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明細書 :液晶性を有する高分子金属錯体及び液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6270201号 (P6270201)
公開番号 特開2015-113394 (P2015-113394A)
登録日 平成30年1月12日(2018.1.12)
発行日 平成30年1月31日(2018.1.31)
公開日 平成27年6月22日(2015.6.22)
発明の名称または考案の名称 液晶性を有する高分子金属錯体及び液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法
国際特許分類 C08G  18/83        (2006.01)
C07F   1/12        (2006.01)
C07F   3/06        (2006.01)
C07F   1/08        (2006.01)
C07F  15/06        (2006.01)
C07F  15/02        (2006.01)
FI C08G 18/83
C07F 1/12
C07F 3/06
C07F 1/08 Z
C07F 15/06
C07F 15/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2013-255700 (P2013-255700)
出願日 平成25年12月11日(2013.12.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 一般社団法人繊維学会が平成25年6月12日に発行した繊維学会予稿集 2013 68巻1号(年次大会)2PB45にて、氏家誠司及び那谷雅則が発明した、主鎖型液晶ポリウレタンの秩序形成能と外部刺激応答性について公開した。
特許法第30条第2項適用 平成25年6月12日~平成25年6月14日に開催された平成25年度繊維学会年次大会において、氏家誠司及び那谷雅則が発明した主鎖型液晶ポリウレタンの秩序形成能と外部刺激応答性について公開した。
特許法第30条第2項適用 一般社団法人繊維学会が平成25年6月12日に発行した繊維学会予稿集 2013 68巻1号(年次大会)1B12にて、氏家誠司及び那谷雅則が発明した、メソゲン基を有する新規直鎖高分子の液晶挙動と光応答性について公開した。
特許法第30条第2項適用 平成25年6月12日~平成25年6月14日に開催された平成25年度繊維学会年次大会において、氏家誠司及び那谷雅則が発明したメソゲン基を有する新規直鎖高分子の液晶挙動と光応答性について公開した。
特許法第30条第2項適用 一般社団法人日本液晶学会が平成25年8月30日に発行した2013年日本液晶学会討論会講演予稿集のPA30にて、氏家誠司及び那谷雅則が発明した、メソゲン基を有する直鎖状ポリウレタンの熱的性質と秩序化について公開した。
特許法第30条第2項適用 平成25年9月8日~平成25年9月10日に開催された2013年日本液晶学会討論会において、氏家誠司及び那谷雅則が発明したメソゲン基を有する直鎖状ポリウレタンの熱的性質と秩序化について公開した。
特許法第30条第2項適用 一般社団法人日本液晶学会が平成25年8月30日に発行した2013年日本液晶学会討論会講演予稿集の3c08にて、氏家誠司及び那谷雅則が発明した、水素結合性主鎖型高分子液晶の配向挙動について公開した。
特許法第30条第2項適用 平成25年9月8日~平成25年9月10日に開催された2013年日本液晶学会討論会において、氏家誠司及び那谷雅則が発明した水素結合性主鎖型高分子液晶の配向挙動について公開した。
特許法第30条第2項適用 液晶化学研究会が平成25年6月13日に発行した第17回液晶化学研究会シンポジウム予稿(2013)のP34にて、氏家誠司及び那谷雅則が発明した、主鎖型液晶ポリアミノウレタンの液晶挙動と光応答性について公開した。
特許法第30条第1項適用 平成25年6月13日に開催された第17回液晶化学研究会シンポジウムにおいて、氏家誠司及び那谷雅則が発明した主鎖型液晶ポリアミノウレタンの液晶挙動と光応答性について公開した。
審査請求日 平成28年9月7日(2016.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】氏家 誠司
【氏名】那谷 雅則
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
【識別番号】100149205、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 泰央
審査官 【審査官】今井 督
参考文献・文献 特開2013-245321(JP,A)
特開昭47-039499(JP,A)
特開平04-122721(JP,A)
特開平05-105875(JP,A)
特開2004-292671(JP,A)
調査した分野 C08G 18/00- 18/87
C07F 1/00- 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式
【化1】
JP0006270201B2_000025t.gif
(ただし、nは2以上の整数を表す。)
にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属イオンとを有し、
前記ポリアミノウレタンが有するアミノ基及びウレタン結合を前記遷移金属イオンに配位させて構成した液晶性を有する高分子金属錯体。
【請求項2】
下記一般式
【化17】
JP0006270201B2_000026t.gif
(ただし、nは2以上の整数を表す。)
にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属のイオンとを混合して、前記ポリアミノウレタンが有するアミノ基及びウレタン結合を前記遷移金属イオンに配位させる液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミノウレタンと前記遷移金属のイオンとの混合は、前記ポリアミノウレタンを溶媒中に溶解又は分散させたポリアミノウレタン含有液と、前記遷移金属の塩類を溶媒に溶解させた塩類溶液とを混合して行うことを特徴とする請求項2に記載の液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアミノウレタンと前記遷移金属のイオンとの混合は、粉体状又は固体状の前記ポリアミノウレタンと、前記遷移金属の塩類を溶媒に溶解させた塩類溶液とを接触させて行うことを特徴とする請求項2に記載の液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミノウレタンと前記遷移金属のイオンとの混合は、加熱することにより流動性を有する液晶状態とした前記ポリアミノウレタンと、前記遷移金属の塩類とを混練して行うことを特徴とする請求項2に記載の液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性を有する高分子金属錯体及び液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶性高分子は、その高い配向性を利用して、高性能材料や高機能性材料への応用がなされてきた。
【0003】
しかしながら、それら応用例の多くは液晶性ポリエステルを利用した耐熱性樹脂や、高強度・高弾性率繊維としての利用が主であり、応答性を考慮した材料の開発は行われておらず、100℃以下で応答できる液晶性高分子(特に主鎖型高分子液晶)の提案はほとんどなされていなかった。
【0004】
そこで、長年に亘り高分子液晶の分野で研究を重ねている本発明者は、新規な液晶性高分子である液晶性ポリアミノウレタンを過去に提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この液晶性ポリアミノウレタンによれば、100℃以下、更には室温においても応答可能な液晶性高分子を提供することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特願2012-121366号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、機能性を有する高分子の一つとして、金属原子を構成要素として備えるメタロポリマーが着目されている。
【0008】
そこで本発明者は、先に提案したポリアミノウレタンを応用したメタロポリマーの開発を行い、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、液晶性を有する新たな高分子金属錯体を提供する。また、同液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る液晶性を有する高分子金属錯体では、下記一般式
【化1】
JP0006270201B2_000002t.gif
(ただし、nは2以上の整数を表す。)
にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属イオンとを有し、
前記ポリアミノウレタンが有するアミノ基及びウレタン結合を前記遷移金属イオンに配位させて構成した。
【0011】
また、本発明に係る液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法では、下記一般式
【化17】
JP0006270201B2_000003t.gif
(ただし、nは2以上の整数を表す。)
にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属のイオンとを混合して、前記ポリアミノウレタンが有するアミノ基及びウレタン結合を前記遷移金属イオンに配位させることとした。
【0012】
また、本発明に係る液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法では、前記ポリアミノウレタンと前記遷移金属のイオンとの混合は、前記ポリアミノウレタンを溶媒中に溶解又は分散させたポリアミノウレタン含有液と、前記遷移金属の塩類を溶媒に溶解させた塩類溶液とを混合して行うこととしても良い。
【0013】
また、本発明に係る液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法では、前記ポリアミノウレタンと前記遷移金属のイオンとの混合は、粉体状又は固体状の前記ポリアミノウレタンと、前記遷移金属の塩類を溶媒に溶解させた塩類溶液とを接触させて行うこととしても良い。
【0014】
また、本発明に係る液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法では、前記ポリアミノウレタンと前記遷移金属のイオンとの混合は、加熱することにより流動性を有する液晶状態とした前記ポリアミノウレタンと、前記遷移金属の塩類とを混練して行うこととしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る液晶性を有する高分子金属錯体によれば、上記構成を有することとしたため、液晶性を有する新たな高分子金属錯体を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る液晶性を有する高分子金属錯体によれば、上記構成を有することとしたため、液晶性を有する新たな高分子金属錯体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体の調製例を示した説明図である。
【図2】種々の金属塩を用いて調製した液晶性高分子金属錯体の性状を示した説明図である。
【図3】塩化金を用いて調製した液晶性高分子金属錯体の性状を示した説明図である。
【図4】調製した液晶性高分子金属錯体の熱的性質を示した説明図である。
【図5】調製した液晶性高分子金属錯体のXRDの結果を示した説明図である。
【図6】調製した液晶性高分子金属錯体のNMRの結果を示した説明図である。
【図7】調製した液晶性高分子金属錯体のNMRの結果を示した説明図である。
【図8】調製した液晶性高分子金属錯体のNMRの結果を示した説明図である。
【図9】錯形成の割合について検討を行った結果を示した説明図である。
【図10】調製した液晶性高分子金属錯体の加工性について示した説明図である。
【図11】調製した液晶性高分子金属錯体のUV-Visスペクトル測定の結果を示した説明図である。
【図12】調製した液晶性高分子金属錯体とポリアミノウレタンとの二層複合膜の作製、および、ポリアミノウレタンの光応答性について検討を行った結果を示す説明図である。
【図13】調整した液晶高分子金属錯体/ポリアミノウレタン二層複合膜の光応答性についての検討を行った結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、液晶性を有する高分子金属錯体(以下、液晶性高分子金属錯体ともいう。)及びその製造方法を提供するものである。

