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Specification :(In Japanese)デジタルホログラフィ装置およびデジタルホログラフィ方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6309384
Publication number P2015-064565A
Date of registration Mar 23, 2018
Date of issue Apr 11, 2018
Date of publication of application Apr 9, 2015
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)デジタルホログラフィ装置およびデジタルホログラフィ方法
IPC (International Patent Classification) G03H   1/22        (2006.01)
FI (File Index) G03H 1/22
Number of claims or invention 19
Total pages 48
Application Number P2014-155520
Date of filing Jul 30, 2014
Application number of the priority 2013175005
Priority date Aug 26, 2013
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Apr 11, 2017
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】田原 樹
【氏名】加来 徹
【氏名】新井 泰彦
Representative (In Japanese)【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
Examiner (In Japanese)【審査官】井上 徹
Document or reference (In Japanese)特開2008-256869(JP,A)
国際公開第2010/092739(WO,A1)
米国特許出願公開第2011/0292402(US,A1)
T. Tahara et al.,Space-Bandwidth Capacity-Enhanced Digital Holography,Applied Physics Express,2013年,Vol.6,P.022502-1-022502-3
J. Kuhn et al.,Real-time dual-wavelength digital holographic microscopy with a single hologram acquisition,Opt. Express ,2007年,Vol.15,P.7231-7242
Field of search G03H 1/00-5/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
撮像されたホログラムに基づいて再生像を生成する再生装置を備え、
上記ホログラムは、エイリアシングが発生した物体光の空間スペクトルを含むよう撮像されたものであり、
上記再生装置は、物体光の空間スペクトルの値に対して、空間周波数fを変数とする所定の関数の逆数をかけることにより補正を行い、補正された物体光の空間スペクトルを用いて再生像を生成し、
撮像装置の画素間隔をdとして、
上記関数は、0<f<1/dの範囲において、関数値が空間周波数fに応じて単調減少する関数であり、
上記再生装置は、物体光の上記空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数を少なくとも1/dシフトさせた上で上記補正を行うことを特徴とするデジタルホログラフィ装置。
【請求項2】
第1波長の参照光、第2波長の参照光、第1波長の物体光、および第2波長の物体光が干渉することにより形成されるホログラムを撮像する撮像装置と、
上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を上記撮像装置に導く光学系とを備え、
上記撮像装置の1つの画素は、上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を受光し、
上記光学系は、上記撮像されたホログラムにおいて上記第1波長の物体光の空間スペクトルにエイリアシングが発生するように、上記撮像装置に入射する上記第1波長の物体光の光軸と上記第1波長の参照光の光軸との間に角度差を与えることを特徴とする請求項1に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項3】
第1経路の物体光、第2経路の物体光、および参照光が干渉することにより形成されるホログラムを撮像する撮像装置と、
上記第1経路の物体光および上記第2経路の物体光をそれぞれ異なる方向から上記撮像装置に入射させる光学系とを備え、
上記光学系は、上記撮像されたホログラムにおいて上記第1経路の物体光の空間スペクトルにエイリアシングが発生するように、上記撮像装置に入射する上記第1経路の物体光の光軸と上記参照光の光軸との間に角度差を与えることを特徴とする請求項1に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項4】
上記関数は、
0<f<3/(2d)の範囲において、関数値が空間周波数fに応じて単調減少する関数、
または、上記撮像装置の複数の画素のフィルファクタに応じた上記空間スペクトルの減衰を表す関数であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項5】
上記撮像装置の複数の画素のフィルファクタをαとして、
上記関数は、sinc(απfd)またはウィナーフィルタであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項6】
上記再生装置は、物体光の上記空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数をN/dシフトさせた上で上記補正を行い、
干渉により形成される上記ホログラムの縞の間隔をpとし、
Nは、(2d)/(2N+1)≦p<(2d)/(2N-1)を満たす整数であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項7】
複数の上記画素はx方向およびy方向に配列しており、
上記光学系は、上記第1波長の物体光の空間スペクトルについては上記x方向にエイリアシングが発生するよう、かつ、上記第2波長の物体光の空間スペクトルについては上記y方向にエイリアシングが発生するよう、構成されていることを特徴とする請求項2に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項8】
上記第1波長をλ1として、
上記撮像装置に入射する上記第1波長の物体光と上記第1波長の参照光の光軸との間の角度がarcsin(λ1/(2d))より大きいことを特徴とする請求項2に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項9】
上記第1波長の物体光の空間スペクトルの中心の空間周波数が、1/(2d)であることを特徴とする請求項2に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項10】
撮像されたホログラムにおいて上記第1波長の物体光の空間スペクトルと0次回折光の空間スペクトルとが互いに重ならないことを特徴とする請求項2に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項11】
上記第1波長の物体光の空間スペクトルの中心のx方向における空間周波数が、1/(2d)であり、
上記第2波長の物体光の空間スペクトルの中心のy方向における空間周波数が、1/(2d)であり、
上記第1波長の物体光の空間スペクトルと上記第2波長の物体光の空間スペクトルとは接していることを特徴とする請求項7に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項12】
上記撮像装置は、カラーフィルタを用いないモノクロ撮像装置であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項13】
撮像されたホログラムに基づいて再生像を生成するデジタルホログラフィ方法であって、
上記ホログラムは、エイリアシングが発生した物体光の空間スペクトルを含むよう撮像されたものであり、
物体光の空間スペクトルの値に対して、空間周波数fを変数とする所定の関数の逆数をかけることにより補正を行うステップと、
補正された物体光の空間スペクトルを用いて再生像を生成するステップとを含み、
撮像装置の画素間隔をdとして、
上記関数は、0<f<1/dの範囲において、関数値が空間周波数fに応じて単調減少する関数であり、
上記補正を行うステップでは、物体光の上記空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数を少なくとも1/dシフトさせた上で上記補正を行うことを特徴とするデジタルホログラフィ方法。
【請求項14】
第1波長の参照光、第2波長の参照光、第1波長の物体光、および第2波長の物体光が干渉することにより形成されるホログラムを撮像する撮像装置と、
上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を上記撮像装置に導く光学系とを備え、
上記撮像装置の1つの画素は、上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を受光し、
上記光学系は、
上記第1波長の物体光および上記第2波長の物体光から分離された上記第1波長の参照光および上記第2波長の参照光に単一の経路を通過させ、
上記第1波長の参照光および上記第2波長の参照光が同じ方向から入射する回折格子またはプリズムを上記単一の経路に備えることを特徴とする請求項1に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項15】
上記光学系は、上記単一の経路において、上記回折格子または上記プリズムと上記撮像装置との間に、使用される波長数と少なくとも同じ数の開口が配列した開口アレイを備えることを特徴とする請求項14に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項16】
上記光学系は、上記単一の経路において上記回折格子または上記プリズムと上記開口アレイとの間に第1レンズを備え、上記開口アレイと上記撮像装置との間に第2レンズを備えることを特徴とする請求項15に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項17】
上記開口アレイの上記開口は、通過する参照光の波長分布の幅を絞るよう機能することを特徴とする請求項15または16に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項18】
上記光学系は、上記回折格子として、ブレーズド回折格子を備えることを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項19】
第1波長の物体光および第2波長の物体光から分離された第1波長の参照光および第2波長の参照光に単一の経路を通過させるステップと、
上記単一の経路において、上記第1波長の参照光および上記第2波長の参照光を同じ方向から回折格子またはプリズムに入射させるステップと、
上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光が干渉することにより形成されるホログラムをモノクロの撮像装置によって撮像するステップとを含むことを特徴とする請求項13に記載のデジタルホログラフィ方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルホログラフィ装置およびデジタルホログラフィ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以後の文章中で位相の単位はラジアンで表す。光の干渉を利用した干渉計測技術、特にデジタルホログラフィは、非接触かつ非破壊で、物体の3次元情報を得ることができるため、近年、注目を集めている測定法の一つとなっている。
【0003】
デジタルホログラフィは、3次元物体への光照射によって得られる干渉縞から、コンピュータを用いて3次元物体の像を再生する技術である。一般的には例えば、3次元物体への光照射によって得られる物体光と、該物体光に対して可干渉(コヒーレント)である参照光とが作る干渉縞を、CCD(charge coupled device)等の撮像素子を用いて記録する。記録された干渉縞に基づいて、コンピュータで3次元物体の像を再生する。
【0004】
非特許文献1には、干渉縞から像を再生する基本的なデジタルホログラフィ技術が記載されている。
【0005】
非特許文献2、5には、干渉縞から像を再生するフーリエ変換縞解析法が記載されている。
【0006】
ここで、被写体の色情報をホログラムに記録する技術として、特許文献1-2、および非特許文献3の技術がある。特許文献1-2には、複数の波長のレーザ光およびカラーフィルタアレイを用いることにより、被写体の色情報をホログラムに記録する技術が記載されている。カラーフィルタアレイを用いる方式は、ホログラフィではない一般的なデジタルカメラで用いられるカラー撮影方式と同様のものである。
【0007】
一方、非特許文献3には、カラーフィルタを用いず、波長毎に異なる方向から参照光をモノクロ撮像素子へ入射することにより、被写体の色情報をホログラムに記録する技術(角度多重記録法)が記載されている。これはホログラフィ特有の方法である。
【0008】
特許文献2、非特許文献6にはそれぞれ、空間分割多重記録法、角度多重記録法に基づく、3次元物体の偏光分布記録可能なデジタルホログラフィ技術が記載されている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】国際公開第2010/092739号(2010年8月19日公開)
【特許文献2】国際公開第2012/002207号(2012年1月5日公開)
【0010】

