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Specification :(In Japanese)偏波解析装置、偏波解析方法、物性測定装置、及び物性測定方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6040162
Date of registration Nov 11, 2016
Date of issue Dec 7, 2016
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)偏波解析装置、偏波解析方法、物性測定装置、及び物性測定方法
IPC (International Patent Classification) G01N  21/21        (2006.01)
G01J   4/04        (2006.01)
FI (File Index) G01N 21/21 Z
G01J 4/04 Z
Number of claims or invention 20
Total pages 36
Application Number P2013-545840
Date of filing Oct 9, 2012
International application number PCT/JP2012/076146
International publication number WO2013/077097
Date of international publication May 30, 2013
Application number of the priority 2011258104
Priority date Nov 25, 2011
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Oct 1, 2015
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】渡邉 紳一
【氏名】安松 直弥
Representative (In Japanese)【識別番号】100107766、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠重
【識別番号】100070150、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠彦
Examiner (In Japanese)【審査官】森口 正治
Document or reference (In Japanese)特開平6-249780(JP,A)
特開2005-129732(JP,A)
特開2006-177716(JP,A)
特開2010-263021(JP,A)
特開2011-180568(JP,A)
Field of search G01N 21/00-21/958
G01J 4/04
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
電磁波を発生する電磁波発生源と、
電気光学効果を有する非線形光学結晶と、
前記結晶を角周波数ωで前記電磁波の入射に対して相対的に回転させる回転機構と、
前記電磁波による前記結晶の照射と同期して、当該結晶にプローブ光パルスを入射する光学系と、
前記結晶を透過したプローブ光パルスの互いに直交する光成分の強度差信号を検出する検出器と、
前記強度差信号からω成分と3ω成分の少なくとも一方を抽出し、前記抽出したω成分及び/または3ω成分に基づいて前記電磁波の偏波方向と電場振幅を決定する解析部と、
を有する偏波解析装置。
【請求項2】
前記解析部は、
ΔI=C・E・[(1/2)cos(ωt+φ)+(3/2)cos(3ωt-φ)]
に基づいて前記電磁波のω成分および/または3ω成分の位相情報と振幅情報を取得し、取得した位相情報と振幅情報に基づいて前記偏波方向と電場振幅を決定することを特徴とする請求項1に記載の偏波解析装置、
ここで、Cは係数、Eは前記電磁波の電場振幅である。
【請求項3】
前記回転機構の角周波数は、前記結晶が1回転する間に前記結晶上に奇数個のデータ点が得られるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の偏波解析装置。
【請求項4】
前記結晶上への前記電磁波の照射を所定の周波数でオン・オフする光学チョッパーと、
前記結晶の連続する2回の回転において、前記結晶上の同じ角度位置のデータ点で得られる2つの差分信号の差をとって新たな差分信号を算出する演算部と、
をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の偏波解析装置。
【請求項5】
前記光学チョッパーの周波数をf1、前記結晶の回転周波数をf2、前記結晶上のデータ点の数をn(nは奇数)としたときに、
f1=(n/2)・f2
を満たすことを特徴とする請求項4に記載の偏波解析装置。
【請求項6】
円偏光または楕円偏光の電磁波を発生する電磁波発生源と、
電気光学効果を有する非線形光学結晶と、
前記結晶を角周波数ωで前記電磁波の入射に対して相対的に回転させる回転機構と、
前記電磁波による前記結晶の照射と同期して、当該結晶にプローブ光パルスを入射する第1光学系と、
前記電磁波発生源と前記結晶の間で試料を保持する試料台と、
前記電磁波を前記試料に導き、前記試料で反射した反射電磁波を前記結晶に導く第2光学系と、
前記結晶を透過したプローブ光パルスの互いに直交する光成分の強度差信号を検出する検出器と、
前記強度差信号からω成分と3ω成分の少なくとも一方を抽出し、抽出したω成分及び/または3ω成分に基づいて前記円偏光の電磁波の偏波角度を決定する偏波解析部と、
あらかじめ取得した、前記電磁波の前記結晶におけるプローブ光パルス入射時の偏光角度と試料特性との1対1対応の関係を示す対応情報を格納する対応情報格納部と、
前記偏波解析部で決定された前記反射電磁波の偏波角度と、前記対応情報とに基づいて前記試料の特性を決定する試料解析部と、
を含むことを特徴とする物性測定装置。
【請求項7】
前記第1光学系は、光学遅延素子を有する遅延ステージをさらに含み、前記遅延ステージは、前記対応情報をあらかじめ取得する際に駆動されることを特徴とする請求項6に記載の物性測定装置。
【請求項8】
前記試料を保持する試料台は、前記対応情報をあらかじめ取得する際にz方向に駆動されることを特徴とする請求項6に記載の物性測定装置。
【請求項9】
前記電磁波発生源は、光パルスの印加により電磁波を発生する電磁波発生用の非線形光学結晶と、前記電磁発生用の非線形光学結晶で発生した電磁波を円偏光または楕円偏光の光にする光学素子を含むことを特徴とする請求項6に記載の物性測定装置。
【請求項10】
前記試料の特性は、試料の表面形状であり、
前記対応情報は、前記試料の表面位置と前記電磁波の偏波角度との1対1対応の関係を示す情報であることを特徴とする請求項6に記載の物性測定装置。
【請求項11】
電気光学効果を有する非線形光学結晶を電磁波で照射するとともに、前記結晶を角周波数ωで前記照射電磁波に対して相対的に回転させ、
前記電磁波の照射と同期して前記結晶にプローブ光パルスを入射し、
前記結晶を透過したプローブ光パルスの互いに直交する光成分の強度差信号を検出し、
前記強度差信号からω成分と3ω成分の少なくとも一方を抽出し、前記抽出したω成分及び/または3ω成分に基づいて前記電磁波の偏波方向と電場振幅を決定する
ことを特徴とする偏波解析方法。
【請求項12】
前記決定工程は、
ΔI=C・E・[(1/2)cos(ωt+φ)+(3/2)cos(3ωt-φ)]
に基づいて前記電磁波のω成分および/または3ω成分の位相情報と振幅情報を取得し、取得した位相情報と振幅情報に基づいて前記偏波方向と電場振幅を決定することを特徴とする請求項11に記載の偏波解析方法、
ここで、Cは係数、Eは前記電磁波の電場振幅である。
【請求項13】
前記結晶の角周波数は、当該結晶が1回転する間に前記結晶上に奇数個のデータ点が得られるように設定されていることを特徴とする請求項11に記載の偏波解析方法。
【請求項14】
前記結晶上への前記電磁波の照射を所定の周波数でオン・オフ変調し、
前記結晶の連続する2回の回転において、前記結晶上の同じ角度位置のデータ点で得られる2つの差分信号の差をとって新たな差分信号を算出する、
工程をさらに含み、
前記決定工程は、前記新たな差分信号に基づいて抽出したω成分および/または3ω成分に基づいて前記電磁波の偏波方向と電場振幅を決定することを特徴とする請求項13に記載の偏波解析方法。
【請求項15】
前記オン・オフ変調の周波数をf1、前記結晶の回転周波数をf2、前記結晶上のデータ点の数をn(nは奇数)としたときに、
f1=(n/2)・f2
を満たすことを特徴とする請求項14に記載の偏波解析方法。
【請求項16】
特定の物質について、当該物質を照射する円偏光または楕円偏光の電磁波の、検出用の非線形光学結晶におけるプローブ光パルス入射時の偏光角度と、前記物質の特性との1対1の対応関係を示す対応情報をあらかじめ取得して格納し、
前記円偏光または楕円偏光の電磁波で試料を照射し、前記試料表面で反射する反射電磁波を角周波数ωで回転する前記検出用の非線形光学結晶に入照し、
前記電気波による前記結晶の照射と同期して、前記検出用の非線形光学結晶にプローブ光パルスを入射し、
前記検出用の非線形光学結晶を透過したプローブ光パルスの互いに直交する光成分の強度差信号を検出し、
前記強度差信号からω成分と3ω成分の少なくとも一方を抽出し、抽出したω成分及び/または3ω成分に基づいて前記円偏光または楕円偏光の電磁波の偏波角度を決定し、
前記決定された偏波角度と前記対応情報とに基づいて前記試料の特性を決定する、ことを特徴とする物性測定方法。
【請求項17】
前記対応情報は、前記プローブ光パルスの光学パス上に配置された光学遅延素子を駆動して取得されることを特徴とする請求項16に記載の物性測定方法。
【請求項18】
前記対応情報は、前記試料を保持するステージをz軸方向に駆動しながら前記電磁波の偏波角度を測定することによって取得することを特徴とする請求項16に記載の物性測定
【請求項19】
前記円偏光または楕円偏光の電磁波は、電磁波発生用の非線形光学結晶に光パルスを印加して電磁波を発生し、発生した電磁波を1/4波長板に通して生成されることを特徴とする請求項16に記載の物性測定方法。
【請求項20】
前記試料の特性は、試料の表面形状であり、
前記対応情報は、前記試料の表面位置と前記電磁波の偏波角度との1対1対応の関係を示す情報として取得されることを特徴とする請求項16に記載の物性測定方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の偏光方向と電場振幅を高速かつ高精度に決定する偏波解析装置と偏波解析方法、およびこれを利用した物性測定の構成と手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の超短パルスレーザ技術の進歩により、これまで技術的に難しかったテラヘルツ帯域の光(電磁波)の発生、検出が可能になってきた。テラヘルツ波の発生、検出には、非線形光学結晶を用いる。具体的には、非線型光学結晶としてGaPやZnTeなどの閃亜鉛構造の結晶を用い、結晶に超短波パルスレーザ光を照射することでコヒーレントなテラヘルツ電磁波パルスを発生させる。テラヘルツ電磁波を物性測定に利用する場合は、発生させたテラヘルツ電磁波を被測定試料へ導き、透過波又は反射波を検出用の非線形光学結晶を通して検出することで、試料の特性を測定することができる。
【0003】
