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明細書 :CO選択メタン化触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6350898号 (P6350898)
公開番号 特開2015-167887 (P2015-167887A)
登録日 平成30年6月15日(2018.6.15)
発行日 平成30年7月4日(2018.7.4)
公開日 平成27年9月28日(2015.9.28)
発明の名称または考案の名称 CO選択メタン化触媒
国際特許分類 B01J  23/847       (2006.01)
B01J  35/08        (2006.01)
B01J  33/00        (2006.01)
C01B   3/38        (2006.01)
FI B01J 23/847 M
B01J 35/08 Z
B01J 33/00 C
C01B 3/38
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2014-042850 (P2014-042850)
出願日 平成26年3月5日(2014.3.5)
審査請求日 平成29年2月17日(2017.2.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】宮尾 敏広
【氏名】東山 和寿
【氏名】山下 壽生
【氏名】橋本 登
【氏名】出来 成人
【氏名】渡辺 政廣
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査官 【審査官】森坂 英昭
参考文献・文献 特公昭49-030355(JP,B1)
特開2012-187565(JP,A)
特開2007-130525(JP,A)
国際公開第2011/142481(WO,A1)
国際公開第2010/122855(WO,A1)
特開2005-238131(JP,A)
米国特許出願公開第2015/0246347(US,A1)
米国特許出願公開第2013/0071318(US,A1)
米国特許出願公開第2012/0063963(US,A1)
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
特許請求の範囲 【請求項1】
CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆う被覆層を備え、
前記被覆層は、メソポーラス構造を有し、且つ非Si金属を含む酸化物からなる、CO選択メタン化触媒(但し、前記非Si金属がTi、La、及びZrから選択される少なくとも1種の添加金属であって且つ前記添加金属/Siの原子比が0.001~3であるもの、を除く)。
【請求項2】
前記非Si金属は、アルミニウム、チタニウム、バナジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、ランタン、及びタンタルから選択される少なくとも1つからなる、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記非Si金属は、アルミニウムとジルコニウムの少なくとも一方を含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記被覆層を構成する酸化物のSi/非Si金属の原子比は、1以下である、請求項1~請求項3の何れか1つに記載の触媒。
【請求項5】
前記被覆層は、メソポーラスアルミナ又はメソポーラスジルコニアからなる、請求項1~請求項4の何れか1つに記載の触媒。
【請求項6】
CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆う被覆層を備え、
前記被覆層は、ジルコニアからなる、CO選択メタン化触媒。
【請求項7】
前記被覆層は、厚さが1~200nmである、請求項1~請求項6の何れか1つに記載の触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用固体高分子形燃料電池用燃料改質器のCO除去工程や、反応物の蓄積によって活性低下を伴う触媒反応プロセスに広く適用可能であるCO選択メタン化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は80℃程度の低温で運転するため、燃料である水素リッチガス中に一酸化炭素が、あるレベル以上含まれていると、アノード白金触媒のCO被毒により、発電性能が低下したり遂には全く発電ができなくなったりするという問題が生じる。
【0003】
このCO被毒を回避するため、都市ガス、LPガス又は灯油などを燃料改質器で水素リッチガスに転換して使用する家庭用固体高分子形燃料電池発電システムでは、燃料電池アノード入口ガスのCO濃度を常に10ppm以下に抑えることが望まれる。実システムの多くは、燃料改質プロセスの最終段階で生成ガスに空気を混合しガス中に含まれるCOをCOに酸化するCO選択酸化触媒を採用している。
