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明細書 :非相反伝送線路装置とその測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6489601号 (P6489601)
公開番号 特開2015-181211 (P2015-181211A)
登録日 平成31年3月8日(2019.3.8)
発行日 平成31年3月27日(2019.3.27)
公開日 平成27年10月15日(2015.10.15)
発明の名称または考案の名称 非相反伝送線路装置とその測定方法
国際特許分類 H01P   1/32        (2006.01)
H01Q   3/24        (2006.01)
H01Q  13/20        (2006.01)
H01P   1/11        (2006.01)
FI H01P 1/32
H01Q 3/24
H01Q 13/20
H01P 1/11 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 24
出願番号 特願2014-133071 (P2014-133071)
出願日 平成26年6月27日(2014.6.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 http://dx.doi.org/10.1063/1.4865775 アンドレイ・ポロフニュク、上田哲也、門勇一、および伊藤龍男が、上記アドレスのウェブサイトでthe AIP Publishing(ザ・エイ・アイ・ピー・パブリシング)により公開された、Journal of Applied Physics 115,17E519(2014)(ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス 115, 17E519,(2014年))において、「Phase-constant-nonreciprocal composite right/left-handed metamaterials based on coplanar waveguides(コプレーナ線路からなる位相定数が非可逆な右手/左手系複合メタマテリアル)」の論文について2014年2月21日に公開した。
優先権出願番号 2014040437
優先日 平成26年3月3日(2014.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年6月8日(2017.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】上田 哲也
【氏名】アンドレイ・ポロフニュク
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100125874、【弁理士】、【氏名又は名称】川端 純市
審査官 【審査官】米倉 秀明
参考文献・文献 国際公開第2008/111460(WO,A1)
特開2008-054146(JP,A)
特公昭33-007561(JP,B1)
特開平11-088015(JP,A)
調査した分野 H01P 1/32
H01P 1/11
H01Q 3/24
H01Q 13/20
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロ波の伝送線路部分と、容量性素子を等価的に含む直列枝の回路と、上記伝送線路部分からそれぞれ分岐して設けられかつ誘導性素子を等価的に含む第1及び第2の並列枝の回路とを有する少なくとも1つの単位セルを、第1と第2のポートの間で縦続接続して構成され、
上記各単位セルの伝送線路部分は、ストリップ導体と、当該ストリップ導体の両側の接地導体とを備えたコプレーナ線路であり、
上記第1の並列枝の回路は、第1の電気長を有する第1のスタブ導体であり、
上記第2の並列枝の回路は、第1の電気長と実質的に同一の電気長を有する第2のスタブ導体である、
順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが互いに異なる非相反伝送線路装置において、
上記各単位セルの伝送線路部分は、上記コプレーナ線路の面と平行でありかつ上記マイクロ波の伝搬方向に対して垂直な横方向の成分を含む方向で、上記コプレーナ線路の面内に外部磁界発生器により外部磁界により磁化され、
上記非相反伝送線路装置は、
上記コプレーナ線路の背面に設けられたフェライト板と、
上記フェライト板と遮蔽金属板との間に背面キャビティ又は上記フェライト板よりも小さい誘電率を有する誘電体を形成するように設けられ、上記フェライト板をカバーする遮蔽金属板とを備えたことを特徴とする非相反伝送線路装置。
【請求項2】
上記外部磁界発生器は、上記非相反伝送線路装置を伝送する伝送電力の方向が互いに逆方向の関係にある右手系モードと左手系モードの各分散曲線が交差する近傍を動作点とし、上記外部磁界を変化させることにより、上記各単位セルの伝送線路部分の順方向と逆方向の位相定数の差Δβと、自由空間の位相定数β0との大小関係をかえることで、当該動作点を、上記非相反伝送線路装置からマイクロ波を放射する放射領域と、上記非相反伝送線路装置からマイクロ波を放射しない非放射領域との間で切り替えることを特徴とする請求項1記載の非相反伝送線路装置。
【請求項3】
上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力し、上記外部磁界発生器は、上記外部磁界を変化させることにより、上記各単位セルの伝送線路部分の順方向と逆方向の位相定数の差Δβと、自由空間の位相定数β0との大小関係をかえることで、当該動作点を上記放射領域と上記非放射領域との間で切り替えて、上記マイクロ波信号を振幅変調させて放射することを特徴とする請求項2記載の非相反伝送線路装置。
【請求項4】
請求項2記載の非相反伝送線路装置を用いて、上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力したときに、上記非相反伝送線路装置から放射される放射電力及び反射される反射電力を測定する非相反伝送線路装置の測定方法であって、
上記第1のポートに入力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記第2のポートから出力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記測定された各電力に基づいて、上記非相反伝送線路装置から放射されるマイクロ波信号の放射電力と、上記非相反伝送線路装置から反射されるマイクロ波信号の反射電力を測定するステップとを含むことを特徴とする非相反伝送線路装置の測定方法。
【請求項5】
請求項2記載の非相反伝送線路装置を用いて、上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力したときに、上記非相反伝送線路装置から放射される放射電力及び材料損失を測定する非相反伝送線路装置の測定方法であって、
上記第1のポートに入力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記第2のポートから出力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記測定された各電力に基づいて、上記非相反伝送線路装置から放射されるマイクロ波信号の放射電力と、上記非相反伝送線路装置の材料損失を測定するステップとを含むことを特徴とする非相反伝送線路装置の測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが互いに異なる非相反伝送線路装置とその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアルの一つとして右手/左手系複合伝送線路(以下、CRLH(Composite Right/Left-Handed)伝送線路という。)が知られている。CRLH伝送線路は、所定の周波数帯域で負の実効透磁率及び負の実効誘電率を有するように、波長に比べて十分に小さい間隔で、線路の直列枝に容量素子を実質的に周期的に挿入し、並列枝に誘導性素子を実質的に周期的に挿入して構成される。最近、CRLH伝送線路に対して非可逆伝送の機能を付加した非可逆(非相反ともいう。)移相CRLH伝送線路が提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。非可逆移相CRLH伝送線路は、同一の周波数を有する電磁波が順方向に伝搬するときは正の屈折率を示し、逆方向に伝搬するときは負の屈折率を示すことができる。
【0003】
非可逆移相CRLH伝送線路を用いて伝送線路共振器を構成すると、共振周波数を変えることなく共振器サイズを自由に変えることができる。さらに、共振器上の電磁界分布は、進行波共振器の電磁界分布と同様である。このため、非可逆移相CRLH伝送線路を用いた伝送線路共振器を用いて、電磁界の振幅が一様でありかつ電磁界の位相が線路に沿って一定の勾配で直線的に変化する擬似進行波共振器を構成することができる。このとき、共振器上の電磁界分布の位相勾配は、共振器を構成する伝送線路の非可逆移相特性によって決まる。以下、非可逆移相CRLH伝送線路を用いた伝送線路装置を、非可逆伝送線路装置又は非相反伝送線路装置という。
【0004】
メタマテリアルはここ十数年、アンテナへの応用の分野で大変興味深い重要なテーマとなっている。これまでにも、非相反CRLHメタマテリアルが、CRLH伝送線路を用いた指向性漏れ波アンテナへの応用を目的として提案されている。また、最近は、0次共振器から大きく発展した擬似進行波共振器に基づくアンテナ(例えば、非特許文献1参照。)が提案され、従来の漏れ波アンテナに比べて、放射効率が高く、コンパクトであるにもかかわらず利得と指向性を増加させている。
【0005】
