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明細書 :IgY特異的結合ペプチド及びそれによるIgYの精製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6245688号 (P6245688)
公開番号 特開2015-073488 (P2015-073488A)
登録日 平成29年11月24日(2017.11.24)
発行日 平成29年12月13日(2017.12.13)
公開日 平成27年4月20日(2015.4.20)
発明の名称または考案の名称 IgY特異的結合ペプチド及びそれによるIgYの精製法
国際特許分類 C07K   7/08        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K  17/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07K  16/00        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/531       (2006.01)
FI C07K 7/08 ZNA
C07K 19/00
C07K 17/00
C12N 15/00 A
C07K 16/00
G01N 33/53 N
G01N 33/53 D
G01N 33/531 A
請求項の数または発明の数 16
全頁数 16
出願番号 特願2013-212343 (P2013-212343)
出願日 平成25年10月9日(2013.10.9)
審査請求日 平成28年7月6日(2016.7.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 祐二
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】藤澤 雅樹
参考文献・文献 国際公開第01/083515(WO,A1)
米国特許出願公開第2006/0223986(US,A1)
国際公開第2013/027796(WO,A1)
国際公開第2013/081037(WO,A1)
Biochimica et Biophysica Acta,2011年,Vol.1814,pp.889-899
Biotechnol. Lett.,2013年 5月21日,Vol.35,pp.1441-1447
Journal of Immunological Methods,2012年,Vol.380,pp.73-76
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2012年12月14日,Vol.287, No. 51,pp.43126-43136
Peptide Science 2013,The Japanese Peptide Society,2014年 3月,pp.419-420
IMAMURA, A., et al.,Identification of Chicken IgY-Specific Binding Peptide from Random Peptide Library and its Application for IgY Affinity Purification,第4回アジア-太平洋国際ペプチドシンポジウム 第50回ペプチド討論会 APIPS2013講演要旨集,日本ペプチド学会,2013年10月10日,p.276
Veterinary Microbiology (2001) Vol.81, pp.165-179
J. Biol. Chem. (2009) Vol.284, No.15, pp.9986-9993
調査した分野 C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
医中誌WEB
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(I):
(X1-3)-C-(X5)-W-(X7-11)-W-(X13)-C-(X15-17) (I)
(式中、X1-3が、N末端側からC末端側へのアミノ酸配列GVK、GTR、RCV、WIR、EWS、GTS、ATT、VNV及びGTWからなる群から選択され
Cはシステイン残基であり、
X5は、T、D、V、S又はEのアミノ酸残基であり、
Wは、トリプトファン残基であり、
X7-11は、N末端側からC末端側へのアミノ酸配列SSIVD、SAAYG、TAVTG、TKVTG、RKTTG、NRGRG、TRGSG、RSGRG及びRRTSGからなる群から選択され
X13は、V、L、D、S、M、T又はRのアミノ酸残基であり、並びに、
X15-17は、N末端側からC末端側へのアミノ酸配列VDM、YDY、RND、FAS、DRD、NTP、YSV、SKS及びGIGからなる群から選択される)によって表される、17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、4位のシステイン残基と14位のシステイン残基との間でジスルフィド結合を形成しており、並びに、トリIgYと結合可能であることを特徴とするペプチド。
【請求項2】
上記のX1-3が、N末端側からC末端側へのアミノ酸配列GVK、GTR及びRCVからなる群から選択されることを特徴とする、請求項に記載のペプチド。
【請求項3】
上記のX15-17は、N末端側からC末端側へのアミノ酸配列VDM、YDY及びRNDからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
上記のX5は、T、D又はVであることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
上記のX7-11は、N末端側からC末端側へのアミノ酸配列SSIVD、SAAYG、TAVTG及びTKVTGからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
上記のX13は、V、L又はDのアミノ酸残基であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項7】
以下のいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド。
GVKCTWSSIVDWVCVDM(配列番号1)
GTRCDWSAAYGWLCYDY(配列番号2)
RCVCVWTAVTGWDCRND(配列番号3)
WIRCDWTKVTGWVCFAS (配列番号4)
EWSCVWRKTTGWSCDRD (配列番号5)
GTSCSWNRGRGWMCNTP (配列番号6)
ATTCTWTRGSGWSCYSV (配列番号7)
VNVCEWRSGRGWTCSKS (配列番号8)
GTWCTWRRTSGWRCGIG (配列番号9)
【請求項8】
以下のいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする、請求項7に記載のペプチド。
GVKCTWSSIVDWVCVDM(配列番号1)
GTRCDWSAAYGWLCYDY(配列番号2)
RCVCVWTAVTGWDCRND(配列番号3)
【請求項9】
標識が結合されている、請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチドと連結されたタンパク質からなる融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチドを固相に結合してなる固定化ペプチド。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項11に記載の固定化ペプチドをトリIgYと結合させること、並びに、結合したIgYを遊離させてIgYを回収することを含む、トリIgYの精製方法。
【請求項14】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項11に記載の固定化ペプチドにサンプル中のトリIgYを結合させ、結合したIgYを検出することを含む、トリIgYの検出方法。
【請求項15】
請求項1~のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項11に記載の固定化ペプチドの少なくとも1種を含む、トリIgYの分析又は精製のためのキット。
【請求項16】
請求項11に記載の固定化ペプチドを含有する、トリIgY分離用カラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、IgY特異的結合ペプチドに関する。
本発明はまた、該ペプチドによるIgYの精製法を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床診断や研究用の試薬としての抗体は、マウスのモノクローナル抗体やウサギのポリクローナル抗体が多く使われており、大きな市場を持っている。一方、ニワトリのIgY抗体は、免疫による特異抗体作製方法の確立とともに、試験動物としてのコストの安さ、動物抗体との交差反応の低さに加え、卵黄から非侵襲的にIgYの抗体が精製できることがメリットとして注目され、試薬としての新しい抗体として期待されている。
【0003】
卵黄からのIgYの精製法として、いくつかの方法が報告されてきた(非特許文献1)。卵黄には、不溶性のリン脂質やリポプロテインが多く含まれており、これらがアフィニティ精製の際の障害となるため、これをPEG、Pectinなどを使った沈殿法によって除くプロトコールが報告されている(非特許文献2)。市販のIgY精製キットも同様な原理を用いたものであり、現在、主なもので、Eggcellent (Thermo Pierce) と EGGstract (Promega)がよく使われている。最近、Sock Hwee Tanらは、plant gums pectinとκ-carrageenanを用いた沈殿法で、市販のものとも、純度や収量で劣らない精製プロトコールを報告した(非特許文献3)。しかし、このような方法においても、精製されるIgYの純度は50~80%程度であり、より高精製度のIgYの調製には、アフィニティカラムの使用が不可欠である。
【0004】
しかしながら、例えば、ヒトIgGにおけるプロテインAのような、IgYを精製するための特異的なリガンドは、報告されておらず、精製用の合成リガンドが報告されているものの(非特許文献4、あるいはGE Healthcare社の2-mercaptopyridine固定化カラム:HiTrap IgY Purification HP)、精製されたIgY抗体の純度の観点からは、不十分(70%程度)と言わざるを得ない。
【0005】
本発明者らは、これまで、T7ファージディスプレイシステムによって構築したランダムペプチドライブラリを用いて、ヒトIgGやヒトIgAに特異的に結合するペプチドを単離し、そのペプチドを固定化したアフィニティカラムを使った抗体の精製法を報告してきた(特許文献1、2)。
しかし、IgY結合ペプチドについては、これまで十分な報告がなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開WO2008/054030
【特許文献2】国際公開WO2011/148952
【0007】

