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明細書 :金型内ガス排出方法及びその方法を適用した成形用金型

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6274408号 (P6274408)
公開番号 特開2015-145098 (P2015-145098A)
登録日 平成30年1月19日(2018.1.19)
発行日 平成30年2月7日(2018.2.7)
公開日 平成27年8月13日(2015.8.13)
発明の名称または考案の名称 金型内ガス排出方法及びその方法を適用した成形用金型
国際特許分類 B29C  45/34        (2006.01)
B22C   9/06        (2006.01)
B22D  17/22        (2006.01)
FI B29C 45/34
B22C 9/06 P
B22D 17/22 G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2014-018687 (P2014-018687)
出願日 平成26年2月3日(2014.2.3)
審査請求日 平成29年1月5日(2017.1.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】是澤 宏之
【氏名】楢原 弘之
【氏名】大穂 泰正
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
【識別番号】100176142、【弁理士】、【氏名又は名称】清井 洋平
【識別番号】100127155、【弁理士】、【氏名又は名称】来田 義弘
【識別番号】100159581、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 勝誠
審査官 【審査官】▲高▼橋 理絵
参考文献・文献 特開2004-090579(JP,A)
特開平06-155530(JP,A)
特開平06-091706(JP,A)
特開昭59-002326(JP,A)
特開昭49-024259(JP,A)
国際公開第2013/140580(WO,A1)
実開平03-129430(JP,U)
特開平09-277310(JP,A)
米国特許第05082615(US,A)
米国特許出願公開第2010/0252713(US,A1)
欧州特許出願公開第00385762(EP,A1)
調査した分野 B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
特許請求の範囲 【請求項1】
成形用材料の注入口及びガス排出口が設けられた材料供給路と、前記材料供給路に連結されたキャビティとからなる金型内空間を、前記成形用材料の流れに沿って、前記ガス排出口の下流側、かつ、前記キャビティの上流側の遮蔽位置で分割する工程Aと、
前記注入口から前記材料供給路内に前記成形用材料を注入し、前記材料供給路内の前記遮蔽位置より上流側のガスを、前記キャビティに流入させず、前記ガス排出口を介して外部に送り出す工程Bと、
前記金型内空間を前記遮蔽位置で分割した状態を解除して、前記成形用材料を前記キャビティ内に流入可能にする工程Cとを有し、
前記ガス排出口は、前記金型内空間を分割する開閉手段に形成されており、
前記開閉手段は、前記成形用材料が該開閉手段に接触して該成形用材料から力を受けることにより移動して、前記金型内空間を分割した状態を解除することを特徴とする金型内ガス排出方法。
【請求項2】
請求項記載の金型内ガス排出方法において、前記ガス排出口は、前記材料供給路内の前記キャビティへの連結領域に設けられていることを特徴とする金型内ガス排出方法。
【請求項3】
成形用材料の注入口が設けられた材料供給路と、前記材料供給路に連結されたキャビティとからなる金型内空間を備えた成形用金型において、
前記材料供給路にガス排出口が設けられ、
前記金型内空間を、前記成形用材料の流れに沿って、前記ガス排出口の下流側、かつ、前記キャビティの上流側の遮蔽位置で分割し、前記注入口からの前記成形用材料の注入によって、前記材料供給路内の前記遮蔽位置より上流側のガスが、前記キャビティに流入せず、前記ガス排出口を介して外部に送り出される状態にする開閉手段を備え、
前記ガス排出口は、前記開閉手段に形成されており、
前記開閉手段は、前記成形用材料が該開閉手段に接触して該成形用材料から力を受けることにより移動して、前記金型内空間を前記遮蔽位置で分割した状態を解除し、前記遮蔽位置まで達した前記成形用材料を前記キャビティ内に流入させることを特徴とする成形用金型。
【請求項4】
請求項記載の成形用金型において、前記ガス排出口は、前記材料供給路の前記キャビティへの連結領域に設けられていることを特徴とする成形用金型。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属や溶融樹脂等からなる成形用材料が注入される金型内空間からガスを排出する金型内ガス排出方法及びその方法を適用した成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
