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明細書 :ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法、ペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子、水蒸気改質反応用触媒、電極及び誘電体材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6590236号 (P6590236)
公開番号 特開2015-051913 (P2015-051913A)
登録日 令和元年9月27日(2019.9.27)
発行日 令和元年10月16日(2019.10.16)
公開日 平成27年3月19日(2015.3.19)
発明の名称または考案の名称 ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法、ペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子、水蒸気改質反応用触媒、電極及び誘電体材料
国際特許分類 C01B  13/14        (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
B01J  35/08        (2006.01)
B01J  23/78        (2006.01)
B01J  32/00        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
C01B   3/40        (2006.01)
C01B  13/32        (2006.01)
FI C01B 13/14 A
C01G 23/00 ZNMC
B01J 35/08 B
B01J 23/78 M
B01J 32/00
B01J 37/02 301Z
B01J 37/04 102
B01J 37/08
C01B 3/40
C01B 13/32
請求項の数または発明の数 14
全頁数 17
出願番号 特願2014-159911 (P2014-159911)
出願日 平成26年8月5日(2014.8.5)
優先権出願番号 2013162756
優先日 平成25年8月5日(2013.8.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年8月1日(2017.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
発明者または考案者 【氏名】大野 智也
【氏名】松田 剛
【氏名】杉浦 知幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100165515、【弁理士】、【氏名又は名称】太田 清子
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査官 【審査官】小野 久子
参考文献・文献 特表2012-517955(JP,A)
特開平08-253319(JP,A)
特開2005-075714(JP,A)
特開2003-277136(JP,A)
特開2004-079686(JP,A)
杉村 健一,他,噴霧乾燥法によるNi/BaTiO3コアシェル粒子の合成,J. Soc. Powder Technol,2009年,Vol.46, No.11,p.813-818
Tomoya Ohno, et al.,Preparation of the BaTiO3-SiO2 hybrid particles for the catalyst of methane steam reforming process,Materials Chemistry and Physics,2012年 3月23日,Vol.134,p.514-517
調査した分野 C01B 13/14
B01J 23/78
B01J 32/00
B01J 35/08
B01J 37/02
B01J 37/04
B01J 37/08
C01B 3/40
C01B 13/32
C01G 23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(I)2つ以上の金属元素を含む複合酸化物前駆体アルコキシドと、コア材料と、を混合し、混合物の中に、前記コア材料の表面に複合酸化物アルコキシドが結合したコア材料-複合酸化物アルコキシドを形成する工程と、
(II)前記コア材料-複合酸化物アルコキシドに水を加えて、複合酸化物アルコキシドを加水分解重縮合させ、コア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を形成する工程と、
(III)前記コア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を焼成する工程と、
を含み、
前記コア材料は、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄及び酸化アルミニウムからなる群より少なくとも1つ選択される、
ことを特徴とするコア材料の表面に、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法。
【請求項2】
前記ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜は、粒径20nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物の結晶粒を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(I)工程及び前記(II)工程を行った後に、前記コア材料に代えて、前記(II)工程で得たコア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を使用して、前記(I)工程、前記(II)工程及び前記(III)工程を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コア材料-複合酸化物アルコキシドにおいて、前記コア材料の表面に、複合酸化物アルコキシドが共有結合している、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コア材料は、表面に親水基を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コア材料は、粒子である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記(I)工程は、コア材料-複合酸化物アルコキシドの形成に次いで、
(I-a)前記混合物を遠心して前記コア材料-複合酸化物アルコキシドを分離する工程と、
(I-b)前記分離したコア材料-複合酸化物アルコキシドを無水溶媒に分散して分散液を調製する工程と、
を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記(I-a)工程及び前記(I-b)工程を行った後に、前記混合物に代えて、前記(I-b)工程で得た分散液を使用して、前記(I-a)工程及び前記(I-b)工程を行う、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コア粒子の表面にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されたペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子であって、
前記ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜は粒径20nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物の結晶粒を有し、
前記コア粒子は、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄及び酸化アルミニウムからなる群より少なくとも1つ選択され、
一次粒子である、
ことを特徴とするペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子。
【請求項10】
前記コア粒子の粒径は、1000nm以下である、
ことを特徴とする請求項9に記載のペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子。
【請求項11】
前記コア粒子は、SiO又はBaTiOからなり、
前記ペロブスカイト型複合酸化物は、BaTiO又はSrTiOからなる、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載のペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子からなる水蒸気改質反応用触媒。
【請求項13】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載のペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子からなる電極。
【請求項14】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載のペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子からなる誘電体材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法、ペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子、触媒、電極及び誘電体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト型複合酸化物は、さまざまな分野で応用されており、なかでも、水蒸気改質反応における触媒への活用が注目されている。
【0003】
水蒸気改質反応では、天然ガス(メタンガス)を原料として水素が生成されてきたが、
より多様な炭素資源(例えば、バイオマス由来のアルコール)からの水素製造に鑑みると、従来主に使用されてきたニッケル(Ni)/アルミナ触媒では、残留炭素成分の触媒表面での析出といった問題点が指摘されており、新規触媒の開発が求められている。なお、触媒にペロブスカイト型複合酸化物を応用する場合には、粒子形状のペロブスカイト型複合酸化物や、粒子表面にペロブスカイト型複合酸化物からなる薄膜を形成させたものが用いられる。この場合、触媒の表面積をより大きくするために、ナノレベルの粒子を用いるのが有効とされる。
【0004】
ペロブスカイト型複合酸化物は触媒の他に、電子材料(内視鏡ヘッド材料、マイクロポンプ用材料等)に応用されている。その場合、材料表面にペロブスカイト型複合酸化物の薄膜を形成させたものが用いられる。
【0005】
ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を材料表面に形成させる方法について、いくつか報告がなされている。
【0006】
特許文献1には、チタンアルコキシド溶液と、バリウム塩と、アルコールアミン等の加水分解抑制剤と、を混合させたコーティング溶液を、基体の表面に塗布してチタン酸バリウム薄膜を形成させる方法が記載されている。また、非特許文献1には、金属2成分を材料(ナノ粒子)表面に別々に析出させて、熱拡散を利用することで複合酸化物とし、ナノ粒子表面に複合酸化物をコーティングする方法が記載されている。また、非特許文献2には、スプレー熱分解法により、マイクロサイズレベルの粒子表面に複合酸化物をコーティングする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平4-362014号公報
【0008】

