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明細書 :前立腺癌の判定、治療選択方法、予防又は治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6425942号 (P6425942)
公開番号 特開2016-044130 (P2016-044130A)
登録日 平成30年11月2日(2018.11.2)
発行日 平成30年11月21日(2018.11.21)
公開日 平成28年4月4日(2016.4.4)
発明の名称または考案の名称 前立腺癌の判定、治療選択方法、予防又は治療剤
国際特許分類 A61K  31/713       (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/713 ZNA
A61K 48/00
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 18
出願番号 特願2014-167174 (P2014-167174)
出願日 平成26年8月20日(2014.8.20)
審査請求日 平成29年5月25日(2017.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】大日方 大亮
【氏名】高橋 悟
【氏名】井上 聡
【氏名】高山 賢一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】高橋 樹理
参考文献・文献 国際公開第2004/031414(WO,A1)
国際公開第2013/037118(WO,A1)
調査した分野 A61K 48/00
A61K 31/713
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ABHD2遺伝子の発現を抑制するための次の(a)及び(b)を含む二本鎖核酸分子を有効成分として含む前立腺癌の予防又は治療剤。
(a)配列番号9、11、13、15、17、19又は21に示される、配列番号2~8のいずれかに示される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖
(b)前記(a)のセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖
【請求項2】
二本鎖核酸分子の各鎖の3´末端が、2塩基~6塩基突出した突出末端である請求項1に記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
【請求項3】
二本鎖核酸分子の長さが、23塩基から29塩基の少なくともいずれかである請求項1または2に記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
【請求項4】
二本鎖核酸分子が二本鎖RNAである請求項1~3のいずれかに記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
【請求項5】
二本鎖核酸分子がsiRNAである請求項4に記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
【請求項6】
前立腺癌細胞の増殖を抑制するための請求項1~5のいずれかに記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌の判定、治療選択方法、予防又は治療剤に関する。さらに詳しくはABHD2(Abhydrolase domain-containing protein 2;ABHD2(以下、単にABHD2と示す場合がある))遺伝子の発現に基づく、前立腺癌の判定、治療選択方法や、この発現の抑制による前立腺癌の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化及び人口の高齢化に伴い、日本においても前立腺癌の患者数が飛躍的に増加している。前立腺癌の治療技術には、臨床的には前立腺摘出術を始めとする外科的治療、抗癌剤による化学療法及び放射線治療が広く利用されている。
治療方法のうちでも外科的治療が第一に選択されるが、すでに癌が進行した状態で診断された場合や、外科手術後の再発などにより外科的手術が困難な場合においてはその他の治療法が選択される。
【0003】
一般に前立腺癌細胞はアンドロゲンによって刺激され、増殖することが知られている。そのためアンドロゲンの産生や機能を阻害するホルモン療法もしばしば行われている。これは、精巣を両側とも摘除する手術や、LHRHアナログを用いて精巣から分泌される血液中の男性ホルモン値を低下させ、さらに、微量に分泌されている副腎由来アンドロゲンを内服薬で除去するものである。
このホルモン療法は、効果が極めてよいものの、数年以内にアンドロゲン非依存性前立腺癌(Castration-resistant prostate cancer,CRPC)として再燃することが問題となっており、前立腺癌の治療において、このアンドロゲン非依存性前立腺癌の制御が最も重要な課題となっている。
【0004】
アンドロゲン非依存性前立腺癌は、アンドロゲンレセプター(Androgen Receptor;AR(以下、単にARと示す場合がある))の変異あるいは増幅により、超低濃度のアンドロゲン、抗アンドロゲン剤、その他のステロイドホルモンなどに感受性を示すことが示唆されている。しかし、このメカニズム等はいまだ不明であり、現状ではドセタキセルを用いた抗がん剤療法が唯一の治療法とされている。しかし、この治療法によって、効果を示す症例は限定的であり、事前にその効果を予測することもできないことから、効果の予測に有用なマーカーの提供が望まれている。
