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Specification :(In Japanese)抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5996438
Date of registration Sep 2, 2016
Date of issue Sep 21, 2016
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法
IPC (International Patent Classification) G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/576       (2006.01)
G01N  33/564       (2006.01)
FI (File Index) G01N 33/53 N
G01N 33/576 B
G01N 33/576 Z
G01N 33/564 Z
Number of claims or invention 9
Total pages 21
Application Number P2012-549690
Date of filing Nov 17, 2011
International application number PCT/JP2011/076507
International publication number WO2012/086346
Date of international publication Jun 28, 2012
Application number of the priority 2010286456
Priority date Dec 22, 2010
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Sep 16, 2014
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】三宅 康広
【氏名】山本 和秀
【氏名】松本 和幸
Representative (In Japanese)【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
Examiner (In Japanese)【審査官】大瀧 真理
Document or reference (In Japanese)松井利浩,自己免疫疾患における抗CTLA-4(CD152)自己抗体とその意義,臨床免疫,2001年 1月25日,Vol.35,No.1,P.95-101
岡崎拓、岡崎一美,PD-1分子による免疫応答の制御,月刊メディカル・サイエンス・ダイジェスト,2010年11月25日,Vol.36,No.12,P.1081-1084
小谷素子,自己免疫疾患の発症における補助シグナルの役割,Mol.Med.,2002年10月,Vol.39,No.10,P.1142-1148
加藤智啓,リンパ球表面分子に対する新しい自己抗体とその臨床的意義,炎症と免疫,2002年 5月,Vol.10,No.3,P.315-319
平出綾子ほか,自己免疫性肝炎患者における末梢リンパ球抑制性マーカーの検討,肝臓,2011年 9月10日,Vol.52,No.Supplement2,P.A673
Field of search G01N 33/48 - 33/96
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
採取した生体検体中の抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとして測定する慢性炎症性疾患の検査方法であって、マーカーとして測定する抗体が抗PD-1抗体であり、慢性炎症性疾患が、自己免疫性肝炎、クローン病、ウイルス性慢性肝炎から選択されるいずれかであることを特徴とする、慢性炎症性疾患の検査方法。
【請求項2】
クローン病の検査が、潰瘍性大腸炎との識別のための検査である、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
自己免疫性肝炎の検査が、薬物性肝障害、原発性硬化性胆管炎及び/又はウイルス性急性肝炎との識別のための検査である、請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
ウイルス性慢性肝炎の検査が、ウイルス性急性肝炎、薬物性肝障害及び/又は原発性硬化性胆管炎との識別のための検査である、請求項1に記載の検査方法。
【請求項5】
抑制性補助刺激分子に対する抗体として、抗PD-1抗体及び抗BTLA抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
【請求項6】
抑制性補助刺激分子に対する抗体として、さらに抗CTLA-4抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、請求項5に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
【請求項7】
PD-1抗原を少なくとも含み、抗PD-1抗体検出用デバイスとして、抗PD-1抗体検出用のために抗原を固定しうる固相を含む、請求項1~6のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
【請求項8】
さらに、BTLA抗原及び/又はCTLA-4抗原と、各抗原に対する抗体検出用デバイスとして、各抗原を固定しうる固相を含む、請求項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
【請求項9】
抗原を固定しうる固相が、チューブ又はプレートである、請求項7又は8に記載の検査用キット。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性炎症性疾患の検査方法に関する。具体的には、抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法に関し、さらに具体的には抗PD-1 (Programmed Cell Death protein 1)抗体、抗BTLA(B and T lymphocyte attenuator)抗体及び抗CTLA-4(Cytotoxic T lymphocyte antigen 4)抗体をマーカーとする慢性炎症性疾患の検査方法に関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2010-286456号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
実地臨床では、炎症の存在や程度を評価する血清中マーカーとしてC反応性蛋白(CRP)やアミロイドA蛋白(SAA)が汎用されているが、これらは慢性炎症と急性炎症の双方において炎症の程度に応じて上昇が認められる。このため、CRPやSAAの上昇の程度によって、慢性炎症と急性炎症を鑑別することはできない。A型急性肝炎やB型急性肝炎、ノロウイルスやロタウイルス感染などによる嘔吐下痢症に代表される急性炎症に基づく疾患の多くでは、一過性に臓器障害が発生するものの数日から数週間の経過で治癒に至る。しかし、慢性炎症に基づく疾患では、長期間にわたる炎症の持続により臓器機能不全の出現や発癌などがおこる。急性炎症性疾患と慢性炎症性疾患を鑑別することは、患者に対する治療法の選択や予後予測に重要であるが、急性炎症性疾患と慢性炎症性疾患を鑑別するためのバイオマーカーは存在していない。
【0004】
慢性炎症性疾患には、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、混合性結合組織疾患、多発性筋炎、皮膚筋炎、橋本病、自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)に代表される自己免疫性疾患、B型慢性肝炎やC型慢性肝炎に代表される慢性ウイルス感染症などが含まれる。自己免疫性疾患では、疾患特異的各種マーカー(自己抗体)が同定されているものもある。しかし、自己免疫性疾患患者の多くが全身倦怠感、発熱、関節痛などの非特異的な症状で発症することが多いため、各疾患毎に特異的な自己抗体をすべて測定することは費用効果の点において問題がある。また、自己免疫性疾患のスクリーニング検査として抗核抗体の測定が汎用されているが、健常人においても約26%が陽性を示すと報告されており(非特許文献1)、特異度に問題がある。慢性ウイルス性感染症では、B型慢性肝炎におけるHBs抗原、C型慢性肝炎におけるHCV抗体、慢性活動性EBウイルス感染症における血中EBウイルスDNA定量のようにスクリーニング検査方法が確立されているものもある。一方、自己免疫性疾患のスクリーニング検査方法としてのバイオマーカーは確立されておらず、より効率的に検査可能なバイオマーカーの開発が必要である。
【0005】
自己免疫性疾患のなかでも自己免疫性肝炎 (Autoimmune hepatitis:AIH) については疾患特異的なバイオマーカーが特定されておらず、各種診断基準によって診断が行われている(非特許分文献2、3)。自己免疫性肝炎は中年以降の女性に好発するが、発症時に何等かの薬剤や健康食品を摂取している患者も多い。このため、健康食品や薬剤による肝障害(総じて薬物性肝障害)との鑑別を要する症例が増加している。しかしながら、両者の鑑別に有用なバイオマーカーは存在していない。従って、自己免疫性肝炎と薬物性肝障害の鑑別に有用なバイオマーカーの開発は重要である。
【0006】
自己免疫性疾患を含む多くの慢性炎症性疾患では、T細胞の活性化が病態の中心的役割を担っている。T細胞の抗原特異的な活性化には、抗原提示細胞上の主要組織適合抗原複合体(MHC)により提示される抗原を、T細胞が抗原特異的に発現するT細胞レセプター(TCR)によって認識するのみでは不十分であり、T細胞表面に発現する補助刺激分子の一種であるCD28が、抗原提示細胞上のリガンドであるB7(CD80及びCD86)と反応することが必要である(図1、左図参照)。T細胞がTCRによって抗原を認識してもCD28からの補助刺激シグナルが入らないとT細胞の活性化が起こらないだけでなく、2度目以降の同一抗原による再刺激に対しても反応しない抗原特異的不応答(clonal anergy)と呼ばれる状態になる。活性化されたT細胞表面には、CTLA-4(Cytotoxic T lymphocyte antigen 4)やPD-1といった抑制性の補助刺激分子の発現がみられるようになる。
【0007】
最近では、慢性関節リウマチ患者において活性化したT細胞の不活化を目的とする、B7抗原に対するCTLA-4分子について、開示がある(特許文献1、2)。また、CTLA-4の部分とヒトIgG1に由来する改変型Fc領域を含む遺伝子組み換えによるT細胞選択的共刺激調整剤(一般名:アバタセプト)が、関節リウマチについて、既存治療で効果不十分な場合に限ることを条件として、日本国で医薬品として承認された。また、悪性腫瘍において癌抗原特異的なT細胞活性化を目的として、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体投与による治療が検討されている(特許文献3~5、非特許文献4)。PD-1をノックアウトしたマウスでは、血中に抗核抗体が出現し、自己免疫性肝炎や自己免疫性胃炎、ループス腎炎に類似した自己免疫性疾患を自然発症することが報告されている(特許文献6、非特許文献5)。
【0008】
しかしながら、補助刺激分子の抗体をマーカーとする検査方法についての報告はない。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】Hayashi et al., 2008. Mod. Rheumatol., 18, 153-160
【非特許文献2】Hennen et al., 2008, Hepatology. 48, 169-176
【非特許文献3】Alvarez et al., 1999, J. Hapatol. 31, 929-938
【非特許文献4】Brahmer et al., 2010, J. Clin. Oncol. 28, 3617-3175
【非特許文献5】Kido et al., 2008, Gastroenterology, 135, 1333-1343
【0010】

