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明細書 :飼育魚類の筋肉内脂質含量増加方法及びそのための飼料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6241987号 (P6241987)
公開番号 特開2014-180270 (P2014-180270A)
登録日 平成29年11月17日(2017.11.17)
発行日 平成29年12月6日(2017.12.6)
公開日 平成26年9月29日(2014.9.29)
発明の名称または考案の名称 飼育魚類の筋肉内脂質含量増加方法及びそのための飼料
国際特許分類 A23K  50/80        (2016.01)
A23K  20/142       (2016.01)
FI A23K 50/80
A23K 20/142
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2013-057976 (P2013-057976)
出願日 平成25年3月21日(2013.3.21)
審査請求日 平成28年3月18日(2016.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
発明者または考案者 【氏名】大場 萌未
【氏名】吉永 葉月
【氏名】潮 秀樹
【氏名】金子 元
【氏名】高橋 伸一郎
【氏名】佐藤 秀一
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
審査官 【審査官】竹中 靖典
参考文献・文献 特開平07-031380(JP,A)
特開昭59-078650(JP,A)
特開昭51-013696(JP,A)
特開2006-223164(JP,A)
調査した分野 A23K 10/00 - 50/90
特許請求の範囲 【請求項1】
魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、該必須アミノ酸の生育に必要とされるアミノ酸の要求量の20~50%に調整したことを特徴とする魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料。
【請求項2】
魚類飼育用飼料中のリジンの含有量が、飼料当たり0.4~2.2重量%に調整されることを特徴とする請求項1に記載の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類養殖用飼料。
【請求項3】
魚類飼育用飼料が、養殖魚又は漁獲した天然魚の魚類筋肉内脂質含量を増加するための飼育のための飼料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料を用い、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育することにより、養殖魚又は漁獲した天然魚の筋肉内の脂質含量を増加することを特徴とする飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖魚又は漁獲した天然魚を出荷するに際して、飼育により、該魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法及びそのための魚類飼育用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年わが国においては魚類の養殖が盛んに行われ、その飼料の研究も数多くなされている。魚類の養殖用飼料の配合に際しては、各種飼料成分において、魚類における必須アミノ酸の供給が重要となる。必須アミノ酸は、魚体内で生合成により供給することができないため、魚の生育には、飼料として外部から供給することが必要となる。魚類の必須アミノ酸としては、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)が挙げられる。
【0003】
魚類の養殖において、各種海産重要魚類の生育に必要な必須アミノ酸要求量については、飼育試験により調査され報告がなされている(Robert P. Wilson PROTEIN AND AMINO ACID REQUIRMENTS OF FISHES:Ann. Rev. Nutr. 6:225-244,1986)。また、魚類飼料中の必須アミノ酸のバランスが魚類の成長や、生化学的指標に対する影響についても報告されている(Mar. Biotechnol., Vol. 14, No.5 p643-654,2012; Fisheries Sci. JST Vol. 68, No.3, p509-516,2002)。該報告では、例えば、試料中のアルギニン(Arg)や リジン(Lys)の欠乏は、魚の生残率、日間成長率、飼料効率及びタンパク蓄積に悪影響を与えることが報告されている。また、飼料中の必須アミノ酸の量が魚の成長に及ぼす影響についても報告されている。例えば、飼料中のリジン量を、7段階にかえてマスに与え、12週間の成長を観察したところ、19g/kgでマスの成長増はプラトーに達したことが報告されている。
【0004】
魚類の養殖において、飼料中に必須アミノ酸を添加、補強して、養殖魚の成長等を促進する方法も開示されている。例えば、特開平7-31380号公報には、フェザーミールと魚粉をタンパク質源とした魚類用配合飼料において、メチオニンや、リジン、及び、ヒスチジンのような必須アミノ酸を添加、補強して、魚の成長度の良好な配合飼料を調製する方法が開示されている。また、特開平6-70694号公報には、大豆タンパク質を主タンパク質源とした植物タンパク質配合ヒラメ用飼料において、不足する必須アミノ酸成分であるメチオニン及びリジンを添加して、飼料効率の良い、ヒラメ養殖用飼料を製造することについて開示されている。これらはいずれも、魚類の養殖用飼料の配合に際して、魚類の成長に必要な必須アミノ酸の量を補完或いは強化して、養殖魚類の成長の促進を図ったものである。
【0005】
