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Specification :(In Japanese)リポソームの製造方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5904555
Date of registration Mar 25, 2016
Date of issue Apr 13, 2016
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)リポソームの製造方法
IPC (International Patent Classification) A61K   9/127       (2006.01)
A61K  47/24        (2006.01)
B01J  13/04        (2006.01)
FI (File Index) A61K 9/127
A61K 47/24
B01J 13/04
Number of claims or invention 8
Total pages 11
Application Number P2012-553652
Date of filing Jan 6, 2012
International application number PCT/JP2012/050137
International publication number WO2012/098937
Date of international publication Jul 26, 2012
Application number of the priority 2011010408
Priority date Jan 21, 2011
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Dec 22, 2014
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】鈴木 洋
【氏名】菰田 悦之
【氏名】勝田 知尚
Representative (In Japanese)【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
Examiner (In Japanese)【審査官】天野 貴子
Document or reference (In Japanese)特開2006-063052(JP,A)
米国特許出願公開第2011/0014297(US,A1)
特開2010-214363(JP,A)
特開2008-285459(JP,A)
米国特許出願公開第2010/0202928(US,A1)
Andreas Jahn et al,J. Am. Chem. Soc. ,2004年,vol.126, no.9,p.2674-2675,DOI: 10.1021/ja0318030
Sadao Ota et al,Angew. Chem. Int. Ed.,2009年,vol.48, no.35,p.6533-6537,DOI: 10.1002/anie.200902182
Field of search A61K 9/127
A61K 47/24
B01J 13/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
リポソームの生成工程において、マイクロ流路に、有機溶媒を含まない溶液とリン脂質成分からなるリン脂質分散液、及び気体を導入し、当該マイクロ流路内でリン脂質分散液と気体を混合させる工程を含むことを特徴とするリポソームの製造方法。
【請求項2】
前記リポソームの生成工程において、炭酸ガスによる加圧濾過工程を含まないことを特徴とする、請求項1に記載のリポソームの製造方法。
【請求項3】
マイクロ流路が、導入部に少なくとも2つのマイクロ流路を有し、導出部に1つのマイクロ流路を有する分岐型マイクロ流路であって、以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリポソームの製造方法:
1)導入部における1のマイクロ流路よりリン脂質分散液を導入する工程;
2)導入部における他の1のマイクロ流路より気体を導入する工程;
3)マイクロ流路内で、リン脂質分散液と気体を混合させる工程;
4)導出部のマイクロ流路よりリポソームを導出する工程。
【請求項4】
マイクロ流路の内径が、100~1000μmである、請求項1~3のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
【請求項5】
リン脂質分散液流量:気体流量が、0.001~10:1である、請求項1~4のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