【特許文献1】特開平8-47391号公報
【特許文献2】特開平9-202800号公報
【特許文献3】特開2006-340714号公報
【特許文献4】特開2009-155338号公報
【特許文献5】特開2009-155338号公報
【特許文献6】特開2007-023047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、慢性炎症性疾患の検査方法を提供することを課題とする。具体的には、従来の炎症マーカーでは鑑別不可能であった慢性炎症と急性炎症を鑑別しうる検査方法、より具体的には、自己免疫性疾患の検査方法及び移植後の予後検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らは、上記課題を解決するために、自己免疫性疾患を含む多くの慢性炎症性疾患に関するT細胞の活性化状態に着目し、鋭意検討を重ねた結果、免疫細胞に発現している抑制性補助刺激分子に対する抗体が、慢性炎症性疾患のマーカーとなりうることを初めて見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.採取した生体検体中の抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、慢性炎症性疾患の検査方法。
2.抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するPD-1 (Programmed Cell Death protein 1)であり、抗PD-1抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
3.抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するBTLA (B and T lymphocyte attenuator)であり、抗BTLA抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
4.抑制性補助刺激分子が、T細胞及び/又はB細胞表面に発現するCTLA-4 (Cytotoxic T-Lymphocyte Antigen 4)であり、抗CTLA-4抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
5.抑制性補助刺激分子に対する抗体として、抗PD-1抗体及び抗BTLA抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、前項1に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
6.抑制性補助刺激分子に対する抗体として、さらに抗CTLA-4抗体を各々マーカーとして測定することを特徴とする、前項4又は5に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
7.前記慢性炎症性疾患が、自己免疫性疾患、ウイルス性慢性疾患又は生体成分移植後の慢性拒絶反応である、前項1~6のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
8.前記自己免疫性疾患が、自己免疫性肝炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎及び原発性胆汁性肝硬変より選択されるいずれかである、前項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
9.前記ウイルス性慢性疾患が、B型慢性肝炎又はC型慢性肝炎である、前項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
10.前記生体成分移植後の慢性拒絶反応が、臓器、組織及び/又は細胞の移植後の慢性拒絶反応である、前項7に記載の慢性炎症性疾患の検査方法。
11.慢性炎症性疾患が、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であり、以下の工程を含む、前項1、2及び5~10のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗PD-1抗体価を測定する工程;
2)上記測定した抗PD-1抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
12.さらに以下の工程を含む、前項11に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗BTLA抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗BTLA抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
13.さらに以下の工程を含む、前項11又は12に記載の慢性炎症性疾患の検査方法:
1)採取した検体中に存在する抗CTLA-4抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗CTLA-4抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。
14.PD-1抗原を少なくとも含み、抗PD-1抗体検出用デバイスを含む、前項1、2及び5~13のいずれか一に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
15.さらに、BTLA抗原及び/又はCTLA-4抗原と、各抗原に対する抗体検出用デバイスを含む、前項14に記載の慢性炎症性疾患の検査方法に使用する検査用キット。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検査方法によれば、急性炎症性疾患と慢性炎症性疾患を鑑別することができる。急性炎症性疾患と慢性炎症性疾患の鑑別は、患者に対する治療法の選択や予後予測に重要であるが、急性炎症性疾患と慢性炎症性疾患を鑑別するためのバイオマーカーは存在していない。本発明の検査方法により、臨床症状がよく似ている疾患、例えば薬物性肝障害(Drug)や原発性硬化性胆管炎(PSC)と自己免疫性肝炎(AIH)を鑑別することができることが確認された。また、ウイルス性肝炎については、B型急性肝炎(AHB)とB型慢性肝炎(CHB)の鑑別を行うことができた。さらに、クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)についても、抗PD-1抗体価について顕著な違いを認め、鑑別することができた。クローン病と潰瘍性大腸炎のいずれも自己免疫性の腸炎であり、症状も類似しているのであるが、クローン病はリンパ球浸潤を病態の中心とする消化管粘膜の全層性炎症所見と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とするのに対して、潰瘍性大腸炎は大腸粘膜の陰窩内腔に好中球が浸潤・集簇した陰窩膿瘍が特徴である。また、クローン病は消化管全体に炎症が及ぶ場合があるが、潰瘍性大腸炎では大腸のみに炎症が生じる。一方、潰瘍性大腸炎は癌化する場合もあり、予後はクローン病とは相違する。従って、これらの疾患については、治療方針等も異なる。これらの疾患については、従来は時間をかけて経過を観察したり、生検検体などを採取し、組織検体を観察して鑑別しなければならなかったのに対して、本発明の方法によると、血清試料を用いて鑑別することができる点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】抑制性補助刺激分子の概念を示す図である。
【図2】各疾患における血清中の抗PD-1抗体価の測定結果を示す図である。(実施例1)
【図3】各疾患における血清中の抗PD-1抗体の陽性率を示す図である。(実施例1)
【図4】自己免疫性肝炎の患者について、ステロイド製剤であるプレドニゾロン(PSL)を用いて治療したときの治療前及び寛解後の抗PD-1抗体価の測定結果を示す図である。(実施例2)
【図5】各疾患における血清中の抗CTLA-4抗体価の測定結果を示す図である。(実施例3)
【図6】各疾患における血清中の抗CTLA-4抗体の陽性率を示す図である。(実施例3)
【図7】各疾患における血清中の抗BTLA抗体価の測定結果を示す図である。(実施例4)
【図8】各疾患における血清中の抗BTLA抗体の陽性率を示す図である。(実施例4)
【図9】免疫沈降法及びウエスタンブロッティング法による抗PD-1抗体の検出結果を示す写真図である。(実施例5)
【図10】自己免疫性肝炎患者における血清中ALT値と抗PD-1抗体価の相関を示す図である。(実施例12)
【図11】自己免疫性肝炎患者における血清中IgG値と抗PD-1抗体価の相関を示す図である。(実施例12)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、採取した生体検体中の抑制性補助刺激分子に対する抗体をマーカーとして測定することを特徴とする、慢性炎症性疾患の検査方法に関する。

