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明細書 :金属イオン回収装置、金属イオン回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6233877号 (P6233877)
公開番号 特開2015-034315 (P2015-034315A)
登録日 平成29年11月2日(2017.11.2)
発行日 平成29年11月22日(2017.11.22)
公開日 平成27年2月19日(2015.2.19)
発明の名称または考案の名称 金属イオン回収装置、金属イオン回収方法
国際特許分類 C25B   7/00        (2006.01)
C02F   1/469       (2006.01)
C02F   1/58        (2006.01)
B01D  61/46        (2006.01)
C01D  15/08        (2006.01)
FI C25B 7/00
C02F 1/46 103
C02F 1/58 J
B01D 61/46 500
C01D 15/08
請求項の数または発明の数 11
全頁数 12
出願番号 特願2013-165034 (P2013-165034)
出願日 平成25年8月8日(2013.8.8)
審査請求日 平成28年8月4日(2016.8.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】星野 毅
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査官 【審査官】宮本 靖史
参考文献・文献 特開2003-245672(JP,A)
特開平06-073586(JP,A)
特開平11-209887(JP,A)
特開平10-102270(JP,A)
特開平10-102271(JP,A)
特開平10-102272(JP,A)
調査した分野 C25B 1/00- 9/20
C25B 13/00-15/08
C22B 1/00-61/00
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/46- 1/48
C01D 1/00-17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
リチウム(Li)Liイオンの形で含まれる水溶液である原液からLiイオンを回収液の中に回収する金属イオン回収装置であって、
Liのイオン伝導体で構成された平板状の選択透過膜と、
前記選択透過膜の一方の主面に密着して固定されたメッシュ状の正極と、
前記選択透過膜の他方の主面に密着して固定されたメッシュ状の負極と、
前記原液と前記回収液とを前記選択透過膜で仕切った状態で収容する処理槽と、
を具備することを特徴とする金属イオン回収装置。
【請求項2】
リチウム(Li)がLiイオンの形で含まれる水溶液である原液からLiイオンを回収液の中に回収する金属イオン回収装置であって、
Liのイオン伝導体で構成された平板状の選択透過膜と、
前記選択透過膜の一方の主面側に設けられたメッシュ状の正極と、
前記選択透過膜の他方の主面側に設けられたメッシュ状の負極と、
前記原液と前記回収液とを前記選択透過膜で仕切った状態で収容する処理槽と、
を具備し、
前記正極、前記負極のそれぞれは、
前記選択透過膜と直接密着する、
又は、多孔質であり導電性かつ前記正極及び前記負極と異なる材料で構成され前記選択透過膜に近い側に設けられた集電体と密着し、かつ当該集電体が前記選択透過膜と密着する、
ように前記選択透過膜に固定されたことを特徴とする金属イオン回収装置。
【請求項3】
前記選択透過膜は焼結体で構成され、
前記選択透過膜は面内方向において複数の部分が接合されて構成され、前記選択透過膜における前記一方の主面、前記他方の主面に、単一の前記集電体がそれぞれ固定され、単一の前記正極が前記一方の主面側の前記集電体に、単一の前記負極が前記他方の主面側の前記集電体にそれぞれ固定されたことを特徴とする請求項2に記載の金属イオン回収装置。
【請求項4】
前記集電体はカーボンフェルトで構成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の金属イオン回収装置。
【請求項5】
前記選択透過膜のイオン伝導率は10-4S・cm-1以上であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の金属イオン回収装置。
【請求項6】
前記回収液が循環される構成を具備することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の金属イオン回収装置。
【請求項7】
前記選択透過膜は、LiN、Li10GeP12、(La,Li)TiOz(ここで、x=2/3-a、y=3a-2b、z=3-b、0<a≦1/6、0≦b≦0.06、y>0)、Li1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12(ここで、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6)のいずれかで構成されることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の金属イオン回収装置。
【請求項8】
前記回収液は塩酸(HCl)であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の金属イオン回収装置。
【請求項9】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の金属イオン回収装置を用い、前記原液に含まれるLiイオンを前記回収液中に回収することを特徴とする金属イオン回収方法。
【請求項10】
請求項8に記載の金属イオン回収装置を用い、前記原液に含まれるLiイオンを前記回収液中に回収した後に、前記回収液に炭酸ナトリウム(NaCO)を添加することを特徴とする金属イオン回収方法。
【請求項11】
前記正極に正側の電圧を印加し、前記負極に負側の電圧を印加することを特徴とする請求項9又は10に記載の金属イオン回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中における特定の金属(例えばリチウム)イオンを選択的に回収する金属イオン回収装置、金属イオン回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の材料や、核融合炉の燃料の製造において使用されるため、産業上におけるリチウム(Li)の重要性が高まっている。例えば、大型のリチウムイオン電池は、電気自動車の電源や、スマートグリッド・スマートハウスにおける蓄電用として使用される。こうした用途においては、大型のリチウムイオン電池を安価に製造するための技術が必要である。一方、核融合炉においては、核融合の燃料となる三重水素は、Liを用いて生産されるため、ここでも、大量のリチウムが必要とされる。
【0003】
Liは、鉱石から採取することも可能であるが、海水中に含まれていることが知られており、地球上の全海水中に含まれるLiの総量は膨大である。このため、海水からLiを採取することができれば、大量のLiを安価に得ることができる。
