応を起こさせ、腫瘍組織を死滅させる方法である。PDTには2つの方法があり、1つは「内視鏡的PDT」といい、光増感剤(ヘマトポルフィリン誘導体)を静注して内視鏡的に光線を病変部に照射する方法である。もう1つは「ALA-PDT」といい、δ-アミノレブリン酸(ALA)を経口投与して光線を照射する方法である。PDTは、従来の外科的手術より患者への負担が少なく、患者のQOL(生活の質)の向上に非常に有効であるとして近年では特に注目されている。また、内視鏡的PDTにおける治療は、早期肺癌や食道癌、胃癌、子宮頸部初期病変で非常に良好かつ比較的簡単で、臨床における利点も多い。
【0004】
このように、ポルフィリンは癌の診断や治療における利用が期待されている。しかしながら、ポルフィリンは、水に対する溶解性が極めて低く、疾患の診断や治療に使用する上で、制限が生じている。この問題を解決する試みとして、例えば、ポルフィリン環に水溶性の置換基を導入するといった手法(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)、アルキレングリコールを用いて高分子化し水溶性を高める手法(特許文献4)などが開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-73273
【特許文献2】特開2013-23111
【特許文献3】特表2005-522429
【特許文献4】WO2011/043369
【0006】

【非特許文献1】Winkelmanら, Cancer Res., 22:589-596 1962
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水溶性の向上したポルフィリン誘導体とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究を行ったところ、水に対する溶解性の低いポルフィリン誘導体を水溶性の高い糖鎖と組み合わせ、ラジカル重合による一段階反応により、高分子へと誘導し、ポルフィリン部位と生理活性糖鎖を含む水溶性の高い高分子化合物の合成に成功した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の式( 1 ):
【化1】
JP0006281901B2_000002t.gif
[式中、Rは糖又はグリコシドを表し、Rはポルフィリンを表し、U、V、W及びXは、グリコシド結合、チオグリコシド結合、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、カーボネート結合又は尿素結合のいずれか又はこれらの組み合わせの結合を含んでもよく、同一でも相異なってもよい酸素、窒素、硫黄、芳香環及び/又はカルボニル基を含んでもよい炭化水素鎖を含んでもよく、Yは同一でも相異なってもよい酸素、窒素、硫黄、芳香環及び/又はカルボニル基を含んでもよい炭化水素鎖を表し、Zはカルボキシル基若しくはその塩、水酸基、エチル基、CONH又はCONHCHCHOHを表し、l、m及びnは0又は1以上の整数であって同一でも相異なってもよく、a、b、c、d、e及びfは0又は1以上の整数であって同一でも相異なってもよい]で表される糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマー、若しくはその薬学上許容される塩又はそれらの水和物である。
【0010】
また、本発明は、所望の糖鎖あるいはグリコシド(配糖体:糖のヘミアセタール性ヒドロキシ基(グリコシド性ヒドロキシ基ともいう)が、非糖成分であるアグリコンから水素を除いて得られる置換基で置換された化合物)と、所望のポルフィリンを組み合わせて、ラジカル重合による一段階反応により水溶性の高分子型ポルフィリン誘導体を合成する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、糖を含む高分子型のポルフィリン誘導体であることから、水溶性及び生体適合性の向上したポルフィリン誘導体を提供することができる。この結果、副作用を軽減した腫瘍組織の破壊等が可能となる。
【0012】
本発明は、ラジカル重合による一段階反応による水溶性高分子型ポルフィリン誘導体の合成方法を提供する。従って、コスト及び合成までの時間及び労力を軽減した水溶性ポルフィリン誘導体の合成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ポリフィリンモノマー(11)のNMR測定結果[solvent:CDCl3, 500 MHz]。
【図2】ポリマー(III)のNMR測定結果[solvent:DMSO-d6, 500 MHz]。
【図3】ポリマー(III)のNMR測定結果[solvent:DMSO-d6 (99.9 %), 500 MHz]。
【図4】ポリフィリンモノマー(11)のUV測定結果[solvent:CDCl3]。
【図5】ポリフィリンモノマー(11)のPL測定結果[solvent:CDCl3]。
【図6】ポリフィリンモノマー(11)の励起波長測定結果[solvent:CDCl3]。
【図7】ポリマー(III)のUV測定結果[solvent:H2O]。
【図8】ポリマー(III)のPL測定結果[solvent: H2O]。
【図9】ポリマー(III)の励起波長測定結果[solvent: H2O]。
【図10】ポリマー(III)のみでHeLa細胞を処理した場合のフローサイトメトリーの測定結果。
【図11】ポリマー(III)にDDSを結合させ、HeLa細胞を処理した場合のフローサイトメトリーの測定結果。
【図12】無血清条件下におけるHeLa細胞の顕微鏡観測結果(10×40)(μMはポリマー(III)のPBS溶液中における濃度を示している)。
【図13】血清存在下におけるHeLa細胞の顕微鏡観測結果(10×40)(μMはポリマー(III)のPBS溶液中における濃度を示している)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の1つは、式(1)で表される新規な糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマー若しくはその薬学上許容される塩又は水和物である。
一般式(1 )において、Rは糖又はグリコシドであり、単糖、オリゴ糖でも多糖であってもよく、Rが糖の場合、WとRは、好ましくは、グリコシド結合又はチオグリコシド結合によって結合しており、これらグリコシド結合又はチオグリコシド結合は、糖の1位、2位、3位、4位、5位又は6位のいずれの位置であってもよい。Rとしては、限定はしないが、例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、グルコサミン及びそのN-アセチル誘導体、ガラクトサミン及びそのN-アセチル誘導体、これらの結合したオリゴ糖あるいは多糖、及びこれら単糖、オリゴ糖又は多糖を含むグリコシドであってもよい。また、Rには糖以外の部分、例えば、抗体などの蛋白質などが含まれていてもよい。
はポルフィリンであればいかなるものであってもよく、金属を含んでいてもよい。また、ポルフィリンとVとの結合については、ポルフィン骨格のいずれの位置と結合してもよく、また、ポルフィン骨格に官能基が結合している場合には、該官能基とXが結合していてもよい。

