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明細書 :有孔鋳造品及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6400476号 (P6400476)
登録日 平成30年9月14日(2018.9.14)
発行日 平成30年10月3日(2018.10.3)
発明の名称または考案の名称 有孔鋳造品及びその製造方法
国際特許分類 B22D  27/08        (2006.01)
B22D  25/02        (2006.01)
B22D  29/00        (2006.01)
B22D  21/04        (2006.01)
B22D  21/00        (2006.01)
B22C   9/10        (2006.01)
FI B22D 27/08
B22D 25/02 Z
B22D 29/00 F
B22D 21/04 A
B22D 21/00 B
B22C 9/10 M
B22C 9/10 S
請求項の数または発明の数 9
全頁数 30
出願番号 特願2014-538532 (P2014-538532)
出願日 平成25年9月25日(2013.9.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/075916
国際公開番号 WO2014/050892
国際公開日 平成26年4月3日(2014.4.3)
優先権出願番号 2012210445
優先日 平成24年9月25日(2012.9.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年9月15日(2016.9.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
発明者または考案者 【氏名】羽賀 俊雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100066728、【弁理士】、【氏名又は名称】丸山 敏之
【識別番号】100141841、【弁理士】、【氏名又は名称】久徳 高寛
【識別番号】100119596、【弁理士】、【氏名又は名称】長塚 俊也
【識別番号】100100099、【弁理士】、【氏名又は名称】宮野 孝雄
【識別番号】100100114、【弁理士】、【氏名又は名称】西岡 伸泰
審査官 【審査官】酒井 英夫
参考文献・文献 特開平01-122650(JP,A)
特開2011-167728(JP,A)
特開2005-193262(JP,A)
特開2002-059256(JP,A)
特開2001-246453(JP,A)
特開2000-301314(JP,A)
米国特許出願公開第2001/0015270(US,A1)
特開2011-125890(JP,A)
特開2011-161463(JP,A)
調査した分野 B22D 25/02,27/08,29/00,18/04,17/22,
B22C 9/10
特許請求の範囲 【請求項1】
鋳造型内に鋳造材料(但し、Al-Mg合金及びAl-Si-Mg合金を除く)の溶湯を注湯後、前記鋳造型内を貫通して配置された棒状型を引き抜くことで、前記鋳造材料中の前記棒状型のあった部分に貫通孔を形成する有孔鋳造品の製造方法であって、
前記鋳造材料を10MPa未満で注湯する注湯ステップ、
前記注湯ステップ中又は前記注湯ステップの後に行なわれ、前記棒状型への湯回りを促進する流動促進ステップであって、前記鋳造型衝撃を与える流動促進ステップ、
前記棒状型の近傍の前記鋳造材料の温度をTp(℃)、前記棒状型を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が前記孔中に浸み出して前記孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、融点、共晶温度または包晶温度の何れか低い方をTs(℃)とすると、
s<Tp≦Th(但し、Ts=Tx+d、0<d<100)の温度範囲で前記棒状型を回転又は偏心回転させて孔径を拡大する拡径を開始した後、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、引抜ステップ、
及び、
前記鋳造型から鋳造品を取り出すステップ、
を有することを特徴とする有孔鋳造品の製造方法。
【請求項2】
前記鋳造材料は、Al-Si系合金、又は、Al-Cu系合金であり、前記dは5℃である、
請求項1に記載の有孔鋳造品の製造方法。
【請求項3】
前記鋳造材料は、Al-Mn系合金であり、前記dは90℃である、
請求項1に記載の有孔鋳造品の製造方法。
【請求項4】
前記鋳造材料は、Cu-Zn系合金であり、前記dは50℃である、
請求項1に記載の有孔鋳造品の製造方法。
【請求項5】
前記鋳造材料は、純Alであり、前記dは115℃である、
請求項1に記載の有孔鋳造品の製造方法。
【請求項6】
前記鋳造材料は、純Cuであり、前記dは18℃である、
請求項1に記載の有孔鋳造品の製造方法。
【請求項7】
鋳造型内にAl-Mg合金の溶湯を注湯後、前記鋳造型内を貫通して配置された棒状型を引き抜くことで、前記鋳造材料中の前記棒状型のあった部分に貫通孔を形成する有孔鋳造品の製造方法であって、
前記鋳造材料を10MPa未満で注湯する注湯ステップ、
前記注湯ステップ中又は前記注湯ステップの後に行なわれ、前記棒状型への湯回りを促進する流動促進ステップであって、前記鋳造型衝撃を与える流動促進ステップ、
前記棒状型の近傍の前記鋳造材料の温度をTp(℃)、前記棒状型を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が前記孔中に浸み出して前記孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、固相線温度をTs(℃)とすると、
s<Tp≦Th(但し、Ts=Tx+d、80<d<110)の温度範囲で前記棒状型を回転又は偏心回転させて孔径を拡大する拡径を開始した後、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、引抜ステップ、
及び、
前記鋳造型から鋳造品を取り出すステップ、
を有することを特徴とする有孔鋳造品の製造方法。
【請求項8】
鋳造型内にAl-Si-Mg合金の溶湯を注湯後、前記鋳造型内を貫通して配置された棒状型を引き抜くことで、前記鋳造材料中の前記棒状型のあった部分に貫通孔を形成する有孔鋳造品の製造方法であって、
前記鋳造材料を10MPa未満で注湯する注湯ステップ、
前記注湯ステップ中又は前記注湯ステップの後に行なわれ、前記棒状型への湯回りを促進する流動促進ステップであって、前記鋳造型衝撃を与える流動促進ステップ、
前記棒状型の近傍の前記鋳造材料の温度をTp(℃)、前記捧状型を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が前記孔中に浸み出して前記孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、固相線温度または共晶温度をTs(℃)とすると、
s<Tp≦Th(但し、Ts=Tx+d、5<d<110)の温度範囲で前記棒状型を回転又は偏心回転させて孔径を拡大する拡径を開始した後、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、引抜ステップ、
及び、
前記鋳造型から鋳造品を取り出すステップ、
を有することを特徴とする有孔鋳造品の製造方法。
【請求項9】
前記鋳造型内に配置された棒状型は、長手寸法をa(mm)、長手方向に垂直な断面積をb(mm)とすると、
15≦a/b、b≦25
である請求項1乃至請求項8の何れかに記載の有孔鋳造品の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔又は有底孔を有する鋳造品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンク、衝撃吸収材や軽量材などに用いられる金属材料として、ポーラス材(多孔質材)が提案されている(非特許文献1参照)。
この種のポーラス材は多孔質であるが故、比表面積が大きく、通気性や通水性がよく、熱特性にすぐれることからヒートシンクへの用途が期待されている。
また、上記ポーラス材は、低密度であり、軽量であることから、衝撃吸収材や軽量材への用途が期待されている。
【0003】
一般的に、上記ポーラス材は、溶湯にガス(発泡剤等)を溶解させて、凝固時にガスを放出して気泡化させることで作製される(所謂「発泡法」)。このため、孔の大きさや位置などを調整することは困難であり、また、この操作を行なうためには真空容器等が必要となり、製造装置が高価であると共に、その生産性を高めることも難しい。
【0004】
また、溶融金属材料の凝固方向を制御することで、気泡の成長方向を制御し、長孔を形成したロータス(蓮根)型ポーラス材も提案されている(同文献)。
しかしながら、この場合においても、孔の長さや位置などを調整することは困難であり、材料を貫通する孔を形成することもできない。
【0005】
一方、金属材料に貫通孔又は有底孔(以下単に「孔」と称する)を形成する方法として、特許文献1乃至特許文献5が提案されている。これら特許文献は、ダイキャスト法を利用したものである。
【0006】
より詳細には、これら特許文献では、ダイキャスト金型内にジェット噴流等により鋳造材料の溶湯を射出して充填し、50~100MPa以上の鋳造圧力で維持した状態にて、金型の型開き方向と平行な向きに鋳抜きピンを挿入し、溶湯が凝固する前に鋳抜きピンを引き抜くことで孔を形成している。なお、特許文献5では、金型の型開き方向と垂直な向きに鋳抜きピンが挿入されている。
【0007】
さらに、特許文献6では、砂型を含む鋳型内に鋳抜きピンが設けられた状態で、鋳型に溶湯を注湯し、鋳抜きピンを冷却しつつ100Hz以上で振動させながら孔を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】ポーラス金属の利用技術の可能性に関する調査研究報告書(要旨) 発行:平成18年3月、作成:財団法人機械システム振興協会、委託先:財団法人素形材センター
【0009】