【非特許文献1】T.Ohno et al.,Mater.Chem.Phys.,134(2012)514-517
【非特許文献2】K.Sugimura et al.,J.Soc.Powder Technol.Jpn.,46,(2009)813-818
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1の方法は、熱拡散を利用した方法であるため、使用可能な材料に制限があり、また、最低でも2段階のプロセスが必要であるため、プロセスの複雑化によるデメリットを有していた。また、特許文献1及び非特許文献2の方法では、液滴径を小さくすることに物理的な限界があるため、ナノレベルの粒子表面へのコーティングには適用できないという難点を有していた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明は、コア材料の表面に、簡便にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法、ペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子、触媒、電極及び誘電体材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るコア材料の表面に、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法は、
(I)2つ以上の金属元素を含む複合酸化物前駆体アルコキシドと、コア材料と、を混合し、混合物の中に、前記コア材料の表面に複合酸化物アルコキシドが結合したコア材料-複合酸化物アルコキシドを形成する工程と、
(II)前記コア材料-複合酸化物アルコキシドに水を加えて、複合酸化物アルコキシドを加水分解重縮合させ、コア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を形成する工程と、
(III)前記コア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を焼成する工程と、
を含む。
【0012】
前記ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜は、粒径20nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物の結晶粒を有していてもよい。
【0013】
前記(I)工程及び前記(II)工程を行った後に、前記コア材料に代えて、前記(II)工程で得たコア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を使用して、前記(I)工程、前記(II)工程及び前記(III)工程を行ってもよい。
【0014】
前記コア材料-複合酸化物アルコキシドにおいて、前記コア材料の表面に、複合酸化物アルコキシドが共有結合していてもよい。
【0015】
前記コア材料は、表面に親水基を有していてもよい。
【0016】
前記コア材料は、粒子であってもよい。
【0017】
前記(I)工程は、コア材料-複合酸化物アルコキシドの形成に次いで、
(I-a)前記混合物を遠心して前記コア材料-複合酸化物アルコキシドを分離する工程と、
(I-b)前記分離したコア材料-複合酸化物アルコキシドを無水溶媒に分散して分散液を調製する工程と、
を含んでいてもよい。
【0018】
前記(I-a)工程及び前記(I-b)工程を行った後に、前記混合物に代えて、前記(I-b)工程で得た分散液を使用して、前記(I-a)工程及び前記(I-b)工程を行ってもよい。
【0019】
本発明の第2の観点に係る触媒は、
表面に、本発明の第1の観点に係る方法によりペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されている。
【0020】
本発明の第3の観点に係る電極は、
表面に、本発明の第1の観点に係る方法によりペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されている。
【0021】
本発明の第4の観点に係る誘電体材料は、
表面に、本発明の第1の観点に係る方法によりペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されている。
【0022】
本発明の第5の観点に係るペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子は、
コア粒子の表面にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されたペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子であって、
前記ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜は粒径20nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物の結晶粒を有する、
ことを特徴とする。
【0023】
例えば、前記コア粒子の粒径は、1000nm以下である。
【0024】
例えば、前記コア粒子は、SiO又はBaTiOからなり、
前記ペロブスカイト型複合酸化物は、BaTiO又はSrTiOからなる。
【0025】
本発明の第6の観点に係る触媒は、本発明の第5の観点に係るペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子からなる。
【0026】
本発明の第7の観点に係る電極は、本発明の第5の観点に係るペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子からなる。
【0027】
本発明の第8の観点に係る誘電体材料は、本発明の第5の観点に係るペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子からなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、コア材料の表面に、簡便にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法、ペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子、触媒、電極及び誘電体材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態である膜形成方法を表す模式図である。(a)は、複合酸化物前駆体アルコキシドがコア材料の表面の親水基と結合する様子を表す模式図であり、(b)は、複合酸化物前駆体アルコキシドがコア材料の表面に結合してコア材料-複合酸化物アルコキシドを形成した様子を表す模式図であり、(c)は、コア材料の表面において複合酸化物アルコキシド同士が加水分解重縮合してコア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を形成した様子を表す模式図である。
【図2】各々の作製フローを表す図である。(a)は、BaTiO前駆体アルコキシド溶液の作製フロー図であり、(b)は、SiO粒子の作製フロー図であり、(c)は、SiO粒子-BaTiOアルコキシド重縮合体の作製フロー図である。
【図3】本発明の一実施形態である膜形成方法により得られたBTO/SiO粒子について、(a)は、1layerのBTO/SiO粒子の電子顕微鏡写真であり、(b)は、2layerのBTO/SiO粒子の電子顕微鏡写真であり、(c)は、ゼータ電位のpH依存性の測定の結果を表す図である。
【図4】本発明の一実施形態である膜形成方法により得られたBTO/SiO粒子について、(a)は、透過型電子顕微鏡像を、(b)は、Siの元素マッピングを、(c)は、Baの元素マッピングを、(d)は、Tiの元素マッピングを、(e)は、(a)の範囲で得られた特性X線の量を表す図である。
【図5】本発明の一実施形態である膜形成方法により得られたBTO/SiO粒子を、エタノールの水蒸気改質反応に適用した場合の触媒特性を表すグラフ図である。
【図6】SrTiO前駆体アルコキシド溶液の作製フロー図である。
【図7】本発明の一実施形態である膜形成方法により得られたSTO/BTO粒子について、(a)は電子顕微鏡写真を、(b)は(a)とは異なる箇所での電子顕微鏡写真を表す図である。
【図8】本発明の一実施形態である膜形成方法により得られたSTO/BTO粒子を、エタノールの水蒸気改質反応に適用した場合の触媒特性を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。

