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明細書 :カーボンナノファイバー不織布の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6519859号 (P6519859)
公開番号 特開2016-188159 (P2016-188159A)
登録日 令和元年5月10日(2019.5.10)
発行日 令和元年5月29日(2019.5.29)
公開日 平成28年11月4日(2016.11.4)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノファイバー不織布の製造方法
国際特許分類 C01B  32/15        (2017.01)
D04H   1/43        (2012.01)
D04H   1/728       (2012.01)
D04H   1/4242      (2012.01)
FI C01B 32/15
D04H 1/43
D04H 1/728
D04H 1/4242
請求項の数または発明の数 13
全頁数 24
出願番号 特願2015-069438 (P2015-069438)
出願日 平成27年3月30日(2015.3.30)
審査請求日 平成30年3月29日(2018.3.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【識別番号】315009600
【氏名又は名称】株式会社エヌツーセル
発明者または考案者 【氏名】金 翼水
【氏名】マヤクリシュナン ゴピラマン
【氏名】永石 智貴
個別代理人の代理人 【識別番号】100104709、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 誠剛
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 国際公開第2011/070893(WO,A1)
国際公開第2015/027052(WO,A1)
韓国公開特許第2002-0008227(KR,A)
特表2012-507638(JP,A)
韓国公開特許第10-2010-0013845(KR,A)
調査した分野 C01B 32/00-32/991
D04H 1/00-18/04
B01J 21/00-38/74
特許請求の範囲 【請求項1】
非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な第1ポリマーと、前記第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有し、かつ、前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理により熱分解する第2ポリマーとが溶媒に溶解され、前記第1ポリマーを含む相が不連続相となり前記第2ポリマーを含む相が連続相となる非混和性ポリマー溶液を作製する非混和性ポリマー溶液作製工程と、
エレクトロスピニング法により、前記非混和性ポリマー溶液から「前記第2ポリマーからなるナノファイバーシェルの内部に、前記第1ポリマーからなる複数のナノファイバーコアが前記ナノファイバーシェルの長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバーの集合体からなる複合ナノファイバー不織布」を作製する複合ナノファイバー不織布作製工程と、
前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理を前記複合ナノファイバー不織布に施すことにより、前記第2ポリマーを熱分解させるとともに前記第1ポリマーを炭化させて、前記第1ポリマー由来のカーボンからなるカーボンナノファイバー不織布を作製するカーボンナノファイバー不織布作製工程とを含み、
前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、前記不連続相をなす液滴の平均直径が30μm~500μmの範囲内にある非混和性ポリマー溶液を作製し、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、前記ナノファイバーシェルの平均直径が60nm~2000nmの範囲内にあり、前記ナノファイバーコアの平均直径が10nm~200nmの範囲内にある複合ナノファイバー不織布を作製し、
前記カーボンナノファイバー不織布作製工程においては、前記カーボンナノファイバーの平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバー不織布を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記第1ポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、ピッチ類、セルロース系ポリマー、ポリイミド又はポリベンジルイミダゾールからなり、前記第2ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリビニルアルコール(PVA)からなることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、PAN及びPMMAの合計重量に対するPANの重量の比率が15%~35%の範囲内となる条件で非混和性ポリマー溶液を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程と前記カーボンナノファイバー不織布作製工程との間に、前記複合ナノファイバー不織布を200℃~400℃の範囲内にある温度で加熱して繊維構造を安定化させる繊維構造安定化処理工程をさらに含むことを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、ケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物からなるナノ粒子を前記非混和性ポリマー溶液に分散させた非混和性ポリマー溶液から前記複合ナノファイバー不織布を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記ナノ粒子の平均直径は、1nm~60nmの範囲内にあることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項7】
請求項又はに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記動物組織は、人間の頭髪であることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項8】
非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な第1ポリマーと、前記第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有し、かつ、前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理により熱分解する第2ポリマーとが溶媒に溶解され、前記第1ポリマーを含む相が不連続相となり前記第2ポリマーを含む相が連続相となる非混和性ポリマー溶液を作製する非混和性ポリマー溶液作製工程と、
エレクトロスピニング法により、前記非混和性ポリマー溶液から「前記第2ポリマーからなるナノファイバーシェルの内部に、前記第1ポリマーからなる複数のナノファイバーコアが前記ナノファイバーシェルの長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバーの集合体からなる複合ナノファイバー不織布」を作製する複合ナノファイバー不織布作製工程と、
前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理を前記複合ナノファイバー不織布に施すことにより、前記第2ポリマーを熱分解させるとともに前記第1ポリマーを炭化させて、前記第1ポリマー由来のカーボンからなるカーボンナノファイバー不織布を作製するカーボンナノファイバー不織布作製工程とを含み、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、ケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物からなるナノ粒子を前記非混和性ポリマー溶液に分散させた非混和性ポリマー溶液から前記複合ナノファイバー不織布を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記第1ポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、ピッチ類、セルロース系ポリマー、ポリイミド又はポリベンジルイミダゾールからなり、前記第2ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリビニルアルコール(PVA)からなることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、PAN及びPMMAの合計重量に対するPANの重量の比率が15%~35%の範囲内となる条件で非混和性ポリマー溶液を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程と前記カーボンナノファイバー不織布作製工程との間に、前記複合ナノファイバー不織布を200℃~400℃の範囲内にある温度で加熱して繊維構造を安定化させる繊維構造安定化処理工程をさらに含むことを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記ナノ粒子の平均直径は、1nm~60nmの範囲内にあることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記動物組織は、人間の頭髪であることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノファイバー不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に伴い、自然エネルギー(太陽光、風力、潮力等)を電気的エネルギーとして貯蔵する要請から、キャパシタや蓄電池等の蓄電デバイスへの期待が高まっている。蓄電デバイスの一つである電気二重層キャパシタは、急速大電流の充放電が可能である、半永久的に充放電が可能である、発火事故が起き難いといった優れた特徴を備えていることから、パーソナルコンピューターや電気自動車等に応用され、次世代の蓄電デバイスとして注目されている。ただ、電気二重層キャパシタは、現状において蓄電池等の二次電池に比してエネルギー密度が低いという課題がある。現在、多くの研究者らは、上記優れた特性を損なうことなく、また、小型軽量化も図りつつも、いかにキャパシタのエネルギー密度を高めるか(高容量化するか)という課題に取り組んでいる。
【0003】
図20は、電気二重層キャパシタ800の原理を説明するために示す模式図である。
電気二重層キャパシタの原理は、図20に示すように、電極表面810と電解液820との界面で電気二重層を形成し、当該電気二重層を介して充電時には電極表面810にイオンを吸着させ放電時には電極表面からイオンを脱着させることで充放電を実現するというものである。したがって、エネルギー密度を高め(高容量化)かつ小型軽量化を図るためには、電極812に用いる炭素材料814の単位体積当たりの表面積(体積比表面積。以下、単に比表面積という場合もある。)の向上が重要となる。
【0004】
図21は、背景技術の電気二重層キャパシタ800向けの炭素材料814及び電極812を作製する過程を説明するために示す図である。
電気二重層キャパシタに用いる炭素材料として、従来より、賦活処理、粉砕工程等の方策を施すことにより比表面積を向上させたカーボンナノファイバー(以下、単にCNFという場合もある。)が用いられてきた。しかし、賦活処理を施したCNFは収縮によって体積が小さくなっていることや、また、粉砕工程(図21(a)参照。)を施したCNFは最終的にはバインダー(接着剤)を用いて金属の集電体816に塗布する必要があることから(図21(b)参照。)、これらの方策による材料は、不織布のまま使用することができないという問題があった。そこで、昨今、電気二重層キャパシタに用いる炭素材料として、エレクトロスピニング法により作製したカーボンナノファイバーを集成させたカーボンナノファイバー不織布を導入する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図22は、従来のカーボンナノファイバー不織布の製造方法に係る各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。図22(a)は非混和性ポリマー溶液900を模式的に示す図であり、図22(b)は複合ナノファイバー926を模式的に示す図であり、図22(c)はカーボンナノファイバー946を模式的に示す図である。図23は、従来のカーボンナノファイバー不織布に含まれるカーボンナノファイバーを説明するために示す図である。
【0006】
従来のカーボンナノファイバー不織布の製造方法は、ポリアクリロニトリル(以下、単にPANということもある。)902を含む相が連続相となりポリメチルメタクリレート(以下、単にPMMAということもある。)904を含む相が不連続相となる非混和性ポリマー溶液900を作製する非混和性ポリマー溶液作製工程(図22(a)参照。)と、エレクトロスピニング法により、非混和性ポリマー溶液900から「PANからなるナノファイバーシェル922の内部に、PMMAからなる複数のナノファイバーコア924がナノファイバーシェル922の長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバー926の集合体からなる複合ナノファイバー不織布920」を作製する複合ナノファイバー不織布作製工程(図22(b)参照。)と、PANを炭化させるための熱処理を複合ナノファイバー不織布に施すことにより、PANを炭化させるとともにPMMAを熱分解させて、PAN由来のカーボン942からなるカーボンナノファイバー不織布940を作製するカーボンナノファイバー不織布作製工程(図22(c)参照。)とをこの順序で実施するというものである。
【0007】