CO + 1/2 O = CO (反応式1)
【0004】
この触媒では反応式1に示すように外部から常に空気を取り込む必要があるため、空気ブロアやその制御システム、更には供給した空気を反応ガスと均一に混合するための複雑なガス混合構造体を燃料改質器に設置する必要がある。
【0005】
最近、このCO選択酸化触媒に変わる新たな方法として、CO選択メタン化触媒が注目されている(例えば特許文献1~2)。
【0006】
特許文献1には、噴霧プラズマ法により作製した非化学量論組成のNi-Al複合酸化物前駆体にルテニウム塩を含浸担持し、還元処理を行うことで、従来触媒ではCOメタン化反応よりCOメタン化反応と逆水性シフト反応が支配的に進行する高温度領域においても選択的にCOメタン化反応を起こさせることができるCO選択メタン化触媒が開示されている。
【0007】
特許文献2には、一酸化炭素をメタン化する触媒の活性成分に、二酸化炭素の反応抑制剤であるハロゲン、無機酸、金属酸素酸から選ばれた少なくとも1種が吸着又は結合させることによって、COメタン化反応の選択性に優れたCO選択メタン化触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】WO2010/122855号
【特許文献2】WO2011/142481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~2に開示された触媒は、COメタン化反応の選択性に優れたものであるが、このような触媒の実用化に向けてさらに研究を進めたところ、これらの文献の触媒を用いた場合、特に反応ガスの空塔速度が大きい場合に、触媒が劣化(触媒活性が低下)しやすいことが分かった。また、CO選択酸化触媒を用いた場合の出口ガスのCO濃度(以下、「出口CO濃度」)は10ppm以下にすることが容易であったが、CO選択メタン化触媒を用いた場合には、非常に狭い温度範囲においてのみ、出口CO濃度を10ppm以下にすることができたので、このままでは実用化が容易でないという問題もあった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、第1の課題は、CO選択メタン化触媒を長寿命化させることであり、第2の課題は、CO選択メタン化触媒のCO除去率を高めて、広い温度範囲において出口CO濃度を低い値にすることであり、第3の課題は、CO選択メタン化触媒の水蒸気耐性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点によれば、CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆う被覆層を備え、前記被覆層は、メソポーラス構造を有し、且つ非Si金属を含む酸化物からなる、CO選択メタン化触媒が提供される。
【0012】
本発明者らは、担持金属触媒上に被覆層を設けることによって、CO選択メタン化触媒の長寿命化及びCO除去率の向上が可能であることを見出した。また、被覆層の構造及び材料について種々検討を行ったところ、被覆層をメソポーラスシリカとすることによって、触媒寿命が飛躍的に伸びることを見出した。
【0013】
しかし、さらに研究を進めたところ、メソポーラスシリカからなる被覆層は、水素リッチガス中の水蒸気濃度が20%程度の通常の運転条件下では安定性が優れているものの、水素リッチガス中の水蒸気濃度が60%程度の条件下では触媒活性の低下速度が大幅に高まることが分かった。燃料電池システムの起動停止時や異常停止時には水素リッチガス中の水蒸気濃度が60%に到達することがあり得るため、このような条件下においても、触媒活性の低下速度が低いことが重要である。
【0014】
そこでさらに研究を進めたところ、高濃度水蒸気環境下での触媒活性の劣化は、メソポーラスシリカからなる被覆層が高濃度水蒸気にさらされるとその構造が崩壊してしまうことが原因であることが分かった。そして、この知見に基づき、被覆層の構造崩壊を抑制する方法について研究を行ったところ、メソポーラス構造を有する被覆層が非Si金属を含む酸化物からなる場合に構造崩壊が起きにくいことが分かり、本発明の完成に到った。
【0015】
また、さらに検討を進めたところ、被覆層がジルコニアからなる場合には、被覆層の構造安定性が著しく高まることが分かった。このような観点によれば、被覆層は必ずしもメソポーラス構造を有する必要はなく、従って、本発明の第2の観点によれば、CO及びCO2を含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆う被覆層を備え、前記被覆層は、ジルコニアからなる、CO選択メタン化触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】水素製造システム全体の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(A)~(B)は、ハニカム基材の例を示す斜視図であり、(C)は、ハニカム基材の1つのセルの平面図である。
