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明細書 :半導体MEMS共振器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6482192号 (P6482192)
公開番号 特開2016-005148 (P2016-005148A)
登録日 平成31年2月22日(2019.2.22)
発行日 平成31年3月13日(2019.3.13)
公開日 平成28年1月12日(2016.1.12)
発明の名称または考案の名称 半導体MEMS共振器
国際特許分類 H03H   9/24        (2006.01)
H03H   9/54        (2006.01)
B81B   3/00        (2006.01)
FI H03H 9/24 Z
H03H 9/54 Z
B81B 3/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 23
出願番号 特願2014-124763 (P2014-124763)
出願日 平成26年6月17日(2014.6.17)
審査請求日 平成29年5月30日(2017.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
発明者または考案者 【氏名】鈴木 健一郎
【氏名】谷川 紘
個別代理人の代理人 【識別番号】110001195、【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
審査官 【審査官】竹内 亨
参考文献・文献 米国特許出願公開第2009/0194830(US,A1)
米国特許出願公開第2012/0194282(US,A1)
調査した分野 H03H 9/00-9/76
特許請求の範囲 【請求項1】
主面を有する基台を備え、さらに、少なくとも一部が前記主面に固定された半導体で構成された構造体上に、第1の導電性を有する少なくとも1つの第1の領域と、前記第1の導電性とは逆の第2の導電性を有し、前記主面に垂直な方向から見たときに前記第1の領域に隣接する少なくとも1つの第2の領域とを有する第1の構造と、少なくとも1つの前記第2の領域と前記主面に垂直な方向から見たときに該第2の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第1の領域とを有する第2の構造とを備え、
前記第1の構造における前記第1の領域および前記第2の領域と、前記第2の構造における前記第1の領域および前記第2の領域とが、前記主面に平行で該2つの領域が配置された面内において、互いに分断するように形成されており、前記第1の構造および前記第2の構造の少なくとも1つの該2つの領域間に交流信号が重畳された逆バイアス電圧を印加し、前記交流信号により、前記主面に平行で該2つの領域が配置された面内で前記構造体を面内振動させる、半導体MEMS共振器。
【請求項2】
前記第1の構造および前記第2の構造のいずれにおいても、前記構造体が振動する方向における、前記第1の領域の寸法と前記第2の領域の寸法とが異なる、請求項1に記載の半導体MEMS共振器。
【請求項3】
前記第1の構造および前記第2の構造のいずれにおいても、前記構造体が振動する方向における、前記第1の領域および前記第2の領域の少なくとも1つの領域の寸法が、前記構造体が振動する方向における、前記構造体の振動機構の寸法よりも大きい、請求項1に記載の半導体MEMS共振器。
【請求項4】
半導体で構成された構造体上に、第1の導電性を有する少なくとも1つの第1の領域と、前記第1の導電性とは逆の第2の導電性を有し、前記第1の領域に隣接する少なくとも1つの第2の領域とを有する第1の構造と、少なくとも1つの前記第2の領域と該第2の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第1の領域とを有する第2の構造とを備え、
前記第1の構造における前記第1の領域および前記第2の領域と、前記第2の構造における前記第1の領域および前記第2の領域とが、該2つの領域が配置された面内において、互いに分断するように形成されており、前記第1の構造および前記第2の構造の少なくとも1つの該2つの領域間に交流信号が重畳された逆バイアス電圧を印加し、前記交流信号により、該2つの領域が配置された面内で前記構造体を面内振動させる、半導体MEMS共振器であって、
少なくとも1つの前記第1の領域と該第1の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第2の領域とを有する第1の円弧状帯領域と、
少なくとも1つの前記第2の領域と該第2の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第1の領域とを有する第2の円弧状帯領域と、
の組み合わせの少なくとも1組からなるリング状の前記構造体であって、
前記第1の円弧状帯領域における前記第1の領域と前記第2の領域との間に第1の交流信号が重畳された第1の逆バイアス電圧を印加し、前記第2の円弧状帯領域における前記第2の領域と前記第1の領域との間に第2の交流信号が重畳された第2の逆バイアス電圧を印加し、前記第1の交流信号及び前記第2の交流信号により、前記リングが配置された面内で前記構造体を面内振動させる、半導体MEMS共振器。
【請求項5】
前記第1および前記第2の円弧状帯領域が半周状帯領域である、請求項4に記載の半導体MEMS共振器。
【請求項6】
半導体で構成された構造体上に、第1の導電性を有する少なくとも1つの第1の領域と、前記第1の導電性とは逆の第2の導電性を有し、前記第1の領域に隣接する少なくとも1つの第2の領域とを有する第1の構造と、少なくとも1つの前記第2の領域と該第2の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第1の領域とを有する第2の構造とを備え、
前記第1の構造における前記第1の領域および前記第2の領域と、前記第2の構造における前記第1の領域および前記第2の領域とが、該2つの領域が配置された面内において、互いに分断するように形成されており、前記第1の構造および前記第2の構造の少なくとも1つの該2つの領域間に交流信号が重畳された逆バイアス電圧を印加し、前記交流信号により、該2つの領域が配置された面内で前記構造体を面内振動させる、半導体MEMS共振器であって、
前記第1の領域からなるリングの外周に隣接させた前記第2の領域と、
該第2の領域と前記リングを挟んで対向する内周の位置に隣接させた前記第2の領域と、の組み合わせの少なくとも1組からなるリング状の前記構造体であって、
前記リングと前記1組の領域間に交流信号が重畳された逆バイアス電圧を印加し、前記交流信号により、前記リングが配置された面内で前記構造体を面内振動させる、半導体MEMS共振器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体MEMS共振器に関するものである。特に、静電駆動型半導体MEMS共振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体を微小機械要素として利用するマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスは、多くの応用分野を指向して開発が進んでいる。通信機器に搭載される回路素子、例えば、MEMS共振器をフィルタや発振器へ応用すると、通信機器の高機能化、小型化、低消費電力化に寄与できることが指摘されている。この応用例では、梁、リング、円板などの構造体に、外部から供給された電気信号で機械的な振動(固有周波数で共振させることが多い)を誘起し、この振動を電気信号に変換している。電気信号を機械振動に変換する例として静電気力の利用がある。静電駆動型と称されるMEMS共振器では、互いに対向する2つの電極の間に電圧を印加し、発生する静電気力を原動力としている。
【0003】
静電駆動型の半導体MEMS共振器の電気機械変換効率を増大させると、少ない電力で大きな振動振幅が得られ、信号対雑音比(S/N)が大きい回路素子を実現できる。電気機械変換効率は、(1)対向面積に比例し、(2)ギャップの2乗に逆比例することが知られている。MEMSデバイスの作成法であるバルクマイクロマシニングは、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)と称される「Si(デバイス層)-SiO2(埋込酸化膜(BOX))-Si(基板層)」構造のウェーハを使用し、Si(デバイス層)に加工を施している。デバイス層の厚さが大きいほど対向面積を大きくできるが、狭く深い溝を形成することが困難なため狭ギャップ化には限界があるとされてきた。
【0004】
狭いギャップの形成には、(1)加工の微細化、(2)広いギャップを形成しておき、デバイス動作時に電極の一方を移動させることによって狭ギャップとする、(3)犠牲層エッチングを利用したサーフェスマイクロマシニング、(4)電極間に薄い絶縁層を残したソリッドギャップ、などの手法を利用することが知られている。(1)ではイオンミリング装置などを使用してサブミクロンのギャップを掘りこんでいる。(2)は発明者等により提案された手法であり容易に狭ギャップを実現できるが、電極を直線的に移動させる(ギクシャクしながらの移動を避ける)ための構造と制御が必要である。(3)は狭ギャップが容易に形成できる技術であるが、薄膜の電極を形成する際の残留応力の制御が必須である。(4)は近年注目を集めている技術であり容易に狭いギャップを作製できる。サーフェスマイクロマシニングでの研究が主体であり、厚さが薄い(1ミクロン程度であることが多い)電極構成に適用されている。このため、狭ギャップによる電気機械変換効率の増大は、電極の対向面積が小さいことで相殺される可能性がある。さらに、ソリッドギャップ領域を構造体の材料(一般にはシリコン単結晶)と異なる絶縁層(例えば、酸化シリコン)で構成するので、この領域で振動が吸収される結果、高Q値を得ることが困難とされている。一般的に述べるならば、Q値が大きいと電気機械変換効率も大きいと考えられるが、両者間の定量的な相関は厳密なものではない。電気機械変換効率は出力信号の増大に、Q値は電子回路素子としての位相雑音の低減に寄与することが知られており、これらの値を共に大きくすることが実用上重要である。
【0005】
特許文献1と非特許文献1にはショットキ障壁ダイオードを用いたアクチュエータが開示されている。図16は非特許文献1の図2に掲載されているカンチレバーの構造図である。図において、SOI構造のデバイス層(上部の「Si」)の表面には「1」乃至「3」で表記された金属薄膜が配置され、この金属と前記「Si」の間にショットキ障壁ダイオードが形成されている。当該金属薄膜は右側に伸びたカンチレバーの上面まで伸びており、カンチレバー全面にわたってショットキ障壁ダイオードが形成されている。このダイオードに逆バイアス電圧を印加すると、金属薄膜・「Si」の界面に応力が誘起され、ポアソン比に依存するZ方向のカンチレバー変位が発生するとされている。当該逆バイアスに交流信号を重畳すると、カンチレバーを特定の周波数で共振させることができることも示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1と非特許文献1とで開示された技術は単にカンチレバーを上下方向に振動させることが示されているだけである。かかる構造を具体的な回路素子へ応用する時の構成、駆動、信号処理などについては記載されていない。また、金属-シリコン界面の大きな歪によって共振器のQ値が低くなるという問題がある。以上のように、引用した上記文献では「特定の周波数で共振が起こる事象」を紹介しているに過ぎず、実デバイスを作製するための設計情報などが開示されていない。
【0007】
非特許文献2には、P型シリコンとN型シリコンの空乏層を利用した共振器が開示されている。図17(a)は非特許文献2の図1であり、試作したデバイスの写真である。図17(b)は同文献の図5(d)であり、デバイスの断面構造を示している。図17では両側から支持された板状の共振構造体の左半分が「励起接合」、右半分が「検出接合」である。同図に示されているように、ここでは同種材料であるシリコン内部の空乏層を利用してアクチュエータ(励起)とセンサ(検出)を作製している。このために大きなQ値が得られるとされている。しかし、共振器の振動は「厚み縦振動モード(図17(b)の紙面上の上下方向に振動)」であり、この振動を効率的に実現するためにはP型シリコン層とN型シリコン層の厚さをほぼ等しくすることが要求される。この結果、それぞれの厚さが異なるに従って電気機械変換効率が大きく減少するという問題がある。さらに、共振器の共振振動数はシリコン構造体の厚さによって決まる。このため、構造上、達成できる共振周波数の範囲が制限されるという重大な問題があった。また、異なる共振振動数をもつ共振器を一つのチップの内に集積化することが困難であるという問題もあった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】米国特許出願公開US2009/0194830A1号公報
【0009】