【0017】
本発明における「生体検体」は、本発明においてマーカーとする抗体が存在しうる検体であればよく、特に限定されないが、例えば全血、血漿、血清、髄液、関節液、膣液、尿、体液、唾液、鼻汁、涙液、糞便由来物等が例示され、特に臨床検査において使用される全血、血漿や血清を検体とするのが好適である。採取した生体検体は、検査を行うに際し、適宜前処理を行うことができる。

【0018】
本発明において、「抑制性補助刺激分子」とは、T細胞及び/又はB細胞表面に発現しうる抑制性補助刺激分子であり、具体的には、PD-1(Programmed death one)、CTLA-4(Cytotoxic T lymphocyte antigen 4)やBTLA (B and T lymphocyte attenuator)が挙げられる。上記、背景技術の欄でも言及したが、活性化されたT細胞表面には、CTLA-4やPD-1といった抑制性の補助刺激分子の発現がみられるようになる。CTLA-4とPD-1のリガンドはそれぞれB7とPD-L(PD-L1及びPD-L2)であるが、CTLA-4やPD-1からの刺激によりT細胞が不活化されることが公知である(図1参照)。なお、CD28のリガンドもB7であるが、抑制性補助刺激分子であるCTLA-4はCD28に比べて20倍以上B7との親和性が高い。T細胞及び/又はB細胞免疫に係る補助刺激分子や抑制性補助刺激分子のバランスが維持されることによって、生体における免疫が適度に制御されているものと考えられる。