【非特許文献1】J. W. Goodman and R. W. Lawrence、「DIGITAL IMAGE FORMATION FROM ELECTRONICALLY DETECTED HOLOGRAMS」、APPLIED PHYSICS LETTERS、(1967)、Vol. 11、No. 3、p.77-79
【非特許文献2】M. Takeda, et al., "Fourier-transform method of fringe-pattern analysis for computer-based topography and interferometry", J. Opt. Soc. Am. 72, pp.156-160 (1982)
【非特許文献3】J. Kuhn, et al., "Real-time dual-wavelength digital holographic microscopy with a single hologram acquisition", Opt. Express 15, pp.7231-7242 (2007)
【非特許文献4】T. M. Kreis, "Frequency analysis of digital holography", Opt. Eng. 41(4), pp.771-778 (2002)
【非特許文献5】T. Tahara, et al., "Space-Bandwidth Capacity-Enhanced Digital Holography", Appl. Phys. Express 6, pp.022502-1-3 (2013)
【非特許文献6】T. Colomb, et al., "Polarization imaging by use of digital holography", Appl. Opt. 41, pp.27-37 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ホログラムの縞の間隔が短いと撮像装置において撮像される物体光の振幅値が減衰することが非特許文献4で明らかにされている。振幅値が減衰すると、再生像が暗くなってしまい、物体本来の明るさを像再生できなくなる。これは、あらゆるデジタルホログラフィ方法に共通の問題であるが、細かい縞を記録する方法であるフーリエ変換縞解析法では、再生像の画質に特に影響する問題である。さらに、非特許文献5では、エイリアシングにより、得られるホログラムの空間周波数と振幅減衰量の対応が通常のホログラムと異なる。
【0012】
次に、複数波長の情報を記録可能なデジタルホログラフィにおける問題を述べる。カラーフィルタアレイを用いる方法では、以下の問題を生じる。まず、カラーフィルタによって光の吸収および反射が生じ、光利用効率が低下する。また、カラーフィルタは単一の波長成分のみを通過させるわけではないので、波長成分の完全な分離記録が困難である。デジタルホログラフィの像再生時おいて、カラーフィルタで遮断できなかった不要な波長の光成分は、所望の波長の光成分であると誤認識されて計算される。そのため、不要な波長の光成分は本来とは異なる空間位置で像を結ぶ。その結果、不要な波長の光成分は再生像にゴーストを生じさせてしまう。
【0013】
一方、角度多重記録法では、光利用効率が高く、ゴーストも生じない。そして、角度多重記録法は、市販のモノクロ撮像素子によって実現可能である。しかしながら、従来の角度多重記録法(非特許文献3)では、高精度かつ広い範囲(視野)の再生像を得ることができない。その原因の一つには上記の振幅減衰があり、また記録可能な空間情報量の不足も原因の一つである。
【0014】
また、偏光分布を記録するデジタルホログラフィにおいて角度多重記録法、または空間分割多重記録法を適用する場合にも、振幅減衰と空間情報量不足により、高精度かつ広い視野で3次元物体の偏光分布を計測することができない。角度多重記録法においては、振幅減衰が著しく偏光分布計測精度に悪影響を与える。
【0015】
本発明の一態様では、モノクロ撮像素子を用いたホログラム記録法において、高精度に物体の情報をホログラムに記録またはホログラムから再生することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、撮像されたホログラムに基づいて再生像を生成する再生装置を備え、上記再生装置は、物体光の空間スペクトルの値に対して、空間周波数fを変数とする所定の関数の逆数をかけることにより補正を行い、補正された物体光の空間スペクトルを用いて再生像を生成し、上記関数は、撮像装置の画素間隔をdとして、0<f<1/dの範囲において、関数値が空間周波数fに応じて単調減少する関数であり、上記再生装置は、物体光の上記空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数を少なくとも1/dシフトさせた上で上記補正を行うことを特徴としている。
【0017】
ホログラムの縞の間隔が短いと撮像装置において撮像される物体光の振幅値が減衰する。そのため、例えば撮像装置の複数の画素のフィルファクタが100%のとき、0<f<1/dの範囲において、ホログラムの空間周波数fが高くなるにしたがって振幅値が減衰する。物体光の空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分は、空間周波数面において、本来の干渉縞の空間周波数とは異なる空間周波数の位置に現れる。
【0018】
上記の構成によれば、空間周波数fが高いほど、振幅値を大きく補正する。また、エイリアシングによる空間周波数の誤認識を考慮して、物体光の空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数を少なくとも1/dシフトさせた上で上記補正を行う。これにより、ホログラムに生じた振幅値の減衰を適切に補正することができるので、再生像の画質を向上することができる。
【0019】
上記デジタルホログラフィ装置は、第1波長の参照光、第2波長の参照光、第1波長の物体光、および第2波長の物体光が干渉することにより形成されるホログラムを撮像する撮像装置と、上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を上記撮像装置に導く光学系とを備え、上記撮像装置の1つの画素は、上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を受光し、上記光学系は、上記撮像されたホログラムにおいて上記第1波長の物体光の空間スペクトルにエイリアシングが発生するように、上記撮像装置に入射する上記第1波長の物体光の光軸と上記第1波長の参照光の光軸との間に角度差を与える構成であってもよい。
【0020】
上記の構成によれば、上記再生装置による振幅値の補正により、波長数2以上の場合においても再生像の画質を向上させることができる。また、第1波長の物体光の空間スペクトルと第2波長の物体光の空間スペクトルとを記録する際、より広い空間周波数帯域を物体光の情報の記録に使用することができる。これにより、物体の情報をホログラムに高精度に記録することができる。そのためホログラムを再生したとき、再生像の画質を向上することができる。
【0021】
上記デジタルホログラフィ装置は、第1経路の物体光、第2経路の物体光、および参照光が干渉することにより形成されるホログラムを撮像する撮像装置と、上記第1経路の物体光および上記第2経路の物体光をそれぞれ異なる方向から上記撮像装置に入射させる光学系とを備え、上記光学系は、上記撮像されたホログラムにおいて上記第1経路の物体光の空間スペクトルにエイリアシングが発生するように、上記撮像装置に入射する上記第1経路の物体光の光軸と上記参照光の光軸との間に角度差を与える構成であってもよい。
【0022】
上記の構成によれば、第1経路の物体光および第2経路の物体光はそれぞれ異なる方向から撮像装置に入射する。そして、第1経路の物体光の空間スペクトルについてエイリアシングを発生させる。そのため、被写体(物体)の面内方向の小さな波数の情報のみならず、被写体の面内方向の大きな波数の情報をもホログラムとして記録することができる。そして、振幅値の減衰の補正により、エイリアシングを伴って記録された物体光の情報を復元できる。それゆえ、高画質の3次元再生像を得ることができる。
【0023】
上記の構成の実施方法として、光学系は、複数経路の物体光同士が干渉しないように複数経路の光路長の差を調整する素子を含み、複数経路の物体光のそれぞれに対応して干渉する複数の参照光を含んでもよい。
【0024】
また、光学系は、上記第1経路の物体光と上記第2経路の物体光とが異なる波長であり、両方の波長を含む参照光を含んでもよく、
または、光学系は、上記第1経路の物体光と上記第2経路の物体光とが異なる偏光状態であり、両方の偏光状態を含む参照光を含んでもよく、
または、光学系は、物体へ照射する単一または複数の、波長、偏光状態、または伝搬方向の物体照明光あるいは物体から発せられる波動と、物体照明光に基づいて形成される物体光あるいは物体から発せられる波動の伝播方向を選択的に透過、減衰、変調、または遮断する開口のアレイ、レンズのアレイ、またはフィルタのアレイを含んでもよい。
【0025】
上記関数は、0<f<3/(2d)の範囲において、関数値が空間周波数fに応じて単調減少する関数、または、上記撮像装置の複数の上記画素のフィルファクタに応じた上記空間スペクトルの減衰を表す関数であってもよい。例えば、画素の開口が矩形の場合、フィルファクタをαとして、0<f<1/(αd)の範囲において空間スペクトルは単調減少(減衰)する。
【0026】
上記撮像装置の複数の上記画素のフィルファクタをαとして、上記関数は、sinc(απfd)またはウィナーフィルタであってもよい。また、上記関数は、撮像素子の各画素に対し、見かけの開口のフーリエ変換で表される関数であってもよい。
【0027】
上記再生装置は、物体光の上記空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数をN/dシフトさせた上で上記補正を行い、干渉により形成される上記ホログラムの縞の間隔をpとし、Nは、(2d)/(2N+1)≦p<(2d)/(2N-1)を満たす整数である構成であってもよい。
【0028】
上記デジタルホログラフィ装置において、複数の上記画素はx方向およびy方向に配列しており、上記光学系は、上記第1波長の物体光の空間スペクトルについては上記x方向にエイリアシングが発生するよう、かつ、上記第2波長の物体光の空間スペクトルについては上記y方向にエイリアシングが発生するよう、構成されていてもよい。
【0029】
上記第1波長をλ1として、上記撮像装置に入射する上記第1波長の物体光と上記第1波長の参照光の光軸との間の角度がarcsin(λ1/(2d))より大きくてもよい。
【0030】
上記第1波長の物体光の空間スペクトルの中心の空間周波数が、1/(2d)であってもよい。
【0031】
撮像されたホログラムにおいて上記第1波長の物体光の空間スペクトルと0次回折光の空間スペクトルとが互いに重ならないようにしてもよい。
【0032】
上記第1波長の物体光の空間スペクトルの中心のx方向における空間周波数が、1/(2d)であり、上記第2波長の物体光の空間スペクトルの中心のy方向における空間周波数が、1/(2d)であり、上記第1波長の物体光の空間スペクトルと上記第2波長の物体光の空間スペクトルとは接していてもよい。
【0033】
上記撮像装置は、カラーフィルタを用いないモノクロ撮像装置であってもよい。
【0034】
本発明に係るデジタルホログラフィ方法は、撮像されたホログラムに基づいて再生像を生成するデジタルホログラフィ方法であって、物体光の空間スペクトルの値に対して、空間周波数fを変数とする所定の関数の逆数をかけることにより補正を行うステップと、補正された物体光の空間スペクトルを用いて再生像を生成するステップとを含み、上記関数は、上記撮像装置の画素間隔をdとして、0<f<1/dの範囲において、関数値が空間周波数fに応じて単調減少する関数であり、上記補正を行うステップでは、物体光の上記空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数を少なくとも1/dシフトさせた上で上記補正を行うことを特徴としている。
【0035】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、第1波長の参照光、第2波長の参照光、第1波長の物体光、および第2波長の物体光が干渉することにより形成されるホログラムを撮像する撮像装置と、上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を上記撮像装置に導く光学系とを備え、上記撮像装置の1つの画素は、上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光を受光し、上記光学系は、上記第1波長の物体光および上記第2波長の物体光から分離された上記第1波長の参照光および上記第2波長の参照光に単一の経路を通過させ、上記第1波長の参照光および上記第2波長の参照光が同じ方向から入射する回折格子またはプリズムを上記単一の経路に備えることを特徴とする。
【0036】
上記の構成によれば、回折格子またはプリズムによって、単一の経路を通過する第1波長の参照光および第2波長の参照光の進行方向を互いに異ならせる、すなわち進行方向に角度差をつけることができる。それゆえ、空間周波数面において、第1波長の物体光波の空間スペクトルと第2波長の物体光波の空間スペクトルとを容易に分離することができる。また、第1波長の参照光および第2波長の参照光は単一の経路を進むので、複数波長のホログラムをモノクロの撮像装置で記録するデジタルホログラフィ装置をコンパクトに構成することができる。
【0037】
上記光学系は、上記単一の経路において、上記回折格子または上記プリズムと上記撮像装置との間に、使用される波長数と少なくとも同じ数の開口が配列した開口アレイを備える構成であってもよい。
【0038】
上記光学系は、上記単一の経路において上記回折格子または上記プリズムと上記開口アレイとの間に第1レンズを備え、上記開口アレイと上記撮像装置との間に第2レンズを備える構成であってもよい。
【0039】
上記開口アレイの上記開口は、通過する参照光の波長分布の幅を絞るよう機能する構成であってもよい。
【0040】
上記光学系は、上記回折格子として、ブレーズド回折格子を備える構成であってもよい。
【0041】
本発明に係るデジタルホログラフィ方法は、第1波長の物体光および第2波長の物体光から分離された第1波長の参照光および第2波長の参照光に単一の経路を通過させるステップと、上記単一の経路において、上記第1波長の参照光および上記第2波長の参照光を同じ方向から回折格子またはプリズムに入射させるステップと、上記第1波長の参照光、上記第2波長の参照光、上記第1波長の物体光、および上記第2波長の物体光が干渉することにより形成されるホログラムをモノクロの撮像装置によって撮像するステップとを含むことを特徴とする。
【0042】
本発明の各態様に係る再生装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記再生装置として動作させることにより上記再生装置をコンピュータにて実現させる再生装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、空間周波数fが高いほど、振幅値を大きく補正する。また、エイリアシングによる空間周波数の誤認識を考慮して、物体光の空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分については、空間周波数を少なくとも1/dシフトさせた上で上記補正を行う。これにより、ホログラムに生じた振幅値の減衰を適切に補正することができるので、再生像の画質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図2】参照光および物体光が撮像面に入射する方向を示す概略図である。
【図3】参考例として、エイリアシングが発生していないホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図4】上記デジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図5】図3の参考例に対応し、エイリアシングが発生していないホログラムの空間周波数面における空間スペクトル分布の一例を示す図である。
【図6】図4に対応し、エイリアシングが発生しているホログラムの空間周波数面における空間スペクトル分布の一例を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図11】上記デジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図13】上記デジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図15】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図16】シミュレーションに用いる被写体の像および記録されたホログラムを示す図である。
【図17】ある波長の成分についての、シミュレーションによる再生像を示す図である。
【図18】他の波長の成分についての、シミュレーションによる再生像を示す図である。
【図19】被写体の3次元形状およびシミュレーションによる3次元形状の計測結果を示す図である。
【図20】シミュレーションに用いる被写体の像および記録されたホログラムを示す図である。
【図21】シミュレーションによる空間スペクトル分布を示す図である。
【図22】ある波長の成分についての、シミュレーションによる再生像を示す図である。
【図23】本発明のさらに他の実施形態に関する、ピンホールを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。
【図24】本発明のさらに他の実施形態に関する、ミラーを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。
【図25】本発明のさらに他の実施形態に関する、パラボリックミラーを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。
【図26】本発明のさらに他の実施形態に関する、プリズムを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。
【図27】本発明のさらに他の実施形態に関する、レンズを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。
【図28】本発明のさらに他の実施形態に関する、ピンホールを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。
【図29】本発明のさらに他の実施形態に関する、フレネルゾーンプレートを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。
【図30】本発明のさらに他の実施形態の記録装置の構成を示す図である。
【図31】本発明のさらに他の実施形態の記録装置の構成を示す図である。
【図32】本発明のさらに他の実施形態の記録装置の構成を示す図である。
【図33】本発明のさらに他の実施形態の記録装置の構成を示す図である。
【図34】本発明のさらに他の実施形態の記録装置の構成を示す図である。
【図35】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図36】上記デジタルホログラフィ装置の参照光の経路の一部を拡大して示す模式図である。
【図37】上記デジタルホログラフィ装置によって得られるホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図38】N個の波長を用いた場合に図12に示す記録装置において得られるホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図39】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図40】上記デジタルホログラフィ装置によって得られるホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図41】エイリアシングを発生させた場合に上記デジタルホログラフィ装置によって得られるホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。
【図42】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図43】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図44】本発明のさらに他の実施形態のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態について図に基づいて以下に説明する。説明の便宜上、各項目において、上述の項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略することがある。

【0046】
〔実施形態1〕
本実施形態は、物体光の複数の波長の情報を単一露光で同時に記録するデジタルホログラフィ装置に関する。そして、デジタルホログラフィ装置は、記録したホログラムを用いて、複数の波長の情報を互いに分離して再生することができる。

【0047】
(デジタルホログラフィ装置1の構成)
図1は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置1の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置1は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置1は、記録装置10(ホログラム記録装置)と再生装置11とを備える。記録装置10は、撮像装置12、波長λ1のレーザ光源LS1、波長λ2のレーザ光源LS2、および光学系を備える。波長λ1と波長λ2とは互いに異なる。再生装置11は、コンピュータ等の計算機によって構成することができる。なお、レーザ光としては、可視光のみならず、不可視光(赤外線、紫外線、X線等)も利用することができる。

【0048】
光学系は、ミラー等の複数の光学素子を備え、波長λ1・λ2のレーザ光(コヒーレント光)を被写体13(物体)および撮像装置12へ導く。具体的には、光学系は、複数の光学素子として、ビームスプリッタBS1~BS5、およびミラーM1~M3、およびビームエキスパンダBE1~BE3を備える。ビームエキスパンダBE1~BE3はそれぞれ、対物レンズBEa、ピンホールBEb、およびコリメータレンズBEcを備える。ビームスプリッタBS1~BS5は、ハーフミラーからなる。ビームスプリッタBS3・BS4は、ダイクロイックミラーまたは偏光ビームスプリッタからなってもよい。

【0049】
撮像装置12は、撮像するための複数の画素がx方向およびy方向に配列した撮像面を有し、撮像面に到達した光の強度を記録する。x方向はy方向に対して垂直である。撮像装置12は、CCD等の撮像素子を有する。撮像装置12は、撮像面上に形成された干渉縞を記録する。この干渉縞は物体光の情報を有するホログラムである。なお、1つの画素は有限の受光領域を有する。そのため、1つの画素によって検出される光強度は、受光領域における干渉縞の光強度の積分である。撮像装置12はカラーフィルタを備えないため、撮像装置12の1つの画素は同時に複数の波長の光を受光する。すなわち撮像装置12はモノクロ撮像装置である。撮像装置12は、撮像した干渉縞の画像データを再生装置11に出力する。再生装置11の詳細については後述する。

【0050】
(物体光および参照光)
レーザ光源LS1から出射された波長λ1のレーザ光は、ビームスプリッタBS1によって参照光と物体照明光とに分けられる。同様に、レーザ光源LS2から出射された波長λ2のレーザ光は、ビームスプリッタBS2によって参照光と物体照明光とに分けられる。

【0051】
ビームスプリッタBS1・BS2によって分けられた波長λ1の物体照明光および波長λ2の物体照明光は、ビームスプリッタBS3によって同じ経路に合成される。その後、波長λ1の物体照明光および波長λ2の物体照明光は、ビームエキスパンダBE3を通過する。

