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明細書 :ペプチドワクチン療法の効果予測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6346493号 (P6346493)
公開番号 特開2015-213492 (P2015-213492A)
登録日 平成30年6月1日(2018.6.1)
発行日 平成30年6月20日(2018.6.20)
公開日 平成27年12月3日(2015.12.3)
発明の名称または考案の名称 ペプチドワクチン療法の効果予測方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2018.01)
FI C12Q 1/68 ZNA
請求項の数または発明の数 2
全頁数 21
出願番号 特願2014-099682 (P2014-099682)
出願日 平成26年5月13日(2014.5.13)
審査請求日 平成28年12月2日(2016.12.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】硲 彰一
【氏名】岡 正朗
【氏名】恒富 亮一
【氏名】竹之内 寛子
【氏名】浜本 義彦
【氏名】藤田 悠介
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査官 【審査官】平林 由利子
参考文献・文献 特表2013-520197(JP,A)
硲彰一ら,大腸癌に対する新規エピトープペプチドを用いたワクチン療法の現状と展望,日外科系連会誌,2012年,Vol.37, No.1,pp.41-45
生化学, 2010, 82(1):34-38
Mol. Cell Biochem., 2010, 341;291-299
Journal of Cellular Biochemistry, 2014 Mar, 115(3):549-556
Tohoku J. Exp. Med., 2014 Feb, 232(2):85-95
Pharmacogenomics J., 2011, 11(6):429-436
調査した分野 C12Q 1/00- 3/00
A61K 38/00-38/58
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被検者の組織又は体液中のマイクロRNAの発現量を測定することを特徴とするがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測を補助する方法であって、前記マイクロRNAが、以下の(1)~(3)、(5)~(13)に示すマイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAであり、前記がん患者が、ヒト白血球型抗原(HLA)-A*2402を保有する患者であり、前記ペプチドワクチン療法に用いるエピトープペプチドが、ヒト白血球型抗原(HLA)-A*2402に対する結合能を有する配列番号14~18に示す5種類のエピトープペプチドから選択される1種以上であることを特徴とする前記方法。
(1)配列番号1に示されるマイクロRNA-147b(hsa-miR-147b);
(2)配列番号2に示されるマイクロRNA-486-5p(hsa-miR-486-5p);
(3)配列番号3に示されるマイクロRNA-125b-1-3p(hsa-miR-125b-1-3p)
5)配列番号5に示されるマイクロRNA-378a-3p(hsa-miR-378a-3p);
(6)配列番号6に示されるマイクロRNA-196b-5p(hsa-miR-196b-5p);
(7)配列番号7に示されるマイクロRNA-224-5p(hsa-miR-224-5p);
(8)配列番号8に示されるマイクロRNA-20b-5p(hsa-miR-20b-5p);
(9)配列番号9に示されるマイクロRNA-659-3p(hsa-miR-659-3p);
(10)配列番号10に示されるマイクロRNA-1184(hsa-miR-1184);
(11)配列番号11に示されるマイクロRNA-18b-5p(hsa-miR-18b-5p);
(12)配列番号12に示されるマイクロRNA-135b-5p(hsa-miR-135b-5p);
(13)配列番号13に示されるマイクロRNA-23c(hsa-miR-23c);
【請求項2】
がん患者が、大腸がん患者であることを特徴とする請求項1記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の組織又は体液中のマイクロRNAの発現量を測定することを特徴とするがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測方法や、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測キットや、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは世界中で多くの罹患数がいる疾患であり、その中でも大腸がんは世界中で約100万人が毎年命を失っている疾患である。この10年間、標準化学療法(FOLFOX)とVEGFやEGFR抗体のようなモノクローナル抗体との併用療法により転移性大腸がん患者の予後は著しく改善してきた。しかしながら、多くの大腸がん患者において化学療法抵抗性により進行が進み、命を失っているのが現状である。
【0003】
がんは早期の発見がその治療にとって重要であり、そのために様々ながんの診断方法が開発されてきた。そのなかで、近年、マイクロRNAを測定することにより、がんの診断を行う手法が挙げられる。マイクロRNA(以下、「miR」ともいう)とは、細胞内に存在する長さ20から25塩基のRNAであり、他の遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられているノンコーディングRNAの一種である。これまでに、マイクロRNA分子からなる大腸がんの検査マーカー(特許文献1参照)や、無血清培地中で大腸がん細胞を培養し、培養液中に放出されるマイクロRNAを測定してがん細胞の悪性度を評価する方法(特許文献2参照)が提案されている。また、被検者が大腸がんを有するか又はそれを発生する危険性があるかどうかを診断する方法であって、被検者からの試験試料中のmiR-125b-1のレベルを測定することを含む方法(特許文献3参照)や、前立腺がんを有する患者におけるがんの再発尤度を定量化する方法であって、前記患者から採取された前立腺組織を含む生物学的試料中のmiR-486-5pの発現量を測定する工程を含む方法(特許文献4参照)や、血清中の腫瘍由来miR-486-5pが肺がんと関係していること(非特許文献1参照)や、miR-147bの発現が胃がん組織と正常な胃の組織との間で2倍以上異なっていること(非特許文献2参照)が報告されている。
【0004】
一方、標準的ながん療法では効果が不十分な患者に対する療法として、標準化学療法と併用するために、作用機序の異なる免疫療法の開発が世界的に進められている。開発初期の単純な腫瘍抗原エピトープペプチドは免疫療法効果が十分でないことが判明した。そこで、現在、抗腫瘍免疫ネットワークの重要なポイントを制御する免疫制御技術の開発が進められており、将来はそれらを組み合わせた複合免疫療法の開発が期待されている。免疫療法には腫瘍抗原エピトープペプチドが用いられ、たとえば、RNF43(ring finger protein 43)、TOMM34(34 kDa translocase of the outer mitochondrial membrane)、KOC1(IMP-3; IGF-II mRNA binding protein 3)等が報告されている(非特許文献3参照)。かかる免疫療法は、患者によって効果に個人差があり、療法を施す前に療法効果を予測することが好ましいため、免疫療法を行う前に、その効果を適切に予測できる方法の開発が重要な課題となっている。
【0005】
これまでに、被検者から得られた試料に含まれる、miR-660、miR-324-5p、miR-532-5p、及びこれらマイクロRNAと同一のファミリーに属するマイクロRNAからなる群から選ばれる1又は複数を測定する工程を含む、前記被検者における肝線維症の療法の効果予測方法(特許文献5参照)が提案されている。しかしながら、マイクロRNAの発現量とがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果との関係については知られていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】再表2011-040525号公報
【特許文献2】再表2011-001906号公報
【特許文献3】特開2013-046612号公報
【特許文献4】特表2013-532482号公報
【特許文献5】特開2012-125215号公報
【0007】