上記した従来のカーボンナノファイバー不織布の製造方法によれば、図22(b)に示すように、複合ナノファイバー不織布作製工程においては、エレクトロスピニング法により非混和性ポリマーを繊維化する過程で、連続相をなすPAN及び不連続相をなすPMMAが引き延ばされる結果、「PANからなるナノファイバーシェル922の内部に、PMMAからなる複数のナノファイバーコア924がナノファイバーシェル922の長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバー926の集合体からなる複合ナノファイバー不織布920を作製することができる。その結果、その後のカーボンナノファイバー不織布作製工程においては、PANが炭化する一方でPMMAが熱分解して消失することにより、カーボンナノファイバーの表面又は内部にPMMA由来の空孔948が中空状に多数形成され、比表面積が大きいカーボンナノファイバー不織布940を製造することができる(図22(c)参照。)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】韓国公開特許第2010-0013845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、キャパシタの分野では常に、従来よりも大容量のキャパシタが求められており、電気二重層キャパシタの分野でも例外ではない。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来よりも大容量の電気二重層キャパシタを製作することができるカーボンナノファイバー不織布の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、従来よりも大容量の電気二重層キャパシタを実現できるカーボンナノファイバー不織布及びカーボンナノファイバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ところで、従来においては、CNF946の比表面積を大きくするために、いかに空孔948の表面積を増やすか、空孔948の数を増やすかというアプローチでの研究がなされていた(図22(c)、図23等参照。)。
本発明の発明者らは鋭意研究を重ねた結果、発想を転換し、連続相(海)と不連続相(島)の構成材料を逆転させた非混和性ポリマーを導入し、中空構造を追求するのではなく極細のカーボンナノファイバーを追求するアプローチをとることで、比表面積が大きい有用なカーボンナノファイバー不織布を得ることができる製造方法に想到した。本発明は、非混和性ポリマー溶液を適切に調整し、それに適したエレクトロスピニング及び熱処理を行うことで、非常に有用な極細のCNFの集合体からなるカーボンナノファイバー不織布を得るというものである。本発明は、以下の要素からなる。
【0012】
[1]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法は、非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な第1ポリマーと、前記第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有し、かつ、前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理により熱分解する第2ポリマーとが溶媒に溶解され、前記第1ポリマーを含む相が不連続相となり前記第2ポリマーを含む相が連続相となる非混和性ポリマー溶液を作製する非混和性ポリマー溶液作製工程と、エレクトロスピニング法により、前記非混和性ポリマー溶液から「前記第2ポリマーからなるナノファイバーシェルの内部に、前記第1ポリマーからなる複数のナノファイバーコアが前記ナノファイバーシェルの長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバーの集合体からなる複合ナノファイバー不織布」を作製する複合ナノファイバー不織布作製工程と、前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理を前記複合ナノファイバー不織布に施すことにより、前記第2ポリマーを熱分解させるとともに前記第1ポリマーを炭化させて、前記第1ポリマー由来のカーボンからなるカーボンナノファイバー不織布を作製するカーボンナノファイバー不織布作製工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
[2]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、前記第1ポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、ピッチ類、セルロース系ポリマー、ポリイミド又はポリベンジルイミダゾールからなり、前記第2ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリビニルアルコール(PVA)からなることが好ましい。
【0014】
[3]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、PAN及びPMMAの合計重量に対するPANの重量の比率が15%~35%の範囲内となる条件で非混和性ポリマー溶液を作製することが好ましい。
【0015】
[4]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、前記不連続相をなす液滴の平均直径が30μm~500μmの範囲内にある非混和性ポリマー溶液を作製し、前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、前記ナノファバーシェルの平均直径が60nm~2000nmの範囲内にあり、前記ナノファイバーコアの平均直径が10nm~200nmの範囲内にある複合ナノファイバー不織布を作製し、前記カーボンナノファイバー不織布作製工程においては、前記カーボンナノファイバーの平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバー不織布を作製することが好ましい。
【0016】
[5]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、前記複合ナノファイバー不織布作製工程と前記カーボンナノファイバー不織布作製工程との間に、前記複合ナノファイバー不織布を200℃~400℃の範囲内にある温度で加熱して繊維構造を安定化させる繊維構造安定化処理工程をさらに含むことが好ましい。
【0017】
[6]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、ケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物からなるナノ粒子を前記非混和性ポリマー溶液に分散させた非混和性ポリマー溶液から前記複合ナノファイバー不織布を作製することが好ましい。
【0018】
[7]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、前記ナノ粒子の平均直径は、5nm~100nmの範囲内にあることが好ましい。
【0019】
[8]本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、前記動物組織は、人間の頭髪であることが好ましい。
【0020】
[9]本発明のカーボンナノファイバー不織布は、本発明の(上記[1]~[8]のいずれかに記載の)カーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布であって、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバーの集合体からなることを特徴とする。
【0021】
[10]本発明のカーボンナノファイバー不織布は、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバーの集合体からなることを特徴とする。
【0022】
[11]本発明のカーボンナノファイバー不織布は、本発明の(上記[6]~[8]のいずれかに記載の)カーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布であって、前記カーボンナノファイバー不織布を構成するカーボンナノファイバーは、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあり、かつ、表面又は内部に平均内径が1nm~60nmの範囲内にある空孔が存在することが好ましい。
【0023】
[12]本発明のカーボンナノファイバー不織布は、前記カーボンナノファイバー不織布を構成するカーボンナノファイバーは、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあり、かつ、表面又は内部に平均内径が1nm~60nmの範囲内にある空孔が存在することが好ましい。
【0024】
[13]本発明のカーボンナノファイバー不織布においては、前記空孔は前記カーボンナノファイバーの外側の空間と連通していることが好ましい。
【0025】
[14]本発明のカーボンナノファイバー不織布においては、前記空孔の内壁には、ヘテロ原子種が付着していることが好ましい。
【0026】
[15]本発明のカーボンナノファイバーは、本発明の(上記[1]~[8]のいずれかに記載の)カーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布を、空気を遮断した状態で2800~3000℃の範囲内にある温度で加熱し黒鉛化させたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
(1)本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法によれば、連続相(海)と不連続相(島)の構成材料を従来技術と逆転させかつ適切に調整した非混和性ポリマーを導入することにより、比表面積が大きい極細のカーボンナノファイバーの集合体からなる有用なカーボンナノファイバー不織布を得ることができる。これを用いることにより従来よりも大きな表面積をもつカーボン電極を製作することができ、大容量の電気二重層キャパシタを製作することができる。
【0028】
(2)本発明のカーボンナノファイバー不織布(上記[9]又は[10]に記載のカーボンナノファイバー不織布)は、平均直径が極めて小さい極細のカーボンナノファイバーを備え、そのような極細のカーボンナノファイバーが数多く含まれる集合体であることから、比表面積が大きくなっている。このような本発明のカーボンナノファイバー不織布を用いれば、従来よりも大きな表面積をもつカーボン電極を実現することができ、大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる
【0029】
(3)本発明のカーボンナノファイバー不織布(上記[11]又は[12]に記載のカーボンナノファイバー不織布)は、カーボンナノファイバーが極細であることだけでなく、当該カーボンナノファイバーのそれぞれに動物組織由来のナノ粒子により形成された空孔が存在するという特徴も有する。個々のカーボンナノファイバーの外周側の面積に、更に当該空孔の面積が加わるため、より大きな比表面積をもつカーボンナノファイバー不織布となる。このような本発明のカーボンナノファイバー不織布を用いれば、従来よりも更に大きな表面積をもつカーボン電極を実現することができ、より大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。
【0030】
(4)本発明のカーボンナノファイバーは、従来よりも比表面積が大きい極細のカーボンナノファイバーであるため、これを用いることにより従来よりも大きな表面積をもつカーボン電極を製作することができ、大容量の電気二重層キャパシタを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】カーボンナノファイバー不織布の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【図2】カーボンナノファイバー不織布の製造方法の各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。
【図3】非混和性ポリマー溶液作製工程S10を説明するために模式的に示す図である。
【図4】非混和性ポリマー溶液100の一例を光学顕微鏡によって観察した写真である。
【図5】複合ナノファイバー不織布作製工程S12を実施するためのエレクトロスピニング装置520を説明するために示す図である。
【図6】エレクトロスピニングを説明するために模式的に示す図である。
【図7】複合ナノファイバー不織布120の一例を電界放射型走査電子顕微鏡によって観察した写真である。
【図8】カーボンナノファイバー不織布140の一例を示す図である。
【図9】カーボンナノファイバー不織布140の柔軟性を説明するために示す写真である。
【図10】実施形態2の非混和性ポリマー溶液作製工程S10を説明するために模式的に示す図である。
【図11】実施形態2の各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。
【図12】実施形態のカーボンナノファイバー不織布作製工程S14によって作成されたカーボンナノファイバー146を説明するために模式的に示す図であり、図11(c)において記号Zで示した部分を拡大して模式的に示した図である。
【図13】実施形態2において動物組織110(人間の頭髪)から動物組織加工物114(ナノ粒子116)を得る過程を説明するために示す写真である。
【図14】実験例で使用するエレクトロスピニング装置550を説明するために示す図である。
【図15】実験例で用いた非混和性ポリマー溶液100aの一例を光学顕微鏡によって観察した写真である。
【図16】実験例の繊維構造安定化処理工程S13の温度プロファイルを示す図である。
【図17】実験例における熱処理の温度プロファイルを示す図である。
【図18】比較例3で作成したカーボンナノファイバー不織布を示す図である。
【図19】実施例及び比較例2のそれぞれにより作製したカーボンナノファイバー不織布を比較説明するために示す図である。
【図20】背景技術の電気二重層キャパシタ800の原理を説明するために模式的に示す図である。
【図21】背景技術の電気二重層キャパシタ800向けの炭素材料814及び電極812を作製する過程を説明するために示す図である。
【図22】従来のカーボンナノファイバー不織布の製造方法に係る各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。
【図23】従来のカーボンナノファイバー不織布に含まれるカーボンナノファイバーを説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法、カーボンナノファイバー不織布及びカーボンナノファイバーを図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、図面における模式図については、各構成要素の寸法、構成要素間の比率等は必ずしも実際のものを厳密に反映したものではない。