【0005】
また、アンドロゲン非依存性前立腺癌への進行を妨げるべく、アンドロゲン依存性の前立腺癌に対してホルモン療法以外の有効な治療法の提供も望まれている。
ARを発現している前立腺癌細胞が、アンドロゲン応答遺伝子の発現を亢進していることから、近年では、アンドロゲン応答遺伝子に対してアンチセンス核酸等を投与して、これらの遺伝子の発現を不安定化することにより、前立腺癌を治療する方法等が開発されている。しかし、アンチセンス核酸等は生体内で分解され易く、不安定であるため、前立腺癌の治療において十分な方法とはいえなかった。
【0006】
そこで、本発明者らは、生体内においても安定性が高いPIポリアミドに着目し、アンドロゲン応答遺伝子であるTMPRSS2と転写制御因子であるETS familyのEGR遺伝子との融合遺伝子の発現を抑制するPIポリアミド(特許文献1、参照)等を開発し、前立腺癌の予防、治療等への有用性を確認している。
【0007】
本発明者らはさらに、網羅的な前立腺癌の予防、治療等を可能とすることを目的として検討を行った結果、本発明において、新たなARの標的遺伝子の一つとして、ABHD2遺伝子を見出した。
ABHD2遺伝子はリン脂質代謝に関わり、肺胞構造の構築に影響を及ぼしている事が知られているが、その詳細な機能は不明である。また、特許文献2において、前立腺癌(PRC)細胞において過剰発現している遺伝子を網羅的に解析した結果、その遺伝子の一つとしてABHD2遺伝子が挙げられているものの、前立腺癌との具体的な関連については不明であった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2013-234135号公報
【特許文献2】特表2006-500950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、アンドロゲン依存性の前立腺癌に対して有効な新たな治療法の提供を課題とする。また、アンドロゲン非依存性前立腺癌の治療による効果を予測するために有用なマーカーを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、新たなARの標的遺伝子の一つとして見出されたABHD2遺伝子に着目するに至った。
本発明者らは本発明において、前立腺癌の診断を目的として生検した検体にABHD2遺伝子が高発現している場合、その後の治療経過において有意にドセタキセル治療に反応せず、前立腺癌の再燃(PSA再発)を起こすことを見出した。そこで、このABHD2遺伝子の発現をマーカーとすることで、前立腺癌の治療による効果が事前に予測できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、このABHD2遺伝子が、前立腺癌の進行を促進させ、現在進行性前立腺癌(去勢抵抗性前立腺癌)の唯一の治療薬であるドセタキセルに抵抗性を持つ遺伝子である事を見出したことから、このABHD2遺伝子の発現を抑制し得るsiRNA等の二本鎖核酸分子を作製し、これによって前立腺癌の進行が抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は次の(1)~(9)に記載の前立腺癌の予防又は治療剤や、前立腺癌の治療効果を判定するためのマーカー等に関する。
(1)ABHD2遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子を有効成分として含む前立腺癌の予防又は治療剤。
(2)二本鎖核酸分子が次の(a)及び(b)を含む二本鎖核酸分子である上記(1)に記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
(a)配列番号2~8のいずれかに示される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖
(b)前記(a)のセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖
(3)二本鎖核酸分子の各鎖の3´末端が、2塩基~6塩基突出した突出末端である上記(2)に記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
(4)二本鎖核酸分子の長さが、23塩基から29塩基の少なくともいずれかである上記(1)~(3)のいずれかに記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
(5)二本鎖核酸分子が二本鎖RNAである上記(1)~(4)のいずれかに記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
(6)二本鎖核酸分子がsiRNAである上記(5)に記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
(7)前立腺癌細胞の増殖を抑制するための上記(1)~(6)のいずれかに記載の前立腺癌の予防又は治療剤。
(8)被験動物由来の生物学的試料におけるABHD2蛋白質もしくはその断片、又はこれらをコードする核酸を前立腺癌の判定マーカーとする、被験動物における前立腺癌のリスクを判定する方法。
(9)ABHD2蛋白質もしくはその断片、又はこれらをコードする核酸からなる前立腺癌の判定マーカー。
【発明の効果】
【0012】