【0015】
U、V、W及びXは、グリコシド結合、チオグリコシド結合、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、カーボネート結合又は尿素結合のいずれか又はこれらの組み合わせの結合を含み、同一でも相異なってもよい酸素、窒素、硫黄、芳香環及び/又はカルボニル基を含んでもよい炭化水素鎖を含んでも、あるいは、該炭化水素を含まなくてもよい。

【0016】
Yは、酸素、窒素、硫黄、芳香環及び/又はカルボニル基を含んでもよい炭化水素基を表し、例えば、炭素数1~10のアルキレン基、アルケニレン基、アルコキシレン基(オキシアルキレン基)などが好ましい。
Zは、重合モノマーとして利用できる官能基であればよく、例えば、カルボキシル基若しくはその塩、水酸基、エチル基、CONH又はCONHCHCHOHなどが好ましい。

【0017】
l、m及びnは0以上の整数であって、同一でも相異なってもよく、好ましくは、0又は1以上100以下である。また、a、b、c、d、e及びfは0又は1以上の整数であって、同一でも相異なってもよく、好ましくは、0又は1以上10以下、より好ましくは、0又は1以上5以下である。

【0018】
本発明の式(I)の化合物は、例えば、下記のスキームに従って合成することができる。
【化2】
JP0006281901B2_000003t.gif

【0019】
すなわち、糖又はグリコシド(R)及びポルフィリン(R)に、例えば、アクリルアミド基を結合させ、アクリルアミドを用いたラジカル共重合反応により、本発明の糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマーを製造することができる。上記スキームにおいては、アクリルアミドを用いたラジカル共重合反応を例示しているが、本発明はこの反応のみに限定されるものではなく、ラジカル共重合反応をおこすモノマー化合物であれば、いかなるモノマーを用いてもよく、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アリルアルコールなどを用いることもできる。この場合には、R及びRにビニル基、アクリル酸基(アクリロイル基)、スチリル基などの重合性置換基を結合させておくことが望ましい。