これまでに提案されている非相反伝送線路装置の多くは、従来のマイクロストリップ線路からなる右手/左手系複合伝送線路装置の中央のストリップ線路下に、垂直に磁化されたフェライトロッドを埋め込んだ構造を採用している。このとき、非相反伝送線路装置からなる擬似進行波共振器を備えたアンテナ装置からの放射ビーム方向は、共振器上の電磁界分布の位相勾配によってきまる。また、フェライトが軟磁性体であれば、外部印加磁界の大きさあるいは向きを変えることにより、線路の非可逆移相特性が変化し、その結果ビーム走査をすることができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2008/111460号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2011/024575号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2012/115245号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばコプレーナ線路を備えた非相反伝送線路装置において、放射領域と非放射領域との間で切り替えを行うことができなかった。
【0008】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、コプレーナ線路を備えた非相反伝送線路装置において、放射領域と非放射領域との間で切り替えを行うことができる非相反伝送線路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る非相反伝送線路装置は、マイクロ波の伝送線路部分と、容量性素子を等価的に含む直列枝の回路と、上記伝送線路部分からそれぞれ分岐して設けられかつ誘導性素子を等価的に含む第1及び第2の並列枝の回路とを有する少なくとも1つの単位セルを、第1と第2のポートの間で縦続接続して構成され、順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが互いに異なる非相反伝送線路装置において、
上記各単位セルの伝送線路部分は、ストリップ導体と、当該ストリップ導体の両側の接地導体とを備えたコプレーナ線路であり、
上記各単位セルの伝送線路部分は、上記マイクロ波の伝搬方向に対して異なる方向に外部磁界発生器により外部磁界により磁化され、
上記第1の並列枝の回路は、第1の電気長を有する第1のスタブ導体であり、
上記第2の並列枝の回路は、第1の電気長と実質的に同一の電気長を有する第2のスタブ導体であり、
上記非相反伝送線路装置は、
上記コプレーナ線路の背面に設けられたフェライト板と、
上記フェライト板と遮蔽金属板との間に背面キャビティ又は上記フェライト板よりも小さい誘電率を有する誘電体を形成するように設けられ、上記フェライト板をカバーする遮蔽金属板とを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記非相反伝送線路装置において、上記外部磁界発生器は、上記非相反伝送線路装置を伝送する伝送電力の方向が互いに逆方向の関係にある右手系モードと左手系モードの各分散曲線が交差する近傍を動作点とし、上記外部磁界を変化させることにより、当該動作点を、上記非相反伝送線路装置からマイクロ波を放射する放射領域と、上記非相反伝送線路装置からマイクロ波を放射しない非放射領域との間で切り替えることを特徴とする。
【0011】
また、上記非相反伝送線路装置において、上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力し、上記外部磁界発生器は、上記外部磁界を変化させることで、当該動作点を上記放射領域と上記非放射領域との間で切り替えることにより、上記マイクロ波信号を振幅変調させて放射することを特徴とする。
【0012】
第2の発明に係る非相反伝送線路装置の測定方法は、上記非相反伝送線路装置を用いて、上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力したときに、上記非相反伝送線路装置から放射される放射電力及び反射される反射電力を測定する非相反伝送線路装置の測定方法であって、
上記第1のポートに入力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記第2のポートから出力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記測定された各電力に基づいて、上記非相反伝送線路装置から放射されるマイクロ波信号の放射電力と、上記非相反伝送線路装置から反射されるマイクロ波信号の反射電力を測定するステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
第3の発明に係る非相反伝送線路装置の測定方法は、上記非相反伝送線路装置を用いて、上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力したときに、上記非相反伝送線路装置から放射される放射電力及び材料損失を測定する非相反伝送線路装置の測定方法であって、
上記第1のポートに入力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記第2のポートから出力されるマイクロ波信号の電力を測定するステップと、
上記測定された各電力に基づいて、上記非相反伝送線路装置から放射されるマイクロ波信号の放射電力と、上記非相反伝送線路装置の材料損失を測定するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る非相反伝送線路装置によれば、コプレーナ線路を備えた非相反伝送線路装置において、放射領域と非放射領域との間で切り替えを行うことができる。ここで、上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力し、上記外部磁界発生器は、上記外部磁界を変化させることで、当該動作点を上記放射領域と上記非放射領域との間で切り替えることにより、上記マイクロ波信号を振幅変調させて放射することができる。さらに、上記非相反伝送線路装置を用いて、上記非相反伝送線路装置にマイクロ波信号を入力したときに、上記非相反伝送線路装置から放射される放射電力及び反射される反射電力を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置における第1の例の伝送線路の単位セル60Aの等価回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置における第2の例の伝送線路の単位セル60Bの等価回路図である。
【図3】本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置における第3の例の伝送線路の単位セル60Cの等価回路図である。
【図4】本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置における第4の例の伝送線路の単位セル60Dの等価回路図である。
【図5】従来技術に係る相反伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図6】従来技術に係る相反伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図7】実施形態に係る非相反伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図8】実施形態に係る非相反伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図9】図1の単位セル60Aを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Aの構成を示すブロック図である。
【図10】図2の単位セル60Bを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Bの構成を示すブロック図である。
【図11】図3の単位セル60Cを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Cの構成を示すブロック図である。
【図12】図4の単位セル60Dを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Dの構成を示すブロック図である。
【図13A】比較例に係る非相反伝送線路装置70Fの構成を示す斜視図である。
【図13B】(a)は図13Aの非相反伝送線路装置70Fで用いるインターディジタルキャパシタCseの等価回路及び平面図であり、(b)は図13Aの非相反伝送線路装置70Fで用いるシャントコプレーナインダクタLshの等価回路及び平面図である。
【図13C】図13Aの非相反伝送線路装置70Fの分散特性を示すグラフである。
【図13D】図13Aの非相反伝送線路装置70FのSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
【図14】図13Aの非相反伝送線路装置70Fにおける横方向の電界分布を示すグラフである。
【図15A】本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置70Eの構成を示す斜視図である。
【図15B】図15AのA-A’線についての縦断面図である。
【図16A】図15Aの非相反伝送線路装置70Eの放射領域の分散特性(4πM=1450G)を示すグラフである。
【図16B】図15Aの非相反伝送線路装置70EのSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
【図16C】図15Aの非相反伝送線路装置70Eの非放射領域の分散特性(4πM=1850G)を示すグラフである。
【図17A】図15Aの非相反伝送線路装置70Eを用いた直接変調方式を用いたマイクロ波変調装置の構成を示すブロック図である。
【図17B】図17Aのマイクロ波変調装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図18】図15Aの非相反伝送線路装置70Eを用いたマイクロ波電力測定方法を用いたマイクロ波測定装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。