【0052】
波長λ1の物体照明光および波長λ2の物体照明光は、ミラーM3、およびビームスプリッタBS5を経由して、被写体13に照射される。物体照明光が被写体13によって散乱、透過または回折されたものが物体光である。被写体13からの物体光は、ビームスプリッタBS5で反射され、撮像装置12の撮像面に入射する。

【0053】
ビームスプリッタBS1・BS2によって分けられた波長λ1の参照光および波長λ2の参照光は、それぞれビームエキスパンダBE1・BE2を通過し、ビームスプリッタBS4で合成される。ただし、波長λ1の参照光の光軸と波長λ2の参照光の光軸とは、互いに異なる方向に沿っている。波長λ1の参照光および波長λ2の参照光は、ビームスプリッタBS5を通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。物体光および参照光が撮像面に入射する角度は、光学系に含まれる光学素子(ビームスプリッタ、ミラー等)によって調整できる。

【0054】
図2は、参照光および物体光が撮像面に入射する方向を示す概略図である。図2の(a)はy-z平面における参照光の光軸を示し、図2の(b)はx-z平面における参照光の光軸を示す。図2の(c)は、x-z平面における被写体13の複数の点からの物体光の進行方向を示す。図2の(c)においてはビームスプリッタBS5の図示を省略している。撮像装置12の複数の画素12aは、x方向およびy方向に配列している。図2においては、1つの画素は模式的に四角で表される。z軸は撮像面(x-y平面)に垂直である。

【0055】
撮像装置12の撮像面に入射する波長λ1の参照光および波長λ2の参照光は、それぞれ平面波である。波長λ1の参照光および波長λ2の参照光は、互いに異なる方向から撮像面に入射する。参照光の光軸をy-z平面に射影したとき、波長λ1の参照光とz軸との間の角度をθy1とし、波長λ2の参照光とz軸との間の角度をθy2とする。ここでは、θy1<θy2である。また、参照光の光軸をx-z平面に射影したとき、波長λ1の参照光とz軸との間の角度をθx1とし、波長λ2の参照光とz軸との間の角度をθx2とする。ここでは、θx1>θx2である。

【0056】
一方、被写体13で散乱された波長λ1の物体光および波長λ2の物体光は、被写体13の大きさに応じて、様々な方向から撮像装置12の撮像面に入射する。撮像面に入射する物体光は、被写体13上の各点から来る物体光の重ね合わせである。一部の物体光は、撮像面に垂直な方向から入射するが、他の物体光は撮像面に垂直ではない方向から入射する。ここでは、被写体13の中心からの物体光は、撮像面の中心に対して、垂直に入射することを前提としている。言い換えれば、被写体13の中心は、撮像面の中心を通り撮像面に垂直な線上に位置する。

【0057】
物体光の光軸と参照光の光軸との間の角度が大きくなると、干渉縞(ホログラム)の縞の間隔が小さくなる。撮像装置12は干渉縞の明暗(光強度)を撮像するものであるが、x方向およびy方向の画素間隔dは有限である。画素間隔dは連続的な干渉縞を撮像装置12によってサンプリングする間隔である。それゆえ、干渉縞の周期が画素間隔dの2倍より小さくなると、エイリアシングが発生する。すなわち、ある波長λについて参照光の光軸と一部の物体光の光軸との角度をθとしたとき、θが臨界角θc=arcsin(λ/(2d))を越えると、波長λの物体光波が形成するホログラム(干渉縞)の記録時にエイリアシングが発生する。

【0058】
従来の方法では、エイリアシングが発生しないように光学系を設定する。一方、本実施形態では、少なくとも1つの波長の物体光波についてエイリアシングが発生するように、光学系を設定する。エイリアシングを発生させるためには、θ>arcsin(λ/(2d))となるように、参照光の光軸を一部の物体光の光軸に対して傾ければよい。本実施形態のデジタルホログラフィ装置1では、波長λ1および波長λ2の両方の物体光波についてエイリアシングを発生させる。具体的には、θx1=arcsin(λ1/(2d))、θy1=arcsin(λ1/(4d))、θx2=arcsin(λ2/(4d))、θy2=arcsin(λ2/(2d))である。波長λ1の物体光波はx方向においてエイリアシングを発生させ、波長λ2の物体光波はy方向においてエイリアシングを発生させる。

【0059】
(ホログラムの空間周波数解析)
次に、記録されたホログラムの空間周波数解析に基づいて、エイリアシングを発生させることの効果について説明する。

【0060】
図3は、参考例として、エイリアシングが発生していないホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。このホログラムは、2波長を用いた軸外し型の撮像装置によって記録されるものである。図3において、横軸はx軸の空間周波数fxを示し、縦軸はy軸の空間周波数fyを示す。

【0061】
ホログラムは、参照光と物体光とが干渉することにより形成される、様々な間隔の干渉縞を含む。このホログラムをフーリエ変換すると、縞の間隔に応じて、物体光波(1次回折光)、0次回折光、および共役像(-1次回折光)のそれぞれのスペクトルが現れる。以後、2次元フーリエ変換した後の平面を空間周波数面と呼び、スペクトルを空間スペクトルと呼ぶ。なお、ここでは各空間スペクトルは四角形である。物体光の経路に同様の形の光透過フィルタ(開口または絞り)を配置する、または撮像装置12を±45°傾けたとき等に、このような空間スペクトルが得られる。記録される空間周波数帯域がフィルタにより制限された状態で、平行光の参照光でホログラムを記録すると、波長毎に干渉縞の間隔が変わるために空間スペクトルの半径が波長毎に変わる。ここで、波長毎に波面の曲率半径が異なる参照光を導入すると、波長毎の空間スペクトルの半径が図3の通りに等しくなる。すなわち、図3は波長毎に異なる曲率半径の参照光を導入したときの空間スペクトル分布の一例と見ることができる。また、透過フィルタが波長毎に異なる帯域を通す構造であるときにも、同様に図3の空間スペクトル分布が得られる。

【0062】
撮像装置において記録可能な空間周波数帯域は、空間周波数面において原点を中心とした幅1/dの範囲である。dは画素間隔である。空間帯域幅積は、複数の画素が配列している撮像面の面積と、画素密度との積で表される指標である。空間帯域幅積が大きいほど、撮影範囲および分解能が向上する。撮像面の面積が一定とすると、空間帯域幅積は記録可能な空間周波数帯域によって決まる。

【0063】
図3では、ホログラムの空間周波数面において、波長λ1および波長λ2の0次回折光の空間スペクトル、波長λ1の物体光波の空間スペクトル、波長λ2の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。コヒーレント光を用いる場合、0次回折光の空間スペクトルは物体光波の空間スペクトルの2倍の半径を有する。再生像を得るためには、各波長の物体光波の空間スペクトルが必要である。しかしながら、重畳している空間スペクトルを互いに分離することはできないので、物体光波の空間スペクトルのうち0次回折光(または共役像)の空間スペクトルと重なっている部分を像再生に用いると、不要な像成分が必ず残留して物体の像が再生される。そして、画質が劣化してしまう。そのため、図3に示す参考例では、有効に使用できる空間周波数帯域(他の空間スペクトルと重なっていない物体光波の空間スペクトルの領域)が小さく、記録可能な空間情報量および画質のいずれかが犠牲にならざるを得ない。

【0064】
図4は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置1によって得られるエイリアシングが発生しているホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。図4において、横軸はx軸の空間周波数fxを示し、縦軸はy軸の空間周波数fyを示す。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1および波長λ2の0次回折光の空間スペクトル、波長λ1の物体光波の空間スペクトル、波長λ2の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。なお、共役像の空間スペクトルは物体光波の空間スペクトルに対して原点対称の位置に現れる。

【0065】
記録可能な空間周波数帯域からfx軸の正側にはみ出した波長λ1の物体光波の空間スペクトルは、干渉縞の周期の誤認識によってfx軸の負側に現れている。本来であれば物体光波の空間スペクトルにおいてx方向の空間周波数fxが+1/(2d)より大きい部分が、空間周波数の誤認識により、-1/(2d)<fx<0の範囲に現れる。すなわち波長λ1の物体光波について、x方向においてエイリアシングが発生している。これは複数の画素による離散的なサンプリングに起因している。例えば波長λ1の参照光をx方向により大きく傾けると、波長λ1の物体光波の空間スペクトルはfx軸の正側により大きくシフトする。同様に、波長λ2の物体光波について、y方向においてエイリアシングが発生している。

【0066】
デジタルホログラフィ装置1は、0次回折光の空間スペクトルと物体光波の空間スペクトルとが互いに重ならないように、エイリアシングを発生させることにより物体光波の空間スペクトルを高周波数側にシフトさせる。また、デジタルホログラフィ装置1は、波長λ1と波長λ2とで互いに異なる方向にエイリアシングを発生させる。これは、実空間における参照光と一部の物体光とに関して、波長λ1ではθx>θcとなり、波長λ2ではθy>θcとなることに対応する。ここで、θxはx-z平面における参照光と一部の物体光との間の角度であり、θyはy-z平面における参照光と一部の物体光との間の角度である。また、波長λ1ではθy>θcとなる物体光は存在せず、波長λ2ではθx>θcとなる物体光は存在しない。

【0067】
デジタルホログラフィ装置1は、波長λ1について、一方(正側)の物体光波の空間スペクトルに加えて、エイリアシングの発生により見かけ上反対側(負側)に現れた物体光波の空間スペクトルをも、像の再生に使用する。波長λ2についても同様である。そのため、再生に使用可能な空間周波数帯域が、図3に示す参考例の場合より広くなる。具体的には、参考例の再生に使用可能な空間周波数帯域の半径foが1/{2(3+√2)d}であるのに対し、本実施形態では、再生に使用可能な空間周波数帯域の半径fsは1/{4(√2)d}である。すなわち、参考例に比べて本実施形態では、再生に使用可能な空間周波数帯域の半径が1.56倍、その面積は2.43倍以上になる。よって、本実施形態では、再生に使用可能な空間周波数帯域の増大に伴い、記録可能な空間情報量も増大する。

【0068】
なお、図4に示すように各空間スペクトルが互いに重畳しないホログラムを記録するためには、θx1=±arcsin(λ1/(2d))、θy1=±arcsin(λ1/(4d))、θx2=±arcsin(λ2/(4d))、θy2=±arcsin(λ2/(2d))とすることもできる。

【0069】
このように、画素間隔の逆数1/dによって記録可能な空間周波数帯域が決まる。空間周波数帯域によって撮影範囲と分解能とが決まる。空間周波数帯域と干渉縞の周期とは関連しており、干渉縞の周期と参照光および物体光の間の角度とが関連している。それゆえ、記録可能な空間周波数帯域は、記録可能な最大視野角の指標となる。空間スペクトルの重畳がないことを前提とすると、撮像面からZ離れた位置の記録可能な実空間の撮影範囲は以下のようになる。ここで、撮影範囲(面積)をFOV、撮影範囲(半径)をl、撮影可能な最大角度をθmax、物体と撮像面との距離をZ、記録可能な空間周波数帯域の半径をfmaxとする。

【0070】
FOV=l2
l=2Ztan(θmax)
θmax=arcsin(λfmax)
上式より、記録可能な空間周波数帯域から撮影範囲が決まる。見方を変えると、被写体の大きさから最大角度が決まり、最大角度から記録される空間周波数帯域が決まる。

【0071】
今回、複数の波長の情報を角度多重記録法により同時に記録する場合を述べたが、直交する複数の偏光方向の成分を角度多重記録法または空間分割多重記録法で同時に記録する場合にも本発明を適用することが可能である。例えば、図1におけるレーザ光源LS1を波長λ1の垂直偏光の光を出射する光源に置き換え、レーザ光源LS2を同じ波長λ1の水平偏光の光を出射する光源に置き換えることができる。なお、もちろん1つのレーザ光源から垂直偏光と水平偏光とを分けてもよい。また、非特許文献6の構成に本発明を適用した光学系を用いてもよい。この場合、複数の波長を空間周波数面において分離したように、偏光毎の情報を空間周波数面において分離して記録することができる。この場合、帯域拡張だけでなく、振幅成分の減衰の補正により、3次元物体の偏光状態をより高精度に計測することを可能にする。また、複数の波長と複数の偏光とを同時計測する角度多重記録法にも適用可能である。

【0072】
(空間スペクトルの補正)
撮像装置12の開口率(フィルファクタα、0<α≦1)に応じて、ホログラムの高空間周波数成分の振幅値は減衰する。1つの画素の受光領域に渡って干渉縞の輝度値が積分(平均化)される。そのため、縞の周期が短いと、1つの画素が検出する光強度の変調成分が積分によって減衰する。それゆえ、空間周波数が高いほど、ホログラムから再生される物体光の振幅値がより減衰する。そのため、高空間周波数成分の減衰により画質の劣化が起こる。

【0073】
図5は、図3の参考例に対応し、エイリアシングが発生していないホログラムの空間周波数面における空間スペクトル分布の一例を示す図である。ただし図5における明るさはスペクトル値の対数に対応する。エイリアシングが発生していない場合、振幅値の減衰は各軸について、原点から離れるほど大きくなる。この場合、減衰の割合は、x軸およびy軸に対して対称である。

【0074】
図6は、図4に対応し、エイリアシングが発生しているホログラムの空間周波数面における空間スペクトル分布の一例を示す図である。ただし図6における明るさはスペクトル値の対数に対応する。エイリアシングが発生している場合、参考例とは異なり、物体光波の一部の空間スペクトルBは、本来の空間周波数とは異なる位置に現れてしまう。空間周波数fxが1/(2d)を越える分、例えば本来の空間周波数fx=3/(4d)の物体光波の空間スペクトルは、ホログラムの空間周波数面ではエイリアシングのせいでfx=-1/(4d)の位置(領域B)に現れる。領域Bは、実際には空間周波数が1/(2d)を越える空間スペクトルであるので、領域Aよりも振幅(図における明るさ)が減衰している。y軸方向にエイリアシングが発生している波長λ2についても同様のことが言える。このように、参考例より参照光をより大きな角度で撮像面に入射する本実施形態では、振幅の減衰による画質の劣化は考慮すべき問題である。