【0019】
本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、アミノ基とウレタン結合とメソゲンとを備える単位構造の繰り返しにより構成されたポリアミノウレタンと遷移金属元素のイオンとを有するものであり、ポリアミノウレタンが有するアミノ基の窒素原子及びウレタン結合の窒素原子を遷移金属元素のイオンに配位させて構成したものである。

【0020】
特に、液晶性高分子金属錯体を構成するポリアミノウレタンは、下記一般式( I )にて特徴付けられるものである。
【化33】
JP0006270201B2_000004t.gif
(ただし、式中R1は、
【化34】
JP0006270201B2_000005t.gif
のいずれかの基を表し、R2は、
【化35】
JP0006270201B2_000006t.gif
のいずれかの基を表し、R3は、
【化36】
JP0006270201B2_000007t.gif
のいずれかの基を表し、R4は、
【化37】
JP0006270201B2_000008t.gif
のいずれかの基を表し、R5は、
【化38】
JP0006270201B2_000009t.gif
のいずれかの基を表し、R6は、
【化39】
JP0006270201B2_000010t.gif
のいずれかの基を表し、R7は、
【化40】
JP0006270201B2_000011t.gif
の基を表し、R8は、
【化41】
JP0006270201B2_000012t.gif
のいずれかの基を表し、R9は、
【化42】
JP0006270201B2_000013t.gif
のいずれかの基を表し、R10は、
【化43】
JP0006270201B2_000014t.gif
のいずれかの基を表し、R11は、
【化44】
JP0006270201B2_000015t.gif
のいずれかの基を表し、R12は、
【化45】
JP0006270201B2_000016t.gif
のいずれかの基を表し、R13は、
【化46】
JP0006270201B2_000017t.gif
のいずれかの基を表し、R14は、
【化47】
JP0006270201B2_000018t.gif
のいずれかの基を表し、R15は、
【化48】
JP0006270201B2_000019t.gif
のいずれかの基を表す。nは2以上の整数を表し、mは1又は2を表し、xは5~8の整数を表し、yは2~12の整数を表し、zは1以上の整数を表す。)

【0021】
そして、上記一般式( I )で示されるポリアミノウレタンと遷移金属元素のイオンとを備え、ポリアミノウレタンが有するアミノ基及びウレタン結合を遷移金属元素のイオンに配位させて構成した本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体によれば、液晶性を有する新たな高分子金属錯体を提供することができる。なお、以下の説明において、R1~R15は、特に断りのない限り、上記一般式の但し書きにおけるR1~R15と同じものであり説明を省略する場合がある。

【0022】
また、液晶性高分子金属錯体を構成するポリアミノウレタンは、主鎖型のポリアミノウレタンであっても良く、また、側鎖型のポリアミノウレタンであっても良い。

【0023】
具体的には、主鎖型のポリアミノウレタンは、前述の一般式( I )にて、R1
【化49】
JP0006270201B2_000020t.gif
とした、下記一般式( II )
【化50】
JP0006270201B2_000021t.gif
で表されるものとすることができる。たとえば、アミノ基とウレタン結合との間にメソゲンが介設されている構造を有することとしても良い。

【0024】
また、側鎖型のポリアミノウレタンは、前述の一般式( I )にて、R1
【化51】
JP0006270201B2_000022t.gif
から選ばれるいずれか1つの基としたものとすることができる。