【0033】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法
図1は、カーボンナノファイバー不織布の製造方法を説明するために示すフローチャートである。図2は、カーボンナノファイバー不織布の製造方法の各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。図2(a)は非混和性ポリマー溶液作製工程S10で作成された非混和性ポリマー溶液100を模式的に示す図であり、図2(b)は複合ナノファイバー不織布作製工程S12によって作成された複合ナノファイバー126を模式的に示す図であり、図2(c)はカーボンナノファイバー不織布作製工程S14によって作成されたカーボンナノファイバー146を模式的に示す図である。図3は、非混和性ポリマー溶液作製工程S10を説明するために模式的に示す図である。図4は、非混和性ポリマー溶液100の一例を光学顕微鏡によって観察した写真である。

【0034】
図5は、複合ナノファイバー不織布作製工程S12を実施するためのエレクトロスピニング装置520を説明するために示す図である。図6は、エレクトロスピニングを説明するために模式的に示す図である。図7は、複合ナノファイバー不織布120の一例を電界放射型走査電子顕微鏡によって観察した写真である。図8は、カーボンナノファイバー不織布140の一例を示す図であり、図8(a)~(c)は電界放射型走査電子顕微鏡によって観察した写真であり、図8(d)は模式的に示す図である。図9は、カーボンナノファイバー不織布140の柔軟性を説明するために示す写真である。