【非特許文献1】Li Y, Liang L, Zhang CY. Anal Chem. 2013 Dec 3;85(23):11174-9
【非特許文献2】Yao Y, Suo AL, Li ZF, Liu LY, Tian T, Ni L, Zhang WG, Nan KJ, Song TS, Huang C. Mol Med Rep. 2009 Nov-Dec;2(6):963-70
【非特許文献3】硲 彰一、岡 正朗 日外科系連会誌2012 37(1):41-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
がん免疫療法においては、その効果を適切に予測できる方法やそのためのバイオマーカーの確立が重要であり、さらに複合免疫療法構築のために必要な免疫制御技術を開発することにより、新たな複合免疫療法の治療戦略の構築を目指すことが必要である。そこで、本発明の課題は、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測方法や、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測キットや、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測可能なバイオマーカーを探索するため、標準化学療法が不応となった大腸がん患者に対するペプチドワクチン単独療法を行った症例の探索的解析を行うとともに、進行大腸がんの1次療法として標準化学療法とペプチドワクチン療法を行った症例の探索的解析も合わせて行った。その結果、マイクロRNAの発現量の高低により、ペプチドワクチン療法の効果が異なることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、[1]被検者の組織又は体液中のマイクロRNAの発現量を測定することを特徴とするがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測方法であって、前記マイクロRNAが、以下の(1)~(13)に示すマイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAであることを特徴とする方法;
(1)配列番号1に示されるマイクロRNA-147b(hsa-miR-147b);
(2)配列番号2に示されるマイクロRNA-486-5p(hsa-miR-486-5p);
(3)配列番号3に示されるマイクロRNA-125b-1-3p(hsa-miR-125b-1-3p);
(4)配列番号4に示されるマイクロRNA-196b-3p(hsa-miR-196b-3p);
(5)配列番号5に示されるマイクロRNA-378a-3p(hsa-miR-378a-3p);
(6)配列番号6に示されるマイクロRNA-196b-5p(hsa-miR-196b-5p);
(7)配列番号7に示されるマイクロRNA-224-5p(hsa-miR-224-5p);
(8)配列番号8に示されるマイクロRNA-20b-5p(hsa-miR-20b-5p);
(9)配列番号9に示されるマイクロRNA-659-3p(hsa-miR-659-3p);
(10)配列番号10に示されるマイクロRNA-1184(hsa-miR-1184);
(11)配列番号11に示されるマイクロRNA-18b-5p(hsa-miR-18b-5p);
(12)配列番号12に示されるマイクロRNA-135b-5p(hsa-miR-135b-5p);
(13)配列番号13に示されるマイクロRNA-23c(hsa-miR-23c);
や、[2]がん患者が、ヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen;HLA)-A*2402(以下、「HLA-A*2402」ともいう)を保有する患者であることを特徴とする上記[1]記載の方法や、[3]がん患者が、大腸がん患者であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の方法や、[4]ペプチドワクチン療法に用いるエピトープペプチドが、ヒト白血球型抗原(HLA)-A*2402に対する結合能を有するエピトープペプチドであることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の方法に関する。
【0011】
また、本発明は、[5]がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測キットであって、以下の(1)~(13)に示すマイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブ又はプライマーを備えたキット;
(1)配列番号1に示されるマイクロRNA-147b(hsa-miR-147b);
(2)配列番号2に示されるマイクロRNA-486-5p(hsa-miR-486-5p);
(3)配列番号3に示されるマイクロRNA-125b-1-3p(hsa-miR-125b-1-3p);
(4)配列番号4に示されるマイクロRNA-196b-3p(hsa-miR-196b-3p);
(5)配列番号5に示されるマイクロRNA-378a-3p(hsa-miR-378a-3p);
(6)配列番号6に示されるマイクロRNA-196b-5p(hsa-miR-196b-5p);
(7)配列番号7に示されるマイクロRNA-224-5p(hsa-miR-224-5p);
(8)配列番号8に示されるマイクロRNA-20b-5p(hsa-miR-20b-5p);
(9)配列番号9に示されるマイクロRNA-659-3p(hsa-miR-659-3p);
(10)配列番号10に示されるマイクロRNA-1184(hsa-miR-1184);
(11)配列番号11に示されるマイクロRNA-18b-5p(hsa-miR-18b-5p);
(12)配列番号12に示されるマイクロRNA-135b-5p(hsa-miR-135b-5p);
(13)配列番号13に示されるマイクロRNA-23c(hsa-miR-23c);
に関する。
【0012】
さらに、本発明は、[6]以下の(1)~(13)に示すマイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAに対するマイクロRNAインヒビター又はマイクロRNAミミックを含む、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果向上剤;
(1)配列番号1に示されるマイクロRNA-147b(hsa-miR-147b);
(2)配列番号2に示されるマイクロRNA-486-5p(hsa-miR-486-5p);
(3)配列番号3に示されるマイクロRNA-125b-1-3p(hsa-miR-125b-1-3p);
(4)配列番号4に示されるマイクロRNA-196b-3p(hsa-miR-196b-3p);
(5)配列番号5に示されるマイクロRNA-378a-3p(hsa-miR-378a-3p);
(6)配列番号6に示されるマイクロRNA-196b-5p(hsa-miR-196b-5p);
(7)配列番号7に示されるマイクロRNA-224-5p(hsa-miR-224-5p);
(8)配列番号8に示されるマイクロRNA-20b-5p(hsa-miR-20b-5p);
(9)配列番号9に示されるマイクロRNA-659-3p(hsa-miR-659-3p);
(10)配列番号10に示されるマイクロRNA-1184(hsa-miR-1184);
(11)配列番号11に示されるマイクロRNA-18b-5p(hsa-miR-18b-5p);
(12)配列番号12に示されるマイクロRNA-135b-5p(hsa-miR-135b-5p);
(13)配列番号13に示されるマイクロRNA-23c(hsa-miR-23c);
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測が可能となる。そのため、がん患者に対して適切な免疫療法を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1におけるhsa-miR-196b-3p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。Lowは相対蛍光強度が220未満、Highは相対蛍光強度が220以上の患者であり、縦軸は全生存率を示し、横軸は投与開始からの経過月を示す。
【図2】実施例1におけるhsa-miR-196b-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。Lowは相対蛍光強度が400未満、Highは相対蛍光強度が400以上の患者であり、縦軸、横軸は図1と同様である。
【図3】実施例1におけるhsa-miR-147b発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。Lowは相対蛍光強度が500未満、Highは相対蛍光強度が500以上の患者であり、縦軸、横軸は図1と同様である。
【図4】実施例1におけるhsa-miR-378a-3p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。Lowは相対蛍光強度が6500未満、Highは相対蛍光強度が6500以上の患者であり、縦軸、横軸は図1と同様である。
【図5】実施例1におけるhsa-miR-486-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。Lowは相対蛍光強度が365未満、Highは相対蛍光強度が365以上の患者であり、縦軸、横軸は図1と同様である。
【図6】実施例1におけるhsa-miR-224-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。Lowは相対蛍光強度が270未満、Highは相対蛍光強度が270以上の患者であり、縦軸、横軸は図1と同様である。
【図7】実施例2におけるhsa-miR-1184発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が1000未満、Highは相対蛍光強度が1000以上の患者である。また、縦軸は全生存率を示し、横軸は投与開始からの経過月を示す。
【図8】実施例2におけるhsa-miR-20b-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が460未満、Highは相対蛍光強度が460以上の患者である。また、縦軸、横軸は図7と同様である。
【図9】実施例2におけるhsa-miR-196b-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が400未満、Highは相対蛍光強度が400以上の患者である。また、縦軸、横軸は図7と同様である。
【図10】実施例2におけるhsa-miR-659-3p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が2100未満、Highは相対蛍光強度が2100以上の患者である。また、縦軸、横軸は図7と同様である。
【図11】実施例2におけるhsa-miR-18b-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が320未満、Highは相対蛍光強度が320以上の患者である。また、縦軸、横軸は図7と同様である。
【図12】実施例2における135b-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が540未満、Highは相対蛍光強度が540以上の患者である。また、縦軸、横軸は図7と同様である。
【図13】実施例2におけるhsa-miR-224-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が270未満、Highは相対蛍光強度が270以上の患者である。また、縦軸、横軸は図7と同様である。
【図14】実施例2におけるhsa-miR-23c発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が1200未満、Highは相対蛍光強度が1200以上の患者である。また、縦軸、横軸は図7と同様である。
【図15】実施例3におけるhsa-miR-147b発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が500未満、Highは相対蛍光強度が500以上の患者である。また、縦軸は全生存率を示し、横軸は投与開始からの経過月を示す。
【図16】実施例3におけるhsa-miR-378a-3p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が6500未満、Highは相対蛍光強度が6500以上の患者である。縦軸、横軸は図15と同様である。
【図17】実施例3におけるhsa-miR-486-5p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が365未満、Highは相対蛍光強度が365以上の患者である。縦軸、横軸は図15と同様である。
【図18】実施例3におけるhsa-miR-125b-1-3p発現量と全生存期間との関係を調べた結果を示す図である。(a)は全症例、(b)は試験療法群(HLA-A*2402+)、(c)は対照群(HLA-A*2402-)であり、Lowは相対蛍光強度が550未満、Highは相対蛍光強度が550以上の患者である。縦軸、横軸は図15と同様である。
【図19】実施例4における血漿中のhsa-miR-486-5p発現量と腫瘍組織中のhsa-miR-486-5p発現量との関係を示す図である。縦軸が腫瘍組織中のhsa-miR-486-5p発現量、横軸が血漿中のhsa-miR-486-5p発現量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測方法としては、被検者の組織又は体液中のマイクロRNAの発現量を測定することを特徴とするがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測方法であって、前記マイクロRNAが、以下の(1)~(13)に示すマイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAであることを特徴とする方法であれば特に制限されないが、被検者としてはヒトを好適に挙げることができる。
(1)配列番号1に示されるマイクロRNA-147b(hsa-miR-147b);
(2)配列番号2に示されるマイクロRNA-486-5p(hsa-miR-486-5p);
(3)配列番号3に示されるマイクロRNA-125b-1-3p(hsa-miR-125b-1-3p);
(4)配列番号4に示されるマイクロRNA-196b-3p(hsa-miR-196b-3p);
(5)配列番号5に示されるマイクロRNA-378a-3p(hsa-miR-378a-3p);
(6)配列番号6に示されるマイクロRNA-196b-5p(hsa-miR-196b-5p);
(7)配列番号7に示されるマイクロRNA-224-5p(hsa-miR-224-5p);
(8)配列番号8に示されるマイクロRNA-20b-5p(hsa-miR-20b-5p);
(9)配列番号9に示されるマイクロRNA-659-3p(hsa-miR-659-3p);
(10)配列番号10に示されるマイクロRNA-1184(hsa-miR-1184);
(11)配列番号11に示されるマイクロRNA-18b-5p(hsa-miR-18b-5p);
(12)配列番号12に示されるマイクロRNA-135b-5p(hsa-miR-135b-5p);
(13)配列番号13に示されるマイクロRNA-23c(hsa-miR-23c);