図1は、一般的な偏波方向解析装置1000を示す。図示しないレーザ光源から出射される超短パルスレーザ光をポンプ光パルスとして用い、偏光子P1、光学チョッパー1001を介して、非線形光学結晶S1を照射し、チョッパー1001の周波数ωで変調を受けたテラヘルツ電磁波パルスを発生させる。テラヘルツ電磁波パルスの偏波方向は、偏光子P1と結晶S1を適宜回転することで任意に設定することができる。テラヘルツ電磁波パルスをミラーM1によりビームカット素子Cへ導きポンプ光をカットする。素子Cを通過したビームを2つのワイヤーグリッド偏光子WG1とWG2を透過させ、WG2でテラヘルツ波検出の際の偏波方向依存性を消去する。一つ目のワイヤーグリッド偏光子WG1は、通常は手作業で回転され、45度と-45度という2つの直交する偏波方向の電場成分を切り出す。二つ目のワイヤーグリッド偏光子WG2は、0度あるいは90度に設定することで、切り出されたテラヘルツ電場の偏波方向を固定する。偏波方向が固定されたテラヘルツ電磁波を、ミラーM2を介して非線型光学結晶S2に照射する。
【0004】
テラヘルツ電磁波の照射と同期して、プローブ光パルスを偏光子(P2)を介して非線形光学結晶S2に入射する。非線型光学結晶S2にテラヘルツ電場が印加されると、電気光学効果により結晶S2に複屈折が生じ、結晶S2を通過するプローブ光の電場成分に強度差が生じる。この強度差はテラヘルツ電場の強度に比例するので(比例係数は既知)、検出器1010及びロックインアンプ1011で強度差を検出することによってテラヘルツ電場強度を見積もることができる。テラヘルツ電場はチョッパー1001の周波数ωで変調を受けているので精度よくロックイン検出ができる。
【0005】
電磁波の偏波方向を決定するのに、直交する2つの方向の電場成分が必要である。そのため、ワイヤーグリッド偏光子WG1を45度と-45度に設定したときの各々のテラヘルツ電場の時間波形データを取得し、解析する。時間波形データを取得するのに、一般に遅延ステージでプローブ光またはポンプ光パルスの入射タイミングをずらしながら電場強度を計測し、電場波形の全体が得られるまで異なる時刻での電場測定を続ける。
【0006】
テラヘルツ電磁波を利用して試料の表面凹凸を測定する場合は、試料にテラヘルツ電磁波を照射し、反射波が検出用の結晶に到達する到達時間の差から表面段差を求める。到達時間の差を求めるためにテラヘルツ電磁波のピーク値を示す時刻を特定する必要があり、測定点ごとに時間波形の測定が必要である。
【0007】
なお、テラヘルツ波検出に関し、閃亜鉛構造結晶の結晶方位角度とテラヘルツ電場偏波方向のなす角によってΔIの出力信号がどのように変化するかを関数で表した文献が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。この手法は、結晶方位の[001]方向とプローブ光パルスの偏光方向とを一致させるように結晶と偏光子の双方を同時に回転させる必要がある点や、決定できる偏波方向に位相πの不確定性が残る点で不利である。
【0008】
また、プローブ光パルスの偏光方向、閃亜鉛構造結晶の結晶方位角、およびテラヘルツ電場検出にかかわるすべての光学素子(1/4波長板、ウォラストンプリズムなど)の角度を任意の角度で回転させたときの、テラヘルツ電場の偏波方向に依存したΔIの出力信号強度の一般式の導出が知られている(たとえば、非特許文献2参照)。この方法は一般式の理論計算にとどまり実用には不向きである。
【0009】
さらに、閃亜鉛構造結晶の[001]軸とプローブ光パルスの偏光方向のなす角を0度と90度となるように検出用結晶を回転させ、2つの角度でのΔIの値をもとにテラヘルツ電磁波の偏波方向を決定する方法が提案されている(たとえば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】P.C.M. Planken et al., J. Opt. Soc. Am. B. Vol. 18, No. 3, 313-317 (2001).
【非特許文献2】N.C.J. van der valk, T. Wenchebach, and P.C.M. Planken, J. Opt. Soc. Am. B, Vol. 21, No.3 622-631 (2004)
【非特許文献3】R.Zhang et al. Appl. Opt. Vol. 47, 6422-6427 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の偏波方向解析と測定方法には以下の問題がある。まず、電界強度と偏波方向を同時に独立して取得することができない。また、偏波方向を決定するのに、ワイヤーグリッド偏光子WG1の回転位置45度と-45度のそれぞれについてテラヘルツ電磁波の時間波形を計測する必要がある。すなわち、遅延ステージを2回動かしてスキャンする時間が必要である。物質表面の凹凸測定を行なう場合は、測定ポイントごとに遅延ステージをスキャンして時間波形を取得する必要がある。さらに、WG偏光子は2インチ以上(高精度品は4インチ程度)の大きな素子であり、回転させるには大きなトルクを必要とし、通常は手作業でWG偏光子を回転させている。また、WG偏光子は高価な部品である。金属打ち抜き法による比較的安価なWG偏光子では、使用できる帯域幅が1THz以下に限られている。また、消光比(通したい偏波方向の光の透過率に対する、それと直交する偏波方向の光の透過率の比)が大きくならず高精度の偏波分析ができない。
【0012】
これらの問題点に鑑み、本発明は、簡単な構成で電磁波の偏波方向と電場振幅を同時、かつ互いに独立して、高速、高精度に決定することのできる偏波解析装置と方法を提供することを課題とする。
【0013】
また、上記の偏波方向の決定を利用した物性測定装置と物性測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様として、偏波解析装置を提供する。偏波解析装置は、電磁波を発生する電磁波発生源、電気光学効果を有する非線形光学結晶、前記結晶を角周波数ωで前記電磁波の入射に対して相対的に回転させる回転機構、前記電磁波による結晶の照射と同期して結晶にプローブ光パルスを入射する光学系、前記結晶を透過したプローブ光パルスの互いに直交する光成分の強度差信号を検出する検出器、および前記強度差信号からω成分と3ω成分の少なくとも一方を抽出し、前記抽出したω成分及び/または3ω成分に基づいて前記電磁波の偏波方向と電場振幅を決定する解析部、を有する。
【0015】
これにより、特定の角周波数成分から高速、高精度に偏波方向と電場振幅を決定することができる。
【0016】
良好な構成例では、解析部は、
ΔI=C・E・[(1/2)cos(ωt+φ)+(3/2)cos(3ωt-φ)]
に基づいて電磁波のω成分および/または3ω成分の位相情報と振幅情報を取得し、取得した位相情報と振幅情報に基づいて偏波方向と電場振幅を決定する。ここで、Cは係数、Eは電磁波の電場振幅である。
【0017】
これにより、検出された差分信号から位相情報と振幅情報を瞬時に、かつ互いに独立して取り出すことができる。
【0018】
また、良好な構成例として、回転機構の角周波数は、前記結晶が1回転する間に結晶上に奇数個のデータ点が得られるように設定されている。この構成により、ノイズを効果的に除去することができる。
【0019】
本発明の第2の態様として、上記の偏波解析を利用した物性測定装置を提供する。物性測定装置は、電磁波発生源、試料を保持する試料台、検出用の非線形光学結晶、結晶を角周波数ωで前記電磁波の入射に対して相対的に回転させる回転機構、電磁波と同期して結晶にプローブ光パルスを入射する光学系、検出器、偏波解析部、対応情報格納部、試料解析部を有する。
【0020】
電磁波発生源は円偏光または楕円偏光の電磁波を発生し、試料を照射する。検出用の結晶は、試料からの反射電磁波を検出する。検出器は、結晶を透過したプローブ光パルスの互いに直交する光成分の強度差信号を検出する。偏波解析部は、検出された強度差信号から、ω成分と3ω成分の少なくとも一方を抽出し、抽出したω成分及び/または3ω成分に基づいて前記円偏光または楕円偏光の電磁波の偏波角度を決定する。偏波角度-特性対応情報格納部は、特定の物質についてあらかじめ取得した円偏光または楕円偏光の電磁波の偏光角度(検出用の結晶におけるプローブ光パルス入射時の電磁波の偏光角度)と前記物質の特性との1対1の対応関係を示す対応情報を格納しておく。試料解析部は、偏波解析部で決定された電磁波の偏波角度と対応情報とに基づいて、試料の特性を決定する。
【0021】
この構成により、測定ごとの電場波形スキャンが不要になり、測定された偏波方向からただちに試料の特性を計測することができる。
【発明の効果】
【0022】
高速かつ高精度に偏波方向を測定することができる。高価なWG偏光子を使用する必要がない。広い帯域にかけて電磁波の偏光方向を高速、高精度に決定することができる。この偏波方向測定を利用した物性測定では、毎回電場の時間波形を取得しなくても、検出された偏波方向から直接試料の特性を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の一般的な偏波方向解析装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態の偏波解析装置の概略構成図である。
【図3】図2の検出光学系の概略図である。
【図4】電気光学サンプリングの原理を説明するための図である。
【図5】図2の検出光学系の斜視図である。
【図6】モータ回転される非線型光学結晶の座標系を示す図である。
【図7】第1実施形態の装置と手法により取得されるデータ値と、これに対応する関数式を示すグラフである。
【図8】測定データの振幅フーリエ成分を示す図である。
【図9】測定データの位相フーリエ成分を示す図である。
【図10】測定データから直接偏光角度を導くことを示す図である。
【図11】偏波方向解析方法を示すフローチャートである。
【図12】第1実施形態の効果を示すグラフである。
【図13】第1実施形態の効果を示すグラフであり、電場振幅と偏波方向を互いに独立かつ安定して計測できることを示す図である。
【図14】第2実施形態の偏波解析装置の概略構成図である。
【図15】ノイズキャンセルの説明図である。
【図16】第3実施形態の測定装置の概略構成図である。
【図17】一般的な表面段差測定の概念図である。
【図18】光学遅延ステージによる電磁波スペクトル測定の概念図である。
【図19】測定用電磁波の偏光角度と試料表面段差の関係を説明する図である。
【図20】測定用電磁波の偏光角度と試料表面段差の関係を説明する図である。
【図21】第3実施形態の測定方法を示すフローチャートである。
【図22】実施例3の表面段差と偏光角度との対応関係取得の模式図である。
【図23】偏光角度とz方向深さ位置との対応関係の計測結果である。
【図24】実施形態の測定装置を用いてサンプルを測定した測定結果を示す図である。
【図25】各測定点での積算回数N=1のときの取得データである。
【図26】実施形態の測定装置による計測結果を比較例と比較して示す表である。
【図27】1μmの深さ分解能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下で、図面を参照して発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態の偏波解析装置10の概略構成図である。偏波解析装置10の特徴は、検出用の非線型光学結晶(S2)16を角速度ωで高速回転し、検出される強度差信号ΔIからωと3ωの少なくとも一方の角周波数成分を抽出して、照射電磁波の電場振幅強度Eaと偏波方向γを同時、かつ互いに独立して求める点にある。また、従来構成と比較して2枚のワイヤーグリッド(WG)偏光子と光学チョッパーを不要にし、構成を簡素化した点にも特徴がある。