【0025】
また、これらのポリアミノウレタンは、カウンターアニオンを有するものであっても良い。

【0026】
具体的には、
【化52】
JP0006270201B2_000023t.gif
から選ばれるいずれかのアニオンをカウンターアニオンとして備えるポリアミノウレタンを好適に用いることができる。そして、このようなカウンターアニオンを有するポリアミノウレタンを用いることにより、溶媒(例えば、THF)へのポリアミノウレタンの溶解性を向上させることができ、後述の溶液混合法などにより本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体の製造を更に容易なものとすることができる。

【0027】
このような構造を有する主鎖型や側鎖型のポリアミノウレタンを用いて調製した液晶性高分子金属錯体は、極めて高い汎用性を有する材料として使用することができる。

【0028】
ここで当該液晶性高分子金属錯体の利用分野の一例について言及するならば、例えば、高分子液晶材料としての使用や、色素材料としての使用、光応答材料としての使用、医療分野における使用等を挙げることができる。

【0029】
例えば、高分子液晶材料としての用途の一つとしては、成形材料としての使用が考えられる。本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は異方性を有することから、特定方向において極めて高い強度を示す成形材料として使用することができる。

【0030】
また、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、後に実験結果を参照しつつ説明するが、配向させることによりスメクチックA相を形成する。このとき、遷移金属イオンは、配向したポリアミノウレタンのウレタン結合やアミノ基の部分に配位することとなるため、この部分に熱伝導パスが形成される。従って、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、液晶状態および固体状態(ガラス転移温度以下)において、良好な熱伝導性を有する材料としても使用することができる。

【0031】
また例えば、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、色素材料としても利用することができる。本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、金属イオンを配位させることによって、その金属イオンに応じた色を呈することができ、分子生物学実験等において所定の金属イオンの検出などに使用することができる。また、塗料の色素としても利用することができる。

【0032】
また例えば、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、光応答材料としても利用することができる。本実施形態に係る高分子金属錯体は、極めて優れた光応答性を示すことができ、紫外線や可視光線の照射によって機械的な運動を行わせることができる。

【0033】
具体的には、液晶性高分子金属錯体をフィルム状とすることにより、光照射によって変形するフィルムを得ることができる。また、例えば後述する接触法などにより、薄いフィルム状でありながら、一方の面は液晶性高分子金属錯体の層を形成し、他方の面は非液晶性高分子金属錯体層(例えば、ポリアミノウレタン層)とすることにより、光応答性の違いを利用して、所定方向に運動性を示す材料を形成することも可能である。

【0034】
また例えば、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、医療分野においてもその応用が考えられる。金属系の有効成分が奏功する疾患、例えば白金を有するシスプラチンが適応される所定のがんなどにおいて、その金属のドラッグデリバリー媒体や埋没式薬剤などとして利用することが考えられる。

【0035】
このように、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、極めて汎用性の高い材料として利用することができる。

【0036】
また、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、前述の一般式( I )にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属元素のイオンとを混合して、ポリアミノウレタンが有するアミノ基及びウレタン結合を遷移金属元素のイオンに配位させることで製造することができる。

【0037】
より具体的には、例えば、ポリアミノウレタンと遷移金属のイオンとの混合は、ポリアミノウレタンを溶媒中に溶解又は分散させたポリアミノウレタン含有液と、遷移金属の塩類を溶媒に溶解させた塩類溶液とを混合して行うようにしても良い。このような方法によれば、比較的容易かつ速やかに液晶性高分子金属錯体を製造することができる。なお、以下の説明において、このような調製方法を溶液混合法とも称する。

【0038】
また、別の方法として、例えば、ポリアミノウレタンと遷移金属のイオンとの混合は、粉体状又は固体状のポリアミノウレタンと、遷移金属の塩類を溶媒に溶解させた塩類溶液とを接触させて行うようにしても良い。このような方法によれば、ポリアミノウレタンの所望する部位に本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体を形成することができる。なお、以下の説明において、このような調製方法を接触法とも称する。

【0039】
また、別の方法として、例えば、ポリアミノウレタンと遷移金属のイオンとの混合は、加熱することにより流動性を有する液晶状態としたポリアミノウレタンと、遷移金属の塩類とを混練して行うようにしても良い。このような方法によれば、溶媒を使用することなく、液晶性高分子金属錯体を製造することができる。なお、以下の説明において、このような調製方法を混練法とも称する。

