TOP > 国内特許検索 > 固体電解質を用いる電気化学デバイスの製造方法及び電気化学デバイス > 明細書

明細書 :固体電解質を用いる電気化学デバイスの製造方法及び電気化学デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6253149号 (P6253149)
公開番号 特開2015-213007 (P2015-213007A)
登録日 平成29年12月8日(2017.12.8)
発行日 平成29年12月27日(2017.12.27)
公開日 平成27年11月26日(2015.11.26)
発明の名称または考案の名称 固体電解質を用いる電気化学デバイスの製造方法及び電気化学デバイス
国際特許分類 H01M  10/0585      (2010.01)
H01M  10/0562      (2010.01)
H01M  10/0565      (2010.01)
H01M   6/18        (2006.01)
H01G  11/56        (2013.01)
H01G  11/84        (2013.01)
FI H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 10/0565
H01M 6/18 E
H01M 6/18 Z
H01G 11/56
H01G 11/84
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2014-094796 (P2014-094796)
出願日 平成26年5月1日(2014.5.1)
審査請求日 平成28年12月2日(2016.12.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】堤 宏守
【氏名】中野 陽平
【氏名】紫垣 菜穂
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査官 【審査官】宮田 透
参考文献・文献 特表2010-500718(JP,A)
特開2006-019298(JP,A)
特開2002-313422(JP,A)
特開2014-041817(JP,A)
調査した分野 H01M 10/05-10/0587
H01M 6/00- 6/22
H01G 11/00-11/84
H01M 8/00- 8/24
H01M 2/14- 2/18
H01B 1/00- 1/24
特許請求の範囲 【請求項1】
正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスの製造方法であって、前記固体電解質が高分子化合物と電解質塩とを含む電解質(ただし、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化したゲル電解質を除く)であり、前記電解質層として固体電解質膜を用い、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記固体電解質膜との間に、高分子化合物と電解質塩とを含む繊維状のポリマー電解質(ただし、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化したゲル電解質を除く)を配置し、前記正極、負極、固体電解質膜及び繊維状のポリマー電解質を加圧して積層することを特徴とする電気化学デバイスの製造方法。
【請求項2】
繊維状のポリマー電解質の平均直径が0.05~1.0μmであることを特徴とする請求項1記載の電気化学デバイスの製造方法。
【請求項3】
繊維状のポリマー電解質が、不織布を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学デバイスの製造方法。
【請求項4】
正極、負極及び電解質層として固体電解質膜を備え、前記固体電解質が高分子化合物と電解質塩とを含む固体電解質(ただし、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化したゲル電解質を除く)である電気化学デバイスにおける電極と電解質層との間の電気特性向上方法であって、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記固体電解質膜との間に、高分子化合物と電解質塩とを含む繊維状のポリマー電解質(ただし、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化したゲル電解質を除く)を配置し、加圧することを特徴とする電極と電解質層との間の電気特性向上方法。
【請求項5】
正極、負極及び電解質層として固体電解質膜を備える電気化学デバイスであって、前記固体電解質が高分子化合物と電解質塩とを含む固体電解質(ただし、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化したゲル電解質を除く)であり、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記固体電解質膜との間に、高分子化合物と電解質塩とを含む繊維状のポリマー電解質(ただし、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化したゲル電解質を除く)を備え、前記正極、負極、固体電解質膜及び繊維状のポリマー電解質が加圧されて積層されたことを特徴とする電気化学デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスにおける電気化学デバイスの製造方法、電極と電解質層との間の電気特性向上方法及び電気化学デバイスに関し、電極と電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置する電気化学デバイスの製造方法、電極と電解質層との間の電気特性向上方法及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電池やキャパシタ等の電気化学デバイスに用いられる電解質としては、従来、溶媒に電解質塩を溶解した電解液が用いられている。