【0020】
本発明の他の実施形態は、式(I)化合物を含有する医薬である。発明者らは、RがN-アセチルグルコサミンを含むグリコシドであり、Rが下記の式(II)のポルフィリンである、式(III)の化合物が癌細胞を死滅させることを見出している(実施例参照のこと)。
【化3】
JP0006281901B2_000004t.gif
【化4】
JP0006281901B2_000005t.gif

【0021】
従って、本発明には、式(I)の糖-ポルフィリン誘導体含有ポリマーを含有する医薬が含まれる。とくに、本発明の医薬は抗癌剤である。
本発明の医薬の有効成分としては、式(I)で表される化合物のほか、薬理学的に許容されるその塩を用いてもよい。塩としては、例えば、酸性基が存在する場合には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、L-グルカミン等のアミンの塩;又はリジン、δ-ヒドロキシリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩を形成することができる。塩基性基が存在する場合には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸塩、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩などを挙げることができる。
さらに、本発明の医薬の有効成分として、一般式(I)で表される化合物又はその塩の溶媒和物若しくは水和物を用いることもできる。

【0022】
本発明の医薬は、有効成分である一式(I)で表される化合物及び薬理学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物自体を投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記物質と1又は2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で投与することが望ましい。本発明の医薬の有効成分としては、上記の物質の2種以上を組み合わせて用いることができ、上記医薬組成物には、癌の諸症状の予防又は治療のための他の既知の有効成分を配合することも可能である。

【0023】
医薬組成物の種類は特に限定されず、剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤、腫瘍部位に直接フィルム等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。なお、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解又は懸濁する形であってもよい。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明の化合物を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。経口投与用又は非経口投与用の任意の製剤形態で提供される。例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又は液剤等の形態の経口投与用医薬組成物、静脈内投与用、筋肉内投与用、若しくは皮下投与用などの注射剤、点滴剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などの形態の非経口投与用医薬組成物として調製することができる。注射剤や点滴剤などは、凍結乾燥形態などの粉末状の剤形として調製し、用時に生理食塩水などの適宜の水性媒体に溶解して用いることもできる。また、高分子などで被覆した徐放製剤を脳内に直接投与することも可能である。

【0024】
医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、又は医薬組成物の製造方法は、組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機又は有機物質あるいは固体又は液体の物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して1重量%から90重量%の間で配合することができる。具体的には、その様な物質の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。

【0025】
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分例えば乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式又は乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤及び顆粒剤をそのまま或いはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒又は錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸-メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤で被覆して腸溶剤製剤あるいはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をそのまま或いはグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解した後ゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。

【0026】
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80 、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。

【0027】
直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジ及びモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。

【0028】
本発明の医薬の投与量及び投与回数は特に限定されず、治療対象疾患の悪化・進展の防止及び/又は治療の目的、疾患の種類、患者の体重や年齢、疾患の重篤度などの条件に応じて、医師の判断により適宜選択することが可能である。一般的には、経口投与における成人一日あたりの投与量は0.01~1000mg(有効成分重量)程度であり、一日1回又は数回に分けて、或いは数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して一日量0.001~100mg(有効成分重量)を連続投与又は間欠投与することが望ましい。

【0029】
本発明の医薬は、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。担体として、例えば、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬剤的に受容可能な担体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG-PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。

【0030】
また、本発明の医薬は、癌、腫瘍が存在する部位に直接適用(貼付)するために、フィルムも含まれる。本発明の医薬の有効成分として含有される式(I)のポリマーは、2次元的に合成することで、フィルムの形状にすることも可能である。