【請求項6】
気体流量が、1~15ml/時である、請求項1~5のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
【請求項7】
リポソーム形成時の温度が、15~80℃である、請求項1~6のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1に記載のリポソームの製造方法において、マイクロ流路に、さらに内包剤を導入し、当該マイクロ流路内でリン脂質分散液、内包剤及び気体を混合することを特徴とする、内包剤を含有するリポソームの製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒を使用することなく、さらに炭酸ガス等による加圧濾過や、加熱を行うことなく、粒子径が均一化されたリポソームを容易に製造しうるリポソームの製造方法に関し、及び該製造方法により得られたリポソームに関する。さらには、このようなリポソーム製造用のデバイス並びに製造用キットに関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2011-10408号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
リポソームは、主にリン脂質によって形成される二分子膜(リポソーム膜)の閉鎖小胞体であり、生体膜と類似の構造や機能を有するため、従来から様々な研究材料として用いられてきている。このリポソームは、内部に有する水相には、水溶性の内包剤(例えば、薬効成分)を、二分子膜の内部には油溶性の内包剤を保持するという、いわゆるカプセル構造を構築できることから、診断、治療、化粧などの様々な分野で用いられてきている。さらに、近年では、薬物送達システム(DDS)への応用が盛んに研究されている。
【0004】
このような薬効成分などの内包剤を内包したリポソームは、ロータリエバポレータ等を使い、恒温槽にて丸底フラスコの回転条件下でフラスコの底部に脂質膜を形成させ、そこに内包物を含む水溶液を導入して、減圧条件下で形成されるバンガム(Bangham)法がある(非特許文献1)。かかるバンガム法により得られるリポソームは粒子径分布が広く、ゲルろ過等の処理を経て所望の粒径のリポソームの回収を行っていた。しかし、その方法では回収されるリポソームは投入原料のせいぜい1%程度にしかならず、製造コストの高額化が大きな問題であった。
【0005】
マイクロ流路を使ったリポソームの製法としてはアンドレアス・ジャーン等の方法がある(非特許文献2)。この方法では、流路が十字構造となり、中央流路に内包物と脂質と有機溶媒の混合物を流し、両側流路から緩衝液を流し、この両者の混合速度(希釈過程)の調整によりリポソームを製造する。また、他の製造方法として、有機溶媒に溶解させたリン脂質溶液をマイクロ流路に導入し、有機溶媒を乾燥させてマイクロ流路の壁にリン脂質の薄膜を形成させ、リポソームを生成させる方法について開示がある(特許文献1)。上記の方法では、有機溶媒を除去する工程が煩雑であり、また有機溶媒がリポソーム製剤に残留する可能性は完全には否定することができず、有機溶媒による生体への好ましくない影響が問題となる。係るマイクロ流路を用いる方法によれば、粒子径が均一化されたリポソームを容易に製造することができるが、有機溶媒を除去したり、乾燥させる工程に、時間を要することが問題であった。
【0006】
有機溶媒を用いないで、リポソームを生成させる方法として、リポソーム膜成分物質と水溶液とをリポソーム膜成分物質の相転移温度以上で混合し、炭酸ガスによる加圧濾過を行う方法(特許文献2)、ヒドロキシル基を有する化合物の存在下で、脂質膜成分と超臨界若しくは亜臨界状態の二酸化炭素(炭酸ガス)とを混合することにより作製する方法(特許文献3)などが開示されている。しかしながら、これらの方法は、炭酸ガスによる加圧濾過や、又は超臨界若しくは亜臨界状態の二酸化炭素(炭酸ガス)を要し、煩雑な工程を要する。また、有機溶媒を含まないリポソーム含有製剤について開示があるが、係るリポソーム含有製剤の製造工程においても、リポソーム膜成分物質の40~65℃の相転移温度でリポソーム膜成分物質を処理し、二酸化炭素(炭酸ガス)を用いることも要件とされている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】J.Mol.Biol.,13,238(1965)
【非特許文献2】J.Am.Chem. Soc. 2004, 126, 2674-2675(Controlled Vesicle self-assembly in microfluidic channels with hydrodynamic focusing)
【0008】