本発明の判定マーカーの提供により、新たな前立腺癌の診断、治療選択法を提供することも可能となる。さらに、本発明のABHD2遺伝子を標的とするsiRNA等の二本鎖核酸分子の提供により、前立腺癌の治療において有用な新たな治療剤、治療方法等の提供が可能となる。また、本発明の二本鎖核酸分子と、前立腺癌の治療に有効とされるPIポリアミド等を組み合わせることにより、前立腺癌の網羅的な治療等も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)前立腺癌組織内におけるABHD2遺伝子の発現と癌特異的生存率との関連性を評価した結果を示した図である(実施例1)。(B)前立腺癌組織内におけるABHD2遺伝子の発現とドセタキセル導入後のPSA非再発率との関連性を評価した結果を示した図である(実施例1)。(C)根治的前立腺全摘術により得られた前立腺癌検体における免疫染色の結果を示した図である(実施例1)。(D)経直腸的前立腺生検術で得られた前立腺癌検体における免疫染色の結果を示した図である(実施例1)。
【図2】二本核酸分子によるABHD2遺伝子発現抑制効果の検討結果を示した図である(実施例3)。
【図3】二本核酸分子によるLNCaP細胞増殖抑制効果の検討結果を示した図である(実施例4)。
【図4】ドセタキセルとの併用における二本核酸分子によるLNCaP細胞の増殖抑制効果の検討結果を示した図である(実施例5)。
【図5】二本核酸分子によるLNCaP細胞の遊走能抑制効果の検討結果を示した図である(実施例6)。
【図6】二本核酸分子による腫瘍増殖抑制効果の検討における写真を示した図である(実施例7)。
【図7】二本核酸分子による腫瘍増殖抑制効果の検討結果を示した図である(実施例7)。
【図8】二本核酸分子による腫瘍増殖抑制効果の検討におけるABHD2蛋白量の解析結果を示した図である(実施例7)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の「前立腺癌の予防又は治療剤」とは、ABHD2遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子を有効成分として含む剤であり、この二本鎖核酸分子により、ABHD2遺伝子の発現を抑制することにより前立腺癌を予防又は治療できる剤のことをいう。
前立腺癌の予防又は治療が可能な剤であれば、有効成分の他にその他の成分や医薬として許容される担体等を含んでいても良い。

【0015】
前記「ABHD2遺伝子」は、リン脂質代謝に関わり、肺胞構造の構築に影響を及ぼしている事が知られている。本発明において「ABHD2遺伝子」は、そのmRNA配列が前記二本鎖核酸分子の標的となり、前記二本鎖核酸分子によってその発現が抑制されることから、前記二本鎖核酸分子の「標的遺伝子」と示されることがある。
なお、参考として、ヒトの前記「ABHD2遺伝子」の塩基配列を配列番号1に示す。

【0016】
本発明の「二本鎖核酸分子」とは、所望のセンス鎖とアンチセンス鎖とがハイブリダイズしてなる二本鎖の核酸分子のことをいう。
本発明の「二本鎖核酸分子」は、ABHD2遺伝子の発現を抑制することができる二本鎖核酸分子であれば、いずれのヌクレオチド配列を含むセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる「二本鎖核酸分子」であっても良い。
本発明のこのような「二本鎖核酸分子」は、次の(a)及び(b)を含む二本鎖核酸分子であることが特に好ましい。
(a)配列番号2~8のいずれかに示される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖
(b)前記(a)のセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖
これらのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、RNA鎖であってもよく、RNA-DNAキメラ鎖等であってもよい。これらのセンス鎖とアンチセンス鎖が互いにハイブリダイズすることで本発明の「二本鎖核酸分子」を形成することができる。

【0017】
本発明の「二本鎖核酸分子」は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二本鎖RNA(double-stranded RNA:dsRNA)、二本鎖RNA-DNAキメラ等であってもよい。
「二本鎖RNA」とは、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれもがRNA配列からなる二本鎖核酸分子のことをいう。また、「二本鎖RNA-DNAキメラ」とは、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれもがRNAとDNAとのキメラ配列で構成されてなる二本鎖核酸分子をいう。

【0018】
本発明の「二本鎖核酸分子」が二本鎖RNAである場合、siRNA(small interfering RNA)であることが特に好ましい。
「siRNA」とは、18~29塩基長の小分子二本鎖RNAであり、標的遺伝子のmRNAに対して相補的な配列を有するアンチセンス鎖(ガイド鎖)が、標的遺伝子のmRNAを切断し、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有する。