一方で、近年、魚類の養殖が盛んに行われる中で、各種飼料の研究がなされ、養殖魚類の成長を促進するための飼料の開発も行われている。魚類の養殖において、養殖魚の成長を早めるために、従来より、養魚飼料へ脂質の添加が行われており、また、そのような飼料として、高脂肪含量の魚類の飼料の開示も種々なされている(特開平8-38066号公報、特開2005-27613号公報、特表2003-501106号公報)。しかしながら、養殖魚類の飼育において、飼料として脂質高含量の飼料を与えると、脂質がそのまま魚類体内に取り込まれるため、天然魚に比較して、高品質の油脂を含有する養殖魚とならない問題がある。天然魚のような場合は、ある程度脂質含量が高い方が「脂が乗った」状態になって食味が良くなるという評価になるが、養殖において、脂質含量の高い飼料等により、脂肪分を付与すると、体脂肪が必要以上に高くなり、天然魚に比べ、その食味において著しく劣るようになる。天然魚と養殖魚を比較すると、一般に養殖魚はその生育環境の相違から、脂肪含有率が高く、肉質が軟らか過ぎる傾向があり、これが養殖魚の味が天然魚の味より劣る原因であると考えられている。
【0006】
このような養殖魚の食味を改善するために、従来は、養殖魚の出荷7~10日前から餌止めし、脂肪含有率を低減させる方法が採られている。しかし、この方法では餌止めにより体重が減少し、商品価格が低下する問題がある。そこで、これらの魚類の脂質蓄積等に対する肉質の改善の方法が検討され、開示されている。例えば、特公昭61-22936号公報には、ゼオライトの一種であるモルデナイト及びクリノプチライトを養魚用飼料に添加して、該ゼオライトの吸着力を利用して消化器官内のアンモニアと脂肪を捕捉し、その過剰摂取を防止する方法が、特開平7-87901号公報には、ケイ酸の可溶化率が25%以上であり、かつ吸油量が150ml/100g以上の多孔質ケイ酸カルシウムを主成分とする魚介類の肉質改善剤を養殖魚介類用飼料に添加し、魚介類の成長を抑制せずに筋肉への体脂肪の蓄積を防止する方法が開示されている。
【0007】
また、特開2001-69923号公報には、緑茶、緑茶抽出物、茶殻を養殖魚用飼料に添加して、養殖魚の脂質を改善して、養殖魚特有の脂ぽさを軽減し或いは除去する方法が開示されている。しかし、これらの方法は、魚の脂肪含有率を低減させるものであるから、天然魚の「脂が乗った」状態とは相違するものであり、天然魚のような食味の養殖魚を提供するという観点からは、必ずしも満足のいくものとはなっていない。
【0008】
以上のように、近年、魚類の養殖が盛んに行われる中で、養殖技術やそのための養殖魚用飼料の改良が種々なされているが、天然魚に匹敵する味覚の養殖魚を提供するという観点からは、その養殖技術及びそのための飼料の更なる改良が望まれるところである。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特公昭61-22936号公報。
【特許文献2】特開平6-70694号公報。
【特許文献3】特開平7-31380号公報。
【特許文献4】特開平7-87901号公報。
【特許文献5】特開平8-38066号公報。
【特許文献6】特開2001-69923号公報。
【特許文献7】特開2005-27613号公報。
【特許文献8】特表2003-501106号公報。
【0010】

【非特許文献1】Ann. Rev. Nutr. 6:225-244,1986。
【非特許文献2】Mar. Biotechnol., Vol. 14, No.5 p643-654,2012。
【非特許文献3】Fisheries Sci. JST Vol. 68, No.3, p509-516,2002。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、養殖魚又は漁獲した天然魚を出荷するに際して、該魚類の筋肉内脂質含量を増加させ、食味及び食感の良好な「脂が乗った」状態の養殖魚又は漁獲した天然魚を提供すること及びそのための魚類飼育用飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討する中で、魚類の養殖における必須アミノ酸の要求量と、飼料中の必須アミノ酸の充足の関連についての研究において、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以下に調整することにより、飼料として、高脂質の飼料を与えることなしに、飼育によって魚類の筋肉内脂質含量を増加することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、リジン以外の必須アミノ酸は、魚の生育のために必要なアミノ酸の要求量を充足させ、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以下に調整することにより、魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料を調製し、該魚類飼育用飼料を用い、養殖魚の出荷前の飼育期間において、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育することにより、養殖魚の筋肉内の脂質含量を増加し、「脂が乗った」状態の養殖魚を提供することからなる。本発明の方法は、養殖魚のみならず、天然魚にも適用することができ、漁獲した天然魚の出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育することにより、食味及び食感の良好な「脂が乗った」状態の魚を提供することができる。
【0014】
本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法は、高脂質の飼料を与えることなしに、飼育によって魚類の筋肉内脂質含量を増加するものであるため、従来の方法のように余分な脂肪の蓄積や、添加脂肪による脂肪の蓄積を回避することができ、天然飼育のような自然な形での脂肪の蓄積が可能で、食味及び食感の良好な「脂が乗った」状態の養殖魚又は漁獲した天然魚を提供することができる。また、本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法は、本発明の魚類飼育用飼料を用い、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育するという、短期間の飼育処理を採用しているため、飼料中の必須アミノ酸であるリジンを、生育に必要なアミノ酸要求量以下に調整していても、魚体重に影響を及ぼすことなく、魚体の筋肉内の脂肪含量を50%以上も高めることが可能である。
【0015】