【0031】
本発明の医薬は、医薬組成物としてキットの形態で、容器、パック中に投与の説明書と共に含めることができる。本発明の医薬組成物がキットとして供給される場合、該組成物のうち異なる構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にするためである。
キット中に含まれる試薬は、構成成分の活性を長期間有効に持続し、容器内側に吸着することなく、また、構成成分を変質することのない材質で製造された容器中に供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性を示すガスの存在下で封入されたバッファーなどを含んでもよい。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料によって構成される。

【0032】
また、キットには使用説明書が添付されてもよい。本キットの使用説明は、紙などに印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体に保存されて使用者に供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。

【0033】
さらに、本発明には、癌を発症している患者に対し、式(I)の化合物を含む医薬を投与する、癌の治療方法が含まれる。ここで、本発明の対象となる癌とは、特に限定するものではなく、癌全般である。例えば、子宮癌(例えば、子宮頸癌)などである。
ここで「治療」とは、癌等に罹患した哺乳動物において、その病態の進行及び悪化を阻止又は緩和することを意味し、これによって該疾患の進行及び悪化を阻止又は緩和することを目的とする処置のことである。
治療の対象となる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。

【0034】
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
1.ω-[(1-オキソ-2-プロペニル)-アミノ]-エタニル-O-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシドの合成
【実施例】
【0036】
2-アセトアミド-1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2—デオキシ-α-D-グルコピラノシド(2)
【化5】
JP0006281901B2_000006t.gif
D-グルコサミン塩酸塩(5.0 g, 23.2 mmol)をピリジン(33 mL)に溶解し、窒素置換の後、氷冷、攪拌した。トリエチルアミン(3.01 mL, 23.2 mmol)と無水酢酸(32.8 mL, 348 mmol)を滴下し、室温で24時間攪拌した。反応終了後、トルエンと共沸させた後、氷水でクエンチし、クロロホルムで抽出した。その際、1 M硫酸、飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶液をセライトろ過して濃縮した。粗結晶をエタノールに溶かして再結晶し、体である化合物(2) (6.81 g,75%)を得た。
Rf 0.50 [10:1 (v/v) Chloroform-Methanol];
m.p. 133-137 ℃
【数1】
JP0006281901B2_000007t.gif
N.M.R.data: 1H-NMR (CDCl3, 300 MHz)
6.17(d,1 H, Jα1,2= 3.6 Hz,H-1α),5.56(d,1 H,J2,NH=9.0Hz,NH),5.22(m,2 H,H-3 and H-4),4.48(m,1 H,H-2),4.25(dd,1 H,J2,3=4.0 Hz,H-6a),4.07(dd,1H,J6a,6b=12.3Hz,H-6b),3.98(m,1 H,H-5),1.94-2.20(m,12 H,3COCH3 and NHCOCH3)
I.R. data: (KBr),n (cm-1)
3439(N-H 伸縮 二級アミン),2924(C-H 伸縮 アルカン)1741(C=O伸縮 エステル),1674(C=O 伸縮 アミド I),1518 (N-H 伸縮 アミドII)
【実施例】
【0037】
2-メチル-(3,4,6-トリ-O-アセチル-1,2-ジデオキシ-α-D-グルコピラノ)-[2,1-d]-2-オキサゾリン(3)
【化6】
JP0006281901B2_000008t.gif