【0016】
また、本発明のがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測を補助する方法としては、被検者の組織又は体液中のマイクロRNAの発現量を測定することを特徴とするがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測を補助する方法であって、前記マイクロRNAが、以下の(1)~(13)に示すマイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAであることを特徴とする方法あれば特に制限されないが、被検者としてはヒトを好適に挙げることができる。
(1)配列番号1に示されるマイクロRNA-147b(hsa-miR-147b);
(2)配列番号2に示されるマイクロRNA-486-5p(hsa-miR-486-5p);
(3)配列番号3に示されるマイクロRNA-125b-1-3p(hsa-miR-125b-1-3p);
(4)配列番号4に示されるマイクロRNA-196b-3p(hsa-miR-196b-3p);
(5)配列番号5に示されるマイクロRNA-378a-3p(hsa-miR-378a-3p);
(6)配列番号6に示されるマイクロRNA-196b-5p(hsa-miR-196b-5p);
(7)配列番号7に示されるマイクロRNA-224-5p(hsa-miR-224-5p);
(8)配列番号8に示されるマイクロRNA-20b-5p(hsa-miR-20b-5p);
(9)配列番号9に示されるマイクロRNA-659-3p(hsa-miR-659-3p);
(10)配列番号10に示されるマイクロRNA-1184(hsa-miR-1184);
(11)配列番号11に示されるマイクロRNA-18b-5p(hsa-miR-18b-5p);
(12)配列番号12に示されるマイクロRNA-135b-5p(hsa-miR-135b-5p);
(13)配列番号13に示されるマイクロRNA-23c(hsa-miR-23c);