【0004】
このため、Liが含まれる溶液からLiを回収する技術が提案されている。特許文献1、2には、海水中において吸着体にLi(イオン)を選択的に吸着させ、その後に吸着体からLiを脱離させることによって、選択的にLiを回収する技術が記載されている。吸着体としては、特許文献1に記載の技術においてはマンガン酸化物が、特許文献2に記載の技術においてはビニルモノマー材料が使用されている。
【0005】
こうした技術を用いて、海水からLiを採取することが可能である。また、同様の技術を用いて、海水以外の液体、例えばLi(イオン)が含まれる廃液からリチウムを選択的に回収することもできる。このため、こうした技術は、Liを安価に得る上で極めて有効である。また、吸着体の材料を選択することにより、Li以外の金属に対しても同様の方法で回収することが可能である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2012-504190号公報
【特許文献2】特開2009-161794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術においては、Liを吸着させる工程、Liを脱離させる工程の2つの工程が必要となる。このため、製造工程が複雑となった。更に、特許文献1、2に記載の技術において用いられる吸着体に対する吸着の際のLiの選択性は高くない。このため、例えば海水に対してこの方法を適用した場合には、Liと同様にアルカリ金属であるナトリウム(Na)も同時に吸着される。このため、同様に回収された他の金属の中から更にLiを選択的に回収することが必要となった。
【0008】
また、上記の吸着体を構成する材料は、使用に際して特性の劣化が生じるために、頻繁に交換する必要が生ずる上に、高価であった。
【0009】
このため、液体中の金属(リチウム)イオンを選択的かつ安価に回収することは困難であった。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の金属イオン回収装置は、リチウム(Li)Liイオンの形で含まれる水溶液である原液からLiイオンを回収液の中に回収する金属イオン回収装置であって、Liのイオン伝導体で構成された平板状の選択透過膜と、前記選択透過膜の一方の主面に密着して固定されたメッシュ状の正極と、前記選択透過膜の他方の主面に密着して固定されたメッシュ状の負極と、前記原液と前記回収液とを前記選択透過膜で仕切った状態で収容する処理槽と、を具備することを特徴とする。
本発明の金属イオン回収装置は、リチウム(Li)がLiイオンの形で含まれる水溶液である原液からLiイオンを回収液の中に回収する金属イオン回収装置であって、Liのイオン伝導体で構成された平板状の選択透過膜と、前記選択透過膜の一方の主面側に設けられたメッシュ状の正極と、前記選択透過膜の他方の主面側に設けられたメッシュ状の負極と、前記原液と前記回収液とを前記選択透過膜で仕切った状態で収容する処理槽と、を具備し、前記正極、前記負極のそれぞれは、前記選択透過膜と直接密着する、又は、多孔質であり導電性かつ前記正極及び前記負極と異なる材料で構成され前記選択透過膜に近い側に設けられた集電体と密着し、かつ当該集電体が前記選択透過膜と密着する、ように前記選択透過膜に固定されたことを特徴とする。
本発明の金属イオン回収装置において、前記選択透過膜は焼結体で構成され、前記選択透過膜は面内方向において複数の部分が接合されて構成され、前記選択透過膜における前記一方の主面、前記他方の主面に、単一の前記集電体がそれぞれ固定され、単一の前記正極が前記一方の主面側の前記集電体に、単一の前記負極が前記他方の主面側の前記集電体にそれぞれ固定されたことを特徴とする。
本発明の金属イオン回収装置において、前記集電体はカーボンフェルトで構成されたことを特徴とする。
本発明の金属イオン回収装置において、前記選択透過膜のイオン伝導率は10-4S・cm-1以上であることを特徴とする。
本発明の金属イオン回収装置は、前記回収液が循環される構成を具備することを特徴とする
本発明の金属イオン回収装置において、前記選択透過膜は、LiN、Li10GeP12、(La,Li)TiOz(ここで、x=2/3-a、y=3a-2b、z=3-b、0<a≦1/6、0≦b≦0.06、y>0)、Li1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12(ここで、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6)のいずれかで構成されることを特徴とする。
本発明の金属イオン回収装置において、前記回収液は塩酸(HCl)であることを特徴とする
本発明の金属イオン回収方法は、前記金属イオン回収装置を用い、前記原液に含まれる前記Liイオンを前記回収液中に回収することを特徴とする。
本発明の金属イオン回収方法は、前記金属イオン回収装置を用い、前記原液に含まれる前記金属イオンを前記回収液中に回収した後に、前記回収液に炭酸ナトリウム(NaCO3)を添加することを特徴とする。
本発明の金属イオン回収方法は、前記正極に正側の電圧を印加し、前記負極に負側の電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、液体中の金属イオンを選択的かつ安価に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る金属(Li)イオン回収装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る金属(Li)イオン回収装置における選択透過膜と正極、負極の関係を示す斜視図である。
【図3】参考例となる電気透析における構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る金属(Li)イオン回収装置において集電体を用いた場合を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る金属(Li)イオン回収装置において複数の選択透過膜を用いた場合を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る金属(Li)イオン回収装置の変形例の構成を示す図である。
【図7】実施例1における通電時間とLi回収率の関係を測定した結果である。
【図8】実施例2における通電時間とLi回収率の関係を測定した結果である。
【図9】実施例3における通電時間とLi回収率の関係を測定した結果である。
【図10】実施例4における通電時間とLi回収率の関係を測定した結果である。
【図11】実施例5における通電時間とLi回収率の関係を測定した結果である。
【図12】実施例において回収された粉末の外観写真である。
【図13】実施例によって回収された粉末の粉末X線回折測定の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る金属イオン回収装置、金属イオン回収方法について説明する。この金属イオン回収装置、金属イオン回収方法においては、この金属を選択的に透過させる選択透過膜を透過させることによって、水溶液中の金属(リチウム)イオンを回収する。この際、この選択透過性の高い選択透過膜が、この透過性を高めるような構成の電極等と共に使用された形態とされる。