しかし、電解液は、液状であるため液漏れの問題があり、液漏れを防ぐために電池の外装を強固にする必要があった。また、電解液には、溶媒によって水溶液系と非水溶液系があるが、水溶液系電解液は、高い電圧をかけると水素と酸素に分解してしまうため高電圧の電池には使用できず、非水溶液系電解液は、有機溶媒が用いられ可燃性であるため、発火や引火の危険がある。近年、電気化学デバイスの大型化、高性能化に伴い、液漏れの防止、発火や引火に対する安全性の確保、充放電に伴う溶媒の分解防止が更に必要となってきている。例えば、高い電圧が得られ、エネルギー密度が大きいことから、開発が進められているリチウムイオン電池では、リチウムが水と反応してしまうため、また高い電圧で使用するために非水溶液系電解液が用いられるが、自動車用途等では、電池の作動条件が過酷となり、大型化に伴い電解液の使用量が増大するため、更に信頼性や安全性を高める必要がある。
【0003】
そこで、液漏れの心配がなく、成形性にもすぐれる有機系又は無機系の固体電解質の開発、及び固体電解質を用いた電気化学デバイスの開発が行われている。しかし、電解質として電解液を用いた場合には、電極上の活物質と良好な界面が形成され、また活物質層の内部へも電解液が浸透するため、電極上の活物質と電解質との間で良好なイオン伝導性が得られるが、固体電解質を用いた場合は、電極上の活物質と電解質の両方が固体であるため、両者を接触させるだけでは、イオン伝導性が低下し電池としての特性が低下するとの問題があった。この問題を解決するための手段として、電極層と固体電解質層とを積層して、加熱押圧する方法が提案されているが(特許文献1)、加熱押圧しても十分な改善効果はみられず、また有機系の固体電解質を用いる場合には高温での加熱はできない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2011-142007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記問題を解決し、正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスにおいて、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を向上させた電気化学デバイスの製造方法、前記電気化学デバイスにおいて、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を向上させる電気特性の向上方法、及び前記電気化学デバイスであって、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性が向上した電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、電気化学デバイスにおいて、電解質として固体電解質を用いる場合について、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を改善するための検討を開始し、電極への電解質層の押圧状態を変化させたが、改善効果はみられなかった。そこで、更に検討をすすめたところ、ポリマー電解質を繊維状として、電極と固体電解質からなる電解質層との間に配置し積層すると、繊維状のポリマー電解質を介して電極と電解質層との間の密着性が向上し、電極と電解質層との間の電気特性が著しく向上することを見いだした。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスの製造方法であって、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置し、前記正極、負極、電解質層及び繊維状のポリマー電解質を積層することを特徴とする電気化学デバイスの製造方法。
(2)繊維状のポリマー電解質の平均直径が0.05~1.0μmであることを特徴とする上記(1)記載の電気化学デバイスの製造方法。
(3)正極及び負極の少なくとも一方と、繊維状のポリマー電解質と、固体電解質膜とを重ね、加圧して積層することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の電気化学デバイスの製造方法。
(4)繊維状のポリマー電解質が、不織布を形成していることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の電気化学デバイスの製造方法。
(5)正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスにおける電極と電解質層との間の電気特性向上方法であって、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置することを特徴とする電極と電解質層との間の電気特性向上方法。