本発明における「siRNA」は、ABHD2遺伝子を標的遺伝子とし、この標的遺伝子の発現を抑制し得るものであれば、その末端構造に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の「siRNA」は、平滑末端を有するものであってもよく、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよい。
本発明の「siRNA」は、特に、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端が2~6塩基突出した構造を有することが好ましく、各鎖の3’末端が2塩基突出した構造を有することがより好ましい。

【0019】
また、本発明の「二本鎖核酸分子」が二本鎖RNAである場合、shRNA(short hairpin RNA)であってもよい。
「shRNA」とは、18~29塩基程度のdsRNA領域と3~9塩基程度のloop領域を含む一本鎖RNAであり、生体内で発現されることにより、塩基対を形成してヘアピン状の二本鎖RNAとなる。その後、shRNAはDicer(RNase III酵素)により切断されてsiRNAとなり、標的遺伝子の発現抑制に機能することができる。
本発明における「shRNA」の末端構造も、本発明の「siRNA」と同様に目的に応じて適宜選択することができ、平滑末端を有するものであってもよく、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよい。

【0020】
さらに、本発明の「二本鎖核酸分子」が「二本鎖RNA-DNAキメラ」である場合、これはキメラsiRNAであることが特に好ましい。
「キメラsiRNA」とは、siRNAのRNA配列の一部がDNAに変換された、18~29塩基長の小分子二本鎖RNA-DNAキメラをいう。特に、siRNAのセンス鎖の3’側の8塩基、及び、アンチセンス鎖の5’側の6塩基がDNAに変換された、21~23塩基長の小分子二本鎖RNA-DNAキメラであることが好ましい。
本発明における「キメラsiRNA」の末端構造も、本発明の「siRNA」と同様に目的に応じて適宜選択することができ、平滑末端を有するものであってもよく、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよい。

【0021】
本発明の「二本鎖核酸分子」は、目的に応じて、適宜修飾を有するものであってもよい。例えば、「二本鎖核酸分子」に、2’O-methyl化修飾や、ホスホロチオエート化(S化)修飾、LNA(Locked Nucleic Acid)修飾等を施し、核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)に対する耐性の付与や、培養液や生体中における安定性を向上させることができる。
また、前記二本鎖核酸分子のセンス鎖の5’端、又は3’端に、ナノ粒子、コレステロール、細胞膜通過ペプチド等の修飾を施し、細胞への導入効率を高めることもできる。
このような修飾は、従来知られているいずれかの方法によって、適宜行うことができる。

【0022】
このような、本発明の「二本鎖核酸分子」は、従来知られているいずれかの方法によって、適宜作成することができる。例えば、「二本鎖核酸分子」が「siRNA」である場合、センス鎖及びアンチセンス鎖に相当する18~29塩基長の一本鎖RNAを、既存のDNA/RNA自動合成装置を利用する等して化学的に合成し、これらをアニーリングすることによって作製することができる。
また、本発明における「siRNA」は、合成受託会社に合成を依頼して作製されたものであっても良く、市販品の二本鎖siRNAであっても良い。さらに、siRNA発現ベクターを構築し、この発現ベクターを細胞内に導入することにより、細胞内の反応を利用して作製した「siRNA」であっても良い。
本発明の「二本鎖核酸分子」が「キメラsiRNA」である場合は、例えば、キメラ核酸分子であるセンス鎖とアンチセンス鎖とをそれぞれ化学的に合成し、これらをアニーリングすることによって作製することができる。

【0023】
このような本発明の「二本鎖核酸分子」のうち、前記「(a)配列番号2~8のいずれかに示される標的配列に対応するヌクレオチド配列を含むセンス鎖」として、例えば、配列番号9,11、13、15、17、19又は21に示されるセンス鎖を挙げることができる。
また、「(b)前記(a)のセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖」としては、配列番号10、12、14、16、18、20又は22に示されるアンチセンス鎖を挙げることができる。
さらに本発明の「二本鎖核酸分子」として、ABHD2遺伝子の発現を抑制することができる二本鎖核酸分子である、配列番号23、25、27に示されるヌクレオチド配列を含むセンス鎖と、その相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖として、配列表24、26、28に示されるアンチセンス鎖を挙げることもできる。

【0024】
このような本発明の「二本鎖核酸分子」を有効成分として含むことで本発明の「前立腺癌の予防又は治療剤」を得ることができる。
本発明の「前立腺癌の予防又は治療剤」はこの有効成分のみからなる剤であってもよく、この有効成分以外にその他の成分を含むものであっても良い。
「その他の成分」としては、本発明の有効成分の効果を維持又は向上できる成分であれば、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の「二本鎖核酸分子」を所望の濃度に希釈するための生理食塩水、培養液等の希釈用剤や、対象とする細胞内に導入(トランスフェクト)するためのトランスフェクション試薬などが挙げられる。