窒素雰囲気化、化合物(2) (3.0 g, 7.71 mmol)を1,2-ジクロロエタン(30 mL)に溶かし、TMSOTf (1.46 mL, 8.08 mmol)を滴下した後、50 ℃で8時間攪拌した。反応終了後、トリエチルアミン(4 mL, 30.8 mmol)を加え、溶液が塩基性であるのを確認し、反応溶液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル:トリエチルアミン=100:200:1)で精製し、シラップ状のオキサゾリン誘導体(3) (2.315 g, 91%)を得た。
【実施例】
【0038】
ω-[(1-オキソ-2-プロペニル)-アミノ]-エタニル-O-3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(5)
【化7】
JP0006281901B2_000009t.gif
窒素雰囲気化、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(1.77 g, 15.4 mmol)、化合物(3) (2.3 g, 7 mmol)を1,2-ジクロロエタン(30ml)に溶かし、CSA (0.64 g, 2.77 mmol)を加えて、90 ℃で3時間反応させた。反応終了後、反応中に生じたN-ヒドロキシエチルアクリルアミド由来のポリマーをろ過で除去し、トリエチルアミンを加えて溶液を塩基性にした後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)、(酢酸エチル:メタノール=15:1)で順次精製し、化合物(5)を(1.75 g, 55%)得た。
【実施例】
【0039】
ω-[(1-オキソ-2-プロペニル)-アミノ]-エタニル-O-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(6)
【化8】
JP0006281901B2_000010t.gif
窒素雰囲気下、化合物(5) (200 mg, 0.45mmol)をメタノール(3.0 mL )に溶かし、NaOMe (7.29 mg, 0.135mmol)を加え攪拌し、室温で1時間反応させた。反応終了後、IR120Bを加え、綿ろ過した。それから濃縮を行い、化合物(6) (132.8 mg, 92%)を得た。
Rf 0.366 [65:25:4 (v/v/v) Chloroform-Methanol-Water];
【数2】
JP0006281901B2_000011t.gif
N.M.R.data : 1H-NMR (D2O, 500 MHz)
6.25-6.13(m,2 H, one of -CH=CH2 and -CH=CH2-), 5.73(d, 1 H, Jgem=6 Hz,Jvic(cis)=10 Hz one of the -CH=CH2 ),4.46(d,1 H,J1,2=7 Hz,H-1β),3.91-3.90(m,2 H,H-6 and one of -OCH2CH2N- ),3.73-3.61(m,3 H,H-2 and H-6 one of -OCH2CH2N- ),3.50-3.38(m,5 H,H-3 and H-4 and H-5 and one of -OCH2CH2N- and one of the-OCH2CH2N-),2.16-1.97(m,3 H,NHCOCH3)
I.R. data: (KBr):n (cm-1)
3350 (O-H 伸縮 ) , 2927 (C-H 伸縮), 1647 (C=O 伸縮 -NH-CO-), 1558 (C=C 変角 -CH=CH2), 1074 (C-H 面内変角),
【実施例】
【0040】
2.ポルフィリンへの重合性置換基の導入
5-(N-アクリルアミノ)フェニル-10,15,20-トリフェニルポルフィリン(11)
下記のスキームに従って、ポルフィリン(9)へ重合性置換基を導入した
【化9】
JP0006281901B2_000012t.gif
窒素雰囲気下、化合物(9) (200 mg, 0.318mmol)を1,2-ジクロロエタン(4mL)に溶かし、トリエチルアミン(82.7μL, 0.635mmol)を加えた後、反応系を0℃に冷やし、アクリロイルクロリド(30.8μL, 0.381mmol)を滴下し、攪拌した後、室温に戻し4時間反応させた。反応終了後、水でクエンチし、クロロホルムにより抽出した。その際、1 M硫酸、飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶液をセライトろ過して濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)、(塩化メチレン)により順次精製し、ヘキサン:塩化メチレン、メタノール:クロロホルムを用いて結晶化を行い、化合物(11) (155.8 mg, 71%)を得た。