(6)正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスであって、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を備えることを特徴とする電気化学デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気化学デバイスの製造方法は、正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスにおいて、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性に優れる電気化学デバイスを製造することができる。また、本発明の電極と電解質層との間の電気特性向上方法は、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を向上させることができ、本発明の電気化学デバイスは、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性に優れた電気化学デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例で作製された繊維状のポリマー電解質の観察写真である。
【図2】実施例で作製された固体電解質層/繊維状ポリマー電解質/電極の界面の断面観察写真である。
【図3】比較例で作製された固体電解質層/電極の界面の断面観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電気化学デバイスの製造方法は、正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスの製造方法であって、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置し、前記正極、負極、電解質層及び繊維状のポリマー電解質を積層することを特徴とする。本発明における電気化学デバイスは、正極、負極及び電解質層を少なくとも備えた電気化学デバイスであり、例えば、一次電池、二次電池、キャパシタを含む。本発明における固体電解質としては、電気化学デバイスに用いられる固体電解質であれば特に制限されず、有機系のポリマー電解質でも無機系の無機固体電解質でもよく、これらを混合又は複合化したものでもよい。ポリマー電解質は、塩の解離に有利な極性基を有する高分子化合物と電解質塩とを含む電解質であり、前記高分子化合物としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系、ポリプロピレンオキシド(PPO)系、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリシロキサン系、ポリフォスファゼン系の高分子化合物等を挙げることができる。また、前記高分子化合物として、シアノ基含有ポリビニルアルコール、シアノ基含有ポリオキセタン等を挙げることができる。前記電解質塩としては、特に限定されず、例えば、1価又は2価の金属塩を挙げることができ、前記1価又は2価の金属塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFCFSON、LiB(C、LiPF(CFCF、LiTFSA(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、LiFSI(リチウムビスフルオロスルホニルイミド)等のリチウム塩、NaTFSA(ナトリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)、NaFSI(ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド)等のナトリウム塩、Mg(ClO、Mg(CFSO等のマグネシウム塩などを挙げることができる。前記電解質塩は、一般にポリマー電解質中にポリマー電解質全質量(なお後述する補強材は含めない)に対して10~90質量%程度混合され、好ましくは、30~70質量%混合される。10質量%未満では十分な伝導性や高負荷充放電性を得ることが難しく、また、100質量%を超えて多量の無機塩類を混合することは困難であり、全体が硬く且つ脆くなり成形性が低下する。ポリマー電解質は、成形性や形の維持力を高めるために補強材として他の高分子化合物を混合してもよい。前記補強材としての他の高分子化合物としては、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFPと略す)、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルの重合体、アクリル酸又はメタアクリル酸の重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドなどの極性基を持つ重合体が使用できるが、特にPVDF-HFPが耐久性があるため好ましい。一般にポリマー電解質における前記高分子化合物に対し、前記補強材としての他の高分子化合物は、200質量%程度まで混合できる。補強材の混合割合が少ないと形の維持力を高める効果が少なく、200質量%を超えて大量に混合すれば強度は向上するが、伝導性は低下する。そこで、一般に50~120質量%程度を目安として、適宜目的に応じて混合割合を決めればよい。


【0011】
上記ポリマー電解質は、溶媒を含まない電解質であり、真性ポリマー電解質又はドライポリマー電解質ともいわれる。本発明の電気化学デバイスの製造方法は、上記ポリマー電解質及び後述する無機固体電解質の場合に、特に電極と電解質層との間の電気特性の向上効果を有するが、本発明における固体電解質としては、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化したゲル電解質も含む。ゲル電解質としては、特に限定されず、例えば、ポリマーとして上記ポリマー電解質において挙げた高分子化合物や、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート等を用いることができ、電解液としては、例えば、上記ポリマー電解質において挙げた電解質塩を、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ジメトキシエタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の非水溶液溶媒に溶解したものを用いることができる。無機固体電解質としては、特に制限されず、例えば、LiPON(リン酸リチウムオキシナイトライド)、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO、La0.51Li0.34TiO0.74、LiPO、LiSiO、LiSiO等の酸化物固体電解質、LiS-P、LiS-P、LiS-SiS、LiS-B、LiI-LiS-SiS-P等の硫化物固体電解質などを挙げることができる。

