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明細書 :被検出微生物を検出する検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6358610号 (P6358610)
公開番号 特開2015-042958 (P2015-042958A)
登録日 平成30年6月29日(2018.6.29)
発行日 平成30年7月18日(2018.7.18)
公開日 平成27年3月5日(2015.3.5)
発明の名称または考案の名称 被検出微生物を検出する検出方法
国際特許分類 G01N  33/569       (2006.01)
G01N  33/536       (2006.01)
G01N  21/41        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI G01N 33/569 Z
G01N 33/536 E
G01N 33/536 D
G01N 21/41 101
G01N 21/64 F
請求項の数または発明の数 10
全頁数 19
出願番号 特願2013-174694 (P2013-174694)
出願日 平成25年8月26日(2013.8.26)
審査請求日 平成28年6月29日(2016.6.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
発明者または考案者 【氏名】椎木 弘
【氏名】長岡 勉
個別代理人の代理人 【識別番号】110001195、【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
審査官 【審査官】海野 佳子
参考文献・文献 国際公開第2012/077756(WO,A1)
国際公開第2012/121229(WO,A1)
特開2004-177348(JP,A)
特開2004-346177(JP,A)
調査した分野 G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
試料に含まれる、ウイルスを除く被検出微生物を検出する検出方法であって、
前記試料に一定量の金属ナノ粒子を混合し、前記試料に含まれる前記被検出微生物に前記金属ナノ粒子を付着させる付着工程と、
前記試料に光を照射して、前記被検出微生物への前記金属ナノ粒子の付着状態に対応するの散乱特性を評価する評価工程と、
前記評価工程における評価結果に基づいて、前記被検出微生物の濃度が高いほど前記光の散乱特性の変化が小さくなることから、前記被検出微生物を検出する検出工程と、を備え、
前記付着工程において、前記金属ナノ粒子は前記被検出微生物の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型を備えた高分子層に固定されており、前記金属ナノ粒子は前記鋳型を介して前記被検出微生物に付着する、検出方法。
【請求項2】
前記評価工程において、前記光の散乱特性は、暗視野顕微鏡像の観察、透過光の測定、および散乱光の測定の少なくともいずれか一つにより評価する、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記評価工程において、前記光の散乱特性は、暗視野顕微鏡像の観察により評価する、請求項2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記評価工程において、前記光の散乱特性は、前記透過光の強度に基づく消失スペクトルを測定することにより評価する、請求項2に記載の検出方法。
【請求項5】
前記評価工程において、前記光の散乱特性は、前記散乱光の強度に基づく散乱スペクトルを測定することにより評価する、請求項2に記載の検出方法。
【請求項6】
前記付着工程において、前記金属ナノ粒子は、複合体の形態で付着する、請求項1~のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子は、金ナノ粒子である、請求項1~のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項8】
前記試料に蛍光色素を添加する添加工程をさらに備え、
前記評価工程において、前記試料に励起光を照射して、前記被検出微生物への前記金属ナノ粒子の付着状態に対応する蛍光特性を評価する、請求項1に記載の検出方法。
【請求項9】
前記付着工程において、前記金属ナノ粒子は、複合体の形態で付着する、請求項に記載の検出方法。
【請求項10】
前記試料は溶液または分散液であり、前記光は波長が400~800nmである可視光を含む、請求項1に記載の検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出微生物を検出する検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療産業、食品産業、農業、畜産、養殖、水処理施設などにおいて、微生物検出への関心が高まっている。食品,医薬品,農薬などに存在する汚染微生物は、微量であるにもかかわらず、人の健康に大きく影響しうる。また、病院、老人介護施設における微生物汚染が社会問題化している。さらに、多様な抗菌商品の流通、需要の高まりに見られるように、一般家庭における衛生管理にも関心が高まっている。たとえば、食品加工工場の場合、出荷される食品の抜き取りでの細菌検査や工場内の環境中の細菌検査を実施しているが、培養法による測定の場合、結果が得られるまでに24~48時間程度要し、出荷するまでの保管コストが高くなる要因となるため、迅速な検出方法が求められている。また、農業分野においても、たとえば水耕栽培の培養液中の細菌数が増加すると発病のリスクが高まる。細菌数を早く把握することで素早く殺菌などの措置が取れるため、迅速な検出方法は有効である。
【0003】
このような状況から、微生物汚染を簡単に検出できる技術の必要性が近年急速に高まっている。また、医療現場においては、感染症の原因の病原菌を速やかに特定する必要があることから、病原菌を迅速かつ高感度で検出できる技術が求められている。微生物の検出・特定方法としては、たとえば、ELISA法、ウェスタンブロッティング法などの方法が存在する。これらは、たとえば、抗体(一次抗体)と、微生物固有のタンパク質とを抗原-抗体反応させた後、さらに標識した二次抗体を抗体(一次抗体)と反応させ二次抗体の化学発光やATPの加水分解反応のモニターにより検出を行なう方法である。
【0004】
国際公開第2012/121229号公報(特許文献1)には、検出対象の微生物の鋳型を備えた微生物検出センサーが記載されており、微生物の補足状態に応じた重量変化を検出することが記載されている。
【0005】
Hayden, S.C. et al., J. Amer. Chem. Soc. 2012, 134, 6920-6923(非特許文献1)には、大腸菌および枯草菌の表面に金ナノ粒子が凝集する様子を電子顕微鏡像および紫外可視スペクトルで確認していることが報告されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2012/121229号公報
【0007】