【0025】
偏波解析装置10は、非線形光学結晶(S2)16と、非線形光学結晶16を角速度ωで回転するモータ17と、非線形光学結晶16を照射する電磁波を生成する電磁波発生源19と、角速度ωで回転される非線形光学結晶16にプローブ光パルスを入射する光学系29を含む。また、非線形光学結晶16を通過したプローブ光の直交する2つの成分の強度差信号ΔIを検出する検出器20と、検出された強度差信号を周波数解析してω成分と3ω成分の少なくとも一方を抽出し、ω成分及び/又は3ω成分に基づいて電磁波の偏波方向と電界振幅とを決定する偏波解析部21を含む。

【0026】
非線形光学結晶16は、電場の印加により屈折率が異方性となる電気光学結晶である。たとえば、非線形光学結晶16は閃亜鉛構造結晶であり、GaP、ZnTe等を用いることができる。図2の例では、結晶方位面が(110)面のGaP結晶を用いる。GaP結晶16は図示しないフレームに保持され、フレームはモータ17に接続される。モータ17の回転により、フレームに保持されたGaP結晶16が角速度ωで回転する。

【0027】
電磁波発生源19は、図2の例ではテラヘルツ電磁波発生源である。図示しないレーザから出射されるポンプ光パルス(フェムト秒光パルス)を、偏光子(P1)11を介してZnTeなどの非線形光学結晶(S1)12に入射することによって、テラヘルツ電磁波パルスを発生させる。発生したテラヘルツ電磁波は、ミラー(M1)13、ビームカット素子(C)14、ミラー(M2)15を介して検出用の非線形光学結晶16に導かれる。

【0028】
他方、プローブ光パルスは、偏光子(P2)18および反射ミラーM3を含む光学系29により、テラヘルツ電磁波の照射と同期して検出用の非線形光学結晶16に導かれる。プローブ光パルスは、ポンプ光パルスを生成するレーザビームの一部を分岐して用いてもよい。

【0029】
非線形光学結晶16を透過したプローブ光パルスは、検出器20で検出される。プローブ光パルスは、非線形光学結晶16の電気光学効果を利用した電気光学サンプリングにより検出される。電気光学サンプリングについて、図3~5を参照して説明する。

【0030】
図3は、図2の検出系Aの構成を示す概略図である。偏光子(P2)18で直線偏光とされたプローブ光パルスは、(110)面を有するGaP結晶16に入射する。GaP結晶16を透過したプローブ光パルスを1/4波長板22に入射させて円偏光とし、ウォラストンプリズム(WP)23を用いて2つの互いに直交する直線偏光のビームに分離する。分離した光ビーム(信号強度I1とI2)をそれぞれ光検出フォトダイオードD1、D2で検出して、電流に変換する。D1、D2で発生した電流の差分を電流/電圧増幅器(不図示)で電圧に変換することで、差分信号ΔI(ΔI=I1-I2)を電圧信号として取り出すことができる。

【0031】
図4は電気光学サンプリングの概念図、図5は図3の検出系の斜視図である。図4(A)に示すように、GaP結晶16にテラヘルツ電場が印加されていないときは、プローブ光LBは直線偏光を維持したままGaP結晶16を透過する。

【0032】
このとき、図5に示すように、GaP結晶の透過光が、実験室系の基準軸(プローブ光パルスの電界Ebの方向に一致)に対してπ/4だけc軸(光学素子固有の軸)が傾いた状態の1/4波長板22を透過すると、プローブ光は円偏光となる。円偏光の光をウォラストンプリズム23でx成分とy成分に分離すると、いずれの方向の強度も同じであるからI1=I2となり、出力信号(差分信号ΔI)はゼロになる。

【0033】
他方、図4(B)のように、電気光学効果を有するGaP結晶16に電場ETHzが印加されると、結晶の屈折率が変化して屈折率異方性となる(ポッケルス効果)。このため、GaP結晶16を透過したプローブ光は入射前の偏光状態を維持することができず、1/4波長板22を透過した光は楕円偏光となる。この場合、x成分とy成分の大きさ(の二乗)の差はゼロでなくなる。検出器20のフォトダイオードD1、D2で検出される強度に差が生じ、テラヘルツ電場に比例した差分信号ΔIが得られる。なお、図5において、U3はプローブ光の伝搬方向でありGaP結晶16の(110)面に対して垂直な軸、U1とU2は(110)面内での高屈折率方向と低屈折率方向を示す。

