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明細書 :酸素電極触媒およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6590138号 (P6590138)
公開番号 特開2015-195194 (P2015-195194A)
登録日 令和元年9月27日(2019.9.27)
発行日 令和元年10月16日(2019.10.16)
公開日 平成27年11月5日(2015.11.5)
発明の名称または考案の名称 酸素電極触媒およびその製造方法
国際特許分類 B01J  23/34        (2006.01)
B01J  23/889       (2006.01)
B01J  37/03        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
H01M   4/96        (2006.01)
H01M  12/06        (2006.01)
H01M  12/08        (2006.01)
FI B01J 23/34 M
B01J 23/889 M
B01J 37/03 A
H01M 4/90 X
H01M 4/86 B
H01M 4/88 K
H01M 4/96 B
H01M 12/06 F
H01M 12/08 K
H01M 4/86 M
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2015-053955 (P2015-053955)
出願日 平成27年3月17日(2015.3.17)
優先権出願番号 2014070585
優先日 平成26年3月28日(2014.3.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年1月19日(2018.1.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】衣本 太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100093665、【弁理士】、【氏名又は名称】蛯谷 厚志
【識別番号】100128495、【弁理士】、【氏名又は名称】出野 知
【識別番号】100111903、【弁理士】、【氏名又は名称】永坂 友康
審査官 【審査官】佐藤 慶明
参考文献・文献 特開2013-176717(JP,A)
米国特許出願公開第2014/0023939(US,A1)
特開2014-049304(JP,A)
K.MIYAZAKI et al.,Single-step synthesis of nano-sized perovskite-type oxide/carbon nanotube composites and their electrocatalytic oxygen-reduction activities,J. Mater. Chem.,2011年 2月14日,Vol.21 No.6,Pages 1913-1917
D.THIELE,Combined platinum/perovskite catalyst for an efficient nanostructured air electrode,Materials Chemistry and Physics,2010年11月 1日,Vol.124 No.1,Pages 529-534
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
H01M 4/86 - 4/98
H01M 12/00 - 16/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料を含む酸素電極触媒であり、前記繊維状炭素に前記ランタンマンガン酸化物が担持されており、ここで前記繊維状炭素はカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブまたは炭素繊維であり、かつ前記ランタンマンガン酸化物はLaMnO3、酸素欠陥を有する酸化物LaMnO(xは2.5以上、3未満)、Aサイト部分置換型La1-xxMnO3(AはY、KもしくはCa、xは0.5未満)、またはBサイト部分置換型LaMn1-yy3(BはV、Cr、FeもしくはAl、yは0.5未満)である酸素電極触媒。
【請求項2】
前記繊維状炭素100質量部に対し前記ランタンマンガン酸化物が1~50質量部の質量比である請求項1に記載の酸素電極触媒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸素電極触媒を製造する方法であって、前記ランタンマンガン酸化物がLaMnO3または酸素欠陥を有する酸化物LaMnOである場合には、ランタン源化合物およびマンガン源化合物を溶液とし、前記ランタンマンガン酸化物がAサイト部分置換型La1-xxMnO3またはBサイト部分置換型LaMn1-yy3である場合には、ランタン源化合物、マンガン源化合物、およびAサイト源化合物またはBサイト源化合物を溶液とし、繊維状炭素を混合した後に、熱処理して繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料を得ることを特徴とする酸素電極触媒の製造方法。
【請求項4】
前記溶液にさらに第四級塩を添加する請求項3に記載の酸素電極触媒の製造方法。
【請求項5】
前記第四級塩がアンモニウム塩またはホスホニウム塩である請求項4に記載の酸素電極触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、空気電池等における酸素電極触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば空気電池において、酸素電極反応(酸素発生反応と酸素還元反応)へ高い触媒活性を有する電極材料は、空気を活物質とする将来の二次電池に対して必要不可欠である。酸素電極反応には、これまでにペロブカイト(ペロブスカイト(灰チタン石)と同一の結晶構造を有する)型金属酸化物、パイロクロア(結晶系は斜方晶系の八面体結晶である)型金属酸化物、白金等の様々な材料が検討されてきている(たとえば、特許文献1)。しかしながら、電池の高い重量エネルギー密度を達成し、電極の低価格化を図るためには、さらに金属の使用量を減らし、電極自体の軽量化を図ることが望まれている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2002-102694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決し、電池の高い重量エネルギー密度を達成するとともに、小型軽量化を可能にし、しかも電極の低価格化を可能にする酸素電極触媒とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するために、以下の発明を提供するものである。
(1)繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料を含む酸素電極触媒であり、ここで前記繊維状炭素はカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブまたは炭素繊維であり、かつ前記ランタンマンガン酸化物はLaMnO3、酸素欠陥を有する酸化物LaMnO(xは2.5以上、3未満)、Aサイト部分置換型La1-xxMnO3(AはY、Sr、KもしくはCa、xは0.5未満)、またはBサイト部分置換型LaMn1-yy3(BはV、Cr、FeもしくはAl、yは0.5未満)である酸素電極触媒。
(2)前記繊維状炭素100質量部に対し前記ランタンマンガン酸化物が1~50質量部の質量比である上記(1)に記載の酸素電極触媒。
(3)ランタン源化合物およびマンガン源化合物を溶液とし、繊維状炭素を混合した後に、熱処理して繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料を得ることを特徴とする酸素電極触媒の製造方法。
(4)前記溶液にさらに第四級塩を添加する上記(3)に記載の酸素電極触媒の製造方法。
(5)前記第四級塩がアンモニウム塩またはホスホニウム塩である上記(4)に記載の酸素電極触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
例えば空気電池において、本発明の酸素電極触媒を適用することにより、技術的には金属の使用量を減らすとともに電極自体の軽量化を実現して、電池の高い重量エネルギー密度を達成する優れた効果を呈する。またこれにより経済的には電極の低価格化も有利に可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の酸素電極触媒における複合材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。
【図2】本発明の酸素電極触媒における複合材料の酸素電極触媒能の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の酸素電極触媒における複合材料は、繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料である。本発明の酸素電極触媒において繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料とする技術的意義は次の通りである。