【0017】
1.実施形態の概要

【0018】
固定周波数でのビーム走査の能力を有する指向性放射は、ビーム走査が周波数依存性でありかつ大きなビームスクイント効果の結果をもたらす従来の漏れ波アンテナに対して、非可逆メタマテリアルアンテナに利用可能である。しかし、非可逆のメタマテリアルを使用して広い角度範囲でビーム走査は、左手系周波数帯域と右手系周波数帯域との間での遷移領域において、自由空間の位相定数βに匹敵するような位相定数Δβにおける大きな非可逆性を要求する。

【0019】
本来、非可逆移相メタマテリアルは、一方の側から挿入されたマイクロストリップシャントスタブを有するマイクロストリップ線路構造に基づいて構成された。非相反性は、中央のマイクロストリップにより形成される構造の面に対して垂直な面に関して空間的な非対称性と、磁化されたフェライトにおけるジャイロ性によって提供される時間の反転対称性の破れとの組み合わせにより達成される。しかしながら、4GHzを超えるマイクロ波帯で、位相定数に現れる非可逆性Δβを増大させて、自由空間の位相定数βに近づけることができなかった。その結果、典型的な非可逆移相メタマテリアルアンテナにおいて放射角度を30度異常にすることは困難であった。解決策としては、従来からよく使用される飽和磁化4πMs=1750GのYIGよりも、高い飽和磁化を有するフェライトを用いれることが考えられる。残念ながら、このような高い飽和磁化を有するマイクロ波フェライトの問題点としては、強磁性損失が飽和磁化の大きさで相対的に考えても、YIGに比べてはるかに高くなり、その結果、減衰定数において非相反性が顕著に現れることが知られている。

【0020】
マイクロストリップ線路からなるメタマテリアルにおいて、位相定数の非相反性が小さくなる問題点に対する別の解決策としては、構造設計を変更することが挙げられる。一般に、中央の金属ストリップ幅を広げることにより、非可逆伝搬において含まれるフェライトの体積を増大させることにより、非可逆性を増大することができる。そのことは、基本的にはマイクロストリップ線路幅に対するフェライト棒の幅の比から説明できる。しかし、マイクロストリップ線路を広げると、特性インピーダンスは低下し、CRLHメタマテリアル構造の動作周波数を低下させることになる。一方、非相反性を強化するために挿入されているシャントスタブを短くすることで、誘電率εが負となるカットオフ周波数を高くすることができる。従って、非常にブロッホインピーダンスの低いメタマテリアルを用いて、線路幅をかなり広くしかつシャントスタブをほとんどゼロの長さに短縮することにより、両方の効果を組み合わせて、制限された範囲で非可逆を増大させることが潜在的に可能である。ただし、この場合のスタブのもつインダクタンスの下限は依然として構造厚さによって決定される。

【0021】
2.非相反伝送線路装置の基本原理及び動作原理
まず始めに、本実施形態に係る非相反伝送線路装置(非可逆伝送線路装置ともいう。)の基本構成及び動作原理について、図1~図12を参照して説明する。なお、本明細書中で用いた数式については、各式の後に示した丸括弧でくくられた番号を参照する。

【0022】
本発明の各実施形態に係る非相反伝送線路装置70A~70Dは、伝送線路の単位セルを縦続接続して構成される。図1~図4は、本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置における例示的な伝送線路の単位セル60A~60Dの等価回路図である。ここで、各単位セルは、順方向と逆方向の伝搬定数が異なる非相反位相推移特性を有する伝送線路部分を含み、直列枝の回路に容量性素子、並列枝の回路に誘導性素子が等価的に挿入された構成を有する(図1~図4を参照。)。このような本願発明に係る非相反伝送線路装置の構成を適用可能な回路又は装置は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、スロット線路、コプレーナ線路などマイクロ波、ミリ波、準ミリ波、テラヘルツ波において用いられるプリント基板回路、導波管、誘電体線路を含み、これらだけでなく、プラズモン、ポラリトン、マグノン等を含む導波モードあるいは減衰モードを支える構成全般、あるいはそれらの組み合わせ、さらに等価回路として記述可能な自由空間などの全てを含む。非相反伝送線路装置による伝送する電磁波は、例えばUHF(Ultra High Frequency)バンドの周波数帯以上のマイクロ波、ミリ波、準ミリ波、テラヘルツ波を含み、本明細書では、これらを総称して「マイクロ波」という。

【0023】
非相反位相推移特性を有する伝送線路装置は、上述した伝送線路のうち、特にジャイロ異方性を有する材料を部分的もしくは全体的に含み、かつ電磁波の伝搬方向に対して異なる磁化方向(より好ましくは、伝搬方向に対して直交する方向)で磁化されて、上記伝搬方向と上記磁化方向とにより形成される面に対して非対称性を有する構造の伝送線路を用いて構成される。非相反位相推移特性を有する伝送線路としては、上述した伝送線路以外に、同等の非相反位相推移機能を有する、波長に比べて充分小さな集中定数素子も使用可能である。ジャイロ異方性を有する材料としては、自発磁化もしくは外部より印加した直流もしくは低周波の磁界により誘起された磁化あるいは自由電荷の周回運動により、材料の特性を表す誘電率テンソルもしくは透磁率テンソルあるいはその両方が、ジャイロ異方性を持つ状態として表される場合全てを含む。ジャイロ異方性を有する材料の具体例としては、マイクロ波、ミリ波などで用いられるフェライトなどのフェリ磁性体、強磁性体材料、固体プラズマ(半導体材料など)及び液体、気体プラズマ媒質、さらに微細加工などにより構成された磁性人工媒質などが挙げられる。

【0024】
直列枝の回路に挿入される容量性素子としては、電気回路でよく用いられるコンデンサ、マイクロ波、ミリ波などで用いられる分布定数型容量素子だけでなく、等価的には、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負の値を持つような回路又は回路素子であってもよい。負の実効透磁率を示すためには、直列枝の回路が容量性素子として支配的に動作する線路として等価的に記述される必要があり、負の実効透磁率を示す素子の具体例としては、金属からなるスプリットリング共振器、スパイラル構成などの磁気的共振器を少なくとも1つ含む空間的配置、あるいは磁気的共振状態にある誘電体共振器の空間的配置、あるいはフェライト板マイクロストリップ線路に沿って伝搬するエッジモードのように、負の実効透磁率を持つ導波モードもしくは減衰モードで動作するマイクロ波回路などが使用可能である。さらに、直列枝の回路に挿入される容量性素子としては、上述したもの以外に、容量性素子と誘導性素子の直列接続、並列接続あるいはそれらの組み合わせであってもよい。挿入されるべき部分の素子又は回路が全体として容量性を示すものであってもよい。

【0025】
並列枝の回路に挿入される誘導性素子として、電気回路で用いられるコイルなどの集中定数型素子や、マイクロ波、ミリ波などで用いられる短絡スタブ導体などの分布定数型誘導性素子だけでなく、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負の値を持つ回路又は素子を用いることができる。負の実効誘電率を示すためには、並列枝が誘導性素子として支配的に動作する伝送線路として等価的に記述される必要があり、負の実効誘電率を示す素子の具体例としては、金属細線、金属球などの電気的共振器を少なくとも1つ含む空間的配置、あるいは金属だけでなく電気的共振状態にある誘電体共振器の空間的配置、あるいはTEモードが遮断領域にある導波管、平行平板線路など、負の実効誘電率を持つ導波モードもしくは減衰モードで動作するマイクロ波回路などが使用可能である。また、並列枝の回路に挿入される誘導性素子としては、上述したもの以外に、容量性素子と誘導性素子の直列接続、並列接続あるいはそれらの組み合わせであってもよい。挿入されるべき部分が全体として誘導性を示す回路又は素子であってもよい。

【0026】
非相反位相推移特性を有する伝送線路装置において、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負の場合、減衰モードとなりうるが、負の実効透磁率は、直列枝の回路に容量性素子が挿入された場合に相当することから、同線路の等価回路は、非相反位相推移部分と直列容量素子部分の両方を含む。

【0027】
非相反位相推移特性を有する伝送線路装置において、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負の場合、減衰モードとなりうるが、負の実効誘電率は、並列枝の回路に誘導性素子が挿入された場合に相当することから、同線路の等価回路は、非相反位相推移部分と並列誘導素子部分の両方を含む。