【特許文献1】特開2000-102850号公報
【特許文献2】特開2004-202539号公報
【特許文献3】特開平10-113758号公報
【特許文献4】特開2008-229638号公報
【特許文献5】特開平07-40028号公報
【特許文献6】特開2000-42707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1乃至特許文献5は何れもダイキャストによるものであり、溶湯を高圧下で注湯する必要があるため、極めて大掛かりな耐圧性の金型と高圧で溶湯を射出注入させる装置を必要とする。
また、上記特許文献では、100mmを越える長孔を開設したり、孔が潰れてしまう虞があるため多数本の通孔を密に開設することは困難であり、形成される通孔の設計自由度が低い。
さらには予め金型に鋳抜きピンを配置した状態では、射出される鋳造材料によって鋳抜きピンが変形してしまう虞がある。また鋳抜きピンが多い、あるいは鋳抜きピン間の間隔が狭いと、湯流れ及び湯回りを阻害し、健全な製品を作製し難くなる。このため通常鋳抜きピンの挿入は鋳造材料を充填した後に行なわざるを得ない。後挿入方法では、しかし細い鋳抜きピンを挿入することは、座屈を起こしやすく、困難である。
加えて、ダイキャストでは型開き方向に厚みのある鋳造品は作製できないから、作製できる鋳造品の大きさ、形状にも制約を受ける。
【0011】
特許文献6については、鋳抜きピンの冷却機構が必要であり、鋳抜きピンが高価になってしまう。また、冷却機構を必要とするから、径の細い鋳抜きピンを使用することはできない。鋳抜きピンの周りの鋳造材料の均質化を図ることを目的とするものであり、鋳造材料を冷却により急速に凝固させることから、湯回りが悪くなり、鋳抜きピンどうしの間隔は広くせざるを得ない。従って、形成される孔の大きさや間隔にも大きな制約を受ける。さらには、砂型は振動を加えると崩落する虞があるから、砂型を振動させて湯回りの向上を図ることも困難である。
【0012】
本発明の目的は、簡易な装置及び方法で自由度の高い通孔を形成することのできる有孔鋳造品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る有孔鋳造品の製造方法は、
鋳造型内に鋳造材料(但し、Al-Mg合金及びAl-Si-Mg合金を除く)の溶湯を注湯後、前記鋳造型内に配置された棒状型を引き抜くことで、前記鋳造材料中の前記棒状型のあった部分に孔を形成する有孔鋳造品の製造方法であって、
前記鋳造材料を10MPa未満で注湯する注湯ステップ、
前記注湯ステップ中又は前記注湯ステップの後に、前記棒状型への湯回りを促進する流動促進ステップ、
前記棒状型の近傍の前記鋳造材料の温度をTp(℃)、前記棒状型を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が前記孔中に浸み出して前記孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、融点、共晶温度または包晶温度の何れか低い方をTs(℃)とすると、
Tx≦Tp≦Th(但し、Tx=Ts-d、0<d<100)である温度範囲で、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、または、Ts<Tp≦Thの温度範囲で孔径を拡大する拡径を開始した後、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、引抜ステップ、
及び、
前記鋳造型から鋳造品を取り出すステップ、
を有する。
【0014】
本発明では、共晶温度とは共晶点の温度のことを言い、包晶温度とは包晶点の温度のことを言う。なお、本発明の共晶点、包晶点とは合金の主成分が減少する方向で最初に現れる共晶点もしくは包晶点のことである。また、固相線温度も同様に、合金の主成分が減少する方向で最初に現れる固相線の温度のことである。
【0015】
前記鋳造材料は、Al-Si系合金、又は、Al-Cu系合金であり、前記dは5℃とすることができる。
【0016】
前記鋳造材料は、Al-Mn系合金であり、前記dは90℃とすることができる。
【0017】
前記鋳造材料は、Cu-Zn系合金であり、前記dは50℃とすることができる。
【0018】
前記鋳造材料は、純Alであり、前記dは115℃とすることができる。
【0019】
前記鋳造材料は、純Cuであり、前記dは18℃とすることができる。
【0020】
また、本発明に係る有孔鋳造品の製造方法は、
鋳造型内にAl-Mg合金の溶湯を注湯後、前記鋳造型内に配置された棒状型を引き抜くことで、前記鋳造材料中の前記棒状型のあった部分に孔を形成する有孔鋳造品の製造方法であって、
前記鋳造材料を10MPa未満で注湯する注湯ステップ、
前記注湯ステップ中又は前記注湯ステップの後に、前記棒状型への湯回りを促進する流動促進ステップ、
前記棒状型の近傍の前記鋳造材料の温度をTp(℃)、前記棒状型を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が前記孔中に浸み出して前記孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、固相線温度をTs(℃)とすると、
Tx≦Tp≦Th(但し、Tx=Ts-d、80<d<110)である温度範囲で、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、または、Ts<Tp≦Thの温度範囲で孔径を拡大する拡径を開始した後、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、引抜ステップ、
及び、
前記鋳造型から鋳造品を取り出すステップ、
を有する。
【0021】
また、本発明に係る有孔鋳造品の製造方法は、
鋳造型内にAl-Si-Mg合金の溶湯を注湯後、前記鋳造型内に配置された棒状型を引き抜くことで、前記鋳造材料中の前記棒状型のあった部分に孔を形成する有孔鋳造品の製造方法であって、
前記鋳造材料を10MPa未満で注湯する注湯ステップ、
前記注湯ステップ中又は前記注湯ステップの後に、前記棒状型への湯回りを促進する流動促進ステップ、
前記棒状型の近傍の前記鋳造材料の温度をTp(℃)、前記棒状型を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が前記孔中に浸み出して前記孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、固相線温度または共晶温度をTs(℃)とすると、
Tx≦Tp≦Th(但し、Tx=Ts-d、5<d<110)である温度範囲で、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、または、Ts<Tp≦Thの温度範囲で孔径を拡大する拡径を開始した後、前記鋳造材料から前記棒状型を引き抜く、引抜ステップ、
及び、
前記鋳造型から鋳造品を取り出すステップ、
を有する。
【0022】
何れの方法においても、前記鋳造型内に配置された棒状型は、長手寸法をa(mm)、長手方向に垂直な断面積をb(mm)とすると、 15≦a/b、b≦25
であることが望ましい。
なお、棒状型の長手寸法とは、鋳造型に挿入されている部分の寸法であるが、複数に区画した鋳造型の場合は、各区画の寸法の累計を棒状型の長手寸法とする。
【0023】
また、本発明に係る有孔鋳造品は、
鋳造品中に孔を有する有孔鋳造品であって、
前記孔の孔壁の内面に組織の破断がなく、かつ、組織の再凝固がない。
【0024】
前記孔は、長手寸法をa(mm)、長手方向に垂直な断面積をb(mm)とすると、
15≦a/b、b≦25
とすることができる。
【0025】
前記鋳造品は、Al-Siであり、Si≧15質量%とすることができる。
【0026】
前記鋳造品は、Al-SiCであり、SiC≧10体積%とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る有孔鋳造品の製造方法によれば、上記にて規定された温度Tp(℃)の範囲内で棒状型を引き抜く、または、Tp(℃)の温度範囲で孔径を拡大する拡径を開始した後に、棒状型を引き抜くことにより、棒状型を引き抜いた跡は孔として残るため、容易に孔付きの鋳造品を作製することができる。
また、鋳造型へ配備される棒状型の太さ、本数、配置、侵入長さを適宜調整することで、孔の直径、数、配置、深さなどを容易に調整することができる。
さらに、鋳造材料として、比較的融点の低いアルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム基をマトリックスとする複合材料、融点の高い銅、銅合金など、幅広い金属に本発明を適用することができる。
得られた有孔鋳造品は、簡易な鋳造型と棒状型に定まるため、幅、長さ、高さ方向の大きさ及び形状も自由に作ることができる。ヒートシンク、衝撃吸収材、吸音材、軽量材等へ好適に使用することができる。
本発明に係る有孔鋳造品の製造方法によれば、鋳造型への注湯は10MPa未満の低圧下で行なうことができるから、高圧下で注湯を行なうダイキャストに比して装置を極めて簡素化でき、安価に有孔鋳造品を得ることができる。特に、鋳造型は、上面が開口した簡易型を用いることができることから、金型コストが安価である。
以上のような点から装置が安価である。
また、注湯もるつぼから直接鋳造型に注湯することで、さらに装置を簡素化することができる。
さらに、Al-SiCのようにドリル等で通孔することが困難な合金でも、有孔鋳造品が容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の有孔鋳造品の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の有孔鋳造品を製造するための鋳造型から棒状型を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、鋳造型に鋳造材料を注湯している状態を示す断面図である。
【図4】図4は、注湯後、鋳造型から棒状型を引き抜いている状態を示す断面図である。
【図5】図5は、Al-Si二元合金の亜共晶において、拡径することなく引抜ステップを行なう場合及び拡径を開始する場合の温度Tp(℃)の範囲を示す図である。
【図6】図6、Al-Si二元合金の過共晶において、拡径することなく引抜ステップを行なう場合及び拡径を開始する場合の温度Tp(℃)の範囲を示す図である。
【図7】図7は、Al-Si二元合金について、図5の斜線部Aに示す温度範囲で拡径を行なった後、棒状型を引き抜くことのできた温度の範囲を示す図である。
【図8】図8は、Al-Cu二元合金について、拡径することなく引抜ステップを行なう場合の温度Tp(℃)の範囲を示す図である。
【図9】図9は、Al-Mn二元合金について、拡径することなく引抜ステップを行なう場合の温度Tp(℃)の範囲を示す図である。
【図10】図10は、Cu-Zn二元合金について、拡径することなく引抜ステップを行なう場合の温度Tp(℃)の範囲を示す図である。
【図11】図11は、Al-Mg二元合金について、拡径することなく引抜ステップを行なう場合の温度Tp(℃)の範囲を示す図である。
【図12】図12は、Al-Si-Mg三元合金(但し図示はAl-Siの二元系合金)について、拡径することなく引抜ステップを行なう場合の温度Tp(℃)の範囲を示す図である。
【図13】図13は、Al-6%Siに形成された有孔鋳造品に形成された孔の拡大写真である。
【図14】図14は、Al-25%Siに形成された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図15】図15は、形状の異なる棒状型の一例を示している。
【図16】図16は、図15の棒状型を用いて作製された有孔鋳造品の端面図である。
【図17】図17は、棒状型を縦向きに差し込む鋳造型を断面して示す説明図である。
【図18】図18は、仕切り板により複数に区画した鋳造型を断面して示す説明図である。
【図19】図19は、連続的に本発明の実施を行なう電気炉を断面して示す説明図である。
【図20】図20は、鋳造型の他の実施例を示す棒状型に沿う断面図である。
【図21】図21は、説明のため図20の鋳造型において取付ボルト及び棒状型を通るように切断した断面図である。
【図22】図22は、図20及び図21に示す鋳造型に振動等を与えている状態を示す説明図である。
【図23】図23は、実施例1の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図24】図24は、実施例2の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図25】図25は、実施例3の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図26】図26は、図25中丸数字1、5及び9で示す孔の拡大写真である。
【図27】図27は、実施例4の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図28】図28は、図27中丸数字1~3で示す孔の拡大写真である。
【図29】図29は、実施例5の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図30】図30は、実施例5の要領にて作製された有孔鋳造品の全体写真である。
【図31】図31は、実施例6の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図32】図32は、実施例7の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図33】図33は、実施例8の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図34】図34は、実施例9の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図35】図35は、実施例10の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図36】図36は、実施例11の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図37】図37は、実施例12の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図38】図38は、実施例13の要領にて作製された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図39】図39は、実施例14の要領にて作成された有孔鋳造品の端面の写真である。
【図40】図40は、実施例15の要領にて作成された有孔鋳造品の端面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の有孔鋳造品(10)は、図1に示すように、長手方向に1又は複数の貫通孔(12)又は有底孔を形成したものである。