成形用金型を用いて成形を行う際には、金型内の空間からガスを排出して、ショートショットやガス焼け等の発生を抑制している。ガスの排出は、成形用材料の充填の際に行われ、その具体例が、特許文献1、2に記載されている。
特許文献1には、キャビティ内のガス圧が所定の圧力を超えたときにガス抜き孔を開いてガスを排出する技術が記載され、特許文献2には、キャビティ内に突出可能に設置された突き出しピンに切欠き部を設けてガスを排出する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平9-277310号公報
【特許文献2】特開2002-1776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたガスの排出方法では、キャビティからのガスの排出が円滑に行えないために生じる成形不良が、未だ、発生するという課題があった。そして、それは、キャビティへのガスの流入が抑制されていないことが原因していると考えられ、この点は、成形用材料が溶融樹脂である場合に限定されず、例えば、成形用材料が溶融金属である場合でも同様である。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、キャビティへのガスの流入を抑制してガスを排出する金型内ガス排出方法及びその方法を適用した成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る金型内ガス排出方法は、成形用材料の注入口及びガス排出口が設けられた材料供給路と、前記材料供給路に連結されたキャビティとからなる金型内空間を、前記成形用材料の流れに沿って、前記ガス排出口の下流側、かつ、前記キャビティの上流側の遮蔽位置で分割する工程Aと、前記注入口から前記材料供給路内に前記成形用材料を注入し、前記材料供給路内の前記遮蔽位置より上流側のガスを、前記キャビティに流入させず、前記ガス排出口を介して外部に送り出す工程Bと、前記金型内空間を前記遮蔽位置で分割した状態を解除して、前記成形用材料を前記キャビティ内に流入可能にする工程Cとを有し、前記ガス排出口は、前記金型内空間を分割する開閉手段に形成されており、前記開閉手段は、前記成形用材料が該開閉手段に接触して該成形用材料から力を受けることにより移動して、前記金型内空間を分割した状態を解除する。
【0006】
前記目的に沿う第2の発明に係る成形用金型は、成形用材料の注入口が設けられた材料供給路と、前記材料供給路に連結されたキャビティとからなる金型内空間を備えた成形用金型において、前記材料供給路にガス排出口が設けられ、前記金型内空間を、前記成形用材料の流れに沿って、前記ガス排出口の下流側、かつ、前記キャビティの上流側の遮蔽位置で分割し、前記注入口からの前記成形用材料の注入によって、前記材料供給路内の前記遮蔽位置より上流側のガスが、前記キャビティに流入せず、前記ガス排出口を介して外部に送り出される状態にする開閉手段を備え、前記ガス排出口は、前記開閉手段に形成されており、前記開閉手段は、前記成形用材料が該開閉手段に接触して該成形用材料から力を受けることにより移動して、前記金型内空間を前記遮蔽位置で分割した状態を解除し、前記遮蔽位置まで達した前記成形用材料を前記キャビティ内に流入させる。
【0009】
第1の発明に係る金型内ガス排出方法及び第2の発明に係る成形用金型において、前記ガス排出口は、前記材料供給路内の前記キャビティへの連結領域に設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る金型内ガス排出方法及び第2の発明に係る成形用金型は、金型内空間を、成形用材料の流れに沿って、ガス排出口の下流側、かつ、キャビティの上流側の遮蔽位置で分割し、注入口からの成形用材料の注入によって、材料供給路内の遮蔽位置より上流側のガスを、キャビティに流入させず、ガス排出口を介して外部に送り出すので、キャビティに流入するガスの量を抑制でき、キャビティへの成形用材料の充填とキャビティからのガスの排出を円滑に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る金型内ガス排出方法を適用した成形用金型の模式図である。
【図2】(A)は金型内空間を分割した様子を示す説明図であり、(B)は金型内空間を分割した状態を解除した様子を示す説明図である。
【図3】実験結果を示すグラフ及び表である。
【図4】(A)、(B)は、ガスを外部に排出する構造の第1の変形例を示す説明図である。
【図5】(A)、(B)は、ガスを外部に排出する構造の第2の変形例を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)は、ガスを外部に排出する構造の第3の変形例を示す説明図である。
【図7】(A)、(B)は、ガスを外部に排出する構造の第4の変形例を示す説明図である。
【図8】(A)、(B)は、ガスを外部に排出する構造の第5の変形例を示す説明図である。
【図9】(A)、(B)は、ガスを外部に排出する構造の第6の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る金型内ガス排出方法を適用した成形用金型10は、成形用材料11の注入口12が設けられた材料供給路13と、材料供給路13に連結されたキャビティ14とからなる金型内空間15を備えている。以下、これらについて詳細に説明する。