本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法で、リジンの欠乏で、魚体の筋肉内に脂肪が蓄積される現象のメカニズムは、詳細には明らかではないが、脂肪酸酸化に関係すると考えられる。該脂肪酸酸化において重要なステップである脂肪酸カルニチンを作るためのカルニチンはリジンから合成される。一方で、カルニチンからアセチルコリンなどの合成に必要なアセチル基が供給されるため、正常な脂肪酸酸化においては常に一定量のカルニチン補給が必要であるが、おそらく、短期間のリジン欠乏で一過性のカルニチン欠乏状態に陥り、正常状態では常に起こっている脂肪酸の分解が起こらず、結果的に脂質が蓄積するものと考えられる。また、リジンは、ケト原性アミノ酸(ケト基を供給するアミノ酸)であり、解糖系や糖新生には加われないため、他のアミノ酸が十分に供給されている場合には、糖代謝レベルには大きな影響を及ぼさないものと考えられ、短期間のリジン欠乏では、体重に影響が出ないものと考えられる。
【0016】
本発明の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類養殖用飼料において、リジンの飼料中の含有量が、該必須アミノ酸の生育に必要とされるアミノ酸の要求量の20~50%に低減されていることが好ましい。したがって、魚類の生育に必要なリジンのアミノ酸要求量が飼料中2.1~2.2重量%である場合には、魚類飼育用飼料中のリジンの含有量が、飼料当たり0.4~2.2重量%に調整されることが好ましい。本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法は、養殖魚又は漁獲した天然魚にも適用することができ、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、出荷前の2~7日の期間、本発明の魚類飼育用飼料を投与して飼育するという、短期間の飼育処理により、食味及び食感の良好な「脂が乗った」状態の魚を提供することができる。
【0017】
すなわち、具体的には本発明は、[1]魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、該必須アミノ酸の生育に必要とされるアミノ酸の要求量の20~50%に調整したことを特徴とする魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料や、[2]魚類飼育用飼料中のリジンの含有量が、飼料当たり0.4~2.2重量%に調整されることを特徴とする上記[1]に記載の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類養殖用飼料や、[]魚類飼育用飼料が、養殖魚又は漁獲した天然魚の魚類筋肉内脂質含量を増加するための飼育のための飼料であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料からなる。

【0018】
また、本発明は、[]上記[1]又は[2]に記載の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料を用い、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育することにより、養殖魚又は漁獲した天然魚の筋肉内の脂質含量を増加することを特徴とする飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、本発明の魚類飼育用飼料を用い、養殖魚又は漁獲した天然魚に適用して、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育するという、短期間の飼育処理により、魚体重に影響を及ぼすことなく、しかも、広い範囲の魚類に適用可能な、簡便な処理で、魚体の筋肉内の脂肪含量を高めることが可能で、食味及び食感の良好な「脂が乗った」状態の養殖魚又は漁獲した天然魚を提供することができる。また、本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法は、高脂質の飼料を与えることなしに、飼育によって魚類の筋肉内脂質含量を増加するものであるため、従来の方法のように余分な脂肪の蓄積や、添加脂肪による脂肪の蓄積を回避することができ、天然飼育のような自然な形での脂肪の蓄積が可能で、食味及び食感の良好な養殖魚又は漁獲した天然魚を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、魚種によって生育に必要とされる必須アミノ酸の要求量を含有させた魚類飼育用飼料において、リジン以外の必須アミノ酸は、魚の生育のために必要なアミノ酸の要求量を充足させ、該必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量を、生育に必要なアミノ酸の要求量以下に調整することにより、魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料を調製し、該魚類飼育用飼料を用い、養殖魚の出荷前の飼育期間において、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育することにより、養殖魚の筋肉内の脂質含量を増加し、「脂が乗った」状態の養殖魚を提供することからなる。

【0021】
魚類の必須アミノ酸としては、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)が挙げられる。魚種によって生育に必要とされる該必須アミノ酸の要求量は、Ann. Rev. Nutr., 6:225-244に記載された“PROTEIN AND AMINO ACID REQUIRMENTS OF FISHES”の方法によって求めることができる。魚類のリジン要求量は、2.0~5.0重量%/飼料が要求される。例えば、ブリ(スズキ目アジ科)の場合には、5.0重量%/飼料が、マダイ(スズキ目スズキ亜目タイ科)の場合は、4.4重量%/飼料が、ヒラメ(カレイ目カレイ亜目ヒラメ科)の場合は、4.6重量%/飼料が、ニジマス(サケ目サケ科)の場合は、2.1重量%/飼料が、コイ(コイ目・コイ科)の場合は、2.2重量%/飼料が、要求される。

【0022】