【非特許文献1】J.H.Ransley他、「A Depletion Layer Actuator」、Transducers & Eurosensors ’07、1393ページ(第1394頁、図2)
【非特許文献2】E. Hwang他、「Transduction of High-Frequency Micromechanical Resonators Using Depletion Forces in p-n Diodes」、IEEE Trans. on Electron Devices、Vol.58, No.8 (2011年)2770ページ(第2771頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通信機器では幅広いニーズに応えるため、フィルタや発振器といった回路素子への要求は高い。半導体技術を利用したMEMS共振器はこれらの要求に応えるデバイスとして期待されている。静電駆動型の半導体MEMS共振器は、圧電材料などの材料を使用することなく、高度に発展した半導体技術のみで実現できる利点がある。中でも、静電駆動型の共振器は周辺回路との集積化も容易であるため期待が大きい。静電駆動型では狭ギャップの構成がキーである。特許文献1、非特許文献1,2では狭ギャップを形成することなく、空乏層で等価的にギャップを実現することが開示されている。しかしながら、動作原理上、共振周波数がデバイスの厚さで支配されるので、実現できる共振周波数の範囲には制限があった。また、異なる共振周波数を持つ複数のMEMS共振器を同一チップ上に同一プロセスで作製することも限界があった。さらに、PN層の厚さを等しく設定することを必要とした。このため、空乏層を利用したMEMS共振器の利用技術を明らかにし、これらの制限や限界を打破する技術の開発が要求されている。
【0011】
以上より、実用的な静電駆動型の半導体MEMS共振器を実現するためには、(1)要求される周波数範囲で動作可能なMEMS共振器の設計自由度の確保、(2)大きな電気機械変換効率と大きなQ値を同時に達成できる構成、(3)異なる共振周波数を持つ共振器を複数個集積化できる構成などの開発が課題である。
【0012】
そこで、本発明は、要求される周波数範囲で動作可能なMEMS共振器の設計自由度を確保しつつ、大きな電気機械変換効率と大きなQ値を同時に達成できる半導体MEMS共振器を提供することを目的とする。さらに、異なる共振周波数を持つ共振器を複数個集積化できる半導体MEMS共振器を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に基づく半導体MEMS共振器は、主面を有する基台を備え、さらに、少なくとも一部が前記主面に固定された半導体で構成された構造体上に、第1の導電性を有する少なくとも1つの第1の領域と、前記第1の導電性とは逆の第2の導電性を有し、前記主面に垂直な方向から見たときに前記第1の領域に隣接する少なくとも1つの第2の領域とを有する第1の構造と、少なくとも1つの前記第2の領域と前記主面に垂直な方向から見たときに該第2の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第1の領域とを有する第2の構造とを備え、前記第1の構造における前記第1の領域および前記第2の領域と、前記第2の構造における前記第1の領域および前記第2の領域とが、前記主面に平行で該2つの領域が配置された面内において、互いに分断するように形成されており、前記第1の構造および前記第2の構造の少なくとも1つの該2つの領域間に交流信号が重畳された逆バイアス電圧を印加し、前記交流信号により、前記主面に平行で該2つの領域が配置された面内で前記構造体を面内振動させる。
【0014】
なお、前記した構造体は振動機構と励振機構とから構成されていても良い。例えば、前記第1の領域と前記第2の領域が該励振機構を構成し、前記構造体の該励振機構を含まない領域が振動機構を構成している場合である。かかる構成では、前記振動機構と前記励振機構とが機械的に結合され、該励振機構により前記振動機構が励振されることになる。かかる構成の具体的な例は、カンチレバーを振動機構とし、該カンチレバーに隣接して配置された前記第1の領域と前記第2の領域からなるPN接合を励振機構とする構成である。この構成で、前記第1の領域が前記カンチレバーに含まれるように配置すれば、前記振動機構と該励振機構とは機械的に結合されることになる。該構成における前記構造体は、(1)振動機構と励振機構の一部を備えたカンチレバーと、(2)前記第2の領域を備えた駆動電極とで構成されることになる。
【0015】
なお、前記した振動機構に前記励振機構が含まれるような構成であっても構わない。かかる構成の例としては、前記構造体をリング形状とし、該リング表面に前記第1の領域と前記第2の領域を配置した構成がある。かかる構成では、該リング(前記した構造体である)そのものが励振機構を内包した振動機構になる。
【0016】
なお、半導体で構成された構造体上に、(1)第1の導電性を有する第1の領域と前記第1の導電性と逆の第2の導電性を有する第2の領域とを隣接させた組み合わせを少なくとも1組、又は前記1組の一方が他の前記1組の一方を兼ねる組み合わせを含んで配置し、(2)前記第1の領域と前記第2の領域の2つの領域間に交流信号が重畳された逆バイアス電圧を印加し、(3)該交流信号により、該2つの領域が配置された面内で前記構造体を機械的に面内振動させることも特徴である。
【0017】
なお、前記した「半導体」はシリコンであることが多いがこれに限らず化合物半導体であっても良い。シリコンである場合、「第1の導電性」と「第2の導電性」は、それぞれ、N型とP型であり、両者でPN接合を形成している。この場合の「逆バイアス」はN型にプラス、P型にマイナスの電圧が供給される。「交流信号」の周波数には特段の制限はなく、数GHzもの高周波であっても良い。なお、「第1の導電性」がP型、「第2の導電性」がN型であっても良い。
【0018】
なお、前記した逆バイアス電圧を前記PN接合に印加すると、前記接合の境界面に空乏層と呼ばれる電子・正孔が存在しない領域が生成される。空乏層は当該境界面を中心として、「第1の導電性」領域と「第2の導電性」領域の両方に広がる。それぞれの広がりの幅は、これらの領域の導電度(不純物濃度)と印加した逆バイアス電圧に依存する。空乏層(全体)の幅は数ミクロン以下である。空乏層には電気伝導に寄与する電子・正孔が存在しないため電気的には「絶縁層」と同等である。この空乏層が静電駆動型半導体MEMS共振器での電極間ギャップに相当する。即ち、前記領域の導電度と逆バイアス電圧を設定することにより、容易にミクロン以下の狭ギャップを実現することができる。
【0019】
なお、本段落では前記した空乏層の広がり(厚さ)について記述する。PN接合(ダイオード)の空乏層の厚さは次の数式で与えられる。
【0020】
【数1】
JP0006482192B2_000002t.gif