【0009】
従来、酸素電極触媒に球状のカーボン材料(例カーボンブラック)に酸素電極反応電極触媒を担持された例はあるが、本発明のように繊維状形態のナノカーボン材料に直接、酸素電極反応電極触媒を担持する方法は提供されてこなかった。上記の製造方法でランタンマンガン酸化物(LaMnO3)に対して繊維状炭素を後述の好ましい重量割合で担持することが可能で、その酸素電極反応への触媒活性を評価したところ、後述するように、たとえば酸素還元反応開始電位は0.1M水酸化カリウム水溶液中で0.94V、酸素発生反応開始電位は6.0M水酸化カリウム水溶液中で1.46Vと理論値の1.22Vから±0.3V以内で収まるほど高い活性を示した。また、本発明の触媒はカーボンナノファイバー等の繊維状炭素にランタンマンガン酸化物が担持されている形態であり、耐久性の向上にも有効である。

【0010】
繊維状炭素の原材料としては、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、炭素繊維、等であるのが好適である。カーボンナノファイバーとしては、気相法炭素繊維またはフィブリルが挙げられ、径が50~200nm、長さが5~10μm程度が通常である。炭素繊維としては、PAN系またはピッチ系が代表的であり、径5~20μm程度、長さ0.1~3mm程度の短繊維が挙げられる。

【0011】
ランタンマンガン酸化物は、典型的にはLaMnOで示されるが、酸素欠陥を有する酸化物LaMnO、Aサイト部分置換型(La1-xxMnO3)またはBサイト部分置換型(LaMn1-yy3)であってもよい。酸素欠陥を有する酸化物において、xは通常2.5以上、3未満である。酸素欠陥の技術的効果としては、酸素あるいは水酸化物イオンの吸着が容易に起こり得ることによる電極触媒活性の向上が期待される。Aサイト部分置換型において、AとしてはY(イットリウム)、Sr(ストロンチウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)などが挙げられ、xは0.5未満、好適には0.3未満である。Bサイト部分置換型において、BとしてはV、Cr、Fe,Alが挙げられ、yは0.5未満、好適には0.3未満である。このような異種元素を一部マンガンと置換させるにより、酸素欠陥を出現させると同時に、酸化物自体の導電性の向上などの効果が見込まれ、さらなる電極触媒活性の向上、電池としての性能向上が期待される。

【0012】
ランタンマンガン酸化物と繊維状炭素の質量比は、繊維状炭素100質量部に対しランタンマンガン酸化物が1~50質量部であるのが好適であり、さらに好適には繊維状炭素100質量部に対しランタンマンガン酸化物が10~30質量部である。

【0013】
本発明の酸素電極触媒おける繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料の製造方法においては、好適には、ランタン源化合物およびマンガン源化合物を溶液とし、繊維状炭素を混合した後に、熱処理して繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料を得ることができる。

【0014】
ランタン源化合物およびマンガン源化合物としては、硝酸塩、塩化物塩、硫酸塩、水酸化物塩等の水溶性化合物が好適に使用される。難溶性のそれらの酸化物も用いることができるが、混合物となり複合化し難くなる。