本発明の魚類筋肉内脂質含量を増加するための魚類飼育用飼料においては、必須アミノ酸のうち、リジンの飼料中の含有量が、上記アミノ酸の要求量以下に調整される。該リジンの飼料中の含有量は、対象魚類に対して、生育に必要とされるアミノ酸の要求量の20~50%に低減されていることが好ましい。飼料中のリジンの含量を調整するには、配合飼料のタンパク質原料の配合割合を調整してリジンの含有量を調整することにより行われるが、通常、魚類用飼料として用いられているものは、魚類の生育に必要な必須アミノ酸の含量は確保されているから、該配合原料において、リジンを多く含む配合原料の配合割合を調整して、リジンの飼料中の含有量を調整し、かかる調整要により、他の必須アミノ酸量が不足する場合には、適宜該必須アミノ酸量を添加することによって調整するのが簡便な方法である。

【0023】
本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法においては、本発明の魚類飼育用飼料を用い、養殖魚又は漁獲した天然魚の出荷前の飼育期間において、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育することにより、養殖魚又は漁獲した天然魚の筋肉内の脂質含量を増加することができる。本発明においては、本発明の飼料を用いて、出荷前の上記短期間での飼育処理により、魚体の体重を減らすことなく、飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加することが可能となり、該処理期間より長い期間の飼育処理、例えば20日以上の飼育処理を行った場合には、必須アミノ酸の欠乏により、魚は死滅する。本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法は、広い範囲の魚類に適用することができ、該方法により、魚体の筋肉内の脂質含量を50%以上増加することが可能である。

【0024】
以下に、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
ニジマスのアミノ酸要求量(表1)に基づいて,表2に示すように対照飼料および試験飼料を作製した。
【実施例1】
【0026】
【表1】
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【実施例1】
【0027】
【表2】
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【実施例1】
【0028】
飼料のアミノ酸組成をアミノ酸分析計で測定したところ、表3に示すようなアミノ酸組成が得られ、それぞれの充足率を算出すると表4に示すようにLysのみ大幅に欠乏していることが明らかとなった。
【実施例1】
【0029】
【表3】
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【実施例1】
【0030】
【表4】
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【実施例1】
【0031】
これらの飼料を体長約23cm,体重約200gのニジマスに2及び7日間投与したところ,表5に示すように対照群と試験群との間で体長及び体重のいずれも有意な差が認められなかった。
【実施例1】
【0032】
【表5】
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【実施例1】
【0033】
筋肉の全脂質を抽出し、トリアシルグリセロールを測定したところ、表6に示すようにリジン欠乏食を与えた場合に、Kruskal Wallis検定で有意に脂質含量が高くなった。
【実施例1】
【0034】
【表6】
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【実施例2】
【0035】
ゼブラフィッシュと近縁であるコイのアミノ酸要求量(表7)に基づいて、表8に示すように対照飼料および試験飼料を作製した。
【実施例2】
【0036】
【表7】
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【実施例2】
【0037】
【表8】
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【実施例2】
【0038】
飼料のアミノ酸組成をアミノ酸分析計で測定したところ、表9に示すようなアミノ酸組成が得られ、それぞれの充足率を算出すると表10に示すようにLysのみ大幅に欠乏していることが明らかとなった。
【実施例2】
【0039】
【表9】
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【実施例2】
【0040】
【表10】
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【実施例2】
【0041】
これらの飼料を、毎日10mgずつ体重約0.3gのゼブラフィッシュに3及び6日間投与した(n=5)。表11に示すように対照群と試験群との間で魚体重に有意な差は認められなかった。
【実施例2】
【0042】
【表11】
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【実施例2】
【0043】
筋肉の全脂質を抽出し、トリアシルグリセロールを測定したところ、表12に示すように、リジン欠乏食を与えた場合に、Kruskal Wallis検定で有意に脂質含量が高くなった。
【実施例2】
【0044】
【表12】
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【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、本発明の魚類飼育用飼料を用い、養殖魚又は漁獲した天然魚に適用して、出荷前の2~7日の期間を該魚類飼育用飼料を投与して飼育するという、短期間の飼育処理により、魚体重に影響を及ぼすことなく、食味及び食感の良好な「脂が乗った」状態の養殖魚又は漁獲した天然魚を提供する。また、本発明の飼育魚類の筋肉内脂質含量を増加する方法は、高脂質の飼料を与えることなしに、飼育によって魚類の筋肉内脂質含量を増加するものであるため、従来の方法のように余分な脂肪の蓄積や、添加脂肪による脂肪の蓄積を回避することができ、天然飼育のような自然な形での脂肪の蓄積が可能で、食味及び食感の良好な養殖魚又は漁獲した天然魚を提供することができる。