【0030】
本発明の有孔鋳造品(10)は、内部に1又は複数の孔(12)が形成されており、比表面積が大きく、軽量であるため、CPUや工作機械、電気自動車などの放熱部材として利用されるヒートシンク、車両などの衝撃吸収材、吸音材、軽量材などに用いることができる。

【0031】
上記構成の有孔鋳造品(10)に用いられる鋳造材料として、アルミニウム、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Cu系合金、Al-Mn系合金、Al-Si-Mg系合金などのアルミニウム合金、Al-SiCなどのアルミニウム基をマトリックスとする複合材料、銅、真鍮を含むCu-Zn系合金などの銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金を例示することができる。勿論、これら材料に限定されるものではない。

【0032】
本発明の有孔鋳造品(10)は、図2に示すように、上面が開口した鋳造型(20)を用いて作製することができる。なお、注湯は、常圧下のみならず、減圧下でも実施することができ、さらには、10MPa未満の加圧下でも実施することができる。減圧下、または、加圧下で鋳造を実施する場合、鋳造型(20)をキャビティに収容して実施すればよい。本発明は、前述の発泡法やダイキャストに密閉空間において通常50MPa以上の加圧下にて行なわれる方法に比して、極めて簡素な装置を用いて作製することができる。

【0033】
より詳細には、図2に示すように、鋳造型(20)は、図示では略直方体形状に形成された鋳込み部(22)を有しており、鋳込み部(22)の上面は開口している。

【0034】
鋳込み部(22)には、側方から棒状型(30)が挿入される。棒状型(30)は、鋳込み部(22)を貫通可能に形成することができ、鋳造型(20)には、棒状型(30)の形状に合わせた挿通孔(24)が開設されている。

【0035】
棒状型(30)は、剛性を有する棒材、ピアノ線の如き線材、針状材、パイプなどを例示することができる。また、鋳造型(20)への挿入方向の先端又は全体にテーパを設けることもできる。さらに、引き抜くことができれば、弧状などの曲線状でも構わないが、直線状の方が引き抜きやすく好ましい。なお、棒状型は、鋳造型に挿入されている部分と、はみ出した部分、および鋳造型から引き抜くための掴みしろや、掴むための部材が付いていることが好ましい。さらに言えば、拡径や引き抜きを容易に行なうためには、棒状型の端はL字形に曲がっているもの等が好適である。

【0036】
棒状型(30)は、使用される鋳造材料に反応しない材料が用いられる。棒状型(30)として、鋳造材料(40)よりも融点の高い鉄系材料などの金属又はセラミックスを例示することができる。棒状型(30)と鋳造材料(40)の線膨張係数を適宜組み合わせて選択することが好ましい。なお、必要に応じて、棒状型(30)には、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)系、黒鉛(グラファイト)系、セラミックス系などの離型剤を塗布やスプレーすることができる。

【0037】
図示の実施例では、棒状型(30)は4本であり、夫々断面円形のものを採用している。棒状型(30)の本数、直径及び長さは、要求される孔(12)の本数、内径、深さに応じて適宜設定することができる。棒状型(30)は、例えば、鋳抜きピンでは不可能であった直径8mm以下の線材、1mm以下の針状材とすることができ、長さは50mm以上とすることができる。

【0038】
使用される棒状型は、鋳造型に挿入されている部分の長手寸法をa(mm)、長手方向に垂直な断面積をb(mm)としたときに、15≦a/b、b≦25のような細い棒状型でも好適に実施できる。