【特許文献1】特開2008-285459号公報
【特許文献2】特開2007-262026号公報
【特許文献3】特開2006-63052号公報
【特許文献4】特開2006-298844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有機溶媒を使用することなく、さらに炭酸ガス等による加圧濾過や、有機溶媒を除去するための加熱処理、吸引処理や乾燥処理を行うことなく、粒子径が均一化されたリポソームを容易に製造しうるリポソームの製造方法を提供することを課題とする。また、そのような該製造方法により得られたリポソームを提供することを課題とし、さらには、このようなリポソーム製造用のデバイス並びに製造用キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、リポソームの生成工程において、マイクロ流路に、リン脂質分散液、及び気体、即ち空気、不活性ガス、若しくはそれらの混合物を主成分とする気体を導入し、当該マイクロ流路内でリン脂質分散液と気体を混合させる工程を含むことを特徴とする製造方法によれば、有機溶媒を使用することなく、さらに炭酸ガス等による加圧濾過や、有機溶媒を除去するための加熱処理、吸引処理や乾燥処理を行うことなく、粒子径が均一化されたリポソームを製造しうることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
つまり、本発明は以下からなる。
1.リポソームの生成工程において、マイクロ流路に、有機溶媒を含まない溶液とリン脂質成分からなるリン脂質分散液、及び気体を導入し、当該マイクロ流路内でリン脂質分散液と気体を混合させる工程を含むことを特徴とするリポソームの製造方法。
2.前記リポソームの生成工程において、炭酸ガスによる加圧濾過工程を含まないことを特徴とする、前項1に記載のリポソームの製造方法。
3.マイクロ流路が、導入部に少なくとも2つのマイクロ流路を有し、導出部に1つのマイクロ流路を有する分岐型マイクロ流路であって、以下の工程を含むことを特徴とする、前項1又は2に記載のリポソームの製造方法:
1)導入部における1のマイクロ流路よりリン脂質分散液を導入する工程;
2)導入部における他の1のマイクロ流路より気体を導入する工程;
3)マイクロ流路内で、リン脂質分散液と気体を混合させる工程;
4)導出部のマイクロ流路よりリポソームを導出する工程。
4.マイクロ流路の内径が、100~1000μmである、前項1~3のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
5.リン脂質分散液流量:気体流量が、0.001~10:1である、前項1~4のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
6.気体流量が、1~15ml/時である、前項1~5のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
7.リポソーム形成時の温度が、15~80℃である、前項1~6のいずれか1に記載のリポソームの製造方法。
8.前項1~7のいずれか1に記載のリポソームの製造方法において、マイクロ流路に、さらに内包剤を導入し、当該マイクロ流路内でリン脂質分散液、内包剤及び気体を混合することを特徴とする、内包剤を含有するリポソームの製造方法。
9.前項1~8のいずれか1に記載のリポソームの製造方法により得られるリポソーム。
10.マイクロ流路を含んでなる、前項9に記載のリポソームの製造用デバイス。
11.前項10に記載のリポソーム製造用デバイスと、有機溶媒を含まないリン脂質分散液、内包剤及び/又は気体の導入用シリンジを含むことを特徴とする、リポソーム製造用キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリポソーム製剤の製造方法によれば、有機溶媒を使用することなく、さらに炭酸ガス等による加圧濾過や、有機溶媒を除去するための加熱処理、吸引処理や乾燥処理を行うことなく、粒子径が均一化されたリポソームを容易に製造しうる。
【0013】
本発明のリポソーム製剤の製造方法によれば、気体とリン脂質分散液との気液界面にリン脂質を吸着させて、配向を行うことができる。背景技術の欄で述べた特許文献1に記載の方法では、有機溶媒に溶解させたリン脂質溶液をマイクロ流路に導入し、有機溶媒を乾燥させてマイクロ流路の壁にリン脂質の薄膜を形成させて、リポソームを生成させており、壁面にリン脂質成分を吸着させるために有機溶媒が必要であった。一方、本発明の製造方法によれば、有機溶媒を必要とせず気液界面にリン脂質を吸着させることができ、リポソームを生成することができる。有機溶媒は、一般に毒性が問題となるので、完全に除去することが必須であったが、本発明の方法によれば、有機溶媒を用いないことにより、有機溶媒の残存可能性を完全に否定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のリポソーム製造用装置の一例を示す図である。
【図2】本発明のリポソーム製造用デバイスにおけるマイクロ流路内での合流部の流れを示す顕微鏡写真図である。(実施例1)
【図3】本発明のリポソーム製造用デバイスにおけるマイクロ流路内の様子を示す顕微鏡写真図である。(実施例1)
【図4A】本発明のリポソーム製造用デバイスにおけるマイクロ流路内で、気液界面にリン脂質が吸着する様子を示す写真図である。(実施例1)
【図4B】本発明のリポソーム製造用デバイスにおけるマイクロ流路内で、気液界面にリン脂質が吸着し、リポソームを生成する機構を示す写真図である。(実施例1)
【図5】本発明のリポソーム製造方法により得られたリポソームと、バンガム法により得られたリポソームの粒度分布比較結果を示す図である。(実験例1)
【図6】本発明のリポソーム製造方法により得られたリポソームと、空気を含まない系でマイクロ流路を用いる方法により得られたリポソームの粒度分布比較結果を示す図である。(実験例2)
【図7】リン脂質分散液、PBS流量及び空気流量を変えたときのリポソームの収率を示す図である。(実験例3)
【図8】リン脂質分散液、PBS流量及び空気流量の流量比を変えたときのリポソームの収率を示す図である。(実験例3)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のリポソームの製造方法について詳細に説明する。本発明のリポソームの製造方法は、リポソームの生成工程において、マイクロ流路に、有機溶媒を含まない溶液とリン脂質成分からなるリン脂質分散液、及び気体を導入し、当該マイクロ流路内でリン脂質分散液と気体を混合させる工程を含むことを特徴とするリポソームの製造方法に関する。