これらのその他の成分の含有量も、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0025】
また、「その他の成分」として、例えば、医薬として許容され得る担体を含むことができ、このような担体としても、特に制限はなく、剤型等に応じて適宜選択することができ、その含有量も、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の「前立腺癌の予防又は治療剤」の医薬としての剤型は、特に制限はなく、所望の投与方法に応じて適宜選択することができる。このような剤型として、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、又は吸入散剤などが挙げられる。
これらの剤には、目的に応じて、従来知られている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤、pH調節剤、等張化剤、基剤、湿潤剤、保存剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等の添加剤を加えることができ、各剤型も従来知られている方法によって製造することができる。

【0026】
本発明の「前立腺癌の予防又は治療剤」は、投与対象動物に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられるが、これらの中でも、ヒトを対象とすることが特に好ましい。
また、この投与方法も、特に制限はなく、剤型、前立腺癌患者の状態等に応じて、本発明の剤を腫瘍部位等に直接投与する局所投与や、経口投与等により、全身投与することもできる。
この剤の投与量は、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。例えば、成人を投与対象とする場合は、1日の投与あたり、有効成分(二本鎖核酸分子)の量が10~15mgとなることが好ましい。
また、この剤の投与回数も、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果等に応じて、適宜選択することができる。
本発明の「前立腺癌の予防又は治療剤」は、前立腺癌の予防又は治療を対象として投与時期を適宜選択することができる。

【0027】
また、本発明の「被験動物における前立腺癌のリスクを判定する方法」とは、例えば、ヒトを被験動物とした際に、そのヒト由来の前立腺組織や該組織から抽出したタンパク質、核酸等を生物学的試料とし、該試料に含まれるABHD2蛋白質もしくはその断片、又はこれらをコードする核酸を定性的又は定量的に測定することにより、前立腺癌のリスクを判定する方法のことをいう。
上記のような生物学的試料に含まれるABHD2蛋白質もしくはその断片、又はこれらをコードする核酸の量が多いほど、前立腺癌に罹患するリスクや、既に罹患しているリスクが高く、罹患している場合は将来、治療抵抗性前立腺癌になるリスクが高いと判定することができる。
この判定にあたり、「ABHD2蛋白質もしくはその断片、又はこれらをコードする核酸」を前立腺癌の「判定マーカー」として用いることができる。
この「判定マーカー」が「ABHD2蛋白質もしくはその断片」である場合は、ABHD2抗体等を用いて、定性的又は定量的に測定することができる。また、「判定マーカー」が「これらをコードする核酸」である場合は、この核酸に相補的な核酸を含むプローブや、この核酸をRT-PCR等で増幅可能なプライマーを用いて増幅することにより、定性的又は定量的に測定することができる。
この「被験動物における前立腺癌のリスクを判定する方法」によって得られた結果から、前立腺癌の治療方法を選択することも可能となる。

【0028】
本発明において、手術不能な進行性前立腺癌患者から得られた検体のうち、ホルモン抵抗性進行性前立腺癌に対するドセタキセル導入後のPSA再発率が高い検体において、特にABHD2の染色強度が強いことが確認されており、該検体を生物学的試料とし、該試料に含まれる判定マーカーであるABHD2タンパク質の存在を定性的、定量的に調べることにより、将来の治療抵抗性前立腺癌になるリスクを予測できることが確認されている。
また、ABHD2遺伝子の発現によって得られたABHD2遺伝子のmRNAを判定マーカーとして、定性的、定量的に調べることにより、将来の治療抵抗性前立腺癌になるリスクを予測することも可能である。
本発明の「被験動物における前立腺癌のリスクを判定する方法」において、被験動物となる動物は前立腺癌になり得る動物であればその種類は問わず、いずれの動物も対象とすることができる。また、判定マーカーを定性的、定量的に調べるために、従来知られているいずれの機器、方法等も用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例、比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
1-1.臨床検体を用いた免疫染色及び前立腺癌患者におけるABHD2遺伝子の発現と癌特異的生存率との関連性の評価
ABHD2遺伝子の前立腺癌組織における発現を検証するため、102例の根治的前立腺全摘術により得られた前立腺癌検体及び、37例の経直腸的前立腺生検術で得られた前立腺癌検体を用いて免疫染色を行った。