Rf 0.5 [2:1 (v/v) Hexane-Ethyl acetate], Rf 0.23 [Chloroform],
Rf 0.33 [dichloromethane]
N.M.R.data : 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz)
8.84(s,8 H, β-pyrrole H), 8.20(d, ,6 H,orthoPh H ),8.16(d,2 H,N-acryloylamino pheny Hb, (meta) ,H-1β),7.91(d,2 H, N-acryloylaminophenyHa(Ortho)),7.77-7.
71(m,9 H,meta-para Ph H),7.51(s,1 H,-NHCOCH=CH2 ),6.56(d,1 H,-NHCOCH=CH2 trans H,J=17 Hz) ,6.35-6.30(m,1 H, -NHCOCH=CH2 , Jtrans=16.5 Hz,
Jvic(cis)=10.5 Hz ),5.86(d, 1 H,- NHCOCH=CH2 cis H,J=10.5 Hz),-2.77(s,2H,pyrrole NH)
I.R. data: (KBr): n (cm-1)
3315 (第二級アミンN-H 伸縮 R-NH-CO-)3053 (C-H 伸縮 -Ph), 1670 (C=O 伸縮 -NH-CO-), 1537 (C=C 変角 -Ph), 1080,966 (C-H 面内変角 -Ph), 979 (C-H 面外変角 -ph).
MALDI-TOF-MS Anal. Calc. for C32H41N7O6S [M+H]+ : 684.271, Found : [M+H]+ : 684.223
Anal. Calcd. for C47H33N5O C:82.55 H:4.86 N:10.24 (%), Found.C:81.90 H:4.93 N:9.88 (%)
水分子を0.01%含んでいると考えると、誤差は0.3%であった。
【実施例】
【0041】
3.ω-[(1-オキソ-2-プロペニル)-アミノ]-エタニル-O-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(6)と5-(N-アクリルアミノ)フェニル-10,15,20-トリフェニルポルフィリンとアクリルアミド(11)との共重合(l:m:n=1:10:0.1)
下記のスキームに従って、重合反応を行った。
【化10】
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アルゴン雰囲気下、化合物(11) (3.22 mg, 0.0047mmol)と化合物(6) (15 mg, 0.047 mmol)とアクリルアミド(7)(33.52 mg, 0.47mmol)をDMSOに溶かし、脱気した。TEMED (1.48μL, 0.0094mmol)、AIBN (2.32 mg, 0.0141mmol)、APS (2.87 mg, 0.0126mmol)を加え、3時間反応させた。反応終了後0.1 M 酢酸-ピリジン溶液(pH 5.00)で希釈し、蒸留水に対して透析を行った。その後ろ過し、凍結乾燥によって化合物(III)を茶色凍結乾燥粉として得た。その後、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを行い、薄層シリカゲル(クロロホルム:メタノール=10:1)の後、ろ過、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーによって精製した。Mw=18,403である。
N.M.R.data : 1H-NMR (DMSO, 500 MHz)