【図3】(A)は、製造例1のコア触媒のTEM像を示し、(B)は、製造例2のメソポーラスシリカ被覆触媒のTEM像を示す。
【図4】製造例2のメソポーラスシリカ被覆触媒の高濃度水蒸気処理による触媒活性の変化を示すグラフである。(B)は、(A)の縦軸を拡大したグラフである。
【図5】(A)~(B)は、製造例3のメソポーラスジルコニア被覆触媒の被覆層の微細構造を示すSEM像である。
【図6】製造例3のメソポーラスジルコニア被覆触媒のSTEM-EDS測定結果を示す。
【図7】(A)~(F)は、水とジルコニウムアルコキシドの配合量を変えて作製した製造例4のメソポーラスジルコニア被覆触媒のTEM像である。
【図8】製造例3のメソポーラスジルコニア被覆触媒の高濃度水蒸気処理による触媒活性の変化を示すグラフである。(B)は、(A)の縦軸を拡大したグラフである。
【図9】(A)~(D)は、それぞれ、メソポーラスシリカ、メソポーラスチタニア、メソポーラスアルミナ、及びメソポーラスジルコニアでコア触媒を被覆して得られた触媒の水蒸気処理前後の触媒活性を示すグラフである。
【図10】(A)~(B)は、それぞれ、メソポーラスジルコニア被覆触媒と、メソポーラスアルミナ被覆触媒についての長期耐久試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。

【0018】
1.システム全体の構成
図1は、原燃料(都市ガス等)から燃料電池(たとえば固体高分子形燃料電池(PEFCスタック))に供給する高い濃度の水素ガスを製造、精製するフロー及びシステム全体の概略構成を示すものである。破線で囲まれた部分が燃料改質装置(燃料処理装置)14に相当し、この中を、原燃料供給系4から供給される原燃料が流れ、各触媒層を通過する過程で改質とCOの除去を行い(10ppm以下)高い濃度の水素ガス(改質ガス:H約75%、CO約20%)を得る。

【0019】
原燃料はまず脱硫器5で硫黄成分を除去した後,改質触媒層を含む改質器7において改質反応により水素(H)と一酸化炭素(CO)を生成し(水蒸気発生器6からの水蒸気を用いた水蒸気改質)、さらにCO変成触媒層を含むCO変成器8でCOをCOに変換する。

【0020】
COを0.5~1.0%程度含むガス(H、COなど)は本発明によるCO選択メタン化触媒を用いたCOの選択メタン化触媒層を含むCO選択メタン化反応器11内に流入して、この触媒層を通過する過程でCO濃度が10ppm以下の高濃度Hガス(改質ガス)となり、PEFCスタック13に供給される。

【0021】
CO選択メタン化触媒は、好ましくは粒状触媒として使用される。また、CO選択メタン化触媒は、ハニカム基材上にコーティングして使用してもよい。ハニカム基材の一例が図2(A)、図2(B)に示されている。図2(A)はコージェライト製のハニカム基材の例であり、図2(B)はメタル製のハニカム基材の例である。いずれにしても、筒体(円筒、角筒等)内部に、その長手方向に沿って配置された多数の縦、横、斜め、波形等の仕切り板(隔壁)が交叉して設けられ、隣接する仕切り板間がガスの通路となっている。これらの仕切り板の表面全体にCO選択メタン化触媒がコーティングされる。断面が六角形のみならず、四角形、正弦波形、その他の形状のガス通路(流路)(セル)を有するハニカム構造のものを、この明細書では、単にハニカムまたはハニカム基材と呼ぶ。

【0022】
また、CO選択メタン化触媒をハニカム基材上にコーティングする方法としては、粉末に被覆層を形成したものをハニカム基材上にコーティングする方法や、図2(C)に示すように、触媒粉末をハニカム基材1上にコーティングして触媒層3を形成し、その後に、被覆層5を形成する方法が挙げられる。

【0023】
2.CO選択メタン化触媒の構成
本発明の一実施形態のCO選択メタン化触媒は、CO及びCOを含有する水素リッチガス中のCOを選択的にメタン化する担持金属触媒と、前記担持金属触媒の表面を覆う被覆層を備える。

【0024】
<担持金属触媒>
