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明細書 :面外分岐ミラーを有する光集積回路の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2942825号 (P2942825)
登録日 平成11年6月25日(1999.6.25)
発行日 平成11年8月30日(1999.8.30)
発明の名称または考案の名称 面外分岐ミラーを有する光集積回路の製造方法
国際特許分類 G02B  6/122     
G02B  6/12      
FI G02B 6/12 A
G02B 6/12
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平10-092258 (P1998-092258)
出願日 平成10年3月23日(1998.3.23)
審査請求日 平成10年3月23日(1998.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012246
【氏名又は名称】静岡大学長
発明者または考案者 【氏名】杉原 興浩
【氏名】岡本 尚道
【氏名】江上 力
【氏名】中山 英樹
【氏名】都丸 尚紀
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】福田 聡
参考文献・文献 Proceedings of POF Conference’97,p.144-145
調査した分野 G02B 6/12 - 6/122
G02B 6/13 - 6/138
要約 【課題】 比較的簡単な製造工程により面外分岐ミラーを有する集積回路を高精度に製造できる光集積回路の製造方法を提供する。
【解決手段】 光集積回路の製造方法は、基板(11)上に面外分岐ミラーを有する光集積回路を形成するに当たり、基板(11)上に、光回路素子を構成する高分子光学材料膜(12)を形成する工程と、前記高分子光学材料膜を電子線ビームで直接2次元的に走査する工程と、現像処理により、光回路素子を構成しない区域の高分子光学材料膜を除去する工程とを具え、前記電子線ビームの走査工程において、光回路素子を構成しない区域に対して時間的に一定のエネルギー照射量で走査し、面外分岐ミラーを形成する予定の区域に対しては照射エネルギー量を時間的に変えながら走査することを特徴とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に面外分岐ミラーを有する光集積回路を形成するに当たり、
基板上に、光回路素子を構成する高分子光学材料膜を形成する工程と、
前記高分子光学材料膜を電子線ビームで直接2次元的に走査する工程と、
現像処理により、光回路素子を構成しない区域の高分子光学材料膜を除去する工程とを具え、
前記電子線ビームの走査工程において、光回路素子を構成しない区域に対して時間的に一定のエネルギー照射量で走査し、面外分岐ミラーを形成する予定の区域に対しては照射エネルギー量を時間的に変えながら走査することを特徴とする光集積回路の製造方法。

【請求項2】
前記電子線ビームの走査工程において、電子線の照射量を段階的に変化させて、階段状の面外分岐ミラーを形成することを特徴とする請求項1に記載の光集積回路の製造方法。

【請求項3】
前記電子線ビームの走査工程において、照射する電子線の単位時間当たりのエネルギーの変化を2段階に変化させ、基板表面の法線に対して互いに異なる角度の2個の分岐ミラー面を形成することを特徴とする請求項1に記載の光集積回路の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光集積回路の製造方法、特に電子線を直接照射することにより面外分岐ミラーを有する光集積回路の製造方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術】基板上に高分子膜を形成し、この高分子膜を利用して光導波路や光変調器等の種々の光学素子を形成する光集積回路が実用化されている。この光集積回路においては、外部からの信号光を光集積回路に入射させ又は光集積回路からの信号光を別の光学素子に送出するための面外分岐ミラーのような光カップリング素子が必要である。

【0003】
従来、光集積回路に光カップリング素子として面外分岐ミラーを形成する場合、フォトリソグラフィー及びエッチング技術が用いられていた。すなわち、面外分岐ミラーの作製には、まず乾板上に電子線レジストを堆積し、電子線発生源を用いて電子線を照射、現像処理を行うことにより、所望のパターンのフォトマスクを作製する。次に、光導波路上に光感光材であるフォトレジストを成膜し、フォトレジストの上から紫外線をフォトマスクを通して照射してパターニングし、現像する。そして、フォトレジストをマスクとしてエッチングを行い、光導波路のコア部分を削ることにより分岐ミラーを持つ高分子光導路が完成する。また、高分子導波路上への面外分岐ミラーの作製には、ダイシングソーの刃を用いて高分子を機械的に切削するという方法が利用されていた。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来技術においては、面外分岐ミラーの作製のために、多数の工程を経る必要があり、製造工程が複雑化する欠点があった。また、従来技術の工程では、機械加工処理を必要とするため、熱的、機械的に弱い材料は利用できなかった。さらに、これらの方法では、フレキシビリティーに富んだミラーパターンが実現困難であった。