【0075】
この空間周波数に応じた振幅の減衰を空間周波数面において補正することで、再生像の画質を向上することができる。各画素の開口が矩形である場合、スペクトルの減衰の割合は、各軸について、sinc(απfd)で表される。すなわち、画素が矩形の開口であるとき、スペクトルは空間周波数fを変数としたsinc関数に基づき減衰する。スペクトルの減衰の割合が1であれば物体光の振幅値が減衰していないことを表し、スペクトルの減衰の割合が0.5であれば物体光の振幅値が半分に減衰することを表す。

【0076】
ここで、αは撮像装置12の画素の開口率(フィルファクタ)、fはx軸(またはy軸)における干渉縞の空間周波数、dは画素間隔を示す。ホログラムの空間周波数面において、空間スペクトルの各値(振幅)にsinc(απfd)の逆数をかけることにより、補正された空間スペクトルが得られる。ただし、エイリアシングが発生した部分(エイリアシングを伴って記録された領域B)については、Nを整数として、空間周波数面上での空間周波数にN/dを加えたsinc(απ(f+N/d)d)の逆数を補正値として用いる。干渉縞の間隔をpとして、Nの値は次の通りに決まる。p≧2dのときN=0であり、2d/3≦p<2dのときN=1であり、2d/5≦p<2d/3のときN=2である。すなわち、p<2dのとき、(2d)/(2N+1)≦p<(2d)/(2N-1)を満たすように、整数Nの値は決定される。すなわち、エイリアシングが発生した部分(領域B)の本来の空間周波数は、今回N=1であるため、空間周波数面上での空間周波数を1/dだけシフトさせた空間周波数であると見なす。例えば、fx=-1/(4d)の空間スペクトルの値には、sinc(απ(3/(4d))d)の逆数を補正係数としてかける。ここでは、空間スペクトルをシフトさせた方向を正方向としている。参照光を傾ける方向が逆側であれば、空間スペクトルの位置も逆になる。なお補正はx軸およびy軸のそれぞれについて行う。この補正により、物体光波の本来の振幅値を得ることができる。それゆえ、この補正により、再生像の画質を向上させることができる。

【0077】
このように、エイリアシングした領域に対して、原点対称のsinc関数を用いて補正するのではなく、空間スペクトルAとエイリアシングした空間スペクトルBとに対して異なる補正値を用いることで、適切に光強度の減衰を補償することができる。また、sinc関数の代わりにウィナーフィルタを用いてもよく、ウィナーフィルタを用いる場合でも上記と同様である。

【0078】
なお、空間周波数面における空間周波数が正でも負でも、減衰は同じである、すなわち補正係数は同じでよい。以上では、エイリアシングが発生している方向を正方向として説明した。

【0079】
また、sinc関数は各画素が矩形の開口である場合に適した補正関数であるが、各画素の開口が矩形とは異なる形の場合であっても、空間スペクトルの減衰を表す関数が分かれば、sinc関数の代わりに同様に適用することができる。たとえば、各画素が円形の開口である場合、当該減衰を表すベッセル関数に基づいて補正することができる。なお、撮像装置12の各画素の実効的な開口の形状をフーリエ変換した関数が、空間スペクトルの減衰を表す。開口の形状をフーリエ変換した関数の逆数を用いて、空間スペクトルの減衰を補正することができる。

【0080】
例えば、画素の前にマイクロレンズアレイ、またはボールレンズ等が配置されていれば、実効的な開口の形状は円形となる。円形開口の形状をフーリエ変換するとベッセル関数となり、矩形開口の形状をフーリエ変換するとsinc関数となる。例えば、半径aの円形開口なら、原点から半径aまでの透過率が1、原点から半径aを超えると透過率0と表現できる。原点からの距離をr=√(x2+y2)とし、gを開口の形状を表す透過率とすると、
g(x,y)=1 (r≦a)
0 (r>a)
となる。これをフーリエ変換するとベッセル関数になる。

【0081】
(再生装置11の構成)
再生装置11は、記録されたホログラムを用いて像の再生を行う。具体的には、再生装置11は、記録されたホログラムを2次元フーリエ変換する。再生装置11は、フーリエ変換されたホログラムの値をsinc関数の逆数を用いて補正する。再生装置11は、補正されたホログラムの物体光波の空間スペクトルを用いて、波長毎に再生像を生成する。なお、物体光波においてエイリアシングが発生した部分(領域B)の空間周波数は、空間周波数面上での空間周波数を1/dだけシフトさせた空間周波数であると見なして、像の再生に用いる。また、再生装置11は、空間周波数面において不要な0次回折光および共役像の空間スペクトルをフィルタリング(除去)して、波長毎に物体光波の空間スペクトルだけを抽出して像の再生に用いる。抽出した物体光波の空間スペクトルから像を再生する方法としては公知の技術を利用することができる。

【0082】
また空間スペクトルの補正には、sinc関数に近い増減の特性を有する関数を用いてもよい。sinc関数は、フィルファクタが1のとき、0<f<1/dの範囲において変数が大きく(空間周波数fが高く)なればなるほど値が0に近づく関数である。例えば空間スペクトルの補正にウィナーフィルタを用いてもよい。また、空間スペクトルの補正に、sinc関数のように、フィルファクタが1のとき、0<f<1/dの範囲において、関数値が、空間周波数fに応じて単調減少し、空間周波数fが1/dに近づくほどある値(0)に近づく関数(の逆数)を用いてもよい。該関数は、sinc関数のように、0<f<1/dの範囲において、2階微分の値が負(関数の形が上に凸)であってもよい。フィルファクタが1より小さいとき、f=1/dの関数値が0をとらなくともよい。

【0083】
(デジタルホログラフィ装置1の効果)
このように、本実施形態のデジタルホログラフィ装置1では、意図的にエイリアシングを発生させるため、一部の物体光と参照光との間の角度θが臨界角θcを越えるようにホログラムを記録する。そのため、複数波長を用いる場合でも、複数波長の所望の空間スペクトルに不要な空間スペクトルが互いに重ならないようにすることと、記録可能な空間周波数帯域を大きくすることとを両立することができる。そして、高空間周波数帯の減衰を補正するため、sinc関数の逆数を用いて空間スペクトルの値を補正する。そのため、特にエイリアシングが発生した高空間周波数帯における減衰を補正することができる。それゆえ、複数波長の情報を1つのホログラムに記録し、かつ、再生像の画質を向上することができる。また、デジタルホログラフィ装置1は、カラーフィルタを利用しないので、光利用効率が高い。そのため、一例としてデジタルホログラフィ装置1は、利用できる光量が少ない、ハイスピード3Dカメラ、および蛍光3次元顕微鏡等に好適に利用することができる。

【0084】
なお、以上では2波長の光を用いる場合について説明したが、もちろん1波長の光を用いて行うこともできる。その場合、図1に示すデジタルホログラフィ装置1から波長λ2のレーザ光に関する構成(レーザ光源LS2、ビームスプリッタBS2~BS4、ビームエキスパンダBE2、ミラーM2)が不要になる。同様に、フーリエ変換されたホログラムは、図4に示すものから波長λ2の物体光波の空間スペクトルおよびその共役像の空間スペクトルがないものとなる。この場合も、波長λ1の物体光波についてエイリアシングを発生させることにより、記録可能な空間周波数帯域を拡張することができる。また、波長λ1の物体光波の空間スペクトルのうちエイリアシングが発生した部分について、空間周波数をシフトさせて補正を行うことにより、再生像の画質を向上することができる。

【0085】
〔実施形態2〕
本実施形態では、物体光が参照光に比べて十分弱い場合について説明する。デジタルホログラフィ装置の構成は実施形態1と同じであるが、撮像装置12への参照光の入射角度および光透過フィルタ(絞り)の形状が異なる。

【0086】
図7は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1および波長λ2の0次回折光の空間スペクトル、波長λ1の物体光波の空間スペクトル、波長λ2の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。

【0087】
本実施形態のように、物体光が参照光に比べて十分に弱い場合(例えば、物体光の強度<参照光の強度/10である場合等)、0次回折光の高空間周波数成分は無視できる程度にまで小さくなる。そのため、0次回折光の空間スペクトルの分布範囲が小さくなる。図7は、一例として、θx1=+arcsin(3λ1/(10d))、θy1=+arcsin(λ1/(5d))、θx2=+arcsin(λ2/(5d))、θy2=-arcsin(3λ2/(10d))、と設定した場合に得られる空間スペクトルを示す。図7に示すように、0次回折光の空間スペクトルの分布範囲が物体光波の空間スペクトルの分布範囲と同程度と見なせる程度に物体光の強度が弱い場合、記録可能な空間周波数帯域の半径をfs=1/(5d)まで拡張することができる。この場合、撮像面に垂直に入射する物体光については、エイリアシングを起こしていないが、撮像面に斜めに入射する一部の物体光についてエイリアシングが発生している。

【0088】
fx軸における波長λ1の物体光波の空間スペクトルの中心位置Cx1は、波長λ1の参照光のx軸方向の入射角θx1によって決まる。同様にfy軸における波長λ1の物体光波の空間スペクトルの中心位置Cy1は、波長λ1の参照光のy軸方向の入射角θy1によって決まる。

【0089】
本実施形態では空間スペクトルが、各辺がfx軸およびfy軸に沿った正方形になる。この場合、空間スペクトル同士の重畳を回避し、かつ記録可能な空間周波数帯域を広くするためには、波長λ1および波長λ2の物体光波の空間スペクトルの中心位置(Cx1,Cy1)および(Cx2,Cy2)が以下のようになるように、参照光の入射角を決めればよい。
Cx1=fa+fs
Cy1=fs
Cx2=fs
Cy2=-fa-fs
ここで、faは0次回折光の空間スペクトルの各軸方向の実質的な半径である。物体光の強度に応じて0次回折光の高空間周波数成分が無視できる場合、faも小さくなる。

【0090】
〔実施形態3〕
本実施形態では、デジタルホログラフィ装置1を顕微鏡等に応用する場合を想定して、光透過フィルタ(絞り)として円形の開口を有するものを使用する場合について説明する。開口(または被写体)が円形の場合、各空間スペクトルも円形になる。

【0091】
図8は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1および波長λ2の0次回折光の空間スペクトル、波長λ1の物体光波の空間スペクトル、波長λ2の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。図8に示す例では、物体光が参照光に比べて十分に弱い。

【0092】
物体光が参照光に比べて十分に弱いので、0次回折光の高空間周波数成分は無視できる程度にまで小さくなる。そのため、0次回折光の空間スペクトルの分布範囲が小さくなる。図8は、一例として、θx1=±arcsin(λ1/(2d))、θy1=±arcsin(λ1/(6darccos(7/9)))、θx2=±arcsin(λ2/(6darccos(7/9)))、θy2=±arcsin(λ2/(2d))、と設定した場合に得られる空間スペクトルを示す。開口(または被写体)が円形の場合、このように参照光の角度を設定することで、各波長の物体光波の空間スペクトルが他の空間スペクトルと重ならないという条件の下、物体光波の空間スペクトルの面積を最大化することができる。すなわち、記録可能な空間周波数帯域を最大化することができる。このとき、記録可能な空間周波数帯域の半径をfs=1/(6darccos(7/9))まで拡張することができる。

【0093】
図9は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。図9に示す例では、物体光は参照光に比べて十分に弱くはない。すなわち、0次回折光の高空間周波数成分は無視できない。

【0094】
図9は、一例として、θx1=±arcsin(λ1/(2d))、θy1=±arcsin(λ1/(2(1+√2)d))、θx2=±arcsin(λ2/(2(1+√2)d))、θy2=±arcsin(λ2/(2d))、と設定した場合に得られる空間スペクトルを示す。このとき、記録可能な空間周波数帯域の半径をfs=1/(2(1+√2)d)まで拡張することができる。

【0095】
図8または図9に示すように開口(または被写体)が円形の場合、このように参照光の角度を設定することで、各波長の物体光波の空間スペクトルが他の空間スペクトルと重ならないという条件の下、物体光波の空間スペクトルの面積を最大化することができる。すなわち、記録可能な空間周波数帯域を最大化することができる。

【0096】
空間スペクトルが円形の場合についてまとめると、以下の条件a~cを満たすことで記録可能な空間周波数帯域を最大化することができる。
条件a:撮像面に垂直に入射する波長λ1の物体光と波長λ1の参照光との間のx方向における角度θx1が臨界角θcと実質的に等しい。これは、波長λ1の物体光波の空間スペクトルの中心が、空間周波数面においてfx=±1/(2d)の位置にあることを意味する。
条件b:撮像面に垂直に入射する波長λ2の物体光と波長λ2の参照光との間のy方向における角度θy2が臨界角θcと実質的に等しい。これは、波長λ2の物体光波の空間スペクトルの中心が、空間周波数面においてfy=±1/(2d)の位置にあることを意味する。
条件c:空間周波数面において波長λ1の物体光波の空間スペクトルの中心と波長λ2の物体光波の空間スペクトルの中心との間の距離が2fsに実質的に等しい。これは波長λ1および波長λ2の物体光波の空間スペクトルが互いに接することを意味する。

【0097】
なおfsは各波長の物体光波の空間スペクトルの半径でもあり、撮像装置12に入射する物体光の角度範囲を変更することでfsを調整することができる。すなわち、被写体の大きさ、被写体までの距離、または絞りの半径等を変更することで、fsを調整することができる。なお、波長λ1および波長λ2の物体光波の空間スペクトルの中心間の距離が2fs以上であっても、空間スペクトル同士が重ならないよう、空間周波数帯域を効率よく利用することができる。

【0098】
さらに、0次回折光の高空間周波数成分が無視できない場合(図9)、さらに条件dを満たす。
条件d:空間周波数面において各波長の物体光波の空間スペクトルの中心と0次回折光の空間スペクトルの中心との間の距離が3fsに実質的に等しい。

【0099】
〔実施形態4〕
本実施形態では、3波長の光を用いる場合について説明する。なお、本発明は、3波長より多い波長の光を用いる場合についても、同様の方法で適用することができる。