【0040】
このように、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体の製造方法によれば、前述の一般式( I )にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属元素のイオンとを混合して、ポリアミノウレタンが有するアミノ基及びウレタン結合を遷移金属元素のイオンに配位させること、より具体的には、溶液混合法や、接触法、混練法等によって液晶性高分子金属錯体を比較的容易に効率良く製造することができる。

【0041】
なお、液晶性高分子金属錯体の製造にて使用するポリアミノウレタンは、例えば、本発明者が既に提案している特願2012-121366号の方法により得ることができる。

【0042】
その一例として、例えば、
【化53】
JP0006270201B2_000024t.gif
で示されるジオール化合物と、ジイソシアナートとを重合させることにより、前述の一般式( I )にて表されるポリアミノウレタンを合成することができる。

【0043】
以下、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体及びその製造方法について、図面を参照しつつ詳説する。

【0044】
〔1.液晶性高分子金属錯体の調製〕
(1-1.溶液混合法による調製)
まず、溶液混合法による液晶性高分子金属錯体の調製例について説明する。20ml容量のガラス製サンプル管に、図1の上部に示すポリアミノウレタン(0.15 mmol:繰り返し単位を一分子として計算)を入れ、5mlのテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran:THF)に溶解させた。

【0045】
次に、このポリアミノウレタンのTHF溶液に対し、2mlのTHFに金属塩(0.15 mmol)を溶かした溶液を滴下し、溶液混合法によりゲル状物質を析出させた。ここで金属塩としては、塩化銅(II)二水和物、塩化鉄(III)、塩化鉄(III)六水和物、塩化亜鉛、塩化コバルト(III)、塩化コバルト(III)六水和物、塩化金(III)二水和物をそれぞれ用いた。

【0046】
析出したゲル状の物質をTHFで数回洗浄し、洗浄溶液が着色しなくなった後取り出して乾燥させることにより、液晶性高分子金属錯体を得た。なお、塩化銅一水和物は溶媒として使用したTHFに溶解しなかったため、液晶性高分子金属錯体を得ることはできなかったが、他の溶媒を用いた溶液混合法によって反応させることにより液晶性高分子金属錯体を調製可能であることは既に確認している。

【0047】
(1-2.溶液混合法にて調製した液晶性高分子金属錯体の性状)
図2及び図3に、溶液混合法にて得られた液晶性高分子金属錯体の性状について示す。図2及び図3からも分かるように、得られた液晶性高分子金属錯体は、金属イオンに対応してさまざまな色を示した。

【0048】
また、得られた液晶性高分子金属錯体を室温~300℃にて直交ニコル下で検鏡したところ、液晶光学組織が観察された。このことから、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、ガラス転移温度以下の室温においても液晶状態で形成された配向構造を保持する高分子金属錯体であることが分かる。

【0049】
また、図示は省略するが、金属塩としてユウロピウム塩を用いた場合にも錯形成が確認された。これらのことから、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体は、前述の一般式(I)にて示されるポリアミノウレタンを溶解させた溶液に、遷移金属の塩類を添加することにより合成可能であることが示された。

【0050】
また、図3に示すように、金イオンを用いて形成させた液晶性高分子金属錯体は、極めて深い赤色を示すものであった。金は一般にナノレベルで分散させると赤色を呈することが知られている。このことから、液晶性高分子金属錯体中の金は、同錯体中において分散状態で存在しているものと考えられた。

【0051】
(1-3.混練法による調製)
次に、混練法による液晶性高分子金属錯体の調製例について説明する。図1上部に示した0.50gのポリアミノウレタンの樹脂塊を130℃に加熱して液晶性を有する状態で軟化させた。

【0052】
次に、この樹脂塊に対し、遷移金属塩としての塩化銅(II)二水和物(粉体)を0.13g添加して十分に混練し、混練法による液晶性高分子金属錯体を得た。

【0053】
(1-4.混練法にて調製した液晶性高分子金属錯体の性状)
混練法にて得られた液晶性高分子金属錯体の性状について確認を行った。前述の溶液混合法にて得られた液晶性高分子金属錯体と同様、添加した遷移金属塩としての銅イオンとアゾベンゼン基の赤色に由来するこげ茶色を呈していた。