【0034】
図6(A)および図6(B)は、第1実施形態で使用する座標系を示す図である。水平軸xと垂直軸yは実験室系の軸であり、プローブ光の偏波方向で決まる軸である。プローブ光の電場偏波方向Ebはx軸と一致する。x軸とテラヘルツ電場の偏波方向ETHzがなす角をγ、x軸とGaP結晶16の[-110]方位軸となす角をβとする。GaP結晶16はモータ17によって角速度ωで回転されるため、角度βはωtで変化する。なお、図6では単純化のため、時刻t=0でのGaP結晶16の[-110]方位軸はx軸に一致しているものとする。図6(B)は、図6(A)の座標系に屈折率軸U1、U2を加えたものであり、テラヘルツ電場の印加による屈折率異方性を示している。

【0035】
今、計測したいパラメータは、プローブ光パルスの偏波方向Ebに対するテラヘルツ電場の偏波方向γと、テラヘルツ電場の振幅(ETHzの大きさに比例)である。

【0036】
本願の発明者らは、角度βをβ=ωtを満たすように時々刻々と変化させると、検出器20の差分出力信号ΔIは、以下の式(0)にしたがって時間の関数として変化することを見出した。

【0037】
【数1】
JP0006040162B2_000002t.gif

ここで、Iはプローブ光パルスの強度、Ωはプローブ光パルスの角周波数、nとrはそれぞれプローブ光パルスの波長におけるGaP結晶16の屈折率と非線形光学定数、dはGaP結晶16の厚さ、cは光速であり、すべて既知の値である。厳密には位相整合条件を加味する必要があるため若干の修正が必要とされるが、dの値が小さい結晶を用いれば、その効果を無視することができる。したがって、(I・Ω・n3・r・d/2c)を係数Cとおくことができる。式(0)の導出については、後述する。

【0038】
式(0)の位相情報φは、図6のテラヘルツ電場の偏波方向γを表している。また、振幅信号はETHzに比例するので、適切な比例係数をかけることでテラヘルツ電場強度の絶対値を取り出すことができる。式(0)を用いることで、検出器20の出力ΔIから角周波数ωおよび/または3ωで振動する成分を抜き出し、その振幅と位相の情報を得ることによってテラヘルツ電場の偏波方向と振幅を瞬時に、かつそれぞれ独立して計測することが可能になる。
【実施例1】
【0039】
以下で、実際に行なった検証実験を示す。図3の装置を実際に組み立て、94.73Hzで回転するモータ17を用いてGaP結晶16を回転させた。回転するGaP結晶にテラヘルツ電磁波を照射し、これと同期して、プローブ光パルスをGaP結晶16に入射した。ポンプ光パルスとプローブ光パルスの発生に用いたレーザは、パルス幅150フェムト秒、繰り返し周波数1.042KHzレーザである。
【実施例1】
【0040】
モータ17の回転を94.73Hzに設定することで、回転するGaP結晶16上に11個のデータ点が設定される。すなわち、GaP結晶16が1回転(360°)する間に結晶16上に11回テラヘルツ電磁波が照射され、11個のデータ点でΔIを取得する。データ点の数は11個に限定されず任意の数を設定することができる。第2実施形態と関連して後述するように、ノイズ除去の観点からは奇数個に設定されるのが望ましい。
【実施例1】
【0041】
図7(A)は、取得した連続する11個のデータ点(白丸)をプロットした図である。横軸はデータ点の番号(i)、縦軸は差分信号ΔIの強度である。データ点の数が11個の場合、データ点とデータ点の間の角度は360°/11=32.73°である。i番目のデータ点での結晶角度β(入射プローブ光の偏波方向Ebに対するGaP結晶の[-110]軸の角度β)は、
β=(i-1)×360°/11=(i-1)×2π/11[rad]
となる。
【実施例1】
【0042】
11個のデータ点は、式(1)で表すことができる。
【実施例1】
【0043】
【数2】
JP0006040162B2_000003t.gif
図7(A)の点線は、式(1)について以下のパラメータを用いて描いたものである。
【実施例1】
【0044】
【数3】
JP0006040162B2_000004t.gif
測定データは式(1)を非常によく再現している。図7(B)は、式(1)の右辺の2つの項を分解してプロットした図である。
【実施例1】
【0045】
【数4】
JP0006040162B2_000005t.gif
図7(B)からわかるように、3ω成分(曲線B)の最大振幅はω成分(曲線A)の最大振幅の3倍であり、3倍の速さで時間変化する。AとBを合波すると図7(A)の波形になる。
【実施例1】
【0046】
図8は、図7(A)の11個のデータ点をフーリエ解析し、β、2β、3β、4β、5β、6βの周波数成分に対する振幅フーリエ成分を取り出した結果を示す。βと3βに振幅が現れ、2β、4β、5β、6βの振幅フーリエ成分はほぼゼロである。3βの振幅フーリエ成分は、βの振幅フーリエ成分の3倍である。なお、2β、4β、5β、6βの振幅フーリエ成分が完全にゼロでないのは、検出器20の線形性に若干のエラー(非線形性)が存在するためである。
【実施例1】
【0047】
式(1)で示したω成分と3ω成分の
【実施例1】
【0048】
【数5】
JP0006040162B2_000006t.gif
は、それぞれ以下の量を表している。
【実施例1】
【0049】
【数6】
JP0006040162B2_000007t.gif
ここでβ0は結晶の初期角度、γは求めたい偏光角度(図6の座標系のETHzの偏光角γ)、n1、n2は任意の整数である。図7では便宜上、初期角度β0をゼロとしていたが、実際にはセットアップ時に結晶がどの方向を向いているか(どの象限に[-110]方位軸があるか)わからないからである。
【実施例1】
【0050】
式(2)、(3)から、結晶の初期角度β0を決定する。今、我々はβ0の値がラフに45°と135°の間にあることを知っているとする。すなわち、GaP結晶の[-110]結晶方位軸がプローブ光パルスの偏光方向(x軸)に対して90°近傍の位置にあるとする(β0=90±45°)。この場合、初期角度β0は式(4)で表すことができる。
【実施例1】
【0051】
【数7】
JP0006040162B2_000008t.gif
ただし、0≦Δβ≦π/2。このとき、式(2)と式(3)を足すと以下の式が得られる。
【実施例1】
【0052】
【数8】
JP0006040162B2_000009t.gif
したがって、式(5)を用いてΔβの値を算出することができる。
【実施例1】
【0053】
【数9】
JP0006040162B2_000010t.gif
±45°の範囲で当初の結晶の向きをラフに知ることができれば、上述した要領で式を簡単に作ることができ、Δβの値を正確に知ることができる。
【実施例1】
【0054】
実施例1の場合、図7のグラフで用いたパラメータ(数3)によると、
【実施例1】
【0055】
【数10】
JP0006040162B2_000011t.gif
あるから、式(5)の3番目の式が適用され、Δβ=150.2°-135°=15.2°が求められる。初期角度β0は、式(4)からβ0=45°+15.2°=60.2°である。
【実施例1】
【0056】
以上の値を式(2)、(3)に代入すると、式(2)'、(3)'のように変形できる。
【実施例1】
【0057】
【数11】
JP0006040162B2_000012t.gif
γの範囲は0°<γ<360°である必要があるから、式(2)'、(3)'のn1、n2の値は、それぞれ0、1でなければならない。したがって、
【実施例1】
【0058】
【数12】
JP0006040162B2_000013t.gif
となり、式(2)''と式(3)''のいずれを用いてもγ=186.5°であることがわかる。
【実施例1】
【0059】
図9および図10は、上述した解き方をグラフを用いて説明する図である。まず、式(5)からβ0=60.2°であることが解けた。したがって、式(2)''から、
【実施例1】
【0060】
【数13】
JP0006040162B2_000014t.gif
によりγを導出する。これは図9のω成分における濃いグレイの棒線(246.7°)から淡い灰色の棒線(60.2°)を引き算することに相当する(246°-60.2°=186.5°)。
【実施例1】
【0061】
一方、3β0=180.6°であるから、式(3)'でn2=0としてしまうと、
【実施例1】
【0062】
【数14】
JP0006040162B2_000015t.gif
となり、負となってしまう。従って、360°を足して、
【実施例1】
【0063】
【数15】
JP0006040162B2_000016t.gif
を計算すればよい。これは図9の3ω成分における白い棒線(3β0+360°=540.6°)から濃いグレーの棒線(354.1°)を引き算することに相当する(540.6°-354.1°=186.5°)。
【実施例1】
【0064】
図10は、上記の計算結果を示すものである。当然であるが、式(2)''を用いても、式(3)''を用いても、γ=186.5°を導くことができる。
【実施例1】
【0065】
なお、測定装置の関係で初期角度β0の推定ができない場合は、偏光角度の決定に90°の任意性が残る。その場合は、以下の方法で初期角度の任意性を消去することができる。
【実施例1】
【0066】
まず、縦偏光か横偏光かおおよそ分かっている電磁波発生源を用意する。たとえば、光パスの途中に縦偏光か横偏光かを見分けることのできる偏光子をおく。一例として、シリコン基板を斜めに(テラヘルツ電磁波の伝搬方向に対して45°の角度で)配置すると縦偏光と横偏光の透過率が変化することを利用して、縦偏光か横偏光かを見分けることができる。そして上記の方法で既知の(垂直方向か水平方向かの)偏光をもった光の偏光角度を決定する。このときに縦偏光であるにもかかわらずγ=186.5°という横偏光の値が出てきた場合には、β0の決定に90°のエラーがあると判定できる。したがって、新たにβ0=(60.2+90)°と置きなおして、以降の実験を継続すればよい。
【実施例1】
【0067】
この方法は、90°の任意性を180°の任意性に抑えることができる。180°の任意性では、例えば横方向(水平方向)の電場ベクトルが「右を指しているか」、「左を指しているか」という不定性は残るが、実用上は左右方向の不定性が問題になることはほとんどないので問題はないと考えられる。
【実施例1】
【0068】
図11は、第1実施形態による偏波方向解析方法を示すフローチャートである。ステップS101で、検出用の非線形光学結晶を角周波数ωで回転する。ステップS103で、非線形光学結晶に測定対象の電磁波を照射し、これと同期してプローブ光を入照する。ステップS105で、結晶を透過した光ビームを互いに直交する成分に分離して差分信号(強度差)ΔIを検出する。ステップS107で差分信号ΔIを周波数解析して、角周波数ω成分と3ω成分を抽出する。この処理は式(1)で表され、式(0)と等値である。ステップS107で、照射電磁波の振幅成分と位相成分を取得して、偏波方向と電場振幅とを算出する。ω、3ωのいずれの位相情報からも偏波方向γを求めることができる。また、ω、3ω成分の振幅情報に適切な既知の係数を乗算することで、電磁波の電場強度の絶対値を取り出すことができる。
【実施例1】
【0069】
図12と図13は、第1実施形態の効果を示す図である。図12は上述した方法で偏波方向γを測定したときの平均値からの偏差分布を示すグラフである。1回の測定を22ミリ秒とし、10000回測定を繰り返した(N=10000)。測定結果はガウス分布を示し、平均値75.00°からの偏差σはわずか0.56°である。標準誤差はσ/N1/2で表されるので、±0.0056°の精度である。
【実施例1】
【0070】
図13は第1実施形態の測定手法の安定性を示すグラフである。図13の上段は電場振幅、下段は偏波方向の平均値からの偏差を示す。これら2つの結果は42秒の範囲で1000個の測定点から、それぞれ独立して同時に得られたものである。上段の測定では、近赤外レーザパルスの円形減光フィルタを手動で回転して、わざとテラヘルツ電場の振幅Eaを±25%の範囲で変化させ最大振幅で正規化した。
【実施例1】
【0071】
下段の測定では、同一測定期間内でのテラヘルツ偏波方向γ(プローブ光の偏波方向に対するテラヘルツ電場の偏波方向)のばらつきを取得した。1000個の測定点での平均値75.00°からの偏差を表す。この測定結果から、電場振幅の変化にもかかわらず、偏波方向γの測定ばらつきは非常に小さく、電波振幅に依存せずに安定して偏波方向が得られることがわかる。
【実施例1】
【0072】
以上のように、第1実施形態の装置および方法を用いることで、一対のワイヤグリッド偏光子を用いる従来方法や、結晶を2つの直交する方向に手作業で回転する手法と比較して、以下の効果が得られる。
【実施例1】
【0073】
第1に、1スキャンで高速(22ミリ秒以内)かつ高精度(1度以下)に偏波方向と電場強度をリアルタイム測定することができる。第2に、光学素子の偏光方向を正確に設定しなくても、プローブ光の偏波方向に対する照射電磁波の絶対偏波方向を決定することができる。第3に、1回の測定で電場振幅と偏波情報を別々に取得可能であり、かつ偏波情報は振幅変動の影響から独立している。第4に、装置構成が簡素化される。