【0031】
本発明の、コア材料の表面に、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する(以下、“膜形成する”という)方法(以下、“膜形成方法”という)は、
(I)2つ以上の金属元素を含む複合酸化物前駆体アルコキシドと、コア材料と、を混合し、混合物の中に、コア材料の表面に複合酸化物アルコキシドが結合したコア材料-複合酸化物アルコキシドを形成する工程(以下、“(I)結合工程”という)と、
(II)コア材料-複合酸化物アルコキシドに水を加えて、複合酸化物アルコキシドを加水分解重縮合させ、コア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を形成する工程(以下、“(II)重縮合工程”という)と、
(III)コア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を焼成する工程(以下、“(I
II)焼成工程”という)と、
を含む。

【0032】
まず、(I)結合工程について説明する。

【0033】
本明細書において、“2つ以上の金属元素を含む複合酸化物前駆体アルコキシド”は、異なる2つ以上の金属元素を含む金属アルコキシドである。該複合酸化物前駆体アルコキシドは、好ましくは炭素数2~30、より好ましくは炭素数2~16であり、分岐していない直鎖のアルコキシド基を有するものが好適に用いられる。2つの金属元素を含む複合酸化物前駆体アルコキシドは、例えば、図1(a)に示すように、一般式RO-M-O-M-OR(R:炭化水素基、M:金属元素、M:M1とは異なる金属元素)で表される。この場合、M:Mの含有比は、例えば、0.8:1~1.2:1である。“2つ以上の金属元素”については、ペロブスカイト型構造をとることのできる2種類以上の金属元素であれば適宜選択することができ、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物としてBaTiOを得るには、金属元素としてBa及びTiを選択する。ペロブスカイト型複合酸化物としては、BaTiOの他に、SrTiO(STO:チタン酸ストロンチウム)、PbTiO(チタン酸鉛)、Pb(Zr,Ti)O(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)、LaNiO(ランタン酸ニッケル)、La(Sr,Co)O(ランタン酸ストロンチウムコバルト)、LaAlO(LAO)等を例示することができる。

【0034】
“2つ以上の金属元素を含む複合酸化物前駆体アルコキシド”は、例えば、金属元素Mを含む金属アルコキシドと、金属元素Mを含む金属アルコキシドと、を反応させることで製造される。例えば、ペロブスカイト型複合酸化物としてBaTiOを得るための複合酸化物前駆体アルコキシドは、バリウムエトキシドと、チタニウムテトライソプロポキシドのイソプロポキシド基を一部エトキシド基に置換したチタニウムアルコキシドと、を溶媒中で90℃、1時間反応させることで製造される。この際、複合酸化物前駆体アルコキシドは極めて加水分解されやすいため、無水溶媒(例えば、無水エタノール、無水メトキシエタノール、無水メタノール、無水メチルエチルケトン、無水イソプロパノール、無水ブタノール等、又はこれらの混合物)中で調製される。

【0035】
“コア材料”としては、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、金属(ニッケル等)等の無機物、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフロオロエチレン、ポリアクリロニトリル等の有機物、表面を親水処理したカーボン素材(カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)等を用いることができる。コア材料は、平板状のものの他、曲面や凹凸を有するものでもよいが、好ましくは粒子である(以下、コア材料として用いる粒子を“コア粒子”という場合がある)。なお、本明細書において、“コア粒子”は、略球体の形状のものの他、略楕円体、円盤状のもの、略円柱体、略直方体、略正方体、その他の多面体等を含む。また、コア粒子は好ましくは、ナノレベルの粒子であり、略球体のコア粒子の場合、その粒径は好ましくは50nm~1000nm、より好ましくは50nm~500nm、さらに好ましくは50nm~200nm、さらにより好ましくは50nm~150nm、50nm~100nmであり、その他の形状のコア粒子の場合、その最小径は好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、その最大径は好ましくは1000nm以下である。