【0054】
また、室温下にて検鏡を行ったところ、液晶光学組織が観察された。これらのことから、混練法によっても、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体を製造可能であることが示された。

【0055】
(1-5.接触法による調製)
接触法による液晶性高分子金属錯体の形成については、後述の〔7.光応答性〕にて説明するが、前述の溶液混合法や混練法にて形成した液晶性高分子金属錯体と同様に液晶光学組織が観察されたことから、接触法によっても本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体が形成可能であることが確認された。

【0056】
〔3.熱的性質〕
次に、形成した本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体の熱的性質について検証を行った結果を、図4を参照しつつ説明する。なおここでは、遷移金属塩として塩化銅(II)二水和物を用い、溶液混合法にて調製した液晶性高分子金属錯体を代表サンプルとして使用した。

【0057】
図4に示すように、ネマチック相を示すポリウレタン(LCPU-Az-T)に塩化銅(II)を反応させることによって得た液晶性高分子金属錯体(PU-5)は、スメクチックA(SmA)相を形成した。ガラス転移温度(ガラス-SmA相転移温度)とSmA-等方相転移温度は、錯形成によって上昇した。

【0058】
〔4.XRD〕
次に、形成した本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体のXRDの結果を図5に示す。

【0059】
金属イオンとポリアミノウレタンの錯形成によって、スメクチックA相が誘起された。温度可変X線回折測定では、スメクチックA相の層の周期に対応する鋭い反射が小角域に観測された。この反射から求められる層間隔は、ポリアミノウレタンの繰り返し単位の伸び切り鎖長により少し長いことから、スメクチックA相では、高分子鎖が折りたたまれて配向した集合構造(folding structure)を形成しているものと考えられた。

【0060】
〔5.NMR〕
次に、形成した本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体の1H-NMRの結果及び考察について、図6~図9を参照しつつ説明する。

【0061】
図6(a)はポリアミノウレタンの1H-NMR測定結果であり、図6(b)は液晶性高分子金属錯体の1H-NMR測定結果である。図6(a)及び図6(b)に示すa,bのピークは、トリレレン基に直結したN-HのHに対応するピークで、それぞれaが2位の位置に結合しているN-Hのものであり、bが4位に結合しているN-Hに対応するものである。それぞれの測定結果を比較すると、図6(b)に示すように、錯形成に関係したウレタン結合部位のN-Hに対応するピークが新たに確認された。

【0062】
図7及び図8は、添加する遷移金属塩(塩化鉄(III)六水和物)の添加量を違えて鉄イオンの錯形成量を変化させた時の測定結果を示した図である。図7及び図8からも分かるように、鉄イオンの錯形成量が多くなると、8~10ppm近傍に現れるウレタン結合部分のN-Hのピークの分裂が大きくなる傾向が見られた。また、ウレタン結合のN-Hのピークだけではなく、ウレタン結合に直結したCH2のピークも低磁場側にシフトするのが観察された。また、4~5ppm近傍に現れるアミノ基部分のピークにも変化が確認された。

【0063】
図9に、錯形成に関与したN-Hと関与していないN-Hのピークの面積強度の比から、それぞれのウレタン結合部位の錯形成への関与割合を算出した結果を示す。

【0064】
図9からも分かるように、符号iを付した水素原子を有するウレタン結合では、塩化鉄の添加量が0.5当量を越えたところで約40%が錯形成に関与するものと考えられる。0.5当量よりも少し前のところに極大値が見られるが、このピークが現れる理由については現在検討中である。

【0065】
また、符号jを付した水素原子を有するウレタン結合では、塩化鉄の添加量が0.5当量で約50%が錯形成に関与するものと考えられる。

【0066】
また、符号iを付した水素原子を備えるウレタン結合の方が、符号jを付した水素原子を備えるウレタン結合に比して錯形成に関与する割合が多少低くなるのは、立体障害が相対的に大きいためであると考えられた。

【0067】
〔6.加工性〕
次に、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体の加工性について検討を行った。具体的には、塩化銅(II)二水和物を遷移金属塩とし混練法にて調製した液晶性高分子金属錯体(約2g)の塊を、熱プレス装置に供してフィルム化した。その結果を図10に示す。

