【非特許文献1】T. Yanagisawa, T. Shimazu, K. Kuroda, and C. Kato, Bull. Chem. Soc. Jpn., 63 (1990) 988-992 【非特許文献2】H. Nakamura, and Y. Matsui, J. Am. Chem. Soc., 117 (1995) 2651-2652 【非特許文献3】M. Zhang, Y. Bando, K. Wada, and K. Kurashima, J. Mater. Sci. Lett., 18 (1999) 1911-1913 【非特許文献4】T. Mori, Y. Kuroda, Y. Yoshikawa, M. Nagao, and S. Kittaka, Langmuir, 18 (2002) 1595-1603 【非特許文献5】M. Iwamoto, Y. Tanaka, N. Sawamura, and S. Namba, J. Am. Chem. Soc., 125 (2003) 13032-13033 【非特許文献6】J. F. Lemonas Jr., Am. Ceramic Soc. Bull., 76 No.6 (1997) 92-95 【非特許文献7】C. Real, M. D. Alcala, and J. M. Criado, J. Am. Ceram. Soc., 79 No.8 (1996) 2012-2016 【非特許文献8】V.C. Sundar, A. D. Yablon, J. L. Grazul, M. Ilan, and J. Aizenberg, Nature, 424 (2003) 899-900 【非特許文献9】K. Liu, Q. Feng, Y. Yang, G. Zhang, L. Ou, and Y. Lu, J. Non-Cryst. Solids, 353 (2007) 1534-1539 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 公知のシリカ材料は人工合成物が主である。天然物由来のシリカ材料も作製されているが、微生物が作る酸化鉄を出発物質としている製法はこれまで報告例がない。 【0008】 そこで、本発明は、微生物が作る酸化鉄を出発物質とした多孔質アモルファスシリカ、及びその製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、上記多孔質アモルファスシリカを含む固体酸触媒、吸着剤、有機・無機複合材料、及び触媒・有機・無機3元系複合材料を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、微生物が作る酸化鉄の鉄分を酸処理し、Fe成分を溶解除去することによってアモルファスシリカを得ることができ、上記目的を達成することができるという知見を得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の多孔質アモルファスシリカ、多孔質アモルファスシリカの製造方法、固体酸触媒、吸着剤、有機・無機複合材料、及び触媒・有機・無機3元系複合材料を提供するものである。 【0010】 項1.酸強度が0.4 Band area/a.u.以上であって、マイクロ孔を有する多孔質アモルファスシリカ。 【0011】 項2.前記酸強度が0.5 Band area/a.u.以上である、項1に記載の多孔質アモルファスシリカ。 【0012】 項3.前記酸強度が0.6 Band area/a.u.以上である、項1に記載の多孔質アモルファスシリカ。 【0013】 項4.比表面積が300 m2/g以上である、項1~3のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。 【0014】 項5.比表面積が400 m2/g以上である、項1~3のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。 【0015】 項6.球状微粒子の集合体である、項1~5のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。 【0016】 項7.微生物が生成した酸化鉄を酸で処理する工程を含む方法により得られる、項1~6のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカ。 【0017】 項8.微生物が生成した酸化鉄を酸で処理する工程を含む多孔質アモルファスシリカの製造方法。 【0018】 項9.前記酸が塩酸又は硫酸である、項8に記載の方法。 【0019】 項10.項1~7のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカを含む固体酸触媒。 【0020】 項11.フリーデルクラフツ反応触媒又はエポキシ開環反応触媒である、項10に記載の固体酸触媒。 【0021】 項12.複素環式化合物のアルキル化反応に適用されるフリーデルクラフツ反応触媒である、項10に記載の固体酸触媒。 【0022】 項13.項1~7のいずれかに記載の多孔質アモルファスシリカを含む吸着剤。 【0023】 項14.極性ガスの吸着に使用される、項13に記載の吸着剤。 【0024】 項15.N2O、NOx、CO2、CO、オレフィン及びアルキンからなる群から選ばれた少なくとも1種の極性ガスの吸着に使用される、項13に記載の吸着剤。 【0025】 項16.項1~7いずれかに記載の多孔質アモルファスシリカを有機基で化学修飾した有機・無機複合材料。 【0026】 項17.前記有機基が、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、イミド基、シアノ基、イソシアノ基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、イミノ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、スルフィド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホキシド基、複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子及びリン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する基である、項16に記載の有機・無機複合材料。 