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明細書 :多糖類のナノファイバー、分散媒及びモノマーを含む分散体、並びにその分散体から得られる樹脂組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6695662号 (P6695662)
公開番号 特開2016-153470 (P2016-153470A)
登録日 令和2年4月24日(2020.4.24)
発行日 令和2年5月20日(2020.5.20)
公開日 平成28年8月25日(2016.8.25)
発明の名称または考案の名称 多糖類のナノファイバー、分散媒及びモノマーを含む分散体、並びにその分散体から得られる樹脂組成物
国際特許分類 C08L   1/00        (2006.01)
C08L   5/08        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
B29C  39/02        (2006.01)
B29C  39/24        (2006.01)
B29K   1/00        (2006.01)
FI C08L 1/00
C08L 5/08
C08L 101/00
B29C 39/02
B29C 39/24
B29K 1:00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 35
出願番号 特願2015-128599 (P2015-128599)
出願日 平成27年6月26日(2015.6.26)
優先権出願番号 2015025678
優先日 平成27年2月12日(2015.2.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年6月12日(2018.6.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】モハメド イフテカ シャムス
【氏名】矢野 浩之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】松元 洋
参考文献・文献 特開2015-000935(JP,A)
特開2015-007196(JP,A)
国際公開第2011/126038(WO,A1)
特開2014-105217(JP,A)
特開2014-058661(JP,A)
調査した分野 C08L 1/00 - 101/16
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な、ラメラ構造を有する混合物(E)であって、
前記多糖類のナノファイバー(A)が、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー(但し、セルロースを酸化して得られたセルロースナノファイバー(i)、セルロースナノファイバー(i)にアミド結合を介して炭化水素基を結合させたセルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバー(i)にイオン結合を介して炭化水素基を結合させたセルロースナノファイバーを除く)、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーである、
混合物(E)
【請求項2】
請求項1に記載の混合物(E)の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合し、分散体(D)を得る工程、及び
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去する工程
を含み、
前記多糖類のナノファイバー(A)が、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー(但し、セルロースを酸化して得られたセルロースナノファイバー(i)、セルロースナノファイバー(i)にアミド結合を介して炭化水素基を結合させたセルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバー(i)にイオン結合を介して炭化水素基を結合させたセルロースナノファイバーを除く)、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーである、
混合物(E)の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の混合物(E)中のモノマー(C)が重合した樹脂組成物(G)であって、
当該混合物(E)中のモノマー(C)重合た樹脂(F)及び当該混合物(E)の多糖類のナノファイバー(A)を含む、
樹脂組成物(G)。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂組成物(G)の製造方法であって、
請求項1に記載の混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させる工程を含む、
樹脂組成物(G)の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の樹脂組成物(G)の三次元成型体であって、
請求項1に記載の混合物(E)中のモノマー(C)が金型中で重合して樹脂(F)が生成すると共に成型された、当該混合物(E)の多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む、樹脂組成物(G)の三次元成型体。
【請求項6】
請求項5に記載の三次元成型体の製造方法であって、
(1)請求項1に記載の混合物(E)を成型用金型に入れる工程、及び
(2)混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて前記金型中で樹脂(F)を形成させると共に、生成した請求項3に記載の樹脂組成物(G)を前記金型中で成型する工程、
を含む、三次元成型体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の三次元成型体の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物にモノマー(C)を混合して分散体(D)を得る工程、
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去し、請求項1に記載の混合物(E)を得る工程、
(4)前記工程(3)で得られた混合物(E)を成形用金型中に入れる工程、及び
(5)混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させると共に、生成した請求項3に記載の樹脂組成物(G)を前記金型中で成型する工程を含
前記多糖類のナノファイバー(A)が、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー(但し、セルロースを酸化して得られたセルロースナノファイバー(i)、セルロースナノファイバー(i)にアミド結合を介して炭化水素基を結合させたセルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバー(i)にイオン結合を介して炭化水素基を結合させたセルロースナノファイバーを除く)、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーである、
三次元成型体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類のナノファイバー、分散媒及びモノマーを含む分散体、並びにその分散体から得られる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形材料の強度を高める目的で、セルロース、キチン等の多糖類のナノファイバーを添加する手法がある(特許文献1~6)。例えばセルロースナノファイバー(CNF)は、比表面積が大きく補強効果に優れている。一方で、CNFは、その表面には水酸基が多く存在するため親水性が高い。そのため、親水性の高いCNFと疎水性の高い樹脂とを混合すると、樹脂成分中でCNFが凝集してしまう問題があった。その結果、CNF含有樹脂成形材料では、CNFによる補強効果が十分に発揮できなかったり、アクリル樹脂等の透明樹脂を用いても透明性が十分に発揮できなかったりするという問題があった。
【0003】
そのため、CNF含有樹脂成形材料を作製する際には、CNFと樹脂とが均一に分散している分散体を調製することが求められている。更に、CNFと樹脂とが均一に混ざり合ったCNF含有樹脂成形材料を作製することが求められている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2013-519760号公報
【特許文献2】特開2012-116905号公報
【特許文献3】特許第5392590号
【特許文献4】特開2008-127540号公報
【特許文献5】特開2006-241450号公報
【特許文献6】特開2011-173993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、(i)分散媒中で多糖類のナノファイバーとモノマーとが均一に分散している分散体、(ii)実質的に分散媒を含まない、多糖類のナノファイバーとモノマーとの均一な混合物、(iii)樹脂中で多糖類のナノファイバーが分散している樹脂組成物、並びに(iv)樹脂中で多糖類のナノファイバーが分散している、立体構造の成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、多糖類のナノファイバーと分散媒とを混合し、次いで得られた混合物にモノマーを混合することにより、分散媒中で多糖類のナノファイバーとモノマーとが均一に分散した分散体を得ることができることを見出した。更に、その分散体に含まれるモノマーを重合させることにより、樹脂中で多糖類のナノファイバーが均一混ざり合った樹脂組成物を得られることができることを見出した。
【0007】
また、その分散体から分散媒を除去することにより、実質的に分散媒を含まない、多糖類のナノファイバーとモノマーとの均一な混合物を得ることができることを見出した。この混合物中のモノマーを成型操作と同時に重合させると(樹脂を形成させると)、樹脂中で多糖類のナノファイバーが均一に混ざり合った立体構造の成型体が容易に得られることを見出した。ここで、本発明でいう「実質的に分散媒を含まない」とは、多糖類のナノファイバーとモノマーとの混合物を用いて、そのモノマーを重合して樹脂を形成させた時に、多糖類のナノファイバーを含む樹脂組成物中で、分散媒が液滴又は気泡として残存しない程度の状態を意味する。
【0008】
即ち、本発明は下記の分散液、混合物及び樹脂組成物、並びに三次元成型体に関する。
なお、本発明明細書では、「成型体」を「成形体」と記載することもある。また、三次元成型体を立体構造の成型体と記載することもある。
【0009】
項1.
多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)を含む分散体(D)。
【0010】
項2.
前記多糖類のナノファイバー(A)が、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーである、前記項1に記載の分散体(D)。
【0011】
項3.
前記分散媒(B)が、水及び親水性有機溶媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒である、前記項1又は2に記載の分散体(D)。
【0012】
項4.
前記モノマー(C)が、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を構成する少なくとも1種のモノマーである、前記項1~3のいずれかに記載の分散体(D)。
【0013】
項5.
多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)を含む分散体(D)の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、及び
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合する工程
を含む分散体(D)の製造方法。
【0014】
項6.
実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)。
【0015】
項7.
前記多糖類のナノファイバー(A)が、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーである、前記項6に記載の混合物(E)。
【0016】
項8.
実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合し、分散体(D)を得る工程、及び
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去する工程
を含む混合物(E)の製造方法。
【0017】
項9.
多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)を含む分散体(D)を用いて、前記モノマー(C)を重合させることにより得られる樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)。
【0018】
項10.
前記多糖類のナノファイバー(A)が、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーである、前記項9に記載の樹脂組成物(G)。
【0019】
項11.
多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合し、分散体(D)を得る工程、及び
(2a)前記工程(2)で得られた分散体(D)のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させる工程
を含む樹脂組成物(G)の製造方法。
【0020】
項12.
多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合して分散体(D)を得る工程、
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去し、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を得る工程、及び
(4)前記工程(3)で得られた混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させる工程
を含む、樹脂組成物(G)の製造方法。
【0021】
項13.
(1)実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を用いて、金型中でモノマー(C)を重合させると共に、生成した多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)を成型することにより得られる樹脂組成物(G)の三次元成型体。
【0022】
項14.
前記多糖類のナノファイバー(A)が、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーである、前記項13に記載の樹脂組成物(G)の三次元成型体。
【0023】
項15.
多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)の三次元成型体の製造方法であって、
(1)実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を成型用金型に入れる工程、及び
(2)混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて前記金型中で樹脂(F)を形成させると共に、生成した多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)を前記金型中で成型する工程、
を含む、樹脂組成物(G)の三次元成型体の製造方法。
【0024】
項16.
多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)の三次元成型体の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物にモノマー(C)を混合して分散体(D)を得る工程、
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去し、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を得る工程、
(4)前記工程(3)で得られた混合物(E)を成形用金型中に入れる工程、及び
(5)混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させると共に、生成した多糖類のナノファイバー(A)と樹脂(F)とを含む樹脂組成物(G)を前記金型中で成型する工程
を含む、樹脂組成物(G)の三次元成型体の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の多糖類のナノファイバー、分散媒及びモノマーを含む分散体は、分散媒中で、多糖類のナノファイバーとモノマーとが均一に分散している。その分散体から分散媒を除去すると、実質的に分散媒が含まれず、多糖類のナノファイバーとモノマーとが均一に混ざり合った混合物となる。その分散体のモノマーを重合させ樹脂を形成させると、樹脂中で多糖類のナノファイバーが均一混ざり合った樹脂組成物となる。また、その混合物のモノマーを重合させ樹脂を形成させると、樹脂中で多糖類のナノファイバーが均一混ざり合った樹脂組成物となる。
【0026】
また、その混合物に成型操作と重合操作を行うと(混合物のモノマーを重合させ樹脂を形成させると)、樹脂中で多糖類のナノファイバーが均一に混ざり合った立体構造の成型体が容易に得られる。
【0027】
上記の樹脂組成物を用いて製造した樹脂成形材料、及び上記の混合物を用いて製造した立体構造の成型体は、多糖類のナノファイバーによる補強効果を十分に発揮できる。更に、アクリル樹脂等の透明樹脂を用いた樹脂成形材料、及び立体構造の成型体は、透明性を十分に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】高圧ホモジナイズ処理後の均質なキチンナノファイバーのFE-SEM写真である。
【図2】a:水中でアクリル樹脂モノマーとキチンナノファイバーとを機械的に撹拌した後の、懸濁液の写真である。b:キチンナノファイバーによって安定化された、樹脂モノマーと水とのエマルジョンの顕微鏡写真である。c:凍結乾燥させた、樹脂モノマーと水とのエマルジョンを用いて作製したマットのFE-SEM写真である(左1000倍写真、右30,000倍写真)。d:アクリル樹脂及びキチンナノファイバーから構成されるシートを乾燥した後の、破断面の写真である。
【図3】ナノファイバーによって安定化された、樹脂モノマーと水とのエマルジョンの模式図である。●(丸)はモノマーを表し、~(線)はナノファイバーを表す。
【図4】アクリル樹脂モノマーとキチンナノファイバーとの混合物を、機械的に圧縮してからモノマーを重合して成型シートを作製した。その成型シートの光学的透明性の変化を表す図である。成型シートの厚みは150-160μmであり、アクリル樹脂が浸み込んだナノファイバーシートの厚みは110μmである。
【図5】光学上透明なキチンナノ複合材料及び光学上透明な三次元の複合体(3D複合体、即ち三次元成型体)の作製方法を表す図である。
【図6】セルロースナノファイバーによって安定化された、樹脂モノマーと水とのエマルジョンの顕微鏡写真である。
【図7】凍結乾燥させた、樹脂モノマーと水とのエマルジョン一滴の走査型顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図8】アクリル樹脂モノマーとセルロースナノファイバーとの混合物を、種々圧力を変え110℃で機械的に圧縮し、紫外線照射してモノマーを重合して成型シートを作製した。その成型シートの光学的透明性の変化を表す図である。成型シートの厚みは180μmである。
【図9】セルロースナノファイバーとアクリル樹脂モノマーからなる組成物を金型で成型し樹脂モノマーを重合して製造した、光学的に透明な三次元の複合体(3D複合体、即ち三次元成型体)の写真である。椀型の成型体が透明であることを示すために内側に赤色の木の実を置いて撮影した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の分散体、混合物及び樹脂組成物を詳しく説明する。