【0039】
このような小径の長孔は、ドリルなどによる穴あけ作業では、ドリルの焼き付き、ドリルの折れや曲がりなどでできなかった。さらに、Al-SiやAl-SiCなどの硬度の高い材料では、ドリルが減耗するため、長孔は形成できなかった。レーザーやウォータージェットによる加工では、孔の長さに制約があったり、孔の内壁が粗面になったり、孔の長手方向における断面形状の制御が困難である問題があった。このため、本発明の適用が好適である。

【0040】
特に、本発明の製造方法は、従来開設することができなかった細く長い孔(12)の形成に好適である。例えば、直径0.5mmの場合は長さ50mm以上のものができる。直径5mmの場合は長さ500mmのものができる。これらは、内面が平滑で、孔が変形していない。
原理的には、棒状型を引き抜くことができれば良く、棒状型が引き抜きに堪えうる強度があれば、孔径や長さは制限されない。なお、望ましくは、開設される孔(12)は、長手寸法をa(mm)、長手方向に垂直な断面積をb(mm)としたときに、15≦a/b、b≦25である。

【0041】
図示では棒状型(30)は鋳込み部(22)を貫通しており、形成される孔(12)も貫通孔となるが、棒状型(30)を鋳造型(20)の途中までの長さにすることで、有底孔を形成することができる。

【0042】
鋳造型(20)の内面には、鋳込み部(22)を囲むように断熱材(28)を配置することが望ましい。断熱材(28)として、例えば、アルミナとシリカ等を主成分とする繊維を、シート状、綿状、板状、ブランケット状の織布や不織布に加工したものを挙げることができる。

【0043】
断熱材(28)を配置することで、鋳込み時の鋳造材料(40)の外気による急激な冷却を阻止することができ、また、側方から棒状型(30)を挿入する場合、断熱材(28)によって、注湯中、注湯後、さらには、棒状型(30)の引き抜き後にも、挿通孔(24)又は挿通孔(24)と棒状型(30)との隙間から鋳造材料(40)が零れ出すことを防止できる。

【0044】
棒状型(30)は、注湯前に鋳造型(20)に挿入しておいてもよいし、注湯後に鋳造型(20)に挿入してもよい。注湯後に挿入する場合は、細い棒状型が挿入時に変形しやすいため、孔径には制約がある。従って、細い孔を形成する場合は、注湯前に鋳型に挿入しておくことが望ましい。なお、以下では棒状型(30)を注湯前に鋳造型(20)に挿入した実施形態について説明する。

【0045】
図3に示すように、鋳造型(20)に棒状型(30)を挿入した状態で、溶解させた鋳造材料(40)を鋳込み部(22)に注湯する。注湯ステップは、図示のようにるつぼ(42)を用いて行なうことができる。

【0046】
なお、注湯中及び/又は注湯後に棒状型(30)間への湯回りを促進する流動促進ステップを行なうことが好適である。流動促進ステップは、例えば、棒状型(30)及び/又は鋳造型(20)を振動、揺動、回転、及び/又は衝撃を与えることで行なうことができる。特に、孔が長い場合や棒状型と棒状型の間隔または、棒状型と鋳造型の間隔が狭い場合は、湯回りを促進することが重要である。このために鋳造型(20)自体を振動、揺動、回転、及び/又は衝撃を与えることで湯回りをさらに促進できる。

【0047】
鋳造材料(40)の鋳込み部(22)内における温度を測定するために、鋳込み部(22)には熱電対(50)(図3参照)等の温度センサーを配置することができる。温度センサーは、1又は複数の棒状型(30)の近傍の温度を測定可能となるように配置することが望ましい。勿論、連続的に有孔鋳造品(10)の製造作業を行なう場合には、一旦温度測定を行なえば、その後の操業では温度測定を省略することもできる。

【0048】
なお、鋳造型(20)が加熱機構や冷却機構などの温度コントロール機能を具備することで、鋳造材料(40)の温度管理や冷却速度を制御するようにしてもよい。

【0049】
注湯後、冷却を行なって、鋳造材料(40)の温度が後述する製孔可能な温度範囲となると、図4に示すように、鋳造材料(40)から棒状型(30)を引き抜く引抜ステップを行なう。冷却は、徐冷又は自然冷却とすることで、引き抜くタイミングの時間幅をとることもでき、また、結晶を肥大化させることができる。一方、冷却時に急冷すれば、結晶組織の成長を抑えることができる。本発明の製造方法に好適な冷却速度は、0.05℃/秒~500℃/秒である。

【0050】
また、注湯前に鋳造型全体を電気炉などで予熱(例えば500℃)しておけば、冷却速度を抑えることができため、引き抜くタイミングの時間幅を取ることができ、湯回りもよくなる。

【0051】
なお、後述するとおり、一旦凝固した鋳造材料(40)を下記の製孔可能な温度範囲まで加熱して、引抜ステップを実施しても構わない。

【0052】
引抜ステップは、棒状型(30)を鋳造材料中で静置した状態から引き抜く場合と、鋳造材料中に、形成される孔径が拡大するように棒状型(30)を回転、偏心回転、振動などさせる拡径ステップを実施した後、棒状型(30)を引き抜く場合の二通りある。

【0053】
まず、棒状型(30)を鋳造材料中で静置した状態から引き抜く引抜ステップの場合、棒状型(30)の近傍の鋳造材料の温度をTp(℃)、棒状型(30)を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が孔中に浸み出して孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、融点、共晶温度または包晶温度の何れか低い方をTs(℃)とすると、Tx≦Tp≦Th(但し、Tx=Ts-d、0<d<100)となる製孔可能な温度範囲で、鋳造材料から棒状型(30)を引き抜く。なお、dは鋳造材料の組成によって決定される。

【0054】
また、拡径ステップの後、棒状型(30)の引き抜きを行なう引抜ステップ場合、拡径ステップは、棒状型(30)の近傍の鋳造材料の温度をTp(℃)、棒状型(30)を引抜き中又は引抜き後に孔壁が崩落せず、且つ、液相が孔中に浸み出して孔を埋めない上限の温度をTh(℃)、引抜きの下限温度をTx(℃)、融点、共晶温度または包晶温度の何れか低い方をTs(℃)とすると、Ts<Tp≦Thとなる製孔可能な温度範囲に開始する。拡径ステップ終了後、鋳造材料から棒状型(30)を引き抜けばよい。拡径ステップによって孔が形成されているから、棒状型(30)を引き抜く温度は、後述する図7に示すように、鋳造材料と拡径の仕方によっては、常温近くでも引き抜くことができる場合がある。

【0055】
温度Tp(℃)は合金組成によって異なる。以下、主たる組成の鋳造材料とその製孔可能な温度範囲である温度Tp(℃)について説明する。

【0056】
<Al-Si系二元合金>
図5は、Al-Si系二元合金の平衡状態図に、Al-Si系二元合金の製孔可能な温度範囲を重ねたものである。図5を参照してわかるとおり、Al-Si系二元合金では、Si量が約12質量%で共晶点を有する。共晶点よりも合金主成分であるSi量が少ない組成は亜共晶、Si量が多い組成は過共晶と称される。

【0057】
亜共晶及び過共晶の範囲においては、何れも溶融状態である液相から液相線を横切って半凝固(準液相)となる。この液相線を横切る温度が液相線温度Tl(℃)である。

【0058】
上記Al-Si系二元合金は、さらに冷却することで、Si量が約1.6質量%より少ないときは、固相線を横切りα相となる。Si量が約1.6質量%より多ときは、共晶等温線を横切り(α+β)相となる。

【0059】
Al-Si系二元合金では、引抜ステップにおける製孔可能な温度範囲の温度Tp(℃)は、共晶点よりSi量が少ない亜共晶の範囲では、図5にて斜線部Aで示すTx≦Tp≦Thの領域となる。ここで、Thは、Siの含有量をx%としたときに、Th=660-9.5x(℃)で近似することができ、共晶点近傍では、Th≦Ts+5℃且つ液相線温度Tl(℃)以下、Txは、Ts(共晶温度:577℃)-d(=5℃)である。