【0035】
実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法は、図1に示すように、非混和性ポリマー溶液作製工程S10、複合ナノファイバー不織布作製工程S12、及び、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14をこの順序で含む。
以下に、実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法を各工程に沿って説明する。

【0036】
(1)非混和性ポリマー溶液作製工程
非混和性ポリマー溶液作製工程S10は、非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な第1ポリマーと、第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有し、かつ、第1ポリマーを炭化させるための熱処理により熱分解する第2ポリマーとが溶媒に溶解され、第1ポリマーを含む相が不連続相となり第2ポリマーを含む相が連続相となる非混和性ポリマー溶液を作製する工程である(図2(a)参照。)。

【0037】
まず、第1ポリマーとして非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な材料を選定し、一方、第2ポリマーとして、第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有しており、かつ、第1ポリマーを炭化させるための所定の熱処理を行ったときに、第2ポリマー自身は熱分解するような材料を選定する。それぞれの材料は、本発明の作用効果を奏するものであれば如何なるものでもよいが、例えば、第1ポリマーとしては、ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、ピッチ類、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ポリベンジルイミダゾール等を好適に用いることができる。第2ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)等を好適に用いることができる。

【0038】
実施形態1においては、第1ポリマーはPANからなり、第2ポリマーがPMMAからなることがより好ましい。PAN及びPMMAは、比較的入手しやすく、特性も安定し、取扱いも知られているため、実用的にカーボンナノファイバー不織布の製造を実施することができる。

【0039】
次に、このように選定した第1ポリマー102及び第2ポリマー104を、容器510に準備した溶媒106に投入して撹拌して、第1ポリマー及び第2ポリマーを溶解する。その結果、第1ポリマー102を含む相が不連続相(いわゆる島)となり、第2ポリマー104を含む相が連続相(いわゆる海)となった非混和性ポリマー溶液100を得ることができる(図3参照。)。

【0040】
ところで、このような海島構造を発生させるに当たり重要なパラメーターは(ここでは他のパラメーターは一定と仮定して説明する。)、先ず、表面張力である。表面張力は、液体が表面をできるだけ小さくしようとする力とも言えるため、表面張力が大きい方が島成分になり易く、小さい方が海成分になり易い。したがって、島にしたい第1ポリマーとしては、相対的に表面張力が大きい材料を選定し、海にしたい第2ポリマーとしては、相対的に表面張力が小さい材料を選定することが一般的に好ましい。
次に重要なパラメーターは、材料の混合比である。量が少ない方の材料が島成分となれば、量が多い方の材料と触れ合う表面積が小さくて済むため、溶液状態が安定する。そのため、量が少ない方の材料が島成分となり易く、量が多い方の材料が海成分になり易いということになる。したがって、島にしたい第1ポリマーを相対的に少ない量とし、海にしたい第2ポリマーを相対的に多い量とすることが一般的に好ましい。
同じく重要なパラメーターは材料の分子量である。分子量が小さければ、より小さな液滴ができやすいため海成分になり易く、逆に分子量が大きければ島成分になり易い。したがって、島にしたい第1ポリマーとして相対的に大きな分子量の材料を選定し、海にしたい第2ポリマーとして相対的に小さな分子量の材料を選定するのが、一般的に好ましい。
本発明では、少なくともこれら3つのパラメーターを所与の範囲で制御して、第1ポリマーを含む相が不連続相(島)となり、第2ポリマーを含む相が連続相(海)となる非混和性ポリマー溶液100を作製する。

【0041】
例えば、非混和性ポリマー溶液作製工程S10においては、第1ポリマー102としてのPAN及び第2ポリマー104としてのPMMAの合計重量に対するPANの重量の比率が15%~35%の範囲内となる条件で非混和性ポリマー溶液100を作製することが好ましい。この条件で混合することにより、連続相(海)と不連続相(島)からなる海島構造を呈した非混和性ポリマー溶液100を安定的に得ることができる(図4参照。)。

【0042】
また、非混和性ポリマー溶液作製工程S10において作成する非混和性ポリマー溶液100は、不連続相(島)103をなす液滴の平均直径が30μm~500μmの範囲内にある状態の溶液を作製することが好ましい(図4参照。)。この条件で不連続相(島)103の作成を制御することにより、後工程の複合ナノファイバー不織布作製工程S12において期待する形状及び寸法のナノファイバーコアを形成することができ、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14を経て所期の極細構造の表面積の大きなカーボンナノファイバーの集合体からなるカーボンナノファイバー不織布を得ることができる。

【0043】
(2)複合ナノファイバー不織布作製工程
複合ナノファイバー不織布作製工程S12は、エレクトロスピニング法により、非混和性ポリマー溶液100から「第2ポリマーからなるナノファイバーシェルの内部に、第1ポリマーからなる複数のナノファイバーコアがナノファイバーシェルの長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバーの集合体からなる複合ナノファイバー不織布120」を作製する工程である(図2(b)参照。)。

【0044】
複合ナノファイバー不織布作製工程で使用するエレクトロスピニング装置520は、図5に示すように、ポリマー溶液を収納するタンク522、ポリマー溶液を吐出するノズル524、ポリマー溶液をタンク522からノズル524へ流通させる経路となる流通パイプ526、コレクタ528、ノズル524とコレクタ528との間に高電圧を印加する電源装置530等から構成されている。エレクトロスピニングの原理等は他の文献に譲る。なおエレクトロスピニング装置は、図5に示す態様に限定されるものではない。

【0045】
まず、コレクタ528とノズル524との間を、数cm~20cm程度の間隔を保ち、5kV~80kV程度の電圧を印加する。電圧印加によって帯電された非混和性ポリマー溶液は、ノズル524から吐出され、クーロン力によりコレクタ528側(実施形態1の例では長尺シート532側)に引き寄せられて分裂しつつ延伸される(図6で示した符号C~E参照。)。