【非特許文献1】Hayden, S.C. et al., J. Amer. Chem. Soc. 2012, 134, 6920-6923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ELISA法、ウェスタンブロッティング法などの方法はいずれも微生物そのものを検出する方法ではなく、また、ELISA法などでは、微生物固有のタンパク質等に対する抗体を作製する必要があり容易ではない。
【0009】
本発明は、迅速かつ簡便で、高感度に微生物を検出できる新規な微生物の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、試料に含まれる被検出微生物を検出する検出方法であって、試料に含まれる被検出微生物に金属ナノ粒子を付着させる付着工程と、試料に光を照射して、被検出微生物への金属ナノ粒子の付着状態に対応する光の散乱特性を評価する評価工程と、評価工程における評価結果に基づいて、被検出微生物を検出する検出工程と、を備える。
【0011】
上記評価工程において、光の散乱特性は、好ましくは、暗視野顕微鏡像の観察、透過光の測定、および散乱光の測定の少なくともいずれか一つにより評価する。たとえば、透過光の強度に基づく消失スペクトルを測定する、または散乱光の強度に基づく散乱スペクトルを測定することにより光の散乱特性を評価することができる。
【0012】
上記付着工程において、金属ナノ粒子は、複合体の形態で付着する形態であってもよい。上記金属ナノ粒子は、金ナノ粒子が例示される。上記付着工程において、金属ナノ粒子にプローブ分子が結合されており、金属ナノ粒子はプローブ分子を介して被検出微生物に付着する形態とすることができる。上記プローブ分子は、被検出微生物の表面部位と化学的相互作用あるいは化学結合することにより前記被検出微生物に付着するものを用いることが好ましい。たとえば、i)被検出微生物の表面部位と静電的相互作用または疎水的相互作用により前記被検出微生物に付着するプローブ分子、ii)タンパク質からなり被検出微生物の表面の糖鎖と結合することにより前記被検出微生物に付着する分子、あるいはiii)抗体からなり被検出微生物の表面の抗原と抗原抗体反応することにより被検出微生物に付着するプローブ分子を用いることができる。
【0013】
上記付着工程において、金属ナノ粒子は被検出微生物の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型を備えた高分子層に固定されており、金属ナノ粒子は鋳型を介して被検出微生物に付着する形態であってもよい。
【0014】
また、本発明は、試料に含まれる被検出微生物を検出する検出方法であって、試料に含まれる被検出微生物に金属ナノ粒子を付着させる付着工程と、試料に蛍光色素を添加する添加工程と、試料に励起光を照射して、被検出微生物への金属ナノ粒子の付着状態に対応する蛍光特性を評価する評価工程と、評価工程における評価結果に基づいて、被検出微生物を検出する検出工程と、を備える。上記付着工程において、金属ナノ粒子は、複合体の形態で付着する形態であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によると、迅速かつ簡便で、高感度に微生物を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態の付着工程を模式的に示す図である。
【図2】金属ナノ粒子複合体の一例を模式的に示す図である。
【図3】第1の実施形態の付着工程のプローブ分子による付着方法の一例を説明する図である。
【図4】第1の実施形態の付着工程の鋳型による付着方法の一例を説明する図である。
【図5】第1の実施形態の評価工程において用いられるシステムの一例を示す模式図である。
【図6】金ナノ粒子(a)、酸化銅ナノ粒子(b)、金ナノラズベリー(c)のTEM像を示す図である。
【図7】実験例1において、第1の金属ナノ粒子(negative Au NPs)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。
【図8】実験例1において、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。
【図9】実験例1において、第3の金属ナノ粒子(positive Cu2O NPs)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。
【図10】実験例1において、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。
【図11】実験例1において、緑膿菌のみを含み、金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を添加しない場合の暗視野顕微鏡像を示す図である。
【図12】実験例1において、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)または第3の金属ナノ粒子(positive Cu2O NPs)を用いた場合の散乱スペクトルを示す図である。
【図13】実験例1において、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)または第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いた試料と、緑膿菌のみを含む試料の散乱スペクトルを示す図である。
【図14】実験例2において、試料2~4の電子顕微鏡像(a)と、暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。
【図15】実験例2において、試料1~6の消失スペクトルを示す図である。
【図16】緑膿菌の濃度と金属ナノ粒子の付着数との関係を模式的に示す図である。
【図17】実験例3において、試料8~13の暗視野顕微鏡像を示す図である。
【図18】実験例3において、試料7~13の散乱スペクトルを示す図である。
【図19】実験例3において、金属ナノ粒子複合体の比率に対する波長600nmの散乱強度の関係を示す図である。
【図20】実験例4において、試料A,B,Cの蛍光スペクトルを示す図である。
【図21】実験例4において、試料A,14~21の蛍光スペクトルを示す図である。
【図22】実験例4において、金ナノ粒子の含有量に対する波長512nmでの蛍光強度の関係を示す図である。
【図23】実験例4において、試料A2,22~29の蛍光スペクトルを示す図である。
【図24】実験例4において、金ナノラズベリーの含有量に対する波長512nmでの蛍光強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。
<第1の実施形態>
第1の実施形態は、試料に含まれる被検出微生物を検出する検出方法であって、試料に含まれる被検出微生物に金属ナノ粒子を付着させる付着工程(St1)と、試料に光を照射して、被検出微生物への金属ナノ粒子の付着状態に対応する光の散乱特性を評価する評価工程(St2)と、評価工程における評価結果に基づいて、被検出微生物を検出する検出工程(St3)と、を備える。