【0013】
成形用金型10は、図1に示すように、図示しないフレームに固定側取付板16を介して固定された固定側型板17と、可動側取付板18に取り付けられた可動側型板19とを備えている。
可動側型板19は、図示しない型締装置から力を与えられて可動側取付板18と共に昇降し、上昇位置で固定側型板17に当接する。

【0014】
固定側型板17には、下側に、複数の凹部20があって、可動側取付板18には、上側に、複数の凹部20それぞれに対応する複数の凸部21が設けられている。可動側型板19が固定側型板17に当接した状態で、可動側型板19と固定側型板17の間には、各凹部20と各凹部20に対応する凸部21との間に設けられるキャビティ(空洞)14、各キャビティ14に連通するゲート22、及び、ゲート22に連続して設けられるランナー23がそれぞれ形成される。本実施の形態において、各ランナー23は、水平に長い空洞である。

【0015】
固定側型板17には、成形用材料11の注入口12を備えたスプルーブッシュ24が嵌め込まれ、スプルーブッシュ24の内部に、上下に長い空洞からなるスプルー25が形成されている。
上側が注入口12に連通しているスプルー25は、下側が複数のランナー23にそれぞれ連続し、複数のランナー23及び複数のゲート22と一体となって材料供給路13を形成している。
注入口12に注入された成形用材料11は、スプルー25を通り、複数のランナー23に分岐して進行した後、それぞれのランナー23に対応したゲート22を通過して、各ゲート22に連続しているキャビティ14内に流入する。

【0016】
また、可動側型板19には、図1、図2(A)、(B)に示すように、ランナー23の下側にランナー23に連続して形成された取付け穴26が設けられ、この取付け穴26に開閉手段の一例であるコマ体27が収容されている。
コマ体27は、図2に示すように、上側に下側の円柱状部27bより径の小さい円柱状部27aを備え、取付け穴26に収容され、コマ体27の下方に取り付けられたバネ28(弾性体の一例)によって上向きに付勢されている。
コマ体27は、図2(A)に示すように、バネ28から上向きの力を与えられて、円柱状部27aの上側を、取付け穴26からランナー23内に突出させることができる。

【0017】
円柱状部27aのランナー23内に突出する部分には、成形用材料11の流れに沿って、上流側に、上流に向かって下方に傾斜した傾斜面32が設けられている。以下、成形用材料11の流れに沿って上流側を、単に「上流側」、成形用材料11の流れに沿って下流側を、単に「下流側」とも言う。
コマ体27は、上限位置に配された状態で、傾斜面32より下流側が、ランナー23の外壁31に密着して、ランナー23を分割し、その密着した箇所より上流側と下流側でガスが実質的に行き来しない状態にする。以下、円柱状部27aがランナー23の外壁31に密着する位置を「遮蔽位置」とも言う。

【0018】
コマ体27には、平面視して中央に、上端から下端に渡ってガスが通過するガス流路29が形成され、そのガス流路29の上端に、半分以上が傾斜面32に配置されたガス排出口30が設けられている。可動側型板19には、図1に示すように、取付け穴26のコマ体27より下方の空間を外部に連通するガス排出路33が形成されている。本実施の形態では、ガス排出路33が一つの空洞によって形成されているが、これに限定されず、例えば、その全体、あるいは、その一部がポーラス状(多孔状)であってもよい。
円柱状部27aの傾斜面32は、コマ体27が上限位置に配された状態で、ランナー23の外壁31に密着しない。このため、ランナー23内の遮蔽位置の上流側にあるガスは、ランナー23がコマ体27によって遮蔽位置で分割された状態で、ランナー23内に配置されるガス排出口30からガス流路29に流れ込み、取付け穴26及びガス排出路33を順に通って外に流出することができる。

【0019】
コマ体27は、注入口12からスプルー25に注入された成形用材料11が、コマ体27に達するまで、上限位置に位置して、遮蔽位置でランナー23を分割する。
コマ体27がランナー23を分割した状態で、注入口12からスプルー25に成形用材料11が注入されると、材料供給路13内の遮蔽位置より上流側にあるガスは、遮蔽位置に向かって押し流され、ガス排出口30、ガス流路29、取付け穴26、及び、ガス排出路33を介して外部に送り出される。このとき、材料供給路13内の遮蔽位置より上流側にあるガスは、ランナー23がコマ体27で分割されているため、キャビティ14には実質的に流入しない。