【非特許文献1】Hatta, H., Kim, M., and Yamamoto, T. (1990) A novel isolation method for hen egg yolk antibody, "IgY". Agricultural and Biological Chemistry 54, 2531-2535
【非特許文献2】Ko, K. Y., and Ahn, D. U. (2007) Preparation of immunoglobulin Y from egg yolk using ammonium sulfate precipitation and ion exchange chromatography. Poultry Science 86, 400-407
【非特許文献3】Tan, S. H., Mohamedali, A., Kapur, A., Lukjanenko, L., and Baker, M. S. (2012) A novel, cost-effective and efficient chicken egg IgY purification procedure. Journal of Immunological Methods 380, 73-76
【非特許文献4】Fassina, G., Verdoliva, A., Palombo, G., Ruvo, M., and Cassani, G. (1998) Immunoglobulin specificity of TG19318: a novel synthetic lIgYnd for antibody affinity purification. Journal of molecular recognition : JMR 11, 128-133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ランダムペプチドライブラリを用いて、IgYに対するバイオパンニングによって得られたクローンから、IgYに特異的に結合するペプチドを見出すことを目的とする。
本発明はまた、このペプチドを用いたIgYの精製法を構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の特徴を包含する。
(1) 下記の式(I):
(X1-3)-C-(X5)-W-(X7-11)-W-(X13)-C-(X15-17) (I)
(式中、X1-3のうちX1とX3は、独立に、システイン残基以外の任意のアミノ酸残基であり、X2は、システイン残基であってもよい任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
X5は、T、D、V、S又はEのアミノ酸残基であり、
Wは、トリプトファン残基であり、
X7-11は、アミノ酸配列(S、T、R又はN)-(S、A、K又はR)-(I、A、V、T又はG)-(V、Y、T、R又はS)-(G又はD)であり、
X13は、V、L、D、S、M、T又はRのアミノ酸残基であり、並びに、
X15-17の3個のアミノ酸残基は、独立に、システイン残基以外の任意のアミノ酸残基である)
によって表される、17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、4位のシステイン残基と14位のシステイン残基との間でジスルフィド結合を形成しており、並びに、トリIgYと結合可能であることを特徴とするペプチド。
(2) 上記のX1-3は、アミノ酸配列(G、R、W、E、A又はV)-(V、T、C、I、W又はN)-(K、R、V、S、T又はW)であることを特徴とする、(1)に記載のペプチド。
(3) 上記のX1-3が、アミノ酸配列GVK、GTR、RCV、WIR、EWS、GTS、ATT、VNV又はGTWからなる群から選択されることを特徴とする、(2)に記載のペプチド。
(4) 上記のX15-17は、アミノ酸配列(V、Y、R、F、D、N、S又はG)-(D、N、A、R、T、S、K又はI)-(M、Y、D、S、P、V又はG)であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載のペプチド。
(5) 上記のX15-17は、アミノ酸配列VDM、YDY、RND、FAS、DRD、NTP、YSV、SKS又はGIGからなる群から選択されることを特徴とする、(4)に記載のペプチド。
(6) 上記のX5は、T、D又はVであることを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載のペプチド。
(7) 上記のX7-11は、アミノ酸配列SSIVD、SAAYG、TAVTG、TKVTG、RKTTG、NRGRG、TRGSG、RSGRG又はRRTSGからなる群から選択されることを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載のペプチド。
(8) 上記のX13は、V、S又はRであることを特徴とする、(1)~(7)のいずれかに記載のペプチド。
(9) 以下のいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする、(1)~(8)のいずれかに記載のペプチド。
GVKCTWSSIVDWVCVDM(配列番号1)
GTRCDWSAAYGWLCYDY(配列番号2)
RCVCVWTAVTGWDCRND(配列番号3)
WIRCDWTKVTGWVCFAS (配列番号4)
EWSCVWRKTTGWSCDRD (配列番号5)
GTSCSWNRGRGWMCNTP (配列番号6)
ATTCTWTRGSGWSCYSV (配列番号7)
VNVCEWRSGRGWTCSKS (配列番号8)
GTWCTWRRTSGWRCGIG (配列番号9)