<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態の装置および方法にノイズ除去機能を追加する。図14は、第2実施形態の偏波解析装置50の概略図である。図3の偏波解析装置10と同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0074】
図14の偏波解析装置50は、電磁波発生源19の偏光子(P1)11の前段に挿入された光学チョッパー51と、ノイズ除去演算部53を有する。光学チョッパー51とノイズ除去演算部53は、偏波方向を検出する際に現れるノイズを効果的に除去するために用いられる。
【実施例1】
【0075】
偏波解析装置50に生じるノイズは、検出用の(110)閃亜鉛構造結晶(第2実施形態ではGaP結晶)16におけるプローブ光の散乱等に起因する。ノイズは、測定対象の照射電磁波が存在しなくても現れ、GaP結晶16を回転させたときの各時刻における角度の関数として周期的に変化する。
【実施例1】
【0076】
光学チョッパー51は、発生する電磁波を周波数f1で変調する。変調周波数f1は、検出用のGaP結晶16の回転周波数をf2としたときに、次の関係を満たすように設定される。
【実施例1】
【0077】
f1=(n/2)×f2 (6)
ここで、nは奇数であり、回転するGaP結晶16上のデータ点の数である。
【実施例1】
【0078】
図15は、光学チョッパー51を用いたノイズキャンセルの原理を説明するための図である。この例では、n=5の場合、すなわち、結晶16上の照射点(データ点)の数が5個の場合を示す。
【実施例1】
【0079】
f1=(5/2)×f2 (7)
横軸は時間軸、jは電磁波の照射パルス番号である。発生電磁波は、光学チョッパー51によって時間軸に沿って周波数f1でON/OFFされる。他方、周波数f2で回転するGaP結晶16は、発生電磁波のON/OFF周期の2.5倍で一回転するように設計されている。
【実施例1】
【0080】
図15の一回転目において、0~72°の角度範囲(初期角度から5分周した角度)で、発生電磁波はONとなっている。二回転目の同じ0~72°の角度範囲では、発生電磁波はOFFとなっている。従って、一回転目のデータから二回転目のデータを差し引くことで、一回転目と二回転目に共通して存在するノイズが差し引かれ、求めたい電磁波信号だけが残る。
【実施例1】
【0081】
引き続く72~144°の角度範囲では、一回転目で発生電磁波がOFFであり、二回転目で発生電磁波はONである。この場合は、二回目のデータから一回転目のデータを差し引く。この処理を360°回転するまで繰り返して、ノイズを除去したデータ列を取得する。
【実施例1】
【0082】
データ点の数nを奇数に設定する理由は、連続する二回の回転を1セットとしたときに、同じ角度領域でかならずONとOFFになるようにするためである。この数値処理を数式で表すと、以下のようになる(n=5の例)。
【実施例1】
【0083】
【数16】
JP0006040162B2_000017t.gif
ここで、ΔI(j)はj番目に取得した差分信号ΔIであり、ΔI'(j)はON/OFF処理でノイズを差し引いて得られた新しいデータ列である。
【実施例1】
【0084】
ノイズ除去演算部53は、検出器52で検出された差分信号ΔIに基づいて数16の処理を行なう。ノイズ除去処理で得られたΔI'(j)を以降の周波数解析(ω成分と3ω成分の抽出)に用いることで、照射電磁波の偏波方向と電場振幅をより正確に測定することができる。
【実施例1】
【0085】
なお、図14では、ノイズ除去演算部53は、検出器52と解析部21の間に挿入されているが、検出器52と一体的に構成されてもよいし、解析部21と一体的に構成されてもよい。或いは、外部の演算装置を用いてもよい。
【実施例2】
【0086】
実際の検証例を説明する。GaP結晶16上に11個のデータ点を設定する。レーザシステムの繰り返し周波数は1.042 kHzである。これを、電気回路を用いて11分周することで
f2=94.73 Hz
とする。モータ17の角速度ωはこのf2値になるように制御される。光学チョッパー51の周波数f1は、式(6)から、
f1=(11/2)×94.73 Hz=521 Hz
である。この設定により、1.042 kHzのレーザパルスで生成されたテラヘルツ電磁波は、360°を11等分した角度でGaP結晶16に当たる。
【実施例2】
【0087】
検出器52のノイズ除去演算部53は、22個のデータ点(二回転分のデータ点)を用いて、11個の新しいデータ列を生成する。
【実施例2】
【0088】
【数17】
JP0006040162B2_000018t.gif
偏波解析部21は、得られたΔI'(j)データ列の成分を周波数解析してω成分と3ω成分を抽出し、電磁波の偏波方向(偏光角度)と電場振幅を決定する。これにより、ノイズを効果的に抑制した偏波方向、電場振幅の決定が可能になる。
【実施例2】
【0089】
第1実施形態および第2実施形態の手法は、偏波方向決定精度が非常に高いことから、微小カー回転角測定(またはファラデー回転角測定)による高精度光磁気計測や、複屈折による偏光回転を利用した微小応力歪み検出、生体分子の高精度円二色性スペクトル計測への応用が可能になる。電磁波の照射により試料の特性を測定する場合は、表面形状、応力、磁性等の内部状態、生体分子の構造など多様な特性測定に適用できる。