【0017】
被検者の組織又は体液としては、被検者のがん組織、血漿又は血清を挙げることができる。

【0018】
本発明におけるマイクロRNAは、配列番号1に示されるマイクロRNA-147b(hsa-miR-147b)や、配列番号2に示されるマイクロRNA-486-5p(hsa-miR-486-5p)や、配列番号3に示されるマイクロRNA-125b-1-3p(hsa-miR-125b-1-3p)や、配列番号4に示されるマイクロRNA-196b-3p(hsa-miR-196b-3p)や、配列番号5に示されるマイクロRNA-378a-3p(hsa-miR-378a-3p)や、配列番号6に示されるマイクロRNA-196b-5p(hsa-miR-196b-5p)や、配列番号7に示されるマイクロRNA-224-5p(hsa-miR-224-5p)や、配列番号8に示されるマイクロRNA-20b-5p(hsa-miR-20b-5p)や、配列番号9に示されるマイクロRNA-659-3p(hsa-miR-659-3p)や、配列番号10に示されるマイクロRNA-1184(hsa-miR-1184)や、配列番号11に示されるマイクロRNA-18b-5p(hsa-miR-18b-5p)や、配列番号12に示されるマイクロRNA-135b-5p(hsa-miR-135b-5p)や、配列番号13に示されるマイクロRNA-23c(hsa-miR-23c)(以下、総称して「本件マイクロRNA」ともいう)から選ばれる少なくとも1種、好ましくは、hsa-miR-147bや、hsa-miR-486-5pや、hsa-miR-125b-1-3pや、hsa-miR-196b-3pや、hsa-miR-378a-3pや、hsa-miR-196b-5pや、hsa-miR-224-5pや、hsa-miR-20b-5pや、hsa-miR-1184や、hsa-miR-135b-5pや、hsa-miR-23cから選ばれる少なくとも1種であり、表1に、配列番号1~13に示されるマイクロRNAのmicroRNA database(http://www.mirbase.org/)のID、配列を示す。

【0019】
【表1】
JP0006346493B2_000002t.gif

【0020】
被検者の組織又は体液からマイクロRNAを抽出する方法としては、被検者の組織又は体液から、マイクロRNAを含むRNAを抽出する方法である限り特に制限されず、例えば、miRNeay Mini Kit(キアゲン社製)を添付のプロトコールにしたがって用いることによって、マイクロRNAを含むトータルRNAを抽出する方法を好適に例示することができる。