(10) 標識が結合されている、(1)~(9)のいずれかに記載のペプチド。
(11) (1)~(9)のいずれかに記載のペプチドと連結されたタンパク質からなる融合タンパク質。
(12) (1)~(9)のいずれかに記載のペプチドを固相に結合してなる固定化ペプチド。
(13) (1)~(9)のいずれかに記載のペプチドをコードする核酸。
(14) (1)~(9)のいずれかに記載のペプチド又は(12)に記載の固定化ペプチドをIgYと結合させること、並びに、結合したIgYを遊離させてIgYを回収することを含む、IgYの精製方法。
(15) (1)~(9)のいずれかに記載のペプチド又は(12)に記載の固定化ペプチドにサンプル中のIgYを結合させ、結合したIgYを検出することを含む、IgYの検出方法。
(16) (1)~(9)のいずれかに記載のペプチド又は(12)に記載の固定化ペプチドの少なくとも1種を含む、IgYの分析又は精製のためのキット。
(17) (12)に記載の固定化ペプチドを含有する、IgY分離用カラム。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、トリIgYなどのIgYの精製が容易かつ純度よく行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この図は、T7ファージライブラリから得られた3種のIgY結合性ファージの提示するアミノ酸配列(A)とELISAによる結合活性(B)を示す。ELISA用プラスティックプレート(Nunc Maxisorp)のウェルに、50 ngの各蛋白質をコートし、0.5% BSAにて、一晩ブロッキングを行った後、調製したT7ファージを加えて、室温で1時間反応させた後、0.1% Tweenを含むPBS(PBST)にて、5回洗浄後、ビオチン化抗T7ファージ抗体とHRP標識ストレプトアビジン(SA)にて検出を行った。
【図2】この図は、ビオチン化ペプチドのIgY抗体への結合活性を示す。ELISA用プラスティックプレート(Nunc Maxisorp)のウェルに、50 ngの各蛋白質をコートし、0.5% BSAにて、一晩ブロッキングを行った後、これに、ビオチン化ペプチドとHRP標識SA(モル比4:1)で混合したものを1時間反応させ、PBSTで5回洗浄後、TMB溶液にて発色を行い、450nmの吸光度を測定した。
【図3-1】この図は、2種のIgY結合ペプチドの表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性解析の結果を示す。(A)と(B)は、Y4-4ペプチドのIgY及びIgY-Fcに対する解析結果を示す。また、図の左側は、BIAcore T-200を用いて、CM5センサーチップ上に固定化したIgY並びにIgY-Fcに対して、0.0024~10μMまでの異なる濃度のペプチドをインジェクトした場合のセンサーグラムを示し、右側は、そのデータを基に平衡値解析を行った結果を示す。
【図3-2】この図は、2種のIgY結合ペプチドの表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性解析の結果を示す。(C)と(D)は、Y5-55ペプチドのIgY及びIgY-Fcに対する解析結果を示す。また、図の左側は、BIAcore T-200を用いて、CM5センサーチップ上に固定化したIgY並びにIgY-Fcに対して、0.0024~10μMまでの異なる濃度のペプチドをインジェクトした場合のセンサーグラムを示し、右側は、そのデータを基に平衡値解析を行った結果を示す。
【図4】この図は、ビオチン化IgY結合ペプチドを固定化したビーズによるIgYの沈降回収実験の結果を示す。
【図5】この図は、IgY抗体結合ペプチドを固定化したカラムによるIgYの結合試験の結果を示す。HiTrap SA-HPカラム(1ml, GE Healthcare)に、ビオチン化4分肢PEG(PEG4又は(PEG)4ともいう)ペプチドを加えることにより、IgY精製用カラムを作製し(Y4-4のペプチドの固定化量:385 nmole、Y5-55のペプチドの固定化量:324 nmole)、0.5ml/minの流速で、0.25M NaClを含む25mMリン酸緩衝液(pH7.0)を流しながら、同じ緩衝液に溶解した抗体をインジェクトした。溶出は、0.1M Glycine-HCl (pH2.5)にステップワイズで切り替えることで行い、タンパク質の溶出は、280nmの励起による340nmの蛍光を測定し追跡した。
【図6】この図は、Y4-4ペプチドを固定化したカラムを用いて、ニワトリ卵黄の抽出物からのIgYの精製結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
今回、本発明者らが見出したトリIgYに対し特異的又は選択的な結合性を有するペプチドは、T7ファージ提示システムによって構築された分子内に1つのジスルフィド結合を含むランダムペプチドライブラリ( Sakamoto, K., Ito, Y., Hatanaka, T., Soni, P. B., Mori, T., and Sugimura, K. (2009) The Journal of biological chemistry 284(15), 9986-9993)を参考に、新たにデザイン、構築したライブラリからバイオパンニング法を利用して単離されたものであり、このとき得られた3種の特異的クローンには、互いに共通の特徴的な一次構造(配列)の相同性が見られ、その配列を基に合成ペプチドは、IgYに対する優れた特異性と親和性を示した。これらのペプチドのIgY結合に必須の残基の同定を行い、親和性増強へのアプローチ並びに該ペプチドを使った卵黄からのIgYの精製への応用を可能にした。本発明のIgY結合性ペプチドは、17残基からなり、IgYの精製システムの構築が期待できる。