【0028】
図1及び図2は、単位セル60A,60Bが非対称T型構造及び非対称π型構造をそれぞれ有する場合を示している。また、図3及び図4は、より単純な場合として、単位セル60C,60Dが対称T型構造及び対称π型構造をそれぞれ有する場合を示している。以下では原則として、単位セル60A~60Dの線路長(つまり周期長さp=p1+p2)が波長に比べて十分小さい場合を仮定しているので、従来技術に係る右手/左手系複合伝送線路装置における伝送線路の単位セルの取り扱いと同様に、T型構造、π型構造あるいはL型構造の場合であっても、本質的に同様の結果が得られる。実際、L型構造は、パラメータ操作により図1又は図2の場合に含められる。なお、波長に対する単位セル60A~60Dの線路長がここで述べる基本的動作を制約しないことを強調しておく。

【0029】
図1~図4に示す線路構造は単純で、所定の線路長(図1及び図2では線路長p1,p2であり、図3及び図4では線路長p/2である。)をそれぞれ有する2本の伝送線路部分61,62を含む伝送線路の直列枝の回路に容量性素子又は容量性を示す回路網が挿入され、並列枝の回路には誘導性素子又は誘導性回路網が挿入されている。これらの素子をまとめて単純に実効的な大きさ(線路長)を示すために、図1においては、キャパシタC1,C2及びインダクタLをそれぞれ挿入するように図示する。同様に、図2においては、キャパシタC及びインダクタL1,L2をそれぞれ挿入するように図示する。伝送線路部分61,62はそれぞれ、その順方向と逆方向の伝搬定数が異なる非相反位相推移特性を有するように構成されるが、本明細書では、伝搬定数を考察する際に、伝搬定数の虚部、すなわち位相定数を用いる。伝送線路部分61の非相反性を表すパラメータとして、順方向(ポートP11からポートP12に向う方向をいう。)の位相定数及び特性インピーダンスをそれぞれβNp1及びZp1と表し、逆方向(ポートP12からポートP11に向う方向をいう。)のそれらをそれぞれ、βNm1及びZm1と表す。同様に、伝送線路部分62の非相反性を表すパラメータとして、順方向の位相定数及び特性インピーダンスをそれぞれβNp2及びZp2と表し、逆方向のそれらをそれぞれ、βNm2及びZm2と表す。図1及び図2の伝送線路は2つの伝送線路部分61,62が非対称であるが、図3及び図4の伝送線路は2つの伝送線路部分61,62が対称であり、p1=p2=p/2,βNp1=βNp2=βNp,βNm1=βNm2=βNm,Zp1=Zp2=Z,Zm1=Zm2=Zを満たし、さらに、T型構造の場合はC1=C2=2Cであり、π型構造の場合はL1=L2=2Lである。具体例として、図3及び図4の伝送線路において、単位セル60A~60Dの両端に周期的境界条件を課すと、次式を得る。

【0030】
【数1】
JP0006489601B2_000002t.gif

【0031】
ここで、Δβ及び
【数2】
JP0006489601B2_000003t.gif
は次式で表される。

【0032】
【数3】
JP0006489601B2_000004t.gif
【数4】
JP0006489601B2_000005t.gif

【0033】
ω及びβはそれぞれ、動作角周波数と、周期構造に沿って伝搬する電磁波の位相定数とを表す。式(1)は動作角周波数ωと位相定数βの関係を表していることから、分散関係式(ω-βダイアグラム)となる。

【0034】
式(1)において、相反性(βNp=βNmかつZ=Z)を仮定すると、従来技術に係る相反伝送線路装置と同じになり、式(1)は次式に簡単化される。

【0035】
【数5】
JP0006489601B2_000006t.gif

【0036】
但し、式(2)中のアドミタンスY及びインピーダンスZはそれぞれ、Y=1/jωL、Z=1/jωCと仮定している。

【0037】
図5は、従来技術に係る相反伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフであり、図6は、従来技術に係る相反伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。図5及び図6のグラフは、正規化位相定数β・p/πに対する角周波数ωの特性を示す。式(2)で表されるような従来技術に係る相反伝送線路装置の場合、典型的な分散曲線は図5のように表され、一般に右手系(RH)伝送特性及び左手系(LH)伝送特性を示す帯域の間に禁止帯が現れる。左手系伝送帯域の上限及び右手伝送帯域の下限の周波数は、位相定数β=0の条件を式(2)に課すことにより、角周波数ωに関する2次方程式の解として得られる。結果として次の2つの解を得る。

【0038】
【数6】
JP0006489601B2_000007t.gif
【数7】
JP0006489601B2_000008t.gif

【0039】
ここで、ε及びμは、単位セル60A~60Dの伝送線路部分61,62の実効誘電率及び透磁率を表す。従って、禁止帯がゼロとなるように、カットオフ周波数がω=ωを満たすためには、式(2)が位相定数β=0の条件に対して重解を持てばよく、結果として次式を得る。

【0040】
【数8】
JP0006489601B2_000009t.gif

【0041】
式(5)の結果は、直列枝の回路に挿入される容量性素子であるキャパシタCと、並列枝の回路に挿入される誘導性素子であるインダクタLとがなすインピーダンス√(L/C)が、挿入先の伝送線路部分61,62の特性インピーダンスZと同じであれば、ギャップが生じないというものであり、一種のインピーダンス整合条件となっている。その場合の分散曲線を図6に示す。

【0042】
式(1)により与えられる非相反伝送線路装置の場合の分散曲線について説明する。相反伝送線路装置の場合、式(2)によれば、分散曲線は位相定数β=0の直線(ω軸)に対して対称であるが、非相反伝送線路装置の場合、分散曲線の対称軸がβ=0の直線よりもβに関して
【数9】
JP0006489601B2_000010t.gif
だけ正の方向にシフトしていることが、式(1)の左辺から容易にわかる。以下、βNRを、非相反移相量という。従って、図5に対応して、図7を得る。

【0043】
図7は、実施形態に係る非相反伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフであり、図8は、実施形態に係る非相反伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。

【0044】
このように、非相反伝送線路装置が、相反伝送線路装置と大きく異なるのは、分散曲線の対称軸がω軸から右側又は左側にシフトすることであり、これは、式(1)から求められる順方向の位相定数β=βと逆方向の位相定数β=βがβ≠β(従って、順方向と逆方向の伝搬定数が互いに異なる)、つまり非相反位相推移の効果による。なお、非相反移相量βNRは、順方向及び逆方向の位相定数βとβを用いて式(6)の代わりに
【数10】
JP0006489601B2_000011t.gif
と表すこともできる。結果として、次の5種類の伝送帯域(A)~(E)に分類することができる。

【0045】
(A)順方向及び逆方向伝搬共に左手系伝送。但し、伝搬定数の大きさは互いに異なる。
(B)順方向が左手系伝送、逆方向は伝搬定数がゼロで管内波長が無限大となる。
(C)順方向が左手系伝送、逆方向が右手系伝送。
(D)順方向が右手系伝送、逆方向は伝搬定数がゼロで管内波長が無限大となる。
(E)順方向及び逆方向伝搬共に右手系伝送。但し、伝搬定数の大きさは互いに異なる。

【0046】
但し、一般に、伝送帯域(C)では、図7からわかるように中央に阻止帯域(禁止バンド)が現れる。また、特に、図7及び図8においてRH/LHで示している伝送帯域を利用する際には、各ポートに双方向(順方向及び逆方向)でマイクロ波信号を入力しても、位相の流れが所定の同一方向を向く(左手系伝送及び右手系伝送)という特長を有する。