【0046】
特に本発明においては、事前に非混和性ポリマー溶液100を海島構造として作製してあるため、吐出された溶液のうち、海となっている部分(第2ポリマー)は延伸されてナノファイバーシェル122として形成されるが、それと同時に、島となっている部分(第1ポリマー)も併せて延伸されてナノファイバーコア124として形成される。こうして「第2ポリマー104からなるナノファイバーシェル122の内部に、第1ポリマー102からなる複数のナノファイバーコア124がナノファイバーシェル122の長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバー126」が形作られる(図2(b)参照。)。そのような複合ナノファイバー126を、コレクタ528側(実施形態1の例では長尺シート532側)に付着させつつランダムに重なるように堆積させる(図2(b)、図6の符号E及び図7参照。)。その後、当該堆積させた複合ナノファイバー126の集合体を、長尺シート532から剥がして(長尺シート532が後述する熱処理を実施することにより熱分解し消失するものである場合には、剥がさずそのままにしておいても良い)、最終的に「複合ナノファイバー126の集合体からなる複合ナノファイバー不織布120」を得ることができる。

【0047】
(3)カーボンナノファイバー不織布作製工程
カーボンナノファイバー不織布作製工程S14は、第1ポリマー102を炭化させるための熱処理を上記の複合ナノファイバー不織布120に施すことにより、第2ポリマー104を熱分解させるとともに第1ポリマー102を炭化させて、第1ポリマー由来のカーボンからなるカーボンナノファイバー不織布を作製する工程である(図2(c)参照。)。

【0048】
カーボンナノファイバー不織布作製工程S14は、図示しない電気炉等を使って実施をする。具体的には、複合ナノファイバー不織布作製工程S12で作製した複合ナノファイバー不織布を電気炉内に導入し、電気炉を、窒素等の非酸化性雰囲気で満たし、第1ポリマーを炭化させるための温度プロファイル(第1ポリマー及び第2ポリマーの材料によるが、上限温度を概ね数百℃~千℃と設定する)で運転して複合ナノファイバー不織布に熱処理を施す。本発明では、非混和性ポリマー溶液を作製する際に、第2ポリマーとして第1ポリマーを炭化させるための熱処理を加えると熱分解する特性をもつ材料を予め選定してあるため、上記条件を満たす温度プロファイルで電気炉を運転すると、第2ポリマーは熱分解することになる。

【0049】
かかる熱処理を施すと、複合ナノファイバー不織布作製工程S12で作成されたナノファイバーシェル122(第2ポリマー104)は熱分解されて消失し、ナノファイバーコア124(第1ポリマー102)のみが炭化されて残留し、図2(c)の模式図で示すように、それまでナノファイバーコア124(第1ポリマー102)だった部分が極細の第1ポリマー由来のカーボン144として形作られる。こうして、最終的には極細の第1ポリマー由来のカーボン144が多数含まれたカーボンナノファイバー不織布140を得ることができる(図8参照。)。

【0050】
なお、所期のカーボンナノファイバー不織布140を得るためには、加熱する温度、時間、昇温速度等を適宜調整して行うが、本発明のカーボンナノファイバー不織布作製工程S14において第1ポリマー102を炭化させるための熱処理は、第1ポリマーを800℃~1000℃の範囲内の温度で加熱する熱処理であることが好ましい。

【0051】
以上の工程を実施することにより、実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布140を製造することができる。

【0052】
なお、複合ナノファイバー不織布作製工程S12においては、ナノファイバーシェル122の平均直径が60nm~2000nmの範囲内にあり、ナノファイバーコア124の平均直径が10nm~200nmの範囲内にある複合ナノファイバー不織布120を作製し、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14においては、カーボンナノファイバー146の平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバー不織布140を作製することが好ましい(図8及び図19参照。)。
上記の直径とすることによりエレクトロスピニング、熱処理等を効率的に実施することができ、かつ良好な品質のカーボンナノファイバー不織布を得ることができ、実用上も有用なカーボンナノファイバー不織布の製造方法を実施することができる。

【0053】
(4)繊維構造安定化処理工程
本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、複合ナノファイバー不織布作製工程S12とカーボンナノファイバー不織布作製工程S14との間に、複合ナノファイバー不織布を200℃~400℃の範囲内にある温度で加熱して繊維構造を安定化させる繊維構造安定化処理工程S13(図示しない。)をさらに含むことが好ましい。

【0054】
繊維構造安定化処理工程S13を実施することにより、処理対象である複合ナノファイバー不織布の繊維構造を、熱や炎に強い構造に変えて安定化させることができ、後に実施される熱処理(いわゆる炭化処理)において必要以上に処理対象が焼失することなく、所期の表面積の大きなカーボンナノファイバー不織布を得ることができる。

【0055】
2.実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布
実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布は、上記した非混和性ポリマー溶液作製工程S10、複合ナノファイバー不織布作製工程S12、及び、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14をこの順序で実施して製造されたカーボンナノファイバー不織布140であって、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバー146の集合体からなっている。

【0056】
また、実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布140は、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバー146の集合体からなる。

【0057】
3.実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法及びカーボンナノファイバー不織布の効果

【0058】
実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法によって得られるカーボンナノファイバー不織布は、平均直径が極めて小さいカーボンナノファイバーを備え、そのような極細のカーボンナノファイバーが数多く含まれる集合体であることから、比表面積が大きくなっている。このような本発明のカーボンナノファイバー不織布を用いれば、従来よりも大きな表面積をもつカーボン電極を実現することができ、大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。

【0059】
より詳しく説明すると、本発明のカーボンナノファイバー不織布140は、平均直径が極めて小さいCNF146を備えている。これは、従来のCNF946の直径がナノファイバーシェル122に対応する部分となっているのに対し、本発明のCNF146の直径はナノファイバーコア124(非混和性ポリマー溶液の不連続相(島)だった部分)に対応する部分であることからも理解できる(実験例で得た図19(d)~(f)及び図19(a)~(c)も参照。)。
本発明は、このような極細のCNF146が数多く含まれる集合体によりカーボンナノファイバー不織布140が構成されているため(図8及び図19参照)、仮に従来技術においてCNF946の中空部分(空孔948)の表面積を考慮したとしても、本発明のカーボンナノファイバー不織布140の方がなお大きな比表面積となっている。これを用いれば当然に従来よりも大きな表面積をもつカーボン電極を実現することができ、大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。

【0060】
また、本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法により得られるカーボンナノファイバー不織布は、上記したとおり比表面積が十分に大きなもののため、電気二重層キャパシタの電極を作製する際には、賦活処理、粉砕、バインダーを用いた集電体への塗布等、従来、比表面積を大きくする目的で実施していたこれらの工程を実施することなしに、本願発明のカーボンナノファイバー不織布をそのまま集電体に貼り合せて電極を作製することができる。よって、簡易にかつ高い生産性の下で大容量の電気二重層キャパシタを作製することができる。