【0012】
本発明における繊維状のポリマー電解質は、繊維形状をしたポリマー電解質であれば特に制限されず、上記固体電解質においてポリマー電解質として挙げたポリマー電解質を用いることができる。本発明における繊維状のポリマー電解質は、繊維状のポリマー電解質を介して電極と電解質層との間の密着性を向上させ、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を向上させる観点から、繊維の平均直径が0.05~1.0μmであることが好ましく、0.1~0.5μmであることがより好ましい。かかる繊維状のポリマー電解質の平均直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により、繊維状のポリマー電解質の直径を測定して平均することにより求めることができる。また、繊維状のポリマー電解質の平均直径は、繊維状のポリマー電解質を介して電極と電解質層との間の密着性を向上させ、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を向上させる観点から、電極表面の活物質粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。繊維状のポリマー電解質の長さは、特に制限されず、取り扱いのしやすさや、電極や電解質層の大きさや形状を考慮して適宜定めることができる。本発明における繊維状のポリマー電解質は、シート状を形成していてもよく、不織布を形成していることが好ましい。繊維状のポリマー電解質が不織布を形成していると、電極と電解質層との間に均一に繊維状のポリマー電解質を配置することができ、さらに電極及び電解質層と積層するときの取り扱いも容易となり、積層時に圧力を均一にかけることが容易となる。また、本発明における繊維状のポリマー電解質は、繊維状のポリマー電解質を介して電極と電解質層との間の密着性を向上させ、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を向上させる観点から、電解質層における固体電解質がポリマー電解質の場合は、電解質層と同じポリマー電解質を用いることが好ましい。

【0013】
本発明における正極及び負極としては、電気化学デバイスに用いられる正極及び負極であれば特に制限されない。電気化学デバイスに用いられる正極や負極は、一般的に、活物質に導電助剤やバインダ等を加えてペーストとしたものを、Al、Ni、ステンレス等の集電体に塗付して作製される。かかる正極や負極としては、例えば、リチウム一次電池では、正極活物質として、フッ化黒鉛、二酸化マンガン、塩化チオニル、硫化鉄、酸化銅等を挙げることができ、負極活物質として、金属リチウムを挙げることができる。リチウムイオン電池では、例えば、正極活物質として、LixMO又はLiyM(但し、Mは遷移金属、Xは0~1の数、yは0~2の数)、具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)等を挙げることができ、また、鉄リン酸リチウム(LiFePO)、マンガンリン酸リチウム(LiMnPO)、LiFeSiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05等を挙げることができる。また、他の二次電池の正極活物質として、例えば、S、MnO、FeO、FeS、V、V13、TiO、TiS、MoS、NbSe、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール等を挙げることができる。これらの二次電池の負極活物質として、アモルファスカーボン、グラファイト、熱分解炭素、コークス、グラッシーカーボン、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック等の炭素系材料、チタン酸リチウム(LiTi12)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオビウム(Nb)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物系材料などを挙げることができる。上記正極活物質や負極活物質の平均粒子径は、一般に0.1μm~100μm、好ましくは1μm~10μmである。また、電気二重層キャパシタの正極及び負極は、例えば、活性炭等に導電助剤やバインダを加えてペーストとしたものを、アルミ箔等の集電体に塗布したものを挙げることができる


【0014】