【0030】
(1)分散体(D)
本発明の分散体(D)は、多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)を含む。本発明の分散体は、分散媒中で多糖類のナノファイバーとモノマーとが均一に分散している。

【0031】
多糖類のナノファイバー(A)
ナノファイバーの原料である多糖類として、デンプン(アミロース及びアミロペクチン)、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン等を使用することができる。

【0032】
前記多糖類の中でも、強度の大きなナノファイバーを得ることができるという理由から、セルロース及びキチンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を使用することが好ましい。つまり、多糖類のナノファイバーは、セルロースナノファイバー及びキチンナノファイバーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーであることが好ましい。

【0033】
セルロース、キチン等は植物細胞、カニ及び小エビの殻の主成分である。セルロース、キチン等のナノファイバーのような自然界から得られるナノファイバーは、高い分子量を備え、高度に規律正しく伸びきった鎖状の多糖結晶構造を示し、優れた機械的性質を示す。これらのナノファイバーが樹脂マトリクスの全体にわたって均一に分散する場合、そのナノファイバーにより樹脂を強化することができる。ナノファイバー強化樹脂は、更に、樹脂中の熱膨張を縮小することができる。ナノファイバーが、均一に分散すると、光学上透明な樹脂複合体を形成することができる。樹脂複合体は、光学波長(400~800nm)で10%未満の光学吸収を達成でき、ナノファイバーにより光散乱を除去することができる。セルロース、キチン等のナノファイバーで強化された樹脂複合体は、光学上透明な材料であり、光学分野における光学レンズ、電子装置部品等の精密部品に適用することができる。

【0034】
多糖類のナノファイバー(A)として、セルロース、リグノセルロース、キチン又はキトサンのナノファイバーをそのまま使用することができる。更に、これらナノファイバーの表面に存在する水酸基が、疎水化変性、カチオン変性、アニオン変性等の化学修飾された変性ナノファイバーも使用することができる。

【0035】
セルロースのナノファイバー(CNF)
セルロースの原料として用いられる植物繊維は、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物、布といった天然植物原料から得られるパルプ、使用済みの紙等が挙げられる。木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等が挙げられ、紙としては、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物繊維は、1種単独でも用いてもよく、これらから選ばれた2種以上を用いてもよい。

【0036】
これらの中で、パルプやパルプをフィブリル化したフィブリル化セルロースが好ましい原材料として挙げられる。パルプは、植物原料を化学的に、機械的に又は両者を併用してパルプ化することで得られる。例えば、ケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、及びこれらのパルプを主成分とする脱墨古紙パルプ、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプが好ましい。これらの原材料は、必要に応じ、脱リグニン、又は漂白を行い、当該パルプ中のリグニン量を調整することができる。

【0037】
これらのパルプの中でも、繊維の強度が強い針葉樹由来の各種クラフトパルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP))が特に好ましい。

【0038】
パルプは主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成される。パルプ中のリグニン含有量は、特に限定されるものではない。パルプ中のリグニン含有量は、通常0~40重量%程度であり、好ましくは0~10重量%程度である。リグニン含有量の測定は、Klason法により測定することができる。

【0039】
植物の細胞壁の中では、幅4nm程のセルロースミクロフィブリル(シングルセルロースナノファイバー)が最小単位として存在する。これが、植物の基本骨格物質(基本エレメント)である。そして、このセルロースミクロフィブリルが集まって、植物の骨格を形成している。

【0040】
植物繊維を解繊し、セルロースのナノファイバー(以下「CNF」とも記す)を調製する方法としては、パルプ等のセルロース繊維含有材料を解繊する方法が挙げられる。解繊方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕又は叩解することにより解繊する方法が使用できる。必要に応じて、上記の解繊方法を組み合わせて処理してもよい。これらの解繊処理の方法としては、例えば、特開2011-213754号公報、特開2011-195738号公報に記載された解繊方法等を用いることができる。

【0041】
CNFは、セルロース繊維を含む材料(例えば、木材パルプ等)を、その繊維をナノサイズレベルまで解きほぐした(解繊処理した)ものである。CNFの繊維径の平均値(繊維幅)は4~200nm程度が好ましく、繊維長の平均値は5μm程度以上が好ましい。CNFの繊維径の平均値は、4~150nm程度がより好ましく、4~100nm程度が更に好ましい。CNFの繊維径の平均値(平均繊維径)及び繊維長の平均値(平均繊維長)は、電子顕微鏡の視野内のCNFの少なくとも50本以上について測定した時の平均値である。

【0042】
本発明で使用されるCNFとして、リグニンを含むパルプ(リグノパルプと呼ぶ)から脱リグニンすることなく/又は含有リグニン量を調整して製造されるナノファイバー(これらのリグニンを含むナノファイバーを、リグノセルロースナノファイバーと呼び、本明細書ではリグノCNFと記載することもある)も使用することができる。

【0043】
即ち、本発明の実施をするために、リグニンを含まないCNFもリグノCNFも使用することができる。

【0044】
リグノセルロースは、植物の細胞壁を構成する、複合炭化水素高分子であり、主に多糖類のセルロース、ヘミセルロースと芳香族高分子であるリグニンから構成されていることが知られている。本発明に使用するリグノCNFの製造で使用されるリグノパルプ中のリグニン含有率は、セルロース重量に対し通常2~70重量%程度であり、好ましくは5~65重量%程度であり、より好ましくは10~60重量%程度である。

【0045】
CNFの比表面積は、70~300m2/g程度が好ましく、70~250m2/g程度がより好ましく、100~200m2/g程度が更に好ましい。CNFの比表面積を高くすることで、樹脂と組み合わせて組成物とした場合に、接触面積を大きくすることができ、樹脂成形材料の強度を向上させることができる。また、CNFは樹脂組成物の樹脂中で凝集せず、樹脂成形材料の強度を向上させることができる。

【0046】
CNFは、高比表面積(70~300m2/g程度)であり、鋼鉄と比較して軽量であり且つ高強度である。CNFは、ガラスと比較して熱変形が小さい(低熱膨張)。CNFは、高強度且つ低熱膨張であり、持続型資源材料として有用な素材である。CNFと樹脂等の高分子材料とを組み合わせて高強度及び低熱膨張とする複合材料を作製することが可能である。

【0047】
本発明では、更に、使用する樹脂に応じて、CNF及び/又はリグノセルロースナノファイバーの表面に存在する水酸基を疎水化、カチオン変性又はアニオン変性等の化学修飾することが好ましい。化学修飾(化学変性)は、CNF及び/又はリグノセルロースナノファイバーを、一般に疎水化変性又はイオン化変性するものである。変性CNF及び変性リグノセルロースナノファイバーは、樹脂との親和性が良好であり、好ましく使用することができる。

【0048】
このような化学変性CNF及び化学変性リグノセルロースナノファイバーは、特開2010-216021又は特開2011-213754に開示されている方法を基に調製することが好ましい。

【0049】
化学変性の中でも、疎水化変性は、例えば、アセチル化、プロピオニル化、ブチリル化、ラウロイル化、ステアロイル化、ベンゾイル化等のアシル化、メチル化、エチル化、ベンジル化やシアノエチル化等の置換又は非置換アルキル基によるアルキル化、シランカップリング処理等の化学処理による化学変性が好ましい。

