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明細書 :高分散遷移金属触媒及びシリカ担体表面への遷移金属原子の高分散担持方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6399816号 (P6399816)
公開番号 特開2015-231611 (P2015-231611A)
登録日 平成30年9月14日(2018.9.14)
発行日 平成30年10月3日(2018.10.3)
公開日 平成27年12月24日(2015.12.24)
発明の名称または考案の名称 高分散遷移金属触媒及びシリカ担体表面への遷移金属原子の高分散担持方法
国際特許分類 B01J  29/035       (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
C01B   3/02        (2006.01)
FI B01J 29/035 M
B01J 37/02 101C
C01B 3/02 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2014-119923 (P2014-119923)
出願日 平成26年6月10日(2014.6.10)
審査請求日 平成29年5月29日(2017.5.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501273886
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立環境研究所
発明者または考案者 【氏名】魯 保旺
個別代理人の代理人 【識別番号】100093816、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 邦雄
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開平06-106029(JP,A)
特開平10-072454(JP,A)
特開昭58-193735(JP,A)
米国特許第04511744(US,A)
特開昭59-189936(JP,A)
特表2013-522003(JP,A)
特開2008-006353(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
遷移金属の無機塩をアンモニウム水溶液に添加した混合液で、遷移金属アンモニウム配位錯イオンを形成し、
前記混合液をシリカ担体と接触させて前記シリカ担体表面のシラノール基の酸素原子に前記遷移金属を結合させ、
前記遷移金属と前記酸素と前記シリカ担体表面のケイ素原子とを化学結合させ、
前記シリカ担体を回収し、
前記シリカ担体の露出表面に、遷移金属原子を原子レベルで高分散担持させてなることを特徴とする
高分散遷移金属触媒の製造方法
【請求項2】
前記遷移金属が、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、カドミウムおよびクロムの内から選択される1種またはそれ以上である請求項1に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法
【請求項3】
遷移金属の無機塩をアンモニウム水溶液に添加した混合液で、遷移金属アンモニウム配位錯イオンを形成し、
前記混合液をシリカ担体と接触させることで、
前記シリカ担体表面のシラノール基の酸素原子と前記遷移金属が結合し、
さらに、前記遷移金属と前記酸素と前記シリカ担体表面のケイ素原子とが化学結合することで、
前記シリカ担体の露出表面に、遷移金属原子を原子レベルで高分散担持させることを特徴とする
シリカ担体表面への遷移金属原子の高分散担持方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法によって得られた高分散遷移金属触媒に、
バイオマスから得られた混合ガスを接触させることで、二酸化炭素の排出を抑制することを特徴とするバイオマスガスの処理方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法によって得られた高分散遷移金属触媒に、
バイオマスから得られた混合ガスを接触させることで、タール成分の生成量を抑制することを特徴とするバイオマスガスの処理方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法によって得られた高分散遷移金属触媒に、
バイオマスから得られた混合ガスを接触させることで、水素ガス濃度を濃縮し、分離することを特徴とする水素ガスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属をシリカ担体に担持させた触媒に関し、より詳しくは、触媒活性金属原子である遷移金属原子をシリカ表面に化学結合させ、遷移金属原子を原子レベルでシリカ表面に高分散担持させた高分散遷移金属触媒等に関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属が高い触媒能力を持つことはよく知られている。しかし、その金属原子同士が凝集して大きな集合体になってしまうと、触媒反応に関与する原子の数が見かけ上減ってしまい、せっかくの触媒能力を十分に発揮させることができない。
【0003】
一方、遷移金属粒子を原子レベルで担体に分散担持させることができれば、それぞれの原子が反応に関与できることになり、その触媒としての能力を飛躍的に上げることができる。
【0004】
従来、触媒を製造するには、特許文献1の段落0004に示すように、種々の方法が知られている。遷移金属を担持する方法(従来担持法)としては、含浸法、粉末添加法、共沈法などが用いられている(図4)。しかし、それらの方法では、遷移金属原子を担体表面に原子レベルで分散させることができず、触媒としての性能を十分に発揮させることができない。
【0005】
そこで、ニッケル等、高い触媒能力を持つ遷移金属を、担体表面に原子レベルで分散する方法の開発が期待されている。図5の(A)に示すように、固体表面(担体表面)に遷移金属(M)を原子レベルで高分散させた高分散遷移金属触媒であれば、高効率で反応物から生成物を生成できる。それには、図5(B)に示すように、(1)伝統的な触媒(遷移金属の集合体)、(2)担持触媒(遷移金属の集合体の分散)を超え、原子レベルで、担体表面に遷移金属を高分散させる新たな固定化方法の開発が必要である。
【0006】
ここで、廃棄物系バイオマスの高効率なガス化改質技術として、高分散遷移金属触媒を適用することで、バイオマスから再生可能利用エネルギーへの転換を容易にし、グリーンテクノロジーとして社会実装するための基礎技術が確立する。
【0007】
廃棄物系バイオマスに熱分解ガス化技術を適用すると、H、CO、COなどを含むガスが生成する。しかし、種々の副生成物が共存しているため、そのままでは当該生成ガスの利用価値はあまり高くない。そこで、高分散遷移金属触媒を用いれば、当該生成ガスから、高濃度H、COが得られ、またはCHの生成をも可能にする。
【0008】
その結果、バイオマスのガス化/多段触媒変換プロセスを経て、エネルギー回収技術により、COの排出抑制と副生成物の低減を可能にすることができる。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2001-26422号公報
【0010】

【非特許文献1】Journal of Nanoscience and Technology, 2011, Vol. 11, 2361-2367. [Characteristics of SBA-15 synthesized by one-step method].