【0019】
上述のような免疫機能に係る補助刺激分子や抑制性補助刺激分子の機能については、背景技術の欄で示したように、既にいくつか報告されている。しかしながら、これらの物質をマーカーとして検出し、疾患について検査することは、今まで報告されていなかった。

【0020】
本発明において、「抑制性補助刺激分子に対する抗体」は、採取した生体検体に存在しうるものであればよく、特に限定されない。抗体の種類としては、例えばIgGであってもよいしIgMであってもよいが、IgGが好適である。

【0021】
本発明において、これらの抗体をマーカーとするのは、これらの抗体価がカットオフ値よりも高いことを必ずしも意味するものではない。例えば、後述する慢性炎症性疾患の内、潰瘍性大腸炎やクローン病のようにいずれも自己免疫性疾患に属し、臨床症状がよく似た疾患でありながら、治療方針の異なる疾患などについて、上述のマーカーの値によりいずれかの疾患であるかを鑑別することができる。また、自己免疫性肝炎と薬物性肝障害についても、同様に臨床症状がよく似た疾患でありながら、全く治療方針の異なる疾患があるが、上述のマーカーの値によりいずれかの疾患であるかを鑑別することができる。

【0022】
本発明における慢性炎症性疾患は、医療の分野において用いられる慢性炎症性疾患であればよく、特に限定されない。本発明における慢性炎症疾患として具体的には、自己免疫性疾患、ウイルス性慢性疾患又は生体成分移植後の慢性拒絶反応や、これらに分類されないものも挙げられる。

【0023】
自己免疫性疾患の例としては、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、慢性関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群(特発性ネフローゼ症候群、微小変化ネフロパシーなど)、多発性硬化症、多発性筋炎、多発性軟骨炎、強皮症、皮膚筋炎、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、重症筋無力症、特発性スプルー、サルコイドーシス、ライター症候群、I型糖尿病、原田病、ベーチェット病、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、Basedow病、慢性甲状腺炎、自己免疫性血液疾患(溶血性貧血、再生不能性貧血、特発性血小板減少症など)が挙げられる。好適には、自己免疫性肝炎、潰瘍性大腸炎、クローン病及び原発性胆汁性肝硬変、慢性関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、I型糖尿病、シェーグレン症候群、混合性結合組織、Basedow病、慢性甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血などが挙げられ、特に好適には、自己免疫性肝炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性硬化性胆管炎及び原発性胆汁性肝硬変、などが挙げられる。

【0024】
ウイルス性慢性疾患の例としては、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎や慢性活動性EBウイルス感染症が挙げられる。生体成分移植後の慢性拒絶反応の例としては、臓器、組織及び/又は細胞の移植後の慢性拒絶反応が挙げられ、慢性の移植片対宿主病(GVHD)も含まれる。

【0025】
さらに、本発明におけるその他の慢性炎症性疾患として、乾癬様関節炎、炎症性皮膚疾患(扁平苔癬、天疱瘡、水泡性類天疱瘡、表皮水泡症、円形性脱毛症など)などが挙げられる。

【0026】
本発明において、抑制性補助刺激分子に対する抗体のうち、例えば抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体及び抗BTLA抗体、特に好ましくは抗PD-1抗体及び/又は抗BTLA抗体に関し、上記列挙した疾患のうち、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の場合には、カットオフ値よりも高い傾向を示す。
カットオフ値よりも高い値を示すと考えられる疾患としては、クローン病、サルコイドーシス、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、混合性結合組織病、Basedow病、慢性甲状腺炎、I型糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、多発性硬化症など、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変への合併が報告されている自己免疫性疾患や、慢性ウイルス性感染症、例えばB型慢性肝炎、C型慢性肝炎や慢性活動性EBウイルス感染症が挙げられる。

【0027】
例えば、症状がよく似た疾患として、いずれも自己免疫性疾患に属する潰瘍性大腸炎とクローン病、自己免疫性肝炎と原発性硬化性胆管炎、一方が自己免疫性疾患である自己免疫性肝炎と薬物性肝障害、などが挙げられる。例えばクローン病の場合には、カットオフ値よりも高い抗体価を示し、潰瘍性大腸炎の場合は、カットオフ値と同程度の値を示す。自己免疫性肝炎の場合は、カットオフ値よりも高い抗体価を示し、薬物性肝障害と原発性硬化性胆管炎の場合には、カットオフ値と同程度の値を示す。症状がよく似た疾患として複数に候補疾患が挙げられる場合には、まず最初に自体公知の検査方法により、大まかな検査を行い、対応する疾患がある程度絞り込まれた後、最終的にいずれかの疾患かを鑑別する場合に検査を行うのが好適である。従って、本発明の検査方法は、既存の検査方法、例えばC反応性蛋白(CRP)やアミロイドA蛋白(SAA)、抗核抗体などを用いて検査を行った後、本発明の方法により検査を行うのが、より効果的に検査を行うことができる。

【0028】
背景技術の欄でも示したように、関節リウマチについて、活性化したT細胞の不活化を目的とする、B7抗原に対するT細胞選択的共刺激調整剤であるCTLA4-Ig製剤(一般名:アバタセプト)が、条件付きで日本国において医薬品として承認された。このような、CTLA-4分子などの生物学的製剤は非常に高価であるため、真に必要な疾患についてのみ投与するのが好ましい。