【0016】
本発明において「有機溶媒を含まない溶液」とは、有機溶剤を含まない水性媒体であって、リン脂質成分を分散しうる媒体をいい、特に限定されないが、例えば水、好適には注射用蒸留水、生理的食塩水、イオン交換水や、これらの溶液にグリセリン、グルコース、サッカロース、マルトースなどの等張化剤としての多価アルコールを0.2~0.3M程度含有する水性媒体が挙げられる。本発明の製造方法によれば、製造時において有機溶媒、グリチルリチン類やコール酸類等のリポソームの形成助剤を用いることなく、簡便かつ効率良くリポソームを形成し得る利点を有する。また、本発明の有機溶媒を含まない溶液は、リン脂質成分の他、リポソームに内包されうる所望の内包剤を溶解しうる水性媒体、例えばリン酸緩衝液(PBS)等であってもよい。また、本発明において「気体」とは、空気、不活性ガス、又はそれらの混合物を主成分とする気体が挙げられる。

【0017】
本発明の製造方法で使用される「リン脂質成分」は、中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチン及び/又はこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。これらは単独でも併用してもよい。その他のリン脂質として、卵黄、大豆又はその他、動植物に由来するホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、合成により得られるホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などを挙げることができる。

【0018】
これらのリン脂質成分は通常、単独で使用されるが、2種以上併用して混合使用してもよい。2種以上の荷電リン脂質成分を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士又は正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。

【0019】
本発明の「リン脂質分散液」には、所望により上記リン脂質成分の他に、他の成分を加えることもできる。その例として、膜安定化剤又はポリアルキレンオキシド基導入用アンカーとしてコレステロール、コレステロールエステルなどのステロール類、荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなどが例示される。

【0020】
本発明において「マイクロ流路」とは、導入部と導出部を有する、長さが2mm~5mの流路であり、その流路内径は100~1000μm、好ましくは200~530μmである。流路内径は、所望するリポソーム粒子径により適宜調整されたものを使用することができる。本発明のマイクロ流路には、導入部に少なくとも2つのマイクロ流路を有し、導出部に1つのマイクロ流路を有する分岐型マイクロ流路であるのが好適である(図1参照)。例えば、導入部における1のマイクロ流路よりリン脂質分散液を導入し、導入部における他の1のマイクロ流路より気体を導入し、統合されたマイクロ流路内でリン脂質分散液と気体を混合させることができる。

【0021】
マイクロ流路が、導入部に少なくとも2つのマイクロ流路を有し、導出部に1つのマイクロ流路を有する分岐型マイクロ流路の場合、本発明のリポソームは、以下の工程を含む製造方法により、製造することができる(図1参照)。
1)導入部における1のマイクロ流路よりリン脂質分散液を導入する工程;
2)導入部における他の1のマイクロ流路より気体を導入する工程;
3)マイクロ流路内で、リン脂質分散液と気体を混合させる工程;
4)導出部のマイクロ流路よりリポソームを導出する工程。