【0061】
さらに、本発明のカーボンナノファイバー不織布は、従来よりも極細なカーボンナノファイバーからなるので、従来のカーボンナノファイバー不織布よりも柔軟性に富んでいる。例えば、図9に示すように、カーボンナノファイバー不織布140の一端と他端をピンセット590でつまんで合わせることができる程度にまで柔軟性を備えている。このように変形・加工が容易であるから、本発明のカーボンナノファイバー不織布は各種製品への応用に当たり設計の自由度が高い。
すなわち、従来のカーボンナノファイバー不織布は、構成要素のカーボンナノファイバーの直径が比較的太く、かつ、内部(コア)には長手方向に空孔が形成されていることから、却って剛性が高まってしまい柔軟な取り扱いができない構造となっている(図22(c)、図23及び図19(e)~(f)参照。)。このため、柔軟性のあるシート、不織布等を作製しようとする場合には、従来のカーボンナノファイバー不織布をそのまま用いて作成することは困難であり、上述したような粉砕、バインダーとの混成及び塗布といった更なる工程が必要となる場合がある(図21参照。)。一方、本願発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法で製造されたカーボンナノファイバー不織布は、極めて柔軟性に富むため、出来上がった後に改めて粉砕、バインダーとの混成、塗布といった工程は不要となり、そのまま用いることができる。

【0062】
4.実施形態1に係るカーボンナノファイバー
上記では、非混和性ポリマー溶液作製工程S10、複合ナノファイバー不織布作製工程S12、繊維構造安定化処理工程S13、及び、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14により製造されたカーボンナノファイバー不織布をそのまま用いて電気二重層キャパシタ等の各種製品に応用する例を述べたが、これに限定されるものではない。
例えば、上記した実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布を、空気を遮断した状態又は真空の状態で2800~3000℃の範囲内にある温度で加熱し黒鉛化させたカーボンナノファイバーを得て、それを各種製品に応用することもできる。
具体的には、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14により得たカーボンナノファイバー不織布140を、空気を遮断した状態又は真空の状態で2800~3000℃の範囲内にある温度で加熱して黒鉛化させカーボンナノファイバーを作製する(図示しない黒鉛化工程S15)。その上で、例えば図21で示すように、作製したカーボンナノファイバーを、粉砕し、バインダー(接着剤)と混成して、金属の集電体に塗布することにより電気二重層キャパシタを作製することもできる。
このように作成される電気二重層キャパシタは、従来と同様の工程(粉砕、バインダーとの混成及び塗布)は必要になるものの、それに用いられる素のカーボンナノファイバー(更に遡ればカーボンナノファイバー不織布140)が大きな比表面積を有するため、従来よりも大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。

【0063】
[実施形態2]
実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法は、基本的には実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法と同様の構成を有するが、非混和性ポリマー溶液作製工程S10及び複合ナノファイバー不織布作製工程S12の内容が実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法とは異なる。すなわち、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、図10に示すように、複合ナノファイバー不織布作製工程S12において、ケラチンを主成分とする動物組織110から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物114からなるナノ粒子116を実施形態1に係る非混和性ポリマー溶液100に対し分散させた非混和性ポリマー溶液200から複合ナノファイバー不織布を作製する。

【0064】
1.実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法
図10は、実施形態2の非混和性ポリマー溶液作製工程S10を説明するために模式的に示す図である。図11は、実施形態2の各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。図11(a)は非混和性ポリマー溶液作製工程S10で作成された非混和性ポリマー溶液200を模式的に示す図であり、図11(b)は複合ナノファイバー不織布作製工程S12によって作成された複合ナノファイバー126を模式的に示す図であり、図11(c)はカーボンナノファイバー不織布作製工程S14によって作成されたカーボンナノファイバー146を模式的に示す図である。図12は、実施形態のカーボンナノファイバー不織布作製工程S14によって作成されたカーボンナノファイバー146を説明するために模式的に示す図であり、図11(c)において記号Zで示した部分を拡大して模式的に示した図である。図13は、実施形態2において動物組織110(人間の頭髪)から動物組織加工物114(ナノ粒子116)を得る過程を説明するために示す写真である。

【0065】
以下、実施形態1との差分を中心に実施形態2を説明する。
(1)動物組織加工物の分散について
実施形態2では第1ポリマー及び第2ポリマーの他に、動物組織加工物114からなるナノ粒子116も添加して非混和性ポリマー溶液200を作製する。撹拌後には、ナノ粒子116が第1ポリマーを含む不連続相(島)と、及び、第2ポリマーを含む連続相(海)とのそれぞれに分散されるように非混和性ポリマー溶液200を作製する(図10参照。)。
そして、実施形態1と同様に複合ナノファイバー不織布作製工程S12(エレクトロスピニング)を経る。その後、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14(熱処理)においては、第1ポリマー202(島)に分散されたナノ粒子116は燃焼し、燃焼に伴う副生ガスが発生して、これにより第1ポリマー由来のカーボン144の表面又は内部に空孔148を形成させることができる(図11及び図12参照。)。
このように実施形態2では、動物組織由来のナノ粒子116を分散させることで更に微細な空孔148を形成させることができ、より大きな比表面積をもつカーボンナノファイバー不織布140を得ることができる。

【0066】
(2)ヘテロ原子種による効果について
ところで、動物組織由来のナノ粒子116は焼成することにより残炭率の向上及び組成物である窒素、硫黄、リン、ホウ素、酸素等のヘテロ原子種の残留を期待することができる。そこで、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、空孔148の内壁149には、ヘテロ原子種が付着していることが好ましい。空孔148の内壁149にヘテロ原子種を付着させることにより、内壁149ひいてはカーボンナノファイバー146の表面濡れ性を高めることができる。このようなカーボンナノファイバー146を含むカーボンナノファイバー不織布140を電気二重層キャパシタに用いると、高められた表面濡れ性により、電解液を炭素材料の界面により強く導くことができ、疑似容量性挙動を効果的に引き出すことができる。こうして、より高性能な電気二重層キャパシタを得ることができる。

【0067】
(3)人間の頭髪を用いることについて
また、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、動物組織110は、本発明の作用効果を奏するものであれば如何なるものでもよいが、人間の頭髪であることがより好ましい。動物組織110として人間の頭髪を用いれば、理髪店等において大量に発生し、焼却処分等されている人間の頭髪を有効利用することができ、製造コストを低くし、かつ、環境負荷も低減することができる。

【0068】
(4)人間の頭髪を用いた動物組織加工物の作製
以下、図13を参照しながら、動物組織110(人間の頭髪)から動物組織加工物114(ナノ粒子116)を得る過程を説明する。

【0069】
まず、ケラチンを主成分とする動物組織110である人間の頭髪を準備する(図13(a)参照。)。次に、0.2~0.5cm程度の細かさになるように、ハサミを用いて頭髪を切断した中間物質112を得る(図13(b)参照。)。その後、中間物質112をボールミル(図示せず。)に投入してボールミリング法によって粉砕する。粉末化した頭髪を、蒸留水等に浸し、その後クロロホルム等の有機溶剤に頭髪を浸し、その後も洗浄等必要な処理を施しつつ、粉末化した頭髪から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除く。そして、動物組織加工物114を濾過及び遠心分離で採取する。以上のような過程を経て人間の頭髪を用いた動物組織加工物114(ナノ粒子116)(図13(c)参照。)を得ることができる。