【0021】
この式からは、不純物濃度を大きくすると空乏層の厚さを減少させることが可能であることがわかる。また、この空乏層はシリコンという同種材料の内部に形成されるので共振時の損失が小さく、大きなQ値を得ることを可能にする。
【0022】
なお、前記した構造体は固有の共振周波数を有している。その周波数は該構造体の構成(形状や大きさ)で決定される。前記した交流信号の周波数が共振周波数と一致する場合には前記構造体は機械的に共振し、振動の振幅も大きくなる。共振周波数以外の周波数の場合には大振幅の振動は起こらない。この機械振動を電気的に検出すると、前記したMEMS共振器は電気的なバンドパスフィルタとなる。さらに、外部回路との組合せにより、共振周波数で発振する発振器を構成することもできる。
【0023】
なお、前記した振動は構造体の構成により複数の振動姿態(モード)を取り得る。振動姿態は大別して、「面内振動(In-Plane振動)」と、「面外振動(Out-of-Plane振動)」と、「これらが混合した振動」とがある。「面内振動」は構造体の面内(半導体ウェーハの面内でもある)での振動である。「面外振動」は前記面内振動と垂直な方向(半導体ウェーハの厚み方向)での振動である。また、構造体の構成によっては、「面内振動」と言えども若干の「面外振動」を伴う(混合した振動でもある)ことがある。本明細書に記載する「面内振動」とは振動姿態の主たる振動(振幅が大きい振動である)が「面内振動」であるとしている。即ち、「振幅が小さい面外振動」を伴う「面内振動」であっても構わない。
【0024】
なお、前記した構造体の形状には、円板、楕円板、多角形の板、中央に開口がある円板(ドーナッツ形状の板)などが含まれていても良い。
【0025】
なお、このMEMS共振器は「複数の構造体が連結接続された」構成であっても構わない。かかる「連結」は一次元的な配列(直線状に共振器が並ぶ)、あるいは、二次元的な配列(縦横両方向に共振器が並ぶ)であって良い。さらに、連結された該「複数の構造体」のそれぞれは同一形状であっても構わない。また、類似形状であって共振周波数が異なっている構成でも構わない。
【0026】
本発明である半導体MEMS共振器は、前記構造体が振動する方向における、前記第1の領域の寸法と前記第2の領域の寸法が異なることに特徴がある。
【0027】
なお、本段落では、前記第1の領域と前記第2の領域の寸法について記載する。例えば、このMEMS共振器が棒状のカンチレバー構成であり、面内振動するカンチレバーが第2の領域、カンチレバーに隣接して配置された駆動電極が第1の領域である場合について詳述する。カンチレバーが面内振動する方向での当該第2の領域の寸法(カンチレバーの幅である)と、当該方向での前記第1の領域の寸法(駆動電極の幅である)を等しくしても良く、また、異なった寸法にしても構わない。かかる構成では、第1の領域の寸法を第2の領域の寸法よりも大きくすると面内振動の振幅を大きくすることができる。
【0028】
本発明である半導体MEMS共振器は、(1)前記構造体が振動する方向における、前記第1の領域および前記第2の領域の少なくとも1つの領域の寸法が、(2)前記構造体が振動する方向における、前記構造体の振動機構の寸法よりも大きいことに特徴がある。
【0029】
なお、前記したように、前記構造体は振動機構と励振機構とから構成されていても構わない。かかる構成の具体的な例は、カンチレバーを振動機構とし、該カンチレバーに隣接して配置された前記第1の領域と前記第2の領域からなるPN接合を励振機構とする構成である。この構成で、前記第1の領域が前記カンチレバーに含まれるように配置すれば、該構成における前記構造体は、(1)振動機構と励振機構の一部を備えたカンチレバーと、(2)前記第2の領域を備えた駆動電極とで構成されることになる。この構成での各部の寸法について以下に記載する。このカンチレバーは面内で振動するので、振動方向での前記第1の領域および前記第2の領域の少なくとも1つの領域(例えば、前記駆動電極である)の寸法(振動面内での駆動電極の厚さ)を、前記振動機構(カンチレバー)の寸法よりも大きくする。該駆動電極の厚さを適宜設定することにより、前記カンチレバーの振動振幅を大きくすることが可能となる。なお、カンチレバーには先端が局所的に太くなった構造もあるが、かかる場合においては、前記「振動機構の寸法」(前段落)とは振動機構の該先端部を除いたカンチレバーの寸法である。
【0030】
この半導体MEMS共振器は、(1)(1-1)少なくとも1つの前記第1の領域と該第1の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第2の領域とを有する第1の円弧状帯領域と、(1-2)少なくとも1つの前記第2の領域と該第2の領域に隣接するように配置された少なくとも1つの前記第1の領域とを有する第2の円弧状帯領域と、の組み合わせの少なくとも1組からなるリング状の前記構造体であって、(2)前記第1の円弧状帯領域における前記第1の領域と前記第2の領域との間に第1の交流信号が重畳された第1の逆バイアス電圧を印加し、(3)前記第2の円弧状帯領域における前記第2の領域と前記第1の領域との間に第2の交流信号が重畳された第2の逆バイアス電圧を印加し、(4)前記第1の交流信号及び前記第2の交流信号により、前記リングが配置された面内で前記構造体を面内振動させることが特徴である。
【0031】
この半導体MEMS共振器の前記第1および前記第2の円弧状帯領域が半周状帯領域であることも特徴である。
【0032】
なお、前々段落に記載した構造体(半導体MEMS共振器)の構成について詳述する。該共振器はリング状の構造体であり少なくとも2つの円弧状帯領域(リングを円周に沿って複数個に分割した「帯」領域)が合体した形状である。かかる円弧状帯領域の数の代表的な例は「2」である。即ち、2つの半周状帯領域からなる構成である。かかる構造体の一部には機械的な固定のための固定領域が配置され、固定手段が具備されている。かかる固定領域は、リングが共振した時の「節」の位置であることが好ましい。該領域を機械的に固定するための手段としては、前記固定領域からリング外側へ「短い腕」を突き出させ、この腕の先端を固定(例えば、構造体を構成する半導体基板の一部とする)することが挙げられる。
【0033】
なお、説明の便宜上、本発明では、前記した「第1の導電性」を「N型」とし、「第2の導電性」を「P型」としている。当然のことであるが、本発明はこれに限定されることはなく、逆の設定でも構わない。
【0034】
なお、本段落では、前記した「第1の領域」と「第2の領域」について例示する。例えば、「第1の円弧状帯領域」には、リング幅の中央で円周方向に沿って配置された「第1の導電性を有する第1の領域」が配置されている。当該円弧状帯領域の該「第1の領域」を含まない領域が前記「第2の導電性を有する第2の領域」になっている。即ち、該円弧状帯領域は「第2の導電性を有する第2の領域」の中央に「第1の導電性を有する第1の領域」が存在しているように見える。別の表現をするならば、「第2の領域は「第1の領域」の外側に隣接して配置」されている。
【0035】
かかる2つの領域が前記したPN接合を構成している。この構成では、リングの外側から順にP型-N型-P型の領域が並んでいることになる。前々段落では「少なくとも1つ」の領域が配置されていることが記載されているが、かかる表現は、リングの外側から順にP型-N型-P型-N型-P型のように複数のPN接合が直列的に配置されている場合を含んでいる。また、リング外側から順にP型-N型の構成であっても構わない。