【0018】
評価工程(St2)において、光の散乱特性は、好ましくは、暗視野顕微鏡像の観察、透過光の測定および散乱光の測定の少なくともいずれか一つにより評価する。

【0019】
[付着工程]
図1は、第1の実施形態の付着工程を模式的に示す図である。金属ナノ粒子1を含む溶液と、被検出微生物2を含む溶液を混合させることにより、被検出微生物2に金属ナノ粒子1を付着させる工程である。

【0020】
(被検出微生物)
被検出微生物2は、特に限定されない。たとえば、大腸菌のEscherichia属、緑膿菌などのPseudomonas属、Acinetobacter calcoaceticusなどのAcinetobacter属を始め、Serratia属、Klebsiella属、Enterobacter属、Citrobacter属、Burkholderia属、Sphingomonadase属、Chromobacterium属、Salmonella属、Vibrio属、Legionella属、Campylobacter属、Yersinia属、Proteus属、Neisseria属、Staphylococcus属、Streptococcus属、Enterococcus属、Clostridium属、Corynebacterium属、Listeria属、Bacillus属、Mycobacterium属、Chlamydia属、Rickettsia属、Haemophilus属の細菌が例示される。また、ウィルスとしては、A型肝炎ウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス、ノロウィルスが、真菌としてはカンジダが、原虫としてはクリプトスポリジウムが例示される。

【0021】
(金属ナノ粒子)
金属ナノ粒子1は、ナノメートルのオーダーのサイズを有する金属粒子である。ナノメートルのオーダーとは1から数百ナノメートルの範囲を含み、典型的には粒径が1nm~100nmの範囲である。金属ナノ粒子は、表面プラズモンが観測されるものであれば、特に限定されない。表面プラズモンが観測される金属ナノ粒子1は、被検出微生物2への付着状態に対応して、光の散乱特性が変化する。したがって、散乱特性を評価し(評価工程)、かかる評価結果に基づいて、被検出微生物2への付着状態を検出することができ、被検出微生物2を検出することができる(検出工程)。

【0022】
金属ナノ粒子1は、単体金属からなるナノ粒子であっても、金属化合物からなるナノ粒子であってもよく、たとえば、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、酸化銅ナノ粒子が例示される。また、金属ナノ粒子1の被検出微生物2への付着形態としては、図1に示すように、各金属ナノ粒子1がそれぞれ被検出微生物2に付着する形態以外に、複数の金属ナノ粒子が集合して複合体(以下、「金属ナノ粒子複合体」ともいう)を形成し、かかる金属ナノ粒子複合体が被検出微生物に付着する形態が挙げられる。金属ナノ粒子複合体は、複数の金属ナノ粒子が集合している形態であれば特に限定されないが、例えば、複数の金属ナノ粒子が高分子層の表面に保持されている形態を挙げることができる。

【0023】
図2は、金属ナノ粒子複合体の一例を模式的に示す図である。金属ナノ粒子複合体5は、複数の金属ナノ粒子1と、金属ナノ粒子1を保持する高分子層4とを備える。たとえば、金イオンと、金イオンの還元剤であるアニリンとを混合することにより、金イオンは還元され金ナノ粒子が生成され、同時にアニリンは酸化されてアニリンオリゴマーが生成されて高分子層4となり、金ナノ粒子複合体(以下、「金ナノラズベリー」ともいう)5が形成される。金ナノラズベリーの直径は通常50~150nmである。

【0024】
(付着方法)
図3は、第1の実施形態における、金属ナノ粒子1を被検出微生物2に付着させる方法の一例を説明する模式図である。まず、金属ナノ粒子1にプローブ分子3を結合させて、プローブ分子3を介して、被検出微生物2の表面に金属ナノ粒子を付着させる。プローブ分子3は、被検出微生物2の表面部位と化学的相互作用あるいは化学結合により、被検出微生物2に付着する。化学的相互作用あるいは化学結合による付着としては、たとえば、静電的相互作用による付着、疎水的相互作用による付着、被検出微生物2の表面の糖鎖とタンパク質(レクチン等)からなるプローブ分子との結合による付着、被検出微生物2の表面の抗原と抗体からなるプローブ分子との抗原抗体反応による付着等が挙げられる。

【0025】
図3において被検出微生物2の表面に存在する糖鎖や抗原と、特異的に結合するレクチンや抗体などのタンパク質を、金属ナノ粒子1に結合するプローブ分子3とする、プローブ分子3を介して金属ナノ粒子1を被検出微生物2に付着させる方法によると、試料中に複数種類の微生物が含まれる場合でも被検出微生物2を特異的に検出することができるので好ましい。

【0026】
図4は、図3に示す方法とは異なる、金属ナノ粒子1を被検出微生物2に付着させる方法を説明する模式図である。図4に示す方法においては、金属ナノ粒子1が高分子層4に保持された金属ナノ粒子複合体5aを用いる。金属ナノ粒子複合体5aの高分子層4の表面に被検出微生物2の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型7を形成し、鋳型7を介して金属ナノ粒子複合体5aを被検出微生物2に付着させる方法である。被検出微生物2の立体構造とは、被検出微生物2の全体の立体構造に限定されることはなく、被検出微生物2の特異的部位の立体構造であってもよい。図4においては、被検出微生物2の細胞壁外壁9の構成成分であるリポ多糖(LPS)8の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型7が形成されている。被検出微生物2に付着した金属ナノ粒子複合体5aに光を照射すると、散乱光12が観察されるので、散乱特性を測定することにより被検出微生物を検出することができる。