【0022】
上記において、工程1)及び工程2)は同時に行うことができ、各々別の導入部よりリン脂質分散液及び気体をマイクロ流路内に導入することができる。導入部に3以上のマイクロ流路を有する場合は、その他のマイクロ流路より、水性媒体(有機溶媒を含まない溶液)を導入したり、内包剤を含む水性媒体を導入することができる。内包剤は、リン脂質分散液に混合して使用してもよい。

【0023】
上記において、工程1)及び工程2)において、リン脂質分散液及び気体をマイクロ流路内に導入する方法は、特に限定されないが、例えばリン脂質分散液又は気体を含むシリンジを、各々導入部のマイクロ流路に結合させて、ピストン又はポンプ等の作用によって導入することができる(図1参照)。リン脂質分散液及び気体をマイクロ流路内に導入させうる方法であれば、自体公知の方法であってもよいし、今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。

【0024】
上記において使用可能な内包剤は水溶性であり、脂質二重膜に囲まれた閉鎖空間の水相に内包される。内包剤の具体例として、広く医薬品に使用される水溶性の物質が挙げられる。具体的には造影剤、抗がん剤、抗酸化剤、抗菌剤、抗炎症剤、血行促進剤、美白剤、肌荒れ防止剤、老化防止剤、発毛促進剤、保湿剤、ホルモン剤、ビタミン類、色素、及びタンパク質類などが挙げられる。この中でもヒドロキシル基、カルボキシ基を分子構造中に含有する化合物が安定性の観点から好ましい。内包剤は、リン脂質分散液及び気体と同時にマイクロ流路内に導入してもよいし、リン脂質分散液及び気体をマイクロ流路内に導入した後に導入してもよい。

【0025】
上記において、リン脂質分散液におけるリン脂質と水性媒体の混合比は、リン脂質が溶解される十分量であれば特に限定されるものではないが、一般的には2~30mg/mlの濃度に調整され、使用される。

【0026】
マイクロ流路に導入されるリン脂質分散液は、マイクロ流路の体積に応じて流路が十分に満たされる量であればよい。また、導入されるリン脂質分散液流量と気体流量の比は、リン脂質分散液流量:気体流量が、0.001~10:1であり、好ましくは0.001~4:1であり、最も好ましくは、0.5~2:1である。導入される気体流量は、1~15ml/時であり、好ましくは5~15ml/時であり、最も好ましくは5~10ml/時である。リン脂質分散液の導入速度は、流速が、0.0001~0.5m/秒、好ましくは0.05~0.3m/秒、より好ましくは0.1~0.2m/秒である。流路内の水溶液温度は、15~80℃、好ましくは45~65℃、より好ましくは55~62℃である。

【0027】
上記条件で、気体とリン脂質分散液との気液界面にリン脂質を吸着させて、リン脂質の配向を行うことができる。背景技術の欄で述べた特許文献1には、有機溶媒に溶解させたリン脂質溶液をマイクロ流路に導入し、有機溶媒を乾燥させてマイクロ流路の壁にリン脂質の薄膜を形成させて、リポソームを生成させており、壁面にリン脂質成分を吸着させるために有機溶媒が必要であったのに対し、本発明の製造方法によれば、有機溶媒を必要とせず気液界面にリン脂質を吸着させることができ、リポソームを生成することができる(図2~4参照)。

【0028】
本発明のリポソームの製造方法によれば、生成工程において、炭酸ガスによる加圧濾過工程を含まないでリポソームを製造することができる。

【0029】
本発明は、リポソームの製造用デバイスにも及ぶ。本発明のリポソームの製造用デバイスには、マイクロ流路が含まれる(図1参照)。当該マイクロ流路は、上記説明したように、導入部と導出部を有する長さが2mm~5mの流路であり、その流路内径は100~1000μm、好ましくは200~530μmである。流路内径は、所望するリポソーム粒子径により、適宜調整される。本発明のリポソームの製造用デバイスに含まれるマイクロ流路には、導入部に少なくとも2つのマイクロ流路を有し、導出部に1つのマイクロ流路を有する分岐型マイクロ流路であるのが好適である。