【0021】
本発明において、マイクロRNAの発現量を測定する方法としては特に制限されないが、マイクロアレイ法や定量PCR法を挙げることができる。

【0022】
上記マイクロアレイ法としては、組織又は体液から抽出したRNAを蛍光等のラベルで標識し、そのRNAを、本件マイクロRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブが固定されたマイクロアレイに接触させてハイブリダイゼーションを行った後、マイクロアレイを洗浄して、マイクロアレイ上に残ったマイクロRNAの発現量を測定する方法を例示することができる。

【0023】
また、上記定量PCR法としては、本件マイクロRNAの配列を増幅し得るプライマーセットを用いる方法であり、かつ、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能である限り特に制限されず、アガロース電気泳動法、SYBRグリーン法、蛍光プローブ法等の通常の定量PCR法を用いることができるが、定量の精度や信頼性の点で、蛍光プローブ法が好ましい。

【0024】
本発明において、ペプチドワクチン療法とは、エピトープペプチドを患者に投与し、がんに対する特異的な獲得免疫を生じさせてがんの治療を行う方法を意味する。

【0025】
本発明において、エピトープペプチドとは、がん細胞に特異的に存在するタンパク質由来の8~10個のアミノ酸からなる、免疫療法に用いるペプチドを意味し、かかるエピトープペプチドとしては、投与する被検者が保有するHLAに結合可能なエピトープペプチドであることが好ましく、例えば被検者がHLA-A*2402を保有する場合には、HLA-A*2402に対する結合能を有するエピトープペプチド(HLA-A*2402拘束性エピトープペプチド)であることが好ましい。HLA-A*2402拘束性エピトープペプチドとしては、具体的には、腫瘍抗原由来のRNF43-721(配列番号14:NSQPVWLCL)、TOMM34-299(配列番号15:KLRQEVKQNL)、KOC1(IMP-3)-508(配列番号16:KTVNELQNL)、及びVEGFR(vascular endothelial growth factor receptor)1、VEGFR2をターゲットとする血管新生抑制がんワクチンであるVEGFR1-1084(配列番号17:SYGVLLWEI)、VEGFR2-169(配列番号18:RFVPDGNRI)を挙げることができ、上記エピトープペプチドのいずれか1個のみを用いても、2個以上混合して用いてもよく、3個以上混合してもよく、4個以上混合してもよく、5個全て混合してもよい。がん細胞によって表面に有するエピトープペプチドにばらつきがあるため、よりペプチドワクチン療法の効果を高める観点からは、混合するエピトープペプチドの数は、3個以上、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上である。

【0026】
本発明において、がん患者としては特に制限されないが、ペプチドワクチン療法に用いるエピトープペプチドが結合可能なHLAを保有する患者であることが好ましく、例えばHLA-A*2402拘束性エピトープペプチドを用いる場合には、HLA-A*2402を保有する患者であることが好ましい。がん患者がHLA型を保有するか否かは、例えばHLA genotyping法により確認することが可能である。

【0027】
本発明において、対象となるがんとしては、大腸がん、胃がん、食道がん、膵臓がん、乳がん、肺がん、子宮がん、卵巣がん等を挙げることができ、大腸がんを好適に挙げることができる。

【0028】
本発明において、ペプチドワクチン療法の効果予測とは、ペプチドワクチン療法を行った患者において、ペプチドワクチン療法の効果が高いか低いかを予測することを意味し、具体的には、ペプチドワクチン療法を行った患者の全生存期間若しくは全生存率を向上させる効果が高いか低いかを予測することを挙げることができる。なお、全生存率とは、ペプチドワクチン療法を行った患者において、治療から一定期間が経過した後に生存している患者の割合を意味する。

【0029】
上記がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測は、被検者の組織又は体液中の本件マイクロRNAの発現量から選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAの発現量を測定することによって行うことができる。例えば、事前にペプチドワクチン療法の効果有りのがん患者と効果無しのがん患者それぞれ2人以上、好ましくは4人以上、より好ましくは5人以上の組織又は体液中における本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAの発現量を測定し、かかる発現量の中央値又は平均値を算出し、前記中央値又は平均値を基にカットオフ値を定める。次いで被検者の前記本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種の発現量を測定し、被検者の発現量と前記カットオフ値とを比較することで、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測することが可能である。

【0030】
ペプチドワクチン療法の効果有りのがん患者と効果無しのがん患者としては、ペプチドワクチン療法の効果有りのがん患者を「無増悪生存期間が150日以上、若しくは追加化学療法無しで、全生存期間が300日以上の患者」とし、ペプチドワクチン療法の効果無しのがん患者を「無増悪生存期間が90日未満、若しくは全生存期間が210日未満の患者」とする方法や、ペプチドワクチン療法の効果有りのがん患者を「ペプチドワクチン療法開始後、3年以上生存した患者」とし、ペプチドワクチン療法の効果無しのがん患者を「ペプチドワクチン療法開始後、2年以内に亡くなった患者」とする方法を挙げることができる。

【0031】
また、前記本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種の発現量を測定し、被検者の発現量と前記カットオフ値とを比較することで、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測する方法としては、具体的には、hsa-miR-147b、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-125b-1-3p、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-659-3p、hsa-miR-1184を測定した場合においては、発現量がカットオフ値未満であれば、ペプチドワクチン療法の効果が高いと予測でき、発現量がカットオフ値以上であれば、ペプチドワクチン療法の効果が低いと予測できる。一方、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-20b-5p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR-135b-5p、hsa-miR-23cを測定した場合においては、発現量がカットオフ値以上であれば、ペプチドワクチン療法の効果が高いと予測でき、発現量がカットオフ値未満であれば、ペプチドワクチン療法の効果が低いと予測できる。