【0047】
比較のため、従来技術の相反伝送線路装置の場合を考えると、電力伝送の方向が正及び負となる2つの同一モードは、式(5)の整合条件が成立している場合に、つまり、図6に示すように、位相定数β=0の点で2つのモードが結合することなく交差することになる。同様に、式(1)により与えられる分散曲線の対称軸線上β=Δβ/2=βNRにおいて、式(1)は角周波数ωに関する2次方程式となり、バンドギャップを生じさせないために重解の条件を課すと、次式を得る。

【0048】
【数11】
JP0006489601B2_000012t.gif
もしくは
【数12】
JP0006489601B2_000013t.gif

【0049】
但し、ε及びμは、単位セル60A~60Dの非相反伝送線路部分61,62における順方向の実効誘電率及び透磁率を表し、ε及びμは逆方向の場合のそれらを表す。式(7)より、2つのモードが交差する付近でギャップを生じさせないための条件は、相反伝送線路装置の式(5)の場合と類似して、インピーダンス整合条件となっている。しかも、順方向もしくは逆方向のどちらかで整合が取れるように、インダクタL及びキャパシタCを挿入すればよく、インピーダンス整合条件が、相反伝送線路装置の場合に比べて、より緩やかであることが特長として挙げられる。

【0050】
図1及び図2に示されているような、2つの伝送線路部分61,62が非対称である、より一般的な場合について、若干説明する。このような非対称の場合であっても、基本的には図7及び図8と同様の分散曲線に従って動作する。分散曲線の対称軸の位置は、図7及び図8の横軸の正規化位相定数β・p/π上で次式の位置に修正される。

【0051】
【数13】
JP0006489601B2_000014t.gif

【0052】
また、2つの非相反伝送線路部分61,62が同一の伝搬特性を有している場合、バンドギャップを生じない整合条件は式(7)と同じになる。但し、図1の場合は
【数14】
JP0006489601B2_000015t.gif
であり、図2の場合、
【数15】
JP0006489601B2_000016t.gif
である。

【0053】
本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置の全体は、図9~図12に示すように、図1~図4の単位セル60A~60Dを少なくとも1つ以上含みかつ縦続接続されて構成される。図9は、図1の単位セル60Aを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Aの構成を示すブロック図である。図9において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Aが縦続接続されることにより、非相反伝送線路装置70Aを構成している。図10は、図2の単位セル60Bを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Bの構成を示すブロック図である。図10において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Bが縦続接続されることにより、非相反伝送線路装置70Bを構成している。図11は、図3の単位セル60Cを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Cの構成を示すブロック図である。図11において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Cが縦続接続されることにより、非相反伝送線路装置70Cを構成している。図12は、図4の単位セル60Dを縦続接続して構成された非相反伝送線路装置70Dの構成を示すブロック図である。図12において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Dが縦続接続されることにより、非相反伝送線路装置70Dを構成している。なお、複数個の単位セル60A~60Dが縦続接続される場合においても、必ずしも単位セル60A~60Dのうちの単一タイプのものを用いて構成される必要はなく、異なるタイプの単位セルを組み合わせて縦続接続してもよい。

【0054】
以下、本実施形態及び以下の各実施形態に係る非相反伝送線路装置70A~70Eの分散曲線は、図8に示すような平衡状態の分散曲線である。また、図8の分散曲線において、2つのモードが交差する交点の動作角周波数ωを中心角周波数ωと定義し、交点における非相反移相量βNRを非相反移相量βNRCと定義する。ただし、図7に示すようなバンドギャップの存在する非平衡状態の分散曲線であっても動作可能である。この場合、図7における中心動作角周波数ωに相当する角周波数は、伝送線路の両側の終端条件にも依存するが、図8の分散曲線のバンドギャップ端に相当する2つの角周波数ωcU,ωcLもしくはその間のバンドギャップ内の角周波数が該当する。

【0055】
3.比較例に係る非相反伝送線路装置の構成
図13Aは比較例に係る非相反伝送線路装置70Fの構成を示す斜視図であり、図13B(a)は図13Aの非相反伝送線路装置70Fで用いるインターディジタルキャパシタCseの等価回路及び平面図であり、図13B(b)は図13Aの非相反伝送線路装置70Fで用いるシャントコプレーナインダクタLshの等価回路及び平面図である。なお、インターディジタルキャパシタCse及びシャントコプレーナインダクタLshは実施形態に係る図15Aの非相反伝送線路装置70Eにおいても用いる。

【0056】
図13Aにおいて、フェライト板21を有する基本的なコプレーナ線路20をベースとするメタマテリアルである非相反伝送線路装置70Fが図示されている。当該比較例での基本的な考え方は、マイクロストリップ線路を基本とする非相反メタマテリアルの場合、非相反性を向上させるためにフェライトの体積を増加させても非可逆性を大きくすることが困難なのに対して、コプレーナ線路からなる構造の場合、容易に大きくすることができる。この目的のために、フェライト板21は、伝送線路の平行な2つの金属面間には位置させていないが、コプレーナ線路20の一方の側には、磁化と伝搬方向の作る面に関して構造が非対称となるよう、厚いフェライト板21が装荷されている。そのような構造の非対称性を、電磁波の伝搬方向に対して横方向に当該構造の面に磁化されたフェライト板21におけるジャイロ効果と組み合わせることで、メタマテリアルにおける大きな非可逆伝搬を達成することができる。この構造において位相定数の非可逆性を大きく増大させるためには、構造の非対称性を増大させることが必要であり、それはフェライト板21の厚さを大きくすることに相当する。このことは、非可逆メタマテリアルからなるアンテナ装置に当てはめて考えると、漏れ波放射において大きなビーム走査角を得ることができることを意味する。非相反性は、外部磁界発生器80により外部の直流磁界を用いて飽和磁化Msからその反対値-Msまでの範囲でフェライトの磁化Mを変化させことで調整することができ、メタマテリアルアンテナ装置に対しては、ビーム走査能力を提供することができる。

【0057】
メタマテリアル構造は、非相反伝送線路装置70A~70Dと同じ基本的概念を継承している。非相反伝送線路装置70Fに挿入された直列キャパシタCseとシャントインダクタLshを設けることで、その分布キャパシタンス及び分布インダクタンスを形成し、同一の周波数帯域において負の実効透磁率μおよび負の実効誘電率εを実現できる。従来技術に係るマイクロストリップ線路をベースとする非相反メタマテリアルにおいては、複数の集中定数素子を調節し、動作周波数f付近でバンドギャップのないバランス構造が設計されている。本発明の設計においては、等価回路モデルの複数の集中定数素子が、図13Bに示すように、複数のインターディジタルキャパシタCseと複数のシャントコプレーナインダクタLshを用いて非相反メタマテリアルが構成されている。

【0058】
図13Bにおいては、誘電体基板10上には、ストリップ導体11と、ストリップ導体11から所定距離だけ離隔されて形成された接地導体12,13とを備えてコプレーナ線路20を構成する。図13B(a)において、複数のストリップ導体14と、複数のストリップ導体15が互いに違いに所定の間隔で形成されることによりインターディジタルキャパシタCseを構成する。なお、非相反伝送線路装置70Fの両端ポートでは、インターディジタルキャパシタ2Cseを形成する。また、図13B(b)において、ストリップ導体11から分岐して接地導体12側に突出しかつ接地導体12とは所定の間隔だけ離隔して形成された後接地導体12に接続されるように、互いに実質的に同一の電気長を有するスタブ導体16,17を形成することでシャントコプレーナインダクタLshを構成する。