<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態または第2実施形態の偏波解析装置を用いて、物質の特性を高い分解能で測定する。第3実施形態では、物質特性の一例として試料の表面段差(凹凸)を決定する。この例では、試料に円偏光または楕円偏光の電磁波を照射して、試料からの反射電磁波の偏波方向から直接、試料の特性を測定する。
【実施例2】
【0090】
図16は、第3実施形態の物性測定装置100の概略図である。測定装置100は、レーザ101、試料130を保持するステージ131、電磁波発生用のZnTe結晶115、発生した電磁波を円偏光または楕円偏光にする光学素子111、試料130からの反射電磁波を検出する検出用のZnTe結晶116、ZnTe結晶116を角周波数ωで回転するモータ117、ZnTe結晶116に電磁波の照射と同期してプローブ光パルスLBを入射する光学系129を有する。ZnTe結晶115、116は閃亜鉛構造を有する結晶である。試料130は、電磁波発生用のZnTe結晶115と検出用のZnTe結晶116の間に位置する反射系に置かれている。
【実施例2】
【0091】
物性測定装置100はさらに、検出用のZnTe結晶116を透過するプローブ光の差分信号ΔIを検出する検出器152と、差分信号ΔIを周波数解析してω成分と3ω成分を抽出し検出電磁波の偏波方向を決定する偏波解析部121と、偏波解析部121の出力から試料130の特性を計測する試料解析部122を含む。試料解析部122は、特定の物質について、あらかじめ取得した偏波方向(偏光角度)と物質の特性との対応関係を示す情報を格納する偏光角度-特性対応情報格納部123と、測定された偏光角度と格納された対応情報とから試料の特性を決定する特性決定部124を有する。表面段差を計測する場合は、偏光角度と段差(表面深さ)との対応関係を予め取得して対応情報格納部123に格納しておく。ここで、あらかじめ取得される偏光角度は、円偏光(または楕円偏光)の電磁波の、検出用結晶116におけるプローブ光パルス入射時の偏光角度である。レーザ101の出射光はビームスプリッタ(BS)によって分岐され、一部はポンプ光パルスとして電磁波発生用のZnTe結晶115に導かれ、一部はプローブ光パルスとして検出用のZnTe結晶116に導かれる。
【実施例2】
【0092】
レーザ101、光学素子(GL、HWP、反射ミラーなど)、ZnTe結晶115、1/4波長板111で電磁波発生源を構成する。任意でノイズ除去用の光学チョッパー110を挿入してもよい。直線偏光子GL、1/2波長板HWPを通過したレーザパルスをZnTe結晶115に照射して電磁波を発生させる。図16の例では、テラヘルツ波を発生させ、発生した電磁波を1/4波長板111に通して円偏光にする。円偏光の電磁波は、パラボラミラー(PM1-PM3)を介して試料130に導かれる。試料130の表面で反射した電磁波は、パラボラミラー(PM4、PM5)を介して、検出用のZnTe結晶116に入射する。
【実施例2】
【0093】
他方、ビームスプリッタ(BS)で分岐されたプローブ光LBは、光学系129によって検出用のZnTe結晶116に導かれる。光学系129は、光学遅延素子106を有する遅延ステージDSを含む。この遅延ステージDSは、試料130の測定中は固定にしておくことができる。これは物性測定装置100の有利な特徴のひとつである。その理由を以下で説明する。
【実施例2】
【0094】
一般に、試料表面の深さの変化は、試料に直線偏波の光を照射し、試料からの反射光が検出されるまでの時間を計ることで測定されている。この様子を図17に示す。試料のA点とB点に距離dの段差がある場合、検出される電磁波の光路長にΔx=2dの差が生じる。これは時間差Δtとして検出される(Δx=cΔt; cは光速)。到達時間の変化Δtを測定するためには、電磁波の振幅がピーク値を示す時刻を決定する必要がある。そのため、図18に示すように、遅延ステージを駆動しなければならない。
【実施例2】
【0095】
図18において、光学遅延素子106の位置をΔx動かすことによって、電磁波の光路長が2Δx変化する。光路長が2Δx長くなった場合、検出用のZnTe結晶116への電磁波の入射タイミングがΔtずれる(Δt=2Δx/c)。光学遅延素子106の位置を一定のステップサイズで動かしながら反射電磁波の測定を繰り返すことで、検出用のZnTe結晶116に入射する電磁波の時間波形の全体が得られ、ピーク位置を特定することができる。ただし、この方法では測定点ごとに遅延ステージを駆動しなければならない。
【実施例2】
【0096】
そこで、第3実施形態では、照射電磁波を直線偏光ではなく円偏光または楕円偏光にすることで、測定中の遅延ステージDSの駆動を不要にする。円偏光や楕円偏光の場合は電場の偏光角度が連続的に変化することを利用して、試料表面の段差(凹凸)を測定する。
【実施例2】
【0097】
図19は、一例として円偏光の光の偏光角度と段差の対応関係を説明するための図である。z軸は電磁波の進行方向である。電磁波の1波長以下の段差に対し、段差d(z方向の位置)と電場の偏光角度とを1対1対応で対応づけることができる。図17に示す直線偏光の光を用いる方法では、A点とB点との段差dを電場の到達時間差として検出している。これに対し、図19の方法では、電磁波の偏光角度の変化として段差dを検出することができる。
【実施例2】
【0098】
一般に、円偏光の電場ベクトルの方位角の変化をΔθ(deg.)、波長をλとすると、段差dは式(10)の関係を満たす。
【実施例2】
【0099】
【数18】
JP0006040162B2_000019t.gif
式(10)から分かるように、物性測定装置100の有利な特徴として、測定される段差dは電磁波の振幅と無関係である。これは光源強度の揺らぎがノイズとして入ってこないことを意味する。また、従来のように直線偏光を入射する場合と異なり、測定中に検出電磁波の時間波形全体をスキャンする必要がないため、サンプリング数を大幅に減らすことができる。
【実施例2】
【0100】
図20(A)と図20(B)は、検出用のZnTe結晶116にプローブ光パルスが到達したときの電場のスナップショットを描いたものである。電場の進行方向は図中の矢印の方向(z方向)であり、左回り円偏光を仮定している。図を見やすくするために、x成分の電場は省略してある。
【実施例2】
【0101】
図20(A)は図17のA点から反射した電磁波、図20(B)は、図17のA点よりも10μm深い位置にあるB点から反射した電磁波である。図16の測定装置100の場合、照射電磁波の波長λ=300μm、d=10μmであるから、式(10)によると、Δθ=24°となる。したがって、図20(A)、図20(B)の右側に示すように、試料のA点からの反射電磁波の偏光角度が、偏波解析部121(図16)により180°と算出された場合、B点からの反射電磁波の偏光角度は156°となる。
【実施例2】
【0102】
このように、試料130で反射し、非線形光学結晶116で検出された光の偏光角度から、検出波長以下の微小な段差(深さ位置)の計測を行なうことが可能である。実施例1の偏波解析装置10または実施例2の偏波解析装置50を用いると、図12に示したように±0.01°以下の精度で偏波の方向を決定することができる。Δθ=±0.01°として式(10)に代入すると、d=±λ/72000となる。入射電磁波の波長がλ=300μmのテラヘルツ波だとすると、d=±4.2nmの精度で試料表面の測定をすることができる。
【実施例2】
【0103】
なお、測定中は図16の遅延ステージDSを固定しているが、偏光角度と段差の1対1の対応関係をあらかじめ取得するために、遅延ステージDSを駆動する。この場合でも、物質ごとに1度のスキャンですみ、測定中の時間波形取得のための遅延ステージのスキャンは不要である。ここでいう遅延ステージのスキャンは、試料表面での電磁波の2次元走査とは別のものである。
【実施例2】
【0104】
従来の直線偏光を用いた測定方法に、第3実施形態の手法、すなわち、あらかじめ電場を大きさを段差dの関数(E=E(d))として取得し、測定されたEの値からdを見積もる方法を適用できないこともない。しかし、反射電場の大きさはレーザの揺らぎや測定対象物の反射率により変化すること、直線偏光の場合はEとdは一般に1対1に対応していないなどの制約があること、から現実的ではない。これに対し、円偏光の場合は、式(10)で示したように、レーザ揺らぎの影響を受けず、偏光角度と段差を1対1対応にできる点で非常に有利である。同じことが楕円偏光にも当てはまる。
【実施例2】
【0105】
物質ごとに偏光角度と段差dの関係をあらかじめ取得する方法として、遅延ステージDSを駆動するかわりに、試料を保持するステージ131をz方向に動かす構成としてもよい。この場合は、電動マイクロメータ等で試料130のz方向の位置を少しずつ変化させながら偏光角度と段差dの対応関係を取得する。いずれの方法によっても、試料130表面で反射され検出された電磁波の偏光角度(偏波方向)から、表面段差を直接決定することができる。