【0029】
また、アバタセプトの投与に関わらず、上述のような疾患について何らかの治療を行っている場合、生体検体中の上記抗体価をモニターすることで、疾患の予後や、治療方針の適否などを予測することが好ましい。例えば、臓器等の移植後の慢性拒絶反応については、抑制性補助刺激分子に対する抗体、例えば抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体や抗BTLA抗体、特に好ましくは抗PD-1抗体に関し、カットオフ値よりも高い値を示すと考えられるが、その後の治療経過の観察とともに、当該抗体価をモニターすることで、予後予測やその後の薬剤投与量の決定等、治療方針などを適宜検討し、選択することができればよい。本発明の検査方法によれば、このような予後予測などが可能となる。

【0030】
本発明の具体的な検査方法、例えばリンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の検査方法として、以下が挙げられる。
1)採取した検体中に存在する抗PD-1抗体価を測定する工程;
2)上記測定した抗PD-1抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。

【0031】
本発明のリンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の検査方法として、さらに以下の工程を含むことができる。
1)採取した検体中に存在する抗BTLA抗体の抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗BTLA抗体の抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。

【0032】
本発明のリンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の検査方法として、さらに以下の工程を含むことができる。
1)採取した検体中に存在する抗CTLA-4抗体の抗体価をさらに測定する工程;
2)上記測定した抗CTLA-4抗体の抗体価が、カットオフ値よりも高い場合に、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患であると判断する工程。

【0033】
本発明のリンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の検査方法として、比較したい2種の疾患について、採取した検体中に存在する抗PD-1抗体価、さらには抗CTLA-4抗体の各抗体価の違いにより鑑別することができる。例えば、自己免疫性肝炎と薬物性肝障害については、自己免疫性肝炎の患者血清中の抗PD-1抗体価及び抗CTLA-4抗体価は高い傾向を示し、陽性率についても高い値であった。また、クローン病と潰瘍性大腸炎について比較した場合、クローン病のほうが抗体価も陽性率も高いことが確認された。これにより、抗PD-1抗体価、さらには抗CTLA-4抗体価の測定結果から、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の鑑別が可能であることが示唆される。

【0034】
本発明のリンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患のさらなる検査方法として、採取した検体中に存在する抗BTLA抗体の抗体価の違いにより、比較したい2種の疾患について鑑別することができる。例えば、自己免疫性肝炎と薬物性肝障害を比較した場合、自己免疫性肝炎のほうが抗体価も陽性率も高い傾向を示した。また、クローン病と潰瘍性大腸炎について比較した場合、クローン病のほうが抗体価も陽性率も高い傾向を示した。これにより、抗BTLA抗体の測定結果から、リンパ球浸潤を病態の中心とする慢性炎症性疾患の鑑別が可能であることが示唆された。

【0035】
本発明において、抑制性補助刺激分子に対する抗体、例えば抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体や抗BTLA抗体を検出する方法は、自体公知の方法を適用することができ、特に限定されない。具体的には、酵素免疫吸着測定(enzyme-linked immunosorbent assay: ELISA)法、放射免疫測定(Radioimmunoassay: RIA)法、凝集法、比濁法、混濁度測定法、ウエスタンブロット法、免疫クロマトグラフィーなどを挙げることができる。抗体価測定に際しては、特にELISA法やRIA法が好適であり、簡便に検査可能なELISA法が最も好適である。