【0059】
図13Aと同様のCRLHコプレーナ構造が従来技術において提案されているが、従来技術では、透過係数の大きさに現れる非可逆性に注目し、位相定数の非相反性は重要視されていなかった。図13Aに示すように、コプレーナ線路20は、厚さhの低誘電率を有する誘電体基板10上に形成される。厚いフェライト板21は、図13Aに図示されるように、コプレーナ線路20の金属面に直接に形成され、面内で磁化される。なお、コプレーナ線路20における電磁界は一般に、フェライト板21がそうであるように、より高い誘電率を有する層に集中することはよく知られている。そのため一般的な指向性放射はフェライト板が装荷された側から起こると考えられる。

【0060】
本発明者らは、図13Aに図示された非相反伝送線路装置70Fの電気的特性について、有限要素法を用いて数値シミュレーションを行った。

【0061】
図13Cは図13Aの非相反伝送線路装置70Fの分散特性を示すグラフである。また、図13Dは図13Aの非相反伝送線路装置70FのSパラメータの周波数特性を示すグラフである。ここで、YIGフェライト板21の厚さhは2.4mmに設定され、誘電体基板10の厚さは0.8mmであった。インターディジタルキャパシタCse及びインダクタLshのパラメータは、7GHzよりやや下側の中心周波数fcにおいて、非相反伝送線路装置70Eがバンドギャップを持たないように選択されている。図13Cの分散特性からわかるように、飽和磁化4πMs=1750GのYIGフェライト板21に対して1.1rad/cm以上の非可逆量Δβを得ている。これにより、非相反伝送線路装置70Fを用いたアンテナ装置の場合、放射角度を両側の方向で±50度まで走査可能とすることが可能となる。

【0062】
図14は図13Aの非相反伝送線路装置70Fにおける横方向の電界分布を示すグラフである。図14の左半分と右半分は、動作周波数6GHzにおいて、互いに反対方向に伝搬する電磁波の電界分布を示す。また、誘電体基板10上に誘電体基板10Aを載置した場合も図示している。

【0063】
残念ながら、位相定数の非相反性が大きいこの構造は、図13DにおけるSパラメータから分かるように、透過係数S21,S12の大きさに対しても、大きな非相反性を伴う。この非相反性の大きさは、単位セル当たり0.9dB程度と大きいが、これは当該構造からの非可逆放射に関連していることがわかっている。磁化されたフェライト板21中の磁気回転効果により、磁化ベクトルMと波数ベクトルβの作る面に関して電界分布が非対称になる。図14において、コプレーナ平面内で横方向に磁化されたフェライト板21において、電界分布の集中する箇所は、磁化ベクトルMと波数ベクトルβとの間の方向関係によって決定される.その複数の表面の1つに発生し、-y方向に伝搬する左手系モードの場合、コプレーナ線路20のある側の面に対して、電磁界が強く集中している。同じ動作周波数帯域で、逆向きに伝搬する右手系モードの場合、フェライト板21の2つの境界面のうちコプレーナ線路のない側に電磁界分布が集中し、その結果、フェライト板21から当該環境に対して、より大きな効率で電磁波を漏洩させる傾向がある。フェライト板21中の乱れた電界分布は、誘電体基板10を有するコプレーナ線路構造の反対側から、過度の不要な放射を発生させる。そのため、非相反伝送線路装置70Fの性能を低下させる可能性がある。

【0064】
4.実施形態に係る非相反伝送線路装置の構成
図15Aは本発明の実施形態に係る非相反伝送線路装置70Eの構成を示す斜視図である。また、図15Bは図15AのA-A’線についての縦断面図である。

【0065】
フェライト板21からの非可逆な漏れ波放射の問題を回避するために、背面に背面キャビティ22を有する非相反伝送線路装置70Eが提案される。ここで、非相反伝送線路装置70Eは、比較例に係る非相反伝送線路装置70Fに比較して、背面側に、フェライト板21及び背面キャビティ22を形成し、それらを遮蔽金属板23により遮蔽したことを特徴としている。なお、最上面の誘電体層10aとフェライト板21との間に形成されたストリップ導体11と接地導体12,13により、コプレーナ線路20を構成する。また、外部磁界発生器80により横方向(少なくとも伝搬方向とは異なる方向であって、横方向の成分を含めばよい)から非相反伝送線路装置70Eに対して磁界Hが印加される。以下、非相反伝送線路装置70Eについて詳細説明する。なお、最上面の誘電体10aは基本的動作の上では、特に必要でない。

【0066】
図15Aにおいて、コプレーナ線路20を備えた非相反伝送線路装置70Eは、誘電体基板10上の金属層に形成されている。図15Bに図示されるように、金属層の他方の側にあるフェライト板21は、背面キャビティ22を形成するように囲む遮蔽金属板23によって遮蔽され、当該遮蔽側からの寄生放射を完全に防止することができる。従って、当該非相反伝送線路装置70Eは、最上面の誘導体層10a(誘電体層10aに代えて誘電体基板10を形成してもよいし、誘電体層をおく必要はないので、直接空気領域に面していても良い)からの均一な放射に限定され、漏洩波アンテナのためのブロードサイド開口として動作する。

【0067】
なお、コプレーナ線路の背面側の遮蔽板内にフェライト板21単体からなる構造を考えると、フェライトの誘電率が高いので、矩形導波管モードの伝搬が支配になる。これを防止するために、実効誘電率を低減させることを目的として、フェライト板21より下に、深さhの空気領域22を挿入していることに留意されたい。従って、空気領域22の厚さhは、フェライト板21の厚さhと同じオーダーである必要がある。同じ目的のために、できるだけ背面キャビティ22のx方向の幅をできるかぎり狭くすることが望まれる。そうしないと、TE10モードを抑圧するために、フェライト板21の後ろの背面キャビティ22の深さhを調整する必要がある。

【0068】
5.数値シミュレーション
本発明者らは、図15A及び図15Bに示す非相反伝送線路装置70Eについて数値シミュレーションを行った。

【0069】
図16Aは図15Aの非相反伝送線路装置70Eの放射領域の分散特性(4πM=1450G)を示すグラフである。また、図16Bは図15Aの非相反伝送線路装置70EのSパラメータの周波数特性を示すグラフである。さらに、図16Cは図15Aの非相反伝送線路装置70Eの非放射領域の分散特性(4πM=1850G)を示すグラフである。

【0070】
当該シミュレーションでは、材料及びコプレーナ構造のパラメータとして実用的な値を用いて行った。フェライト板21の磁化としては、ガーネットフェライトを使用している場合として4πM=1450Gとした。フェライト板21の誘電率はε=15、損失係数ΔH=40Oe、フェライト板21の厚さは、h=2.5mmであった。フェライト板21の背面の背面キャビティ22はフェライト板の厚さと同じ深さでh=2.5mmとしている。最上部の誘電体層10aの厚さh=0.8mmであって、誘電率ε=2.6を有する。背面キャビティ22を覆う構造の導電性側壁である遮蔽金属板23は、コプレーナ線路20の接地導体12,13に接続されている。