【0020】
上限位置にあるコマ体27は、成形用材料11がコマ体27に達し、円柱状部27aの傾斜面32に接触して、成形用材料11から下向きの力を受けることにより、降下して、図2(B)に示すように、ランナー23を遮蔽位置で分割していた状態を解除する。
従って、成形用材料11がコマ体27に到達するまで、材料供給路13内の遮蔽位置より上流側にあるガスは、キャビティ14内へ実質的に流入することなく、外部に送り出される。

【0021】
適切な弾性係数を有するバネ28を採用することにより、成形用材料11がコマ体27に接触するまで、金型内空間15を分割した状態を維持でき、かつ、成形用材料11がコマ体27に接触することにより、金型内空間15を分割した状態を解除できることが確認されている。
また、本実施の形態では、ガス排出口30が、マイクロメータオーダー幅の複数のスリットからなり、成形用材料11の侵入を抑制する構造を備えているが、これに限定されない。なお、ガス排出口30が成形用材料11で目詰まりを生じる際には、ガス流路29の下端から上端に向かってエアーを吹き入れることにより目詰まりを取り除くことができる。

【0022】
そして、成形用材料11がコマ体27に接触してランナー23を分割していた状態が解除され、遮蔽位置より下流側に成形用材料11が送られると、成形用材料11より下流側にあるガスは、パーティングライン、あるいは、図示しないエジェクタピンや入れ子等の部品により設けられた隙間から外部に排出される。
このように、キャビティ14の上流側で、材料供給路13内のガスを排出することにより、材料供給路13内の遮蔽位置より上流側のガスがキャビティ14内に流入するのを防いで、キャビティ14外からキャビティ14内に流入するガス量を低減することができる。

【0023】
このため、成形用材料11がキャビティ14に到達する際のキャビティ14内のガス圧が高くなるのを抑制でき、キャビティ14内への成形用材料11の充填を円滑に行うことが可能となる。
更に、金型内空間15内における成形用材料11の流動性が向上し、成形用金型10の小型化を図ることも可能である。

【0024】
ここで、成形用材料11をキャビティ14に充填するために、外部に排出すべき金型内空間15内のガスには、元々、金型内空間15内に存在していたガスに加えて、金型内空間15内に成形用材料11が流入した後に、金型内空間15内に新たに加わったガスがある。金型内空間15内に新たに加わったガスとは、金型内空間15内に流入した成形用材料11から発生するガス、及び、成形用材料11を注入する際に外部から金型内空間15に流入するガスである。

【0025】
本願の発明者らは、成形用材料を金型内空間内に注入した後、どのタイミングで金型内空間内にガスが加わるかを調査する実験を行った。
実験においては、キャビティの最も下流側にガス排出口を設け、金型内空間からのガスの流出が、ガス排出口のみから行われるように、他の部分をシールした。そして、金型内空間に成形用材料である樹脂を注入し、注入された樹脂の量と、金型内空間からガス排出口を介して外部に排出されたガスの体積を計測した。金型内空間内に注入された樹脂の量とは、即ち、金型内空間において樹脂が充填された領域の体積に等しい。そのため、外部に排出されたガスの体積から金型内空間において樹脂が充填された領域の体積を差し引いた値は、金型内空間内に新たに加わったガスの量とみなすことができる。

【0026】
図3に実験の結果を示す。図3のグラフ及び表において、ガス体積は、金型内空間から外部に排出されたガスの体積(cm)であり、充填体積は、金型内空間内に存在する樹脂の量、即ち、金型内空間内の樹脂が充填された領域の体積(cm)を示している。そして、計量位置(mm)は、注入口から金型内空間内に樹脂を押し込むスクリューの位置(mm)を示し、計量位置が大きくなるのに応じて、金型内空間に注入された樹脂の量が多くなるのはいうまでもない。樹脂は、注入口からスプルー、ランナー、ゲートを順に通って、キャビティ内に充填される。縦線が引かれた計量位置1.8mmで、樹脂が注入口からスプルーに入り始め、縦線が引かれた計量位置4.8mmで、樹脂がキャビティに流入し始め、縦線が引かれた計量位置10.5mmで、樹脂がキャビティを含む金型内空間全体に充填されることが、実験中に確認されている。