【0027】
被検出微生物2の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型7は、国際公開WO2012/121229号公報に記載されている方法にしたがって形成することができる。図4に示すような、被検出微生物2の立体構造に相補的な三次元構造の鋳型7を介して金属ナノ粒子1を被検出微生物2に付着させる方法によると、試料中に複数種類の微生物が含まれる場合でも被検出微生物2を特異的に検出することができるので好ましい。

【0028】
本発明の実施の形態においては、被検出微生物2に応じて、金属ナノ粒子1を被検出微生物2に付着させる方法を選択する。たとえば、被検出微生物2が全体または表面の電荷が負電荷過剰の状態にある微生物であれば、プローブ分子3と被検出微生物2との静電相互作用による付着方法を選択することができる。このような、金属ナノ粒子1とプローブ分子3の組み合わせとして金ナノ粒子とアミノエタンチオールとの組み合わせが例示される。金ナノ粒子と組み合わせて用いられるプローブ分子3としては、アミノエタンチオール以外にも、アミノ基とチオール基を有する分子が好ましく用いられる。このような分子は、チオール基が金ナノ粒子に配位結合し、またアミノ基が正電荷を有することにより全体または表面の電荷が負電荷過剰の状態にある微生物に静電相互作用により付着するからである。

【0029】
[評価工程]
評価工程においては、被検出微生物への金属ナノ粒子の付着状態に対応する光の散乱特性を評価する。表面プラズモンが観測される金属ナノ粒子が被検出微生物に付着した場合に、表面プラズモン共鳴が生じ、光を照射した場合に散乱光が生じて光の散乱特性が変化する。したがって、被検出微生物の有無、または被検出微生物の濃度に応じて金属ナノ粒子の被検出微生物への付着状態が変化し、表面プラズモン共鳴の程度が変化して、散乱光の強度が変化したり、または散乱光のピークがシフトしたりするなど、光の散乱特性が変化する。評価工程では、かかる光の散乱特性を評価する。光の散乱特性は、好ましくは、暗視野顕微鏡像の観察、透過光の強度に基づく消失スペクトルの測定および散乱光の強度に基づく散乱スペクトルの測定の少なくともいずれか一つにより評価する。消失スペクトルは、吸収スペクトルと散乱スペクトルの和であり、消失スペクトルを解析することにより散乱特性を評価することができる。

【0030】
図5は、評価工程において、消失スペクトルの測定または散乱スペクトルの測定を行うために用いられるシステムの一例を示す模式図である。システム20において、光源13から所望の光を検出対象の試料16に照射し、試料16からの散乱光9を、光の照射方向に対して90°の方向に配置された検出器18により検出し、散乱スペクトルを測定する。光の照射方向に配置された検出器19では、透過光を検出することにより消失スペクトルを測定することができる。システム20は、散乱光を測定する検出器18、または透過光を測定する検出器19の少なくともいずれかが配置されているものであればよい。検出器18、19としては、たとえばフォトダイオード、光電子増倍管(PMT)などを用いることができる。システム20において、光源13としては好ましくは発光ダイオード(LED)が用いられ、光源13から照射される光は、好ましくは波長が400~800nmの可視光である。光の散乱特性は、図5に示すようなシステムを用いて迅速かつ簡便に評価することができる。

【0031】
暗視野顕微鏡像は、散乱光により形成される像であり、かかる像の観察より被検出微生物への金属ナノ粒子の付着状態を直接的に明確に確認することができる。暗視野顕微鏡による観察は、電子顕微鏡による観察と比較して、迅速かつ簡便に観察することができるという利点がある。なお、散乱強度は、試料における各被検出微生物への金属ナノ粒子の付着量に応じて一定の付着量までは大きくなるので、観察される暗視野顕微鏡像も鮮明となる。

【0032】
[検出工程]
検出工程においては、評価工程の評価結果に基づいて、被検出微生物を検出する。被検出微生物の有無、被検出微生物の濃度に応じて散乱特性がどのように変化するかを予め確認しておくことにより、評価工程の評価結果に基づいて、被検出微生物の有無を検出したり、被検出微生物の濃度を検出したりすることができる。なお、暗視野顕微鏡像の観察によると、被検出微生物の有無および濃度を直接計測することができる。

【0033】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、試料に含まれる被検出微生物を検出する検出方法であって、試料に含まれる前記被検出微生物に金属ナノ粒子を付着させる付着工程(St11)と、試料に蛍光色素を添加する添加工程(St12)と、試料に励起光を照射して、被検出微生物への金属ナノ粒子の付着状態に対応する蛍光特性を評価する評価工程(St13)と、評価工程における評価結果に基づいて、前記被検出微生物を検出する検出工程(St14)と、を備える。