【0036】
“コア材料-複合酸化物アルコキシド”は、図1(b)に示すように、コア材料の表面に複合酸化物アルコキシドが結合したものである。この結合様式としては、共有結合、静電的結合、水素結合、ファンデルワールス結合等が例示される。例えば、コア材料が表面に親水基(ヒドロキシ基(シラノール基を含む)、カルボキシル基等)を有する場合(図1(a))、この親水基を介して、コア材料の表面に、複合酸化物アルコキシドが共有結合することができる。

【0037】
(I)結合工程では、例えば、SiO粒子にBaTiOのペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成するには、反応系に加えるBaTiOとSiOとのモル比([BaTiO(BTO)]/[SiO])を例えば0.5~3.0に調整して、本工程を行う。なお、複合酸化物アルコキシドの加水分解を防ぐために、“コア材料-複合酸化物アルコキシド”は、無水溶媒(前述同様)中で調製される。

【0038】
次に、(II)重縮合工程について説明する。

【0039】
本工程では、図1(c)に示すように、コア材料の表面に結合している複合酸化物アルコキシド同士が加水分解重縮合したコア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体が得られる。ペロプスカイト型構造を得るためには、コア材料の表面の一定領域において複合酸化物アルコキシド同士が重縮合している必要があり、単純にコア材料の表面に複合酸化物アルコキシドを結合させただけでは、ペロプスカイト型複合酸化物を構成するのに必要な元素が足りないことになる。すなわち、本工程では、最終的に焼成させてペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成させる目的で、コア材料の表面に結合している複合酸化物アルコキシド同士を加水分解重縮合させる。

【0040】
本工程では、(I)結合工程で得られた無水溶媒中のコア材料-複合酸化物アルコキシドに、水(例えば、イオン交換水)を加えることで、図1(c)に示すように、コア材料の表面に結合している複合酸化物アルコキシド同士が加水分解重縮合する。コア材料の表面に結合していない遊離の複合酸化物前駆体アルコキシド同士ではなく、コア材料の表面に結合している複合酸化物アルコキシド同士が効率良く加水分解重縮合するように、水を加える前に、コア材料の表面に結合していない遊離の複合酸化物前駆体アルコキシドを、除去する。この除去方法としては、無水溶媒の交換等が例示され、コア材料が平板状である場合には、水を加える前に無水溶媒からコア材料-複合酸化物アルコキシドを取り出して新しい無水溶媒中に入れる方法があり、コア材料が粒子である場合には、水を加える前に無水溶媒中のコア材料-複合酸化物アルコキシドを遠心分離し、新しい無水溶媒中に分散させる方法(後述)がある。

【0041】
なお、本明細書において、(I)結合工程と(II)重縮合工程とをあわせて、“コーティング工程”又は“コーティング”という場合がある。

【0042】
次に、(III)焼成工程について説明する。

【0043】
本工程により、表面に、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されたコア材料(本明細書において“膜形成材料”という場合がある)を得ることができる。本工程は、(II)重縮合工程にて得られたコア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を、例えば、温度300~900℃で1~6時間焼成することで行われる。焼成を行う前に、例えば、350℃で1時間の前熱処理により残留していた有機鎖を除去してもよい。

【0044】
例えば、Ba及びTiを含む複合酸化物前駆体アルコキシド(例えば、RO-Ti-O-Ba-OR)を用いてコア材料をコーティングした場合、焼成工程を経て、BaTiOのペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されたコア材料(膜形成材料)を得ることができる。なお、本発明の膜形成方法によれば、BaTiOの他、前述で例示したようなペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成させることが可能である。なお、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜は、例えば、粒径20nm以下、好ましくは粒径10nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物の結晶粒を有する。結晶粒は、ペロブスカイト型複合酸化物からなり、SrTiOの場合、例えば、図7(a)、(b)の矢印で示される結晶粒である。

【0045】
なお、(I)結合工程及び(II)重縮合工程を行った後に、再度これら(I)及び(II)の工程を行ってもよい。より具体的には、(II)重縮合工程で得られたコア材料-複合酸化物アルコキシド重縮合体を、(I)結合工程において、コア材料に代えて使用して、再度(I)結合工程及び(II)重縮合工程を行うものである。つまり、コーティング工程を2回繰り返して行うことになる。こうすることで、コア材料表面のより広い面積の部分にコーティングを施すことができる。

【0046】
なお、コア材料が粒子である場合、(I)結合工程は、コア材料(コア粒子)-複合酸化物アルコキシドの形成に次いで、
(I-a)混合物を遠心してコア材料(コア粒子)-複合酸化物アルコキシドを分離する工程と、
(I-b)分離したコア材料(コア粒子)-複合酸化物アルコキシドを無水溶媒に分散して分散液を調製する工程と、
を含んでいてもよい。