【0036】
本発明は、上記の検査方法に使用する検査用キットにも及ぶ。検査用キットの構成として、抗PD-1抗体検出のためにはPD-1抗原を少なくとも含み、抗PD-1抗体検出用デバイスを含む。さらに、抗BTLA抗体及び/又は抗CTLA-4抗体を測定するためには、BTLA抗原及び/又はCTLA-4抗原とこれらの抗体検出用デバイスを含む。抗体検出用デバイスとして、例えば免疫測定方法がELISA法の場合は、固相としてのチューブやプレートなどを含むことができる。さらには、測定に使用する緩衝液などもキットに含めることができる。
【実施例】
【0037】
本発明の理解を深めるために、以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは、いうまでもない。以下の臨床検体を用いた本研究は、岡山大学内の倫理委員会により承認されている。
【実施例】
【0038】
(実施例1) 各種疾患患者血清中の抗PD-1抗体価の測定
以下の表1に示す各患者より採血を行い、通常の臨床検査に用いる処理を行って血清を取得した。
【実施例】
【0039】
【表1】
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【実施例】
【0040】
上記各患者から得た血清試料について、ELISA法により、抗PD-1抗体価を測定した。測定は、以下の手順で行った。
1)抗原として、1μg/mlの遺伝子組み換えPD-1(H00005133-Q01:Avnova社、台湾)を96穴マイクロプレートの各ウェルに100μl加え、1時間放置し、抗原を固相化した。
2)1%のウシ血清アルブミン(BSA)を300μl加えてブロッキングを行った。
3)患者の血清試料を1% BSA-PBST(0.02% Tween-20)で20倍に希釈したものを100μl加え、1時間、室温で反応させた。
4)PBST(0.05% Tween-20)で各ウェルを洗浄後、1μg/mlのペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体を100μl加え、1時間、室温で反応させた。
5)PBST(0.05% Tween-20)で各ウェルを洗浄後、発色基質液(2,2'-azino-bis [3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonate]:ABTS)を100μl加え、10分間、室温で反応させた。
6)ELISAリーダー(Model 680 Microplate Reader: Bio-Rad Laboratories社)を用いて、630nmの吸光度を測定した。
【実施例】
【0041】
各患者血清中の抗PD-1抗体価を図2及び以下の表2に示した。図2の横軸に示す略称の意味は、表1に示した。
【表2】
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【実施例】
【0042】
さらに、カットオフ値を基準にしたときの各疾患患者についての抗PD-1抗体の陽性率を図3に示した。図3の横軸に示す略称は、表1に示した。
【実施例】
【0043】
上記の結果より、薬物性肝障害(Drug)及びB型急性肝炎患者由来血清(AHB)では、原発性硬化性胆管炎(PSC)と潰瘍性大腸炎(UC)を除く他の慢性炎症性疾患の患者由来血清に比べて、コントロールに近い抗PD-1抗体価を示し、抗体陽性率についても同様に有意な差を認めた。
【実施例】
【0044】
この結果より、臨床症状がよく似ている、薬物性肝障害(Drug)や原発性硬化性胆管炎(PSC)と自己免疫性肝炎(AIH)を鑑別することができることが確認された。また、ウイルス性肝炎については、B型急性肝炎(AHB)とB型慢性肝炎(CHB)の鑑別を行うことができることが確認された。さらに、クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)についても、抗PD-1抗体価について顕著な違いを認め、鑑別することができることが確認された。クローン病と潰瘍性大腸炎のいずれも自己免疫性の腸炎であり、症状も類似しているのであるが、クローン病はリンパ球浸潤を病態の中心とする消化管粘膜の全層性炎症所見と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とするのに対して、潰瘍性大腸炎は大腸粘膜の陰窩内腔に好中球が浸潤・集簇した陰窩膿瘍が特徴である。また、クローン病は消化管全体に炎症が及ぶ場合があるが、潰瘍性大腸炎では大腸のみに炎症が生じる。一方、潰瘍性大腸炎は癌化する場合もあり、予後はクローン病とは相違する。従って、これらの疾患については治療方針等も異なる。これらの疾患について、従来は臨床経過を観察するか、又は生検検体など組織検体を観察して鑑別しなければならなかったのに対し、本発明の方法によると、血清試料を用いて容易に鑑別することができる点で優れている。
【実施例】
【0045】
(実施例2) 自己免疫性肝炎患者の治療経過と抗PD-1抗体価の測定
自己免疫性肝炎の患者33名について、ステロイド製剤であるプレドニゾロン(PSL)を用いて内服治療した。治療前及び寛解後の各患者の血清試料について、実施例1に示す方法と同手法により抗PD-1抗体価を測定した。
【実施例】
【0046】
その結果、治療前に比べて治療後の抗PD-1抗体価が低い値を示していることが確認された(図4)。この結果より、薬剤による治療効果を抗PD-1抗体価を測定することでモニタリング可能なことが示唆された。
【実施例】
【0047】
(実施例3) 各種疾患患者血清中の抗CTLA-4抗体価の測定
実施例1の表1に示す各患者の血清試料について、抗CTLA-4抗体価を測定した。抗CTLA-4抗体価の測定は、PD-1抗原をCTLA-4抗原(Avnova社製)に変更した以外は、実施例1に示すELISA法と同手法により行った。
【実施例】
【0048】
各疾患患者についての抗CTLA-4抗体価を表3及び図5に示した。さらに、カットオフ値を基準にしたときの各疾患患者についての抗CTLA-4抗体の陽性率を図6に示した。図5及び6の横軸に示す略称は、表1に示した。
【実施例】
【0049】
【表3】
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【実施例】
【0050】
上記の結果、抗CTLA-4抗体の測定結果は、抗PD-1抗体の測定結果ほど顕著ではなかったが、実施例1の結果とほぼ同様の傾向を示した。
【実施例】
【0051】
(実施例4) 自己免疫性肝炎患者の治療経過と抗BTLA抗体価の測定
実施例1の表1に示す各患者のうち、薬物性肝障害、自己免疫性肝炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎の各患者血清試料について、抗BTLA抗体価を測定した。抗BTLA抗体価の測定は、PD-1抗原をBTLA抗原(Avnova社製)に変更した以外は、実施例1に示すELISA法と同手法により行った。
【実施例】
【0052】