経直腸的前立腺生検術で得られた前立腺癌検体は、手術不能な進行性前立腺癌患者から得られた検体であり、これらの患者に関しては全例、初期のホルモン療法後ドセタキセルが導入されており、後にホルモン抵抗性(CRPC)に進行し、ドセタキセル化学療法を施行されている。
【実施例】
【0031】
各検体から得た5mmスライスのパラフィン切片についてそれぞれ脱パラフィン処理を行った後、電子レンジで加熱処理し、抗原を賦活化した。
0.3%Hで内因性ペルオキシダーゼ除去を行い、ウエスタンブロットで用いたABHD抗体(Abcam; 1:200希釈)をオーバーナイトで反応させ、2次抗体(ビオチン化抗体)を1時間反応させ、3,30-ジアミノベンジジン209(DAB)溶液(1mMのDAB、50mMトリス-HCl緩衝液pH7.6210、および0.006%H)を用いて可視化した。
ABHD2遺伝子発現の定量的評価は、発現強度と発現の割合をスコアリングしたものを用いた。即ち、して、染色強度を3段階に、1視野における発現の割合を4段階に分類し、それぞれ加算した。
【実施例】
【0032】
上記の定量的評価の結果から、前立腺全摘除術症例102例において、ABHD2遺伝子の発現と癌特異的生存率との関連性を評価した。
また、経直腸的前立腺生検術で得られた37例において、ABHD2遺伝子の発現とドセタキセル導入後のPSA再発率との関連性を評価した。この評価はそれぞれカプランマイヤー法ならびにLog-Rank検定により行った。さらに、主な患者背景因子との関連性を評価した。
【実施例】
【0033】
1-2.結果
図1(A)に、前立腺全摘除術症例102例における、前立腺癌組織内におけるABHD2遺伝子の発現と癌特異的生存率との関連性を評価した結果を示した。102例のうち、ABHD2遺伝子の強発現群(36例)では、ABHD2遺伝子の弱発現群(66例)と比べて前立腺全摘術後の癌特異的生存率が有意に低かった。
図1(B)に、経直腸的前立腺生検術で得られた37例における、前立腺癌組織内におけるABHD2遺伝子の発現とドセタキセル導入後のPSA再発率との関連性を評価した結果を示した。37例のうち、ABHD2遺伝子の強発現群(27例)では、ABHD2遺伝子の弱発現群(10例)と比べて、ホルモン抵抗性進行性前立腺癌に対するドセタキセル導入後のPSA再発率が有意に高かった。
【実施例】
【0034】
また、図1(C)に根治的前立腺全摘術により得られた前立腺癌検体における免疫染色の結果を示し、図1(D)に経直腸的前立腺生検術で得られた前立腺癌検体における免疫染色の結果を示した。
これらの免疫染色結果のうち、図1(D)左の手術不能な進行性前立腺癌患者から得られた検体のうち、ホルモン抵抗性進行性前立腺癌に対するドセタキセル導入後のPSA再発率が高い検体において、特にABHD2の染色強度が強いことが確認された。
従って、これらの結果から、前立腺癌の診断を目的として採取した前立腺癌組織におけるABHD2タンパク質を免疫染色やウエスタンブロット等によって定性的、定量的に調べることにより、将来の治療抵抗性前立腺癌になるリスクを予測できることが示唆された。
【実施例】
【0035】
また、表1、2に示されるように、前立腺全摘患者(102例)において、ABHD2遺伝子の発現が、有意にGleason Scoreと相関し、多変量解析において、有意な予後因子となることが認められた。
さらに、表3、4に示されるように、手術不能な進行性前立腺癌症例においては、臨床病期との相関性は認められないものの、多変量解析において有意なドセタキセル抵抗因子となり得ることが認められた。
従って、これらの結果より、ABHD2遺伝子の発現は、前立腺癌の進行に加え、ドセタキセル治療抵抗性に関与していることが示唆された。
【実施例】
【0036】
【表1】
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【実施例】
【0037】
【表2】
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【実施例】
【0038】
【表3】
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【実施例】
【0039】
【表4】
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【実施例】
【0040】
[実施例2]
二本鎖核酸分子(siRNA)の作製
ABHD2遺伝子の発現を抑制するための二本鎖核酸分子(siRNA)を、次のようにして準備した。
ABHD2遺伝子に対するsiRNA(siABHD2)#1~7は、それぞれのsiRNAの標的配列(表5、配列表配列番号2~8)に対応するヌクレオチド配列(表6、センス鎖、配列番号9、11、13、15、17、19、21)と、その相補的なヌクレオチド配列(表6、アンチセンス鎖、配列番号10、12、14、16、18、20、22)を、3´末端が2塩基オーバーハングするような二本鎖RNAとして合成した(RNAi社)。
また、ネガティブコントロールとして、20μM ネガティブコントロール(Invitrogen negative control high GC duplex, #1151484)を使用した。
【実施例】
【0041】
【表5】
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【実施例】
【0042】
【表6】
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【実施例】
【0043】
[実施例3]
二本核酸分子によるABHD2遺伝子発現抑制効果の検討