【0015】
図1は、金属(Li)イオン回収装置1の原理を説明する構成図である。この金属イオン回収装置1においては、Liを選択的に透過させる選択透過膜10が用いられ、平板状の選択透過膜10の両主面には、メッシュ状の正極11、負極12がそれぞれ形成される。この構造が処理槽8中において設けられ、Liイオン50を含む原液100とLiが回収される先となる回収液200とは、処理槽8内でこの選択透過膜10によって仕切られている。この際、正極11は正電位、負極12は負電位とされる。

【0016】
選択透過膜10としては、超リチウムイオン伝導体である、窒化リチウム(LiN)、Li10GeP12、(La,Li)TiO(ここで、x=2/3-a、y=3a-2b、z=3-b、0<a≦1/6、0≦b≦0.06、y>0)、Li置換型NASICON(Na Super Ionic Conductor)型結晶であるLi1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12(ここで、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6)等を用いることができる。これらの材料は、例えば板状の焼結体として得ることができる。これらの材料は、いずれも10-4~10-3Scm-1以上の高い(Li)イオン伝導率を示す。

【0017】
正極11、負極12は、それぞれ図1における選択透過膜10の右面(一方の主面)、左面(他方の主面)に接合される。図2は、この形態の斜視図である。図2においては、選択透過膜10における向こう側の面にも、正極11と同様の形状の負極12が、同様に設けられている。この構成によって、選択透過膜10の右面、左面は、それぞれ一定の正電位、負電位に保たれる。正極11、負極12の材料としては、原液100や回収液200中において電気化学反応を生じない金属材料をそれぞれ適宜用いることができる。例えば、SUS、Ti、Ti-Ir合金等を用いることができる。