【0030】
本発明は、さらに、リポソームの製造用デバイスと導入用シリンジを含むリポソーム製造用キットにも及ぶ。当該導入用シリンジには、有機溶媒を含まないリン脂質分散液、内包剤及び/又は気体を充填し、これらの物質をマイクロ流路に導入させることができる。有機溶媒を含まないリン脂質分散液や内包剤は、用時調製することができる。また、有機溶媒を含まないリン脂質分散液に、内包剤を加え、同時にマイクロ流路内に導入することもできる。

【0031】
本発明は、上記製造方法により得られたリポソームにも及ぶ。本発明の製造方法により生成されたリポソームは、マイクロ流路の導出部から排出される。生成されたリポソームは、遠心分離等の通常の手段で沈殿として回収される。回収されたリポソームは、マイクロ流路の内径により、粒径が均一化されているが、所望により粒子径を調整するためのろ過を行ってもよい。また、製剤化のための付加処理、滅菌等が行われ、所望により凍結乾燥化及び/又は水溶液製剤として調製される。

【0032】
本発明の製造方法によって製造されるリポソームとしては、多重層膜からなるリポソーム(Multilamellar vesicles; MLV)、粒子径が大きい一枚膜のLUVからなるリポソーム(Large unilamellar veislcles)、粒子径が50nm未満の小さい一枚膜のSUVからなるリポソーム(Small unilamellar vesicles)が挙げられ、これらは混在していてもよいが、本発明の方法によれば粒径がほぼ均一化したリポソームを得ることができる。