【0032】
本発明のがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果予測キットとしては、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブ又はプライマーを備えたキットであれば特に制限されず、かかるキットには、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAと特異的にハイブリダイズするプローブ又はプライマーの他、バッファー、dNTPs、RNAのラベル化反応に用いる試薬、ハイブリダイゼーション反応に用いる試薬、説明書等を含んでもよい。

【0033】
本件マイクロRNAと特異的にハイブリダイズするプローブ又はプライマーは当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。かかるプローブ又はプライマーを用いてマイクロアレイ法又は定量PCR法を行うことにより、本件マイクロRNAの発現量を測定することが可能となる。

【0034】
上記ストリンジェントな条件としては、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、具体的には、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%の同一性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより同一性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗浄の条件である65℃、1×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS、又は0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件を挙げることができる。

【0035】
上記プローブとしては、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAの塩基配列若しくはその一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができ、かかるポリヌクレオチドをプローブとしてマイクロアレイに固定して用いれば、マイクロアレイ法を行うことができる。

【0036】
また、上記プライマーとしては、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAの塩基配列の5’側の一部の塩基配列からなるポリヌクレオチド(フォワードプライマー)や、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAの塩基配列の3’側の一部と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド(リバースプライマー)を挙げることもできる。かかるポリヌクレオチドをプライマーセットとして用いれば、定量PCR法を行うことができる。

【0037】
本発明のがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果向上剤としては、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAに対するマイクロRNAインヒビター又はマイクロRNAミミックを含んでいれば特に制限されず、前記マイクロRNAインヒビターとは、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAに対して拮抗作用を有する化合物を意味し、前記マイクロRNAミミックとは、本件マイクロRNAから選ばれる少なくとも1種のマイクロRNAに対して機能増強作用を有する化合物を意味する。

【0038】
上記ペプチドワクチン療法の効果向上剤は、製剤化のために通常使用され薬学的に許容される賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、分散剤、酸化防止剤、着色剤、香味剤、緩衝剤等の添加物を含んでいてもよい。製剤の剤型としては散剤、顆粒剤等の固形製剤であってもよいが、優れたペプチドワクチン療法の効果向上を得る観点からは、溶液剤、乳剤、懸濁剤等の液剤とすることが好ましい。