【0018】
選択透過膜10として用いられる上記の材料は固体であるが、結晶中を自由電子に近い形でLiイオンが流れることによって、導電性を示すことが知られている。このため、図1の構成において、正極11を正電位、負極12を負電位とした場合には、正極11側の原液100中のLiイオン50(正イオン)のうち、選択透過膜10の右面に到達したものが、選択透過膜10の右面から左面に向かってイオン伝導によって流れる。選択透過膜10の左面に到達したLiイオン50は、回収液200中に回収される。このため、所定時間経過後には、原液100中のLiイオン濃度は低下し、回収液200中のLiイオン濃度が増大する。

【0019】
上記の構成が有効である理由について以下に説明する。上記の構成に類似した比較例として、同様に隔壁と電界を利用して特定の金属イオンを回収する電気透析が知られている。図3は、図1に対応して電気透析の原理を説明する図である。ここで原液100と回収液200の間の隔壁60として用いられるのは、イオン交換膜として知られる材料である。正イオン(Liイオン50)は、原液100中の電気透析用正極61から回収液200中の電気透析用負極62側に流れるが、この際に、隔壁60は、正イオンのみを選択的に左側から右側に透過させるため、図1の構成と同様に、Liイオン50を原液100から回収液200に移動させることができる。

【0020】
ただし、この場合には、Liイオン50は、実際には隔壁60(イオン交換膜)中を、水和イオンの形で流れ、Liの形では流れない。このため、Liイオン50に対する選択性は高くない。一方、上記の選択透過膜10に用いられる超リチウムイオン伝導体におけるイオン伝導は、結晶格子内における本来Liが入るべきサイトをLi原子(イオン)が順次移動することによってなされるため、膜中を伝わるのはLi原子(イオン)のみである。このため、高い選択性が得られる。

【0021】
ただし、上記の超リチウムイオン伝導体を図3における隔壁60の代わりに用いた場合、Liイオン50を原液100側から回収液200側に移動させることができず、超リチウムイオン伝導体に変質が生じた。これは、図3の構成においては、上記の超リチウムイオン伝導体(化合物)自身に電気化学反応(電気分解等)が発生したためと考えられる。すなわち、上記の超リチウムイオン伝導体は、イオン伝導率が高いために高い選択性が得られる一方で、電気化学反応によって劣化が生じやすい。

【0022】
このため、図1の構成においては、電界が選択透過膜10中においてのみ形成されるように、正極11、負極12を選択透過膜10に密着させている。この際、選択透過膜10の右面、左面の電位をそれぞれ一定とし、かつ選択透過膜10の右面が溶液100、左面が回収液200にそれぞれ接するようにするため、正極11、負極12をメッシュ状としている。

【0023】
すなわち、図1、2の構成によって、超リチウムイオン伝導体からなる選択透過膜10を用いて、Liイオンの回収効率を特に高めることができる。この際、正極11、負極12が組み合わされた選択透過膜10を図1における左右方向に複数枚設けることもできる。また、図1の構成においては、電圧を印加しない場合でも、電気化学反応によって正極11と負極12との間に電位差が生じる。更に、原液100と回収液200との間にLi濃度差が存在すれば、これによって、選択透過膜10中をLiイオンが流れる。すなわち、外部から電圧を印加しなくとも、Liイオンを回収することが可能である。

【0024】
このように、選択透過膜10(超リチウムイオン伝導体)の表面の電位を一定とし、かつこの表面が原液100、回収液200と接するようにするためには、例えば、図4に示されるように、メッシュ状の正極11、負極と、選択透過膜10との間に集電体30を介在させることが有効である。ここで、集電体30としては、導電性かつ多孔質で柔軟性のあるシート状の物質として、例えばカーボンフェルトシートや、Ti等、金属の繊維で構成されたシートを用いることができる。

【0025】
前記の通り、選択透過膜10として用いられる超リチウムイオン伝導体は焼結体として得られる場合が多い。こうした場合においては、その表面は平坦ではなく、細かな凹凸で構成されている場合が多い。このため、選択透過膜10表面の電位を一定とし、かつこの表面と原液100、回収液200とが接する構成とするためには、導電性、柔軟性がある集電体30を用いて凹凸が存在する表面に対する密着性を高めることが特に有効である。この際、集電体30を多孔質とすることにより、選択透過膜10と原液100や回収液200とが接する状態も保たれる。

【0026】
また、上記の超リチウムイオン伝導体の焼結体の大きさとしては、例えば5cm各程度のものを安価に製造することができるが、大規模にLiを回収するためには、より大きな選択透過膜10が必要である。こうした場合には、例えば、図5に示されるように、絶縁性の樹脂材料等で構成された接合層31で複数の選択透過膜10をその面内方向で接合して実質的に大面積とし、この上で上記の集電体30を用いることによって、実質的に大面積の選択透過膜を得ることができる。集電体30としては、大面積とされた右面、左面のそれぞれで一体化されたものを用いることができる。これによって、全体の機械的補強がなされると共に、大量の原液100の処理が可能となる。こうして実質的に大面積の選択透過膜を得る際にも、集電体30は有効である。