【0033】
また、本発明の製造方法によって製造されるリポソームは、リポソームの水性分散液剤又は凍結乾燥剤として調製することができる。内包剤を含有するリポソームとして好適な製剤は、内包剤が水溶性の薬剤であり、水溶性薬剤が内包されたリポソームが水性溶媒中に分散している水性分散液製剤が挙げられる。このリポソームの水性分散液剤には、安定化剤、キレート剤、抗酸化剤、粘度調節剤、緩衝剤、pH調整剤などが溶解又は分散していてもよい。このようなリポソームの水性分散液製剤の調製は、各種の方法が知られているが、目的、特性、用途などに応じて適宜選択して行う。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)リポソームの製造
本発明のリポソームを、図1に示すマイクロ流路を含むリポソーム製造用デバイスを用いて製造した。
卵黄レシチン0.002gをイオン交換水1mlに完全に分散するまで攪拌し、リン脂質分散液を調製した。導入するマイクロ流路(デバイス)及びリン脂質分散液を60℃に保ち、内径270μm、長さ10cmの3分岐からなる流路の導入部にリン脂質分散液、空気及びPBSを導入した。空気は流量1~15ml/時で導入し、同時にリン脂質分散液及びPBSを流速0.0001~0.5m/秒で導入した。マイクロ流路の導出部から形成されたリポソームの分散水溶液を得た。この水溶液を12000rpmの条件で遠心分離し、多重膜リポソームを沈殿として回収した。沈殿を凍結乾燥し、乾燥リポソーム製剤を製造した。
【実施例】
【0036】
本発明の製造方法によれば、分岐型マイクロ流路の合流部において図2に示す流れが認められた。また、流路内の様子を図3に、気液界面にリン脂質を吸着させている状態を図4A、Bに示した。
【実施例】
【0037】
(実験例1)粒度分布1
実施例1で製造したリポソーム及び比較例としてのバンガム法(非特許文献1)で製造したリポソームの粒子径を測定し、その結果を図5に示した。
【実施例】
【0038】
リポソーム分散水溶液を流路出口で回収し、これを1200rpmで10分間遠心分離し、多重膜リポソームの沈殿として回収した。その後沈殿を生理食塩水1ミリリットル中に分散させ、得られた溶液に含まれるリポソームの粒子径を、動的光散乱法を用いて測定した。
【実施例】
【0039】
図5において横軸はリポソームの粒子径(nm)、縦軸は確率密度(intensity)(%)を示した。実線は本願発明、破線はバンガム法によるものである。比較例としてのバンガム法によるとブロードな粒子径分布により各種粒子径のリポソームが生成されたのに対し、本発明の製造方法によると、1つの鋭いピークからなる粒子径分布が認められ、均一化された粒子径のリポソームが生成されることが確認された。
【実施例】
【0040】
(実験例2)粒度分布2
実施例1のリポソームの製造方法において、空気を含む条件及び空気を含まない条件で、リポソームを製造した。空気を含む場合のリン脂質溶液及びPBSの流量は16.7μl/分、空気流量は5ml/時であり、空気を含まない場合のリン脂質溶液及びPBSの流量は15μl/分であった。
【実施例】
【0041】
得られたリポソームについて、実験例1と同手法により粒子径を測定した。その結果、空気を含む条件下で製造したリポソームでは1つの鋭いピークからなる粒子径分布が認められ、均一化された粒子径のリポソームが生成されることが確認された(図6)。
【実施例】
【0042】
(実験例3)収率
実施例1に示すリポソームの製造方法において、リン脂質分散液とPBSの流量及び空気流量を変えたときのリポソームの収率を測定した。収率は、用いたリン脂質(重量)に対するリポソームを構成するリン脂質(重量)の重量比(%)により算出した。
【実施例】
【0043】
リン脂質分散液とPBSの流量及び空気流量を変えたときのリポソームの収率を図7に示した。なお、比較例としてバンガム法で製造したリポソームの収率を破線で示した。その結果、本発明の製造方法によれば、バンガム法で製造した場合に比べて優れた収率を示した。また、空気流量に対するリン脂質分散液とPBSの流量比と収率を図8に示した。その結果、空気流量が、1~15ml/時であって、リン脂質分散液流量:空気流量が、0.001~10:1の場合に、高い収率でリポソームを得ることができた。より具体的には、空気流量が10ml/時より多い場合は、空気流量に対するリン脂質分散液とPBSの流量比が1付近で最も収率が高く、空気流量が5ml/時より少ない場合は、空気流量に対するリン脂質分散液とPBSの流量比が大きいほうが収率が高かった(図8)。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように、本発明の有機溶媒を使用しない方法でリポソームを製造することにより、加圧濾過処理や、有機溶媒を除去するための加熱処理、吸引処理や乾燥処理などの工程を省略することができ、リポソーム製造に要する時間の短縮化ができ、さらに従来よりも高収率でリポソームを製造することできる。リポソームの寿命は、通常3日程度であるといわれているが、本発明の製造方法によれば、コンパクトなリポソーム製造用キット又は製造用装置により、短時間に所望の内包剤を含むリポソーム製剤を製造することが可能となり、病院や薬局等でのリポソーム製剤を製造することができ、安定な状態で使用することができる。
【0045】
このリポソームは、内部に有する水相には水溶性の内包剤(例えば、薬効成分)を、二分子膜の内部には油溶性の内包剤を保持するという、いわゆるカプセル構造を構築することができる。本発明の製造方法により製造したリポソームにより、検査(診断)、治療、化粧などの様々な分野で用いることができる。さらに、近年では、薬物送達システム(DDS)への応用が盛んに研究されており、本発明の製造方法により、リポソーム製剤の普及に対して多いに貢献することができる。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図5】
1
(In Japanese)【図6】
2
(In Japanese)【図7】
3
(In Japanese)【図8】
4
(In Japanese)【図2】
5
(In Japanese)【図3】
6
(In Japanese)【図4A】
7
(In Japanese)【図4B】
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