【0100】
図10は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置2の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置2は、記録装置14と再生装置11とを備える。デジタルホログラフィ装置2は、実施形態1のデジタルホログラフィ装置1に対して、波長λ3のレーザ光源LS3が追加されたものである。また、レーザ光源LS3の追加に応じて、ビームスプリッタBS6~BS8、ビームエキスパンダBE4、およびミラーM4が追加されている。空間周波数面において各空間スペクトルが重ならないように、波長λ1~λ3の参照光はそれぞれ異なる方向から撮像装置12の撮像面に入射する。図示はしないが、物体光の経路に円形の開口を有する光透過フィルタ(絞り)が設けられている。

【0101】
図11は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1~λ3の0次回折光の空間スペクトル、各波長の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。

【0102】
3波長の光を使用するの場合、1つの波長(λ1)についてのみエイリアシングが発生するように、各波長の参照光の角度を異ならせればよい。図11は、一例として、θx1=±arcsin(λ1/(2d))、θy1=±arcsin(0.150λ1/d)、θx2=±arcsin(0.283λ2/d)、θy2=arcsin((0.5-0.150)λ2/d)、θx3=±arcsin(0.283λ3/d)、θy3=-arcsin((0.5-0.150)λ3/d)、と設定した場合に得られる空間スペクトルを示す。このとき、記録可能な空間周波数帯域の半径をfs=0.150/dまで拡張することができる。

【0103】
このとき、波長λ1の物体光波の空間スペクトルは、fx軸に接し、かつ、中心がfx=±1/(2d)の位置にある。波長λ2の物体光波の空間スペクトルは、0次回折光の空間スペクトル、波長λ1の物体光波の空間スペクトル、およびfy=+1/(2d)の線(境界)に接する。波長λ3の物体光波の空間スペクトルは、0次回折光の空間スペクトル、波長λ1の共役像の空間スペクトル、およびfy=-1/(2d)の線(境界)に接する。

【0104】
〔実施形態5〕
本実施形態では、複数の波長の参照光の光軸を同じにする場合について説明する。

【0105】
図12は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置3の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置3は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置3は、記録装置15と再生装置11とを備える。記録装置15は、撮像装置12、波長λ1のレーザ光源LS1、波長λ2のレーザ光源LS2、波長λ3のレーザ光源LS3、および光学系を備える。図示はしないが、物体光の経路に円形の開口を有する光透過フィルタ(絞り)が設けられている。

【0106】
波長λ1~λ3のレーザ光は、ビームスプリッタBS3・BS7によって同軸に揃えられる。波長λ1~λ3のレーザ光は、ビームスプリッタBS1によって物体照明光と参照光とに分割される。

【0107】
物体照明光は被写体13に照射される。被写体13からの物体光は、ビームスプリッタBS5で反射され、撮像装置12の撮像面に入射する。

【0108】
参照光は、ビームスプリッタBS5を通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。撮像装置12の撮像面に入射する波長λ1~λ3の参照光は、互いに光軸が同じである。

【0109】
波長が短くなるほど、干渉縞の間隔(周期)は小さくなる。複数の波長の参照光が同軸であっても、波長によって干渉縞の間隔が異なる。それゆえ、空間周波数面において、複数の波長の物体光波の空間スペクトルを異なる領域に分布させることができる。

【0110】
図13は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置3によって得られるエイリアシングが発生しているホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1~λ3の0次回折光の空間スペクトル、各波長の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。ただし、ここでは物体光の強度は参照光の強度に比べて非常に小さいので、0次回折光の空間スペクトルは原点の近傍のみに分布している。そのため0次回折光の空間スペクトルは図示を省略している。

【0111】
λ1>λ2>λ3である。波長が短くなるほど、空間周波数面においてfx軸およびfy軸の高周波数側に物体光波の空間スペクトルの分布がシフトしている。空間周波数面において、原点および各波長の物体光波の空間スペクトルの中心は、周期境界的に直線上に分布する。z軸に対する参照光の角度(撮像面への入射角)を所定の角度より大きくすることで、複数の波長の物体光波の空間スペクトルが重ならないようにすることができる。

【0112】
例えばfx軸について、波長λ3の物体光波の空間スペクトルの全体は、エイリアシングによって、本来の空間周波数(の絶対値)より小さい空間周波数に位置に現れる。しかしながら、波長λ3の干渉縞の間隔は波長λ2の干渉縞の間隔よりも小さいはずなので、波長λ3の物体光波の空間スペクトルの値の減衰の割合は波長λ2の物体光波の空間スペクトルのそれより大きいはずである。

【0113】
それゆえ、エイリアシングが発生した部分(波長λ3の物体光波の空間スペクトル)の本来の空間周波数は、空間周波数面上での空間周波数を1/dだけシフトさせた空間周波数であると見なして、振幅の減衰を補正する。例えば、波長λ2の物体光波の空間スペクトルと比べて、波長λ3の物体光波の空間スペクトルにはより大きい補正係数をかけることで補正を行う。これにより、エイリアシングの発生により減衰した波長λ3の物体光波の振幅値を適切に回復させることができる。それゆえ、この補正により、再生像の画質を向上させることができる。

【0114】
〔実施形態6〕
本実施形態では、実施形態5のデジタルホログラフィ装置において、物体光の強度が参照光の強度と同程度である場合について説明する。

【0115】
図14および図15は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置によって得られるエイリアシングが発生しているホログラムを2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1~λ3の0次回折光の空間スペクトル、各波長の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。

【0116】
λ1>λ2>λ3である。波長が短くなるほど、空間周波数面においてfx軸およびfy軸の高周波数側に物体光波の空間スペクトルの分布がシフトしている。空間周波数面において、原点および各波長の物体光波の空間スペクトルの中心は、周期境界的に直線上に分布する。波長λ1の物体光波の空間スペクトルは、0次回折光の空間スペクトルに接するように、参照光の角度および物体光波の空間スペクトルの半径が調整される。

【0117】
ここで、空間スペクトルの振幅の減衰の割合はsinc(απfd)である。sinc(π)=0であるので、フィルファクタα=1かつ空間周波数f=1/dの空間スペクトルは再生に使用できない。

【0118】
そのため、フィルファクタα=1の場合、図14に示すように、x方向にエイリアシングを伴って記録された波長λ3の物体光波の空間スペクトルが、fx=1/dより小さい範囲に分布するようにする。すなわち、波長λ3の物体光波の空間スペクトルの見た目の空間周波数がfx=0の線を越えないようにする。

【0119】
また、フィルファクタα<1の場合、図15に示すように、x方向にエイリアシングを伴って記録された波長λ3の物体光波の空間スペクトルが、fx=1/dより大きい範囲に分布してもよい。すなわち、波長λ3の物体光波の空間スペクトルの見た目の空間周波数がfx=0の線を越えてもよい。このように空間スペクトルを配置することで、空間周波数帯域を効率よく利用することができる。

【0120】
〔実施形態7〕
本実施形態では、複数の波長のレーザ光として単一のビームを使用する光学系(軸外し型)について説明する。なお、本実施形態の再生装置は上述の実施形態で説明したものと同じであるので、説明を省略する。

【0121】
図23は、ピンホールを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。記録装置21は、レーザ光源LS4、ビームエキスパンダBE5、ピンホール16a、撮像装置12を備える。

【0122】
レーザ光源LS4は、複数の波長(λ1、λ2、…)のレーザ光を同時にまたは高速で切り替えて出力する。レーザ光源LS4として、例えば波長可変レーザ光源を使用することができる。また、レーザ光源LS4は、実施形態1のように、複数の波長に対応した複数のレーザ光源を含んでもよい。また、可視光に限らず、X線レーザ、紫外線レーザ、または、テラヘルツ光を含む赤外線レーザ、あるいは、音波、電波、電子線等あらゆる波動を使用することができる。

【0123】
レーザ光源LS4から出射された複数の波長のレーザ光は、ビームエキスパンダBE5によって拡大される。被写体13(物体)およびピンホール16aは、拡大されたレーザ光の経路に、並列に配置される。

【0124】
拡大されたレーザ光の一部は、被写体13により散乱または回折して物体光となる。この物体光は、複数の波長(λ1、λ2、…)を含む。物体光は撮像装置12の撮像面に入射する。被写体13は、撮像装置12の正面に位置する。

【0125】
一方、拡大されたレーザ光の他の一部は、ピンホール16aを通過して参照光となる。この参照光は、複数の波長(λ1、λ2、…)を含む。ピンホール16aは、拡大されたレーザ光の一部を参照光として分離する光学素子である。ピンホール16aによって回折し、進行方向が変化した参照光は、物体光とは異なる方向から撮像装置12の撮像面に入射する。

【0126】
撮像装置12の1つの画素は、複数の波長の参照光および物体光を受光する。レーザ光源LS4が複数の波長を高速で切り替える場合、波長の切替の周期は、撮像装置12のフレーム周期よりも短い。そのため、上述の実施形態と同様に、撮像装置12が撮像する1フレームのホログラムは、複数の波長が合成されたホログラムである。

【0127】
参照光を分離する光学素子としてピンホール16aを用いる場合、複数の波長の参照光は同軸で撮像装置12に入射する。この場合も、実施形態5、6と同様に、記録装置21は、各波長の物体光波の空間スペクトルが重ならないようにし、少なくとも1つの波長についてエイリアシングが発生するようにホログラムを記録する。そのため、空間周波数帯域を効率的に使用することができる。なお、各空間スペクトルの分布範囲は、撮像装置12に入射する物体光の角度範囲、および波長に依存する。

【0128】
このように、単一のビームを使用する光学系では、光学素子の数を少なくすることができるので、光学素子による波面の歪みを抑制することができる。また、光学素子の数が少ないので、低コストで、簡単に光学系を構成することができる。

【0129】
なおビームエキスパンダBE5を用いなくてもよい。ビームエキスパンダBE5を備えない場合、記録装置21は、レンズを必要としないので、特に、X線レーザまたはテラヘルツ光を含む赤外線レーザに好適に使用することができる。

【0130】
図24は、ミラーを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。記録装置22は、記録装置21のピンホールの代わりに、ミラー16bを備える。ミラー16bは、拡大されたレーザ光の一部を参照光として分離する光学素子である。記録装置22でも、物体光と参照光とを異なる方向から撮像装置12に入射させることができる。なお、参照光を分離する光学素子としてミラー16bを用いる場合、複数の波長の参照光は同軸で撮像装置12に入射する。例えば赤外線レーザを使用する場合、ビームエキスパンダBE5を用いなくてもよい。

【0131】
図25は、パラボリックミラーを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。記録装置23は、記録装置21のピンホールの代わりに、パラボリックミラー16cを備える。パラボリックミラー16cは、拡大されたレーザ光の一部を参照光として分離する光学素子である。記録装置23でも、物体光と参照光とを異なる方向から撮像装置12に入射させることができる。なお、参照光を分離する光学素子としてパラボリックミラー16cを用いる場合、複数の波長の参照光は同軸で撮像装置12に入射する。例えば赤外線レーザを使用する場合、ビームエキスパンダBE5を用いなくてもよい。

【0132】
図26は、プリズムを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。記録装置24は、記録装置21のピンホールの代わりに、プリズム16dを備える。プリズム16dは、拡大されたレーザ光の一部を参照光として分離する光学素子である。記録装置24でも、物体光と参照光とを異なる方向から撮像装置12に入射させることができる。なお、参照光を分離する光学素子としてプリズム16dを用いる場合、屈折率の波長依存性により、複数の波長の参照光は異なる方向から撮像装置12に入射する。プリズム16dの代わりに回折格子を使用することもできる。

【0133】
図27は、レンズを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。記録装置25は、記録装置21のピンホールの代わりに、レンズ16eを備える。レンズ16eは、拡大されたレーザ光の一部を参照光として分離する光学素子である。記録装置25でも、物体光と参照光とを異なる方向から撮像装置12に入射させることができる。なお、参照光を分離する光学素子としてレンズ16eを用いる場合、複数の波長の参照光は同軸で撮像装置12に入射する。

【0134】
図28は、ピンホールを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。記録装置26は、記録装置21のビームエキスパンダBE5の代わりに、ピンホール17を備える。ピンホール17は、複数の波長のレーザ光を回折させ、レーザ光を拡大する。ビームを拡大する光学素子としてビームエキスパンダの代わりにピンホール17を使用することで、収差を低減することができる。

【0135】
図29は、フレネルゾーンプレートを用いた、単一のビームを使用する光学系を示す図である。記録装置27は、ビームエキスパンダを備えず、ピンホールの代わりに、フレネルゾーンプレート16fを備える。フレネルゾーンプレート16fは、レーザ光の一部を参照光として分離する光学素子である。記録装置27でも、物体光と参照光とを異なる方向から撮像装置12に入射させることができる。記録装置27は、レンズを必要としないので、特に、X線レーザに好適に使用することができる。なお、図示するように、撮像装置12に向かわない参照光は使用されないので、フレネルゾーンプレート16fを、ハーフ・フレネルゾーンプレートに置き換えてもよい。

【0136】
以上に例示した光学系では、光学素子を機械的に駆動することなく、かつカラーフィルタを使用することなく、複数の波長の情報を1つのホログラムに記録することができる。各光学系において、レーザ光源LS4から出射されるレーザ光は平面波でも球面波でもよい。なお、参照光を分離する光学素子としていずれの光学素子16a~16fを使う場合でも、被写体13を透過した物体光を利用する透過型、および被写体13で反射された物体光を利用する反射型の両方が実現可能である。

【0137】
〔実施形態8〕
本実施形態では、伝搬方向が異なる複数の物体照明光を被写体に照射するデジタルホログラフィ装置について説明する。ここでは、干渉性がよくない光、すなわちコヒーレンス長が短い光を用いる光学系(軸外し型)について説明する。なお、本実施形態の再生装置は上述の実施形態で説明したものと同じであるので、説明を省略する。

【0138】
図30は、本実施形態の記録装置31の構成を示す図である。記録装置31は、波長λ1の光源LS5、ビームスプリッタBS11~BS19、ビームエキスパンダBE、ミラーM11~M17、光路調整素子LA1・LA2、および撮像装置12を備える。