【0034】
本実施形態の付着工程(St11)は、第1の実施形態の付着工程(St1)と同様であるので説明を省略する。添加工程(St12)においては、蛍光を発する蛍光色素を添加する。試料内に存在する金属ナノ粒子に現れる表面プラズモンにより、蛍光色素の蛍光強度は増強される。金属ナノ粒子が存在する場合と存在しない場合、および金属ナノ粒子の量に応じて蛍光強度に違いが生じる。したがって、評価工程(St13)において、被検出微生物に付着した金属ナノ粒子に由来する蛍光特性のみを評価するために、被検出微生物に付着していない金属ナノ粒子は事前に除去しておくことが好ましい。評価工程(St13)においては、試料に励起光を照射して、蛍光特性を評価する。蛍光特性の評価としては、たとえば、蛍光スペクトルの測定、蛍光顕微鏡像の観察が例示される。検出工程(St14)では、かかる蛍光特性の評価に基づいて被検出微生物を検出する。

【0035】
本実施形態で使用し得る蛍光色素としては、フルオレセイン、ローダミン、ヨウ化プロピジウム、カルセイン、アクリジンオレンジ等が例示される。使用する蛍光色素に応じて励起光の波長を選択する。蛍光色素として、フルオレセインを用いる場合、励起光としてはたとえば波長490nmの光を選択することができる。本実施形態において、蛍光特性は、迅速かつ簡便に評価することができる。
【実施例】
【0036】
[実験例1:金属ナノ粒子の選択]
実験例1においては、被検出微生物として緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を用いた場合に、本発明の検出方法に用いることができる、または用いるのに適した金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を、電子顕微鏡像の観察、暗視野顕微鏡像の観察、散乱スペクトルの測定により確認した。
【実施例】
【0037】
プローブ分子を結合させた、以下(1)~(4)に示す金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を準備した。
(1)第1の金属ナノ粒子:クエン酸ナトリウムをプローブ分子として結合させた金ナノ粒子(negative Au NPs)、
(2)第2の金属ナノ粒子:アミノエタンチオールをプローブ分子として結合させた金ナノ粒子(positive Au NPs)、
(3)第3の金属ナノ粒子:臭化セチルトリメチルアンモニウムをプローブ分子として結合させた酸化銅ナノ粒子(positive Cu2O NPs)、
(4)第1の金属ナノ粒子複合体:アニリンをプローブ分子として結合させた金ナノラズベリー(positive Au nanoraspberry)。
【実施例】
【0038】
図6(a)は金ナノ粒子の透過電子顕微鏡像(TEM像)を示し、図6(b)は酸化銅ナノ粒子のTEM像を示し、図6(c)は金ナノラズベリーのTEM像を示す。なお、本実験例において、金ナノ粒子および金ナノラズベリーは以下のようにして調製した金ナノ分散液、金ナノラズベリー分散液として準備した。
【実施例】
【0039】
(第1の金属ナノ粒子分散液の調製)
超純水25mLに1%テトラクロロ金(III)酸四水和物水溶液を750μLおよび2%クエン酸ナトリウム水溶液を563μL加えて、80℃のまま30分間撹拌して第1の金属ナノ粒子分散液を調製した。得られた分散液における第1の金属ナノ粒子の平均粒径は30nm、ゼータ電位は-30mVであった。
【実施例】
【0040】
(第2の金属ナノ粒子分散液の調製)
2%クエン酸ナトリウム水溶液に代えてアミノエタンチオール溶液を用いた点以外は、上述の第1の金属ナノ粒子分散液の調製方法にしたがって第2の金属ナノ粒子分散液を調製した。得られた分散液における第2の金属ナノ粒子の平均粒径は30nm、ゼータ電位は+40mVであった。
【実施例】
【0041】
(第3の金属ナノ粒子分散液の調製)
超純水18mLに1.6%硫酸銅水溶液320μL加えて30分間窒素バブリングした。この溶液に10%臭化セチルトリメチルアンモニウムを1mLおよび4.2%水素化ホウ素ナトリウムを500μL加え10時間攪拌した。さらに空気中で10時間攪拌することで第3の金属ナノ粒子分散液を調製した。得られた分散液における第3の金属ナノ粒子の平均粒径は45nm、ゼータ電位は+30mVであった。
【実施例】
【0042】
(金ナノラズベリー分散液の調製)
超純水50mLに1%テトラクロロ金(III)酸四水和物水溶液を152μL加えて、80℃で撹拌し、0.1Mアニリン水溶液を1mL加えて、80℃のまま30分間撹拌した。反応溶液50mLを8500rpm、5℃にて30分間遠心分離し、沈殿をpH7のリン酸バッファー3mLに展開し、10分間超音波処理することで均一に分散させた。この洗浄作業を3回繰り返して、金ナノラズベリー分散液を調製した。得られた金ナノラズベリー分散液における金ナノラズベリーの平均粒径は80nm、ゼータ電位は+20mVであった。
【実施例】
【0043】
図3に示すように、プローブ分子を結合させた金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を含む溶液と、緑膿菌を含む溶液とを混合して攪拌し、その後、室温で遠心分離(6200rpm)することで微生物に付着していない金属ナノ粒子を除去した。金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体の緑膿菌への付着状態を電子顕微鏡像、暗視野顕微鏡像により確認した。
【実施例】
【0044】
図7は、粒径30nmの第1の金属ナノ粒子(negative Au NPs)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。図8は、粒径30nmの第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。図9は、粒径45nmの第3の金属ナノ粒子(positive Cu2O NPs)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。図10は、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いた場合の電子顕微鏡像(a)と暗視野顕微鏡像(b)を示す図である。図11は、緑膿菌のみを含み、金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を添加しない場合の暗視野顕微鏡像を示す図である。図7~図11に示す暗視野顕微鏡像は、露光時間(400ms)等、全て同一の条件で撮像したものである。