【0039】
上記ペプチドワクチン療法の効果向上剤の投与方法としては、所望のペプチドワクチン療法の効果向上が得られる限り特に制限されず、静脈内投与、経口投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等を挙げることができる。また、上記ペプチドワクチン療法の効果向上剤はペプチドワクチン療法に用いるエピトープペプチド等の薬剤と同時に患者に投与しても、いずれか一方を先に患者に投与してもよい。
【実施例1】
【0040】
[第I相試験(PI)を行った症例の探索的解析]
(がん患者に対する療法)
標準化学療法が不応となったHLA-A*2402を保有する進行大腸がん患者18例に対してペプチドワクチン単独療法(第I相試験(PI))を行った。この試験はヘルシンキ宣言に従っており、国立大学法人山口大学の倫理審査委員会により承認された。また、患者からはインフォームドコンセントを得た。各患者がHLA-A*2402を保有するか否かはHLA genotyping法により調べた。
【実施例1】
【0041】
(ペプチドワクチン療法)
ペプチドワクチン療法としてはHLA-A*2402拘束性の5種類のエピトープペプチドそれぞれ3mgを1.5mlの不完全フロイントアジュバント(IFA)Montanide ISA51(Seppci社製)に混合し、28日間の療法において、1日、8日、15日、22日に皮下投与を行った。5種類のエピトープペプチドとしては、腫瘍抗原由来のRNF43-721(配列番号14:NSQPVWLCL)、TOMM34-299(配列番号15:KLRQEVKQNL)、KOC1(IMP-3)-508(配列番号16:KTVNELQNL)、及びVEGFR1、VEGFR2をターゲットとする血管新生抑制がんワクチンであるVEGFR1-1084(配列番号17:SYGVLLWEI)、VEGFR2-169(配列番号18:RFVPDGNRI)(American Peptide Company社製)を用いた。上記ぺプチドは標準固相法で合成し、精製してGMP gradeのものを用いた。
【実施例1】
【0042】
上記患者の18例のうち、腫瘍組織中のマイクロRNAを9例で解析可能であり、マイクロRNAの発現量を以下の方法で調べた。
【実施例1】
【0043】
(トータルRNAの抽出)
患者のがん組織からのトータルRNAを用いて、腫瘍組織における約1400種類のマイクロRNAの発現量と全生存期間の関係をマイクロRNAマイクロアレイ解析により網羅的に解析した。トータルRNAはmiRNeay Mini Kit(キアゲン社製)を用いて、そのプロトコールに従って抽出した。トータルRNAの濃縮や精製は分光光度計で評価し、RNAインテグリティはAgilent RNA 6000 Nano Kit(Santa Clara社製)を用いて確認した。それぞれのサンプルのOD260/280比は2.00から2.10であり、マイクロアレイに適した精度を有していた。
【実施例1】
【0044】
(マイクロRNAマイクロアレイ解析)
マイクロRNAマイクロアレイ解析はmiRCURY LNATMTM microRNA Array 6th generation(EXIQON社製)及びGenePix(登録商標)4000B(Sunnyvale社製)を用いて行った。それぞれのハイブリダイゼーションシグナルの相対蛍光強度をMicroarray Data Analysis Tool Ver3.2(Filgen社製)により評価し、マイクロRNAの発現量を調べた。
【実施例1】
【0045】
次に、上記9例中8例の進行大腸がん患者を、治療効果有りの患者(無増悪生存期間が150日以上、若しくは追加化学療法無しで、全生存期間が300日以上の患者)と、治療効果無しの患者(無増悪生存期間が90日未満、若しくは全生存期間が210日未満の患者)との二群に分けて、がん組織に発現しているマイクロRNAの発現量(がん部miR発現量)を比較し、Fisher比により順位化した。結果を表2に示す。
【実施例1】
【0046】
【表2】
JP0006346493B2_000003t.gif
【実施例1】
【0047】
さらに、治療効果有り、無しの患者で発現量に差があったマイクロRNAのうち、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-224-5pの各マイクロRNAの発現量の高低で、上記9例の進行大腸がん患者を二群に分け、Kaplan-Meier法により全生存率を求め、二群の全生存期間の差をlog-rank検定により比較検討した。発現量の高低で患者を二群に分ける際の基準となるカットオフ値は、上記9例の進行大腸がん患者におけるがん組織に発現しているマイクロRNAの発現量のほぼ平均値であり、かつ2群間の症例数のばらつきが少ない数値とした。また、全生存期間は最初にエピトープペプチドを投与した日から患者が亡くなった日で計算した。各マイクロRNAの発現量の平均値、標準偏差、中央値、カットオフ値、log-rank検定結果を表3に、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-224-5pの発現量と全生存期間との関係を図1~6に示す。
【実施例1】
【0048】
【表3】
JP0006346493B2_000004t.gif
【実施例1】
【0049】
図1、2、6に示すように、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-224-5pの発現量が多い(相対蛍光強度がカットオフ値以上)症例においては、発現量が少ない(相対蛍光強度がカットオフ値未満)症例と比較して全生存期間が長いことが明らかとなった。また、図3~5に示すように、hsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5pの発現量が少ない(相対蛍光強度がカットオフ値未満)症例においては、発現量が多い(相対蛍光強度がカットオフ値以上)症例と比較して全生存期間が長いことが明らかとなった。このように上記マイクロRNAにおいては、発現量の高低で予後に差が確認され、マイクロRNAの発現量とがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果との関連が示された。
【実施例1】
【0050】
したがって、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-224-5pはペプチドワクチン療法の効果を予測するバイオマーカーであり、かかるマイクロRNAの発現量を調べることで、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測することが可能であることが明らかとなった。また、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-224-5pの発現量が少ない症例、又はhsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5pの発現量が多い症例においてはペプチドワクチン療法の効果が低いことから、hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-224-5pに対して増強作用を有する化合物、あるいはhsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5p、に対して拮抗作用を有する化合物を用いることにより、ペプチドワクチン療法の効果が高まると考えられる。
【実施例2】
【0051】
[第II相試験(PII)を行った症例の探索的解析を行った症例の探索的解析]
(がん患者に対する療法)
切除不能進行大腸がん患者に対する1次療法として2009年2月から2012年11月まで、標準化学療法であるFOLFOX療法(n=93)(Schmoll HJ, et all, J Clin Oncol(2012) 30:3588-3595)又はXELOX療法(n=3)(Yagyu R et all, Int J Oncol(2004) 25:1343-8)にペプチドワクチン療法を上乗せする併用療法(第II相試験(PII))を合計96名に行った。この試験はヘルシンキ宣言に従っており、国立大学法人山口大学の倫理審査委員会により承認された。また、患者からはインフォームドコンセントを得た。ペプチドワクチン療法に用いるエピトープペプチドは実施例1と同様の5種類のエピトープペプチドを用い、それぞれ3mgを1.5mlの不完全フロイントアジュバント(IFA)Montanide ISA51(Seppci社製)に混合し、週1回の皮下投与を13週間、その後2週間に1度の皮下投与を続けた。
【実施例2】
【0052】
(患者におけるHLA-A*2402の有無)