【0013】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
具体的には、本発明のIgY結合性ペプチド、該ペプチドによるIgYの精製法及び分析法、そのようなIgY精製又は検出のためのキットについて説明する。

【0014】
<IgY結合性ペプチド>
本発明のペプチドは、多数のランダムペプチドを含むファージライブラリのなかからトリIgYと特異的に又は選択的に結合性を有するものとしてスクリーニングされたものである。

【0015】
すなわち、本発明のペプチドは、下記の式(I):
(X1-3)-C-(X5)-W-(X7-11)-W-(X13)-C-(X15-17) (I)
(式中、X1-3のうちX1とX3は、独立に、システイン残基以外の任意のアミノ酸残基であり、X2は、システイン残基であってもよい任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
X5は、T、D、V、S又はEのアミノ酸残基であり、
Wは、トリプトファン残基であり、
X7-11は、アミノ酸配列(S、T、R又はN)-(S、A、K又はR)-(I、A、V、T又はG)-(V、Y、T、R又はS)-(G又はD)であり、
X13は、V、L、D、S、M、T又はRのアミノ酸残基であり、並びに、
X15-17の3個のアミノ酸残基は、独立に、システイン残基以外の任意のアミノ酸残基である)
によって表される、17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、4位のシステイン残基と14位のシステイン残基との間でジスルフィド結合を形成しており、並びに、トリIgYと結合可能であることを特徴とするペプチドである。

【0016】
式(I)において、例えばX1-3の「1-3」は、ペプチドのアミノ酸配列の1位から3位を表す意味で使用されている。

【0017】
本発明のペプチドは、式(I)の2つのシステイン残基(4位のCと14位のC)間でジスルフィド結合して環状ペプチドを形成している。

【0018】
本発明の実施形態により、式(I)のX1-3は、アミノ酸配列(G、R、W、E、A又はV)-(V、T、C、I、W又はN)-(K、R、V、S、T又はW)であることを特徴とする。具体的には、X1-3が、アミノ酸配列GVK、GTR、RCV、WIR、EWS、GTS、ATT、VNV又はGTWからなる群から選択される。

【0019】
本発明の実施形態により、式(I)のX15-17は、アミノ酸配列(V、Y、R、F、D、N、S又はG)-(D、N、A、R、T、S、K又はI)-(M、Y、D、S、P、V又はG)であることを特徴とする。具体的には、X15-17は、アミノ酸配列VDM、YDY、RND、FAS、DRD、NTP、YSV、SKS又はGIGからなる群から選択される。

【0020】
本発明の実施形態により、式(I)のX5は、T、D又はVであることを特徴とする。
本発明の実施形態により、式(I)のX11は、好ましくはGである。
本発明の実施形態により、式(I)のX7-11は、アミノ酸配列SSIVD、SAAYG、TAVTG、TKVTG、RKTTG、NRGRG、TRGSG、RSGRG又はRRTSGからなる群から選択されることを特徴とする。
本発明の実施形態により、式(I)のX13は、V、S又はRであることを特徴とする。