【0036】
なお、前段落に記載した「第1の領域」と「第2の領域」の寸法について記載する。例えば、前記円弧状帯領域が外側から順に「第2の領域」、「第1の領域」、「第2の領域」が配列されている場合について記載する。面内振動の方向(例えば半径方向)におけるこれら3つの領域の寸法(幅である)は同一の大きさであっても良く、また、それぞれが異なった寸法であっても構わない。面内振動するリングの振動モードや振幅の仕様に合わせて適宜設定することが可能である。
【0037】
なお、本段落では「円弧状帯領域」に供給される逆バイアス電圧と交流信号について記載する。前記「第1の円弧状帯領域」を構成する「第1の領域(N型である)」と前記「第2の領域(P型である)」の間には「第1の交流信号」が重畳された「第1の逆バイアス電圧」が印加される。逆バイアスの電圧は第1の領域がプラスに、第2の領域がマイナスでなる。また、前記「第2の円弧状帯領域」を構成する「第1の領域(N型である)」と前記「第2の領域(P型である)」の間には「第2の交流信号」が重畳された「第2の逆バイアス電圧」が印加される。逆バイアスの電圧は第1の領域がプラスに、第2の領域がマイナスである。前記した「第1の逆バイアス電圧」と「第2の逆バイアス電圧」の大きさは等しいことが好ましいがこれに限らない。さらに、各逆バイアス電圧に重畳されている前記した「第1の交流信号」と「第2の交流信号」は、同じ振幅であることが好ましいがこれに限らない。「第1の逆バイアス電圧」、「第2の逆バイアス電圧」、「第1の交流信号」、「第2の交流信号」のそれぞれの大きさは発生する面内振動の大きさが均等になるよう、あるいは、不要な振動モードが抑制されるよう適宜設定されても構わない。
【0038】
この半導体MEMS共振器は、(1)(1-1)前記第1の領域からなるリングの外周に隣接させた前記第2の領域と、(1-2)該第2の領域と前記リングを挟んで対向する内周の位置に隣接させた前記第2の領域と、の組み合わせの少なくとも1組からなるリング状の前記構造体であって、(2)前記リングと前記1組の領域間に交流信号が重畳された逆バイアス電圧を印加し、(3)前記交流信号により、前記リングが配置された面内で前記構造体を面内振動させることが特徴である。
【0039】
なお、前段落での「第1の領域」と「第2の領域」の構成について記載する。該「第2の領域」は該リングを構成する「第1の領域」を挟んで対向する位置に配置されている。該2つの領域は該リングの形状を変形させる機能を有しているので、「1組(ペアー)」として配置されている必要がある。かかる「ペアー」は該リングに沿って複数個配置されていても良い。例えば、前記固定領域が2個の場合には、それぞれの固定領域に近接して各2個の「ペアー」を配置することが含まれる。
【0040】
なお、前々段落での「第2の領域」の大きさについて記載する。該領域の大きさを制限する特段の要因はない。該領域が大きい(円周方向に沿った長さが大きい)場合には、該リングを励振する力が大きくなる反面、該リングの振動モードの形状を複雑にする。かかる領域の大きさは、振動モード、前記交流信号と逆バイアス電圧の大きさなどを勘案して決定される。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、空乏層を等価的なギャップとして利用するMEMSデバイスの利用技術が確立された。即ち、(1)要求される周波数範囲で動作可能なMEMS共振器の設計時の自由度が大きくなり、構造上の制約がない共振器を構成できるようになった。(2)大きな電気機械変換効率と大きなQ値が同時に得られる静電駆動型MEMS共振器が実現できた。(3)異なる共振周波数を持つ共振器を複数個集積化でき、共振器の高度化が達成できるようになった。さらに、MEMS共振器の製造法、電子要素としての回路構成法(励振と検出)など、実用デバイスを得るために不可避な設計・製造・応用技術が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)~(e)は、本発明に基づく実施の形態1におけるカンチレバー構造の半導体MEMS共振器の構成を示す図である。
【図2】(a)~(c)は、本発明に基づく実施の形態2におけるリング型半導体MEMS共振器の構成を示す図である。
【図3】(a)~(c)は、本発明に基づく実施の形態3におけるリング型半導体MEMS共振器の構成と励振方法を示す図である。
【図4】(a)~(h)は、エクステンショナル(1,2)モードを説明する図である。
【図5】エクステンショナル(2,2)モードと固定領域を説明する図である。
【図6-1】(a1)~(e2)は、本発明に基づく実施の形態4における半導体共振器の製造法を示す図である。
【図6-2】(f1)~(j2)は、本発明に基づく実施の形態4における半導体共振器の製造法を示す図である。
【図7】(a)~(d)は、本発明に基づく実施の形態5における半導体MEMS共振器の構成と励振方法を示す図である。
【図8】(a)~(c)は、本発明に基づく実施の形態6における半導体MEMS共振器の構成例を示す図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態7における半導体MEMS共振器の構成を示す図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態8における半導体MEMS共振器の構成を示す図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態9における半導体MEMS共振器の構成を示す図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態10における半導体MEMS共振器の構成を示す図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態11における音響エネルギの伝播と閉じ込めを示す図である。
【図14】(a)および(b)は、本発明に基づく実施の形態12における駆動法および信号検出法を示す図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態13における半導体MEMS共振器の構成を示す図である。
【図16】従来例を示す図である。
【図17】(a)および(b)は、従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明に基づく半導体MEMS共振器について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1(a)~(e)を参照して、本発明に基づく実施の形態1における半導体MEMS共振器の構成例について説明する。図1(a)は共振器の平面図である。図1(b)および(c)は共振器の断面図であり、それぞれ、図1(a)に示されるA-A’とB-B’における断面が示されている。これらの図には、第2の導電性(例えばP型)を有するカンチレバー10が示されている。カンチレバー10は、基台12(例えば絶縁体)に固定された固定領域13で支持されている。第1の導電性(例えばN型)を有する駆動電極14は、空乏層領域15を介してカンチレバー10と一体化されている。