【0060】
上記Al-Si系二元合金について、種々成分と引き抜き温度を変えて、棒状型(30)を引き抜き、貫通孔が形成されるかどうかを調べた。なお、棒状型(30)は、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)、直径2mmの断面円形のステンレス鋼製である。結果を図5に示す。図5中、貫通孔が形成されたものには丸印、貫通孔が形成されなかったもの、または、棒状型(30)が引き抜けなかったものにはバツ印を付している。
図5を参照すると、斜線部Aで示す温度Tp(℃)で貫通孔が形成されており、それ以外では貫通孔が形成できなかったことがわかる。

【0061】
一方、Al-Si二元合金が過共晶となる範囲、即ち、Siが約12質量%を越える組成では、Ts-5℃≦Tp≦Ts+5℃且つ液相線温度Tl(℃)以下となる図6中斜線部A”で示す範囲が製孔可能な温度範囲となる。

【0062】
何れの場合も、液相線から固相線に近づくにつれて鋳造材料は溶融状態から半凝固状態となり、固相線を越えると凝固するが、固相線直下の状態ではわずかに柔らかい状態であるため、棒状型(30)の引き抜きを行なうことができる。

【0063】
上述の製孔可能な温度範囲(図5中の斜線部A及び図6の斜線部A”)では、鋳造材料(40)は半凝固状態又は凝固はしているが未だ柔らかい状態にあり、図4に示すように、棒状型(30)を引き抜いたときに、棒状型(30)のあった跡が孔(12)として残る。

【0064】
なお、Al-Si二元合金においては、固相線又は共晶温度Ts(℃)-5℃未満の場合であっても、上記製孔可能な温度範囲である温度Tp(℃)にて、拡径ステップを実施することで、棒状型(30)の引抜は、図7に示す斜線部Bの範囲で実施できる。図5に示す温度Tp(℃)において拡径ステップを実施した場合、図7中丸印で示すように、温度Tp(℃)又はこれよりも低い温度で棒状型(30)を引き抜くことができ、貫通孔が形成できたことがわかる。
本実施例においては、直径2mmの棒状型と棒状型が通る孔径が3mmの鋳造型を使用し、棒状型を回転、または揺動させることにより拡径を行なった。

【0065】
<Al-Cu系二元合金>
図8は、Al-Cu系二元合金の平衡状態図に、Al-Cu系二元合金の製孔可能な温度範囲を重ねたものである。図8を参照してわかるとおり、Al-Cu系二元合金では、引抜ステップにおける製孔可能な温度範囲の温度Tp(℃)は、図8にて斜線部Dで示すTx≦Tp≦Thの領域となる。ここで、Thは、Cuの含有量をx%としたときに、Th=660-5.1x(℃)で近似することができ共晶点近傍では、Th≦Ts+5℃且つ液相線温度Tl(℃)以下、で表わすことができ、Txは、Ts(共晶温度:450℃)-d(=5℃)である。

【0066】
上記Al-Cu系二元合金について、種々成分と引き抜き温度を変えて、棒状型(30)を引き抜き、貫通孔が形成されるかどうかを調べた。なお、棒状型(30)は、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)、直径2mmの断面円形のステンレス鋼製である。結果を図8に示す。図8中、貫通孔が形成されたものには丸印、貫通孔が形成されなかったもの、または、棒状型(30)が引き抜けなかったものにはバツ印を付している。
図8を参照すると、斜線部Dで示す温度Tp(℃)で貫通孔が形成されており、それ以外では貫通孔が形成できなかったことがわかる。

【0067】
なお、Al-Cu二元合金においても、上記温度Tp(℃)にて、拡径ステップを実施することで、上記温度Tp(℃)またはこれより低い温度で棒状型(30)の引抜ステップを実施することができる。

【0068】
<Al-Mn系二元合金>
図9は、Al-Mn系二元合金の平衡状態図に、Al-Mn系二元合金の製孔可能な温度範囲を重ねたものである。図9を参照してわかるとおり、Al-Mn系二元合金では、引抜ステップにおける製孔可能な温度範囲の温度Tp(℃)は、図9にて斜線部Eで示すTx≦Tp≦Thの領域となる。ここで、Thは、Alの融点である660℃であり、Txは、Ts(=658.5℃)-d(=90℃)=568.5℃である。

【0069】
上記Al-Mn系二元合金について、種々成分と引き抜き温度を変えて、棒状型(30)を引き抜き、貫通孔が形成されるかどうかを調べた。なお、棒状型(30)は、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)、直径2mmの断面円形のステンレス鋼製である。結果を図9に示す。図9中、貫通孔が形成されたものには丸印、貫通孔が形成されなかったもの、または、棒状型(30)が引き抜けなかったものにはバツ印を付している。
図9を参照すると、斜線部Eで示す温度Tp(℃)で貫通孔が形成されており、それ以外では貫通孔が形成できなかったことがわかる。

【0070】
なお、Al-Mn二元合金においても、上記温度Tp(℃)にて、拡径ステップを実施することで、上記温度Tp(℃)またはこれより低い温度で棒状型(30)の引抜ステップを実施することができる。

【0071】
<Cu-Zn系二元合金>
図10は、Cu-Zn系二元合金の平衡状態図に、Cu-Zn系二元合金の製孔可能な温度範囲を重ねたものである。図10を参照してわかるとおり、Cu-Zn系二元合金では、引抜ステップにおける製孔可能な温度範囲の温度Tp(℃)は、図10にて斜線部Fで示すTx≦Tp≦Thの領域となる。ここで、Thは、Znの含有量をx%としたときに、Th=1083-4x(℃)で表わすことができ、Txは、Ts(=952℃)-d(=50℃)である。

【0072】
上記Cu-Zn系二元合金について、種々成分と引き抜き温度を変えて、棒状型(30)を引き抜き、貫通孔が形成されるかどうかを調べた。なお、棒状型(30)は、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)、直径2mmの断面円形のステンレス鋼製である。結果を図10に示す。図10中、貫通孔が形成されたものには丸印、貫通孔が形成されなかったもの、または、棒状型(30)が引き抜けなかったものにはバツ印を付している。
図10を参照すると、斜線部Fで示す温度Tp(℃)で貫通孔が形成されており、それ以外では貫通孔が形成できなかったことがわかる。

【0073】
なお、Cu-Zn二元合金においても、上記温度Tp(℃)にて、拡径ステップを実施することで、上記温度Tp(℃)またはこれより低い温度で棒状型(30)の引抜ステップを実施することができる。

【0074】
<純金属>
純Alの場合、引抜ステップにおける製孔可能な温度範囲の温度Tp(℃)は、図5中、線A’で示すTx≦Tp≦Thの領域となる。ここで、Thは、融点660℃であり、Txは、Ts(=660℃)-d(=115℃)=545℃である。

【0075】
純Cuの場合、引抜ステップにおける製孔可能な温度範囲の温度Tp(℃)は、図10中、線E’で示すTx≦Tp≦Thの領域となる。ここで、Thは、融点1083℃であり、Txは、Ts(=1083℃)-d(=18℃)=1065℃である。

【0076】
上記純Al、純Cuについて、引き抜き温度を変えて、棒状型(30)を引き抜き、貫通孔が形成されるかどうかを調べた。なお、棒状型(30)は、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)、直径2mmの断面円形のステンレス鋼製である。純Alについての結果を図5、純Cuについての結果を図10に夫々示す。図5及び図10中、貫通孔が形成されたものには丸印、貫通孔が形成されなかったもの、または、棒状型(30)が引き抜けなかったものにはバツ印を付している。
図5及び図10を参照すると、斜線部Eで示す温度Tp(℃)で貫通孔が形成されており、それ以外では貫通孔が形成できなかったことがわかる。

【0077】
純Al、純Cuについても、上記温度Tp(℃)にて、拡径ステップを実施することで、上記温度Tp(℃)またはこれより低い温度で棒状型(30)の引抜ステップを実施することができる。

