TOP > 国内特許検索 > 牛の肉質の改善方法 > 明細書

明細書 :牛の肉質の改善方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3433212号 (P3433212)
公開番号 特開2002-209528 (P2002-209528A)
登録日 平成15年5月30日(2003.5.30)
発行日 平成15年8月4日(2003.8.4)
公開日 平成14年7月30日(2002.7.30)
発明の名称または考案の名称 牛の肉質の改善方法
国際特許分類 A23K  1/16      
A23K  1/18      
FI A23K 1/16 302B
A23K 1/16
A23K 1/18
請求項の数または発明の数 8
全頁数 4
出願番号 特願2001-011122 (P2001-011122)
出願日 平成13年1月19日(2001.1.19)
審査請求日 平成13年9月21日(2001.9.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000046
【氏名又は名称】関西ティー・エル・オー株式会社
発明者または考案者 【氏名】矢野 秀雄
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平 (外1名)
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 国際公開00/44236(WO,A1)
調査した分野 A23K 1/16
A23K 1/18
A61K 31/375
特許請求の範囲 【請求項1】
牛にビタミンCを投与することによりの脂肪交雑等級を改善する方法。

【請求項2】
牛に油脂被覆ビタミンCを経口投与することにより肉の脂肪交雑等級を改善する方法。

【請求項3】
ビタミンCの投与量を20mg/kg体重/日~60mg/kg体重/日とする請求項1又は2に記載の牛の肉の脂肪交雑等級の改善方法。

【請求項4】
牛にビタミンCを投与することにより肉の光沢、締まり、きめを改善する方法。

【請求項5】
牛に油脂被覆ビタミンCを経口投与することにより肉の光沢、締まり、きめを改善する方法。

【請求項6】
ビタミンCの投与量を20mg/kg体重/日~60mg/kg体重/日とする請求項4又は5に記載の牛の肉の光沢、締まり、きめの改善方法。

【請求項7】
ビタミンCを牛の肥育中期から肥育後期を通して投与する請求項1~6のいずれかに記載の方法。

【請求項8】
ビタミンCを牛の10ヶ月齢以降投与する請求項1~6のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、牛の肉質を改善し、その脂肪交雑(BMS。いわゆる霜降り)の等級を上げる方法に関する。

【0002】
【従来の技術】霜降り肉(脂肪交雑肉)は、その柔らかさや歯切れのよさ等により、特に日本では大きな需要があるが、生産が難しいという問題がある。このため、日本のみならず、近年では海外においても霜降り肉生産のための研究が進められている。

【0003】
牛の肉質改善のための提案は、これまで数多くなされている。例えば、特開平6-22704公報には、特定組成を有する脂肪酸のカルシウム塩を飼料に配合して牛に給与することにより、牛の肉質等級、脂肪交雑、しまり、味、柔らかさ等を改善するという方法が記載されている。また、特開平06-169726号公報には、水溶性の酸化マグネシウムと共に金属クロロフィリンを牛に投与するという方法が記載されている。これにより、屠殺後の枝肉処理において冷却するとミオグロビンは組織内残留酸素により再び酸化型ミオグロビンとなり、肉色、光沢がよくなる等の効果を生ずるとしている。特開平07-132050号公報には、ウコン粉末を1日の摂取量が約0.1g~0.4g/10kg体重になるように配合して給与すると、肥育用牛の育成後期より肥育期に発生し易いとされる肝膿瘍を予防し、併行して発症する肝変性、肝充血を防止すると共に、これらの肝機能の改善にあわせて肉質を向上させることができると記載されている。特開平10-113129号公報には、不飽和脂肪酸を含む脂肪酸の金属塩と、リン化合物又はこれと抗酸化剤とを用いて飼料組成物を構成することが記載されている。これにより、黒毛和牛、ホルスタイン、F1などの種々の品種の牛の肉の肉質改善、増体効果などに大きく寄与することができるとしている。特開平11-196776号公報には、香辛料及びビタミンEを添加した飼料を給与すると、鮮度、日持ちがよいと共に、ドリップが少なく、味がよい肉質の牛を生産することができると記載されている。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらとは別の簡易な方法で牛の肉質を改善し、脂肪交雑の等級を上げる方法を提供するものである。

【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る牛の肉質の改善方法は、牛にビタミンC(L-アスコルビン酸)を投与することを特徴とするものである。

【0006】
従来、牛等の反芻動物は体内でビタミンCを合成するといわれており、反芻胃の発達した牛にビタミンCを給与したという報告は少ない。しかし、本発明者等の研究によると、肥育牛における血清中のビタミンC濃度は、肥育が進むにつれて減少してゆき、個体によってはビタミンC欠乏の可能性があることが示唆された(高橋栄二他「肥育牛における血清中ビタミンC濃度」日本畜産学会報Vol.70(1999)No.8, p.J119)。特開2000-281575号公報には、肥育時のストレスに対する抵抗性や風邪等に対する免疫力を高めるため、牛等に油脂被覆ビタミンCを給与することが記載されている。