【実施例】
【0045】
図8~10より、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)、第3の金属ナノ粒子(positive Cu2O NPs)および第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)は緑膿菌に付着することが確認され、緑膿菌の検出に用いることができることが確認された。これは、緑膿菌の表面がリン酸基により負電荷に帯電しており、一方これらのプローブ分子は正電荷に帯電している官能基(アミノエタンチオールのアミノ基、アニリンオリゴマーのアミノ基、イミノ基等)を有し、これが緑膿菌と静電的相互作用することにより付着していることによる。なお、これらのプローブ分子は金属ナノ粒子に配位結合する官能基(アミノエタンチオールのチオール基、臭化セチルトリメチルアンモニウムのアミノ基、アニリンオリゴマーのアミノ基、イミノ基等)を有し、これを介して金属ナノ粒子に配位結合している。
【実施例】
【0046】
図12は、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いた場合と、第3の金属ナノ粒子(positive Cu2O NPs)を用いた場合の散乱スペクトルを示す。図12からわかるように、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いた場合と第3の金属ナノ粒子(positive Cu2O NPs)を用いた場合の散乱スペクトルのピーク波長は異なり、それぞれ650nm付近と、550nm付近である。したがって、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いた場合の暗視野顕微鏡像は赤色であり、第3の金属ナノ粒子(positive Cu2O NPs)を用いた場合の暗視野顕微鏡像は青色である。したがって、散乱スペクトルのピーク波長が異なる複数の金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を用いて、それぞれが異なる種類の被検出微生物に付着するように設計して散乱特性を評価することにより、試料に含まれる複数種類の被検出微生物を特定することもできる。
【実施例】
【0047】
図13は、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いた場合と、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いた場合と、金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を混合せずに緑膿菌のみを含む試料の散乱スペクトルを示す。図13に示す結果から、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いた場合は、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いた場合と比較して散乱光の強度が格段に大きいことがわかる。なお、このことは、図8(b)と図10(b)に示す暗視野顕微鏡像を比較しても明らかである。したがって、本発明の実施の形態において、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いるのが、散乱光の強度が大きく検出が容易であるという点から好ましいことがわかる。
【実施例】
【0048】
また、図13に示す結果より、緑膿菌のみを含む試料からは散乱光はほとんど観察されないことがわかる。したがって、緑膿菌を含む試料に緑膿菌に付着しうる金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を混合し(付着工程)、特定の波長にピークを有する散乱スペクトルが測定された場合は(評価工程)、試料中に被検出対象微生物が存在することを確認することができる(検出工程)。また、散乱スペクトルのピークの強度に基づいて、被検出対象微生物の濃度を検出することも可能である。
【実施例】
【0049】
[実験例2:被検出微生物と金属ナノ粒子の混合比変化、金属ナノ粒子の濃度一定]
実験例2においては、被検出微生物として緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を用い、金属ナノ粒子として実験例1で用いた第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を用いて、緑膿菌の濃度を変化させて電子顕微鏡像の観察、暗視野顕微鏡像の観察、および消失スペクトルの測定を行なった。
以下の試料1~6を準備した。試料2~6における第2金属ナノ粒子(positive Au NPs)の含有量は0.1mgとした。
(1)試料1:緑膿菌を3.1×10CFUmL-1の濃度で含み、金属ナノ粒子を添加しない試料、
(2)試料2:緑膿菌を4.6×10CFUmL-1の濃度で含む溶液に、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を添加した試料、
(3)試料3:緑膿菌を9.2×10CFUmL-1の濃度で含む溶液に、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を添加した試料、
(4)試料4:緑膿菌を1.5×10CFUmL-1の濃度で含む溶液に、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を添加した試料、
(5)試料5:緑膿菌を3.1×10CFUmL-1の濃度で含む溶液に、第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)を添加した試料、
(6)試料6:第2の金属ナノ粒子(positive Au NPs)のみを含み被検出微生物を含まない試料。
【実施例】
【0050】
図14(a)は試料2~4の電子顕微鏡像を示し、図14(b)は試料2~4の暗視野顕微鏡像を示す。また、図15は、試料1~6の消失スペクトルを示す。図14(b)に示す暗視野顕微鏡像から、緑膿菌の濃度が薄いほど、明るい暗視野顕微鏡像が観察されることがわかる。試料5では,試料1(緑膿菌のみ)の暗視野顕微鏡像(図11)との比較にほとんど相違が見られなかった。これは、金属ナノ粒子の濃度を一定としているため、図16に示すように、緑膿菌2の濃度が薄いほど、一つ当たりの緑膿菌2に付着する金属ナノ粒子1の個数が増加することによるものと解される。