【0044】
図1(a)では、カンチレバー10が前記構造体の振動機構、駆動電極14と空乏層領域15、および、空乏層領域15に隣接するカンチレバー10の一部領域が励振機構である。図に示すように、当該励振機構の一部はカンチレバー10と共通化されている。なお、図1(a)の変形例として、励振機構がカンチレバーと離れて配置され(当該励振機構は前記第1の領域と前記第2の領域で構成される)、カンチレバー(励振機構を含まない振動機構になる)と機械的な結合のための細いビームで連結されている構成も考えられる。

【0045】
図1(a)では空乏層領域15は概念的に表示されており、詳細は図1(d)に示されている。図1(d)は図1(b)におけるカンチレバー10近傍の部分拡大図であり、カンチレバー10と駆動電極14は互いに接している。ここで駆動電極14を正電位、カンチレバー10を負電位にする(逆バイアスである)(その手段は明示せず)と、駆動電極14とカンチレバー10とが接する領域に空乏層15が形成される。空乏層15には電子や正孔が存在せず、空乏層15は電気的には絶縁体と同一視しうる。空乏層15の厚さ(横方向の長さ)は、カンチレバー10および駆動電極14の導電度(不純物濃度)に依存し、数ミクロン以下である。当該空乏層が形成された結果、電気的にはあたかも「P型の領域(10’)、絶縁層(15)、N型の領域(14’)」が配列されているように見える。この構成による静電駆動型共振器では、カンチレバー10の厚さ(図1(b))が対向電極の面積に対応し、空乏層15の幅が電極間のギャップになる。

【0046】
図1(e)はカンチレバーの振動を説明する図であり、図1(a)と同様、平面的に見た様子が示されている。前記したように、カンチレバー10と駆動電極14を逆バイアスすると、空乏層を圧縮するような静電気力が作用する。この結果、カンチレバー10は「固定領域から離れた領域でA-A’方向に圧縮」される。ここで逆バイアスする電圧に交流信号を重畳させると、その周波数でカンチレバーが振動する。当該周波数がカンチレバーの共振周波数と同じである場合には大きな振動振幅が得られる。図1(e)に示すようにこの振動はカンチレバー10と駆動電極14が配置された面(図においては紙面と同じ面)内での振動となる。即ち、「面内振動」である。このカンチレバー10の共振周波数は10の長さに主に依存している。このため、カンチレバー10の長さを変化させることにより共振周波数を変化させることができる。この特徴は共振周波数の異なる複数の共振器の集積化に適している。なお、この実施例では駆動電極14と固定領域13が分離した構造を示したが、駆動電極14と固定領域13が接した構造としても本実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態ではカンチレバーの共振モードとして曲げ変形振動を利用する例を示したが、このときカンチレバー10の幅と駆動電極14の幅を必ずしも等しく設定する必要はない。これは駆動電極14の幅(A-A’方向)寸法は構造体としてのカンチレバー10の共振周波数にほとんど影響を与えないからである。かかる特徴は前記した従来例のような構造上の制限(縦振動する構造体の厚さと拡散層の深さ)がなく、構造体の平面でのサイズで所要の特性を得ることができるという設計上の大きな利点となる。しかし、駆動電極14の領域の振動状態によって構造体としてのカンチレバー10の振幅が大きく変化する。図1では駆動電極14は基台12に固定された例が示されている。この場合、駆動電極14のA-A’方向の振幅が小さくなるため、カンチレバー10の振幅が大きくなる。一方、駆動電極14が基台12に固定されていない場合には駆動電極14のA-A’方向の幅寸法をカンチレバー10のA-A’方向の寸法よりも大きく設定することにより、駆動電極14の振幅を抑えてカンチレバー10の振幅を増大させることが可能である。このように、本発明では、駆動電極14の幅寸法を自由に設定することが可能であるという特徴をもっている。

【0047】
(実施の形態2)
図2(a)~(c)を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるリング型半導体MEMS共振器の構成について説明する。図2(a)は本実施の形態におけるリング型半導体MEMS共振器の平面図であり、図2(b)は図2(a)のC-C’での断面図である。これらの図には、振動リング20が示されている。リング幅の中央領域には第1の導電性(例えばN型)の領域21が、外周および内周には、第2の導電性(例えばP型)の領域22および23がそれぞれ配置されている。振動リング20の幅の中央(円周に沿っている)には基台24に固定された固定領域25が配置され、振動リング20は、固定領域25によって保持されている。