【0027】
実験においては、1.8mm、4.8mm、10.5mmの計量位置を含む6つの計量位置で、ガス体積及び充填体積それぞれの測定が行われた。
また、図3の表において、ガス体積差(cm)は、n番目の計量位置におけるガス体積を、n+1番目の計量位置におけるガス体積から引いた値であり、例えば、計量位置2.8mmにおけるガス体積1.74cmから計量位置1.8mmにおけるガス体積0.92cmを引いた0.82cmである。そして、図3の表における充填体積差(cm)は、n番目の計量位置における充填体積を、n+1番目の計量位置における充填体積から引いた値である。

【0028】
図3の表におけるガス増加率は、金型空間において樹脂が新たに充填された領域に対する金型内空間内に新たに加わったガスの量(体積)の比であり、ガス体積差を△Vg、充填体積差を△Vcとすると、ガス増加率は、(△Vg-△Vc)/△Vc、即ち、(△Vg/△Vc)-1の算出式で求められる。
実験の結果、ガス増加率は、樹脂がキャビティに流入し始めた後の値に比べ、樹脂がキャビティに流入する前の値が大きくなることが確認できた。
従って、成形用材料がキャビティに達する前に遮蔽位置より上流側のガスを排出するということは、金型内空間に樹脂を注入する際に金型内空間内に新たに加わるガスのキャビティへの進入を効果的に抑制することを意味する。

【0029】
ここで、キャビティへのガスの進入を最大限抑制するためには、ガス排出口及び遮蔽位置を、キャビティの上流側で、可能な限りキャビティに近い位置に設けるのがよいと言える。これは、樹脂の充填に伴い金型内空間内に新たに加わるガスのキャビティへの進入を抑制するのに加え、樹脂の充填前から材料供給路内に存在していたガスのキャビティへの進入を抑制可能なためである。
材料供給路13の全体の体積をVとして、本実施の形態では、金型内空間15を遮蔽位置で分割した状態で、ガス排出口が、材料供給路13の下流端からの体積が0.15V以下となる領域(材料供給路13のキャビティ14への連結領域)に設けられる。

【0030】
また、材料供給路は、成形用金型によって、その構成が異なり、例えば、ランナーを有さない成形用金型もある。そして、キャビティの上流側に遮蔽位置を設け、その遮蔽位置より上流側のガスをキャビティに流入させずに外部に排出することが重要であることを考慮すると、ガス排出口は、開閉手段に形成されている必要はない。更に、金型内空間は、ガス排出口の下流側、かつ、キャビティの上流側で分割されればよく、遮蔽位置を、例えば、スプルーに設けることもできる。
以下、ガスを外部に排出する構造の変形例を説明する。なお、本実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付して具体的な説明は省略する。

【0031】
第1の変形例は、図4(A)、(B)に示すように、開閉手段の一例であるコマ体35にガス排出口がなく、ガス排出口36は、固定側型板37内に取り付けられた排気部材38に設けられている。ガス排出口36がランナー39に面する(露出する)ように配された排気部材38は、ガスの出側が、固定側型板37内に形成されたガス排出路40に連通している。バネ28の付勢力で上限位置に配されたコマ体35がランナー39の外壁39aに密着する遮蔽位置は、ガス排出口36の下流側に配されている。

【0032】
第2の変形例は、図5(A)、(B)に示すように、ランナー41が水平路42と水平路42に連通した鉛直路43を有し、その水平路42と鉛直路43の連通領域に、ガス排出口44を備えたコマ体45が遮蔽位置を設けている。
コマ体45は、水平路42に沿って進退可能であり、前進位置で一部をランナー41内に突出することによって、ガス排出口44の下流側の遮蔽位置でランナー41を分割し、コマ体45が突出した位置より上流側のガスを、ガス排出口44から排出可能な状態にする。なお、図5(A)、(B)においてはコマ体45を付勢する弾性体の記載が省略されており、これは、図6~図9においても同様である。

【0033】
第3の変形例は、図6(A)、(B)に示すように、ランナー47の水平路48と鉛直路49が連通する領域に、水平方向に進退可能なコマ体50が配置されている。コマ体50は、前進位置で、鉛直路49の外壁49aに接触して遮蔽位置を設けて、ランナー47を分割する。ガス排出口51を備えた排気部材52は、遮蔽位置の上流側のランナー47にガス排出口51が面するように配され、排気部材52のガスの出側は、ガス排出路53に連通している。