図15に示す消失スペクトルから、試料1(緑膿菌のみ)および試料6(金属ナノ粒子のみ)では波長600~700nm付近での消失光がほとんど観察されないにもかかわらず、試料2~5においては、消失光の強度が緑膿菌の濃度が高くなるほど大きくなることが観察された。これは、緑膿菌の表面に金属ナノ粒子が付着することにより、波長600~700nm付近での散乱光が生じることに起因しているものと解される。以上より、消失スペクトルを測定することにより、被検出微生物の有無を検出することができ、また消失スペクトルの特定波長の強度に基づいて被検出微生物の濃度を検出することも可能であることがわかる。
【実施例】
【0051】
[実験例3:被検出微生物と金属ナノ粒子複合体の混合比変化]
実験例3においては、被検出微生物として緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を、金属ナノ粒子として実験例1で用いた第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いて、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)の濃度を変化させて暗視野顕微鏡像の観察および散乱スペクトルの測定を行なった。
【実施例】
【0052】
図3に示すように、金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を含む溶液と、緑膿菌を含む溶液とを混合して攪拌し、その後、室温で遠心分離(6200rpm)することで微生物に付着していない金属ナノ粒子を除去した。金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体の緑膿菌への付着状態を電子顕微鏡像、暗視野顕微鏡像により確認した。
【実施例】
【0053】
以下の試料7~試料13を準備した。試料7~13においては、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を1.5×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)の濃度が76μgである場合を緑膿菌に対して1.0の比率で含まれるとして、かかる比率に換算して記載する。
(1)試料7:緑膿菌を7.5×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)が0.2の比率で含まれる試料、
(2)試料8:緑膿菌を3.8×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)が0.4の比率で含まれる試料、
(3)試料9:緑膿菌を1.5×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)が1.0の比率で含まれる試料、
(4)試料10:緑膿菌を6.0×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)が1.25の比率で含まれる試料、
(5)試料11:緑膿菌を3.8×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)が2.0の比率で含まれる試料、
(6)試料12:緑膿菌を3.0×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)が2.5の比率で含まれる試料、
(7)試料13:緑膿菌を1.5×10CFUmL-1の濃度で含み、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)が5.0の比率で含まれる試料。
【実施例】
【0054】
図17は試料8~13の暗視野顕微鏡像を示し、図18は試料7~13の散乱スペクトルを示し、図19は図18の散乱スペクトルに基づいて作成した、金属ナノ粒子複合体の比率に対する波長600nmの散乱強度の関係を示す図である。図17に示す暗視野顕微鏡像は、露光時間を100msとし、他の撮像条件についても全て同一とした。図17に示す暗視野顕微鏡像から、金属ナノ粒子複合体の比率が2.0までの試料(試料8~11)においては、金属ナノ粒子複合体濃度が濃いほど、明るい暗視野顕微鏡像が観察されることがわかった。これは、緑膿菌に対して、金属ナノ粒子複合体の濃度が濃いほど、一つ当たりの緑膿菌に付着する金属ナノ粒子複合体の個数が増加することによるものと解される。
【実施例】
【0055】
図18に示す散乱スペクトルから、試料7(緑膿菌のみ)の場合は散乱光が測定されず、また試料8~13においては、金属ナノ粒子複合体の濃度が大きいほど、散乱スペクトルのピーク強度が大きくなることが観察されたが、試料12,13については、ピーク強度はほぼ同じであった。また、図19に示す結果から、金属ナノ粒子複合体の比率を3.0以上としても散乱光の強度は大きくならないことがわかった。したがって、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を用いて検出を行う場合、予測される被検出微生物の濃度に対して、第1の金属ナノ粒子複合体(positive Au nanoraspberry)を、その比率が1.25~2.5となるような範囲で添加して散乱特性を評価することが好ましいことがわかった。
【実施例】
【0056】
[実験例4]
実験例4においては、金ナノ粒子および金ナノラズベリーによる蛍光増強効果を確認する測定を行った。まず、1μMのフルオレセイン水溶液について、励起波長490nmで蛍光測定を行なった。次に、1μMのフルオレセイン水溶液に、以下のように調製した金ナノ粒子分散液を滴下して、励起波長490nmで蛍光測定を行なった。さらに、1μMのフルオレセイン水溶液に、実験例1で調製した金ナノラズベリー分散液を滴下して、励起波長490nmで蛍光測定を行なった。
【実施例】
【0057】
(金ナノ粒子分散液の調製)
超純水25mLに1%テトラクロロ金(III)酸四水和物水溶液を750μLおよび0.1M炭酸カリウム水溶液(0.5mL)を加え、4℃で撹拌した。その後、13mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液0.5mLを5回(全量2.5mL)加えて20分攪拌して金ナノ粒子分散液を調製した。得られた金ナノ粒子分散液における金ナノ粒子の平均粒径は5nm、ゼータ電位は-15mVであった。