担持金属触媒の担体と活性金属の種類は、特に限定されず、特許文献1~2に記載されているようなCOメタン化能を有するものであればよい。具体的には、例えば活性金属としては、Ni、Ru、Fe、Co、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Reおよびこれらの複合物が利用可能であり、担体としては、Al、V、Ti、Zr、Si、Mg、Ceの少なくとも一つ以上からなる酸化物、窒化物、炭化物が利用可能である。具体例としてはゼオライトやシリカアルミナなどが挙げられる。このような担持金属触媒は、COのメタン化反応を選択的に抑制するメタン化反応抑制剤を含んでいることが好ましい。メタン化反応抑制剤としては、前記活性金属の表面電荷をδ+側にする材料、又はCOメタン化活性を抑制する効果のある種々の材料が適用できるが、特に、F、Cl、Br、I等のハロゲン、HCl、HNO、HSO、HPO等の無機酸、ホウ酸、バナジウム酸、タングステン酸、クロム酸などの金属酸素酸のいずれか又は二つ以上を含むことが望ましい。触媒上での存在形態としては、その作製工程に依存するため、前記化合物に限定されるものではなく、その前駆体、反応物、分解生成物でも良い。一具体例では、活性金属は、Ni、又はNiとVの合金又は混合物であり、担体は、V酸化物を含んだAl酸化物(つまり、Al酸化物のマトリックス中にV酸化物が担持または分散・混合されたような状態)である。このような構成の担持金属触媒は、長期間に渡ってCOを選択的にメタン化可能であることが特許文献1に記載の実験などから明らかになったからである。

【0025】
<被覆層>
本実施形態の触媒は、上記担持金属触媒上に、CO濃度を低減する機能を有する被覆層を形成したことを特徴としている。上記の通り、CO選択メタン化反応器11に流入する反応ガス中には、通常、COが0.5~1.0%程度含まれており、担持金属触媒がこのような濃度のCOに長時間さらされると、担持金属触媒上に徐々に炭素種が堆積し、その活性が徐々に低下するが、本実施形態によれば、担持金属触媒上に被覆層が形成され、それによって、担持金属触媒上でのCO濃度が反応ガス中のCO濃度に比べて低減されるので、担持金属触媒の劣化が抑制される。本発明者らの実験によれば、CO濃度が高いほど担持金属触媒の劣化の速度が大きく、CO濃度が0.2%以下の場合には担持金属触媒の劣化が極めて遅くなることが分かったので、担持金属触媒上に被覆層を形成することによって担持金属触媒表面でのCO濃度を0.2%以下にすることが好ましい。

【0026】
被覆層を設けることによって担持金属触媒表面でのCO濃度の低減される原理としては、通常、拡散抵抗による濃度勾配とメタン化反応による濃度勾配の少なくとも一方が関係する。拡散抵抗による濃度勾配は、被覆層内の細孔内ではCOの拡散が制限されるために、担持金属触媒表面でのメタン化によるCOの消費速度よりも担持金属触媒表面へのCOの供給速度が小さくなる場合に形成される濃度勾配である。メタン化反応による濃度勾配は、細孔の壁面に担持された被覆層金属によってCOがメタン化されることによって形成される濃度勾配である。

【0027】
本実施形態では、被覆層は、メソポーラス構造を有する。本明細書において、「メソポーラス構造」とは、直径が1~50nmである細孔(メソ孔)を多数有する構造である。細孔の構造は、限定されず、規則的な構造であっても、ランダムな構造であってもよい。メソポーラス構造であるかどうかは、電子顕微鏡像で観察される細孔の直径が1~50nmの範囲内に入っているかどうかによって決定することができる。また、別の観点では、メソポーラス構造であるかどうかは、JIS Z 8831-2:2010に従って測定した細孔径分布において、細孔径が1~50nmの範囲内にピークが存在するかどうかによって決定してもよい。細孔径分布での細孔径のピーク位置は、具体的には例えば、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、さらに別の観点では、メソポーラス構造であるかどうかは、上記細孔径分布において、(細孔径1~50nmの細孔容積)/(細孔径1~100nmの細孔容積)によって規定されるメソ孔比率が0.1以上であるかどうかによって決定してもよい。このメソ孔比率は、具体的には例えば、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0028】
被覆層は、非Si金属を含む酸化物からなる。本発明者らによる実験によれば、非Si金属を含む酸化物で構成されたメソポーラス構造は、高濃度水蒸気環境下での構造安定性が高いことが分かった。非Si金属としては、アルミニウム、チタニウム、バナジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、ランタン、及びタンタルから選択される少なくとも1つからなるものが好ましい。メソポーラス構造は、一例では、アルキルトリメチルアンモニウム塩の存在下で金属アルコキシドを加水分解することによって形成することができるが、上記列挙した金属は、適度に安定なアルコキシドが形成しやすいためにメソポーラス構造を形成しやすいという利点がある。また、非Si金属としては、アルミニウムを含むことが好ましく、被覆層がメソポーラスアルミナからなることがさらに好ましい。この場合、高濃度水蒸気処理によって触媒活性が向上するからである。また、非Si金属としては、ジルコニウムを含むことが好ましく、被覆層がメソポーラスジルコニアからなることがさらに好ましい。この場合、被覆層の構造安定性が特に高くなるからである。

【0029】