8.82(m,8 H, β-pyrrole H), 8.20(m, 8 H,orthoPh H , N-acryloylaminopheny Hb, (meta) ,H-1β) 7.78(m,9 H,meta-para Ph H),7.19-6.81(m, H,-NHCOCH=CH2 , ),5.02(m,1 H,-OH),4.71(m,1 H,-OH)4.34(m,1 H,H-1β),2.09(m,11 H,-CH-(sugar)-CH2-,-OCH2CH2NHCOCH-),1.85(s,3 H,NHCOCH3),1.48-1.24(m,22 H,-CH-
(sugar)-CH2-,-OCH2CH2NDCOCHCH2-),-2.91(s,2H,pyrrole NH)
I.R. data: (KBr): n (cm-1)
3419 (O-H 伸縮 ) , 2935 (C-H 伸縮), 1647 (C=O 伸縮 -NH-CO-), 1080 (C-H 面内変角)
【実施例】
【0042】
4.化合物(III)のNMR測定結果
得られたポリマー(III)中のポルフィリンの存在を確認するために、ポルフィリンモノマー(11) とポリマー(III) のNMR測定の結果を比較した。図1において、ポルフィリンモノマー(11)に見られる特徴的なピークは、低磁場側(7.5-9.0 ppm)のフェニル基のプロトンに由来する複数のピークと、高磁場側(-2.8 ppm)に見られるピロール環のNHのプロトンのピークである。ポルフィリン環の環電流効果により、ピロール環のNHプロトンピークは高磁場側にシフトしている。
図2及び図3は、ポリマー(III) におけるNMR測定結果である。これらを見ると、わずかではあるがポルフィリンモノマー(11)に見られる特徴的なピークである、低磁場側(7.5-9.0 ppm)のピークが3つと、高磁場側(-2.9 ppm)に見られるピークが観測できる。これにより、ポリマー(III)にポルフィリンモノマー(11)が導入されたことが確認された。
図3は、図2において糖モノマー(6) 由来のピーク(4.3-5.2 ppm)が見られなかったために、99.9%のDMSOにおいて測定し直したものである。これにより、糖モノマー(6) がポリマーに組み込まれている事も確認できた。4.35 ppmに見られるピークが糖モノマー(6)のアノマー位のプロトンピークである。仕込み比(l:m:n)6 : 7 : 11=1 : 10 : 0.1に対し、実際の組成比は1 : 7.3 : 0.02であった。
【実施例】
【0043】
5.UV/Vis測定、PL(photoluminescence、蛍光)測定及び励起スペクトル測定
ポルフィリンモノマー(11)についてのUV測定、PL測定、励起スペクトル測定を行った(図4、図5及び図6)。 UV測定では、ポルフィリンモノマー(11)をクロロホルムに溶解し、8.22 μMの溶液を作成し測定し、420 nmにソーレー帯、517、551、591、648 nmにQ帯が観測された。モル吸光係数は、3.63×105 cm-1 M-1 となった。
PL測定では、ポルフィリンモノマー(11)をクロロホルムに溶解し、4.99 μMの溶液を用いて測定した。420、517、551、591、648 nmそれぞれの波長において励起した各蛍光ピークは650 nm付近に収束する結果となり、ソーレー帯とQ帯の591 nmの蛍光が特に強かった。
648 nmにおける励起スペクトル測定では、ソーレー帯、Q帯それぞれに相対するピークを観測することができた。
【実施例】
【0044】
次に、ポリマー(III)についてのUV測定、PL測定、励起スペクトル測定を行った(図7、図8及び図9)。UV測定では、ポルフィリン残基濃度3.45 μMの溶液において420 nmにソーレー帯、519、555、597、649 nmにQ帯が観測された。これにより、ポリマー(III)にポルフィリン由来の物性が存在することを確認した。ポルフィリン残基濃度におけるモル吸光係数を計算したところ、9.6×104 cm-1 M-1となり、ポルフィリンモノマー(11)のモル吸光係数の26%程度の値となった。
PL測定では、ポリマー(12)を超純水に溶解し、0.07 μMの溶液を用いて測定した。420、519、555、597、649 nmそれぞれの波長において励起したところ各蛍光ピークが650 nm付近に収束する結果となり、ソーレー帯とQ帯の597 nmの蛍光が特に強かった。
励起スペクトル測定では、ソーレー帯、Q帯それぞれに相対するピークを観測することができた。
このようにポリマー(III)が、ポルフィリンモノマー(11)の物性とほぼ一致することがわかった。
【実施例】
【0045】
6.フローサイトメトリー測定結果(癌細胞に対するポリマー(III)の挙動)