本療法は、患者がHLA-A*2402を有するか否かを患者ならびに主治医に知らせず、生物学的二重盲検試験とした。HLA genotyping法により各患者がHLA-A*2402を保有するか否かを調べ、50例が試験療法群(本試験で使用したエピトープペプチドの効果が認められる、HLA-A*2402を保有する患者群:HLA-A*2402+)、46例が対照群(本試験で使用したエピトープペプチドの効果が認められない、HLA-A*2402を保有しない患者群:HLA-A*2402-)であったことが後のキーオープンで判明した。これらの患者のうち、腫瘍組織中のマイクロRNAを26例(試験療法群16例、対照群10例)で解析可能であり、マイクロRNAの発現量を実施例1と同様の方法で調べた。
【実施例2】
【0053】
次に、試験療法群(HLA-A*2402+)16例のうちの13患者を長期生存患者(ペプチドワクチン療法開始後、3年以上生存した患者)と短期生存患者(ペプチドワクチン療法開始後、2年以内に亡くなった患者)との二群に分けて、がん組織に発現しているマイクロRNAの発現量(がん部miR発現量)を比較し、Fisher比により順位化した。結果を表4に示す。
【実施例2】
【0054】
【表4】
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【実施例2】
【0055】
さらに、試験療法群(HLA-A*2402+:16例)、対照群(HLA-A*2402-:10例)、全症例(ALL:26例)それぞれの患者を、表5に示す各マイクロRNAの発現量の高低で二群に分け、Kaplan-Meier法により全生存率を求め、二群の全生存期間の差をlog-rank検定により比較検討した。発現量の高低で患者を二群に分ける際の基準となるカットオフ値は、全症例(ALL:26例)におけるがん組織に発現しているマイクロRNAの発現量のほぼ中央値とした。また、全生存期間は最初にエピトープペプチドを投与した日から患者が亡くなった日で計算した。各マイクロRNAの発現量の中央値、カットオフ値、log-rank検定結果を表5に、各マイクロRNAの発現量と全生存期間との関係を図7~14に示す。
【実施例2】
【0056】
【表5】
JP0006346493B2_000006t.gif
【実施例2】
【0057】
図7、10に示すように、試験療法群(HLA-A*2402+)において、hsa-miR-1184、hsa-miR-659-3pの発現量が少ない(相対蛍光強度がカットオフ値未満)症例においては、発現量が多い(相対蛍光強度がカットオフ値以上)症例と比較して全生存期間が長いことが明らかとなった。また、図8、9、11~14に示すように、試験療法群(HLA-A*2402+)において、hsa-miR-20b-5p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR135b-5p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-23cの発現量が多い(相対蛍光強度がカットオフ値以上)症例においては、発現量が少ない(相対蛍光強度がカットオフ値未満)症例と比較して全生存期間が長いことが明らかとなった。一方、図7~14に示すように、対照群(HLA-A*2402-)においては、各マイクロRNAの発現量によって全生存期間への影響はほとんどみられなかった。このように上記マイクロRNAにおいては、HLA-A*2402を保有する試験療法群(HLA-A*2402+)にのみ発現量の高低で予後に差が確認され、それぞれのマイクロRNAの発現量と、ペプチドワクチン療法の効果との関連が示された。
【実施例2】
【0058】
したがって、hsa-miR-1184、hsa-miR-20b-5p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-659-3p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR135b-5p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-23cはペプチドワクチン療法の効果を予測するバイオマーカーであり、かかるマイクロRNAの発現量を調べることで、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測することが可能であることが明らかとなった。また、hsa-miR-1184、hsa-miR-659-3pの発現量が多い症例、又はhsa-miR-20b-5p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR135b-5p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-23cの発現量が少ない症例においてはペプチドワクチン療法の効果が低いことから、hsa-miR-1184、hsa-miR-659-3pに対して拮抗作用を有する化合物、あるいはhsa-miR-20b-5p、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR135b-5p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-23cに対して機能増強作用を有する化合物を用いることにより、ペプチドワクチン療法の効果が高まると考えられる。
【実施例3】
【0059】
(第I相試験(PI)を行った症例の探索的解析によって求めたマイクロRNAの第II相試験(PII)を行った症例への応用)
第I相試験(PI)を行った9症例の探索的解析によって求めた30のマイクロRNAの発現量のカットオフ値に基づき、第II相試験(PII)を行った試験療法群(HLA-A*2402+:16例)、対照群(HLA-A*2402-:10例)、全症例(ALL:26例)それぞれの患者を二群に分け、Kaplan-Meier法により全生存率を求め、二群の全生存期間の差をlog-rank検定により比較検討した。hsa-miR-196b-3p、hsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-125b-3pの発現量の平均値、標準偏差、中央値、カットオフ値、log-rank検定結果を表6に、上記各マイクロRNAの発現量と全生存期間との関係を図15~18に示す。なお、hsa-miR-196b-5pとhsa-miR-224-5pの発現量と全生存期間との関係については、図9、13に示しているため、ここでは示していない。
【実施例3】
【0060】
【表6】
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【実施例3】
【0061】
表6や図15~18に示すように、HLA-A*2402を保有する試験療法群(HLA-A*2402+)にのみ発現量の高低で予後に差が確認され、それぞれのマイクロRNAの発現量と全生存期間との関係は、表3における第I相試験(PI)を行った9症例の解析結果と同じ傾向を示した。したがって、hsa-miR-196b-5p、hsa-miR-147b、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-224-5p、hsa-miR-125b-3pの発現量を調べることで、第I相試験(PI)を行った症例だけでなく、第II相試験(PII)を行った症例に対しても、ペプチドワクチン療法の効果を予測することが可能であることが明らかとなった。
【実施例4】
【0062】
実施例1における第I相試験(PI)においてマイクロRNAを解析可能であった9症例において、更に血漿中のマイクロRNAを解析した。
【実施例4】
【0063】
上記9例の患者の血漿から実施例1と同様の方法でトータルRNAの抽出及びマイクロRNAマイクロアレイ解析を行い、血漿中のhsa-miR-486-5pの発現量を調べた。次に、図19に示すように横軸に血漿中のhsa-miR-486-5pの発現量(相対蛍光強度)、縦軸に腫瘍組織中のhsa-miR-486-5pの発現量(相対蛍光強度)をプロットしたグラフを作成した。その結果、血漿中のhsa-miR-486-5pの発現量と腫瘍組織中のhsa-miR-486-5pの発現量とはきれいな相関があった。したがって、腫瘍組織だけでなく、血漿中のマイクロRNAを測定することによって、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測することが可能であることが明らかとなった。血漿中のマイクロRNAを測定すればよいことから、簡便且つ迅速にがん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、がん患者に対するペプチドワクチン療法の効果を予測することが可能であり、がんの治療分野において利用可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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