【0021】
好ましいペプチドの具体例は、以下のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドである。
GVKCTWSSIVDWVCVDM(配列番号1)
GTRCDWSAAYGWLCYDY(配列番号2)
RCVCVWTAVTGWDCRND(配列番号3)
WIRCDWTKVTGWVCFAS (配列番号4)
EWSCVWRKTTGWSCDRD (配列番号5)
GTSCSWNRGRGWMCNTP (配列番号6)
ATTCTWTRGSGWSCYSV (配列番号7)
VNVCEWRSGRGWTCSKS (配列番号8)
GTWCTWRRTSGWRCGIG (配列番号9)

【0022】
本発明のペプチドは、ニワトリIgYとの結合親和性が高い。例えば、本発明のペプチドの解離定数(Kd)は、表面プラズモン共鳴スペクトル解析(例えばBIACORE T-200システム(タンパク質相互作用解析)使用)により決定可能であり、例えば1×10-6M~1×10-5M、又はその範囲以下である。

【0023】
固相に固定化した本発明のペプチドを用いて、実際にトリ血清中のIgYとの結合を試みたときには、IgYの血清型に結合することが判明し、IgYの分離も可能であることが示された。

【0024】
本発明のペプチドは、慣用の液相合成法、固相合成法などのペプチド合成法、自動ペプチド合成機によるペプチド合成などによって製造することができる(Kelley et al., Genetics Engineering Principles and Methods, Setlow, J.K. eds., Plenum Press NY. (1990) Vol.12, p.1-19;S tewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis (1989) W.H. Freeman Co.; Houghten, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82: p.5132、「新生化学実験講座1 タンパク質IV」(1992)日本生化学会編,東京化学同人、東京、日本国)。あるい は、本発明のペプチドをコードする核酸を用いた遺伝子組換え法やファージディスプレイ法などによって、ペプチドを製造してもよい。例えば本発明のペプチドのアミノ酸配列をコードするDNAを発現ベクター中に組み込み、宿主細胞中に導入し培養することにより、目的のペプチドを製造することができる。製造されたペプチドは、常法により、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、HPLCなどのクロマトグラフィー、硫安分画、限外ろ過、免疫吸着法などにより、回収又は精製することができる。

【0025】
ペプチド合成は、各アミノ酸の、結合しようとするα-アミノ基とα-カルボキシル基以外の官能基を保護したアミノ酸類を用意し、それぞれのアミノ酸のα-アミノ基とα-カルボキシル基との間でペプチド結合形成反応を行う。通常、ペプチドのC末端に位置するアミノ酸残基のカルボキシル基を適当なスペーサー又はリンカーを介して固相に結合しておく。上で得られたジペプチドのアミノ末端の保護基を選択的に除去し、次のアミノ酸のα-カルボキシル基との間でペプチド結合を形成する。このような操作を連続して行い側基が保護されたペプチドを製造し、最後に、すべての保護基を除去し、固相から分離する。保護基の種類や保護方法、ペプチド結合法の詳細は、上記の文献に詳しく記載されている。

【0026】
遺伝子組換え法は、本発明のペプチドをコードするDNAを適当な発現ベクター中に挿入し、適当な宿主細胞にベクターを導入し、細胞を培養し、細胞内から又は細胞外液から目的のペプチドを回収することを含む。ベクターは、限定されないが、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、ファージミド、ウイルスなどのベクターである。プラスミドベクターとしては、限定するものではないが、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YCp50等)などが挙げられる。ファージベクターとしては、限定するものではないが、T7ファージディスプレイベクター(T7Select10-3b、T7Select1-1b、 T7Select1-2a、T7Select1-2b、T7Select1-2c等(Novagen))、λファージベクター(Charon4A、 Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP、λZAPII等)が挙げられる。ウイルスベクターとしては、限定するものではないが、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、センダイウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスなどが挙げられる。コスミドベクターとしては、限定するものではないが、Lorist 6、Charomid9-20、Charomid9-42などが挙げられる。ファージミドベクターとしては、限定するものではないが、例えばpSKAN、pBluescript、pBK、pComb3Hなどが知られている。ベクターには、目的のDNAが発現可能なように調節配列や、目的DNAを含むベクターを選別するための選択マーカー、目的DNAを挿入するためのマルチクローニングサイトなどが含まれうる。そのような調節配列には、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、S-D配列又はリボソーム結合部位、複製開始点、ポリAサイトなどが含まれる。また、選択マーカーには、例えばアンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、等が用いられうる。ベクターを導入するための宿主細胞は、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、植物細胞等であり、これらの細胞への形質転換又はトランスフェクションは、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、パーテイクルガン法、PEG法等を含む。形質転換細胞を培養する方法は、宿主生物の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。例えば、大腸菌や酵母細胞等の微生物の培養では、宿主微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有する。本発明のペプチドの回収を容易にするために、発現によって生成したペプチドを細胞外に分泌させることが好ましい。そのために、その細胞からのペプチドの分泌を可能にするペプチド配列をコードするDNAを、目的ペプチドをコードするDNAの5'末端側に結合する。細胞膜に移行した融合ペプチドがシグナルペプチダーゼによって切断されて、目的のペプチドが培地に分泌放出される。あるいは、細胞内に蓄積された目的ペプチドを回収することもできる。この場合、細胞を物理的又は化学的に破壊し、タンパク質精製技術を使用して目的ペプチドを回収する。