本発明の電気化学デバイスの製造方法では、正極及び負極の少なくとも一方と、電解質として固体電解質を用いる電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置し、前記正極、負極、電解質層及び繊維状のポリマー電解質を積層することにより電気化学デバイスを製造する。本発明における積層の方法としては、特に制限されないが、例えば、正極上に繊維状のポリマー電解質を均一に配置し、別途に作製した固体電解質膜をその上に重ねて加圧する方法で、正極、繊維状のポリマー電解質及び電解質層を積層することができ、さらに負極を重ねて積層することにより電気化学デバイスを製造することができる。必要に応じて負極を重ねて積層する際に、加圧してもよい。また、逆に負極上に繊維状のポリマー電解質を均一に配置し、別途に作製した固体電解質膜をその上に重ねて加圧する方法で、負極、繊維状のポリマー電解質及び電解質層を積層することができ、さらに正極を重ねて積層することもできる。必要に応じて正極を重ねて積層する際に、加圧してもよい。また、正極又は負極上に繊維状のポリマー電解質を均一に配置し、別途に作製した固体電解質膜をその上に重ね、重ねた固体電解質膜上に繊維状のポリマー電解質を均一に配置し、その上に負極又は正極を重ねて加圧することにより電気化学デバイスを製造することもできる。上記の積層方法で、繊維状のポリマー電解質を均一に配置する方法として、繊維状のポリマー電解質で予め不織布を形成して、正極又は負極上や固体電解質膜上に配置し、正極及び負極の少なくとも一方と、繊維状のポリマー電解質から形成された不織布と、固体電解質膜とを重ね、加圧して積層することができる。加圧するときの圧力や加圧時間は、電極上の活物質層を破壊しない程度に、電極、繊維状のポリマー電解質、電解質層が密着するように、圧着の程度を考慮しながら適宜調整して加えればよい。本発明の電気化学デバイスの製造方法においては、必要があれば、セパレータ等の他の部材を積層してもよい。本発明における繊維状のポリマー電解質の製造方法は、特に制限されないが、例えば、電界紡糸法により作製することができる。電界紡糸法は、繊維状のポリマー電解質から不織布を直接作製できるため好ましい。また、上記固体電解質膜は、固体電解質がポリマー電解質の場合、例えば、ポリマー電解質を溶媒に溶かしキャスト法等により作製することができる。

【0015】
本発明の電極と電解質層との間の電気特性向上方法は、正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスにおける電極と電解質層との間の電気特性向上方法であって、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置することを特徴とする。本発明の電気特性向上方法で用いる繊維状のポリマー電解質は、上記電気化学デバイスの製造方法における繊維状のポリマー電解質と同じ繊維状のポリマー電解質を用いることができる。また、本発明の電気特性向上方法における、正極及び負極の少なくとも一方と電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置する方法は、特に制限されるものではなく、上記電気化学デバイスの製造方法と同様の方法で行うことができ、上記電気化学デバイスの製造方法と同様の電気化学デバイス、電極及び固体電解質層を対象とすることができる。繊維状のポリマー電解質として、繊維状のポリマー電解質から形成された不織布を用いると、電極と電解質層との間に均一に繊維状のポリマー電解質を配置することができ、さらに電極及び電解質層と積層するときの取り扱いも容易となり、積層時に圧力をかける場合、均一な加圧が容易となるため好ましい。本発明の電気特性向上方法は、繊維状のポリマー電解質を介して電極と電解質層との間の密着性を向上させることができ、電極と電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性を向上させることができる。本発明の電気化学デバイスは、正極、負極及び電解質層を備え、前記電解質層の電解質として固体電解質を用いる電気化学デバイスであって、前記正極及び負極の少なくとも一方と前記電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を備えることを特徴とする。本発明の電気化学デバイスは、電極と電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を備えるため、電極と固体電解質を用いた電解質層との間のイオン伝導性等の電気的特性に優れる。本発明の電気化学デバイスにおいて、電気化学デバイス、電極及び固体電解質層の種類は特に制限されるものではないが、例えば、上記電気化学デバイスの製造方法と同様の電気化学デバイス、電極及び固体電解質層とすることができる。本発明の電気化学デバイスにおける繊維状のポリマー電解質は、上記電気化学デバイスの製造方法における繊維状のポリマー電解質と同じ繊維状のポリマー電解質を用いることができ、本発明の電気化学デバイスは、例えば、上記本発明の電気化学デバイスの製造方法により製造することができる。また、本発明の電気化学デバイスは、正極、負極及び電解質層並びに繊維状のポリマー電解質を少なくとも備えていればよく、例えば、セパレータ等の他の部材を備えていてもよい。
【実施例】
【0016】
[ポリマー電解質の合成]
200mLのナスフラスコに3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン(EHO)を23.23g(0.199mol)、アクリロニトリル(AN)を27.21mL(0.415mol)、さらにイオン交換水を10mL加え攪拌した。その後、20%テトラエチルアンモニウム=ヒドロキシド溶液2.6mLを加え、室温で18時間攪拌させながら反応させた。次に、ジエチルエーテル100mL、イオン交換水50mLを加え分液漏斗を用いて抽出した。その後、硫酸マグネシウムを用いて脱水処理を行い、得られた有機層をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒除去を行った。そして、得られた液体を減圧蒸留(沸点113℃/1mmHg)により精製し、無色の液体(シアノ基含有オキセタンモノマー:CEO)を得た。50mLのナスフラスコに、得られたCEOを8.00g(47.2mmol)、ジクロロメタンを8mL加えた。次に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を0.198mL(1.57mmol)加え、アルゴン雰囲気下、30℃で1時間攪拌し、ゲル状の固体を得た。これにメタノールを1mL加え、反応を停止させた。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で溶媒を除去した。その後、良溶媒としてジクロロメタン、貧溶媒としてエタノールを加えて5回再沈殿した。再沈殿後、19時間減圧乾燥を行い、シアノ基含有ポリオキセタン(PCEO)を回収した。