【実施例】
【0058】
図20は、1μMのフルオレセイン水溶液(試料A)の蛍光スペクトルと、1μMのフルオレセイン水溶液に金ナノ粒子分散液が滴下されて金ナノ粒子を0.970μg含む水溶液(試料B)の蛍光スペクトルと、1μMのフルオレセイン水溶液に金ナノラズベリー水溶液が滴下されて金ナノラズベリーを0.727μg含む水溶液(試料C)の蛍光スペクトルとを示す。
【実施例】
【0059】
図20に示されるように、1μMのフルオレセイン水溶液(試料A)は、512nmに極大値を持つスペクトルを示した。この蛍光ピークの強度は95であった。金ナノ粒子を0.970μg含む水溶液(試料B)のピーク強度は154であり、試料Aのピーク強度と比較して1.5倍増強された。金ナノラズベリーを0.727μg含む水溶液(試料C)のピーク強度は1000以上であり、試料Aのピーク強度と比較して10倍以上増強された。
【実施例】
【0060】
図21は、1μMのフルオレセイン水溶液(試料A)の蛍光スペクトルと、1μMのフルオレセイン水溶液に金ナノ粒子分散液が滴下されて金ナノ粒子を以下の量含む試料14~21の蛍光スペクトルを示す。
(1)試料14:金ナノ粒子の含有量0.194μg、
(2)試料15:金ナノ粒子の含有量0.582μg、
(3)試料16:金ナノ粒子の含有量0.970μg、
(4)試料17:金ナノ粒子の含有量1.94μg、
(5)試料18:金ナノ粒子の含有量5.82μg、
(6)試料19:金ナノ粒子の含有量9.70μg、
(7)試料20:金ナノ粒子の含有量19.4μg、
(8)試料21:金ナノ粒子の含有量32.2μg。
【実施例】
【0061】
図22は、図21の蛍光スペクトルに基づいて作成した、金ナノ粒子の含有量に対する波長512nmでの蛍光強度の関係を示す図である。図21、22によると、金ナノ粒子の含有量が9.70μg(試料19)となるまでは金ナノ粒子の含有量の増大に対応して波長512nmの蛍光強度が増大したが、さらに含有量を増大(9.70~32.2μg)させると、ピーク強度は急激に減少し、試料21においては、フルオレセインのみと比べて小さくなった。これは、金ナノ粒子表面の増強電場による蛍光増強の一方、金ナノ粒子に近接した蛍光色素の電子移動がクエンチされることによるものと解される。したがって、本実験例にしたがって被検出微生物の検出を行なう場合には、予想される被検出微生物の濃度に応じて、金ナノ粒子の濃度および蛍光色素の濃度を選択することが好ましい。
【実施例】
【0062】
次に、図20において金ナノラズベリーを添加した場合に蛍光強度が装置の限界を超えたため(強度1000以上)、試料Aよりフルオレセインの濃度を10倍希釈した0.1μMのフルオレセイン水溶液(試料A2)を準備し、これに実験例1で調製した金ナノラズベリー分散液を滴下して、励起波長490nmで蛍光測定を行なった。図23は、試料A2の蛍光スペクトルと、0.1μMのフルオレセイン水溶液に金ナノラズベリー分散液が滴下されて金ナノラズベリーを以下の量含む試料22~29の蛍光スペクトルを示す。
(1)試料22:金ナノラズベリーの含有量0.0727μg、
(2)試料23:金ナノラズベリーの含有量0.218μg、
(3)試料24:金ナノラズベリーの含有量0.364μg、
(4)試料25:金ナノラズベリーの含有量0.727μg、
(5)試料26:金ナノラズベリーの含有量2.18μg、
(6)試料27:金ナノラズベリーの含有量3.64μg、
(7)試料28:金ナノラズベリーの含有量7.27μg、
(8)試料29:金ナノラズベリーの含有量12.1μg。
【実施例】
【0063】
図24は、図23の蛍光スペクトルに基づいて作成した、金ナノラズベリーの含有量に対する波長512nmでの蛍光強度の関係を示す図である。図23、24によると、金ナノラズベリーの含有量が3.64μg(試料27)となるまでは金ナノラズベリーの含有量の増大に対応して波長512nmの蛍光強度が増大したが、さらに含有量を増大(3.64~12.1μg)させても、ピーク強度はほぼ一定の強度を示した。これは、金ナノラズベリー中において金ナノ粒子がアニリンオリゴマーをリンカーとして集合化された構造を持つことに基づくものと解される。すなわち、アニリンオリゴマーにフルオレセインが補足され、金ナノ粒子に直接接することがないため、クエンチが抑制するものと解される。本実験例にしたがって被検出微生物の検出を行なう場合には、予想される被検出微生物の濃度に応じて、金ナノラズベリーの濃度および蛍光色素の濃度を選択することが好ましい。
【実施例】
【0064】
以上の結果を考察すると、試料Bにおいてピーク強度が増強されたのは、金ナノ粒子が表面に持つ増強電場(表面プラズモン)が、近傍の蛍光色素の蛍光を増強することによるものと解される。また、試料Cにおいてピーク強度が増強されたのは、金ナノ粒子が集合した構造を持つ金ナノラズベリーでは、隣接する金ナノ粒子において表面の増強電場がカップリングすることでホットスポットを形成し、このホットスポットではさらに増強効果が向上することによるものと解される。
【実施例】
【0065】
実験例4の結果から、まず付着工程で試料に含まれる被検出微生物に金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を付着させて、その後被検出微生物に付着していない金属ナノ粒子または金属ナノ粒子複合体を除去し、ここで蛍光色素を添加して、かかる試料について評価工程において蛍光特性を評価することにより、評価結果に基づいて被検出微生物を検出することができることがわかった。あるいは、あらかじめ蛍光色素を保持させた金属ナノ粒子複合体を、試料に含まれる被検出微生物に付着させて、かかる試料について評価工程において蛍光特性を評価することにより、評価結果に基づいて被検出微生物を検出することができることがわかった。被検出微生物に付着した金属ナノ粒子複合体が存在する場合には、蛍光スペクトルのピーク強度が増強することになるからである。
【符号の説明】
【0066】
1 金属ナノ粒子、2 被検出微生物、3 プローブ分子、4 高分子層、5 金属ナノ粒子複合体(金ナノラズベリー)、7 鋳型、8 リポ多糖、9 細胞壁外壁、12 散乱光、13 光源、16 試料、18,19 検出器。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23