【0027】 項18.前記多孔質アモルファスシリカに含まれるSi原子に結合した酸素原子が、前記有機基に含まれるケイ素、チタン、アルミニウム又はリンのいずれかと結合している、項16又は17に記載の有機・無機複合材料。 【0028】 項19.前記有機基に含まれるケイ素、チタン、アルミニウム及びリンからなる群から選ばれる少なくとも1種が、それぞれ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤及びリン系カップリング剤に由来する、項18に記載の有機・無機複合材料。 【0029】 項20.前記有機基による化学修飾が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤及びリンカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも1種と前記多孔質アモルファスシリカとの反応で形成される、項16~19のいずれかに記載の有機・無機複合体。 【0030】 項21.項16~20のいずれかに記載の有機・無機複合材料に触媒を固定化した触媒・有機・無機3元系複合材料。 【0031】 項22.触媒が、酵素、有機触媒及び金属錯体触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である、項21に記載の触媒・有機・無機3元系複合材料。 【発明の効果】 【0032】 本発明により、微生物が作る酸化鉄を出発物質とした多孔質アモルファスシリカを提供することができる。本発明の多孔質アモルファスシリカは、固体酸触媒として作用する酸点を有し、人工的に合成したシリカ触媒と比較し優れた酸強度及び触媒活性を有しており、新規の固体酸触媒として様々な分野での応用が期待できる。更に、本発明の多孔質アモルファスシリカは、人工的に合成したシリカ触媒と比較して、優れた無機系ガス及び有機系ガスの吸着能を有しており、吸着剤としての応用も期待できる。 【図面の簡単な説明】 【0033】 【図1】実施例のバイオジナス・シリカの製造方法のフローチャートを示す図である。 【図2】実施例のバイオジナス・シリカのXRDパターンを示すグラフである。 【図3】実施例のバイオジナス・シリカのSEM写真である。 【図4】実施例のバイオジナス・シリカのTEM写真である。 【図5】実施例のバイオジナス・シリカの細孔径分布を示すグラフである。左:メソ孔領域、右:マイクロ孔領域 【図6】実施例のバイオジナス・シリカ及びアエロジル200に吸着したピリジンのIRスペクトルを示すグラフである。300 K evac.:バイオジナス・シリカを室温(300 K)で2時間、真空排気処理し、その後、in situ、室温で測定したスペクトル、Py ads.:上記の前処理を施したバイオジナス・シリカに300 Kでピリジンガスを吸着させたときのスペクトル、300 K reevac.:ピリジン吸着後、バイオジナス・シリカを、再び、300 Kで30分真空排気処理したときのスペクトル、Aerosil200 Py ads.:アエロジル200を300 Kで2時間、真空排気処理し、その後、300 Kでピリジンガスを吸着させたときに測定したスペクトル 【図7】実施例のバイオジナス・シリカに吸着したピリジンの脱離過程におけるIRスペルクトルを示すグラフである。300 K evac:バイオジナス・シリカを300 Kで2時間、真空排気処理し、その後、in situ、室温で測定したスペクトル、Py ads.:上記の前処理を施したバイオジナス・シリカに300 Kでピリジンガスを吸着させたときのスペクトル、300 K reevac.:ピリジン吸着後、バイオジナス・シリカを、再び、300 Kで30分真空排気処理したときのスペクトル、373~873 K reevac.:バイオジナス・シリカを各温度で30分真空加熱処理したときのスペクトル 【図8】実施例のバイオジナス・シリカ、アエロジル200及びMCM-41の酸点の強度を示すグラフである。 【図9】室温で測定した無機系ガスについての吸着等温線を示すグラフである。左:バイオジナス・シリカ、右:アエロジル200 【図10】室温で測定した有機系ガスについての吸着等温線を示すグラフである。左:バイオジナス・シリカ、右:アエロジル200 【発明を実施するための形態】 【0034】 以下、本発明を詳細に説明する。
【0035】 多孔質アモルファスシリカ 本発明の多孔質アモルファスシリカは、酸強度が0.4 Band area/a.u.以上であって、マイクロ孔を有することを特徴とする。
【0037】 本発明の多孔質アモルファスシリカの酸強度は、好ましくは0.5 Band area/a.u.以上、より好ましくは0.6 Band area/a.u.以上、特に好ましくは0.7 Band area/a.u.以上、最も好ましくは0.8 Band area/a.u.以上である。本発明における酸強度の値は、実施例に記載の方法により測定される。実施例では、Miyataら(Appl. Spectrosc. 1989, 43, 522.)によって開発されたプログラムを用いてバンド面積を求めているが、一般に市販されている波形解析ソフトでバンドの面積を求めても良い。当該酸強度で表される値は、ブレンステッド酸に類似した酸特性を有するサイト(酸性を有する水酸基)の量(或いは強さ)に直接相当すると考えることができる。
【0048】 例えば、代表的な鉄酸化細菌であるレプトスリックス・オクラセア(Leptothrix ochracea)は、鞘状の酸化鉄を生産することが知られている(例えば、「H. Hashimoto, S. Yokoyama, H. Asaoka, Y. Kusano, Y. Ikeda, M. Seno, J. Takada, T. Fujii, M. Nakanishi, R. Murakami, Characteristics of hollow microtubes consisting of amorphous ironoxide nanoparticles produced by ironoxidizing bacteria, Leptothrix ochracea. J. Magn. Magn. Mater., 310, 2405-2407 (2007)」)。