【実施例】
【0017】
[繊維状ポリマー電解質の調製]
サンプル管に上記で得られたPCEOを0.0930g、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロポリプロピレン(PVdF-HFP)を0.0928g、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニド)イミド(LiTFSA)を0.0663g、アセトンを1.4mL、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を0.6mL加え、PCEOとPVdF-HFPを合わせて10wt%となる紡糸溶液を調製し、22時間攪拌した。紡糸条件は、流速1.0mL/h、印加電圧12kV、紡糸間距離10cmでステンレス板上に電界紡糸した。前記電界紡糸により、膜厚が0.014mmの不織布が得られた。調製した繊維状ポリマー電解質(不織布)の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)JSM-7600F(日本電子(株))により観察した結果を図1に示す。平均直径が0.44μmの繊維からなる不織布が形成されていた。
【実施例】
【0018】
[固体電解質層の調製]
サンプル管に上記で得られたPCEOを0.0506g、PVdF-HFPを0.0502g、LiTFSAを0.0354g、アセトンを2mL加え、2時間攪拌させながら溶解した。この溶液をテフロン(登録商標)板にキャストした後、80℃で22時間減圧下乾燥を行うことで膜厚が0.12mmの膜を調製した。
【実施例】
【0019】
[固体電解質層/繊維状ポリマー電解質/電極の作製]
アルミ箔上に活物質としてLiCoOが塗工されLiCoO層が形成された電極(パイオトレック社製)(0.5cm×0.5cm)に、上記で作製した繊維状ポリマー電解質からなる不織布(0.5cm×0.5cm)、固体電解質層(0.5cm×0.5cm)を積層し、ハンドプレスSSP-10A(島津製作所(株))を用いて800MPaで圧着させた。
【実施例】
【0020】
[界面インピーダンス測定]
交流インピーダンス法により、上記で作製した固体電解質層/繊維状ポリマー電解質/電極の界面インピーダンスを、Ar雰囲気下、60℃で測定した。なお、測定装置にはCHEMICAL IMPEDANCE METER(日置電気(株)3532-80)を使用し、以下の測定条件で測定した。
(測定条件)
測定周波数:4Hz~1MHz、印加電圧:0.100V、リミット:Off、測定レンジ:Auto,Hold、オーブン補正:All、ショート補正:All、トリガーモード:INT、トリガーディレイ:0.1s、積分回数:64、測定スピード:NORMAL
[断面の観察]
集束イオンビーム(FIB)により、上記で作製した固体電解質層/繊維状ポリマー電解質/電極の界面の断面を観察した。観察した結果を図2に示す。
【実施例】
【0021】
[比較例]
実施例で用いたのと同じ、アルミ箔上に活物質としてLiCoOが塗工されLiCoO層が形成された電極(パイオトレック社製)(0.5cm×0.5cm)に、固体電解質層(0.5cm×0.5cm)を積層し、ハンドプレスSSP-10A(島津製作所(株))を用いて800MPaで圧着させ、実施例と同様に界面インピーダンス測定を行った。また、実施例と同様に、集束イオンビーム(FIB)により、上記で作製した固体電解質層/電極の界面の断面を観察した。観察した結果を図3に示す。
【実施例】
【0022】
実施例と比較例での測定結果を表1に示す。繊維状のポリマー電解質を固体電解質と電極の間に備えた実施例では、比較例に比べて、界面インピーダンスが約4分の1となり、電極と固体電解質層との間のイオン伝導性等の電気特性が向上し、電極と固体電解質との間に十分な電気的な接続が得られたことが分かる。また、図3では、界面に隙間が見られたのに対し、図2では界面に隙間が見られなかった。このことから、電極と固体電解質層との間に繊維状のポリマー電解質を配置した実施例では、繊維状のポリマー電解質を介して電極と固体電解質層との間の密着性に優れ、良好な界面を形成できたことが分かる。
【実施例】
【0023】
【表1】
JP0006253149B2_000002t.gif

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の電気化学デバイスの製造方法は、一次電池、二次電池、キャパシタ等に好適な、固体電解質を用いた電気化学デバイスの製造に用いることができる。また、本発明の電気特性向上方法は、一次電池、二次電池、キャパシタ等に好適な、固体電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、電極と電解質層との間の電気特性を向上させるのに用いることができる。本発明の電気化学デバイスは、一次電池、二次電池、キャパシタ等に好適な、固体電解質を用いた電気化学デバイスとして用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2