【0071】
図15Aのコプレーナ線路20のパラメータである空隙幅g,g,ストリップ導体幅w,空隙幅gはそれぞれ0.15mmに設定され、コプレーナ線路20の導体間幅w=1.05[mm]に設定されている。なお、空隙幅gはシャントコプレーナインダクタLshのストリップ導体幅であり、空隙幅gはインターディジタルキャパシタCseのストリップ導体幅である。周期p=3.3mmはメタマテリアルを構成する非相反伝送線路装置70Eの単位セルサイズを定義する。また、パラメータl=1.7mm及びl=0.7mmであり、前者はシャントコプレーナインダクタLshの単位長であり、後者はインターディジタルキャパシタCseの単位長であり、これにより、非相反伝送線路装置70Eのバンドギャップを効果的に削減することを可能にする。提案された非相反伝送線路装置70Eのモデルは、簡単な製造のためのものである。図15Bに示すように、フェライト板21は、非磁性金属にてなる遮蔽金属板23により形成されたチャネル部の内部に設けられ、誘電体層10上のコプレーナ線路20の構造によってカバーされている。当該アセンブリは、外部磁界発生器80により外部磁界が印加される。ここで、外部磁界発生器80は、非相反伝送線路装置70Eの横方向の少なくとも一方の側に設けられる。

【0072】
4単位セルの場合の数値シミュレーション結果は、アンソフト(Ansoft)社製HFSS(登録商標)バージョン13のソフトウェアにおけるFEMソルバーを用いて得られた。複素Sパラメータから得られた図16Aの分散特性において、非相反伝送線路装置70Eに沿った正及び負の電力伝送に対する分散曲線がそれぞれ図示されている。動作周波数は、互いに逆方向を向く電力伝送の異なる2モードに対して、位相定数が等しくなる条件(バンドギャップの上側および下側カットオフ周波数)に対応する。そのことは、図16Aから分かるように、この条件を満たす2つの周波数が存在し、そのことから発明者らはより大きなΔβを得るために、このうち低い周波数側のf=6.9GHzを選択した。周波数応答においてバンドギャップをさらに小さくすることは、非相反伝送線路装置70Eにおける複数の集中定数素子を設計するだけでは困難であった。この困難性は、具体的には4本の枝のインターディジタルキャパシタCseの不完全な非対称設計により生じている。

【0073】
位相定数の非相反性Δβは図13C中の点線で示されており、動作周波数fcで1.26rad/cmよりもはるかに大きな値を示しており、このことは本実施形態における大きな成果である。この値は、マイクロストリップ線路をベースとする非相反伝送線路装置の典型的な場合に比べて、2.2倍よりも大きい。ここで、非相反効果が位相定数βにおいてのみ顕著に現れることを強調しておく。一方で、図16BのパラメータS21とS12との間の透過係数の大きさに見られる非相反性は、単位セル当たり0.12dB未満であり、所望の通り、ほぼ無視できる程度の大きさになっている。また計算結果から、背面キャビティ22を有する構造を採用することにより、位相定数の非相反性の大きさΔβが改善することが可能であることがわかった。例えば、当該位相定数の非相反性の大きさΔβのうち、その15%程度はフェライト板21における小さい電磁界閉じ込めのためにフェライト板21のスクリーニングを用いない構造により失われていると考えられる。以上のように、非相反伝送線路装置70Eの背面キャビティ22の構造を採用する利点が無条件に確認された。

【0074】
さらに、フェライト板21に対して、磁化Mの大きさを増加させて、非可逆の大きさΔβを大きな値にすることにより、自由空間の位相定数βに近づくことができる。漏洩波アンテナ装置は、θ=±90度の角度でバックファイア放射又はエンドファイア放射を行う。磁化の値Msをさらに大きくすることにより、飽和磁化4πMs=1850Gのときの図16Cに示すように、動作周波数における非可逆の大きさΔβの分散特性は、漏れ波放射の起こる速波領域から遅波領域にシフトする。この場合は、例えばカルシウムバナジウムガーネット(CVG)のようないくつかのフェライトを用いることで実現可能である。従って、電磁波放射システムと電磁波非放射システムとの間で電子的なモード切り替えを行うには、外部直流磁界を用いて実現することができる。

【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、横方向に磁化されたフェライト板21の一方の面にコプレーナ線路20を構成し、信号線であるストリップ導体11に平行な直列枝にインターディジタルキャパシタCseを、ストリップ導体11と両側の接地導体12,13との間に並列枝として、一対の誘導性スタブ導体16,17が対称となるよう、それぞれ周期的に挿入されている。非相反伝送線路装置70Eの非相反性の大きさは、フェライト板21の磁化の大きさ(外部印加磁界の大きさ)とフェライト板21の厚さにより決まる。

【0076】
フェライト板21上に設置されたコプレーナ線路20と反対側にある下側の領域には、フェライト板21の厚さと同程度の厚さの背面キャビティ22(もしくは、フェライト板21の誘電率よりも低い低誘電率の誘電体層であってもよい。)が設けられており、さらにシールドを目的として、外側にコの字型の遮蔽金属板23が設置されている。遮蔽金属板23は主に、フェライト板21からの漏れ波放射を抑制するためのものであるが、コプレーナ線路20の面に対して垂直な側壁の2枚の遮蔽金属板23は、コプレーナ線路20に直交する電界を主成分にもつ導波管の基本モード伝搬を抑制(カットオフ)する役割を果たしており、半波長以下に近接配置させる必要がある。フェライト板21と下側遮蔽金属板23の間に挿入された背面キャビティ22も、導波管モード抑制構造を設計する場合に、遮蔽金属板23の金属側壁が、コプレーナ線路20の構造に影響を与えないよう十分距離を取るために、実効誘電率の低減のために導入されたものである。

【0077】
ここで、本実施形態に係る非相反伝送線路装置70Eは、外部磁界発生器80により印加される外部印加磁界を変えることにより、非相反伝送線路装置70Eの非可逆性を大幅に変えることができる。例えば、伝送電力の方向が互いに逆方向の関係にある右手系モードと左手系モードの分散曲線が交わる近傍を動作点として選ぶと、その動作点を、放射領域から非放射領域に亘って、移動させることが可能である。

【0078】
6.直接パルス変調方式
図17Aは図15Aの非相反伝送線路装置70Eを用いた直接変調方式を用いたマイクロ波変調装置の構成を示すブロック図である。また、図17Bは図17Aのマイクロ波変調装置の動作を示すタイミングチャートである。図17Aにおいて、マイクロ波信号発生器81はマイクロ波信号を発生して非相反伝送線路装置70Eのアンテナ装置に出力する。ここで、非相反伝送線路装置70Eの横方向から、パルス信号発生器82からのパルス信号により駆動される外部磁界発生器80からの磁界Hを非相反伝送線路装置70Eに印加する。当該パルス信号に応じて、外部磁界発生器80からの外部印加磁界Hの大きさを変化させることで、図17Bに示すように、非相反伝送線路装置70Eの動作点を放射領域から非放射領域まで移動させることにより、放射波の利得を動的に変化することが可能である。従って、当該非相反伝送線路装置70Eを、放射波を直接振幅変調する手段として、これを用いることが可能である。

【0079】
7.マイクロ波電力測定方法
図18は図15Aの非相反伝送線路装置70Eを用いたマイクロ波電力測定方法を用いたマイクロ波測定装置の構成を示すブロック図である。図18において、マイクロ波信号発生器81は電力Pgenのマイクロ波信号を発生して、パルス信号発生器83により駆動される電力増幅器84を介して非相反伝送線路装置70Eのアンテナ装置に出力する。ここで、非相反伝送線路装置70Eに入力されるマイクロ波信号の電力をPaccとし、その終端部におけるマイクロ波信号の電力をPmeasとする。また、当該アンテナ装置からマイクロ波信号の電力Prodが放射されるものとする。