【0027】
それゆえに、本発明はさらに、本発明のペプチドをコードする核酸にも関する。ここで、核酸は、DNA又はRNA(例えばcDNA及びmRNA)を含む。

【0028】
本発明のペプチドは、IgYの検出を可能にするために、標識されていてもよい。標識は、限定されないが、例えば蛍光色素、化学発光色素、酵素、放射性同位元素、蛍光タンパク質、ビオチンなどを含む。好ましい標識の例は、フルオレセイン、FITCなどのフルオレセイン誘導体、ローダミン、テトラメチルローダミンなどのローダミン誘導体、テキサスレッドなどの蛍光色素である。

【0029】
本発明のペプチドは、任意のタンパク質と融合させてもよい。タンパク質がGFP(緑色蛍光タンパク質)のような蛍光タンパク質、ペルオキシダーゼなどの酵素などであれば、該タンパク質を標識として使用できる。この場合、本発明のペプチドと該タンパク質とを、必要に応じて適当なリンカーを介して融合タンパク質として遺伝子組換え法によって作製できる。このとき、本発明のペプチドがトリIgYとの結合性を損なわないように融合タンパク質を作製するべきである。

【0030】
本発明のペプチドはさらに、IgYの分離精製、分析などに使用できるように、アフィニティカラムに充填可能な固相上に固定化されてもよい。

【0031】
ペプチドを固定化するのに用いる好適な固相としては、限定するものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステルポリマー、フッ素樹脂、シリカゲル、架橋デキストラン、ポリサッカライド、アガロース等の多糖類、ガラス、金属、磁性物質、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。そのような固相の形状は、例えば、トレー、球、繊維、粒子、棒、平板、容器、セル、マイクロプレート、試験管、膜(フィルム又はメンブラン)、ゲル、チップなどの任意の形状でよい。具体的には例えば、磁性ビーズ、ガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、セファロースビーズ、シリカゲルビーズ、多糖類ビーズ、ポリスチレンプレート、ガラスプレート、ポリスチレンチューブなどが挙げられる。これら固相への本発明のペプチドの固定化は、当業者に周知の方法を用いて行うことができ、例えば物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法等によって行うことができる。固定化は共有結合にて行うことが好ましく、固相表面に化学官能基(例えばヒドロキシ基、アミノ基、N-ヒドロキシスクシンイミジル基など)、好ましくは炭素数約4~20のアルキレン鎖をスペーサーとして有する化学官能基を有しており、これとペプチドのカルボキシ末端を化学的に反応させてエステル結合又はアミド結合等を形成する。本発明のペプチドを固定化した固相は、アフィニティークロマトグラフィーカラム、HPLCカラム等のカラムに充填して、IgYを検出、精製又は分離するために用いることができる。

【0032】
<IgYの精製法>
本発明はさらに、上記のペプチド又は固定化ペプチドをIgYと結合させること、並びに、結合したIgYを遊離させてIgYを回収することを含む、IgYの精製方法を提供する。

【0033】
本発明のペプチドを固定化した固相を、アフィニティークロマトグラフィーカラム、HPLCカラム等のカラムに充填し、適当なバッファーで平衡化し、室温~0℃、好ましくは約10℃~0℃の低温(更に好ましくは約4℃)でIgYを含有する液をアプライし、固相上のペプチドにトリIgYを結合させる。例えば血清中のIgYを分離する場合には、中性域のpH、例えばpH6.0~7.5のバッファーを使用してカラムにアプライし、結合操作を行うことができる。溶出は、酸性域のpH、例えばpH2~4のバッファー(例えば0.3MのNaClを含有するpH3.5からpH2.5の0.2Mグリシン-HClバッファー)をカラムに流して行うことができる。

【0034】
IgYが回収されたかどうかは、例えば、電気泳動、その後の抗トリIgY抗体を使用するウエスタンブロット法によって測定できる。泳動は、5~20%アクリルアミドグラジエントゲルを用いたSDS-PAGEを行い、また、ウエスタンブッロトは、泳動後のタンパク質をPVDF膜に転写し、スキムミルクでブロッキングした後、適当な標識抗体等を用いて検出を行うことができる。

【0035】
本発明の方法は、種々の方法で生産されたIgY含有生産物からIgYを精製する工程のなかでIgYに富む画分を得る場合に有用である。それゆえに、アフィニティークロマトグラフィー、HPLC等のカラムクロマトグラフィーにおいて本発明の方法を使用することが好ましい。IgYの精製に際しては、このようなクロマトグラフィー法に加えて、タンパク質の慣用的な精製技術、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、硫安分画、限外ろ過などを適宜組み合わせることができる。