【0034】
第1、第2、第3の変形例が、金型内空間を遮蔽位置で分割した状態で、ガス排出口がランナーに連通するのに対し、以下に説明する第4、第5、第6の変形例は、金型内空間が分割された状態で、ガス排出口がスプルーに連通される。
第4の変形例は、図7(A)、(B)に示すように、スプルーブッシュ54内に形成されたスプルー55の下側に、上端にガス排出口56を備えた昇降可能なコマ体57が配置されている。ガス排出口56に連通するガス流路58が内側に形成されたコマ体57は、上昇位置で、スプルー55とランナー61とを遮断すると共に、ガス排出口56をスプルー55内に配して、スプルー55内のガスが、ガス排出口56及びガス流路58を通過し、ガス排出路59を介して外部に排出される状態にする。そして、コマ体57は、成形用材料11が接触して下に押しやられることにより、金型内空間60を分割していた状態を解除して、成形用材料11をランナー61に流入させる。

【0035】
第5の変形例は、図8(A)、(B)に示すように、ガス排出口62がコマ体63ではなく、排気部材64に設けられている点で、第4の変形例と異なっている。排気部材64は、ガス排出口62が、スプルーブッシュ65内に形成されたスプルー66内に配置され、ガスの出側がガス排出路67に連続している。コマ体63が、成形用材料11の接触により降下し、金型内空間68を分割していた状態を解除して、成形用材料11をランナー69に流入させる点は、第4の変形例と同じである。

【0036】
第5の変形例が、排気部材64を固定側型板17に固定しているのに対し、第6の変形例は、図9(A)、(B)に示すように、排気部材70がスプルーブッシュ71に固定されている。また、第6の変形例では、排気部材70に形成されたガス排出口72が、第5の変形例のガス排出口62に比べ、スプルー73の上流側に設けられている。排気部材70のガスの出側は、ガス排出路74に連続している。第6の変形例において、第5の変形例と同様の構成は、第5の変形例と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。

【0037】
以上より、成形用金型10に適用された本実施の形態の金型内ガス排出方法は、以下の内容となる。
即ち、本実施の形態の金型内ガス排出方法は、金型内空間15を、ガス排出口30の下流側、かつ、キャビティ14の上流側の遮蔽位置で分割する工程Aと、注入口12から材料供給路13内に成形用材料11を注入し、材料供給路13内の遮蔽位置より上流側のガスを、キャビティ14に流入させず、ガス排出口30を介して外部に送り出す工程Bと、金型内空間15を遮蔽位置で分割した状態を解除し、成形用材料11をキャビティ14内に流入可能にする工程Cとを有する。

【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、本発明は、成形用材料が溶融樹脂である成形用金型のみに適用されるものではなく、成形用材料が溶融金属である成形用金型(ダイキャスト)や、成形用材料が金属の粉体である成形用金型に対しても適用可能である。
また、本実施の形態では、成形用材料がコマ体に到達することによって金型内空間を分割した状態を解除するが、シーケンサーを用いて、所定のタイミングで金型内空間を分割した状態を解除するようにしてもよい。
そして、開閉手段は、2つの円柱状部を有するコマ体に限定されず、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:成形用金型、11:成形用材料、12:注入口、13:材料供給路、14:キャビティ、15:金型内空間、16:固定側取付板、17:固定側型板、18:可動側取付板、19:可動側型板、20:凹部、21:凸部、22:ゲート、23:ランナー、24:スプルーブッシュ、25:スプルー、26:取付け穴、27:コマ体、27a、27b:円柱状部、28:バネ、29:ガス流路、30:ガス排出口、31:外壁、32:傾斜面、33:ガス排出路、35:コマ体、36:ガス排出口、37:固定側型板、38:排気部材、39:ランナー、39a:外壁、40:ガス排出路、41:ランナー、42:水平路、43:鉛直路、44:ガス排出口、45:コマ体、47:ランナー、48:水平路、49:鉛直路、49a:外壁、50:コマ体、51:ガス排出口、52:排気部材、53:ガス排出路、54:スプルーブッシュ、55:スプル-、56:ガス排出口、57:コマ体、58:ガス流路、59:ガス排出路、60:金型内空間、61:ランナー、62:ガス排出口、63:コマ体、64:排気部材、65:スプルーブッシュ、66:スプル-、67:ガス排出路、68:金型内空間、69:ランナー、70:排気部材、71:スプルーブッシュ、72:ガス排出口、73:スプルー、74:ガス排出路
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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