被覆層は、Siを含んでいてもいなくてもよいが、Siを実質的に含まないことが好ましい。Si/非Si金属の原子比は、1以下であることが好ましく、0.2以下であることがさらに好ましく、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0030】
被覆層の厚さは、例えば1~200nmであり、具体的には例えば、1、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0031】
ところで、被覆層がジルコニアからなる場合に被覆層の構造安定性が極めて高くなるという観点では、被覆層は必ずしもメソポーラス構造でなくてもよく、メソポーラス構造を有しない緻密な薄膜や、粒子の集積構造、ネットワーク構造などであってもよい。この場合、高濃度水蒸気環境下において構造安定性が高い被覆層を有するCO選択メタン化触媒が得られる。
【実施例】
【0032】
本発明の効果を実証すべく、以下に示す種々の実験を行った。
【実施例】
【0033】
1.製造例1(コア触媒の調製)
以下の方法で触媒担体であるAlVOx触媒粉末を調製した。バナジウム酸アンモニウム(NHVO 0.60gを純水61mLに入れ、加温し溶解させた。また、硝酸アルミニウム44.1gを純水235mLに溶解させた。これら二つの溶液を混合した後、2Lのビーカーに移し2500rpmで撹拌しながら炭酸アンモニウム水溶液を約15分でpH=8になるように滴下した。その後、30分撹拌を継続した。析出した沈殿は、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、1Lの純水で洗浄した。得られた沈殿は室温で半日減圧乾燥後、110℃の乾燥炉で12時間乾燥した。得られたゲルは、磨砕した後、空気中500℃で3時間焼成した。これによりAl:V=0.96:0.04のモル比の酸化物担体を得た。
【実施例】
【0034】
上記AlVOx触媒粉末6.26gを純水50mLに投入し縣濁液とした。また硝酸ニッケルNi(NO・6HO(関東化学社製)12.8gを純水50mLに溶解した。酸化物担体の懸濁液を撹拌しながら硝酸ニッケル水溶液をビュレットを用いて約20分間で全量投入した。室温で30分、45℃の湯浴中で30分攪拌した後、一度室温まで冷却した。その後、35~50℃の湯浴中でエバポレーターにかけ、水分を全て飛ばした。得られた粉末を、110℃で12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成し、金属換算でNi30wt%を担持したNi/AlVOxからなるコア触媒を得た。
【実施例】
【0035】
2.製造例2(コア触媒上へのメソポーラスシリカ層の構築)
製造例1で作製したコア触媒上に、以下の方法で、メソポーラスシリカ層を構築した。
コア触媒5.00gと28%アンモニア水(関東化学社製)2.00gを超純水150mLに投入し縣濁液とした。またヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(アクロス社製)0.6gをエタノール(関東化学社製)40mLと超純水6mLの混合液に入れ溶解した。次にテトラエチルオルトシリケート(関東化学社製)1.20gをエタノール8mLに加えアルコキシド溶液とした。コア触媒の懸濁液を撹拌しながら、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で懸濁液を30分撹拌した。次に懸濁液を撹拌しながらアルコキシド溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を室温で減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、厚さ15nmのメソポーラスシリカ層をコア触媒の表面に構築した粉末状のメソポーラスシリカ被覆触媒を得た。メソポーラスシリカからなる被覆層形成前後のTEM像を図3に示す。
【実施例】
【0036】
3.メソポーラスシリカ被覆触媒の水蒸気耐性試験
製造例2で得たメソポーラスシリカ被覆触媒の耐水蒸気特性を調べた。
メソポーラスシリカ被覆触媒を、10MPaの圧力下10分間加圧し直径20mmのディスク状成型体を得た。これを粉砕し1mmから2mmの粒状に整粒したもの2.1mLを直径1/2インチの石英管に充填した。この試料を500℃で1時間、水素流通下還元処理を行った後に、CO選択メタン化反応に対する温度特性を測定した。次にこの試料を200℃に於いて、60%水蒸気を含む窒素ガスを12時間流通した後に温度特性を測定した。この後、さらに、12時間の水蒸気処理と温度特性測定を繰り返し行った。得られた結果を図4に示す。図4中、処理時間0hは、水蒸気処理前の温度特性を示す。図4に示すように、メソポーラスシリカ被覆触媒は、200℃、60%水蒸気/窒素雰囲気で処理すると、触媒活性の著しい低下が起きた。この活性低下は、窒素吸着測定と電子顕微鏡観察から、メソポーラスシリカ層の構造崩壊によって引き起こされたことが分かった。