【0036】
<IgYの分析法>
本発明はさらに、上記の本発明のペプチド又は固定化ペプチドにサンプル中のIgYを結合させ、結合したIgYを検出することを含む、IgYの検出方法を提供する。ここで、検出には、定性又は定量のいずれかの分析を含むものとする。

【0037】
IgYの検出は、操作中に適するバッファーを使用しながら、メンブランやポリスチレンウエルプレートなどにサンプルを結合し、これに本発明の標識ペプチドを接触させ、必要に応じて洗浄後、標識のレベルを定性又は定量することによって行うことができる。

【0038】
あるいは、上記のような本発明のペプチドを固定化したHPLCカラムを使用する場合には、該カラムに、トリIgYを含有するサンプルを注入し、結合バッファーを流してペプチドにトリIgYを結合し、例えば吸光度280nm又は450nmで、もしくは280nmの励起光による350nmの蛍光で、タンパク質を検出し記録し、溶出緩衝液(例えば、0.15MのNaClを含む0.1Mグリシン塩酸緩衝液pH2.5へのグラジエント溶出)にてカラムから溶出させ、現れたピーク及びピーク面積により、IgYの定性及び定量を行うことができる。

【0039】
<キット及びカラム>
本発明はさらに、上記の本発明のペプチド又は固定化ペプチドの少なくとも1種を含む、IgYの分析(定性、定量等)又は精製のためのキットを提供する。

【0040】
本発明のキットに含まれる個々のペプチド又は固定化ペプチドは、個別の容器に収容される。また、必要であれば、IgYの分析手順や精製手順を記載した使用説明書をキットに備えてもよい。さらにキットには、分析に必要な試薬やバッファー、固定化ペプチド充填カラムなどを含めてもよい。

【0041】
本発明はさらに、上記の本発明の固定化ペプチドを含有する、IgY分離用カラムを提供する。
固定化ペプチドは、ペプチドを、一般にクロマトグラフィー用の担体(充填材)に共有的に又は非共有的に結合することによって作製されうる。そのような担体の例は、アガロースやセファロースなどの多糖類ベースの担体、シリカゲルベースの担体、樹脂ベース若しくはポリマーベースの担体などである。ペプチドを担体に結合するときには、炭化水素鎖(例えばC4~C16)のようなスペーサーを介して結合してもよい。

【0042】
上記IgY分離用カラムは、IgYを分離するためのカラムであり、具体的には、IgYの分析又は精製・分取のための、クロマトグラフィーカラム、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラム等のカラムを包含する。カラムのサイズは、特に制限されないものとし、分析用、精製・分取用などの用途、アプライ(搭載)又は注入する量、などに応じて変化させうる。また、カラムの材質は、金属、プラスチック、ガラス等の、カラムとして通常使用されるようなものでよい。