【0047】
工程(I-a)は、混合物を遠心することで、(I)結合工程においてコア粒子表面に結合できなかった遊離の複合酸化物前駆体アルコキシドを取り除き、結合体であるコア粒子-複合酸化物アルコキシドを分離するために行われる。遠心の条件は、例えば、12000rpm、20分間である。

【0048】
工程(I-b)では、工程(I-a)にて遠心分離されたコア粒子-複合酸化物アルコキシドを無水溶媒(前述同様)に分散させて、分散液とする。この場合、(II)重縮合工程では、この分散液に水を加えて、複合酸化物アルコキシドを加水分解重縮合させるが、工程(I-b)を行うことで、無水溶媒中でコア粒子-複合酸化物アルコキシドが拡散した状態となり、つまり、コア粒子1個1個が分散した状態となり、コア粒子表面における複合酸化物アルコキシド同士の重縮合が円滑に進むようになる。つまり、粒子同士は極めてくっつきやすいため、工程(I-b)を行うことで、無水溶媒中でコア粒子-複合酸化物アルコキシド同士のくっつきを防ぐことができ、コア粒子表面における複合酸化物アルコキシド同士の重縮合を良好に進めることができる。また、無水溶媒への分散は、例えば、超音波の照射や、マグネティックスターラーによる攪拌により行われるが、好ましくは超音波の照射により行われる。なお、本工程において無水溶媒を用いるのは、コア粒子に結合できなかった遊離の複合酸化物前駆体アルコキシド同士が加水分解重縮合して沈殿するのを回避するためである(一般的に、金属アルコキシドの加水分解速度は非常に早い)。

【0049】
工程(I-a)~(I-b)を経ることにより、コア粒子表面に結合していない遊離の複合酸化物前駆体アルコキシドを除去でき、かつ、無水溶媒中でのコア材料-複合酸化物アルコキシド同士のくっつきを防ぐことができるため、(II)重縮合工程において、コア粒子表面に結合している複合酸化物アルコキシド同士の加水分解重縮合を効率よく進めることができる。

【0050】
また、(I-a)工程~(I-b)工程を行った後に、(I-a)工程にて、混合物に代えて、(I-b)工程で得たコア粒子-複合酸化物アルコキシドを含む分散液を使用して、前記(I-a)工程~(I-b)工程を再度行ってもよい。このように(I-a)工程~(I-b)工程を繰り返し行うことにより、コア粒子表面に結合していない遊離の複合酸化物前駆体アルコキシドをより多く除去することができ、(II)重縮合工程において、複合酸化物アルコキシド同士の加水分解重縮合をさらに効率よく進めることができる。なお、(I-a)工程~(I-b)工程を2~5回繰り返して行ってもよい。

【0051】
本発明の膜形成方法によれば、平板もさることながら、球面や凹凸を有するコア材料の表面においても、単純なプロセスで簡便に膜形成を施すことができる。また、従来方法の熱拡散を利用することがないため、コア材料の選択の幅を広げることができる。さらには、従来方法とは異なり液滴径に依存することなくコーティングを行うため、ナノレベルのコア粒子にも確実に膜形成させることができる。

【0052】
また、本発明の膜形成方法によってペロブスカイト型複合酸化物をコア材料にコーティングした場合、用いられたペロブスカイト型複合酸化物からなる材料(ペロブスカイト型複合酸化物単体での材料)と同程度の特性(例えば、触媒特性)を示す。用いられるペロブスカイト型複合酸化物が高価である場合、本発明の膜形成方法によってペロブスカイト型複合酸化物をコア材料の表面のみにコーティングして得られた材料は、元々のペロブスカイト型複合酸化物単体で作製された材料に比して、安価に作製することができる。したがって、本発明の膜形成方法によれば、高価なペロブスカイト型複合酸化物を要する場合でも、ペロブスカイト型複合酸化物単体での材料を作製する場合に比して、低コストで所望のペロブスカイト型複合酸化物を用いた材料を作製することができる。

【0053】
本発明のコーティング方法により、表面に、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成された触媒が提供される。特に、コア材料としてナノレベルのコア粒子を用いる場合、該触媒の表面積を大きくすることができる。また、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜は、例えば、粒径20nm以下、好ましくは粒径10nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物の結晶粒を有することから、該触媒の表面積をさらに大きくすることができる。このため、水素製造を指向した水蒸気改質反応の触媒として好適に用いることができる。

【0054】
また、本発明のコーティング方法により、表面に、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成された電極が提供される。前述のようにコーティング工程を2回繰り返して行うことで、コア材料の表面においてより広い面積の部分に膜形成を施すことができ、電極(例えば、燃料電池の電極材料)として好適に用いることができる。また、コーティング工程を2回繰り返して行ったものは、電子材料としても好適に用いることができる。例えば、LaNiO(ランタン酸ニッケル)、La(Sr,Co)O(ランタン酸ストロンチウムコバルト)等からなる膜がコア材料に形成された場合には、電極として好適に用いることができる。

【0055】
また、本発明のコーティング方法により、表面に、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成された誘電体材料が提供される。例えば、PbTiO(チタン酸鉛)、Pb(Zr,Ti)O(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)等からなる膜がコア材料に形成された場合には、強誘電体材料として好適に用いることができる。