【実施例】
【0037】
4.製造例3(コア触媒上へのメソポーラスジルコニア層の構築)
製造例1で作製したコア触媒上に、以下の方法で、メソポーラスジルコニア層を構築した。
コア触媒5.00gを脱水エタノール(関東化学製)150mLに投入し縣濁液とした。またヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(アクロス社製)0.6gをエタノール(関東化学社製)48mLと超純水5.3mLの混合液に入れ溶解した。次にジルコニウムテトラn-ブトキシド(関東化学社製)2.12gをエタノール10mLに加えアルコキシド溶液とした。コア触媒の懸濁液を撹拌しながら、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で懸濁液を30分撹拌した。次に懸濁液を撹拌しながらアルコキシド溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を50℃で3時間、減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、メソポーラスジルコニア層をコア触媒の表面に構築した粉末状のメソポーラスジルコニア被覆触媒を得た。得られた触媒についてのSEM像を図5に示す。図5を参照すると、メソポーラスジルコニア層には、2~50nm程度の細孔がランダムに形成されていることが分かる。この細孔によってコア触媒への反応ガスの良好な拡散が実現される。また、得られた触媒について、走査透過型電子顕微鏡エネルギー分散X線分光(STEM-EDS)によって、元素分析を行った。その結果を図6に示す。図6を参照すると、Zrがほぼ一様に分布していることが分かる。この結果は、メソポーラスジルコニア層が略一様に形成されていることを示している。
【実施例】
【0038】
5.製造例4(コア触媒上へのメソポーラスジルコニア層の構築、原料の配合を変更)
コア触媒5gに対する水とジルコニウムアルコキシド(ジルコニウムテトラn-ブトキシド)(ZB)の添加量を変更した以外は、製造例3と同様の方法でメソポーラスジルコニア層を構築して、メソポーラスジルコニア被覆触媒を得た。各条件で得られた触媒についてのTEM像を図7に示す。
図7に示すように、ジルコニア被覆の際に用いる加水分解の為の添加水量と、ジルコニア源となるジルコニウムアルコキシドの添加量によってジルコニア層の構造が変化し、コア触媒5gに対して添加水量5g近傍の場合において良好なジルコニア層が形成された。またジルコニウムアルコキシドの添加量によってメソポーラスジルコニア層の厚みを調節することができた。
【実施例】
【0039】
6.メソポーラスジルコニア被覆触媒の水蒸気耐性試験
上記「3.メソポーラスシリカ被覆触媒の水蒸気耐性試験」と同様の方法で、製造例3で得たメソポーラスジルコニア被覆触媒の耐水蒸気特性を調べた。得られた結果を図8に示す。図8に示すように、メソポーラスジルコニア被覆触媒は、200℃、60%水蒸気/窒素雰囲気で72時間の水蒸気処理を行っても、活性の変化は全く観察されなかった。以上の結果、メソポーラスジルコニア被覆層は、メソポーラスシリカ被覆層と異なり、優れた水蒸気耐性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0040】
7.種々の金属酸化物被覆触媒の水蒸気耐性試験
図9(A)~(D)は、それぞれ、メソポーラスシリカ、メソポーラスチタニア、メソポーラスアルミナ、及びメソポーラスジルコニアでコア触媒を被覆して得られた触媒についての水蒸気耐性試験の結果を示す。図9に示すように、メソポーラスチタニア、メソポーラスアルミナ、及びメソポーラスジルコニアの何れでコア触媒を被覆した場合でも、被覆触媒の水蒸気耐性が向上していることが分かる。また、図9(C)に示すように、メソポーラスアルミナ被覆触媒では、水蒸気処理によって触媒活性が向上するという驚きの結果が得られた。
【実施例】
【0041】
なお、メソポーラスシリカ被覆触媒は、製造例2で製造したもの、メソポーラスジルコニア被覆触媒は、製造例3で製造したものを用いた。メソポーラスチタニア被覆触媒及びメソポーラスアルミナ被覆触媒は、以下の方法で製造したものを用いた。
【実施例】
【0042】
(メソポーラスチタニア被覆触媒)
製造例1で作製したコア触媒上に、以下の方法で、メソポーラスチタニア層を構築した。