【0043】
上記のカラムは、上記の手法に準じて作製した本発明の固定化ペプチド(乾燥又は湿潤状態)をカラムに密に充填することによって製造できる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、それらの実施例によって制限されないものとする。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
<IgY結合ペプチドの探索>
T7ファージ提示法によって構築した2つのCysによって環状構造を持つランダムペプチドライブラリを用いたニワトリIgYに対するバイオパンニングによって、ニワトリIgYに結合するファージクローン3種を得た。
【実施例】
【0046】
得られた3種のファージの提示するペプチドの配列とELISAによる結合活性を図1に示す。得られたファージは、いずれもニワトリIgYもしくは、そのFc断片(IgY-Fc)にのみ結合活性を示し、その他のタンパク質には結合活性を示さなかった。得られたクローンが提示するペプチドのアミノ酸配列の比較では、ライブラリ由来の2つのCysの内側に、2つのTrpを含む保存性の高いアミノ酸が見られた(図1A)。
【実施例】
【0047】
3つのクローンのうち、Y4-4とY5-55について、ペプチド合成を行い、その結合活性を評価した。ペプチド合成は、N末にビオチン化(PEG)4を付加し、かつ、C末をアミド化したペプチドを合成し、分子内のSS結合は空気酸化により形成させた後、逆相カラムで精製したものを用いた。
【実施例】
【0048】
図2にELISAでのこれらのペプチドの結合活性を示す。2種のペプチドとも、IgY並びにIgY-Fcへ特異的な結合活性を示した。
【実施例】
【0049】
さらに、このペプチドを用いて、BIAcore T-200でのSPRによる親和性解析を行った結果を図3に示す。
【実施例】
【0050】
Y4-4ペプチドは、IgY及びIgY-Fcに対して、ほぼ同じ親和性(7.0、7.8μMのKd値)で結合し、一方Y5-55ペプチドは、若干強い結合力(4.2、4.1μMのKd値)で結合したことから、これらのペプチドは、精製用リガンドとして、十分機能することが期待された(表1)。
【実施例】
【0051】
【表1】
JP0006245688B2_000002t.gif
【実施例】
【0052】
さらにまた、上記と同様に、T7ファージ提示法によって構築した2つのCysによって環状構造を持つランダムペプチドライブラリを用いたニワトリIgYに対するバイオパンニングによって、ニワトリIgYに結合するファージクローン6種を得た(表2)。
【実施例】
【0053】
【表2】
JP0006245688B2_000003t.gif
【実施例】
【0054】
配列決定された表中のペプチドはいずれも、C4-X5-W6-X7X8X9X10G11-W12-X13-C14の構造を有しており、11位のアミノ酸残基(X11)がすべてGlyであったことを除いて、図1に示した基本骨格と同じであった。
【実施例】
【0055】
<IgYの精製>
得られたIgY結合ペプチドの有用性を検討するために、IgY結合ペプチドを結合させたビーズを使ってIgYの回収が可能かどうかを検討した。
【実施例】
【0056】
すなわち、SA(ストレプトアビジン)固定化ビーズ(SA-Agarose:1 nmol SA/10μl)に、ビオチン化Y4-4, Y5-55ペプチド(10nmol/100μl)を加え結合させ、洗浄により余分なペプチドを除いた。このビーズに、IgY溶液(30μg/100ul 0.25NaClを含む25mMPB)を加え、室温で1時間反応後、遠心分離によりビーズを回収し、0.25NaClを含む25mMPBで2回洗浄した。その後、ビーズを90μlのSDSサンプル溶液に分散し、3分の1(30μl)を用いてSDS-PAGEを行い、泳動後ゲルのCBB染色を行った結果を図4に示す。
【実施例】
【0057】
Y4-4並びにY5-55ペプチドを固定化したビーズでは、溶液からIgYの回収に成功した(図4、レーン1、3)。一方で、コントロールとして用いたヒトIgGは、このビーズではほとんど回収されなかった(図4、レーン2、4)。またペプチドを固定化していないビーズを用いた場合でも、IgYの回収はできなかった(図4、レーン5)。このように、今回、同定されたIgY結合ペプチドは、IgYを溶液からビーズ沈降によって回収するためのアフィニティリガンドとして機能することが分かった。
【実施例】
【0058】
さらに、IgY結合ペプチドが、IgY精製用のカラムのアフィニティリガンドとして機能するかどうかを検討するために、SA固定化カラム(GE Healthcare, HiTrap-SA, 1ml)に、ビオチン化ペプチドを固定化したカラムを作製し、このカラムへのIgYの結合挙動を調べた(図5)。
【実施例】
【0059】
対照実験として、HiTrap-SAカラム(1ml)にビオチンを加え、SAを飽和させたカラムに、IgY、IgY-FcもしくはヒトIgGをインジェクトしたところ、図5Aのように、いずれのタンパク質も、素通りの分画に溶出された。次に、Y4-4(図5B)もしくは、Y5-55ペプチド(図5C)を固定化したカラムを用いて実験を行ったところ、ヒトIgGは、素通り画分に溶出されたが、IgY並びにIgY-Fcは、ほぼ全量がカラムに吸着された。また、5分後に0.1M Glycine-HCl(pH2.5)の溶出液へ切り替えることで、約11分に結合したIgY並びにIgY-Fcがピークとして溶出された(ただし、約17分にあるピークは、0.1M Glycine-HClからPBSに切り替えた際に溶出されたタンパク質である)。以上のことは、Y4-4もしくは、Y5-55を固定化したカラムは、ニワトリIgYを精製するためのアフィニティカラムとして十分機能することを示している。
【実施例】
【0060】
最後に、図5で用いたY4-4ペプチドを固定化したカラムを用いて、ニワトリ卵黄の抽出物からのIgYの精製を検討した。卵黄1mlを0.25M NaClを含む50mM PB(pH7.0)で、5倍に希釈後、4℃で一晩、ゆっくりと撹拌した。遠心分離(10000g×15分)にて、不溶性画分を沈殿させ、上澄み(5ml)をカラムにアプライした。0.25M NaClを含む50mM PB(pH7.0)でカラムを洗浄後、pH2.5の0.1M グリシン塩酸緩衝液(図6A)もしくは、pH3.0の同緩衝液(図6B)で溶出した。卵黄抽出画分、pH2.5ならびに3.0での溶出による精製での素通り(約18分)ならびに溶出画分(約43分)について、SDS-PAGEを行った(図6C)。ペプチド固定化カラムによる精製では、卵黄中に含まれるIgY以外のタンパク質は素通り画分に回収され、カラムに吸着され酸性pHで溶出された画分は、ほぼIgYのみのバンドが見られた。これ科の結果は、本ペプチド固定化カラムが、実際に卵黄からのIgYの特異的かつ効率的な精製カラムとして機能することを示している。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により、IgY抗体に特異的に結合可能なペプチドが提供される。このペプチドを固定化したアフィニティカラムを用いることにより、IgYを高度に精製することが可能になった。
【配列表フリ-テキスト】
【0062】
配列番号1~9:人工配列
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3-1】
2
【図3-2】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6