【0139】
波長λ1の光源LS5は、有限のコヒーレンス長の光を出射する光源であり、例えば、パルスレーザ光源、LED、またはその他の低コヒーレンス光源等である。後述する複数の経路の物体照明光を、それぞれに対応する複数のレーザ光源(コヒーレントな光源)で生成してもよい。

【0140】
光源LS5から出射された光は、ビームスプリッタBS11・BS13によって物体照明光と参照光とに分割される。

【0141】
物体照明光は、ビームスプリッタBS12・BS13によって複数(ここでは3つ)の経路に分けられる。ここでは、物体照明光の3つの経路をOP1~OP3で表す。3つの経路OP1~OP3の物体照明光はそれぞれ、対応するビームエキスパンダBEで拡大され、光路調整素子LA1を通過する。3つの経路OP1~OP3の物体照明光は、ミラーM12~M15およびビームスプリッタBS14を経由して被写体13(物体)に照射される。被写体13によって散乱、透過または回折された物体照明光は、物体光としてビームスプリッタBS19を通過して撮像装置12に達する。3つの経路OP1~OP3の物体光は、それぞれ異なる方向から撮像装置12の撮像面に入射する。すなわち、3つの経路OP1~OP3の物体光の伝搬方向は、それぞれ異なる。図示はしないが、物体光の経路に光透過フィルタ(絞り)が設けられている。また、被写体13と撮像装置12との間に、顕微鏡対物レンズ、拡大光学系、または縮小光学系を導入することもできる。

【0142】
分割された参照光は、ビームスプリッタBS15・BS16によって複数(ここでは3つ)の経路に分けられる。ここでは、参照光の3つの経路をRP1~RP3で表す。3つの経路RP1~RP3の参照光はそれぞれ、光路調整素子LA2を通過し、対応するビームエキスパンダBEで拡大される。3つの経路RP1~RP3の参照光は、ミラー17およびビームスプリッタBS17・BS18によって1つの経路に合成される。その後、参照光は、ビームスプリッタBS19を経由して撮像装置12に達する。3つの経路RP1~RP3の参照光は、単一の方向から撮像面に入射してもよいし、それぞれ異なる方向から撮像面に入射してもよい。ここでは、3つの経路RP1~RP3の参照光は、それぞれ異なる方向から撮像面に入射する。

【0143】
3つの経路OP1~OP3の物体光は、それぞれ光源LS5から撮像装置12までの光路長が異なる。各経路の光路長の差は、光源LS5から出射された光のコヒーレンス長より大きい。そのため、異なる経路の物体光は、互いに干渉しない。同様に、3つの経路RP1~RP3の参照光は、それぞれ光源LS5から撮像装置12までの光路長が異なる。そのため、異なる経路の参照光は、互いに干渉しない。また、対応しない経路の参照光および物体光も、互いに干渉しない。

【0144】
経路OP1の物体光に対しては、対応する経路RP1の参照光のみが干渉する。同様に、経路OP2の物体光に対しては、対応する経路RP2の参照光のみが干渉し、経路OP3の物体光に対しては、対応する経路RP3の参照光のみが干渉する。すなわち、各経路の物体光は、対応する経路の参照光と干渉するように、光路調整素子LA1によって物体光の光路長が調整されている。同様に、光路調整素子LA2は、参照光の光路長を調整する。光路調整素子LA2は複数の経路RP1~RP3に対応して設けられてもよい。

【0145】
撮像装置12は、3つの経路の物体光および参照光によって形成される1つのホログラムを記録する。

【0146】
3つの経路OP1~OP3の物体光のうち、少なくとも1つの経路の物体光の光軸は、対応する経路の参照光の光軸に対して大きな角度(臨界角より大きな角度)で傾いている。そのため当該物体光について、エイリアシングが発生する。3つの経路OP1~OP3の物体光の伝搬方向が互いに異なるため、各経路の物体光波の空間スペクトルの分布は、例えば図11に示すようになる。ここで、図11の波長λ1~λ3は、経路OP1~OP3に読み換える。なお、経路が2つの場合は、各経路の物体光波の空間スペクトルの分布は、例えば図4に示すようになる。

【0147】
そのため、上述の実施形態で説明した再生装置によって、高精度に再生像を生成することができる。本実施形態の記録装置31は、撮像面に平行な面内方向における被写体13の小さな波数の情報のみならず、面内方向における被写体13の大きな波数の情報も、単一露光で記録することができる。記録可能な波数の範囲を大きくすることができるので、CT(Computed Tomography)等の深さ情報の分離再生が可能になる。そして、再生装置において物体光波の空間スペクトルの減衰に対して補正を行うことにより、エイリアシングが発生するような大きな波数の情報も高精度で再生することができる。よって、深さ情報を高精度で再生することができ、高画質の3次元像の再生が可能となる。

【0148】
〔実施形態9〕
本実施形態では、複数の経路の参照光の光軸が揃っている点が実施形態8とは異なる。

【0149】
図31は、本実施形態の記録装置32の構成を示す図である。記録装置32は、ビームスプリッタBS15・BS16によって参照光を複数の経路RP1~RP3に分割する。分割された複数の経路RP1~RP3の参照光は、それぞれミラー16~M18で反射されて、再びビームスプリッタBS15・BS16によって共通の経路に合成される。複数の経路RP1~RP3の参照光は、単一の方向から撮像装置12の撮像面に入射する。

【0150】
物体光の経路は実施形態8と同様である。3つの経路OP1~OP3の物体光のうち、少なくとも1つの経路の物体光の光軸は、対応する経路の参照光の光軸に対して大きな角度(臨界角より大きな角度)で傾いている。各経路の物体光は、対応する経路の参照光とのみ干渉可能である。再生像の生成および効果等も実施形態8と同様であるので、説明を省略する。

【0151】
〔実施形態10〕
本実施形態では、複数の波長の光を用いる点が実施形態9とは異なる。

【0152】
図32は、本実施形態の記録装置33の構成を示す図である。記録装置33は、複数の波長λ1~λ3のレーザ光源LS1~LS3を備える。

【0153】
レーザ光源LS1~LS3から出射された各波長の光は、ビームスプリッタBS11~BS13によって物体照明光と参照光とに分割される。3つの波長の物体照明光はそれぞれ、異なる経路OP1~OP3を通過して、異なる方向から被写体13に照射される。そして、3つの経路(3つの波長)の物体光はそれぞれ、異なる方向から撮像装置12の撮像面に入射する。

【0154】
一方、各波長の参照光は、単一の経路を通過して、単一の方向から撮像面に入射する。

【0155】
レーザ光はコヒーレントな光である。3つの経路OP1~OP3の物体光は、それぞれ波長が異なる(光源が異なる)ので、互いに干渉しない。この光学系においても、例えば図11に示すような空間スペクトル分布を得ることができる。なお、干渉性のよい光を用いる場合、光路調整素子は省略することもできる。

【0156】
また、波長が同じ複数の光源を用いる形態も実施可能であり、その場合、光源が異なるため波長が同じであっても複数の光源から出射された光は互いに干渉せず、光路調整素子を省略することもできる。

【0157】
〔実施形態11〕
本実施形態では、実施形態10の複数の波長の代わりに、複数の偏光方向毎に異なる方向から被写体に物体照明光を照射する点が異なる。

【0158】
図33は、本実施形態の記録装置34の構成を示す図である。記録装置34は、1つのレーザ光源LS1を備える。レーザ光源LS1は、垂直偏光のレーザ光を出射する。

【0159】
レーザ光源LS1から出射された光は、ビームスプリッタBS11によって物体照明光と参照光とに分割される。物体照明光は、ビームスプリッタBS12によって複数の経路OP1・OP2に分けられる。一方の経路OP1の物体照明光は、1/2波長板HWPによって水平偏光に変換される。他方の経路OP2の物体照明光は、垂直偏光のままである。複数の経路OP1・OP2の物体照明光はそれぞれ、異なる方向から被写体13に照射される。そして、2つの経路(2つの偏光状態)の物体光はそれぞれ、異なる方向から撮像装置12の撮像面に入射する。

【0160】
一方、参照光は、波長板WPによって、垂直偏光の成分および水平偏光の成分を有する状態に変換される。例えば波長板WPは、低速軸が垂直偏光に対して45°傾いた1/4波長板でもよいし、低速軸が垂直偏光に対して22.5°傾いた1/2波長板でもよい。前者の場合、参照光は円偏光になり、後者の場合、参照光は垂直方向に対して45°の直線偏光になる。なお、低速軸の方向は上記に限らない。垂直偏光の参照光および水平偏光の参照光は、単一の経路を通過して、単一の方向から撮像面に入射する。

【0161】
参照光と、対応する偏光方向の物体光とは、撮像面に入射する方向が異なる。垂直偏光の参照光は、垂直偏光の物体光の一部に対してエイリアシングを発生させ、水平偏光の参照光は、水平偏光の物体光の一部に対してエイリアシングを発生させる。

【0162】
偏光方向が直交する複数の偏光は、互いに干渉しないので、実施形態10と同様に、この光学系においても、例えば図4に示すような空間スペクトル分布を得ることができる。ただし、図4とは異なり、2つの波長の代わりに、2つの偏光状態(水平偏光および垂直偏光)の物体光波の空間スペクトルが、互いに分離されて記録される。そのため、複数の偏光状態の情報を分離して、情報を高精度に再生することができる。

【0163】
本実施形態では、複数の偏光方向を利用して複数の物体光の干渉を避けるため、コヒーレンス長が長い場合においても適用可能である。

【0164】
〔実施形態12〕
本実施形態では、物体照明光および参照光がそれぞれ単一の経路を通り、物体光の経路に開口アレイを配置する構成について説明する。

【0165】
図34は、本実施形態の記録装置35の構成を示す図である。記録装置35は、1つの波源WSを備える。波源WSは、ここではレーザ光源であるが、これに限らず、任意の波長の、横波または縦波の波源を用いることができる。

【0166】
波源WSから出射された光は、ビームスプリッタBS11によって物体照明光と参照光とに分割される。物体照明光は、単一の経路を通過して被写体13に照射される。被写体13によって散乱された物体光は、開口アレイ18を通過して、撮像装置12の撮像面に入射する。参照光は、単一の経路を通過して、撮像装置12の撮像面に入射する。

【0167】
開口アレイ18は、複数の開口が配列したアレイである。開口アレイ18の例として、開口アレイ18a~18fを図34に示す。開口の形状は円形に限らず、また、複数の開口の配置も限定されない。複数の開口の配置は、周期的でも非周期的でも、等方的でも非等方的でも、対称性があってもなくても、構わない。開口アレイ18は、開口がある部分とない部分とで、透過率、振動方向、または位相を変調する。例えば、開口アレイ18のある開口を通過した物体光と、他の開口を通過した物体光とは、それぞれ異なる画素に入射する。

【0168】
撮像面に入射する参照光は、開口アレイ18の少なくともいずれかの開口を通過した物体光に対して、エイリアシングを発生させるような角度をなす。再生装置11によってエイリアシングが発生した部分についても補正を行うことで、面内方向に大きな波数の情報も高精度に再生することができる。また、開口アレイ18によって、面内方向に大きな波数の情報を、空間周波数面で分離して抽出することができる。

【0169】
なお、物体光の経路に、再回折光学系を適用してもよい。例えば、再回折光学系はレンズを備え、被写体を該レンズの前焦点面に配置し、開口アレイ18を該レンズのフーリエ変換面(後焦点面)に配置してもよい。この場合、開口アレイ18の複数の開口によって、空間周波数面における物体光波の空間スペクトルが分離される。そのため、開口に応じた複数の視点における被写体の波数情報をホログラムから分離して抽出することが容易になる。図34では、物体の1点から回折した物体光が波数ごとに撮像素子の異なる画素に分離されて記録される形態が示されている。しかしながら、再回折光学系を適用するときのように、物体の1点から回折したあらゆる波数の物体光が撮像素子の1画素に記録される場合であっても、空間周波数面で分離抽出できる。

【0170】
また、拡大光学系または縮小光学系を物体光の光路に配置してもよい。開口アレイ18は、拡大光学系または縮小光学系の中または外に配置することができる。また、レンズのアレイを拡大、縮小、等倍などのあらゆる光学系に配置すること、レンズのアレイを再回折光学系の一方あるいは両方のレンズの代わりに配置すること、または、レンズのアレイを開口アレイとして用いることも可能である。

【0171】
このように、単一の経路の物体照明光を用いて、面内方向における被写体13の大きな波数の情報を、単一露光で記録することができる。

【0172】
〔シミュレーション1〕
本発明の実施形態1に基づくホログラムの記録および再生のシミュレーション結果について説明する。ここでは、図1に示すデジタルホログラフィ装置1を使用すると仮定する。

【0173】
シミュレーションの条件は以下の通りである。λ1=532nm、λ2=473nmである。撮像装置の画素数は2048(横)×2048(縦)、画素間隔は縦横共に1.12μmである。イメージホログラムを想定し、被写体の像と撮像装置の撮像面との距離は10μmとした。物体光と参照光との強度比は1:1である。空間スペクトルが図4のように分布するように、参照光の角度を設定した。物体光の位相分布はランダムである。

【0174】
図16は、シミュレーションに用いる被写体の像および記録されたホログラムを示す図である。図16の(a)は、波長λ1および波長λ2を含む被写体の像を示す。図16の(b)は、図16の(a)に示す被写体の像のうち、波長λ1の成分を示す。図16の(c)は、図16の(a)に示す被写体の像のうち、波長λ2の成分を示す。図16の(d)は、記録された実空間のホログラムを示す。図16の(e)は、上記ホログラムを部分的に拡大したものを示す。ホログラムにおける明暗は干渉縞の強度を示す。

【0175】
上記の条件の下、計算機によって、物体光と参照光とが撮像面に形成するホログラムを記録し、再生像を計算するシミュレーションを行った。なお、ホログラムの記録も計算機によるシミュレーションによって行っている。