【0050】
アシル基、アルキル基での修飾によってCNF及び/又はリグノセルロースナノファイバーの表面に存在する水酸基が疎水化される。

【0051】
本発明に使用するアシル化CNF及び/又はリグノCNFは、アセチル基、プロピオニ基、アクリロイル基(2-プロぺノイル基)、ブチロイル基などの炭素数2~4のアルキルカルボニル又はアルケニルカルボニル基でナノファイバー表面の水酸基がエステル化された、CNF及び/又はリグノCNFは、低コストで容易に製造することができることから、本発明に好適に使用することができる。

【0052】
疎水性の高い樹脂と化学修飾されたCNF(又は疎水性の高い樹脂と化学修飾されたリグノCNF)との樹脂組成物又は成形体(成型体)を製造する場合には、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、ステアロイル、オレオイル等、炭素数5~18のカルボン酸から水酸基を除去した残基で示されるアシル基、又は、安息香酸、p-安息香酸又はフェニル酢酸などの芳香族カルボン酸又は芳香族置換低級アルキルカルボン酸から水酸基を除去した残基で示されるアシル基によってナノファイバー表面の水酸基がエステル化されたCNF及びリグノCNFは疎水性が高いので、好適に本発明に使用することができる。

【0053】
この様なアシル化CNF及び/又はリグノCNFは、アシル化剤(例えば、カルボン酸ハライド又はカルボン酸無水物)をCNF又はリグノCNFと反応するか、アシル化剤(例えば、カルボン酸ハライド又はカルボン酸無水物)をセルロース又はリグノセルロースと反応したのちに解繊(フィルビル化)することにより製造できる。尚、これらカルボン酸ハライド又はカルボン酸無水物は1種類又は2種類以上を併用して用いることもできる。

【0054】
ナノファイバー表面の水酸基がアルキル基で変性されたCNF及びリグノCNF(アルキル化CNF及びアルキル化リグノCNFという)の中で、メチル基、エチル基又はプロピル基のように炭素数1~3の低級アルキル基でアルキル化されたCNF及びリグノCNFは、低コストで容易に製造できることから、本発明に好適に使用できる。

【0055】
本発明では、アミノ基を有するシランカップリング剤、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド若しくはそのハロヒドリン型化合物等の修飾によりにより、ナノファイバーの表面に存在する水酸基がカチオン変性等のイオン化変性された変性CNF及び/又は変性リグノセルロースナノファイバーを使用することも好ましい。

【0056】
カルボキシメチル又はカルボキシエチルのようなカルボキシ基を有する低級アルキル基によるアルキル化(カルボキシアルキル化という)、無水コハク酸、アルキル又はアルケニル無水コハク酸のような環状酸無水物によるモノエステル化、カルボキシル基を有するシランカップリング剤による修飾等により、ナノファイバーの表面に存在する水酸基がアニオン変性された変性CNF及び/又は変性リグノセルロースナノファイバーを本発明に使用することが好ましい。

【0057】
アルキル又はアルケニル無水コハク酸のような環状酸無水物によるモノエステル化によるCNF及び/又はリグノセルロースナノファイバーのアニオン変性では、CNF及び/又はリグノセルロースナノファイバーを、アルキル、又はアルケニル無水コハク酸によるハーフエステル化後に、生成したカルボン酸の一部、又は全部を金属水酸化物等のアルカリで中和することにより行うことが好ましい。アルキル、又はアルケニル無水コハク酸としては、炭素数4~20のオレフィン由来の骨格と無水マレイン酸骨格を持つ化合物を使用することが好ましい。具体的には、オクチル無水コハク酸、ドデシル無水コハク酸、ヘキサデシル無水コハク酸、オクタデシル無水コハク酸等のアルキル無水コハク酸、ペンテニル無水コハク酸、ヘキセニル無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、デセニル無水コハク酸、ウンデセニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、トリデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物等のアルケニルコハク酸無水物を使用することが好ましい。これらは1種類、又は2種類以上を併用して用いることができる。

【0058】
キチンのナノファイバー、キトサンのナノファイバー
キチンは、キチン含有生物由来の材料から得ることができる。キチン含有生物としては、カニ、エビ等の甲殻類、昆虫類又はオキアミなどが例示される。キチンナノファイバーの原料となるキチン含有生物由来の材料は、例えば、昆虫類の外皮、オキアミ等の殻、甲殻類の殻、外皮等を使用することができる。キチン含有生物由来の材料の中でも、キチン含量の多い生物、例えば、エビ、カニ等の甲殻類の殻及び外皮が好ましい。

【0059】
キトサンは、キチン含有生物由来の材料に含まれるキチンを脱アセチル化することで得ることができる。

【0060】
例えば、WO2010/073758に記載された解繊方法等を用いて、キチンを解繊しキチンナノファイバーを調製したり、キトサンを解繊しキトサンナノファイバーを調製したりすることができる。

【0061】
生体中のキチンナノファイバーは、その周囲及び間隙に存在する蛋白質及び炭酸カルシウム(金属塩)を含むマトリクスを有しているので、脱マトリクス処理(脱蛋白質処理及び脱灰処理)を行うことが好ましい。この方法により得られるキチンナノファイバーは、細くて均質であり、長く、分子が伸びきり鎖結晶で強度が高いものである。伸びきり鎖結晶とは、剛直性の高分子が伸びきった状態で規則正しく配列し、束になった繊維状の結晶のことである。エビ、カニ等の甲殻類のキチンは結晶性の高いアルファキチンであるため、これから得られるキチンナノファイバーは、強靭な物性を発揮する。

【0062】
以下の処理は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位等に応じて適宜選択され得る。

【0063】
脱蛋白質処理により、キチンナノファイバーを囲んでマトリックスを形成している蛋白質が除去される。脱蛋白質処理はアルカリ処理法が好ましい。アルカリ処理では、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ水溶液が好ましく用いられる。アルカリ濃度は、2~10%(w/v)程度が好ましく、3~7%(w/v)程度がより好ましく、5%(w/v)程度が更に好ましい。アルカリ処理温度は、80℃程度以上が好ましく、90℃程度以上がより好ましく、アルカリ水溶液を還流しながら行うことが好ましい。アルカリ処理時間は、数時間~3日間程度が好ましく、数時間~2日間程度がより好ましい。

【0064】
脱灰処理により、キチンナノファイバーを囲んでいる灰分、主に炭酸カルシウムが除去される。脱灰処理は酸処理法が好ましい。酸処理は塩酸の酸の水溶液を用いることが好ましい。酸濃度は、4~12%(w/v)程度が好ましく、5~10%(w/v)程度がより好ましい。酸処理温度は、10~50℃程度が好ましく、20~30℃程度がより好ましく、室温が更に好ましい。酸処理時間は、数時間~数日間程度が好ましく、1~3日程度がより好ましく、2日間程度が更に好ましい。

【0065】
キチン含有生物由来の材料から得られた外皮(キチンファイバー)を解繊処理することにより、キチンナノファイバーを得ることができる。キチンナノファイバーは乾燥すると水素結合して強固に凝集するため、キチンナノファイバーの製造方法の各処理を、材料を乾燥させずに行うことが好ましい。解繊処理には、石臼式摩砕器、高圧ホモジナイザー、凍結粉砕装置等の装置を用いることができる。石臼式磨砕機等を用いてグラインダー処理を行うことが好ましい。石臼式磨砕機等の様な、より強い負荷をかけることができる装置を用いることにより、カニ、エビ等の殻由来のアルファキチンを速やかに解繊することができる。その後、得られたキチンナノファイバーを水等の水性媒体に分散させても良い。

【0066】
キチンナノファイバーを製造するに際し、更に脱色処理を行っても良い。脱色処理は、脱蛋白質処理及び脱灰処理の後で行うことが好ましい。脱色処理は、塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、還元系漂白剤等を使用が好ましい。脱色処理は、例えば、酢酸緩衝液等の緩衝液中、1~2%程度の次亜塩素酸ナトリウムを用いて、70~90℃程度の温度で数時間行うことが好ましい。

【0067】
脱蛋白質処理、脱灰処理、脱色処理、解繊処理及び酸性試薬での処理を効率良く行うために、更に粉砕処理を行っても良い。粉砕処理は、解繊処理の直前に行うことが好ましい。粉砕処理は、ホモジナイザー処理やミキサー処理等が好ましい。粉砕処理は、例えば、家庭用フードプロセッサーにより行っても良い。

【0068】
脱灰処理されたキチン含有材料を酸性試薬にて処理することにより、キチンナノファイバーの水分散性を向上させることができる。酸性試薬での処理は、材料に酸性試薬を浸透させることが好ましく、酸の水溶液に脱灰処理されたキチン含有材料を浸漬することにより行うことが好ましい。この処理では、水分散性の向上のみならず、キチンナノファイバーの繊維幅(又は繊維径)のばらつきを抑えることもできる。酸性試薬は弱酸が好ましく、酢酸がより好ましい。弱酸の水溶液のpHは、pH2~5程度が好ましく、pH2.5~4.5程度がより好ましく、pH3~4程度が更に好ましい。処理温度は、10~50℃程度が好ましく、20~30℃程度がより好ましく、室温が更に好ましい。処理時間は、1時間~1日程度が好ましく、3~12時間程度がより好ましく、一晩処理することが好ましい。酸性試薬による処理は、解繊処理の前に行うことが好ましく、脱蛋白質処理及び脱灰処理の後に行うことが好ましい。酸性試薬による処理は、キチンナノファイバーの精製がある程度進んだ段階で行うことが好ましく、解繊処理の直前に行うことがより好ましい。