【0056】
次に、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子について説明する。

【0057】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子は、コア粒子の表面にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されており、このペロブスカイト型複合酸化物からなる膜は粒径20nm以下であるペロブスカイト型複合酸化物の結晶粒を有する。コア粒子、ペロブスカイト型複合酸化物、結晶粒等については、前述同様である。“ペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子”とは、本明細書において、コア粒子の表面にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が形成されている粒子であって、コア粒子の表面のうち、表面積で少なくとも50%以上を、ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜が被覆している状態のものをいう。

【0058】
コア粒子の粒径は、例えば、1000nm以下であり、好ましくは50nm~1000nm、より好ましくは50nm~500nm、さらに好ましくは50nm~200nm、さらにより好ましくは50nm~150nm、50nm~100nmである。

【0059】
コア粒子としては、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、金属(ニッケル等)等の無機物、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフロオロエチレン、ポリアクリロニトリル等の有機物、表面を親水処理したカーボン素材(カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)等を用いることができるが、二酸化ケイ素(SiO)又はチタン酸バリウム(BaTiO)を好適に用いることができる。

【0060】
ペロブスカイト型複合酸化物としては、BaTiO、SrTiO(STO:チタン酸ストロンチウム)、PbTiO(チタン酸鉛)、Pb(Zr,Ti)O(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)、LaNiO(ランタン酸ニッケル)、La(Sr,Co)O(ランタン酸ストロンチウムコバルト)、LaAlO(LAO)等を用いることができるが、BaTiO又はSrTiOを好適に用いることができる。