【0080】
非相反伝送線路装置70Eを用いた直接電力測定方法により、外部磁界発生器80からの外部印加磁界Hの大きさを変えて、動作点を放射領域から非放射領域まで移動させることにより、非相反伝送線路装置70E内の材料損失と、非相反伝送線路装置70Eからの漏れ波放射の割合を以下のように推定することができる。

【0081】
マイクロ波信号発生器81からの入力電力Pgenは直接測定可能もしくは既知である。アンテナ装置を構成する非相反伝送線路装置70Eの終端での伝送電力Pmeasは測定できるが、アンテナ装置の動作状態によって変わる。アンテナの動作は2つの状態に分けられる。

【0082】
(状態A)非放射領域:自由空間の位相定数βoより大きな位相定数持つ領域で動作する場合。このときのアンテナ装置の終端での電力PmeasをP0とすると次式で表される。

【0083】
Pmeas=P0 (10)

【0084】
(状態B)放射領域:自由空間の位相定数βoより小さな位相定数持つ領域で動作する場合である。このときのアンテナ終端での電力PmeasをP1とすると次式で表される。

【0085】
Pmeas=P1 (11)

【0086】
以上のことから、いくつかのアンテナパラメータを推定することが可能となる。

【0087】
(1)アンテナの放射電力Pradあるいは放射損失は、非放射波領域と放射領域の間の電力差として次のように定義できる。

【0088】
Prad≒P0-P1 (12)

【0089】
放射領域動作における放射損のため、電力P1は電力P0よりも小さくなる。なお、上記の放射損を推定する手順においては、材料損失やアンテナの入力インピーダンスの変化を無視している。

【0090】
(2)非放射領域動作の場合、受信電力Paccは、材料損失を無視すると次式のようにみなせる。

【0091】
Pmeas=P0 (13)

【0092】
従って、次式を得る。

【0093】
Pacc≒P0 (14)

【0094】
一方、非相反伝送線路装置70Eの材料損失Pmlossを考慮すると、受信電力Paccは以下のように定義できる。

【0095】
Pacc≒P0+Pmloss (15)

【0096】
この場合の材料損失Pmlossは既知であり、一般的なアンテナ設計の場合には、実験的に求めることができる。材料損失Pmlossは、電力P0に依存して変動し、材料損失係数Kmlossを使って次式で表される。

【0097】
Pmloss=Kmloss×P0 (16)

【0098】
放射領域動作では次式で表される。

【0099】
P0≒P1+Prad (17)

【0100】
ここで、放射電力Pradは上記(1)に示すように測定データから取得できる。

【0101】
(3)材料損失Pmlossが無視できる(Pmloss≒0)もしくは既知の場合、アンテナ装置の反射電力Preflは、入力電力Pgenと受信電力Paccの差とみなすことができ、次式で表される。

【0102】
Prefl≒Pgen-Pacc (18)

【0103】
もし、材料損失Pmlossが考慮されるならば次式で表される。

【0104】
Prefl≒Pgen-P0-Pmloss (19)

【0105】
もし、材料損失Pmlossが無視できるならば次式で表される。

【0106】
Prefl≒Pgen-P0 (20)

【0107】
放射領域動作の場合、電力P0は次式で表される。

【0108】
P0≒P1+Prad (21)

【0109】
ここで、Pradは(1)に示すように、測定データより取得できる。

【0110】
(4)ここでは(2)(3)とは逆で、アンテナ装置の反射電力Preflは非相反伝送線路装置70Eの伝送線路系により測定可能である場合を考える。このとき、未知数として材料損失Pmlossは次式のように評価できる。

【0111】
Pmloss≒Pgen-Prefl-P0 (22)

【0112】
放射領域動作の場合、電力P0は次式のようにおける。

【0113】
P0≒P1+Prad (23)

【0114】
ここで、放射電力Pradは(1)に示すように測定データから取得できる。

【0115】
以上説明したように、非相反伝送線路装置70Eへの入力電力Pgenと、当該非相反伝送線路装置70Eの終端で測定される電力Pmeasに基づいて、当該非相反伝送線路装置70Eのアンテナ装置からの放射電力Pradを測定することができ、さらに加えて当該アンテナ装置の反射電力Preflと当該アンテナ装置の材料損失Pmlossのうち一方が既知であれば、他方を測定することができる。

【0116】
本放射電力推定法は、発明のアンテナにおいて有効であり、特に外部放射電力を測る必要がなく、動作点を放射領域と非放射領域の間でスイッチさせることと、アンテナを構成する線路終端での伝送電力測定さえ行えば可能となる。

【0117】
8.まとめ
以上説明したように、本実施形態において、コプレーナ線路20をベースとする非可逆性が純粋に位相定数に表れる非相反伝送線路装置70Eを提案し、シミュレーションを行った。当該装置70Eは、位相定数に現れる非常に大きな大きさの非相反性を用いて構成された。指向性アンテナ装置のアプリケーションを意図する場合は、これらのメタマテリアルを用いることにより、広い走査角度を有するビームスキャンアンテナ装置を提供することができる。背面キャビティ22を有する構造は、透過係数の大きさにおける非相反性を大幅に低下させることを可能にすることのみならず、フェライト板21におけるより良い電磁界閉じ込めにより、位相定数の非相反性をさらに高めることができる。外部直流磁界Hによって放射システムと非放射システムとの間の支配的なモードの切り替えという新しい効果を当該メタマテリアルにおいて得ることができる。当該現象を用いることにより、アンテナ装置、遅延線及びアイソレータなどに対して新しいアプリケーションを提供することができる。例えば、非放射システムに対するアンテナの切り替えは、マイクロ波送受信システムにおいて放射電力を簡単にかつ正確な測定を与えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明に係る非相反伝送線路装置70Eによれば、コプレーナ線路20を備えた非相反伝送線路装置70Eにおいて、放射領域と非放射領域との間で切り替えを行うことができる。
【0119】
また、パルス信号発生器82からのパルス信号に応じて、外部磁界発生器80からの外部印加磁界Hの大きさを変化させることで、非相反伝送線路装置70Eの動作点を放射領域から非放射領域まで移動させることにより、放射波の利得を動的に変化することが可能であり、当該非相反伝送線路装置70Eを、放射波を直接振幅変調する手段として、これを用いることができる。
【0120】
さらに、非相反伝送線路装置70Eへの入力電力Pgenと、当該非相反伝送線路装置70Eの終端で測定される電力Pmeasに基づいて、当該非相反伝送線路装置70Eのアンテナ装置からの放射電力Prad、当該アンテナ装置の反射電力Prefl、当該アンテナ装置の材料損失Pmlossを測定することができる。
【符号の説明】
【0121】
10…誘電体基板、
10a…誘電体層、
11…ストリップ導体、
12,13…接地導体、
14,15…ストリップ導体、
16,17…スタブ導体、
20…コプレーナ線路、
21…フェライト板、
22…背面キャビティ、
23…遮蔽金属板、
60A~60D…単位セル、
61,62…伝送線路部分、
70A~70E…非相反伝送線路装置、
80…外部磁界発生器、
81…マイクロ波信号発生器、
82,83…パルス信号発生器、
84…電力増幅器、
C,C1,C2…キャパシタ、
L,L1,L2…インダクタ、
Cse…インターディジタルキャパシタ、
Lsh…シャントコプレーナインダクタ、
P1,P2,P11,P12…ポート。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13A】
12
【図13B】
13
【図13C】
14
【図13D】
15
【図14】
16
【図15A】
17
【図15B】
18
【図16A】
19
【図16B】
20
【図16C】
21
【図17A】
22
【図17B】
23
【図18】
24