【0069】
キチン含有生物由来の材料を、脱蛋白質処理及び脱灰処理し、更に脱アセチル化処理した後、解繊処理を施すことにより、キトサンナノファイバーを得ることができる。脱蛋白処理、脱灰処理、解繊処理は、上記キチンナノファイバーの製造における処理と同様である。脱蛋白質処理と脱アセチル化処理とを同時に行うことも可能である。更に、既に脱蛋白処理及び脱灰処理を行った市販のキチン粉末を脱アセチル化処理することにより、キトサンナノファイバーを製造することも可能である。脱アセチル化処理はアルカリ処理法が好ましい。アルカリ処理による脱アセチル化では、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ水溶液が好ましい。アルカリ濃度は、20~50%(w/v)程度が好ましく、30~40%(w/v)程度がより好ましく、40%(w/v)程度が更に好ましい。アルカリ処理温度は、80℃程度以上が好ましく、90℃程度以上がより好ましく、アルカリ水溶液を還流しながら行うことが好ましい。処理時間は、30分~3日間程度が好ましく、30分~一晩程度行なうことがより好ましい。なお、キトサンナノファイバーは乾燥すると水素結合して強固に凝集するため、各処理は、材料を乾燥させずに行うことが好ましい。

【0070】
キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーの繊維径の平均値(繊維幅の平均値)は、2~30nm程度が好ましく、2~20nm程度がより好ましく、5~20nm程度が更に好ましい。ファイバーの繊維径の平均値は、電子顕微鏡観察にて観察した場合に、繊維径が2~20nm程度であるファイバーの割合が好ましくは全体の50%程度以上を占める状態である。繊維径が2~20nm程度であるファイバーは、60%程度以上がより好ましく、70%程度以上が更に好ましい。キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーは、細くて均質であり、しかも極めて長く、繊維が伸びきり鎖微結晶で強度が高いものである。キチンナノファイバー及びキトサンナノファイバーを含有する複合材料は、熱膨張が少なく、しかも優れた光透過性及び柔軟性を示す。

【0071】
多糖類のナノファイバー(A)は、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーが好ましい。

【0072】
分散媒(B)
多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合し、次いで得られた混合物にモノマー(C)を混合する。そのため、多糖類のナノファイバーとモノマーとの双方に対して分散性を向上することができる分散媒を使用することが好ましい。

【0073】
分散媒は、多糖類のナノファイバーを分散させる性質を有し、しかもモノマーを溶解しない性質のものが好ましい。親水性の高い多糖類のナノファイバーを分散体中で良好に分散できるという理由から、水及び親水性有機溶媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種の分散媒を使用することが好ましい。水性分散媒は水を含んでも良い。水を含む水性分散媒を用いた場合、多糖類のナノファイバー、モノマー等を含む水性分散液となる。

【0074】
多糖類のナノファイバー及びモノマーの分散性を向上させることができるという理由から、水と相溶性を有する低級アルコール等の親水性有機溶媒を併用しても良い。低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等の炭素数1~7のアルコール;グリセリン、イソプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の炭素数2~5の多価アルコールを例示することができる。その他の親水性有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が挙げられる。分散媒(B)としては、水のみを用いても良く、1種又は2種以上の水以外の溶媒を組み合わせて混合溶媒として用いることもできる。

【0075】
モノマー(C)
モノマーは、反応して重合体(樹脂)を生成し得る低分子化合物が好ましい。モノマー(C)を重合させることにより樹脂(F)を形成することができる。モノマーは、分散媒に分散可能な低分子化合物であることが好ましい。尚、モノマーの代わりに樹脂のオリゴマー(モノマーの低重合体)を使用することもできる。

【0076】
モノマーは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を構成する少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。モノマーは、特に加熱処理により、又は光照射若しくは放射線照射により重合が進行し、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の重合体を生成できる低分子化合物が好ましい。

【0077】
熱可塑性樹脂としては、ナイロン樹脂(ポリアミド、PA)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂又は共重合樹脂として用いても良い。熱可塑性樹脂の中でも、樹脂組成物とした場合の補強効果を十分に得ることができるという理由、また分散媒中で均一に分散できる理由から、アクリル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、PA、ポリカーボネートが好ましい。ナイロンはωアミノ酸の重縮合反応で合成されるn-ナイロンと、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合反応で合成されるn,m-ナイロンとがある。

【0078】
ナイロン樹脂を構成するモノマーとしては、ε-カプロラクタム(炭素数6、ナイロン6)、ウンデカンラクタム(炭素数11、ナイロン11)、ラウリルラクタム(炭素数12、ナイロン12)、ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)及びアジピン酸(炭素数6)(ナイロン66)、ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)及びセバシン酸(炭素数10)(ナイロン610)、ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)及びテレフタル酸(ナイロン6T)、ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)及びイソフタル酸(ナイロン6I)、ノナンジアミン(炭素数9)及びテレフタル酸(ナイロン9T)、メチルペンタジアミン(メチル基+炭素数5)及びテレフタル酸(ナイロンM5T)、カプロラクタム(炭素数6)及びラウリルラクタム(炭素数12)(ナイロン612)等が好ましい。

【0079】
ポリスチレン(PS)のモノマーには、スチレン、ポリカーボネートのモノマーとしては、ビスフェノールジフェニルカーボネート等が好ましい。

【0080】
アクリル樹脂又はメタアクリル樹脂のモノマーとしては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが、多糖類ナノファバーと共に分散体(エマルジョン)を形成し易いという理由から、これらエステル類を使用することが好ましい。

【0081】
アクリル酸エステル(アクリレート)及びメタクリル酸エステル(メタクリレート)としては、以下の単官能、2官能若しくは3官能アクリレート及び単官能、2官能若しくは3官能メタクリレートが好ましい。特に、本発明の製造方法において、エマルジョン(分散体)調製の容易さとその後の工程でのモノマーとナノファイバーの均一な混合物の調製の容易さの観点から、これらアクリル酸エステル(アクリレート)及びメタクリル酸エステル(メタクリレート)のうちで、常温で液体のものが好ましい。

【0082】
単官能アクリレート

【0083】
【表1】
JP0006695662B2_000002t.gif

【0084】
2官能アクリレート

【0085】
【表2】
JP0006695662B2_000003t.gif

【0086】
多官能アクリレート

【0087】
【表3】
JP0006695662B2_000004t.gif

【0088】
単官能メタクリレート

【0089】
【表4】
JP0006695662B2_000005t.gif

【0090】
2官能及び多官能メタクリレート

【0091】
【表5】
JP0006695662B2_000006t.gif

【0092】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂(尿素樹脂)、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、ケイ素樹脂、ポリイミド等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独又は2種以上組み合わせて使用できる。エポキシ樹脂を用いる場合は。硬化剤を配合することができる。

【0093】
モノマーが熱硬化性樹脂を構成する場合、エポキシ樹脂の構成成分(プレポリマー)としては、ビスフェノールA及びエピクロルヒドリンの共重合体が好ましい。フェノール樹脂の構成成分として、フェノール及びホルムアルデヒドからなるオリゴマー(レゾールまたはノボラック)が好ましい。ユリア樹脂の構成成分として、尿素及びホルムアルデヒドとが好ましい。メラミン樹脂の構成成分として、メラミン及びホルムアルデヒドが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂の構成成分としては、無水マレイン酸とグリコールとの縮合体等の不飽和エステルが好ましい。ポリウレタンの構成成分として、各種ジイソシアネート及び各種ジオールモノマー又はトリオール(グリコールを主とするポリオール等)が好ましい。

【0094】
熱硬化性樹脂を構成するモノマーは、通常、分散媒体への分散性または溶解性の異なる複数種のモノマーを組み合わせて使用される。本発明の方法によりナノファイバーと熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を製造するには、分散媒への分散を容易にするためにこれらモノマーからなるオリゴマーを使用することが好ましい。

【0095】
その他の成分
上記分散体中に含まれる各成分に加え、例えば、相溶化剤;界面活性剤(上記以外のもの);でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;着色剤;可塑剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤等の添加剤を配合してもよい。また、使用するモノマーまたはオリゴマーの種類により、重合触媒、イオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤を配合してもよい。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されてもよい。

【0096】
分散体(D)の組成
分散体(D)中の多糖類のナノファイバー(A)の含有割合は、樹脂組成物とした場合の補強効果を十分に得ることができるという理由、また分散媒(B)中で均一に分散できる理由から、分散体(D)中に0.01~5質量%程度含まれることが好ましく、0.05~3質量%程度含まれることがより好ましく、0.1~2質量%程度含まれることが更に好ましい。

【0097】
分散体(D)中の分散媒(B)の含有割合は、多糖類のナノファイバー(A)及びモノマー(C)を均一に分散できる理由から、分散体中に60~99.8質量%程度含まれることが好ましく、80~99質量%程度含まれることがより好ましく、90~98質量%程度含まれることが更に好ましい。

【0098】
分散体(D)中のモノマー(C)の含有割合は、樹脂組成物とした場合の補強効果を十分に得ることができるという理由、また分散媒(B)中で均一に分散できる理由から、分散体(D)中に0.1~50質量%程度含まれることが好ましく、1~40質量%程度含まれることがより好ましく、2~30質量%程度含まれることが更に好ましい。

【0099】
分散体(D)中で、モノマー(C)に対する多糖類のナノファイバー(A)の含有量は、前記と同じ理由から、モノマー(C)100質量部に対して0.01~300質量部程度含まれることが好ましく、0.1~100質量部程度含まれることがより好ましく、1~50質量部程度含まれることが更に好ましい。

【0100】
分散体(D)は、通常液状である。分散体(D)のpHは、実用上4~11程度の範囲が好ましく、6~8の範囲にあることがより好ましい。pH調整には、塩基性物質又は酸性物質を用いて行うことが行うことができる。塩基性物質としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基;トリエタノールアミンやジイソプロパノールアミン等の有機アミン類;アルギニン、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸等を挙げることができる。また、酸性物質としては、塩酸、硝酸、メタスルホン酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等の無機酸及び有機酸を挙げることができる。

【0101】
(2)分散体(D)の製造方法
本発明の分散体(D)の製造方法は、
分散体(D)が多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)を含み、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、及び
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合する工程
を含む。

【0102】
多糖類のナノファイバー(A)は、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、化学修飾セルロースナノファイバー、化学修飾リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー及びキトサンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のナノファイバーが好ましい。モノマー(C)は、重合して樹脂(F)を形成する低分子化合物であり、透明な樹脂を形成させる場合には、ポリエステル、アクリル樹脂、透明エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、透明AS樹脂、ABS樹脂等の透明樹脂を構成するモノマーが好ましい。