フローサイトメトリー解析により、ポリマー(III)がHeLa細胞(ヒト子宮頸癌由来の細胞)へ取り込まれているかどうかを検討した。ポルフィリン由来の蛍光を観測できれば、HeLa細胞内にポリマー(III) が取り込まれたことになる。
まず、ポリマー(III) をPBS (リン酸緩衝生理食塩水、pH 7.2-7.4)に溶解し、それらを0.5、1.0、2.5、7.5 μMと濃度調製したものをそれぞれ用意しHeLa細胞培地に滴下した。4時間後、培地からHeLa細胞を剥がし、移した溶液を凍結し、後日Flicyme-300を用いて、約5万細胞それぞれの蛍光を測定した。これにより、ポリマー(III)のHeLa細胞に対する挙動を測定した(図10及び図11)。
図10は、HeLa細胞にポリマー(III)のPBS溶液以外何も加えずに測定した結果である。グラフの縦軸は5万細胞の割合、横軸は蛍光強度の対数表示となり、450 nmで細胞を励起し、650 nm付近の蛍光を測定した。結果として、濃度依存的に蛍光強度が大きい方へシフトしたが、2.5 μMにおいては蛍光強度が一時減少する結果となった。ポルフィリン由来の650 nm付近の蛍光が観測されたことより、HeLa細胞内にポリマー(III)が取り込まれていることがわかった。また、同じ条件において、530 nmにおける蛍光測定結果を見たところ何も観測されなかった。これにより、図10の結果がポリマー(III) のポルフィリン物性由来によるものであることが分かった。
【実施例】
【0046】
図11は、HeLa細胞にポリマー(III)のPBS溶液にDDS(ドラッグデリバリーシステム(BioPORTER;Genlantis社)を加えて測定した結果である。DDSを用いた場合も図10と同様に、濃度依存的に蛍光強度が大きい方へシフトしているが、2.5 μMの時において蛍光強度が一時減少している。蛍光強度の値は図10とほとんど変わらず、DDSによる効果は特に見られなかった。これにより、DDS存在下においてもポリマー(III)がDDSを加えていない時と同様にHeLa細胞に取り込まれるが分かった。
以上の結果から、ポリマー(III)がHeLa細胞内に取り込まれることに加え、DDSを必要とせずに問題なく細胞内へ侵入することが分かった。
【実施例】
【0047】
7.顕微鏡による細胞毒性の観察結果
HeLa細胞培地において、ポリマー(III)滴下前の状態を接眼レンズ10倍、対物レンズ40倍の顕微鏡を用いて観察し、撮影を行った。その後、フローサイトメトリー測定の時と同様に、ポリマー(III)をPBS(pH 7.2-7.4)に溶解し、0.5、1.0、2.5、7.5 μMと濃度調製したものをそれぞれ用意し、HeLa細胞培地に滴下した。4時間後、再びHeLa細胞培地を顕微鏡において観察し、撮影を行った。
図12は、無血清条件下におけるポリマー(III)のPBS溶液中濃度、0.0~7.5 μMそれぞれの観測結果を示している。細胞は境界線がくっきりしていて、それらが接着している状態が元気な細胞と言える。これを判定基準とし、図12を見ると、PBS溶液中のポリマー(III)の濃度が増加するにつれ、細胞が死んでしまい毒性が強く出ていることが分かった。7.5 μMにおいては、細胞の形が崩壊してしまっているように見え、これにより無血清条件下におけるHeLa細胞に対するポリマー(III)の毒性を確認した。
【実施例】
【0048】
また、図13は血清存在下おけるポリマー(III)のPBS溶液中濃度、0.0~7.5 μMそれぞれの観測結果を示している。図12の時と同様に、PBS溶液中のポリマー(III)の濃度が増加するにつれ、毒性が強く出ていることが分かった。
【実施例】
【0049】
なお、HeLa細胞がアボトーシスにより死滅する場合、無血清条件下、血清存在下どちらの場合も丸い玉のような形状となる。これに対し、ポリマー(III)の添加によって死滅した細胞は、細長い楕円形状で死滅している。すなわち、ポリマー(III)による細胞死は、アポトーシスとは異なるメカニズムによることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の化合物は、糖とポルフィリンを含有するポリマーであり、水溶性に優れ、また、癌細胞を死滅させる効果を有している。従って、これらの化合物を有効成分として含有する医薬は、癌糖の治療等に効果を発揮することが期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12