【0048】
図2(a)~(c)に示した構成において、領域21をプラス電位、領域22および23をマイナス電位にする(逆バイアスである)(その手段は明示せず)と、領域21と領域22との中間領域(円弧状)、及び、領域21と領域23との中間領域(円弧状)には空乏層(図示せず)が発生し、当該2つの空乏層には圧縮力が作用する。例えば、領域21を接地電位とし、領域22および23に負電圧が重畳された交流信号を供給すると、図2(c)に示すような振動が発生する。当該交流信号の周波数が振動リング20の共振周波数と等しくなると、振幅が大きな振動が発生する。振動リングは複数の共振周波数を有しており、図2(c)はその一例である。かかる事例においては、振動リングは全周に渡ってリング幅が大きくなったり、小さくなったりする収縮運動で振動する。かかる振動モードはエクステンショナル(0,2)モードと呼ばれている。前記収縮運動では、領域21の中央領域(円弧状)は振動しないので、当該領域を固定領域25としても振動を妨げることはない。

【0049】
前段落に記載したように、図2の構成では、当該リング20は「励振機構」を内包する「振動機構」になっており、前記した「構造体」に該当する。

【0050】
(実施の形態3)
図3(a)~(c)を参照して、本発明に基づく実施の形態3におけるリング型半導体MEMS共振器の構成について説明する。かかる構成では、「構造体」は「励振機構」を内包した「振動機構」でもある。これらの図には、構造体としての振動リング(共振リング)30が示されている。振動リング30は、第1の半周状帯領域31と第2の半周状帯領域41とで構成されている。さらに、第1の半周状帯領域31には第1の導電性(例えばN型)を有する第1の領域32がリングの円周方向に沿って配置され、その内周側と外周側には第2の導電性(例えばP型)を有する第2の領域33が隣接して配置されている。また、第2の半周状帯領域41には第2の導電性(例えばP型)を有する第2の領域42がリングの円周方向に沿って配置され、その内周側と外周側には第1の導電性(例えばN型)を有する第1の領域43が配置されている。図3(b)は図3(a)のD-D’での断面図である。なお、図3(b)での寸法は必ずしも図3(a)の寸法とは一致しておらず、説明上デフォルメされている。図3(b)には、当該共振リングの外部に設置された直流電源50,51が示されている。直流電源50,51は、それぞれ「第1の逆バイアス電圧」と「第2の逆バイアス電圧」とを発生している。当該逆バイアス電圧の大きさは必ずしも同一値であるとは限らない。直流電源50は、第1の領域32と第2の領域33とを逆バイアスしている。直流電源51は、第2の領域42と第1の領域43とを逆バイアスしている。配線52は、第2の領域33と第1の領域43とを同電位にするためのものである。かかる構成により、第1の領域32と第2の領域33との間、第2の領域42と第1の領域43との間にはそれぞれ空乏層(図示せず)が形成される。直流電源50,51により、第1の領域32と第2の領域33との組合せ、および、第2の領域42と第1の領域43との組合せには圧縮力が作用する。直流電源50,51にそれぞれ第1の交流信号と第2の交流信号(それぞれの値は異なっていても良い)を重畳(図示せず)させ、当該交流信号の周波数を振動リング30の共振周波数と同じにすると、振動リング30は大きな振動振幅で振動する。当該構成による静電駆動型共振器では、第1の領域32と第2の領域33との組合せ(および第2の領域42と第1の領域43との組合せ)が互いに対向した電極となり、それらの厚さ(紙面では上下方向の厚さ)が電極対向面積に対応している。

【0051】
図3(a)~(c)に示した例では、リング状の構造体が「2つの半周状帯領域」で構成されている。しかし、この構成に限らず、「少なくとも2つの円弧状帯領域」がリングを構成していても良い。かかる構成では、第1の「円弧状帯領域」は図3(a)における第1の半周状帯領域31に、第2の「円弧状帯領域」は図3(a)における第2の半周状帯領域41に対応することになる。

【0052】
図3(a)~(c)に示したリング型半導体MEMS共振器の振動モードについて、図4(a)~(h)を参照して説明する。ここで示すのは、エクステンショナル(1,2)モードと呼ばれる振動モードである。図4(a)~(h)は単純構成(同心円形状)の共振リングに対して解析したモードを示す。図4(a)~(h)では、リングの変形形状と共に変形量も濃淡で示されている。かかるモードでは、当該共振器のリング形状が時間経過と共に図4(a)から図4(h)へと例示した形で変形する。即ち、前記「第1の半周状帯領域(31)」のリング幅が大きくなり、同時に「第2の半周状帯領域(41)」のリング幅が小さくなる(図4(c))。また、振動周期の半分だけ時間が経過した時点では、前記「第1の半周状帯領域(31)」のリング幅が小さくなり、同時に「第2の半周状帯領域(41)」のリング幅が大きくなる(図4(g))。いずれの変形状態でも、第1の半周状帯領域と第2の半周状帯領域の境界部分の領域は変形が小さい。このため、リングを当該領域で支持すれば振動状態を妨げることはない。即ち、変形が小さい領域(より具体的には振動の「節」領域)が固定領域になる。

【0053】
図5に示すはリング型半導体共振器の他の振動モードである。これはエクステンショナル(2,2)モードと呼ばれる振動モードである。当該モードでは、左右領域の幅が小さくなると、上下領域の幅が大きくなる。振動周期の半分だけ時間が経過した時点では、左右領域の幅が大きくなり、上下領域の幅が小さくなる(図示せず)。当該モードでは、同図に示した4つの矢印が示す領域の変形が小さい。このため、これらの領域でリングを支持すれば振動状態を妨げることはない。即ち、かかるモードでは「4つの矢印」が示す領域が「節」であり、固定領域となる。

【0054】
図3(c)は図3(a)のE-E’での断面図である。図4(a)~(h)に示したエクステンショナル(1,2)モードでリングを振動させる共振器の設計では、リングの左右の固定領域45でリングが支持されている。図3(c)に示すように、固定領域45はアンカー46で機械的に固定されている。アンカー46は、例えば、絶縁層47、支持体48を介して基台49上に設置された構成である。支持体は製造プロセスにも依存するが、第1の領域43、固定領域45と共通であっても良い。かかる場合には、第2の領域42と絶縁するために絶縁層47が配置されている。なお、本実施の形態では、第2の領域42が第1の領域43を厚さ方向に貫通している構成が示されているが、この限りではない。例えば、第2の領域42が第1の領域43を貫通することなく、埋設されていても良い。かかる構成では、同図の第2の領域42の直下に第1の領域43が存在することになるので、絶縁層47は不要である。