【0176】
図17は、波長λ1の成分についての、シミュレーションによる再生像を示す図である。図18は、波長λ2の成分についての、シミュレーションによる再生像を示す図である。図17および図18の(a)~(c)は、画像のある部分Cを拡大したものを示し、図17および図18の(d)~(f)は、画像の他の部分Dを拡大したものを示す。図17および図18の(a)(d)は、元の被写体の像を示す。図17および図18の(b)(e)は、比較のための、参考例の軸外し型のデジタルホログラフィ装置を想定したシミュレーションによる再生像を示す。参考例では、エイリアシングを発生させておらず、かつ、sinc関数を用いた補正も行っていない。図17および図18の(c)(f)は、実施形態1に基づく上記シミュレーションによる再生像を示す。実施形態1では、エイリアシングを発生させ、かつ、sinc関数を用いた補正を行っている。

【0177】
いずれの波長においても参考例の再生像(図17および図18の(b)(e))では、元の被写体に比べて、画質が劣化しており、分解能が低いことが分かる。参考例の再生像では、波長λ1成分に関して、元の被写体の像に対する平均二乗誤差は31.4、相互相関係数は0.936、SN比は11.6[dB]であった。波長λ2成分に関して、元の被写体の像に対する平均二乗誤差は33.8、相互相関係数は0.947、SN比は11.1[dB]であった。

【0178】
これに対し、いずれの波長においても実施形態1に基づく再生像(図17および図18の(c)(f))では、参考例に比べて画質が向上しており、高い分解能が得られることが分かる。実施形態1に基づく再生像では、波長λ1成分に関して、元の被写体の像に対する平均二乗誤差は12.8、相互相関係数は0.988、SN比は20.1[dB]であった。波長λ2成分に関して、元の被写体の像に対する平均二乗誤差は12.9、相互相関係数は0.991、SN比は19.4[dB]であった。参考例に比べて、実施形態1に基づく再生像では、平均二乗誤差が60%以上減少し、SN比が70%以上増加している。このことからも、実施形態1では高精度にホログラムを記録・再生できることが分かる。

【0179】
〔シミュレーション2〕
本発明の実施形態1に基づく複数波長(2波長)位相接続法のシミュレーション結果について説明する。ここでは、図1に示すデジタルホログラフィ装置1を使用すると仮定する。2波長位相接続法とは、2つの波長を用いて記録されたホログラムから、被写体の3次元形状の情報を得る方法である。

【0180】
シミュレーションの条件は以下の通りである。λ1=532nm、λ2=488nmである。2波長位相接続法による合成波長は5.90μmである。撮像装置の画素数は512(横)×512(縦)、画素間隔は縦横共に2.2μmである。被写体の像と撮像装置の撮像面との距離は10mmとした。物体光と参照光との強度比は1:1である。空間スペクトルが図4のように分布するように、参照光の角度を設定した。物体光の強度分布は一様であり、かつ物体光の強度分布に波長依存性はない。

【0181】
上記の条件の下、計算機によって、物体光と参照光とが撮像面に形成するホログラムを記録し、2波長位相接続法によって3次元形状を計算するシミュレーションを行った。なお、ホログラムの記録も計算機によるシミュレーションによって行っている。

【0182】
図19は、被写体の3次元形状およびシミュレーションによる3次元形状の計測結果を示す図である。図19の(a)は、被写体の高さ(奥行き寸法)の分布を示す。被写体の寸法は、1.13mm(横)×1.13mm(縦)×2.50μm(高さ)である。図19の(b)は、比較のための、参考例の軸外し型のデジタルホログラフィ装置を想定したシミュレーションによる計測結果を示す。参考例では、エイリアシングを発生させておらず、かつ、sinc関数を用いた補正も行っていない。図19の(c)は、実施形態1に基づく上記シミュレーションによる計測結果を示す。実施形態1では、エイリアシングを発生させ、かつ、sinc関数を用いた補正を行っている。図19の(a)~(c)において、明るい箇所が高く(手前側にあり)暗い箇所が低い(奥側にある)ことを示す。

【0183】
図19の(d)は、枠囲みの箇所における、元の被写体の高さ分布(図19の(a))と、参考例による計測結果の高さ分布(図19の(b))との差分を示す。明るい箇所は差がプラス、暗い箇所は差がマイナス、中間のグレーの箇所は差が0であることを示す。参考例に基づく計測結果の平均二乗誤差は11.1[nm]であった。

【0184】
図19の(e)は、枠囲みの箇所における、元の被写体の高さ分布(図19の(a))と、実施形態1に基づく計測結果の高さ分布(図19の(c))との差分を示す。参考例に比べて、実施形態1に基づく計測結果では、誤差が小さくなっていることが分かる。実施形態1に基づく計測結果の平均二乗誤差は3.44[nm]であった。このことからも、実施形態1では高精度に被写体の3次元形状を計測できることが分かる。

【0185】
〔シミュレーション3〕
本発明の実施形態4に基づくホログラムの記録および再生のシミュレーション結果について説明する。ここでは、図10に示すデジタルホログラフィ装置2を使用すると仮定する。

【0186】
シミュレーションの条件は以下の通りである。λ1=632.8nm、λ2=532nm、λ3=473nmである。撮像装置の画素数は2048(横)×2048(縦)、画素間隔は縦横共に2.2μmである。フレネル型のホログラムを想定し、被写体の像と撮像装置の撮像面との距離は250mmとした。物体光と参照光との強度比は1:1である。空間スペクトルが図11のように分布するように、参照光の角度を設定した。物体光の位相分布はランダムである。

【0187】
図20は、シミュレーションに用いる被写体の像および記録されたホログラムを示す図である。図20の(a)は、波長λ1~λ3を含む被写体の像を示す。図20の(b)は、図20の(a)に示す被写体の像のうち、波長λ1の成分を示す。図20の(c)は、図20の(a)に示す被写体の像のうち、波長λ2の成分を示す。図20の(d)は、図20の(a)に示す被写体の像のうち、波長λ3の成分を示す。図20の(e)は、記録された実空間のホログラムを示す。図20の(f)は、上記ホログラムを部分的に拡大したものを示す。ホログラムにおける明暗は干渉縞の強度を示す。

【0188】
上記の条件の下、計算機によって、物体光と参照光とが撮像面に形成するホログラムを記録し、再生像を計算するシミュレーションを行った。なお、ホログラムの記録も計算機によるシミュレーションによって行っている。

【0189】
図21は、シミュレーションによる空間スペクトル分布(ホログラムのフーリエ変換)を示す図である。図21の(a)は、比較のための、一参考例の軸外し型のデジタルホログラフィ装置を想定したシミュレーションによる空間スペクトル分布を示す。この参考例では、いずれの波長についてもエイリアシングが発生していない代わりに、波長λ1の物体光波の空間スペクトルが0次回折光の空間スペクトルに重なっている。図21の(b)は、実施形態4に基づくシミュレーションによる空間スペクトル分布を示す。実施形態4に基づくシミュレーションでは、波長λ1についてエイリアシングを発生させることで、各空間スペクトルが互いに重ならないように配置している。参考例でも波長λ2・λ3については物体光波の空間スペクトルが重なっていないので、差が顕著な波長λ1について、参考例と実施形態4とを比較した。

【0190】
図22は、波長λ1の成分についての、シミュレーションによる再生像を示す図である。図22の(a)は、参考例のシミュレーションによる再生像を示す。図22の(b)は、図22の(a)の2つの枠囲みの箇所をそれぞれ拡大したものを示す。参考例では、エイリアシングを発生させておらず、かつ、sinc関数を用いた補正も行っていない。図22の(c)は、実施形態4に基づく上記シミュレーションによる再生像を示す。図22の(d)は、図22の(c)の2つの枠囲みの箇所をそれぞれ拡大したものを示す。実施形態4では、エイリアシングを発生させ、かつ、sinc関数を用いた補正を行っている。

【0191】
波長λ1において参考例の再生像(図22(a)(b))では、元の被写体に比べて、画質が劣化しており、分解能が低いことが分かる。参考例の再生像では、波長λ1成分に関して、元の被写体の像に対する平均二乗誤差は27.2、相互相関係数は0.980、SN比は13.1[dB]であった。

【0192】
これに対し、波長λ1において実施形態4に基づく再生像(図22の(c)(d))では、参考例に比べて画質が向上しており、高い分解能が得られることが分かる。実施形態4に基づく再生像では、波長λ1成分に関して、元の被写体の像に対する平均二乗誤差は11.0、相互相関係数は0.990、SN比は21.0[dB]であった。このことからも、実施形態4では高精度にホログラムを記録・再生できることが分かる。

【0193】
〔実施形態13〕
本実施形態では、複数の波長の参照光が単一の経路を通って撮像面に入射する構成について説明する。実施形態5(図12)では、複数の波長の参照光は、同軸で(同じ角度で)撮像面に入射する。一方、本実施形態では、複数の波長の参照光は単一の経路を通るが、複数の波長の参照光は、互いに異なる角度で撮像面に入射する。

【0194】
図35は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置4の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置4は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置4は、記録装置41と再生装置11とを備える。記録装置41は、モノクロの撮像装置12、波長λ1のレーザ光源LS1、波長λ2のレーザ光源LS2、波長λ3のレーザ光源LS3、および光学系を備える。

【0195】
波長λ1~λ3のレーザ光は、ビームスプリッタBS3・BS7によって同軸に揃えられる。波長λ1~λ3のレーザ光は、ビームスプリッタBS1によって物体照明光と参照光とに分割される。

【0196】
物体照明光は被写体13に照射される。被写体13の反射光である物体光は、ビームスプリッタBS5で反射され、撮像装置12の撮像面に入射する。

【0197】
(参照光の経路)
本実施形態では、光学系は、波長λ1~λ3の参照光が単一の経路を通過するよう、参照光を撮像面まで導く。光学系は、参照光の経路に、ミラーM1、回折格子GR、2つのレンズLN1・LN2、および開口アレイAAを備える。

【0198】
ビームスプリッタBS1で物体光と分けられた参照光は、ミラーM1によって反射され、回折格子GRに入射する。波長λ1~λ3の参照光は、回折格子GRによってそれぞれ回折される。その後、各波長の参照光はレンズLN1、開口アレイAA、レンズLN2、およびビームスプリッタBS5をこの順に通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。

【0199】
図36は、デジタルホログラフィ装置4の参照光の経路の一部を拡大して示す模式図である。ここでは、回折格子GRからレンズLN2までが図示されている。z軸は撮像面に垂直であり、x軸およびy軸は撮像面に平行である。レンズLN1、開口アレイAA、およびレンズLN2は、z軸に沿って配置されている。レンズLN1と開口アレイAAとの間の距離、および開口アレイAAとレンズLN2との間の距離は、レンズLN1・LN2の焦点距離に等しい。開口アレイAAは、フーリエ変換面に位置することになる。回折格子GRに入射する前において、波長λ1~λ3の参照光は、互いに光軸が同じである平行光である。

【0200】
回折格子GRは、反射型の回折格子、例えば、ブレーズド回折格子である。回折格子GRは、x-y平面に平行に配置されており、回折格子GRの法線は、z軸に一致している。回折格子GRのブレーズ方向は、y軸に対して角度φ傾いている。ここで、ブレーズ方向とは、ブレーズド回折格子において複数の鋸歯が配列する方向である。ブレーズド回折格子は、入射角に応じて特定の次数(m次、典型的には1次または-1次)の回折光にエネルギーを集中させる。なお、回折格子として、ブレーズド回折格子に限らず、任意の回折格子を用いることができる。

【0201】
各波長の参照光は、角度Ψx、角度Ψyの角度で、回折格子GRに入射する。Ψxは、参照光の進行方向とy-z平面との間の角度を表す。Ψyは、参照光の進行方向とx-z平面との間の角度を表す。例えばΨx、Ψyは、ミラーM1の角度によって調整される。回折格子GRに入射した波長λ1~λ3の参照光は、回折格子GRによって、それぞれ異なる方向に回折される。回折格子GRによって回折された後の波長λ1の参照光(波長λ1のm次回折光)は、平行光である。波長λ1について他の次数の回折光(図示せず)も生じるが、これらの回折光の強度はm次回折光に比べて小さい。同様に、波長毎に進行方向(回折方向)が定まるので、それぞれの波長の参照光は、平行光である。強められた特定の次数の各波長の参照光は、z軸に対してx軸方向に傾いた方向に進む。また、強められた特定の次数の各波長の参照光は、互いにy軸方向について異なる方向に進む。

【0202】
回折された後、各波長の参照光は、レンズLN1によって開口アレイAA上に集光される。レンズLN1に入射する前の参照光は、波長毎にその進行方向が異なる。そのため、波長λ1~λ3の参照光は、それぞれ開口アレイAA上における異なる位置に集光される。

【0203】
開口アレイAAは、少なくとも使用される波長の数以上の、複数(ここでは3つ)の開口を有する。例えば波長λ1のm次以外の回折光は、回折格子GRからの進行方向がm次の回折光とは異なるので、開口アレイAA上において波長λ1のm次の回折光とは異なる位置に集光される。これらm次以外の回折光は、開口アレイAAによって遮断される。また、参照光はレーザ光であるが、レーザ光源に応じて波長分布に幅がある。波長に応じて回折格子GRによる回折方向が決まり、回折方向はレンズLN1への入射方向になる。それゆえ、参照光の波長分布の幅が大きくなるにしたがって、開口アレイAA上における参照光のスポット径が大きくなる。開口アレイAAにおいて、開口の径を絞り、通過する参照光の径を絞る(小さくする)ことにより、開口アレイAAを通過した参照光の波長分布の幅を小さくすることができる。すなわち、参照光の単色性を向上させ、コヒーレンス性を高めることができる。他の波長λ2、λ3についても同様である。このように、開口アレイAAは、参照光の波長λ1・λ2・λ3に対応して配列する複数の開口を有する。ここでは、開口アレイAAにおける複数の開口は、直線状に並ぶ。このように、開口アレイAAは、各波長の参照光について、特定の次数(例えば1次)の回折光のみを通過させる。なお、開口アレイAAおよびレンズLN1・LN2を省略することもできる。開口アレイの代わりに、各波長の参照光について、特定の次数の回折光を通過させる、単なる開口を用いてもよい。また、波長数よりも少ない開口数を備えた開口アレイを用い、各波長の参照光について、特定の次数の回折光を通過させてもよい。