各疾患患者についての抗BTLA抗体価を表4及び図7に示した。さらに、カットオフ値を基準にしたときの各疾患患者についての抗BTLA抗体の陽性率を図8に示した。図7及び8の横軸に示す略称は、表1に示した。
【実施例】
【0053】
【表4】
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【実施例】
【0054】
上記の結果、薬物性肝障害及び原発性硬化性胆管炎と自己免疫性肝炎の間では、自己免疫性肝炎の患者のほうが高い抗BTLA抗体価を示した。また、クローン病と潰瘍性大腸炎の患者については、いずれも抗BTLA抗体価は低い傾向であった。一方、カットオフ値を基準にした時の抗BTLA抗体陽性率は、クローン病のほうが明らかに高かった。
【実施例】
【0055】
上記各実施例の結果より、抗PD-1抗体の測定結果により、各種疾患について鑑別可能であることが確認され、さらに抗BTLA抗体及び/又は抗CTLA-4抗体を測定することで、各種疾患の鑑別が可能であることが示唆された。
【実施例】
【0056】
(実施例5) 免疫沈降法及びウエスタンブロッティング法による抗PD-1抗体の検出
実施例1の表1に示す各患者より採血を行い、通常の臨床検査に用いる処理を行って得た血清試料について、免疫沈降法及びウエスタンブロッティング法により、血清中の抗PD-1抗体を検出した。測定は、以下の手順で行った。
【実施例】
【0057】
1)各患者から得た血清試料について、抗体精製用アフィニティー担体であるプロテインGを添加し、血清中のIgGを非特異的に吸着させた。
2)常法に従いプロテインGを洗浄した後、プロテインGを含む溶液を調製した。
3)抗原として、遺伝子組換えPD-1(H00005133-Q01: Avnova社、台湾)を2.5μg/mlとなるようにプロテインGを含む溶液に加えて1時間処理し、プロテインGに非特異的に吸着された血清中IgGとPD-1抗原とを反応させた。血清中に抗PD-1抗体が存在する場合にPD-1抗原との間で抗原抗体反応が生じ、プロテインG-IgG-PD-1抗原の複合体が形成される。
4)常法に従い洗浄後、溶出液(50 mM Glycine Buffer, pH 2.8)でプロテインGに吸着したタンパク質を溶出させた。溶出液中には、IgG、血清中に抗PD-1抗体が存在する場合はPD-1抗原が含まれる。
5)溶出したタンパク質の溶液に、2×サンプルバッファー(20% Glycerol, 4%SDS, 125mM Tris-HCl / pH6.8, 12% メルカプロエタノール, 0.004% BPB (Bromophenol blue))を添加した後、常法に従ってSDS-PAGEによる電気泳動を行った。
6)泳動したタンパク質を常法に従ってPVDFメンブレンにブロッティングさせ、1時間のブロッキング処理後、一次抗体としてのマウス抗PD-1抗体(H00005133-A01 : Avnova社、台湾)を1時間処理し、泳動したタンパクのうち、PD-1抗原とマウス抗PD-1抗体の抗原抗体反応を起こさせた。メンブレンを洗浄後、HRP標識抗マウスIgG抗体(RPN2124: GE Healthcare社、UK)を二次抗体として1時間反応させた。さらに洗浄後、ECL Western Blotting Detection System (RPN2132: GE Healthcare, UK)で発色させ、ルミノメーターで検出した。
【実施例】
【0058】
ウエスタンブロッティングの結果を、図9に示した。ELISA法で抗PD-1抗体が高値であった自己免疫性肝炎患者ではウエスタンブロット法でバンドが認められ、血清中に抗PD-1抗体の存在することが示された。一方、ELISA法で抗PD-1抗体価がきわめて低値であった薬物性肝障害患者と健常人ではウエスタンブロット法でバンドが認められず、血清中に抗PD-1抗体の存在しないことが示された。以上より、ウエスタンブロット法によっても血清中抗PD-1抗体の検出が可能である。
【実施例】
【0059】
(実施例6)ELISA法により測定した抗PD-1抗体価と各種疾患との関係
各種疾患患者について、実施例1に記載のELISA法により測定した抗PD-1抗体価測定結果と、各疾患に対する感度及び特異度を調べた。その結果、抗PD-1抗体についてカットオフ値(健常人における平均値+2SD)よりも高い場合の、感度及び特異度は、表5に示す如くであり、健常人との識別が可能であることが確認された。
【実施例】
【0060】
【表5】
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【実施例】
【0061】
(実施例7) ELISA法により測定した抗CTLA-4抗体価と各種疾患との関係
各種疾患患者について、実施例3に記載のELISA法により測定した抗CTLA-4抗体価測定結果と、各疾患に対する感度及び特異度を調べた。その結果、抗CTLA-4抗体価についてカットオフ値(健常人における平均値+2SD)よりも高い場合の、感度及び特異度は、表6に示す如くであり、健常人との識別が可能であることが確認された。
【実施例】
【0062】
【表6】
JP0005996438B2_000007t.gif
【実施例】
【0063】
(実施例8) ELISA法により測定した抗BTLA抗体価と各種疾患との関係
各種疾患患者について、実施例4に記載のELISA法により測定した抗BTLA抗体価測定結果と、各疾患に対する感度及び特異度を調べた。その結果、抗BTLA抗体価についてカットオフ値(健常人における平均値+2SD)よりも高い場合の、感度及び特異度は、表7に示す如くであり、健常人との識別が可能であることが確認された。
【実施例】
【0064】
【表7】
JP0005996438B2_000008t.gif
【実施例】
【0065】
(実施例9) 各抗体マーカー測定による各種疾患の鑑別(1)
実施例6~8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせにより自己免疫性肝炎と薬物性肝障害の鑑別を行った。
その結果、表8に示すように抗PD-1抗体の測定により優れた特異度を示すことが確認された。また、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体のいずれもが(+)の場合、あるいは抗PD-1抗体と抗BTLA抗体のいずれもが(+)の場合にも、高い特異度を示すことが確認された。一方、抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体のいずれかが(+)、あるいは抗PD-1抗体又は抗BTLA抗体のいずれかが(+)の場合は、感度はややすぐれた値を示すが、特異度は高くなかった。
【実施例】
【0066】
【表8】
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【実施例】
【0067】
上記により、自己免疫性肝炎と薬物性肝障害のいずれかであると判断される場合の両疾患の鑑別は、抗PD-1抗体(+)の他、抗CTLA-4抗体及び/又は抗BTLA抗体が(+)の場合に、自己免疫性肝炎であると鑑別することが可能と考えられた。
【実施例】
【0068】
(実施例10) 各抗体マーカー測定による各疾患の鑑別(2)