【0055】
図3(a)~(c)に示したリング型共振器のエクステンショナルモードでの共振周波数は「リングの幅」に依存し、リング外周や内周の大きさ、リングの厚さには依存しないことが知られている。リング幅が大きくなると共振周波数は小さくなり、リング幅が小さくなると共振周波数は大きくなる。すなわち、リング外周/内周の大きさと厚さは共振周波数とは別の設計要因で決定できるという利点がある。このことは、所望の共振周波数を達成するための設計制限が少なく、設計の自由度(フレキシビリティ)が大きくなることを示している。前記した非特許文献2でのMEMSデバイスには「厚さ」制限があることと異なっている。かかる利点により、同一素材(例えばシリコンウェーハ)、同一製造プロセスで複数の異なる共振周波数を有するMEMS共振器群が実現可能となる。多周波数対応のマルチ共振器を単一のチップに集積化可能である。

【0056】
図3(a)~(c)に示したリング型共振器の構成では、振動領域が全てシリコンの単一素材で構成されている。静電型MEMSデバイスのギャップ相当領域にシリコン酸化物(SiO2)などの異種素材を使用していないため、かかる素材での振動吸収がなく、高いQ値が得られるという特徴もある。この結果、電気機械変換係数が大きいMEMS共振器を実現することができる。

【0057】
(実施の形態4)
図6-1(a1)~(e2)および図6-2(f1)~(j2)を参照して、半導体MEMS共振器(図3)の製造方法について説明する。図6-1(a1)~(e2)および図6-2(f1)~(j2)には、図3(a)のD-D’およびE-E’での断面図がそれぞれ示されている。なお、図6-1および図6-2での寸法は必ずしも図3(a)で示されていた寸法とは一致しておらず、説明上デフォルメされている。図6-1(a1)および図6-1(a2)においては、シリコン層(シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハでのデバイス層)60、絶縁層61、シリコン層(基板層)62が示されている。説明の便宜上、シリコン層60およびシリコン層62は第1の導電性(例えばN型)を有している。シリコン層60の表面に絶縁層を設け、周知の技術を用いてパターニングされた絶縁層63を配置する(図6-1(b1)および(b2))。絶縁層63のパターンをマスクとして不純物拡散を行い、第2の導電性(例えばP型)を有する領域64を作成する。なお、同図では領域64の深さは「絶縁層61まで到達する」深さであるが、この限りではない。続いて、絶縁層を配置し、周知の技術を用いてパターニングされた絶縁層65を配置する(図6-1(d1)および(d2))。次に、当該絶縁層65が覆われていない領域をエッチングなどの手法で除去する(図6-1(e1)および(e2))。

【0058】
シリコン層62の裏面側に絶縁層を配置し、周知の技術を用いてパターニングされた絶縁層67を配置する(図6-2(f2))。なお、図6-2(f1)では前記絶縁層は全て除去されている。図6-2(f2)では前記したアンカーに対応する領域にのみ絶縁層67が存在する。続いて、絶縁層67をマスクとして、シリコン層(基板層)がエッチングされる(図6-2(g1)および(g2))。この結果、リングを機械的に固定する前記アンカーに対応する領域にのみシリコン層62’が配置される。次に、絶縁層61がエッチングなどの手法により除去される(図6-2(h1)および(h2))。この手法では、シリコン層60側とシリコン層62側との両面からエッチングされる。かかる構成ではシリコン層60の表裏面に領域64との境界(PN接合面)が露出しており、当該境界表面でPN接合の絶縁性が劣化する可能性がある。かかる劣化があると、前記した逆バイアス状態が保てなくなる。この劣化を回避するために、熱酸化あるいは化学的堆積(CVD)の手法で絶縁層68および69を設ける(図6-2(i1)および(i2))。ただし、当該劣化が発生しない場合には絶縁層68および69は不要となる。最後に絶縁層68の一部を除去して第2の導電性(例えばP型)を有する領域70を露出させる(図6-2(j2))。この露出領域は当該領域へ電圧を供給する接続パッドとなる。

【0059】
図6-1(a1)~(e2)および図6-2(f1)~(j2)の説明では、便宜上、特定の導電性を例示したが、本発明はこれに限ることはない。例示した導電性が逆となる構成もあり得る。逆バイアスすることにより空乏層に力を作用させ、振動リングを振動させることが可能であるような構成であっても良い。

【0060】
(実施の形態5)
図7(a)~(d)を参照して、本発明に基づく実施の形態5として、半導体MEMS共振器の他の構成と励振方法について説明する。これらの図では前記した第1の導電性領域が「非貫通」の場合が示されている。これらの図は図3(b)に示した構成に対応している。図7(a)および(c)では第2の導電性(例えばP型)の領域84(SOI構成のデバイス層)が例示されている。図7(a)では、第1の導電性(例えばN型)の領域85,86,87が領域84に配置されている。領域85,86,87は領域84を深さ方向に突き抜けることなく、それらの深さは84の厚さよりも小さい。かかる構成は前記した不純物拡散の条件を制御することにより達成される。領域84~87で構成された各領域には、直流電源90,91が接続されている。かかる電源により、領域84と領域85の間、あるいは領域84と領域86との間で構成されるPN接合は逆バイアスされる。当該直流電源に交流信号が重畳(図示せず)されている場合には、その周波数で当該PN接合が励振される。かかる構成では、図7(b)に例示した振動モード(エクステンショナル(0,1)モード)で励振することができる。

【0061】
図7(c)の構成では、領域84に領域85および88が配置され、さらに、領域88には領域88の深さよりも浅い第2の導電性(例えばP型)の領域89が配置されている。領域88と領域84との間でもPN接合を形成しているが、配線92により共通の電位に設定されている。領域84と領域85との間、および、領域88と領域89との間は、直流電源90および91でそれぞれ逆バイアスされている。かかる構成では図7(d)に例示した振動モード(エクステンショナル(1,2)モード)で励振することができる。

【0062】
図7に示した構成例では、PN接合の下側面が領域84で覆われているので、領域84の下面に絶縁層(図6-2(i1)における絶縁層69に相当)を配置する必要はない。一方、PN接合が非貫通であるので、前記直流電源により発生した力には「領域84を撓ませる」力も含まれている。かかる「撓ませる力」は面外振動を発生させるので好ましくない場合もあり得る。この面外振動を抑制し、面内振動を主たる振動にするためには、領域84の厚さ、領域85(あるいは領域89)の厚さと幅、導電性(不純物濃度)などを制御すれば良い。

【0063】
(実施の形態6)
図8(a)~(c)を参照して、本発明に基づく実施の形態6として、複数の「円弧状帯領域」が振動リングを構成している例について説明する。同図では「白」表示領域が「第1の領域(N型)」、「黒」表示領域が「第2の領域(P型)」を示している。また、円弧状帯領域同士の間の境界は説明の便宜上離れているように図示されているが、実際の構造では互いに隣接して配置されている。図8(a)では4個の円弧状帯領域が円周に沿って配置され、互いに向き合った2個の円弧状帯領域130a,130bには面内振動を励起するPN接合が配置されている。円弧状帯領域131a,131bにはPN接合が配置されていない。図8(b)では6個の円弧状帯領域が円周に沿って配置され、互いに向き合った2個の円弧状帯領域132a,132bにはPN接合が配置されているが、残りの4個の領域には配置されていない。図8(c)では6個の円弧状帯領域が円周に沿って配置されている。この内の4個の領域(円弧状帯領域133a,133b,134a,134b)にはPN接合が配置されているが、残りの2個の円弧状帯領域には配置されていない。また、図8(a)と図8(b)とは異なり、リングの上半分(あるいは下半分)が異なる導電性の円弧状帯領域で構成されている。図8(a)~(c)に示した本実施の形態においても、逆バイアスおよび交流信号を印加することにより面内振動を励起することが可能である。なお、図8(a)~(c)はリング構成の一例を示したに過ぎず、他の構成であっても構わない。