【0061】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物被覆粒子は、例えば、触媒、電極及び誘電体材料に用いることができる。触媒、電極及び誘電体材料の詳細については、前述の通りである。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
コア粒子として無機ナノ粒子である二酸化ケイ素(SiO)粒子に、複合酸化物であるチタン酸バリウム(BaTiO)を以下の通りコーティングした。
【実施例】
【0064】
(チタン酸バリウム(BaTiO)前駆体アルコキシド溶液の作製)
BaTiO前駆体アルコキシド溶液の作製フロー図を、図2(a)に示す。
【実施例】
【0065】
まず、金属バリウム1.20gを無水エタノール43.7mL中に加えて、90℃、1時間の条件下で反応させて、バリウムエトキシドの溶液を作製した。
【実施例】
【0066】
次に、チタニウムアルコキシドの溶液を作製した。反応速度の制御のために、チタニウムテトライソプロポキシドのイソプロポキシド基を部分的にエトキシド基に置換した。より具体的には、チタニウムテトライソプロポキシド2.56gを、無水エタノール43.7mL中に分散させて、90℃、1時間の条件下で反応させた。このようにして、チタニウムテトライソプロポキシドを一部エトキシド基に置換したチタニウムアルコキシドの溶液を作製した。
【実施例】
【0067】
次に、前述の通り得られたバリウムエトキシドの溶液(全量)と、チタニウムアルコキシドの溶液(全量)と、を90℃、1時間の条件下で反応させることで、BaTiO前駆体アルコキシド溶液(溶媒:無水エタノール、0.1mol/L)を得た。
【実施例】
【0068】
(二酸化ケイ素(SiO2)粒子の作製)
SiO粒子の作製フロー図を、図2(b)に示す。オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)7.13mLを、水5.3mL及びエタノール83.68mLの混合溶媒(水のみ4.5mol/Lで固定)中に加え、さらに、単分散粒子の粒径制御のためアンモニア(NH)(濃度28%)3.89mLを加えた。[NH]/[TEOS]比を制御することで目的の粒径(粒径100nm)となるように設計した。前述の混合物を室温にて72時間反応させることで、SiO粒子ゾルを調製した。なお、この反応プロセスにより得られたSiO粒子は、表面にシラノール基(Si-OH)を有する。得られたSiO粒子ゾルから溶媒中の水を除去するために、ロータリーエバポレーターを用いて(100℃、1時間半)、無水2-メトキシエタノールに溶媒置換を行なった。
【実施例】
【0069】
(コーティング工程前半:結合工程)
SiO粒子-BaTiOアルコキシド重縮合体の作製フロー図を、図2(c)に示す。まず、前述の通り作製した、BaTiO前駆体アルコキシド溶液80mL(溶媒:無水エタノール)と、SiO粒子ゾル50mL(溶媒:無水2-メトキシエタノール)と、を混合し([BaTiO(BTO)]/[SiO]=0.5)、90℃、5時間の条件下で反応させて、SiO粒子表面にBaTiO前駆体アルコキシドが結合したSiO粒子-BaTiOアルコキシドを含む反応液を得た。
【実施例】
【0070】
次に、前述の通り得られた反応液(全量)を12000rpmm、20分間の条件下で遠心分離し、上清をピペットで取り除き、SiO粒子-BaTiOアルコキシドを分離した。このSiO粒子-BaTiO前駆体アルコキシドを無水エタノール60mL中に超音波照射により分散させ、再度、12000rpmm、20分間の条件下で遠心分離し、上清をピペットで取り除くことで、SiO粒子-BaTiO前駆体アルコキシドを分離した。その後、このSiO粒子-BaTiO前駆体アルコキシドを無水エタノール60mL中に超音波照射により再度分散させて、分散液を得た。
【実施例】
【0071】
(コーティング工程後半:重縮合工程)
次に、前述の通り得られた分散液(全量)にイオン交換水40mLを加えて、SiO粒子の表面に結合しているBaTiO前駆体アルコキシド同士を加水分解重縮合させ、SiO粒子-BaTiOアルコキシド重縮合体を得た。
【実施例】
【0072】
(焼成工程)
前述の通り得られたSiO粒子-BaTiOアルコキシド重縮合体を、350℃で1時間、前熱処理し、残留する有機鎖を除去した。その後、600℃で1時間熱処理することで結晶化させ、膜形成された粒子(以下、“BTO/SiO粒子”という)を得た(このBTO/SiO粒子は、コーティング工程を1回経ているため、以下の実施例において“1layerのBTO/SiO粒子”という)。
【実施例】
【0073】
(2layerのBTO/SiO粒子の作製)
結合工程において、SiO粒子ゾルに代えて、焼成前のSiO粒子-BaTiOアルコキシド重縮合体を使用して、前述のコーティング工程を再度行った。このようにコーティング工程を2回行ったSiO粒子-BaTiOアルコキシド重縮合体を、前述と同様に焼成し、2layerのBTO/SiO粒子を得た。
【実施例】
【0074】
(実施例2)
実施例1で作製したBTO/SiO粒子(1layer及び2layer)のゼータ電位のpH依存性を測定した。
【実施例】
【0075】
実施例1で作製した1layerのBTO/SiO粒子又は2layerのBTO/SiO粒子を水溶媒に分散させて、測定装置としてELSZ-1000ZS(大塚電子)を用いて、ゼータ電位のpH依存性を測定した。溶液のpHについては、塩酸及び水酸化ナトリウムを使用して、ELSZ-PT(pHタイトレータ、大塚電子)にて調整した。
【実施例】
【0076】
ゼータ電位のpH依存性の測定の結果を図3(c)に、1layerのBTO/SiO粒子の電子顕微鏡写真を図3(a)に、2layerのBTO/SiO粒子の電子顕微鏡写真を図3(b)に示す。1layerのBTO/SiO粒子の場合、図3(c)に示すように、コーティング材料であるBaTiO(BTO)とコア粒子であるSiO粒子との中間付近に等電点が存在していた。一方、2layerのBTO/SiO粒子の場合、同じく図3(c)に示すように、コーティング材料であるBaTiO(BTO)とほぼ同等の等電点を示した。これらのことより、2layerのBTO/SiO粒子の表面では、1layerのBTO/SiO粒子に比して、より広い範囲でコーティングが施されていることがわかった。
【実施例】
【0077】
以上より、本実施例の方法によれば、コーティング工程の回数を調節することによって、コア粒子の表面上のコーティングの面積を制御することができ、所望の微構造を有するBTO/SiO粒子を得ることが可能であることが明らかとなった。
【実施例】
【0078】
(実施例3)
実施例1で作製したBTO/SiO粒子(1layer)の元素マッピングを行った。
【実施例】
【0079】
実施例1で作製したBTO/SiO粒子の最表面の元素分析を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS:Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)(測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM;JEOL JSM-2100F,200kV))を用いて行った。
【実施例】
【0080】