【0103】
分散体(D)の製造方法では、多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)の順に、それらの成分を決めることが重要である。

【0104】
多糖類のナノファイバー(A)と樹脂(F)とからなる透明な樹脂組成物(G)を製造するには、多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)の均一な分散体(D)を調製することが重要である。その分散体(D)から、分散媒(B)を除去することにより、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を調製することができる。この混合物(E)を用いて、混合物(E)に含まれるモノマー(C)を重合させることにより、透明な樹脂組成物(G)を製造することができる。

【0105】
本発明の分散体を用いることにより、三次元成形又は成型が可能な複合材料を製造することが可能となる。この分散体は簡単なプロセスで製造でき、複雑な形状の成型体又は成形体に適用できる。ナノファイバーを、極性の近い水等の分散媒中に分散させ、次いでそこにその分散媒と極性が異なるアクリルモノマー等のモノマーを添加する。次いでその混合物を強く撹拌しエマルジョンを形成させ、次いでそれを濾過などにより分散媒を取除く。その結果、ナノファイバーの網の目の間に、油滴の様にモノマーがトラップされ、残る。すなわち、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)が調製される。このようにして調製した上記混合物(E)を加熱し、混合物(E)中のモノマーを重合しながら成型又は成形することにより、良好に三次元成形又は成型することができる。この成型体又は成形体は優れた透明性を示し、少ないナノファイバー含有量(繊維量)であっても高い補強性を示す。

【0106】
本発明の分散体の製造方法は、工程(1)において、多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する。分散体の製造方法では、多糖類のナノファイバー(A)の極性の程度に合わせて、分散媒(B)を選択することが重要である。そのようにして選択した分散媒(B)は、多糖類のナノファイバー(A)を分散させることができる。

【0107】
多糖類のナノファイバー(A)として未変性のセルロース、未変性のリグノセルロース又はキチンのナノファイバーをそのまま使用する場合、分散媒(B)は、非極性溶媒を使用すると未変性のセルロース、未変性のリグノセルロース又はキチンのナノファイバーは凝集するという理由から、水、アセトン、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、これら水溶性有機溶媒と水の混合溶媒等の極性溶媒を使用することが好ましい。

【0108】
多糖類のナノファイバー(A)として表面に存在する水酸基がカチオン変性、アニオン変性等の化学修飾された変性ナノファイバーをそのまま使用する場合も、分散媒(B)は、前記極性溶媒を使用することが好ましい。

【0109】
本発明の分散体の製造方法は、次の工程(2)において、工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合する。分散体の製造方法では、ナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物にモノマー(C)を加えた時にエマルジョンを形成するようなモノマー(C)を選択することが重要である。

【0110】
分散媒(B)として、水、水溶性有機溶媒等の極性溶媒を使用する場合、これら溶媒に溶解するモノマー(C)を選択すると、エマルジョンが形成し難いという理由から、例えば、アクリル樹脂モノマー又はメタクリル樹脂のモノマーを選択する場合には、上記の溶媒に対して溶解度の小さい前記のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等を使用することが好ましい。

【0111】
工程(1)及び(2)の混合は、撹拌等により行なうことができる。撹拌にあたっては遊星撹拌機、超音波ホモジナイザー、プロペラ撹拌機等を使用することが好ましい。分散させるための混合時間は、分散媒(B)中で、多糖類のナノファイバー(A)及びモノマー(C)の分散の程度に応じて適宜設定できる。また、ミキサー、ブレンダー、二軸混練機、ニーダー、ラボプラストミル、ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星攪拌装置、3本ロール等の混合又は攪拌できる装置で混合、攪拌する方法を用いても良い。混合温度は、分散媒(B)中で、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)とを均一に混合することができるという理由から、実用上5~40℃程度が好ましく、10~30℃程度がより好ましい。

【0112】
(3)混合物(E)及びその製造方法
本発明の混合物(E)は、実質的に分散媒(B)を含まず、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)とを含む。混合物(E)は、前記分散体(D)から分散媒(B)を除去することにより、実質的に分散媒(B)を含まない。混合物(E)は、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)とが均一に混ざり合っている。ここで、本発明でいう「実質的に分散媒を含まない」とは、多糖類のナノファイバーとモノマーとの混合物を用いて、そのモノマーを重合して樹脂を形成させた時に、多糖類のナノファイバーを含む樹脂組成物中で、分散媒が液滴又は気泡として残存しない程度の状態を意味する。

【0113】
混合物(E)を構成する多糖類のナノファイバー(A)及びモノマー(C)や、実質的に取り除かれる分散媒(B)は、前記分散体(D)で記したものと同じである。

【0114】
混合物(E)の製造方法は、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合し、分散体(D)を得る工程、及び
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去する工程
を含む。

【0115】
この製造方法により、混合物(E)は、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)とを均一に分散された状態で含み、実質的に分散媒(B)を含まない。

【0116】
混合物(E)の製造方法の工程(1)及び(2)は、前記分散体(D)の製造方法で記した工程(1)及び(2)と同じである。

【0117】
工程(3)の分散体(D)から分散媒(B)を除去する方法は、吸引ろ過、脱水、乾燥、等により行なうことが好ましい。

【0118】
この方法により、分散体(D)から分散媒(B)を除去した後は、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)とが均一に混ざり合った状態、言い換えるとモノマー(C)内に多糖類のナノファイバー(A)が一様に埋め込まれたネットワークを形成した状態を保持することができる。この混合物中のモノマーを成型操作と同時に重合させると(樹脂を形成させると)、樹脂中で多糖類のナノファイバーが均一に混ざり合った立体構造(三次元構造)の成型体を得ることができる。

【0119】
分散体(D)及び混合物(E)の説明
図2aに、分散媒(B)として水を用いて、その分散媒(B)中に、モノマー(C)としてアクリル樹脂を構成するモノマーと、多糖類のナノファイバー(A)としてキチンのナノファイバーとが混ざり合った水懸濁液(分散体(D))を表す。

【0120】
図2bに、そのキチンのナノファイバー(多糖類のナノファイバー(A))によって安定化された、アクリル樹脂モノマー(C)と水(分散媒(B))とのエマルジョンの顕微鏡写真を表す。

【0121】
図3に、水(分散媒(B))中で、多糖類のナノファイバー(A)によってモノマー(C)(重合して樹脂(F)を形成する成分)が安定化されたエマルジョンの模式図を表す。●(丸)はモノマーを表し、~(線)はナノファイバーを表す。

【0122】
(4)樹脂組成物(G)及びその製造方法
本発明の樹脂組成物(G)は、多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)を含む分散体(D)を用いて、そのモノマー(C)を重合させるにより得られる樹脂(F)を含む。また、本発明の樹脂組成物(G)は、実質的に分散媒(B)を含まず、多糖類のナノファイバー(A)及びモノマー(C)を含む混合物(E)を用いて、そのモノマー(C)を重合させるにより得られる樹脂(F)を含む。

【0123】
樹脂組成物(G)を構成する多糖類のナノファイバー(A)、分散媒(B)及びモノマー(C)は、前記分散体(D)又は混合物(E)で記したものと同じである。樹脂組成物(G)は、多糖類のナノファイバー(A)と、モノマー(C)を重合させることにより生成したた樹脂(F)とが樹脂組成物(G)中で均一に混ざり合っていることが特徴である。

【0124】
樹脂組成物(G)の製造方法は、
多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合し、分散体(D)を得る工程、及び
(2a)前記工程(2)で得られた分散体(D)のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させる工程
を含む。

【0125】
また、樹脂組成物(G)の製造方法は、
多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)の製造方法であって、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合して分散体(D)を得る工程、
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去し、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を得る工程、及び
(4)前記工程(3)で得られた混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させる工程
を含む。

【0126】
これらの製造方法により、モノマー(C)は重合され、樹脂(F)と多糖類のナノファイバー(A)とが均一に混ざり合った樹脂組成物(G)を得ることができる。分散体(D)又は混合物(E)中のモノマー(C)を成型操作と同時に重合させると(樹脂(F)を形成させると)、樹脂(F)中で多糖類のナノファイバー(A)が均一に分散した立体構造の成型体を得ることができる。

【0127】
樹脂組成物を作製する場合、混練機等を用いて、(i)多糖類(繊維)を解繊し、多糖類のナノファイバーを得て、(ii)同時に多糖類と樹脂成分とを混練し、多糖類又は多糖類のナノファイバーと樹脂成分とを複合化することも可能である。

【0128】
しかしながら、透明樹脂組成物を作製する場合、従来の混練方法(複合化方法)では、樹脂組成物の透明性を維持することが困難であった。例えば、混練中に、多糖類(繊維)が絡まったり、樹脂組成物中に入った空気が除けなかったりすることにより、樹脂組成物の透明性が得られなかった。この原因は、樹脂組成物中で、多糖類(又は多糖類のナノファイバー)と、重合して樹脂を構成するモノマーとが均一に分散されていないことであると考えられる。更に、樹脂組成物は、多糖類(繊維)間で水素結合が形成されているため、十分に変形できず、良好に三次元成形(成型)できないという問題があった。

【0129】
本発明の実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)は可塑性が高い。この混合物中のモノマーを重合しながら加圧成形することが可能であるので、微細構造の金型を使用し成形操作を行った場合でも金型の細部にこの混合物が行きわたり、そこでモノマーが重合する。したがって、本発明によると、きわめて緻密な三次元構造の透明な成形物でも製造できるという、利点がある。

【0130】
なお、不透明な成形物が必要な場合には、混合物(E)の調製に不透明なモノマーを使用したり、またはモノマーに、例えば、顔料その他無機微粒子を混合したりすることにより、不透明な三次元構造の透明な成形物でも製造することができる。