【実施例2】
【0106】
図21は第3実施形態の物性測定方法のフローチャートである。ステップS201で、試料に円偏光または楕円偏光の電磁波を照射し非線形光学結晶で検出される反射光の偏光角度と、試料特性(たとえば表面の段差d)との関係をあらかじめ取得する。取得した対応関係情報を、測定装置100に格納しておく。ステップS203で、測定対象物に円偏光または楕円偏光の電磁波を照射し、反射された電磁波を非線形光学結晶で検出する。ステップS205で、第1実施形態または第2実施形態の手法により、検出された電磁波の偏光角度(偏波方向)を決定する。ステップS207で、測定された偏波方向と格納された対応関係から測定対象物の特性(表面段差d)を決定する。
【実施例2】
【0107】
この方法により、高速、高精度に物質の表面形状を測定することができる。
【実施例3】
【0108】
第3実施形態の物性測定装置100を用いた特性測定の具体例として、実施例3を提示する。実施例3では、物体の表面形状を測定し、測定結果を工作機械の性能評価に応用する。
【実施例3】
【0109】
まず、図21のステップS201を実施する。具体的には、図16の装置を用い、(110)ZnTe結晶115で発生させた直線偏光のテラヘルツ電磁波を、QWP111で楕円偏光にする。次に、楕円偏光のテラヘルツ電磁波パルスを、試料130がマウントされたステージ131に入射させる。試料からの反射波を、検出用の回転結晶116とそのあとのバランス検出器系を用いて検出し、検出波のω成分及び/又は3ω成分に基づいて振幅と偏光状態を計測する。これをステージ131の高さ方向(z方向)の位置を変えながら繰り返す。
【実施例3】
【0110】
図22は、試料Sの表面段差と検出電磁波の偏光角度との対応関係を取得する模式図である。試料130がマウントされたステージ131を、図22の模式図(A)のz方向に10μmずつ動かしながら、各位置で検出電磁波の振幅と偏光状態を計測する。計測結果から得られた偏光状態と振幅を計測点と対応付けて、あらかじめ対応テーブル(図16の対応情報格納部123に該当)に格納しておく。z位置方向で段差の低い位置(図22(C)で反射した電磁波の偏光状態は、試料Sの段差の高い位置(図22(B))で反射した電磁波の偏光状態に比べて、Δθだけ偏光方向が進んでいる。したがって、対応テーブルを参照することで偏光状態の実測値から試料の深さ位置がわかる。x-y平面内でスキャンして計測を行うことによって、物体の段差形状が得られる。
【実施例3】
【0111】
図23は、偏光状態とz方向の深さ位置の対応関係の計測結果である。図23(A)はステージ131を動かしながらテラヘルツ電磁波の振幅と偏光を同時計測した結果をポーラープロットしたものである。各白丸点はz座標を+z方向(図22(A)の高さ方向)に10μm間隔で動かし、計測時にステージ131を止めて取得した点である。図23(B)は図23(A)の結果をz座標(横軸)と偏光角度γ(縦軸)の関係にプロットし直した図である。なお、z座標の絶対値は相対的なものであり、z=0の点をどこにとっても構わない。図23(B)では、後述するように図24(A)のx=0,y=0におけるz座標位置を0として表示している。
【実施例3】
【0112】
図23(B)に示すように、z=-240μmからz=80μmの範囲で、検出された偏光角度γが、z座標値の増加に対して単調増加していることがわかる。すなわち、z方向に80-(-240)=320 μmの範囲では、z座標値と偏光角度γは1対1に対応しており、実験的に得られた偏光角度γからz座標の値を一意に決定することが可能である。図23(B)上では-240~-200μm、70~80μmの範囲で偏光角度の変化がないように見えるが、この領域を拡大するとz座標の増加にともなってγの値が単調増加しており1対1対応は確保される。
【実施例3】
【0113】
なお、図23の例ではz座標の測定点が10μmに一点となっているので、z座標と偏光角度との(z vs. γ)対応関係を考察する際には、測定点間を線形補間することで校正曲線データを作成した。
【実施例3】
【0114】
次に、図21のステップS203を実施する。具体的には、測定対象物に電磁波を照射し、反射電磁波を光学結晶116で検出する。測定サンプルとして、図24(A)のロゴマークを作製した。これは、30mm角のアルミ板に数値制御フライス盤を用いて、約17μmの深さを持つペンマークを彫刻したものである。彫刻の方法は以下の通りである。
(a)30mm×30mm×10mmのアルミ板を用意し、数値制御フライス盤にセットする。
(b)このフライス盤を用いて、アルミニウム板表面の30mm×30mmの部分をφ50mmのフライスカッターを用いて平坦にする。
(c)あらかじめ数値制御フライス盤にプログラムされたロゴマークを深さ10μmの設定で彫刻する。3つの彫刻パーツA,B1、B2に対して、深さ設定値10μmで各パーツ中央部から円を描き、円の直径を大きくしながら彫刻する。3つのパーツA,B1,B2の彫刻の順番は、まずパーツAの左上から右下にかけて彫刻する。次に、左下のパーツB1を彫刻する。最後に右上のパーツB2を彫刻する。各工程において使用したエンドミルの直径は1mmである。
(d)加工が終わったアルミ板をエアゾールで洗浄する。
(e)次に、接触式厚み計(分解能±2μm)を用いて相対的な深さ計測を行い、図24(A)に示す数値を取得した。具体的には、アルミ板全体を平坦(工程(b))にしたときのz座標を基準値(z=0μm)とし、パーツAの深さを計測したところ、右下部分の深さは-16μmであった。パーツB1(左下の部分)の計測値は-17μmであった。計測に使用した接触式厚み計の分解能が±2μmであるから、2点間の深さの違いは誤差の範囲内である。また工作設定値(深さ10μm))よりも深くなっているが、これは工作機械加工の際のエラーである。
【実施例3】
【0115】
同じサンプルに対して、図16の装置100を用いてテラヘルツ楕円偏光パルスによる厚み計測を行った。ステージ131をx-y方向に1mmピッチで動かし、計測時はステージ131を止めて偏光計測を行った。
【実施例3】
【0116】
次に、図21のステップS205とS207を行う。各測定点(x,y)からの反射電磁波の検出値を測定装置100の偏波解析部121で解析して、偏光角度γを求める。求めた偏光角度γの値を順次メモリに格納する。そして、図23で求めた(z vs γ)対応関係(校正曲線)を使用し、計測したγ値からzの値を導く。したがって、最終データは各(x,y)座標における深さzの値z(x,y)である。これを二次元等高線表示すれば、サンプルの表面形状を二次元表示することができる。実際に取得したデータに任意で傾き補正を行って、図24(B)の画像が得られる。
【実施例3】
【0117】
図24(C)は図24(B)のC-C'ラインに沿った断面の深さ変化、図24(D)は図24(B)のD-D'断面の深さ変化を表わす。図24(C)あるいは図24(D)の断面プロファイルに示すように、約16μmという定量的な深さ情報を得ることに成功した。
【実施例3】
【0118】
以上から、第3実施形態の測定装置100は機械加工盤の非接触検査方法に活用することが可能である。非接触計測法としてはレーザを用いた変位計測も考えられるが、レーザが目に入ると失明するなどの危険を伴う。これをテラヘルツ波で行うことで安心・安全に調査を行うことが可能となる。さらに後述するように、図16の装置100はレーザ変位計と比べても同程度かそれ以上の計測速度・深さ分解能を持つ。
【実施例3】
【0119】
以下で計測速度について説明する。図24(B)の画像を取得するにあたり、各点で10回積算を行っている。一点につき22ms×10=0.22sの時間がかかっている。計測点は合計841点(28mm×28mmの範囲を1mmピッチでスキャン)であるから、計測時間は実質185秒、すなわち約3分で計測が完了する。
【実施例3】
【0120】
図25(A)は、積算回数N=1で計測を行ったときの取得データである。図25(B)は、図25(A)のE-E'ラインにそった断面形状を示すグラフである。グラフからわかるように、若干分解能が下がるものの、十分に定量的なイメージング計測ができている。図25のケースでは、各点での計測時間はわずか22msである。従って、合計8411点の実質的な計測時間は約19秒であり、原理的には非常に高速に表面凹凸イメージが取得できている。現実の測定で各点間のステージ131の移動時間を含めても20分以内で測定が完了する。図16の測定装置100を、一度に広範囲の領域を測定できるCCDカメラと組み合わせて偏光イメージングを行うならば、飛躍的な計測時間の短縮が可能である。
【実施例3】
【0121】