BTO/SiO粒子の、透過型電子顕微鏡像を図4(a)に、Siの元素マッピングを図4(b)に、Baの元素マッピングを図4(c)に、Tiの元素マッピングを図4(d)に示す。また、図4(e)に、図4(a)の範囲で得られた特性X線の量を示す。図4(c)及び図4(d)より、BTO/SiO粒子の最表面に、目的とした複合酸化物を構成するBaとTiの元素の存在を確認することができた。
【実施例】
【0081】
以上より、本実施例の方法によって、複合酸化物が表面に存在しているBTO/SiO粒子を得ることができることが示された。
【実施例】
【0082】
(実施例4)
ニッケル(Ni)を担持したBTO/SiO粒子の触媒特性を評価した。
【実施例】
【0083】
Niを担持したNi/BaTiO触媒については、メタンの水蒸気改質反応で従来使用されてきたが、エタノールの水蒸気改質反応に適用した例は報告されていない(BaTiO触媒は、コバルト(Co)成分を用いなければ、エタノールの水蒸気改質反応が起こらないことが報告されている)。そこで、本方法によりNiを担持したBTO/SiO粒子を作製し、エタノールの水蒸気改質反応に適用した場合の触媒特性について検討した。
【実施例】
【0084】
前述の実施例1と同様に(ただし、[BTO]/[SiO]=1.0とした)BTO/SiO粒子(1layer)を作製し、それを用いてNiを担持した触媒(5wt% Ni)を作製した(実施例触媒)。得られた触媒の表面積は33m/gであった。
【実施例】
【0085】
比較例として、従来の方法(固相法)で作成したペロブスカイト型酸化物触媒(Co/BTO触媒)(表面積10m/g以下)をエタノールの水蒸気改質反応に適用したものとした(K.Urasaki et al.,J.Catal.Commun.9(2008)600)(比較例触媒)。
【実施例】
【0086】
実施例触媒をエタノールの水蒸気改質反応に用いて、上記文献に記載の計算方法により、エタノールからの水素収率を算出した。エタノールの水蒸気改質反応は、原料として水とエタノールとの混合液([HO]/[EtOH]=10)を用い、W(触媒重量)/F(ガス流量)=2、反応温度550℃の条件下で行われた。また、水素量の測定は、各触媒が充填され550℃に維持された反応管に原料を連続的に導入し、反応管内で触媒反応によって生成した水素量を測定することで行われた。
【実施例】
【0087】
結果を図5に示す。実施例触媒については、上記文献に記載の計算方法により算出した水素収率の値をプロットしている。比較例触媒については、上記文献に記載の値をプロットしている。実施例触媒では、比較例触媒に比して、水素収率が高いことが示された。
【実施例】
【0088】
以上より、本実施例で得られたNi/BaTiO触媒では、複合酸化物の高表面積化が可能となり、水蒸気改質反応の触媒として有効であることが明らかとなった。
【実施例】
【0089】
(実施例5)
コア粒子としてチタン酸バリウム(BaTiO)粒子に、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)を以下の通りコーティングした。
【実施例】
【0090】
(チタン酸ストロンチウム(SrTiO)前駆体アルコキシド溶液の作製)
SrTiO前駆体アルコキシド溶液の作製フロー図を、図6に示す。
【実施例】
【0091】
金属ストロンチウムを0.2mol/Lとなるように2-メトキシエタノール50mLに加え、125℃、3時間の条件下で反応させて、ストロンチウム前駆体溶液を調製した。また、チタニウムテトライソプロポキシドを0.2mol/Lとなるように2-メトキシエタノールに加え、同様に125℃、3時間の条件下で反応させて、チタン前駆体溶液を調製した。調製されたストロンチウム前駆体溶液とチタン前駆体溶液とを、室温で反応させることで、SrTiO前駆体アルコキシド溶液(0.1mol/L)を得た。
【実施例】
【0092】
(チタン酸バリウム(BaTiO)粒子の作製)
実施例1で得られたBaTiO前駆体アルコキシド溶液を蒸発乾固し、350℃で前熱処理をし、その後700℃で焼成し、BaTiO粒子を得た。このBaTiO粒子を水中にて、超音波を15分間照射することで分散させ、その後、紫外線を30分間照射することで表面処理を行った後に蒸発乾固した。その後、エタノール中に分散させ、BaTiO粒子溶液を得た。
【実施例】
【0093】
(コーティング工程~焼成工程)
実施例1と同様にコーティング工程及び焼成工程を行い、BaTiO粒子に、ペロブスカイト型複合酸化物としてSrTiOの膜が形成された粒子(以下、“STO/BTO粒子”という)を得た。ただし、[SrTiO(STO)]/[BaTiO(BTO)]=0.5とした。
【実施例】
【0094】
(実施例6)
実施例5で作製したSTO/BTO粒子を電子顕微鏡にて観察した。
【実施例】
【0095】
STO/BTO粒子の電子顕微鏡写真を図7(a)、(b)に示す。BaTiO粒子の最表面に、粒径約10nm以下の非常に微細なSrTiOの結晶粒が存在していることが確認された(図7(a)、(b)において結晶粒が矢印で示されている)。
【実施例】
【0096】
(実施例7)
ニッケル(Ni)を担持したSTO/BTO粒子の触媒特性を評価した。
【実施例】
【0097】
Niを担持したSTO/BTO粒子を作製し、エタノールの水蒸気改質反応に適用した場合の触媒特性について検討した。
【実施例】
【0098】
実施例として、前述の実施例5と同様にSTO/BTO粒子を作製し、それを用いてNiを担持した触媒(5wt% Ni)を作製した(以下、“STO/BTO触媒”という)。一方、比較例として、BaTiO又はSrTiOを用いてNiを担持した触媒(5wt% Ni)を作製した(以下、“BTO触媒”又は“STO触媒”という)。
【実施例】
【0099】
STO/BTO触媒、BTO触媒又はSTO触媒をエタノールの水蒸気改質反応に用いて、実施例4と同様に、エタノールからの水素収率を算出した。ただし、水とエタノールとの混合液として、[HO]/[EtOH]=5の混合液を用い、水素量の測定は、各触媒が充填され600℃に維持された反応管に原料を連続的に導入し(1時間)、反応管内で触媒反応によって生成した水素量を測定することで行われた。
【実施例】
【0100】
結果を図8に示す。BTO触媒に比して、STO/BTO触媒及びSTO触媒では、水素収率が高いことが示された。さらに、STO/BTO触媒では、STO触媒とほぼ同程度の触媒特性が得られた。これは、STO/BTO触媒において、コーティングされたSrTiOが良好な結晶性(粒径約10nm以下の非常に微細なSrTiOの結晶粒を有する)を有しているからであると考えられる。
【実施例】
【0101】
以上より、比較的安価とされるBaTiOの粒子の表面のみに、比較的高価とされるSrTiOをコーティングして触媒とした場合でも、STO触媒(SrTiO単体でのNi担持触媒)と同程度の触媒特性が得られることが示された。したがって、本実施例によれば、低コストで高効率の触媒を作製可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、コア材料の表面に、簡便にペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成することができ、ペロブスカイト型複合酸化物触媒(水素製造を指向した水蒸気改質用触媒)、燃料電池の電極材料、電子材料(例えば、誘電体材料)等への応用が期待される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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