実施例6~8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせにより自己免疫性肝炎と原発性硬化性胆管炎の鑑別を行った。
その結果、表9に示すように抗BTLA抗体の測定により優れた特異度を示すことが確認された。また、抗BTLA抗体と抗CTLA-4抗体のいずれもが(+)の場合、あるいは抗BTLA抗体と抗PD-1抗体のいずれもが(+)の場合にも、高い特異度を示すことが確認された。一方、抗BTLA抗体又は抗CTLA-4抗体のいずれかが(+)、あるいは抗BTLA抗体又は抗PD-1抗体のいずれかが(+)の場合は、感度はややすぐれた値を示すが、特異度は高くなかった。
【実施例】
【0069】
【表9】
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【実施例】
【0070】
上記により、自己免疫性肝炎と原発性硬化性胆管炎のいずれかであると判断される場合の両疾患の鑑別は、抗BTLA抗体(+)の他、抗CTLA-4抗体及び/又は抗PD-1抗体が(+)の場合に、自己免疫性肝炎であると鑑別することが可能と考えられた。
【実施例】
【0071】
(実施例11) 各抗体マーカー測定による各疾患の鑑別(3)
実施例6~8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせにより慢性B型肝炎と急性B型肝炎の鑑別を行った。
その結果、表10に示すように抗PD-1抗体の測定により優れた特異度を示すことが確認された。また、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体のいずれもが(+)の場合、あるいは抗PD-1抗体と抗BTLA抗体のいずれもが(+)の場合にも、高い特異度を示すことが確認された。一方、抗PD-1抗体又は抗BTLA抗体のいずれかが(+)の場合は、感度はすぐれた値を示すが、特異度は高くなかった。
【実施例】
【0072】
【表10】
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【実施例】
【0073】
上記により、慢性B型肝炎と急性B型肝炎のいずれかであると判断される場合の両疾患の鑑別は、抗PD-1抗体(+)の他、抗CTLA-4抗体及び/又は抗BTLA抗体が(+)の場合に、慢性B型肝炎であると鑑別することが可能と考えられた。
【実施例】
【0074】
(実施例12) 各抗体マーカー測定による各疾患の鑑別(4)
実施例6~8に記載の方法で測定した各種抗体価について、各々がカットオフ値以上の場合を(+)とし、各種マーカーの組み合わせによりクローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別を行った。
その結果、表11に示すように、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体及び抗BTLA抗体が(+)の場合に、高い特異度を示したが、特に抗BTLA抗体の測定によりクローン病に対して優れた特異度を示すことが確認された。さらに、上記各種抗体について、いずれか2種以上の抗体が(+)の場合に、クローン病に対してより優れた特異度を示すことが確認された。
【表11】
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【実施例】
【0075】
上記により、クローン病と潰瘍性大腸炎のいずれかであると判断される場合の両疾患の鑑別は、抗PD-1抗体(+)、抗CTLA-4抗体及び抗BTLA抗体が(+)の場合に、クローン病であると鑑別することが可能と考えられた。
【実施例】
【0076】
(実施例13) 自己免疫性肝患者における病態の診断
自己免疫性肝患者について、実施例1に記載のELISA法により測定した抗PD-1抗体価とアラニンオキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(Alanine Aminotransferase: ALT, GPT)ともいう。)又はIgGとの相関性について確認した(図10、11参照)。ALTは、AST(GOT)と共に肝細胞に障害を受けると上昇するマーカーであるが、特にALTの大部分は肝細胞に含まれるので肝臓病の疾患が疑われる。図10及び図12の結果より、自己免疫性肝疾患患者の抗PD-1抗体価に関し、IgGに比べるとALTのほうが相関性が高いことが確認された。これにより、抗PD-1抗体は、疾患活動性と相関が認められるものと考えられた。慢性炎症性疾患では、血清中IgGの上昇が非特異的に認められるが、血清中のIgGの測定により、抑制性の補助刺激分子に対する抗体価を評価することはできないものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上詳述したように、本発明の検査方法により臨床症状がよく似ている、薬物性肝障害(Drug)や原発性硬化性胆管炎(PSC)と自己免疫性肝炎(AIH)を鑑別することができた。また、ウイルス性肝炎については、B型急性肝炎(AHB)とB型慢性肝炎(CHB)の鑑別を行うことができた。さらに、クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)についても、抗PD-1抗体価について顕著な違いを認め、鑑別することができた。クローン病と潰瘍性大腸炎のいずれも自己免疫性の腸炎であり、症状も類似しているのであるが、クローン病はリンパ球浸潤を病態の中心とする消化管粘膜の全層性炎症所見と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とするのに対して、潰瘍性大腸炎は大腸粘膜の陰窩内腔に好中球が浸潤・集簇した陰窩膿瘍が特徴である。また、クローン病は消化管全体に炎症が及ぶ場合があるが、潰瘍性大腸炎では大腸のみに炎症が生じる。一方、潰瘍性大腸炎は癌化する場合もあり、予後はクローン病とは相違する。従って、これらの疾患について、治療方針等も異なる。これらの疾患について、従来は生検試料など組織試料を観察して鑑別しなければならなかったのに対して、本発明の方法によると、血清試料を用いて鑑別することができる点で優れている。
【0078】
上記の方法により、比較的初期の段階で臨床症状がよく似ている各種疾患を鑑別可能となり、早期に、より適切な治療方針、例えば薬剤の選択、投与量の決定、外科的手術の必要性などを決定することができる。これにより、患者の精神的、経済的負担を軽減化できるのみならず、医療経済にも貢献しうる。
【符号の説明】
【0079】
*:P<0.05
Drawing
(In Japanese)【図2】
0
(In Japanese)【図3】
1
(In Japanese)【図5】
2
(In Japanese)【図6】
3
(In Japanese)【図7】
4
(In Japanese)【図8】
5
(In Japanese)【図10】
6
(In Japanese)【図11】
7
(In Japanese)【図1】
8
(In Japanese)【図4】
9
(In Japanese)【図9】
10