【0068】
図10からも分かるように、フィルム化したポリアミノウレタンと同様、液晶性高分子金属錯体もまたフィルム化できることが確認された。また、フィルム化される際の様子から、一般の成型用樹脂と同様の加工性を有することが確認された。

【0069】
また、図示は省略するが、他の遷移金属塩を用いた液晶性高分子金属錯体についても、同様に良好な加工性を有することが確認された。

【0070】
〔7.UV-Visスペクトル測定〕
次に、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体のUV-Visスペクトル測定を行った。ここでは、サンプルとして塩化金(III)二水和物を遷移金属塩とし混練法にて調製した液晶性高分子金属錯体を上述の方法で熱プレスしてフィルム化したものを使用した。また、サンプルフィルムは厚さ0.2μmのものと2μmのものの2種類を作成して試験に供した。その測定結果を図11に示す。

【0071】
図11からも分かるように、液晶性高分子金属錯体にて作成したフィルムは、ポリアミノウレタンフィルムと比較すると、長波長側に吸収帯が現れること、より具体的には、470nm付近と450nm付近にピークが現れることが確認された。

【0072】
〔8.光応答性〕
次に、本実施形態に係る液晶性高分子金属錯体の光応答性について検討を行った。具体的には、ポリアミノウレタンフィルムの一面側に遷移金属塩溶液としての塩化銅(II)二水和物のTHF溶液を塗布することで、接触法によって液晶性高分子金属錯体の層を形成させ、ポリアミノウレタン層と液晶性高分子金属錯体層との2層構造を有するフィルムを作製した。また、液晶性高分子金属錯体の層を形成しないポリアミノウレタンフィルムを比較対照として用いた。なお、ポリアミノウレタンフィルムの作成や、塩化銅(II)二水和物のTHF溶液のポリアミノウレタンフィルムへの塗布は、図12の上部に示すスピンコート法にて行った。

【0073】
次いで、これらポリアミノウレタンフィルム及び2層構造フィルムを水平に保持し、360nmの紫外線を照射することで、それぞれのフィルムの挙動を観察した。その結果を図12及び図13に示す。

【0074】
まず、図12の中程にポリアミノウレタンフィルムに対して紫外線照射を行った際の結果を示す。図12からも分かるように、紫外線照射前のポリアミノウレタンフィルムは水平状態を保持していたが、紫外線が照射されることにより、図面上方側である光源側に湾曲する挙動が確認された。

【0075】
これはポリアミノウレタンの構造中に存在するアゾベンゼンが、紫外線の照射によってトランス型からシス型に変化することに由来するものと考えられる。

【0076】
次に、図13に液晶性高分子金属錯体層を形成した2層構造フィルムに対して紫外線照射を行った際の結果を示す。前述のように錯体化していないポリアミノウレタンフィルムでは、紫外線を照射した際に光源側に湾曲する動きが観察されたが、2層構造フィルムでは、まず錯体化した面側から紫外線を照射した際、錯体化していない面側に湾曲する動きが観察された。

【0077】
また、この錯体化していない面側に湾曲した2層構造フィルムを裏返し、錯体化していない面側から紫外線を照射すると、錯体化していない面側に更に湾曲する動きが観察された。

【0078】
この結果は、錯形成を利用することで、フィルム表裏の特性を制御できることを示している。また、樹脂、繊維、フィルムに加工した後に、金属イオン溶液を塗布することで表面を錯形成化することができることを意味しており、一種の高分子メッキの手段としても利用可能であるといえる。

【0079】
上述してきたように、本実施形態に係る液晶性を有する高分子金属錯体によれば、前述の一般式( I )にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属イオンとを有し、前記ポリアミノウレタンが有するアミノ基の窒素原子及びウレタン結合の窒素原子に前記遷移金属イオンが配位して構成されたものであり、液晶性を有する新たな高分子金属錯体を提供することができる。

【0080】
また、本実施形態に係る液晶性を有する高分子金属錯体の製造方法によれば、前述の一般式( I )にて表されるポリアミノウレタンと、遷移金属のイオンとを混合して、前記ポリアミノウレタンが有するアミノ基の窒素原子及びウレタン結合の窒素原子に前記遷移金属のイオンを配位させることとしたため、比較的容易に液晶性を有する高分子金属錯体を製造することができる。

【0081】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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