【0027】
次に、図6は、より大量の原液100を処理するために、図1の構成の金属イオン回収装置を改造した構成の金属イオン回収装置6の構成(変形例)を示す図である。この金属イオン回収装置6においては、大容量の原液貯留槽71に原液100が溜められ、大容量の回収液貯留槽72に回収液200が溜められる。図1と同様の構成をもつ処理槽73と原液貯留槽71との間で原液配管74、75及びポンプ81、82を用いて原液100が循環され、処理槽73と回収液貯留槽72との間で回収液配管76、77及びポンプ83、84を用いて回収液200が循環される。このため、処理槽73あるいは選択透過膜10等を大型化することなく、大量の原液100の処理を行うことができる。原液貯留槽71、原液配管74、75、回収液貯留槽72、回収液配管76、77は、任意の形態で設けることができる。

【0028】
この構成においては、Liの回収処理の際に、原液100がポンプ81、82を用いて循環されるため、処理槽73(選択透過膜10等)を大型化する必要なく、大容量の原液100の処理を行うことができる。これに伴い、Liを回収する側である回収液200の総量も多くすることが必要であり、このために、大容量の回収液貯留槽72が用いられる。このため、回収液200も、回収液貯留槽72と処理槽73との間をポンプ83、84を用いて循環される。回収液200の総量は少ない方がLi濃度を高めることができ、総量が多い方が回収されるLi総量を高めることができる。例えば、回収液200の総量は原液100の総量の半分程度とすることができる。

【0029】
このように、原液100、回収液200が循環されるためには、処理の際に原液100、回収液200が液体である状態が維持されることが必要である。ここで、原液100としては、海水やにがり等、Liがイオンとして存在している液体であることを前提としており、処理に応じてそのLi濃度が減少するという変化をしても、一般的には、液体である状態は変わらず維持される。特に、にがりは、海水から容易に製造できる上に、海水よりもLi濃度が50~100倍高いために、有効である。一方、回収液100においては、処理に応じてそのLi濃度が高まるため、これに応じて沈殿物等が生成されることがある。沈殿物が形成された場合、ポンプ83、84による回収液200の循環が困難となる。ただし、Li回収後の回収液200を別のタンク等に移し、ここでLiが沈殿物の形態となれば、液体から沈殿物を分離することは容易であるため、これを抽出することは特に容易である。

【0030】
また、例えば、リチウムイオン電池等の原料としては、炭酸リチウム(LiCO)が用いられ、かつLiCOは、取り扱いが容易な材料として知られている。このため、最終的には、LiをLiCOの形態として回収することが好ましい。しかしながら、この金属イオン回収装置6において、回収液200中においてLiCOが生成された場合、LiCOは上記の沈殿物となる。このため、回収液200を循環させるという観点では、回収液200中ではLiCOが形成されないことが好ましい。

【0031】
ここで、LiCOは、下記の反応によって容易に生成することができる。

【0032】
【化1】
JP0006233877B2_000002t.gif

【0033】
すなわち、塩化リチウム(LiCl)と炭酸ナトリウム(NaCO)を反応させることによって、LiCOと塩化ナトリウム(NaCl)を生成することができる。ここで、塩化リチウム(LiCl)は、LiイオンとClイオンとして存在する水溶液の状態とすることが望ましい。このため、処理後の回収液200が塩化リチウム水溶液となるようにすれば、これにNaCO水溶液を加えることによって、上記の反応を生じさせ、ここで初めてLiCOをこの水溶液中の沈殿物とし、これを抽出することができる。具体的には、例えば、回収液200を回収液貯留槽72から他のタンク等に移して加熱処理等を行い、Li濃度が10%程度となった後で、回収液200を他のタンク等に移し、ここでNaCO水溶液を添加すればよい。

【0034】
このためには、回収液200として、塩酸(HCl)溶液を用いることが特に好ましい。この場合には、処理後の回収液200は、LiCl水溶液となり、処理中において沈殿物が発生しない状態を維持することができる。その後、処理後の回収液200を濃縮後にNaCO水溶液を添加することにより、NaCl水溶液(塩水)中にLiCOを沈殿させることができ、LiCOを容易に抽出することができる。その後、LiCOを純水等で洗浄することにより、高濃度のLiCO粉末を得ることができる。