【0007】
一方、さまざまなビタミンが脂肪細胞の分化に影響を及ぼすことが知られている。本発明者等がヒツジ由来培養脂肪前駆細胞に対する各種ビタミンの影響を調べた結果によると、ビタミンCが脂肪細胞への分化の指標の一つであるグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GPHD)活性を上昇させることが明らかとなっている(鳥居伸一郎他「ビタミンA、C及びDがヒツジ由来培養脂肪前駆細胞のグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ活性に及ぼす影響」日本畜産学会報Vol.66(1995)No.12, p.1039)。

【0008】
しかし、ビタミンCの投与が具体的に現実の商品としての牛肉の肉質にどのような影響を及ぼすかについては、これまで何らの研究もなされていなかった。本発明者はこの点に着目し、種々の試験を行った結果、適切な投与を行うことによりビタミンCが牛の肉質、特に脂肪交雑(霜降り度)の改善に顕著な効果があることを見いだしたものである。このようなことは従来、当業者間で知られておらず、その点で、本発明に係る上記技術の教示は斯産業の発達に寄与するところ大である。

【0009】
【発明の実施の形態】ビタミンCの投与は、注射等によってもよいが、経口投与するのが最も簡易である。しかし、単にビタミンCのみを経口投与した場合、第一胃内の微生物により分解されてしまい、所期の効果を挙げることができない。そのため、胃を通過して腸において吸収されるように、ビタミンCに何らかの被覆を施す必要がある。このような被覆剤としては、動植物油脂、エチルセルロース、ケイ素樹脂等、第一胃内での分解を受けにくいものであればいずれでもよい。油脂の中では比較的融点の高い油脂、すなわち硬化油脂が好ましく、安定性や嗜好性の観点からとくに大豆硬化油脂が好ましい。

【0010】
被覆ビタミンCの投与時期としては、肥育期間を通じて、とくに脂肪細胞の分化期の肥育中期ならびに肥育後期を通して投与するのが好ましい。投与量としては、ビタミンC(L-アスコルビン酸)として20mg/kg体重/日~60mg/kg体重/日を与えるのがよく、40mg/kg体重/日程度の投与量が最も好ましい。

【0011】
【発明の効果】本発明に係る方法により、比較的低コストで牛の肉質が改善され、脂肪交雑等級(いわゆる霜降り度)を上げることができるため、牛肉に大きな価格競争力を付与し、結果的に給与コストを上回る収益の回収を可能にする。特に、経口投与による方法は非常に簡易であり、実施が容易である。

【0012】
【実施例】本発明の一実施例として、経口投与用飼料添加剤を説明する。本添加剤は、ビタミンCの表面を大豆硬化油脂で被覆したものである。

【0013】
その製造方法の一例は次の通りである。プロペラ型混合機(深江工業株式会社製ハイスピードミキサーFS-1200型)に、ビタミンC(武田薬品工業株式会社製)300kgと大豆硬化油脂(理研ビタミン株式会社製スプレーファットVT)30kgを仕込み、混合しながら80℃の温水を流したジャケットで加温する。混合物の温度(品温)が70℃以上になり、大豆硬化油脂が溶融した時点でジャケットに30℃の水を通して冷却する。品温が40℃以下になったところで排出し、16メッシュの篩で篩過して本実施例の飼料添加剤を得る。

【0014】
このようにして製造した飼料添加剤は白色~帯黄白色の結晶性粉末状の外観を呈している。その平均粒径は430μm、油脂被覆の厚さは約13μmであり、ビタミンC含量は908mg/g(HPLC法による)、水分は0.1%以下である。

【0015】
こうして製造した飼料添加剤を給与した牛(添加区)と、それを給与しない牛(対照区)とを比較対照して両者の肉質及び歩留を調査した結果を次に説明する。試験した牛は黒毛和種去勢牛で、各試験区4頭を用いて試験した。添加区の牛には、10ヶ月齢から12ヶ月間、1日に40mg/kg体重の上記飼料添加物を飼料に添加して給与した。

【0016】
歩留の結果は図1に示す通りである。歩留に関しては、両区に統計的な有意差は認められない。肉質の結果は図2に示す通りである。肉質に関しては、脂肪交雑(霜降り)及び光沢、締まり、きめに有意な差が現れており、本実施例に係る飼料添加剤の優れた肉質改善効果が認められた。

【0017】
霜降り度の向上は市場において牛肉に大きな価格競争力を付与するものであり、図2の結果から試算すると、肉牛への飼料添加剤の給与はそのコストを大きく上回る収益の回収を可能にする。
図面
【図1】
0
【図2】
1