【0078】
<Al-Mg系二元合金>
図11は、Al-Mg系二元合金の平衡状態図に、Al-Mg系二元合金の製孔可能な温度範囲を重ねたものである。図11を参照してわかるとおり、Al-Mg系二元合金では、引抜ステップにおける製孔可能な温度範囲の温度Tp(℃)は、図11にて斜線部Cで示すTx≦Tp≦Thの領域となる。ここで、Thは、Mgの含有量をx%としたときに、Th=660-9.7x(℃)で近似することができ、Txは、Ts(固相線温度)-d(=80℃<d<110℃))である。

【0079】
上記Al-Mg系二元合金について、種々成分と引き抜き温度を変えて、棒状型(30)を引き抜き、貫通孔が形成されるかどうかを調べた。なお、棒状型(30)は、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)、直径2mmの断面円形のステンレス鋼製である。結果を図11に示す。図11中、貫通孔が形成されたものには丸印、貫通孔が形成されなかったもの、または、棒状型(30)が引き抜けなかったものにはバツ印を付している。
図11を参照すると、斜線部Cで示す温度Tp(℃)で貫通孔が形成されており、それ以外では貫通孔が形成できなかったことがわかる。

【0080】
なお、Al-Mg二元合金においても、上記温度Tp(℃)にて、拡径ステップを実施することで、上記温度Tp(℃)またはこれより低い温度で棒状型(30)の引抜ステップを実施することができる。

【0081】
<Al-Si-Mg系三元合金>
図12は、Al-Si-Mg系三元合金の製孔可能な温度範囲を記載したものである。
Alを主成分としSiを含む多元合金の共晶温度TEuは、B. R. Krohnの式(Modern Casting誌75 (1985) 21.、特開2001-99797号)で計算される。

【0082】
式1:
TEu=577-12.5×(4.43(%Mg)+1.43(%Fe)+1.93(%Cu)+1.7(%Zn)+3.0(%Mn)+4.0(%Ni))/%Si

【0083】
上記式1に従えば、AC4C合金は、TEu(Ts)=572℃、6061(JIS規格:A6061)は、TEu(Ts)=458℃となる。
Al-Si-Mg系三元合金について、今回実験により、純Alは545℃まで引き抜き可能で、共晶温度が前記純Alの引き抜き可能温度より高い場合はAl-Si系の式Tx=Ts(共晶温度)-dが適用でき、合金の共晶温度が前記純Alの引き抜き可能温度より低い場合はAl-Mg系の式Tx=Ts(固相線温度)-dが適用できることを見出した。

【0084】
よって、AC4Cは、Ts(572℃)>545℃であり、Al-Si系の式を適用し、Tx=Ts(共晶温度)-d=572-27=545℃となる。また、6061は、Ts(458℃)<545℃であり、Al-Mg系を適用し、Tx=Ts(固相線温度)-d=582-55=527℃となる。

【0085】
上記Al-Si-Mg系三元合金について、種々成分と引き抜き温度を変えて、棒状型(30)を引き抜き、貫通孔が形成されるかどうかを調べた。なお、棒状型(30)は、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)、直径2mmの断面円形のステンレス鋼製である。結果を図12に示す。図12中、貫通孔が形成されたものには丸印、貫通孔が形成されなかったもの、または、棒状型(30)が引き抜けなかったものにはバツ印を付している。
図12を参照すると、斜線部Eで示す温度Tp(℃)で貫通孔が形成されており、それ以外では貫通孔が形成できなかったことがわかる。

【0086】
なお、Al-Si-Mg三元合金においても、上記温度Tp(℃)にて、拡径ステップを実施することで、上記温度Tp(℃)またはこれより低い温度で棒状型(30)の引抜ステップを実施することができる。

【0087】
上記に例示した金属、合金以外の純金属、二元系、三元系以上の合金についても、同様の製孔可能な温度範囲が適用される。なお、鋳造材料がAl-Si系二元合金であればSiが含まれると硬質になるのでSi≧15質量%の場合、また、鋳造材料がAl-SiC等のアルミニウム基をマトリックスとする複合材料であれば、SiCが硬質であるのでSiCが10体積%以上の場合、ドリル等での孔あけ加工が難しくなるため、本発明の有用性が高くなる。

【0088】
引抜ステップにおいて、図4では、上側の棒状型(30)から先に引き抜きを行なっているが、これは、断熱材(28)を配置し、上面が開口した鋳造型(20)では、上部から冷却が始まるためである。

【0089】
なお、上記温度範囲Tp(℃)を超える温度で棒状型(30)を引き抜くと、浸みだしてきた液相の鋳造材料(40)によって孔(12)の形状が押し潰されて、孔(12)が形成されない。一方、上記温度範囲Tp(℃)未満の温度では、鋳造材料は凝固により、引き抜き抵抗が高くなるから、拡径ステップを温度範囲Tp(℃)で実施しなければ、棒状型(30)の引き抜きを行なうことができない。

【0090】
棒状型(30)を引き抜き、鋳造材料(40)をさらに自然冷却した後、鋳造型(20)から取り出すことで、図1に示すような孔(12)を有する鋳造品(10)を得ることができる。図13、図14に示すように得られた鋳造品(10)の孔(12)は、孔壁の内面と、それよりも1mm内部との間に、結晶の形状、寸法、分布において組織の急激な変化は見られない。これは、孔(12)の形成途上で鋳造材料(40)が冷却される結果、組織が均等に成長するためである。また、成長したデンドライトが切断されていない。
一方、ドリルやレーザー、ウォータージェット加工により孔を形成した場合には、孔壁の内面の組織が破断したり、溶融して再凝固するため、孔壁の内面と、それよりも1mm内部との間に組織の急激な変化が見られる。

【0091】
得られた孔(12)を有する鋳造品(10)は、必要に応じて機械加工や研削加工を施して使用される。

【0092】
本発明の有孔鋳造品(10)の製造方法の変形例を以下で説明する。

【0093】
図15は、棒状型(30)の異なる実施例であって、図15(a)は、断面が略直角に屈曲した板材を棒状型(30)として採用した実施例、図15(b)は、断面が六角形の棒状部材を棒状型(30)として採用した実施例、図15(c)は、中空のパイプを棒状型(30)として採用した実施例であり、中実に比して熱容量を小さくすることができる。

【0094】
図16は、上記棒状型(30)を用いて作製された孔(12)を有する鋳造品(10)を示している。図16(a)は、図15(a)の棒状型(30)を採用して作製された鋳造品(10)であり、孔(12)は、断面が略直角に屈曲している。このような形状の孔(12)を形成することで、衝撃吸収材等の用途において、衝撃吸収方向に対する塑性、座屈変形を制御することができる。同様に、図16(b)、図16(c)は、夫々図15(b)及び図15(c)に示した棒状型(30)を採用して作製された鋳造品(10)である。

【0095】
本発明によれば、孔(12)の数、形状、直径、深さ等の設計自由度を可及的に高めることができる利点がある。

【0096】
上記実施形態では、棒状型(30)は、予め鋳造型(20)に配置しているが、注湯ステップの後、鋳造材料(40)が上記温度範囲に達するまでに、棒状型(30)を挿通孔(24)から挿入するようにしてもよい。
この場合、棒状型(30)は鋳造材料(40)の急激な冷却による凝固を防ぐために予熱しておくことが望ましい。また、鋳造材料(40)の湯回りをよくするために、棒状型(30)及び/又は鋳造型(20)を振動、揺動、回転及び/又は衝撃を与えるようにすることがより望ましい。

【0097】
また、拡径ステップを実施する場合、温度Tp(℃)の範囲において、棒状型(30)を回転、偏心回転、振動、往復運動させたり、衝撃を与える。これにより、開設される孔(12)の内径が拡大した状態で凝固が進むから、棒状型(30)の引き抜きを容易に行なうことができる。