【0035】
すなわち、図6の構成においては、回収液200として、塩酸を用いることが特に好ましい。この場合には、負極12の材料としては、塩酸に対して耐性のあるPt(コーティング)電極等が特に好ましい。

【0036】
実際に、図6の構成を用いて、Li水溶液からLiを回収する実験を行った。以下では、この結果について説明する。

【0037】
(実施例1)
図6の構成(ただし集電体なし)において、選択透過膜10として、有効膜面積11.3cmのLi置換型NASICON型結晶であるLi1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12を用い、400mlの海水を原液、200mlの0.001mol/lの塩酸を回収液とし、正極と負極の間に1Vの電圧を印加し、通電時間(透析時間)に対するLi回収率を調べた。ここで、Li回収率とは、原液中におけるLi濃度の減少率であり、この減少の絶対量は回収液中における増加量と等しかった。この測定結果を図7に示す。

【0038】
この結果より、海水からLiを回収できることが確認された。この際、回収液のプラズマ発光分光分析を行った結果、海水におけるLi以外の成分であるNa、Mg、K等は有意に検出されなかった。

【0039】
(実施例2)
図6の構成において、集電体として導電性カーボンフェルトを用い、他は実施例1と同様にして、海水からLiを回収した。その測定結果を図8に示す。この結果より、集電体を用いた場合には、Li回収効率が1.5倍程度増大することが確認された。また、この場合においても回収液においてNa、Mg、K等は有意に検出されなかった。

【0040】
(実施例3)
実施例2と同様の構成において、原液として、海水の代わりに、にがり(海水から食塩(NaCl)を抽出した後の溶液)を用いた場合の測定結果を図9に示す。この場合においても、Liが同様に回収でき、回収液においてNa、Mg、K等は有意に検出されなかった。

【0041】
(実施例4)
実施例2と同様の集電体を用い、図5のように、選択透過膜を3枚組み合わせた構成で、実施例3と同様の測定を行った結果を図10に示す。面積に比例して、実施例3の3倍程度の回収効率が得られた。更に、この場合においても、回収液においてNa、Mg、K等は有意に検出されなかった。

【0042】
(実施例5)
実施例4と同様の構成で、正極、負極に電圧を全く印加せずに同様の測定を行った結果を図11に示す。電圧が印加されない場合でも、実際には正極と負極との間に、電気化学反応によって0.4Vの電位差が発生していた。これにより、電圧を印加した実施例4と比べて回収効率は低いながらも、Liが回収できることが確認された。更に、この場合においても、回収液においてNa、Mg、K等は有意に検出されなかった。すなわち、使用電力零でLiを回収することが可能であることが示された。

【0043】
(実施例6)
次に、実施例1~5で得られた回収液を真空中で加熱したところ、濃度10%程度の塩化リチウム水溶液が得られ、これに炭酸ナトリウム(NaCO)を添加し、沈殿物を得た。この沈殿物を抽出し乾燥させた白色の粉末をシャーレに入れた外観写真を図12に示す。図13は、この粉末に対して粉末X線回折測定を行った結果である。ここで、○印は、LiCOの結晶面に対応する回折ピーク(既知)である。この結果、X線回折で得られた大部分のピークは炭酸リチウム(LiCO)のピークと一致し、この粉末の主成分が炭酸リチウムであることが確認された。

【0044】
なお、上記の例では、回収する金属がリチウム(Li)であるものとしたが、その原理より、他の金属(イオン)、特にアルカリ金属に対しても上記の金属イオン回収装置、回収方法が有効であることは明らかである。例えば、Li同様に超イオン伝導体を形成するNa、Csについても、この超イオン伝導体を上記の選択透過膜に用いることにより、同様の効果を奏する。特に、NaCl等として高効率で得ることができるNaと比べて、高効率で回収することが比較的困難なCsに対しては、上記の構成は有効である。
【符号の説明】
【0045】
1、6 金属(Li)イオン回収装置
8、73 処理槽
10 選択透過膜
11 正極
12 負極
30 集電体
31 接合層
50 Liイオン
60 隔壁
61 電気透析用正極
62 電気透析用負極
71 原液貯留槽
72 回収液貯留槽
74、75 原液配管
76、77 回収液配管
81~84 ポンプ
100 原液
200 回収液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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