【0070】
なお、動物組織加工物114(ナノ粒子116)はできるだけ細かいものが好ましいため、例えば上記ではボールミリング法によって頭髪を粉砕したが、この他に又はこれと併せて、メカニカル・アロイング法によって粉砕してもよい。また、細かい動物組織加工物114(ナノ粒子116)のみを本発明に用いるため、上記過程の最終段階で、更に分離を行い細かい動物組織加工物114(ナノ粒子116)のみを選別するようにしてもよい。

【0071】
2.空孔形成の制御
空孔148の構造及び第1ポリマー由来のカーボン144内の空孔148の分布は、添加するナノ粒子116の構造、寸法、添加量等を調整することにより制御することができる。

【0072】
実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、非混和性ポリマー溶液作製工程S10の段階で準備する動物組織110由来のナノ粒子116の直径は、5nm~100nmの範囲内にあることが好ましい。製造条件に適合するものであればこの範囲に限定されるものではないが、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあるより細かなナノ粒子を用いることで、より細かな空孔を形成することができる。

【0073】
また、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法によって製造されたカーボンナノファイバー不織布は、カーボンナノファイバー不織布140を構成するカーボンナノファイバー146は、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあり、かつ、表面又は内部に平均内径が1nm~60nmの範囲内にある空孔148が存在することが好ましい。

【0074】
また、実施形態2のカーボンナノファイバー不織布は、カーボンナノファイバー不織布140を構成するカーボンナノファイバー146は、平均直径が5nm~100nmの範囲内にあり、かつ、表面又は内部に平均内径が1nm~60nmの範囲内にある空孔148が存在することが好ましい。

【0075】
また、実施形態2のカーボンナノファイバー不織布において、空孔148はカーボンナノファイバー146の外側147の空間と連通していることが好ましい(図12参照。)。空孔が外側の空間と連通していることで(図12で示した連通部Bを参照。)、カーボンナノファイバー146の表面積をより大きくすることができる。

【0076】
なお、工程を追加することにより、実施形態1と同様に、実施形態2によるカーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布を黒鉛化させてカーボンナノファイバーを得ることもできる。

【0077】
3.実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法、カーボンナノファイバー不織布及びカーボンナノファイバーの効果
以上述べたように、実施形態2のカーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布140及び黒鉛化工程S15を経たカーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバー146が極細であることだけでなく、当該カーボンナノファイバー146のそれぞれに動物組織由来のナノ粒子116により形成された空孔148が存在するという特徴も備える。個々のカーボンナノファイバー146の外周側の面積に、更に当該空孔148の面積が加わるため、より大きな比表面積をもつカーボンナノファイバー不織布140となる。このような実施形態2のカーボンナノファイバー不織布又は黒鉛化工程S15を経たカーボンナノファイバーを用いれば、従来よりも更に大きな表面積をもつ炭素材料(電極材料)を実現することができ、より大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。

【0078】
なお、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法、カーボンナノファイバー不織布及びカーボンナノファイバーは、動物組織加工物114からなるナノ粒子116及びそれによる空孔148の構成以外は、実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法、カーボンナノファイバー不織布及びカーボンナノファイバーと同様の構成を有するため、実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法、カーボンナノファイバー不織布及びカーボンナノファイバーが有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。

【0079】
[実験例]
実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法に沿って、カーボンナノファイバー不織布を実際に製造し評価を行った。以下その実験例を説明する。
1.試料の調整
溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)を用いた。
溶質としては、第1ポリマーとしてポリアクリロニトリル(PAN)を、第2ポリマーとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。

【0080】
2.実験装置
容器としてはビーカーを使用した(図示しない。)。非混和性ポリマー溶液作製工程で使用する撹拌装置は、容器内の撹拌子512(図3等参照。)を回転させて撹拌する通常のマグネティック・スターラーを使用した(図示しない。)。
エレクトロスピニング装置としては、図14で示すエレクトロスピニング装置550を使用した。エレクトロスピニング装置550は、ポリマー溶液を収納するタンクに相当するシリンジ552、ノズル554、ドラム型の回転コレクタ558、電源装置560等を備える。
電気炉は、任意にガスが導入でき、時間軸に対して温度を制御できる通常のものを使用した(図示しない。)。

【0081】
3.カーボンナノファイバー不織布の製造
(1)非混和性ポリマー溶液作製工程S10
実施形態1に沿って、容器に準備したDMFに所定の比率(下記)によるPAN及びPMMAを投入し撹拌した。
効果の確認を行うため、PANとPMMAとの混合比率を、10:0(比較例1)、7:3(比較例2)、5:5(比較例3)及び3:7(実施例)の非混和性ポリマー溶液をそれぞれ作製した(表1参照。)。混合比率以外の条件、例えば濃度等については、非混和性ポリマーの粘度、ターゲットとする平均繊維径、エレクトロスピニングの安定性等を考慮して最適化した値を設定した。
【表1】
JP0006519859B2_000002t.gif

【0082】
(2)相状態の観察
上記した4種類の混合比による試料について、非混和性ポリマー溶液作製工程S10を終えた段階の溶液の相状態(海島構造)をそれぞれ観察した。
観察の結果、表2で報告したとおり、混合比率が7:3(比較例2)及び5:5(比較例3)の非混和性ポリマー溶液は、PANを含む相は連続相(海)となりPMMAを含む相は不連続相(島)となった(図15も併せて参照。)。
一方、混合比率が3:7(実施例)とした場合には、図4に示す非混和性ポリマー溶液が観察され、所期の「PANと、PMMAとが溶媒に溶解され、PANを含む相が不連続相(島)となりPMMAを含む相が連続相(海)となる非混和性ポリマー溶液」を好適に得ることができることを確認した。
【表2】
JP0006519859B2_000003t.gif

【0083】
(3)複合ナノファイバー不織布作製工程S12
図14で示すエレクトロスピニング装置550のシリンジ552に溶液を収納し、ノズル554と回転コレクタ558との距離dを15cmと設定し、ノズル554と回転コレクタ558との間に9kVの電圧を印加してエレクトロスピニングを行った。
エレクトロスピニングは、PANとPMMAとの混合比率が互いに異なる4種類の溶液(比較例2~3、実施例では非混和性ポリマー溶液)について実施した。その結果、混合比3:7(実施例)の溶液については図7に示す構造の複合ナノファイバー不織布を得た(比較例1~3に係る不織布の図は本願では特段示さない。)。