【0098】
図17は、上面が開口した棒状型(30)を鋳造型(20)の上側から挿入する実施形態である。図に示すように、棒状型(30)は、基端が板状の保持部材(32)から下向きに突設される。
本実施形態では、鋳造材料(40)を注湯後、図17(a)乃至(c)に示すように液相線温度Tl(℃)以上の状態で棒状型(30)が鋳造材料(40)に侵入するように保持部材(32)を下ろす。このとき、棒状型(30)間への湯回りをよくするために、棒状型(30)を振動、揺動、回転及び/又は衝撃を与えることが望ましい。
また、図17(c)に示すように棒状型(30)が鋳造型(20)の底に到達した後、図示省略する吸引ポンプにより鋳込み部(22)内を減圧しつつ、溶湯を供給できるようにすることで、棒状型(30)間への湯回りをよくすることもできる。

【0099】
棒状型(30)を鋳造材料(40)に挿入した後、上記と同様の温度範囲に棒状型(30)の近傍の鋳造材料(40)の温度Tp(℃)が到達すると、棒状型(30)を保持部材(32)と共に引き抜けばよい。

【0100】
図18は、鋳造型(20)内に複数の仕切り板(60)を挿入し、鋳造型(20)及び仕切り板(60)を貫通する挿通孔(24)(62)に棒状型(30)を差し込むようにしたものである。仕切り板(60)により仕切られた各区画に鋳造材料(40)を注湯し、上記した温度範囲にて棒状型(30)の引き抜きを行なうことで、複数の鋳造品(10)に一度に孔を開設することができる。

【0101】
また、上記実施形態では、注湯後、鋳造材料(40)の冷却過程において、棒状型(30)の引き抜きを行なっている。しかしながら、例えば、棒状型(30)を突き刺したまま凝固させた後、再度加熱することで上記した温度範囲まで昇温させて棒状型(30)の引き抜きを行なうこともできる。

【0102】
図19は、ヒーター等の加熱機構(72)を具える電気炉(70)であり、電気炉(70)内には、注湯後の鋳造材料(40)又は凝固した鋳造材料(40)を収容した鋳造型(20)を搬送するコンベア(74)を具える。上流側から鋳造材料(40)を収容した鋳造型(20)をコンベア(74)に置くことで、加熱機構(72)によって下流側に至るまでに鋳造材料(40)が加熱されて、上記した温度範囲まで昇温し、コンベア(74)の下流側(図中右端の鋳造型(20)参照)に到達したときに棒状型(30)の引き抜きを行なえばよい。これによれば、鋳造材料(40)を均熱化することができ、棒状型(30)の引き抜きタイミングも容易に判定できる利点がある。また、連続的に鋳造材料(40)を収容した鋳造型(20)をコンベア(74)に流すことで、有孔鋳造品(10)の生産効率を可及的に高めることができる。

【0103】
なお、コンベア(74)で搬送中に鋳造材料(40)が振動を受けることで、鋳造材料(40)中の巣の発生を抑える効果もある。勿論、コンベア(74)で搬送中に鋳造型(20)を振動させる機構を具備することで、この効果をさらに高めることもできる。

【0104】
図20乃至図22は、鋳造型(20)の異なる実施例を示している。図20及び図21に示すように、鋳造型(20)は、コ字状に屈曲された溝型(26)と、該溝型(26)を両側から塞ぐ一対の横鋳型(27)から構成され、横鋳型(27)どうしを取付ボルト(29)で連結して組み立てることができる。横鋳型(27)には、1又は複数の挿通孔(24)が貫通開設されており、組み立てられた鋳造型(20)には、前記挿通孔(24)を通して1又は複数の棒状型(30)が挿入可能となっている。また、鋳造型(20)の内部は断熱材(28)で覆っている。

【0105】
図22に示すように、鋳造型(20)には、るつぼ(42)から鋳造材料(40)が注湯される。このとき、図示のように、棒状型(30)に振動や回転、衝撃を加えたり、棒状型(30)を長手方向に往復移動させることで、棒状型(30)の周囲の湯回りを促進することができる。