【0005】
従って、本発明の目的は上述した欠点を解消し、比較的簡単な製造工程で面外分岐ミラーを有する光集積回路を正確に形成できる光集積回路の製造方法を提供することにある。

【0006】
さらに、本発明の目的は、単一の光カップリング面だけでなく回折格子状等の種々の形態の面外分岐ミラーを有する光集積回路の製造方法を提供することにある。

【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による面外分岐ミラーを有する光集積回路の製造方法は、基板上に面外分岐ミラーを有する光集積回路を形成するに当たり、基板上に、光回路素子を構成する高分子光学材料膜を形成する工程と、前記高分子光学材料膜を電子線ビームで直接2次元的に走査する工程と、現像処理により、光回路素子を構成しない区域の高分子光学材料膜を除去する工程とを具え、前記電子線ビームの走査工程において、光回路素子を構成しない区域に対して時間的に一定のエネルギー照射量で走査し、面外分岐ミラーを形成する予定の区域に対しては照射エネルギー量を時間的に変えながら走査することを特徴とする。

【0008】
本発明者が、基板上に形成した高分子光学材料膜について種々の実験及び解析を行った結果、高分子膜に電子線を照射し熱現像又は湿式現像を行うと、現像処理により除去される高分子膜の厚さと照射した電子線の照射量との間に対応関係が存在することが判明した。すなわち、単位時間当たりの電子線照射量が少ない場合浅く除去され、電子線照射量を多くすることにより表面から一層深い位置まで除去されことが判明した。この実験結果によれば、面外分岐ミラーが形成される予定の区域について電子線の照射量を時間的に変化させることにより、基板の法線に対して90°以外の任意の角度のミラー面を形成することができる。本発明は、このような認識に基づくものであり、光集積回路の光導波路や光変調器のような光回路素子を構成しない区域については時間的に一定の照射量の電子線を照射する。一方、面外ミラーを構成する区域については、電子線照射量を時間的に変化させる。この場合、電子線の照射量は、電子線ビームの走査速度を変化させることにより変えることができ、または走査速度を一定にし照射量自体を時間的に変化させることにより変えることもできる。このように構成することにより、1回の電子線照射処理により面外分岐ミラーを有する光集積回路を形成することができ、製造工程が一層簡単になる。

【0009】
本発明による面外分岐ミラーを有する光集積回路の製造方法の実施例は、電子線のビーム走査工程において、照射される電子線の照射量を段階的に変化させて、回折格子状の面外分岐ミラーを形成することを特徴とする。電子線照射量を時間的に段階的に変化させることにより、階段状の面外分岐ミラー、すなわち回折格子状の面外分岐ミラーを形成することができる。

【0010】
本発明による面外分岐ミラーを有する光集積回路の製造方法の実施例は、電子線のビーム走査工程において、照射する電子線の単位時間当たりのエネルギーの変化を2段階に変化させ、基板表面の法線に対して互いに異なる角度の2個の面を形成することを特徴とする。このように、基板の法線に対する角度が異なる2個のミラー面を形成することにより、光集積回路で処理された信号光を2本のビームに分割して出射させることができる。

【0011】
【発明の実施の形態】始めに、本発明の基本思想をなす実験結果について説明する。ガラス基板上にポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリアクリレート(商品名「U-100」)のような高分子光学材料膜を0.5~2.5μmの厚さでコートし、この高分子膜に電子線を照射し、その後現像処理を行い、高分子膜の現像深さを測定した。電子線照射の条件は以下の通りである。
電子線照射量:10~30μC/cm2 (PMMA)
ビーム電流:0.5nA
ビーム径:0.1μm
加速電圧:25kV:
この条件下において、PMMA膜について種々のエネルギーの電子ビームで走査した場合の現像深さと電子線ドーズ量との関係を図1に示す。図1において、横軸は電子線のドーズ量を示し、縦軸は現像深さ(相対値)を示す。図1の実験結果から明かなように、現像処理により除去される高分子膜の厚さは照射電子線量にほぼ線形に対応している。従って、照射する電子線の量を時間的に変化させながら電子線走査を行うことにより基板の法線に対して所望の角度の面外分岐ミラーを形成することができる。