コア触媒5.00gを脱水エタノール(関東化学製)150mLに投入し縣濁液とした。またヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(アクロス社製)0.6gをエタノール(関東化学社製)48mLと超純水5.3mLの混合液に入れ溶解した。次にチタニウムテトライソプロポキシド(関東化学社製)1.57gをエタノール10mLに加えアルコキシド溶液とした。コア触媒の懸濁液を撹拌しながら、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で懸濁液を30分撹拌した。次に懸濁液を撹拌しながらアルコキシド溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を50℃で3時間、減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、メソポーラスチタニア層をコア触媒の表面に構築した粉末状のメソポーラスチタニア被覆触媒を得た。
【実施例】
【0043】
(メソポーラスアルミナ被覆触媒)
製造例1で作製したコア触媒上に、以下の方法で、メソポーラスアルミナ層を構築した。
コア触媒5.00gを脱水エタノール(関東化学製)150mLに投入し縣濁液とした。またヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物(アクロス社製)0.6gをエタノール(関東化学社製)48mLと超純水5.3mLの混合液に入れ溶解した。次にアルミニウムトリイソプロポキシド(関東化学社製)1.12gをトルエン15mLに加えアルコキシド溶液とした。コア触媒の懸濁液を撹拌しながら、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で懸濁液を30分撹拌した。次に懸濁液を撹拌しながらアルコキシド溶液をピペットを用いて1分間で全量投入し、室温で16時間撹拌した。その後懸濁液をろ過し400mLのエタノールでろ物を洗浄した。得られたろ物を50℃で3時間、減圧乾燥した後さらに250℃で1.5時間乾燥させ、次に550℃で4時間焼成し、メソポーラスアルミナ層をコア触媒の表面に構築した粉末状のメソポーラスアルミナ被覆触媒を得た。
【実施例】
【0044】
8.触媒の長期耐久試験
次に、メソポーラスジルコニア被覆触媒と、メソポーラスアルミナ被覆触媒について長期耐久試験を行った。
触媒の長期評価条件と手順を以下に説明する。活性評価に先立ち触媒試料の水素還元を行った。これは、触媒活性成分を還元するためである。還元は反応管に500mL/minのHガスを流し、20℃/minで500℃まで昇温した後、1時間温度保持した。還元終了後、HからNにガスを切り替え5分間流しHをパージした。還元終了後、触媒の活性評価を行う温度(メソポーラスジルコニア被覆触媒は197℃、メソポーラスアルミナ被覆触媒は203℃)まで降温した。水蒸気を反応管内に導入しはじめ、5分後に反応ガスを導入した。水蒸気供給速度は水蒸気/CO=34(モル比)に相当する値とし、イオン交換水をマイクロポンプで200℃に保った気化器に送り、発生した水蒸気をNキャリアで反応管に導入した。各反応ガスはマスフローコントローラーにより反応管に導入し、組成はドライベースでCO 0.5vol%、H 80vol%、CO 19vol%とした。空塔速度SVは4800h-1とした。反応管は外径13mmの石英管を使用した。この反応管の中央所定位置に1.1mm~2mmに整粒した粒状触媒2.1mLを充てんした。シース熱電対の先端を触媒層の上端から約2mmの位置に挿入し触媒層の温度測定を行った。反応管出口からのガスは、非分散型赤外分析計(堀場製作所製)によって定量を行った。
得られた結果を図10に示す。図10に示すように、どちらの触媒も、長期間に渡って、高い活性が維持されていることが分かる。
【実施例】
【0045】
9.種々のメソポーラス金属酸化物被覆触媒の細孔径分布測定
次に、メソポーラスジルコニア被覆触媒と、メソポーラスアルミナ被覆触媒、メソポーラスチタニア被覆触媒、メソポーラスシリカ被覆触媒について細孔径分布測定を行った。
触媒の細孔径分布測定条件と手順を以下に説明する。細孔径分布測定に先立ち触媒試料の加熱脱気処理を行った。これは、触媒に吸着した空気中の成分を除去するためである。触媒をパイレックス硝子製試料管に0.5g充填し、真空に排気しながら、10℃/minで300℃まで昇温した後、30分温度保持した。加熱脱気終了後、真空排気したまま室温まで降温し、容量法吸着量測定装置(ベルソープマックス、日本ベル製)に速やかに取付け超高真空排気した後に液体窒素温度における窒素吸着等温線の測定を行った。次に得られた吸着等温線をBJH法(Barrett,Joyner,Hallender法)を用いて解析し細孔径分布を得た。
次に、この細孔径分布において、(細孔径1~50nmの細孔容積)/(細孔径1~100nmの細孔容積)によって規定されるメソ孔比率を測定したところ、表1に示すように、何れも0.2以上であった。また、細孔径分布におけるピーク位置は、何れも、1~50nmの範囲内であった。
【実施例】
【0046】
【表1】
JP0006350898B2_000002t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9