【0084】
(4)カーボンナノファイバー不織布作製工程S14
4種類の溶液によるそれぞれの不織布及び複合ナノファイバー不織布について、電気炉に投入し、全ての水準に対して同じ雰囲気ガス、同じ温度プロファイルを用いて焼成を行った。
繊維構造安定化処理工程(いわゆる安定化処理)においては、空気雰囲気中において、昇温速度を毎分1℃とした上で300℃にて1時間焼成した(図16参照。)。熱処理(いわゆる炭化処理)においては、窒素雰囲気中において、昇温速度を毎分5℃とした上で900℃にて1時間焼成した(図17参照。)。

【0085】
4.評価
図18は、比較例3で作成したカーボンナノファイバー不織布を示す図である。図は電界放射型走査電子顕微鏡によって観察した写真である。図19は、実施例及び比較例2のそれぞれにより作製したカーボンナノファイバー不織布を比較説明するために示す図である。図19(a)~(c)は実施例により作製したカーボンナノファイバー不織布を示す図であり、(d)~(f)は比較例2により作製したカーボンナノファイバー不織布を示す図である。図19(a)及び図19(d)は電界放射型走査電子顕微鏡によって観察した写真であり、図19(b)及び図19(e)は透過型電子顕微鏡によって観察した写真である。図19(c)及び図19(f)は模式的に示す図である。

【0086】
カーボンナノファイバー不織布作製工程S14を終えた各試料のカーボンナノファイバー不織布について外観観察を行った。
PANとPMMAとの混合比率が7:3(比較例2)の場合には、カーボンナノファイバー不織布は図19(d)~(f)に示す通りの構造となり、5:5(比較例3)の場合には図18(a)~(d)に示す通りの構造となった。いずれの場合も、カーボンナノファイバー946は、ナノファイバーシェル922に対応する部分が炭化して残留し(942)、その内部に中空状の空孔948が形成された構造となっている。カーボンナノファイバー946の平均直径は約200nmであり、比較的大きい径のファイバーとなった。
一方、PANとPMMAとの混合比率が3:7(実施例)の場合には、図8(a)~(d)及び図19(a)~(c)に示す通りの構造となった。非混和性ポリマー溶液の島部分(PAN)が延伸して形成されたカーボンコアの部分が炭化してカーボンナノファイバー146が形成された。カーボンナノファイバー146の平均直径は5nm~100nmの範囲内にあり、良好に極細に作製された。カーボンナノファイバー不織布140には、上記したカーボンナノファイバー146が数多く含まれることが確認され、従来よりも大きな比表面積をもつカーボンナノファイバー不織布であることを確認した。

【0087】
以上のとおり、PAN及びPMMAの合計重量に対するPANの重量の比率が15%~35%の範囲内、さらに好ましくは30%となる条件で混合して非混和性ポリマー溶液を作製すると、所期の相構造(海島構造)の溶液となり、大きな表面積をもつ優れた極細のカーボンナノファイバーを含むカーボンナノファイバー不織布を得られることが明らかになった。

【0088】
以上、本発明を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形や派生も可能である。

【0089】
(1)上記各実施形態及び各実験例において記載した構成要素等(動物組織、動物組織加工物、金属ナノ粒子等)の大きさ及び形状、用いる試薬、用いる溶媒、反応物及び生成物等は例示又は具体例であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。

【0090】
(2)上記実施形態1~2においては、本発明で得られたカーボンナノファイバー不織布140をそのまま用いて集電体に貼り合せて電極を作製し電気二重層キャパシタを作製する例を示したが、それに限定されるものではない。例えば、得られたカーボンナノファイバー不織布140を、粉砕し、バインダー(接着剤)と混成して、金属の集電体に塗布することにより電気二重層キャパシタを作製することもできる。
このように作成される電気二重層キャパシタは、従来と同様の工程(粉砕、バインダーとの混成及び塗布)は必要になるものの、それに用いられる素のカーボンナノファイバー不織布140が大きな比表面積を有するため、従来よりも大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。

【0091】
(3)上記実施形態2においては、空孔148の内壁149にヘテロ原子種を付着させる方法として、動物組織加工物114によるナノ粒子116を非混和性ポリマー溶液に分散させた上で実施形態2に係る非混和性ポリマー溶液作製工程S10、複合ナノファイバー不織布作製工程S12及びカーボンナノファイバー不織布作製工程S14を実施する方法を述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、何等かの方法で空孔148を形成してカーボンナノファイバー不織布を得た後、何等かの処理方法で別途、空孔148にヘテロ原子種を付着させてよい。このような方法とすることによっても、カーボンナノファイバー146の表面濡れ性を高めることが可能となる。

【0092】
(4)上記実施形態2においては、実施形態1に係る各工程(非混和性ポリマー溶液作製工程S10、複合ナノファイバー不織布作製工程S12、及び、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14)を前提として、動物組織加工物114からなるナノ粒子116を添加する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、背景技術のカーボンナノファイバーや、特許文献1に示す従来技術のカーボンナノファイバーを前提に、動物組織加工物114からなるナノ粒子116を添加することも可能である。添加したナノ粒子116により、カーボンナノファイバーには実施形態2と同様の空孔を多数構成することができるため、背景技術や従来技術よりも比表面積が大きいカーボンナノファイバーを得ることができる。これらを用いれば、従来よりも大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。

【0093】
(5)また、実施形態1~2では本発明のカーボンナノファイバー不織布を適用する製品として、電気二重層キャパシタを例に説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。比表面積の大きなカーボンを必要とする製品であれば、他の製品(例えば、二次電池等の蓄電デバイス、液体・気体等吸着させる応用製品など)にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
100,100a,200,900…非混和性ポリマー溶液、102…第1ポリマー、104…第2ポリマー、106…溶媒、110…動物組織、112…中間物質、114…動物組織加工物、116…ナノ粒子、120…複合ナノファイバー不織布、122…ナノファイバーシェル、124…ナノファイバーコア、126,926…複合ナノファイバー、140…カーボンナノファイバー不織布、144…第1ポリマー由来のカーボン、146,946…カーボンナノファイバー、147…カーボンナノファイバーの外側、148,948…空孔、B…連通部、149…内壁、202…ナノ粒子116が分散された第1ポリマー、204…ナノ粒子116が分散された第2ポリマー、510…容器、512…撹拌子、520,550…エレクトロスピニング装置、d…距離、522…タンク、524,554…ノズル、526…流通パイプ、528…コレクタ、530,560…電源装置、552…シリンジ、558…回転コレクタ、590…ピンセット、800…電気二重層キャパシタ、810…電極表面、812…電極、815…炭素材料、820…電解液、920…複合ナノファイバー不織布、922…ナノファイバーシェル、924…ナノファイバーコア、940…カーボンナノファイバー不織布、942…カーボン
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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