2-1.細胞培養
AR陽性のヒト前立腺癌細胞株LNCaP細胞(以下、単にLNCaP細胞と示す)を用いた。
LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS,Sigma社)、100μg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリン(Invitrogen社)を含むRPMI-1640培地(Sigma社)を細胞培養液として、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【実施例】
【0044】
2-2.トランスフェクション
上記1.にて培養したLNCaP細胞を6well plateに3×10個/wellになるように播いた。その後24時間以内に、実施例2にて作製した50μM siABHD2 #1~#7(7種類)、又はネガティブコントロールの20μM siRNAを、それぞれ10nMになるように調製して各ウェルに加え、トランスフェクションを行った。
トランスフェクション後72時間以内に、細胞からISOGEN(日本ジーン)によって全RNAを回収し、そのうちの500ngのRNAから、Primescript(登録商標)RT reagent kit(TaKaRa Bio)によってcDNAを合成した。
【実施例】
【0045】
2-3.定量的Real-time PCR法
上記2.にて合成したcDNAを10倍希釈し、そのうちの2μlを定量的real-time PCRに使用した。内部コントロールにはGAPDHを用いて補正を行い、発現レベルの解析を行った。
Step one(登録商標)real-time PCR(Applied biosystem)ならびにKAPA SYBR(登録商標)Fast PCR kit(NIPPON Genetics)を用いて、各SiRNAをトランスフェクションしたLNCaP細胞のABHD2遺伝子及び内部コントロールであるGAPDH遺伝子の発現レベルを測定した。
GAPDH遺伝子に対する発現レベルをCycle数からΔΔCt法を用いて計算して補正を行い、ABHD2遺伝子の発現レベルを調べた。
【実施例】
【0046】
2-4.結果
図2に示したように、siABHD2 #1~#7をトランスフェクションした細胞では、いずれもReagent(ブランク)やネガティブコントロールと比べてmRNAレベルでABHD2遺伝子の発現がノックダウンされており、siABHD2 #1~#7のいずれをトランスフェクションした場合でも高い効果が得られることが確認された。
【実施例】
【0047】
[実施例4]
二本核酸分子によるLNCaP細胞の増殖抑制効果の検討
3-1.MTS assay
実施例3の2-1.と同様に培養したLNCaP細胞を96well plateに3×10個/wellとなるよう播いた。その後24時間以内に、実施例2で作製した各siRNAとネガティブコントロールのsiRNAを実施例3の2-2.と同様の濃度となるように調製してそれぞれ各ウェルに加え、トランスフェクションを行った。
その後、1日、4日、5日又は6日経過後にCell titer 96(登録商標)(Promega)を加えて2時間反応させた。その後、マイクロプレートリーダーにて吸光度490nmで生細胞数を測定し、細胞増殖能を調べた。
【実施例】
【0048】
3-2.結果
図3に示したように、siABHD2#2、同#3、同#4、同#5、同#7をトランスフェクションした細胞では、いずれもReagent(ブランク)やネガティブコントロールと比べて有意に細胞増殖が抑えられていた。特にsiABHD2#5及び同#7をトランスフェクションした細胞では、4日後以降の増殖が強く抑制されていることが観察された。
【実施例】
【0049】
[実施例5]
ドセタキセルとの併用における二本核酸分子によるLNCaP細胞増殖抑制効果の検討
4-1.MTS assay
実施例3の2-1.と同様に培養したLNCaP細胞を96well plateに3×10個/wellとなるよう播いた。その後24時間以内に、実施例2で作製した各siRNA#1又は同#7とネガティブコントロールのsiRNAを実施例3の2-2.と同様の濃度となるように調製してそれぞれ各ウェルに加え、トランスフェクションを行った。
トランスフェクションしてから約12時間後に、ドセタキセル(Docetaxel (Sigma-Aldrich))を1nM又は10nMになるように各ウェルに加え、1日、2日又は4日経過後Cell titer 96(登録商標)(Promega) を加えて1時間反応させた。その後、マイクロプレートリーダーにて吸光度490nm で生細胞数を測定し、細胞増殖能を測定した。
【実施例】
【0050】
4-2.結果
図4にドセタキセルを1nM加えた場合の結果を示した。図4に示したように、siABHD2#1、同#7をトランスフェクションした細胞において、ドセタキセルを併用することにより、ドセタキセルを併用しない場合と比べて有意に細胞増殖が抑制されていることが観察された。
【実施例】
【0051】
[実施例6]
二本核酸分子によるLNCaP細胞遊走能の抑制効果
5-1.細胞遊走能の評価
実施例2で作製した各siRNAのうちsiABHD2#1又は同#7をそれぞれ導入した細胞、又はネガティブコントロールのsiRNA(Invitrogen negative control high GC duplex, #1151484)を導入した細胞を培養し、Cell Cultuer Insertと、8.0μm pore size PET filter(Becton Dickinson製)を用いてCell migrationアッセイによって各細胞の遊走能を検討した。