【0015】
さらに好適には、ランタン源化合物およびマンガン源化合物とともに、溶液に第四級塩を添加することで、ランタンおよびマンガンの複合酸化物の形成を促進し得る。第四級塩としては、アンモニウム塩またはホスホニウム塩が好適であり、テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。

【0016】
これらの原料の量比は、ランタン源化合物およびマンガン源化合物に対し、第四級塩が等量から300倍程度の大過剰までとできるが、過剰量である方がより複合化が促進される。

【0017】
得られる混合物は、好ましくはアルゴン等の不活性雰囲気下または真空下で乾燥後に、熱処理される。熱処理条件は、500℃~1000℃、1~20時間程度が好適である。酸化性雰囲気であると、500℃程度以上から繊維状炭素の燃焼が始まり、複合材料中の繊維状炭素の質量比が著しく低くなる。また、1000℃を超えると、繊維状炭素の燃焼にともなうLaMnO3の還元が生じ、LaMnO3が形成しなくなる恐れがある。

【0018】
得られる繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料においては、繊維状炭素にランタンマンガン酸化物が担持されており、繊維状炭素とランタンマンガン酸化物の質量比が、繊維状炭素100質量部に対しランタンマンガン酸化物が1~50質量部であるのが好適であり、さらに好適には繊維状炭素100質量部に対しランタンマンガン酸化物が10~30質量部である。

【0019】
得られる繊維状炭素-ランタンマンガン酸化物複合材料は、空気電池等において、特にアルカリ溶液中で酸素電極反応へ触媒活性を有し、かつ繊維形態を有するカーボンナノファイバー等を主たる基材として用いることにより空気電池等の小型軽量化を可能にする。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
マンガン源として硝酸マンガン6水和物(Mn(NO32・6H2O)を、ランタン源として硝酸ランタン6水和物(La(NO33・6H2O)を用いて、それぞれ0.0005mol/dm3の水溶液を200mL調製した。それに0.14mol/dm3テトラメチルアンモニウム水溶液を添加し、すぐに市販の気相成長カーボンナノファイバー(径150nm)を0.1g投入し、1時間攪拌した。ついで、吸引濾過と水による洗浄を行い、真空乾燥器で乾燥させた後、熱処理を行った。このようにして得られた生成物の電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)写真を図1に示す。
【実施例】
【0021】
これまでに球状のカーボン材料(例えばカーボンブラック)に酸素電極反応電極触媒を担持された例はあるが、本発明のように繊維状形態の炭素、たとえばナノカーボン材料に直接、酸素電極反応電極触媒を担持する方法は提供されてこなかった。上記の方法でカーボンナノファイバーに対してランタンマンガン酸化物はLaMnO3を質量割合約20%程度担持した。生成物を非晶質炭素円板に積載し固定化して、それを作用電極として、その酸素電極反応への触媒活性を電気化学測定にて評価したところ、酸素還元反応開始電位は0.1M水酸化カリウム水溶液中で0.94V、酸素発生反応開始電位は6.0M水酸化カリウム水溶液中で1.46Vと理論値の1.22Vから±0.3V以内で収まるほど高い活性を示した(図2参照)。また、同触媒はカーボンナノファイバーの端部にランタンマンガン酸化物が担持されている形態であり、耐久性の向上にも有効であることが期待される。図2に非担持(繊維状炭素のみ、破線)の場合の結果も示しているが、1.0V~1.2V程度範囲までに現れる酸化電流プラトーが認められなかった。この酸化電流プラトーは炭素の表面化学変化由来と考えられ、この結果から耐久性の向上が期待されることが認められた。
【実施例】
【0022】
実施例2~9
実施例1にならって、様々な繊維状炭素-ランタンマンガン酸化合物複合材料を製造した。実施例4~9では、Aサイト又はBサイト置換のために、表2に示したx又はyの値が得られる量の硝酸塩化合物を使用した。製造方法の概要を表1に示し、得られた複合材料の構成と効果の概要を表2に示す。
【実施例】
【0023】
【表1】
JP0006590138B2_000002t.gif
【実施例】
【0024】
【表2】
JP0006590138B2_000003t.gif

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の酸素電極触媒とその製造方法によれば、前述した効果のように、酸素電極の高い重量エネルギー密度を達成する空気電池を低価格で自動車業界等に提供することができる。このため現在、科学技術振興機構/先端的低炭素化技術開発のプロジェクト(ALCA)が2020年の事業化を目指している軽量小型化空気電池の実用化等に多大に貢献し得る。
図面
【図1】
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【図2】
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