【0131】
樹脂組成物(G)において、多糖類のナノファイバー(A)は、0.1~50質量%程度含まれることが好ましく、0.5~40質量%程度含まれることがより好ましく、1~30質量%程度含まれることが更に好ましい。樹脂組成物とした場合に多糖類(又は多糖類のナノファイバー)とモノマー(C)とが均一に分散された状態を維持でき、樹脂成形体(成型体)が補強効果を示し、優れた透明性を示すフィルム、シート等の樹脂成形体(成型体)を製造することができる。

【0132】
樹脂組成物(G)において、樹脂(F)は主要成分であり、50~99.9質量%程度含まれることが好ましく、60~99.5質量%程度含まれることがより好ましく、70~99質量%程度含まれることが更に好ましい。これにより、樹脂組成物(G)中で多糖類のナノファイバー(A)が均一に分散された状態を維持できる。樹脂組成物(G)中で多糖類のナノファイバー(A)が均一に分散された状態になるその他の理由は、前記と同じである。

【0133】
樹脂組成物(G)において、樹脂(F)(モノマー(C)の重合物)100質量部に対する多糖類のナノファイバー(A)の含有量は、前記と同じ理由から、0.1~100質量部程度含まれることが好ましく、0.5~100質量部程度含まれることがより好ましく、1~50質量部程度含まれることが更に好ましい。樹脂(F)に対する多糖類のナノファイバー(A)の含有量は、分散体(D)又は混合物(E)に添加するモノマー(C)の含有量を元に算出できる。

【0134】
樹脂組成物(G)の製造方法において、(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物に、モノマー(C)を混合し、分散体(D)を得る工程、及び(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去し、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を得る工程のうち、工程(1)及び(2)は、前記分散体(D)又は混合物(E)の製造方法で記した工程(1)及び(2)と同じである。工程(1)及び(2)の混合方法は、上記と同じ様に、撹拌等により行なうことができる。

【0135】
樹脂組成物(G)の製造方法でも、分散体(D)又は混合物(E)を製造する際には、先ず多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合し(工程(1))、次いでその混合物にモノマー(C)を混合する(工程(2))順番で、それらの成分を決めることが重要である。先ず、多糖類のナノファイバー(A)の極性の程度に合わせて、分散媒(B)を選択して、混合することが重要である。次に、その混合物に含まれる分散媒(B)の極性の程度に合わせて、モノマー(C)を選択して、混合することが重要である。分散媒(B)中で、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)とが均一に分散されてエマルジョンを形成することができる。

【0136】
樹脂組成物(G)の製造方法では、混合物(E)に含まれるモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させる工程を含む。これにより、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)とが均一に混ざり合った状態でモノマー(C)が重合され、重合生成物である樹脂(F)と多糖類のナノファイバー(A)が均一に混ざり合った状態の樹脂組成物(G)が製造される。

【0137】
混合物(E)は可塑性で三次元成形用の鋳型内(金型内)で十分に変形でき、三次元成形(成型)用の鋳型内で成形と共にモノマーが重合し樹脂組成物(G)が生成するので良好な三次元成形体(成型体)が製造できる。この混合物(E)を用いると、優れた透明性を示すフィルム、シート等の樹脂成形体(成型体)も得ることができる。樹脂組成物(G)の中に均一に分散された状態で存在する多糖類のナノファイバー(A)は樹脂組成物(G)に対して補強効果を良好に発現でき、従って、樹脂組成物(G)からなる成形材料及び成形体(成型体)の機械的強度を高めることができる。

【0138】
工程(4)の混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させ方法は、使用するモノマーにもよる。例えば、重合触媒、イオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤を配合しておき加熱下又は/及び光照射のもとで行なうことが好ましい。この方法では、分散体(D)からの分散媒(B)を除去した後で、モノマー(C)を重合させる。

【0139】
アクリル樹脂モノマー、スチレン樹脂モノマー、アクリロニトリルとスチレンの共重合樹脂(AS樹脂)用モノマー、アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレン 共重合樹脂(ABS樹脂)用のモノマー等のビニル系樹脂のモノマー(ビニル化合物)と、ナノファイバーとを含む混合物(E)を使用して成型体を作製する場合、加熱又は/及び紫外線(UV)照射により、これらモノマーを重合させることができる。

【0140】
そして、加熱によりモノマーを重合させた後に、更にUV硬化装置を用いて、紫外線硬化させ、成型体を作製することも可能である。

【0141】
加熱による重合の場合、その加熱温度は、使用するモノマー、重合開始剤等に依存するが、30℃~150℃程度が好ましい。

【0142】
(5)成型体(成形体)
本発明の混合物(E)を用いて、フィルムのような平面構造の成型体に加え、従来の方法と比べて、より微細で複雑な構造を有する三次元の成型体も製造することができる。立体構造の成型体では、樹脂(F)中で多糖類のナノファイバーが分散している。

【0143】
本発明の、ナノファイバー (A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)の三次元成型体の製造方法は、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を用いて、成型用金型に入れて、モノマー(C)を重合させて、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との樹脂組成部を生成させるとともにこれを成型することが特徴である。

【0144】
即ち、本発明の三次元成型体の製造方法は、
(1)実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を成型用金型に入れる工程、及び
(2)上記混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて前記金型中で樹脂(F)を形成させると共に生成した多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)を前記金型中で成型する工程、
を含むものである。

【0145】
上記混合物(E)の製造方法は、前記と同じであるが、混合物(E)の製造工程を含めて本発明の三次元成型体の製造工程を記載すると、以下のとおりである。

【0146】
即ち、本発明の三次元成型体の製造方法は、
(1)多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)とを混合する工程、
(2)前記工程(1)で得られた多糖類のナノファイバー(A)と分散媒(B)との混合物にモノマー(C)を混合して分散体(D)を得る工程、
(3)前記工程(2)で得られた分散体(D)から分散媒(B)を除去し、実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を得る工程、
(4)前記工程(3)で得られた混合物(E)を成形用金型中に入れる工程、及び
(5)混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて樹脂(F)を形成させると共に、生成した多糖類のナノファイバー(A)と樹脂(F)とを含む樹脂組成物(G)を前記金型中で成型する工程
を含むものである。

【0147】
本発明の方法で光学上透明な樹脂モノマーを用いることにより、透明な成型体を作製することもできる。本発明の方法で製造される樹脂組成物からなる成型体は、樹脂内に均一に分散して存在する多糖類のナノファイバーで強化されていることから強度に優れるとともに熱膨張率が小さい(例えば、15ppm/K程度の低熱膨張率)。従って、従来のナノファイバーを含有する繊維強化プラスチック分野に加え、より高い精密さが要求される三次元構造の成形体(成型体)分野にも使用できる。

【0148】
これらの製造方法により、成型用金型中で、樹脂組成物(G)に含まれるモノマー(C)は重合され、樹脂(F)中で多糖類のナノファイバー(A)が均一に混ざり合った三次元成型体を得ることができる。分散体(D)又は混合物(E)中のモノマー(C)を成型操作と同時に重合させると(樹脂を形成させると)、樹脂(F)中で多糖類のナノファイバー(A)が均一に混ざり合った立体構造の成型体を得ることができる。

【0149】
実質的に分散媒(B)を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とモノマー(C)との均一な混合物(E)を成型用金型に入れ、次いで、その混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて前記金型中で樹脂(F)を形成させると共に、生成した多糖類のナノファイバー(A)及び樹脂(F)を含む樹脂組成物(G)を前記金型中で成型することで、微細構造の金型を使用し成型操作を行った場合でも金型の細部にこの混合物が行きわたり、そこでモノマーが重合する。従って、本発明によると、極めて緻密な三次元構造の透明な成型物でも製造できる。

【0150】
不透明な成型物が必要な場合には、混合物(E)の調製に不透明なモノマーを使用したり、又はモノマーに、例えば、顔料その他無機微粒子を混合したりすることにより、不透明な三次元構造の透明な成形物でも製造することができる。成型体の強度は高く、優れた透明性を示すフィルム、シート等を製造することができる。

【0151】
混合物(E)は可塑性で三次元成型用の鋳型内で十分に変形でき、三次元成型用の鋳型内で成型と共にモノマーが重合し樹脂組成物(G)が生成する。

【0152】
成型方法は、成型用金型を用いて行うことができる。成型方法は、射出成型、押出成型、ブロー成型、真空成型、圧空成型、圧縮成型等が好ましい。

【0153】
射出成型では、シリンダー中で、混合物(E)の材料を加熱して流動状態にして、閉じた金型に圧入して成形することができる。

【0154】
押出成型では、混合物(E)の材料を押出し機の中で加熱・加工して流動状態にして、型から押出して成形することができる。

【0155】
ブロー成型では、混合物(E)をパイプ(ホットパリソン法)状又は2枚の板状(ホットシート法)に押出し、金型でしめきり、空気を吹き込んで中空成形品をつくる。シートを空気圧により型内で膨らませ、金型に密着させて成形することができる。

【0156】
真空成型では、混合物(E)のシートを加熱軟化させ、シートを型の上にのせて、シートと型の間の空気を抜いて真空にし、型に圧着させて成形し、冷却固化させて取り出すことができる。

【0157】
圧縮成型では、混合物(E)の材料を金型に入れ、圧力と熱をかけて成形することができる。

【0158】
成型時にかける圧力、成型時間及び成型温度は、成型機、樹脂等に合わせて、適宜調整する。

【0159】
上記混合物(E)中のモノマー(C)を重合させて、ナノファイバー(A)と樹脂(F)とを含む樹脂組成物(G)を成型用金型中で生成させて成型するには、使用するモノマーあるいは使用する重合触媒にもよるが加熱又は及び光照射(例えば紫外線照射)による重合方法を用いると操作が簡単で好ましい。

【0160】
また、成型金型内でモノマー(C)を重合して、樹脂組成物(G)を生成させると共に、成型された成型物はそれに含まれる樹脂(F)の重合度を更に上げてより強固にするために、成型用金型から出してからさらに加熱又は光照射することが好ましい。