【0204】
開口アレイAAを通過した波長λ1・λ2・λ3の参照光は、それぞれレンズLN2によって再び平行光に変換される。ただし、レンズLN2を通過した後の進行方向は、波長に応じてそれぞれ異なる。そしてビームスプリッタBS5を通過した後、波長λ1・λ2・λ3の参照光は、z軸に垂直な撮像面に対して、それぞれx方向およびy方向に角度を持って入射する。波長λ1・λ2・λ3の参照光は、それぞれ異なる方向から撮像面に入射する。モノクロの撮像装置12は、複数の波長の参照光および物体光が多重化された干渉縞(ホログラム)を記録する。

【0205】
なお、レーザ光源を追加してN個の波長の参照光および物体光を用いることもできる。この場合、開口アレイAAは、N個の開口を有する。

【0206】
(ホログラムの空間周波数解析)
図37は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置4によって得られるホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1~λ3の0次回折光の空間スペクトル、各波長の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。ここでは、エイリアシングは発生していない。なお、レーザ光源を追加してN個の波長の参照光および物体光を用いれば、図示のようにλ1~λNの物体光波の空間スペクトルが直線上に並ぶ。

【0207】
λ1>λ2>…>λNである。波長毎に参照光のy方向の入射角が大きく異なるため、各波長の物体光波の空間スペクトルの分布が、fy軸に沿ってシフトしている。なお、各波長の物体光波の空間スペクトルは、0次回折光の空間スペクトルを避けるように、あるfxの位置に分布している。各波長の物体光波の空間スペクトルの配列は、ミラーM1によって回折格子GRへ入射する角度Ψx、Ψyを変更する、または回折格子GRのブレーズ方向の角度φを変更することにより、2次元的に調節することができる。なお、各波長の物体光波の空間スペクトルの中心は、直線上に並ぶ。なお、撮像装置12から見た被写体13の大きさ(視野角、すなわち物体光が撮像面に入射する角度範囲)が小さければ、各波長の物体光波の空間スペクトルの半径も小さくなる。

【0208】
このように、本実施形態では、0次回折光の空間スペクトルが存在する領域(原点付近)を避けて、複数の波長の物体光波の空間スペクトルを直線状に配置することができる。このように空間スペクトルを配置することで、特に用いる波長数が多い場合において、空間周波数帯域を効率よく利用することができる。また、像の再生においては、上述の実施形態のように、空間スペクトルの補正を行うことができる。

【0209】
本実施形態では、複数の波長の参照光が単一の経路を通って撮像面に入射し、かつ、参照光の単一の経路において、進行方向が揃っていた複数の波長の参照光が回折格子GRによって、それぞれ異なる方向に回折される。これにより、複数の波長の参照光は単一の経路を通りつつ、それぞれ異なる方向から撮像面に入射する。参照光が撮像面に入射する角度に波長毎に差をつけることで、ホログラムの空間周波数面において、各波長の物体光波の空間スペクトルが重ならないようにすることができる。これにより、空間周波数面において、所望の波長の物体光波の空間スペクトルを抽出することができる。これにより、波長毎に被写体の立体像を再生することができ、それらから多波長の被写体の3次元画像を得ることができる。

【0210】
例えば、図10に示す光学系では、複数の波長の参照光を異なる方向から撮像面に入射させるために、複数の参照光の経路を設けている。例えば、波長λ1の参照光は、ビームエキスパンダBE1からビームスプリッタBS8を通ってビームスプリッタBS4へ至る経路を通る。波長λ2の参照光は、ビームエキスパンダBE2からミラーM2を通ってビームスプリッタBS4へ至る経路を通る。波長λ3の参照光は、ビームエキスパンダBE4からミラーM4およびビームスプリッタBS8を通ってビームスプリッタBS4へ至る経路を通る。そのため、光学系が複雑かつ大きくなる。

【0211】
一方、本実施形態の光学系では、参照光が単一の経路を通るため、光学系ひいては記録装置41をコンパクトかつ簡易な構成にすることができる。

【0212】
また、例えば赤色光から近赤外の範囲において10波長帯域程度に分光して、生体または細胞を観察したいという要望がある。このような要望に合わせて、3つより多い波長を用いる場合にも、本実施形態は有利である。例えば図12に示す記録装置15では、複数の波長の参照光は単一の経路を通って、互いに同じ方向から撮像面に入射する。そのため、空間周波数面における複数の波長の物体光波の空間スペクトルの分布は、原点を通る直線上に位置することになる。

【0213】
図38は、N個の波長を用いた場合に図12に示すような記録装置において得られるホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。利用する空間周波数帯域を広くするために、各波長の物体光波について、x方向およびy方向にエイリアシングを発生させている。fλ1、fλ2、fλNの矢印は、各波長の空間スペクトルの本来の空間周波数を表す。fobjλ1、fobjλ2、…fobjλNは、それぞれ波長λ1、λ2…λNについて再生に使用可能な空間周波数帯域の半径を示す。このように、波長数が増加すると、利用できる空間周波数帯域が小さくなる。無理に各波長の空間周波数帯域を大きくとると、空間スペクトルのSN比が下がるため、画質劣化を引き起こしてしまう。

【0214】
一方、図37に示すように、本実施形態では、3つより多い波長を用いる場合でも、利用可能な空間周波数帯域を広くすることができる。

【0215】
なお、開口アレイAAによって使用する参照光の波長範囲を限定することができるので、レーザ光源の代わりに、コヒーレンス性の低い(単色性の低い)、パルスレーザ光源、またはLED光源等を用いることもできる。また、光源から出射される光の複数の波長がλ1、λ2、λ3のように離散的でなくてもよい。連続スペクトルの光を物体照明光と参照光とに分離し、回折した連続スペクトルの参照光を開口アレイAAの複数の開口によって、離散的な波長に限定してもよい。

【0216】
〔実施形態14〕
本実施形態では、透過型の回折格子を用いる点が実施形態13と異なる。

【0217】
図39は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置5の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置5は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置5は、記録装置42と再生装置11とを備える。記録装置42は、モノクロの撮像装置12、波長λ1のレーザ光源LS1、波長λ2のレーザ光源LS2、波長λ3のレーザ光源LS3、および光学系を備える。

【0218】
本実施形態では、図35に示す記録装置41の反射型の回折格子の代わりに、透過型の回折格子GRを備える。ビームスプリッタBS1で物体光と分けられた参照光は、ミラーM1によって反射され、透過型の回折格子GRに入射する。波長λ1~λ3の参照光は、回折格子GRによってそれぞれ回折される。その後、各波長の参照光はレンズLN1、開口アレイAA、レンズLN2、およびビームスプリッタBS5をこの順に通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。

【0219】
例えば、各波長の参照光は、ミラーM1によってz方向に対してx方向に同じ角度傾けられる。また、各波長の参照光は、回折格子GRによって、z方向に対してy方向に異なる角度傾けられる。そのため、各波長の参照光は、互いに異なる方向から撮像面に入射する。

【0220】
図40は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置5によって得られるホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ホログラムの空間周波数面において、波長λ1~λ3の0次回折光の空間スペクトル、各波長の物体光波の空間スペクトル、ならびに、各波長の共役像の空間スペクトルが存在する。ここでは、エイリアシングは発生していない。レーザ光源を追加してN個の波長の参照光および物体光を用いれば、図示のようにλ1~λNの物体光波の空間スペクトルが直線上に並ぶ。

【0221】
λ1>λ2>…>λNである。波長毎に参照光のy方向の入射角が大きく異なるため、各波長の物体光波の空間スペクトルの分布が、fyに関してシフトしている。なお、各波長の参照光のx方向の入射角は同じであるが、波長が異なれば干渉縞の空間周波数が異なってくる。そのため、各波長の物体光波の空間スペクトルの分布は、fxに関してもずれている。なお、各波長の物体光波の空間スペクトルの中心は、直線上に並ぶ。例えば各波長の物体光波の空間スペクトルのfx軸における位置は、ミラーM1によって調節することができる。また、各波長の物体光波の空間スペクトルのfy軸における位置は、回折格子GRの格子間隔によって調節することができる。

【0222】
また、透過型または反射型の回折格子GRの代わりにプリズムを用いることにより、波長毎に参照光の進行方向を異ならせることもできる。

【0223】
図41は、さらにエイリアシングを発生させた場合に本実施形態のデジタルホログラフィ装置5によって得られるホログラム(干渉縞)を2次元フーリエ変換したものを概略的に示す図である。ここでは、λ1…λK…λNの、N個の波長を用いている(1<K<N)。図40と同様に、図41においても、各波長の物体光波の空間スペクトルが直線上に配列する。ただし、fyが±1/2dを超えたλ1およびλN等の一部の波長の物体光波の空間スペクトルは、エイリアシングのため、1/dシフトした位置に現れる。各波長の物体光波の空間スペクトルは、点線に沿った位置に現れる。なお、像の再生においては、上述の実施形態のように、空間スペクトルの補正を行うことができる。

【0224】
このようにエイリアシングを利用することで、利用可能な空間周波数帯域を広くすることができる。また、記録可能な波長数を増加させることができる。そのため、被写体の3次元画像を多波長に分光して得ることができる。

【0225】
なお、互いに回折させる方向が異なる(格子の並ぶ方向が異なる)2つ以上の回折格子を用いてもよい。この場合、空間周波数面において、複数の波長の物体光波の空間スペクトルの分布を2次元的(fx方向およびfy方向)に分離(すなわち分光)することができる。

【0226】
〔実施形態15〕
本実施形態では、他の構成の光学系を用いる場合について説明する。

【0227】
図42は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置6の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置6は、軸外し型(off-axis型)のデジタルホログラフィ装置である。デジタルホログラフィ装置6は、記録装置43と再生装置11とを備える。記録装置43は、モノクロの撮像装置12、N個の光源(波長λ1のレーザ光源LS1、波長λ2のレーザ光源LS2、…波長λNのレーザ光源LSN)、および光学系を備える。

【0228】
波長λ1~λNのレーザ光は、複数のビームスプリッタによって同軸に揃えられる。波長λ1~λNのレーザ光は、ビームスプリッタBS1によって物体照明光と参照光とに分割される。

【0229】
物体照明光は被写体13に照射される。被写体13の反射光である物体光は、ビームスプリッタBS1を通過し、撮像装置12の撮像面に入射する。

【0230】
本実施形態では、光学系は、波長λ1~λNの参照光が単一の経路を通過するよう、参照光を撮像面まで導く。光学系は、参照光の経路に、ミラーM1・M2を備える。

【0231】
ビームスプリッタBS1で物体光と分けられた参照光は、ミラーM1・M2によって反射され、再びビームスプリッタBS1に入射する。その後、ビームスプリッタBS1によって反射された参照光は、物体光の光軸とは異なる方向から撮像装置12の撮像面に入射する。撮像面への参照光の入射角度は、ミラーM1・M2によって調節することができる。各波長の空間スペクトルは、波長に応じて空間周波数が異なるため、空間周波数面において区別可能となる。

【0232】
〔実施形態16〕
本実施形態では、参照光の単一の経路に回折格子が配置される点が、実施形態15とは異なる。

【0233】
図43は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置7の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置7は、記録装置44と再生装置11とを備える。記録装置44は、参照光の単一の経路に回折格子GRを備える点が、図42の記録装置43とは異なる。なお、複数の光源LS1~LSNは、単一のレーザ光源LSに置き換えることができる。レーザ光源LSは、複数の波長λ1~λNのレーザ光を同軸で出射する。

【0234】
本実施形態では、回折格子GRが複数の波長の参照光を異なる方向に回折させる。そのため、得られるホログラムの空間周波数面において、各波長の空間スペクトルをより離して配置させることができる。回折格子GRと撮像装置12との間に、レンズおよび開口アレイを配置してもよい。

【0235】
〔実施形態17〕
さらに、拡大光学系または縮小光学系を配置してもよい。

【0236】
図44は、本実施形態のデジタルホログラフィ装置8の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置8は、記録装置45と再生装置11とを備える。記録装置45は、被写体13の手前に、対物レンズおよびレンズ等を含む拡大光学系MGを備える。これにより、小さい被写体13のホログラムを得ることができる。拡大光学系MGとして、共焦点光学系、凸レンズと凹レンズとの組み合わせ、または、その他の既存の拡大光学系を利用することができる。

【0237】
なお、拡大光学系の代わりに縮小光学系を配置してもよい。この場合、人体、機械装置、電子機器、車両のボディ等の大きな物体のホログラムを得ることもできる。

【0238】
〔ソフトウェアによる実現例〕
再生装置11は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。

【0239】
後者の場合、再生装置11は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。

【0240】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明は、デジタルホログラフィ装置、ハイスピード3Dカメラ、および蛍光3次元顕微鏡等に利用することができる。
【符号の説明】
【0242】
1~8 デジタルホログラフィ装置
10、14、15、21~27、31~35、41~45 記録装置
11 再生装置
12 撮像装置
12a 画素
13 被写体(物体)
AA 開口アレイAA
GR 回折格子
LS1~LS4 レーザ光源
LS5 光源
LA1、LA2 光路調整素子
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
11
(In Japanese)【図13】
12
(In Japanese)【図14】
13
(In Japanese)【図15】
14
(In Japanese)【図16】
15
(In Japanese)【図17】
16
(In Japanese)【図18】
17
(In Japanese)【図19】
18
(In Japanese)【図20】
19
(In Japanese)【図21】
20
(In Japanese)【図22】
21
(In Japanese)【図23】
22
(In Japanese)【図24】
23
(In Japanese)【図25】
24
(In Japanese)【図26】
25
(In Japanese)【図27】
26
(In Japanese)【図28】
27
(In Japanese)【図29】
28
(In Japanese)【図30】
29
(In Japanese)【図31】
30
(In Japanese)【図32】
31
(In Japanese)【図33】
32
(In Japanese)【図34】
33
(In Japanese)【図35】
34
(In Japanese)【図36】
35
(In Japanese)【図37】
36
(In Japanese)【図38】
37
(In Japanese)【図39】
38
(In Japanese)【図40】
39
(In Japanese)【図41】
40
(In Japanese)【図42】
41
(In Japanese)【図43】
42
(In Japanese)【図44】
43