【0012】
図2A及びBは、実際にPMMA膜に電子線照射量を時間的に変えながら照射してミラー面を形成した場合の断面を2500倍の顕微鏡で撮影した顕微鏡写真を線図として示すものである。図2Aは45°と90°のミラー面を形成した際の顕微鏡写真の図である。図2Aから明かなように、ほぼ45°及び90°のミラー面が形成できることが確認された。また、図2Bは45°と45°の対向するミラー面を形成したときの図である。この場合も同様に45°のミラー面が形成できた。

【0013】
図3は本発明による方法により製造した光集積回路の一例の構成を示すものであり、図3Aは線図的平面図、図3Bは図3AのI-I線断面図である。本例では、光導波路と光変調器を有する光集積回路について説明する。基板1上に高分子光導波路2及び光変調器3を形成する。光導波路2はその両端に面外分岐ミラー2a及び2bを有し、これら面外分岐ミラー2a及び2bを介して変調すべき信号光を入射させると共に変調した光信号を出射させる。光変調器3は導波路部分3aとその両側に形成した電極4a及び4bを有し、これらの電極に信号源(図示せず)から供給される信号により光導波路部分3aを伝播する光信号を変調する。

【0014】
図4A~Cは、図3に示す光集積回路を製造する際の順次の製造工程を示す線図的断面図である。図4Aに示すように、初めに基板10を用意し、この基板10上に高分子光学材料膜11を形成する。基板として、例えばガラス基板やサファイア基板を用いることができ、高分子光学材料として例えばポリメチルメタクリレートやポリカーボネートのような高分子光学材料を用いることができる。

【0015】
次に、この基板を電子線照射装置のチャンバ内に配置し、電子線照射を行う。電子線照射に際し、本発明では電子ビームを用いて基板10を2次元走査して光導波路や光変調器のような光回路素子を形成する。電子ビーム走査において、光回路素子を構成しない区域は、その後行う現像処理により高分子膜が完全に除去されるエネルギー量で時間的に一定の照射量で照射し、光導波路のように高分子膜が光導波路を構成する区域は電子線を照射せず、面外分岐ミラーを構成する区域については基板の法線に対して所望の角度のミラー面が形成されるように照射量を時間的に変化させながら行う。この電子ビームによる走査は、コンピュータ制御により行うことができる。尚、照射量は、走査速度を時間的に変えることにより、又は走査速度を一定にして照射エネルギー量を時間的に変えることにより行うことができる。

【0016】
図4Bは、図3Bに示す区域a~eに沿って電子ビームを照射する態様を示す。光学素子を構成しない区域aについては、最も高い照射量で時間的に一定の照射量で照射しながら走査する。次に、面外分岐ミラー2bを構成する区域bについては、電子線照射量を時間的に徐々に低くなるように走査する。次に、光導波路2に対応する区域cについては電子線照射を行わない。次に、面外分岐ミラー2aを構成する区域dについては電子線照射量を時間的に増大させながら走査する。さらに、光学素子を構成しない区域eについては、最も高い照射量で時間的に一定の照射量で照射しながら走査する。

【0017】
電子線照射が完了した後、現像処理を行い、電子線が照射された区域について電子線照射量に応じて高分子光学材料を除去する。この現像処理として例えば電子線照射が完了した基体を高分子光学材料のガラス転移点付近まで加熱しその後リンス処理を行う熱現像や湿式現像を行うことができる。前述したように、本発明では、照射された電子線のエネルギー量に応じて高分子光学材料を除去できるので、現像処理後に図4Cに示す形態の光回路を形成することができる。

【0018】
図5A及びBは本発明により形成した面外分岐ミラーの変形例を示す線図的断面図である。図5Aに示す例においては、照射する電子線のドーズ量を時間的にステップ状に変化させた場合に得られる面外分岐ミラーを示す。この場合、面外分岐ミラーは回折格子のように形成される。図5Bに示す例において、ミラー面を基板の法線に対する角度が互いに相異する2個の面で構成される。この場合にも、電子線照射量の時間的な変化を2段階で変化させることにより容易に形成することができる。このようなミラー面を形成することにより、信号光を2本の光ビームとして出射させることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4