【0161】
成型樹脂として、紫外線硬化型の樹脂モノマーを使用する場合、成型後の成型体に対して紫外線照射し、樹脂モノマーを紫外線硬化させることが可能である。

【0162】
本発明の方法で製造された樹脂組成物、樹脂成型体は、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;携帯電話等の移動通信機器等の筺体、構造材、内部部品等;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、コンテナー等の分野に使用することができるほか、本発明の方法で製造された樹脂組成物、樹脂成形体(樹脂成型体)は、透明性と強度が要求される光学分野、構造材料分野、建材分野等の種々の用途に好適に使用することができる。
本発明の方法で製造される透明基板等の成形体(成型体)は透明性が高く、例えば、有機電界発光素子、イメージセンサ、太陽電池等の受光素子に用いる透明基板の材料として好適に用いることができる。
また、本発明の方法で製造される透明基板を用いることにより、電子機器(デジカメ、スキャナ等)の性能向上(光学特性、消費電流の低減、使用時間の延長等)が期待できる。また、本発明の方法で製造される透明基板は自動車、電車、船舶等の移動体の窓材料、ディスプレイ、住宅、建築物、各種光学部品等、透明性が要求される用途への使用も可能である。

【0163】
そして、本発明のセルロース、キチン等の多糖類のナノファイバーにより強化された樹脂組成物は、光学的性質及び熱力学的性質に優れる。その樹脂組成物を用いると、光学的に透明性の高い有用な材料を生産することができる。この材料は、光学レンズ、電子装置部品等の光学分野における精密部品に適用可能である。

【0164】
本発明により、透明性と強度に優れ、かつ、低熱膨張の三次元の精密構造体を容易に製造できる。従って、本発明の製造方法は、光学レンズ等の光学精密部品、透明な三次元構造の工業部品等の製造に特に有利に適用できる。

【0165】
更には、本発明により、従来の方法では製造が困難な、低熱膨張で、かつ、高強度の微細な複雑構造三次元の成形体(成型体)も製造することができる。従って、本発明の樹脂組成物、三次元成型体及びその製造方法は、医療・歯科材料、例えば、人工義歯・義歯床の製造に適用できる。

【0166】
<実施例>
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

【0167】
[実施例1]
キチンナノファイバーとアクリル樹脂モノマーの、実質的に分散媒を含まない均一な混合物と成型体の製造

【0168】
(1)キチンナノファイバーの準備
多糖類のナノファイバー(A)としてキチンナノファイバーを調製した。

【0169】
カニの殻から得られ、商業的に入手できるα-キチン粉末を出発物質として使用した。水中で0.4 wt%の濃度のスラリーを形成するように、乾燥キチン粉末を水の中で分散させた。そのキチンのスラリーに酢酸を添加し、pHをpH3~4に調整し、キチンのフィブリル化を促進させた。家庭用ブレンダーを用いて、そのスラリーを粗く粉砕し、そのスラリーから気泡を除くために、1時間撹拌した。次いで、そのスラリーを高圧ホモジナイザー(Star Burst, Sugino Machine Co. Ltd.)で処理した。その懸濁液(スラリー)のホモジナイザーによる処理は、30回繰り返した。

【0170】
(2)分散体の作製
乳化プロセスを説明する。分散媒(B)として水を用い、モノマー(C)としてアクリル樹脂(樹脂(F))を構成するモノマー(新中村化学工業株式会社、A-BPE-10)を用いた。

【0171】
エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
2.2 Bis〔4-(AcryloxyPolyethoxy〕Phenyl〕Propane
(A-BPE-10、新中村化学工業株式会社)
外観:淡黄色透明液体、分子量:776、色数:70(APHA)、
比重:1.137(25℃)、粘度:550(mPa・s/25℃)、屈折率:1.516、Tg:-12℃

【0172】
【化1】
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【0173】
キチンナノファイバー懸濁液(0.5gのキチンナノファイバー及び166gの水を含む懸濁液)と、4.5gのアクリル樹脂のモノマーとを、60分間激しく撹拌して混合させた。これにより、アクリル樹脂のモノマー及びキチンナノファイバーの混合物を3wt%含む水性懸濁液を調製した。

【0174】
次いで、混合した懸濁液を、15分間機械的に撹拌した(Vita-Mix Blender, Osaka Chem. Co. Ltd.)。得られたエマルジョンに、蒸留水を加えて、約0.1%(w/w)の濃度になるように薄めた。その試料を、光学顕微鏡(VHX-200, KEYENCE)を用いて観察した。

【0175】
次いで、そのスラリーを-40℃で凍結乾燥させた。次いで、そのスラリーを、イオンスパッターコーター(JFC-1600, JEOL Ltd.)を用いて、白金(Pt.ca.2nm)でコーティングした。次いで、その試料を、FE-SEM(JSM-6700F JEOL)を用いて観察した。

【0176】
多重散乱効果を回避するために、エマルジョンの試料を、蒸留水を加えて、約0.1%(w/w)の濃度になるように薄めて、スパチュラを用いて優しく撹拌し、完全に分散させた。その試料を、レーザー散乱粒度分布アナライザー(LA-950V2, HORIBA Ltd.)を用いて分析した。

【0177】
(3)ナノ複合材料の作製
(シート状の実質的に分散媒を含まないキチンナノファイバーと樹脂モノマーとの均一な混合物)
エマルジョン混合物を、金属メッシュ(300 mesh)及びポリテトラフルオロエチレン・メンブレンフィルター(0.1μm、Advantech Co. Ltd.)を用いて吸引濾過し、直径40mmの湿った薄いシート(a wet thin sheet)を作製した。濾過物を、コンベクションオーブンを用いて、4時間、50℃で乾燥させた。その乾燥シート(シート状のキチンナノファイバーと樹脂モノマーとの均一な混合物及びアクリル樹脂モノマーからなるキチンナノファイバーシート)の破断面を電界放出走査電子顕微鏡で観察した。

【0178】
アクリル樹脂モノマー-キチンナノファイバーシートを、2つのガラス板間に置き、異なるプレス圧力の下で、10分間、110℃で機械的に圧縮した。この時アクリル樹脂モノマーの重合が進行し、アクリル樹脂が生成する。その試料を、圧力下、外界温度まで冷却し、直ちにUV硬化装置(20 J /cm2, F300S UV lamp system and LC6 benchtop conveyor, Fusion UV Systems, Inc.)を用いて、アクリル樹脂をさらにUV硬化させ、シート状の複合体を作製した。

【0179】
懸濁液全体中の実際のキチン含有量は、各成分(樹脂及びキチン)の固形分に基づいて算出した。複合体中の繊維含有量は、最初の繊維の投入重量及び最終の複合体のオーブン乾燥重量に基づいて算出した。複合体中の繊維含有量は、13~15%の範囲であった。

【0180】
(4)複合体のキャラクタリゼーション
直線透過率(Linear light transmittance)を、直径60nm積分球付のUV可視分光計(U-4100, Hitachi High-Tech. Corp.)を用いて、200~800nmの波長で測定した。試料を積分球入口から25cmの所に置き、その直線透過率を測定した。熱膨張率(Coefficients of thermal expansion、CTE)を、熱力学アナライザー(TMA/SS6100, SII Nanotechnology Inc.)を用いて測定した。試験片を、長さ25mm、幅3mm、厚み150-160μm、スパン20nmに調製した。

【0181】
窒素雰囲気下、5℃/minの昇温速度で、3gの加重下で、3回測定を行なった。その試料のCTEの評価は、2回目の測定で、20~150℃で平均値として決定した。

【0182】
(5)実験結果
図1は、ホモジナイズプロセス(均質化処理)後の、キチンナノファイバーの電界放出走査電子顕微鏡(a field emission scanning electron microscope)の写真(FE-SEM)である。直径10~20nmのキチンナノファイバーから成る高度に拡張した表面積が得られた。

【0183】
十分に分散させたキチンナノファイバー懸濁液(0.5gのキチンナノファイバー及び166gの水を含む懸濁液)と、4.5gのアクリル樹脂のモノマーとを撹拌させ、次いで機械的に混合させて、アクリル樹脂のモノマー及びキチンナノファイバーの混合物を3wt%含む水性懸濁液を調製した。

【0184】
キチンナノファイバー及びアクリル樹脂モノマーを含む水溶液を激しく撹拌させて、水中で分散した樹脂モノマーの小滴(droplets)を形成させた(Pickering emulsion、ラムスデン現象)。これは、数ヶ月間安定して存在する白い粘性エマルジョンであった(図2a)。その懸濁液の光学顕微鏡写真では、ナノファイバー分散がエマルジョンの安定化に影響があることを明示した(図2b)。動的光散乱方法によって評価された樹脂小滴(resin droplet)の平均サイズは、10μm未満であった。凍結乾燥させたエマルジョンのマットのFE-SEM写真は、リボン状材料から成る多孔質構造を示した(図2c左)。高倍率写真ではリボン状材料を確認でき、キチンナノファイバーがアクリル樹脂モノマー内に一様に埋め込まれたネットワークを形成していることが確認できた(図2c右)。

【0185】
樹脂モノマーマトリックス中のナノファイバーの均一な分布が確認されたので、混入した空気を除去するために、凍結乾燥されたマットを、15MPa及び110℃で圧縮成形した。しかし、これでは、透明な複合体を得ることができなかった。樹脂-ナノファイバーマットを荷重下で変形させたが、混入した空気は、三次元の緻密なナノファイバー構造のために、完全には除去できなかった。

【0186】
この問題を解決するために、濾過する方法を検討した。

【0187】
キチンナノファイバー及びアクリル樹脂モノマーを含む水溶液を、0.1μmメンブレンフィルターを使用して、ゆっくりと濾過し、湿ったシート(a wet sheet)を作製した。その結果、ナノファイバーがメンブレンフィルターにより濾過されない条件で、殆どのアクリル樹脂モノマー(オーブン乾燥重量から測定すると、約70%の量)をシートに保持することができた。キチンナノファイバーでピッカーリングエマルジョン(Pickering emulsion)を濾過することにより、アクリル樹脂モノマー(アクリルモノマー)と水を分離することができた。ある程度の量の水は、キチンナノファイバーのネットワーク中に保持されるが、殆どの水は分離され、親水性のナノファイバーのネットワークの中に疎水性のアクリルモノマーが閉じ込められた。