【0106】
また、図22に示すように、鋳造型(20)に直接衝撃を加えて、棒状型(30)の周囲の湯回りを促進してもよい。
同様に、鋳造型(20)が載置される台(80)に上下方向の振動や水平方向の振動を加えて、棒状型(30)の周囲の湯回りを促進してもよい。
さらには、鋳造型(20)が載置される台(80)を揺動や回転させることで、鋳造型(20)を揺することで、棒状型(30)の周囲の湯回りを促進することもできる。
【実施例】
【0107】
本発明の製造方法により有孔鋳造品を作製し、端面を研磨して写真を撮影した。
以下で列挙する実験条件について、「鋳造型温度」とは鋳造型を予熱した温度、「実験試料」とは鋳造材料の組成であって%は質量%を意味し、例えばAl-5%Siの表記は、Si5質量%、残部Al及び不可避的不純物を意味する。鋳造材料に材質記号がある場合にはその材質記号を先に記載している。「液相線温度Tl(℃)」と「固相線温度Ts(℃)」は、鋳造材料の各々の液相線温度と固相線温度を示している。
【実施例】
【0108】
さらに、「注湯温度」とは鋳造材料の溶湯を電気炉から出したときの温度、「棒状型」は棒状型の材質、直径等を意味する。「引き抜き温度Tp(℃)」は、棒状型を引き抜いたときの鋳造材料の温度を示しており、引き抜き温度Tp(℃)を種々変化させたものについては丸数字で対応する温度を図示している。
【実施例】
【0109】
<実施例1>
鋳造型温度:500℃
実験試料:AC4CH(Al-6.5~7.5%Si-0.2%以下Fe-0.2%以下Cu-0.25~0.45%Mg)
液相線温度(Tl):610℃
固相線温度:555℃
共晶温度(Ts):572℃
注湯温度:800℃
棒状型:直径5mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材
鋳造型側板の孔径:直径5.5mm
引き抜き温度(Tp):580℃
【実施例】
【0110】
実施条件
厚さ3~5mmの鉄板を用い、鉄製の底板と上下の側板と、対応する位置に棒状型の貫通する直径5.5mmの孔をあけた左右の側板とを組み合わせて、上方が開口した内側が長さ(左右の側板の間隔)50mm、幅65mm、深さ40mmの四角形状の型枠を作り、型枠の上下左右の側板の内面と底板内面に、アルミナ・シリカ製不織布(イソウール(登録商標)ペーパー)の2mm厚を設置した。
左右の側板の孔部に予め、孔を覆うアルミナ・シリカ性不織布を突き破って棒状型の他端が金型からはみ出すように挿通した。
【実施例】
【0111】
次に、AC4CHを電気炉で溶かし、電気炉中の溶湯の温度を測定し800℃の溶湯をラドルで掬い、型枠の上面開口から流しこんだ。なお、型枠内の溶湯中の棒状型の近傍に温度センサーの端子を設置し温度を測定した。室内で自然冷却し棒状型近傍の温度が580℃になった時に棒状型の片方の端を掴み、手で引き抜いた。
【実施例】
【0112】
実施例1の有孔鋳造品の写真を図23(帯鋸切断面)に示す。図を参照してわかるとおり、千鳥状に鋳造製品を貫通する孔が開設できたことがわかる。
【実施例】
【0113】
<実施例2>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
注湯後に金型を複数回叩いて衝撃を与え、湯回りを促進し、図15に示すような有孔材を得た。
鋳造型温度:500℃
実験試料:AC4C(Al-6.5~7.5%Si-0.55%以下Fe-0.25%以下Cu-0.2~0.45%Mg)
液相線温度(Tl):610℃
固相線温度:555℃
共晶温度(Ts):572℃
注湯温度:800℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):580℃
【実施例】
【0114】
実施例2の有孔鋳造品の写真を図24(帯鋸切断面)に示す。図を参照してわかるとおり、千鳥状に鋳造製品を貫通する孔が開設できたことがわかる。
【実施例】
【0115】
<実施例3>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:6061(Al-0.4~0.8%Si-0.7%以下Fe-0.15~0.4%Cu-0.8~1.2%Mg)
液相線温度(Tl):652℃
固相線温度(Ts):582℃
注湯温度:680℃
棒状型:直径0.5mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の線材
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):605℃~645℃で5℃毎
【実施例】
【0116】
実施例3の有孔鋳造品の写真を図25(研磨面)に示す。図を参照してわかるとおり、引き抜き温度(Tp)が上記温度範囲で鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。なお、図26は、図25の孔のうち、丸数字1、5及び9を拡大したものである。図を参照すると、固相線温度Ts(℃)に近い温度で棒状型を引き抜くほど、孔の真円度が高くなっていることがわかる。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0117】
<実施例4>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:6061(Al-0.4~0.8%Si-0.7%以下Fe-0.15~0.4%Cu-0.8~1.2%Mg)
液相線温度(Tl):652℃
固相線温度(Ts):582℃
注湯温度:670℃
棒状型:直径0.5mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の線材
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):605℃
【実施例】
【0118】
実施例4の有孔鋳造品の写真を図27(研磨面)に示す。図を参照してわかるとおり、鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。なお、図28は、図27の孔のうち、丸数字1、2及び3を拡大したものである。何れも真円度の高い孔が開設されていることがわかる。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0119】
<実施例5>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:AC4C(Al-6.5~7.5%Si-0.55%以下Fe-0.25%以下Cu-0.2~0.45%Mg)
液相線温度(Tl):610℃
固相線温度:555℃
共晶温度(Ts):572℃
注湯温度:800℃
棒状型:外径6mm、全長600mm(鋳造型内寸法500mm)、厚さ1mmのステンレス鋼製パイプ
鋳造型側板の孔径:直径6.5mm
引き抜き温度(Tp):555℃
【実施例】
【0120】
実施例5では、有孔鋳造品を断面25mm×25mm、長さ500mmとし、有孔鋳造品の長手方向に棒状型(パイプ)を配置して実験を行なった。得られた有孔鋳造品の端面を図29、全体外観を図30に示している。図29(帯鋸切断面)を参照して判るように、長さが500mmの鋳造品であっても孔が開設できたことがわかる。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0121】
<実施例6>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:Al-25%Si
液相線温度(Tl):760℃
共晶温度(Ts):577℃
注湯温度:780℃
棒状型:直径1mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):579℃
【実施例】
【0122】
実施例6の有孔鋳造品の写真を図31(研磨面)に示す。図を参照してわかるとおり、鋳造製品に千鳥状に孔が開設できたことがわかる。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0123】
<実施例7>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:Al-3%Si
液相線温度(Tl):641℃
共晶温度(Ts):577℃
注湯温度:700℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):580℃~630℃で10℃毎
【実施例】
【0124】
実施例7の有孔鋳造品の写真を図32に示す。図を参照してわかるとおり、引き抜き温度Tp(℃)を変えても鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0125】
<実施例8>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:Al-1%Si
液相線温度(Tl):654℃
固相線温度:611℃
共晶温度(Ts):577℃
注湯温度:720℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング、端部をL字形に屈曲
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):650℃~655℃で1℃毎
【実施例】
【0126】
実施例8の有孔鋳造品の写真を図33に示す。図を参照してわかるとおり、引き抜き温度Tp(℃)を変えても鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。丸数字1は、孔が塞がっている。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
さらに、棒状型のL字状に曲がった部分に他の棒を押し当て棒状型を回動させることにより拡径を行なった場合の引き抜き可能な下限温度を図7に示す。
【実施例】
【0127】
<実施例9>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:Al-0.5%Si
液相線温度(Tl):657℃
固相線温度:636℃
共晶温度(Ts):577℃
注湯温度:720℃
棒状型:直径2mmのステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):625℃~640℃で5℃毎
【実施例】
【0128】
実施例9の有孔鋳造品の写真を図34に示す。図を参照してわかるとおり、引き抜き温度Tp(℃)を変えても鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0129】
<実施例10>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:Al-10%Si
液相線温度(Tl):594℃
共晶温度(Ts):577℃
注湯温度:650℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):575℃~590℃
【実施例】
【0130】
実施例10の有孔鋳造品の写真を図35(フライス加工面)に示す。図を参照してわかるとおり、引き抜き温度Tp(℃)が液相線温度Ts(℃)-5℃を越える高い丸数字1の590℃、同2の585℃、同3の583℃では、孔は形成されていない。これは、棒状型を引き抜いた後に鋳造材料が孔に流れ込んで孔を塞いでしまったためである。一方丸数字4以降の引き抜き温度Tp(℃)が580℃以下のものについては、鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。なお、図ではわかりにくいが、丸数字4~9は、孔が鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0131】
<実施例11>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:Al-12%Si
液相線温度(Tl):581℃
注湯温度:650℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):575℃~590℃
【実施例】
【0132】
実施例11の有孔鋳造品の写真を図36(フライス加工面)に示す。図を参照してわかるとおり、引き抜き温度Tp(℃)が液相線温度Ts(℃)-5℃を越える高い丸数字1の590℃、同2の585℃では、孔は形成されていない。これは、棒状型を引き抜いた後に鋳造材料が孔に流れ込んで孔を塞いでしまったためである。一方丸数字3以降の引き抜き温度Tp(℃)が580℃以下のものについては、鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。なお、図ではわかりにくいが、丸数字4~9は、孔が鋳造製品を貫通している。特に丸数字7については孔が形成されていないように見えるが、実際は孔が形成されている。
【実施例】
【0133】
<実施例12>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:Al-15%Si
液相線温度(Tl):613℃
共晶温度(Ts):577℃
注湯温度:700℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):573℃~580℃
【実施例】
【0134】
実施例12の有孔鋳造品の写真を図37(フライス加工面)に示す。図を参照してわかるとおり、引き抜き温度Tp(℃)を変えても鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。なお、図ではわかりにくいが、孔は鋳造製品を貫通している。
【実施例】
【0135】
<実施例13>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:500℃
実験試料:黄銅(Cu-15%Zn)
注湯温度:1200℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):970℃、990℃、1010℃
【実施例】
【0136】
実施例13の有孔鋳造品の写真を図38(フライス加工面)に示す。図を参照してわかるとおり、黄銅についても、引き抜き温度Tp(℃)を変えても鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。
【実施例】
【0137】
<実施例14>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:室温
実験試料:Al-30%SiC(AC4Cベース:Si6.5~7.5%、Fe0.55%以下、Cu:0.25%以下、Mg0.2~0.45%)
AC4Cの液相線温度(Tl):610℃
AC4Cの固相線温度(Ts):555℃
注湯温度:800℃
棒状型:直径2mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング
鋳造型側板の孔径:直径3mm
引き抜き温度(Tp):580℃
【実施例】
【0138】
実施例14の有孔鋳造品の写真を図39に示す。図を参照してわかるとおり、Al-SiCについても、鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。
【実施例】
【0139】
<実施例15>
下記特記する条件以外は実施例1と同様に行なった。
鋳造型温度:室温
実験試料:Al-30%SiC(AC4Cベース:Si6.5~7.5%、Fe0.55%以下、Cu:0.25%以下、Mg0.2~0.45%)
AC4Cの液相線温度(Tl):610℃
AC4Cの固相線温度(Ts):555℃
注湯温度:800℃
棒状型:直径5mm、全長100mm(鋳造型内寸法50mm)のステンレス鋼製の棒材にBNをコーティング。端部がL字状に屈曲したもの。
鋳造型側板の孔径:直径5.5mm
引き抜き温度(Tp):550℃
なお、620℃~580℃までの間、棒状型のL字状に曲がった部分に他の棒を押し当て棒状型を一方向に回動させることにより拡径を行なった。
【実施例】
【0140】
実施例15の有孔鋳造品の写真を図40に示す。図を参照してわかるとおり、Al-SiCについても、鋳造製品に孔が開設できたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、簡易な装置及び方法で通孔を形成することのできる有孔鋳造品の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0142】
(10) 鋳造品
(12) 孔
(20) 鋳造型
(24) 挿通孔
(30) 棒状型
(40) 鋳造材料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
38
【図40】
39