即ち、培養皿にPBSで10μg/mlに希釈したフィブロネクチン(Sigma製)を30分間作用させ、下層フィルターを作成した後、下層チャンバーにフェノールレッド含有培地RPMI 1640培地を700μl加えた。
各siRNAを5μMとなるように添加したフェノールレッド含有培地で3日間培養したLNCaP細胞を5×104細胞ごとに分け、各細胞を300μlのフェノールレッド含有培地に懸濁したものをそれぞれ上層チャンバーに加えた。これを、37℃、5%CO2条件下で24時間培養した後、フィルターを剥がした。
下層フィルター上の細胞を30分間メタノールで固定した後、PBSで洗浄し、Gimsa’s stain solution(Muto Pure Chemicals製)で30秒間インキュベートした。その後、細胞を200倍率の顕微鏡で観察し、細胞数を数えることで、細胞遊走能を評価した。
【実施例】
【0052】
5-2.結果
図5に細胞遊走能の評価結果を示した。その結果、siABHD2#1又は同#7等の本発明のsiRNAを導入することにより、ネガティブコントロールのsiRNAを導入した場合と比べて顕著に細胞の遊走が抑制されることが認められた。
【実施例】
【0053】
[実施例7]
二本核酸分子による腫瘍増殖抑制効果の検討
6-1.ヌードマウスへの癌細胞皮下移植
オスの8週齢のBALB/cヌードマウス(日本クレア社)(二十匹)を用いた。
ヌードマウス一匹あたり、実施例3の2-1.と同様に培養したLNCaP細胞が1x10個になるようにPBS 100μlと混合し、さらに、これとマトリゲル(BD bioscience社)100μlを混合し、25G注射針を用いて各マウスへ皮下注射した。
【実施例】
【0054】
6-2.二本鎖核酸分子の投与
上記6-1.の皮下注射後5~8週経過し、各マウスにおける腫瘍体積が100mmを超える大きさに達したところで二本鎖核酸分子の投与を行った。
二本鎖核酸分子は、実施例2で作製したうちのsiABHD2#7を用い、BannoNegaCon(株式会社RNAi)(5’-GUACCGCACGUCAUUCGUAUC-3’)をネガティブコントロールとした。
siRNA又はネガティブコントロール各5μgをRNAi MAX(Invitrogen)15μlとphenol red-free OPTI-MEMを混合し、各siRNA溶液を得た。このsiRNA溶液100μlを各マウスの腫瘍内へ局所注入により投与した。この投与は2回/週を4週間繰り返し、マウスの腫瘍径を週1回測定した。
マウスの腫瘍径は、長径(r1)、及び短径(r2,r3)を2か所計測し、r1×r2×r3/2の公式にて腫瘍の大きさを計測した。また、投与開始5週間後、アバチンにて麻酔をかけ、腫瘍の大きさが分かるように写真撮影をした。
さらに、LNCaP細胞の移植から8週間後、腫瘍は皮下より摘出した。腫瘍は重量を計測した後、一部はISOGENによりRNAを摘出し、一部はNP40 lysis bufferにより溶解しタンパク質を抽出した。タンパク質の抽出は、腫瘍を5~10mmの大きさに分け、500μl NP40 lysis bufferを加え、ホモジナイザーですりつぶした後、その溶液を15,000rpm,4℃,30分で遠心し、上清を回収することで行った。
【実施例】
【0055】
6-3.Western blot法
上記4-2.より、マウス皮下より抽出したタンパク質を8% SDS-PAGE gelで泳動しImmobilon(登録商標)-P Transfer Membrane(Millipore Corp.,Billerica,MA)にブロットした。
一次抗体としてanti-ABHD2(Abcam,1:500)を用いて一晩反応させ、ペルオキシダーゼの結合した抗ラビットIgG抗体を1時間反応させた。また、anti-β-actin(Sigma,1:1000)を用いて一晩反応させ、ペルオキシダーゼの結合した抗マウスIgG抗体を1時間反応させた。
抗原抗体複合体をImmunoCruz(登録商標) Western blotting detector system(Santa Cruz Biotechnology,Inc)を用いて反応させX線フィルムへ撮影した。
【実施例】
【0056】
6-4.結果
写真撮影の結果を図6に示した。
また、siRNA又はネガティブコントロール投与後の腫瘍の大きさの変化を図7に示した。図7に示されるように、本発明のsiABHD2を投与することにより、腫瘍の増殖を有意に抑制できることが確認された。
さらに、ウエスタンブロット法によるABHD2蛋白量の解析結果を図8に示した。図8に示されるように、siRNAを腫瘍内に投与することにより、ABHD2遺伝子の発現レベルが抑制されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の判定マーカーの提供により、新たな前立腺癌の診断、治療選択法を提供することが可能となる。また、本発明のABHD2遺伝子を標的とするsiRNA等の二本鎖核酸分子の提供により、前立腺癌の治療において有用な新たな治療剤、治療方法方等の提供が可能となる。また、本発明の二本鎖核酸分子と、前立腺癌の治療に有効とされるPIポリアミド等を組み合わせることにより、前立腺癌の網羅的な治療等も可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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