図26は、図16の測定装置100の計測時間を、市販されている可視レーザ光を用いたレーザ変位計と比較した結果を示す表である。比較例では、測定時の基準距離(サンプルとレーザ出射面あるいは集光レンズ間の距離)が図16の測定装置100と同等の(株)キーエンス社製、LK-H085を用いた。
【実施例3】
【0122】
測定範囲については、テラヘルツ分光は電場波形の山がどのタイミングで到着するかという、いわゆるTime-of-Flight法を別途利用することで、いくらでも範囲を調節することができる。決めたポジションにおいて±0.16mmの範囲で凹凸計測ができるので、レーザ変位計に比べて劣るところはない。スポット径については、長方形に絞られる比較装置に比べて1mm直径の円形に絞られる実施例の装置100のほうが使い勝手がよい。
【実施例3】
【0123】
実施例3の装置100の原理的な精度はもっと高い。図27は、実施例3の計測系の深さ分解能が何によって律速されているかを示すデータである。これはM=0~9(この間は位置固定)の組で偏光角度を連続して計測し、その後M=10でステージ131を-z方向に1μmずらし、M=10~19(この間は位置固定)の組で同じく偏光角度を連続して計測したものである。図27に示すように1μmの深さ分解能は十分に達成できている。
【実施例3】
【0124】
最後に、実施例3の測定装置100の原理的な分解能について考察する。図27から、試料を1μm移動すると偏光角度が2°回転する。図12と関連して説明したように、22msの1回計測でおよそ1°の偏光角度決定精度が実現する。従って、原理的には22msで0.5μmの深さ決定精度が実現できるのである。また100回積算(2.2s)で0.1°の決定精度を得ることができるから、2.2秒で0.05μmの深さ決定精度が実現できる。これは図26の表に記載したレーザ変位計に比べて、迅速・正確な計測ができることを意味している。さらに10000回積算(220s)では0.005μmの深さ決定精度が実現できる。
【実施例3】
【0125】
このように、積算回数の増加、あるいはCCDカメラ等を用いたイメージング計測の適用、あるいはこれらの組み合わせを行うことによって、深さ決定精度はさらに向上すると考えられる。
<数学的検証>
最後に、式(0)の導出について図6の座標系を参照して説明する。図6において、U1、U2はGaP結晶16の屈折率主軸である。(100)面を有するGaP結晶の[-110]方位軸(X軸とする)と実験系のx軸がなす角度をβとする。x軸に対するテラヘルツ電場ETHzの偏光方向は、γ=α+βで示される。図6(B)に示すように、GaP結晶16の一方の屈折率主軸U1は、x軸に対して(Ψ+β)の角度をなす。
【実施例3】
【0126】
角度Ψは、式(A1)に示すように、X結晶方位軸に対するテラヘルツ電場の偏光方向αでの関数で表される。
【実施例3】
【0127】
【数19】
JP0006040162B2_000020t.gif
GaP結晶16を透過するプローブ光パルスのU1方向成分とU2方向成分の相対位相シフトは、式(A2)で表される。
【実施例3】
【0128】
【数20】
JP0006040162B2_000021t.gif
ここで、ω0はプローブ光パルスの中心角周波数、Eaは電磁波の電場振幅(図6のETHzに対応)、d、n0、r41はそれぞれGaP結晶の厚さ、屈折率、非線形電気光学定数である。
【実施例3】
【0129】
プローブ光パルスEbは常にx軸方向に偏光するので、式(A3)のベクトルで表される。
【実施例3】
【0130】
【数21】
JP0006040162B2_000022t.gif
GaP結晶を透過し、1/4波長板(2つの主軸がx軸に対して±45°傾いている)を通過したプローブ光パルスは、式(A4)で表される。
【実施例3】
【0131】
【数22】
JP0006040162B2_000023t.gif
ここで、R(θ)は回転角θでの座標変換行列であり、式(A5)で表される。
【実施例3】
【0132】
【数23】
JP0006040162B2_000024t.gif
式(A4)において、
【実施例3】
【0133】
【数24】
JP0006040162B2_000025t.gif
は実験系での1/4波長板のジョーンズ行列を表す。
【実施例3】
【0134】
【数25】
JP0006040162B2_000026t.gif
また、G(α)は電場の印加により生じたGaP結晶の複屈折の行列である。
【実施例3】
【0135】
【数26】
JP0006040162B2_000027t.gif
ここでφはプローブ光の偏光の平均位相変化(位相因子)であるが、電場強度の計算が目的であるため省略する。式(A4)を計算すると式(A8)のようになる。
【実施例3】
【0136】
【数27】
JP0006040162B2_000028t.gif
式(A8)のプローブ光パルス(1/4波長板通過後のプローブ光パルス)をウォラストンプリズムでx成分とy成分に分離すると、強度の差分は式(A9)で表される(図5参照)。
【実施例3】
【0137】
【数28】
JP0006040162B2_000029t.gif
GaP結晶16を透過するプローブ光パルスのU1方向成分とU2方向成分の相対位相シフトは、式(A2)で表される。ここでテラヘルツ電場がそれほど強くないとすると、sinΓ(α)二アリーイコールΓ(α)と近似することができる。式(A1)、(A2)、およびα=γ-βを式(A9)に代入すると、式A(10)が得られる。これは式(1)すなわち式(0)に対応する。
【実施例3】
【0138】
【数29】
JP0006040162B2_000030t.gif
以上の計算では、GaP結晶の厚さdは小さいものと仮定している。
【実施例3】
【0139】
式(0)または式(1)を用いた偏波解析は、偏波方向と電場振幅を互いの影響を受けることなく瞬時に決定することができるので有利である。この偏波解析の原理は、テラヘルツ電磁波の解析に限定されず、近赤外光線、可視光線の偏波解析にも有効である。
【実施例3】
【0140】
近年の超短パルスレーザ技術とZnTe、GaP、GaSe等の適切な非線形光学結晶を組み合わせることによって、下は数十GHz、上は100THz程度の周波数まで実施形態と同様の手法で電磁波の検出が可能である。すなわち、ギガヘルツ帯域から中~近赤外帯域にかけての光の偏光方向を高速、高精度に決定することができる。将来的には可視帯域の光についても同様の検出ができることを視野に入れることができる。
【実施例3】
【0141】
この偏波解析を物質測定に利用すると、測定点ごとに時間波形を取得する必要がなく、反射電磁波の偏波方向から直ちに表面段差を決定することができる。
【実施例3】
【0142】
上述した第1~第3の実施形態において、電磁波の発生は非線形光学結晶へのパルス照射に限定されず、光伝導アンテナや光励起プラズマを用いて発生させてもよい。検出用の結晶の回転は電気モータの使用に限定されず、ロータリーアクチュエータ、サーボモータなど任意の回転機構を用いることができる。また、検出用の光学結晶は入射電磁波に対して相対的に回転すればよいので、検出用の光学結晶を回転させる代わりに、入射電磁波を回転させる構成としてもよい。
【実施例3】
【0143】
この国際出願は、2011年11月25日に出願した日本国特許出願2011-258104号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を本件国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0144】
10、50 偏波解析装置
12、115 電磁波発生用の非線形光学結晶
16、116 検出用の非線形光学結晶
17、117 モータ(回転機構)
19 電磁波発生源
20、52,152 検出器
21 偏波解析部
29 プローブ光パルス入射用の光学系
51,110 光学チョッパー
53、153 ノイズ除去演算部
100 物性測定装置
101 レーザ
121 偏波解析部
122 試料解析部
123 偏波角度-特性対応情報格納部
124 特性決定部
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
11
(In Japanese)【図13】
12
(In Japanese)【図14】
13
(In Japanese)【図15】
14
(In Japanese)【図16】
15
(In Japanese)【図17】
16
(In Japanese)【図18】
17
(In Japanese)【図19】
18
(In Japanese)【図20】
19
(In Japanese)【図21】
20
(In Japanese)【図22】
21
(In Japanese)【図23】
22
(In Japanese)【図24】
23
(In Japanese)【図25】
24
(In Japanese)【図26】
25
(In Japanese)【図27】
26