【0188】
これから、実質的に水(分散媒(B))を含まない、多糖類のナノファイバー(A)とアクリルモノマー(モノマー(C))との均一な混合物(E)を作製することができた。

【0189】
図2dは、乾燥の後の樹脂モノマー-ナノファイバーシート(モノマーとナノファイバーの均一な混合物からなるシート)の破断面のFE-SEM写真である。その複合体はラメラ構造をはっきりと表していた。その複合体の断面で、ナノファイバーが濃縮して面内ネットワークを形成していた。得られた樹脂モノマー-ナノファイバーシートは不透明でであった。しかし、樹脂モノマー-ナノファイバーシートを、110℃で機械的に圧縮させると、そのシートは透明になった。

【0190】
このプロセスの成功は、直線透過率によって確認できた。異なる圧力で圧縮処理させる前と後とで、シートの規則的な光透過率レベルを、図4で比較した。

【0191】
圧力をかけずに(0MPa)、シートを110℃で加熱すると、600nm波長でのその直線透過率(Regular light transmittance)はほとんど0%であった。

【0192】
しかし、ホットプレスすると複合体の、直線透過率に大きな効果を示した(1-15MPa)。この時、プレス圧力の増加に伴って、シートの光透過率が増加した。例えば、1MPaで圧縮した複合体(シート)の直線透過率は20%であった。また、15MPaで圧縮した場合、直線透過率は600nmの波長で86%に達した(図4)。ナノファイバーが浸漬したアクリル樹脂シートの全光線透過率(Total light transmittance)及び直線透過率の差は小さかった(図4及び表6)。

【0193】
表6に、プロセスが及ぼす影響を示した。キチンナノファイバー複合体の全光線透過率及び直線透過率、キチンナノファイバー複合体の熱膨張率を示した。

【0194】
【表6】
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【0195】
表6に表される通り、成型された透明フィルム(アクリルモノマーとナノファイバーの均一な混合物からなるシートに紫外線照射しアクリルモノマーを重合したもの)は低い熱膨張率(CTE)の値を示した。これは、顕著な特徴である。

【0196】
複合体のCTEは、13~15 wt%のキチンナノファイバーを添加すると、アクリル樹脂のみからなる材料の213 ppm/K(Acrylic resin)から15.1ppm/K(Molding composites at 15MPa)程度まで減少した。この値は、オリジナルのマトリックス樹脂のみのCTEの10%未満であった。

【0197】
アクリル樹脂はシート中の水素結合の生成を阻害していると考えられる。しかし、ナノファイバーとアクリル樹脂との懸濁液を吸引濾過することによって乾燥シートを作製すると、ある程度の水素結合が保存されると考えられる。面内配向させられたナノファイバー(in-plane oriented nanofibers)のランダム分布は、対応する複合材料の非常に低いCTEに繋がる。

【0198】
更に、複合材料を圧縮させることにより、複合体の直線透過率(Linear light transmittance)は増加して、CTEが減少する。表6に示される通り、ファイバー-ファイバー相互作用及びファイバー-樹脂相互作用は、その直線透過率の増加と、CTEの減少により、増強される。15MPa圧縮で得られた複合体のCTE値は、40%のより高いキチン含有量のナノファイバーシートにアクリルモノマーを浸漬後、モノマーを重合させたアクリル樹脂フィルムのCTE値(15.8ppm/K)に匹敵する。

【0199】
複合体が高い透明度及び低いCTEを示すメカニズムは、次のように説明できる。吸引濾過によって水を分離させることにより、キチンナノファイバーで覆われていた樹脂モノマー小滴は、樹脂モノマーマトリックスを構成する緻密なネットワークを形成することになる。50℃で乾燥させると、樹脂は柔らかくなり、樹脂モノマー小滴は平らになる。これは観察されたラメラ構造と一致する(図2d)。アクリル樹脂モノマーは、ナノファイバー間で十分に分散されており、ナノファイバーネットワークに入り込むように、ナノファイバー層の間に付着する。例えば110℃にように高温で機械的圧縮することにより、樹脂中の空気は除去された。これにより、紫外線照射によりアクリルモノマーを重合させて生成した複合体のシートは、低いCTE値を示し、透明となった。

【0200】
樹脂モノマー-ナノファイバーシートは、樹脂モノマーとナノファイバー混合物の流動塑性のために、とても柔らかく、ホットプレス中ではシートを押し広げアクリルモノマーを重合することができた。シートを成型とホットプレスするための特別な三次元の金型を作成した。これにより、シートを成型してホットプレスすることにより三次元(3D)複雑構造の成型品を作製することができた。3D複雑構造の光学的に透明な複合体(即ち、三次元成型体)の作製方法を図5に示す。透明度を保持する試料を簡単に成型することができる。アクリル樹脂はキチンナノファイバー間の強い水素結合の形成を妨げているか、制限していると考えられる。三次元的に成型し易い光学上透明な、ナノファイバーに強化された複合材料を作製することができた。

【0201】
[実施例2]
セルロースナノファイバーとアクリル樹脂モノマーの、実質的に分散媒を含まない均一な混合物、それからの三次元成型体の製造

【0202】
(1)セルロースナノファイバー(CNF)の準備
多糖類のナノファイバー(A)としてCNFを調製した。

【0203】
ヒノキ木粉(60メッシュパス)をKOH及びNaClO2で処理して、セルロース粉末を得た。得られたセルロース粉末50gを水1.5Lに懸濁し、グラインダー処理(増幸産業株式会社製、回転数1500rpmで処理した)してセルロースナノファイバー(CNF)のスラリー(濃度3.3wt%)を製造した。このCNFの平均繊維径は15nmであった。

【0204】
(2)分散体の作製
実施例1と同様に、分散媒(B)として水を用い、モノマー(C)としてアクリル樹脂(樹脂(F))を構成するモノマー(新中村化学工業株式会社、A-BPE-10)を用いた。

【0205】
0.3wt%濃度に調整したCNFスラリー3Lに、CNF固形分量の9倍量のアクリル樹脂モノマー(A-BPE-10、新中村化学工業株式会社)を加えた。CNFと樹脂モノマーとの混合比(重量比)はCNF:樹脂モノマー=1:9とした。

【0206】
この混合物を、1000rpmで1時間撹拌し、続いて37,000rpmで激しく撹拌して、樹脂モノマーとCNFとからなるエマルジョンを製造した。エマルジョンは、CNFが0.3wt%含まれ、アクリル樹脂モノマーが2.7wt%含まれ、残りは水である。

【0207】
得られたエマルジョンに、蒸留水を加えて、約0.1%(w/w)の濃度になるように薄めた。その試料を、光学顕微鏡(VHX-200, KEYENCE)を用いて観察した。その顕微鏡写真を図6に示す。)
一方、エマルジョンを-50℃で凍結乾燥させた。その1部を採取し、イオンスパッターコーター(JFC-1600, JEOL Ltd.)を用いて、白金(Pt.ca.2nm)でコーティングした。次いで、その試料を、FE-SEM(JSM-6700F JEOL)を用いて観察した。その画像を図7に示す。

【0208】
(3)ナノ複合材料の作製
(マット状の実質的に分散媒を含まない、CNFとアクリル樹脂モノマーとの均一な混合物)
続いて、エマルジョンをフィルターペーパー(アドバンテック、PTFEフィルターメンブレン、ポアサイズ100nm)を用いてブフナロートで減圧ろ過して、20℃で3時間減圧乾燥させた。次いで、40℃で2時間送風乾燥してアクリル樹脂モノマーとCNFを含むマット(マット状の実質的に分散媒を含まない、CNFと樹脂モノマーとの均一な混合物)を得た。

【0209】
そのマットを110℃で、10分間、圧力を種々変えて熱圧(圧力0、10又は15MPa)後、室温まで冷却した。次いで、UV硬化装置(20 J/cm2, F300S UV lamp system and LC6 benchtop conveyor, Fusion UV Systems, Inc.)を用いて、UVを照射し、樹脂モノマーを硬化させ、フィルムを得た。

【0210】
上記の熱圧処理で樹脂モノマーは重合するがこのUV照射は樹脂の重合度をさらに上げるために行った。UV照射は、上記UV硬化装置のコンベヤー速度を2m/分に設定して上記マットをこの装置内を4回通過させることにより実施した。

【0211】
得られたフィルム中のCNF含有率は18wt%であった。

【0212】
(4)ナノ複合体(フィルム)の光透過度
上記フィルムの光透過率を、実施例1の場合と同様にして測定した。熱圧時の圧力を15MPaとすると、180μmの厚さのフィルムの600nmでの直線透過率は74%であった(図8参照)。

【0213】
(5)三次元成型体の製造
上記(3)と同様にして得たナノ複合体材料(実質的に分散媒を含まない、CNFと樹脂モノマーとの均一な混合物)を、金型に入れて約110℃で、モノマーの重合と生成した樹脂組成物を成型した。次いで、上記と同様にしてUV硬化装置を用いて、樹脂モノマーを更に硬化させて、透明な三次元の成型体(椀型の成型体)を得た。

【0214】
椀型の成型体が透明であることを示すために内側に赤色の木の実を置いて撮影した。図9にその写真を示す。

【0215】
本発明により、低熱膨張であり、三次元の光学上透明なナノ複合材料を作製することができる。キチンナノファイバー、CNF等の多糖類のナノファイバーのネットワークが樹脂モノマー小滴エマルジョンの癒着を防止するので、このことが可能である。キチンナノファイバー、CNF等の多糖類のナノファイバーを添加して、高圧でホットプレスを行なうことにより、樹脂マトリックスのCTE値を減少させることができる。この複合体は、光学レンズ等の光学精密部品や正確なレンズ、有機LED照明の基板としての光学的に透明なフィルム、表面に小さく精密なレンズを有する太陽電池、透明な3Dエンジニアリング部品等の光学精密部品に適用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8