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、遷移金属原子を担体表面に原子レベルで分散させた高分散遷移金属触媒、及びシリカ担体表面への遷移金属原子の高分散担持方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、
(1)
遷移金属の無機塩をアンモニウム水溶液に添加した混合液で、遷移金属アンモニウム配位錯イオンを形成し、
前記混合液をシリカ担体と接触させて前記シリカ担体表面のシラノール基の酸素原子に前記遷移金属を結合させ、
前記遷移金属と前記酸素と前記シリカ担体表面のケイ素原子とを化学結合させ、
前記シリカ担体を回収し、
前記シリカ担体の露出表面に、遷移金属原子を原子レベルで高分散担持させてなることを特徴とする
高分散遷移金属触媒の製造方法
(2)
前記遷移金属が、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、カドミウムおよびクロムの内から選択される1種またはそれ以上である(1)に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法
(3)
遷移金属の無機塩をアンモニウム水溶液に添加した混合液で、遷移金属アンモニウム配位錯イオンを形成し、
前記混合液をシリカ担体と接触させることで、
前記シリカ担体表面のシラノール基の酸素原子と前記遷移金属が結合し、
さらに、前記遷移金属と前記酸素と前記シリカ担体表面のケイ素原子とが化学結合することで、
前記シリカ担体の露出表面に、遷移金属原子を原子レベルで高分散担持させることを特徴とする
シリカ担体表面への遷移金属原子の高分散担持方法。
(4)
(1)又は(2)に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法によって得られた高分散遷移金属触媒に、バイオマスから得られた混合ガスを接触させることで、二酸化炭素の排出を抑制することを特徴とするバイオマスガスの処理方法。
(5)
(1)又は(2)に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法によって得られた高分散遷移金属触媒に、バイオマスから得られた混合ガスを接触させることで、タール成分の生成量を抑制することを特徴とするバイオマスガスの処理方法。
(6)
(1)又は(2)に記載の高分散遷移金属触媒の製造方法によって得られた高分散遷移金属触媒に、バイオマスから得られた混合ガスを接触させることで、水素ガス濃度を濃縮し、分離することを特徴とする水素ガスの製造方法。
とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、遷移金属とシリカ担体表面のケイ素原子との間に,酸素を介して化学結合を形成することで、過去に報告されている遷移金属の担持方法と比較し、遷移金属がシリカ担体表面に原子レベルで分散担持され、高性能な触媒を作製できる。また同時に当該高分散担持方法は、工業的に大量製造にも容易に適用することができる。
【0014】
資源循環・廃棄物研究センターの熱処理プラントにおいて、本発明に係る高分散遷移金属触媒を改質触媒として用い、バイオマスから得られたガスの改質を行うことにより、高濃度(40-60%)の水素生成や、二酸化炭素及びタール量の大幅削減(0.1g/NM以下)が可能になる(図3(A)、(B))。
【0015】
本発明は、水素生成、アンモニアやメタノールの合成、ガス精製と転換、水素添加、脱水素、石油精製、環境浄化などの広範な技術分野で高効率な工業用触媒として利用することができ、また、材料として、磁性体材料、電気材料、顔料の原料、染色材料としての応用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明である高分散遷移金属触媒の製造方法の概略図及び説明である。
【図2】本発明である高分散遷移金属触媒のキャラクタリゼショーン(特性評価)結果である。図2(A)に従来法と本発明法で得た触媒の粉末X線回折パターンである。図2(B)に従来法と本発明法で得た触媒の可視・紫外分光スペクトルである。
【図3】本発明の効果及び用途に関する説明図である。図3(A)は、バイオマスのガス化および多段触媒変換プロセスを経てエネルギー回収技術によりバイオマスの循環再利用の模式図である。図3(B)はバイオマスから高度エネルギー回収プロセスの模式図である。
【図4】従来の遷移金属触媒担持法の説明図である。
【図5】遷移金属触媒の高機能化についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
本発明である高分散遷移金属触媒は、図1に示すように、シリカのようによく用いられる担体表面に、種々の遷移金属を原子レベルで高分散担持する方法であり、
下記の方法によって得られる:
(1)遷移金属(M)の無機塩を、水に溶解させ、アンモニウム水溶液を添加し、反応させ、遷移金属アンモニウム配位錯イオンを形成する。遷移金属塩を水に溶解してから、アンモニウム水溶液を添加し、遷移金属種の錯イオンを形成することにより塩基溶液に溶解性が高い遷移金属が得られる。塩基溶液に溶解性が高い遷移金属種の錯体の形成によって、遷移金属酸化物の生成を抑制することができるため、遷移金属を原子レベルでシリカ担体の露出表面に分散させることができる。遷移金属として、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、カドミウムおよびクロムが例示できる。
触媒として、
ニッケルは、水素化処理、脱硫、水素添加、窒素化合物の除去、スチームリフォーミング、メタネーション、石油精製、水素製造、オゾン分解などに利用できる。
銅は、脱硫、COの除去、CO転換、CO酸化、スチームリフォーミング、メタノール合成、モノマーの精製、水素還元、脱水素反応、水素製造、オゾン分解、有害ガスの除去などに利用できる。
亜鉛は、塩素化合物除去、脱硫、COの除去、CO転換、スチームリフォーミング、メタノール合成、モノマーの精製、水素還元、石油精製、水素製造、有害ガスの除去などに利用できる。
コバルトは、素化処理、水素添加、石油精製などに利用できる。
(2)遷移金属アンモニウム配位錯イオンをシリカ表面のシラノール基と接触させ、反応させることにより、酸素原子介してシリカ担体のケイ素原子と結合させた。
遷移金属、酸素、そしてケイ素の間に化学結合を形成させることにより、シリカ担体表面に遷移金属を原子レベルで高分散担持させた。
(3)ろ過することにより、水と分離し、原子レベルで高分散担持させた遷移金属原子を回収した。
(4)使用用途により焼成の操作を加える必要がある。
【実施例】
【0019】
・担体の調整方法
非特許文献1を参照して、メソポーラスシリカ担体を合成して用いた。
【実施例】
【0020】
(1)比較例(a)
従来法(含浸法)でメソポーラスシリカ担体へのNiの分散担持方法
20gのエタノールを坩堝に加え、前記合成したメソポーラスシリカ担体重量に対するNiO重量10%に相当する硝酸ニッケル六水和物を前記容器に入れ、超音波をかけて溶解させた後、3%の前記合成したメソポーラスシリカ担体を前記容器に入れてから、2時間超音波を続けてかけた。その後、室温でエタノールを蒸発させ、80℃で乾燥させた。500℃で5時間焼成することにより、従来法でNiが分散したメソポーラスシリカを得た。
【実施例】
【0021】
(2)実施例(b)
本発明法でメソポーラスシリカ担体へのNiの高分散担持方法
1)30gの水を容器に加え、前記合成したメソポーラスシリカ担体重量に対するNiO重量10%に相当する1.28g硝酸ニッケル六水和物を前記容器に入れ、溶解してからNiモル数に対する4倍のNH水溶液1.17gを滴下し、Niアンモニウム配位錯イオンを調整し、得られた塩基をNi前躯体とした。
2)攪拌しながら、前記調整したNi前躯体に3gの前記合成したメソポーラスシリカ担体を前記容器に入れてから、5分間攪拌を続けた。その後、48時間静置した。
3)ろ過、洗浄、乾燥などの一連の操作を行なった後、500℃で5時間焼成し、Niを高分散したメソポーラスシリカを得た。
【実施例】
【0022】
・合成した触媒の分析方法
(1)X線回折装置(理学 Multiflex)を用い、CuKα 線を得られた生成物(触媒)に照射し、回折角度10°から90°までのXRDパターンを得た(図2(A))。
可視・紫外分光装置(PerkinElmer LAMBDA 950)を用い、波長400~800nm範囲に測定し、生成物(触媒)の可視・紫外分光(UV-VIS)スペクトルを得た(図2(B))。
【実施例】
【0023】
得られた生成物のXRDパターンを図2(A)に示す。縦軸はピーク回折強度、横軸は回折角度である。従来方法で得られた生成物(触媒)のXRDパターンにはNiOに帰属する回折ピークが観測された。一方、本発明法で、得られた生成物(触媒)のXRDパターンにはNiOに帰属する回折ピークが観測されなかった。このことは、本発明法で、Niがメソポーラス担体のケイ素との間に結合した(Niの原子レベル分散)、または極めて小さいNiO粒子として存在することを示唆している。
【実施例】
【0024】
上記生成物のUV-VISスペクトルを図2(B)に示す。縦軸はピーク吸収強度、横軸は波長である。従来方法で得られた上記生成物(触媒)のUV-VISスペクトルにはNiOに帰属するバンド(289nm付近のブロードバンド)が観測された。一方、本発明法で、得られた上記生成物(触媒)のUV-VISスペクトルにはNiOに帰属するバンドが観測されなかった。
【実施例】
【0025】
これらのことから、Niがすべてメソポーラス担体のケイ素との間に結合した(Niの原子レベル分散)ことが強く示唆され、小さいNiO粒子として存在する可能性が排除された。したがって、本発明法でNiが原子レベルでメソポーラスシリカ担体表面に高分散担持したと言える。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4