【0064】
(実施の形態7)
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態7におけるリング型共振器について説明する。図9においては、第1の導電型を有する第1の領域である振動リング150が示される。さらに、第2の導電型を有し振動リング150の外周で振動リング150に接して配置された第2の領域151aが示される。さらに、第2の導電型を有し振動リング150の内周で振動リング150に接して配置された第2の領域151bが示される。図9において、第2の領域151aと第2の領域151bとはリングを挟んで対向する位置に配置されている。それぞれの大きさ(円周方向に沿った長さ)には格段の制限がないが、振動モードを考慮するならば、それぞれの「中心角」(リング中心から電極を見込んだ角度に相当)をほぼ等しくすることが好ましい。図9には、さらに固定領域152および「アンカー」領域153が示されている。振動リング150と第2の領域151a(および第2の領域151b)に逆バイアス電圧が重畳された交流信号を供給することにより当該リングは励振される。また逆に、当該リングが振動している時には、振動リング150と第2の領域151a(第2の領域151b)からは当該振動に対応した電気信号(例えば静電容量の変化)が得られる。図9では、当該構成要素群を含む配置構成155a(破線で示す)と同様のものが振動リング150に沿って他に3ヶ所(配置構成155b,155c,155d)配置されている。即ち、合計4ヶ所の配置構成155a,155b,155c,155dが配置されている。図9中の上下に配置された配置構成155aおよび155cをリングの励振用に、図9中の左右に配置された配置構成155bおよび155dを電気信号検出用に用いることができる。かかる構成では、振動リングの共振周波数は振動リング150と配置構成155a(あるいは配置構成155b,155c,155d)の構成(主として平面的な寸法)によって決定される。本実施の形態では、共振周波数のPN接合構造(例えばそれらの厚さ)依存性が低いことから、共振器の設計が容易となり、また作製も容易になるという特徴がある。

【0065】
(実施の形態8)
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態8におけるリング型共振器について説明する。本実施の形態におけるリング型共振器は、図9に示したリング型共振器の構成から配置構成155aと配置構成155cとを排除した構成となっている。図10に示すように、振動リング150を固定する領域は当該リングの円周のうち図10中の左右の2ヶ所のみであるので、より多くの振動モードで動作させることが可能である。

【0066】
(実施の形態9)
図11を参照して、本発明に基づく実施の形態9におけるリング型共振器について説明する。本実施の形態におけるリング型共振器は、図11に示すように、図10に示した構成のうち配置構成155bおよび155dを分割配置した構成となっている。即ち、本実施の形態における配置構成155eおよび155fが、実施の形態8における配置構成155dに対応し、本実施の形態における配置構成155gおよび155hが、実施の形態8における配置構成155bにそれぞれ対応している。かかる構成では、配置構成155eから配置構成155hへの励振信号(交流信号と逆バイアス信号)を制御することにより、多用な振動モードを選択できる。例えば、配置構成155eと配置構成155gとに同じ励振信号を、配置構成155fと配置構成155hとに別の励振信号(例えば、逆位相の交流信号)を供給すれば、エクステンショナル(1,2)モードで励振することができる。また、配置構成155eから配置構成155hの全てに同じ励振信号を供給すれば、エクステンショナル(0,2)モードで励振することができる。本実施の形態では4組の「ペアー」を配置する例を示したが、より多くの「ペアー」を配置したり、各「ペアー」の配置される領域を変化させることにより、他の振動モードで励振することが可能である。

【0067】
(実施の形態10)
図12を参照して、本発明に基づく実施の形態10におけるリング型共振器について説明する。本実施の形態におけるリング型共振器は、図12に示すように、2個の振動リング160a,160bを配置し、連結機構161で両者を機械的に結合した構成を備えている。本実施の形態におけるリング型共振器においては、前記した配置構成(配置構成155aなど)と同じ構成の配置構成162a~162dが配置されている。かかる構成では、配置構成162aおよび162bを励振用に設定し、図12中の左側にある振動リング160aを振動させる。当該振動は連結機構161を介して図12中の右側にある振動リング160bを振動させる。この振動は配置構成162cと配置構成162dとの間から電気信号として検出することができる。振動リング160aと振動リング160bとは同じ形状、同じ大きさであることが好ましいが、これに限らない。例えば、振動リング160aの外径、内径、幅が振動リング160bの外径、内径、幅よりも若干小さい場合には、両者の共振周波数に差が生じる。しかし、連結機構161でこれらの振動が結合され、共振周波数の帯域幅が増大するという利点が発生する。さらに、振動リングの数を増加(2次元的な配置をも含む)させ、それぞれを連結機構で連結させることも可能である。

【0068】
(実施の形態11)
図13を参照して、本発明に基づく実施の形態11として、音響エネルギの伝播および閉じ込めについて説明する。図13では、図3(a)に示した第1の半周状帯領域31の一部分31’が示されている。図13において、第1の領域32’および第2の領域33’は図3(a)に示した第1の領域32と第2の領域33とにそれぞれ対応している。第1の領域32’と第2の領域33’との間に形成された空乏層(図示せず)には振動リングを振動させる静電気力が発生している。かかる振動が発生した時には、第2の領域33’の内部を伝播する音響波100が発生する。この波は第2の領域33’の内部を径方向に伝播し、第2の領域33’の外側界面と、第1の領域32’と接する内側界面で反射する(101の矢印で例示)。第2の領域33’の幅102および幅103(共に平面内での幅である)を適宜設定することにより、音響波100を定在波にすることができる。かかる構成では振動リングへ与えられたエネルギが外部に漏れ出さないので、効率良くリングを振動させることができる。

【0069】
(実施の形態12)
図14(a)および(b)を参照して、本発明に基づく実施の形態12として、半導体MEMS共振器の駆動法および信号検出法について説明する。図14(a)は図3(a)と同一のものをしめし、各領域の接続パッドを便宜的にJ,K,L,Mと表記してある。図14(b)は駆動系110および信号検出系111を示す。駆動系110では、入力端子112から供給された交流信号は、正負の逆バイアス用直流電源に重畳され、接続パッドJおよびLから振動リングに供給される。一方、接続パッドKおよびMは、OP1およびOP2でそれぞれ構成された電流増幅回路に接続されている。かかる構成では、当該電流増幅回路の入力インピーダンスはゼロであるので、接続パッドKおよびMは接地(仮想接地である)されていることになる。このため、振動リングを構成しているPN接合には、駆動系110の直流電源から供給された交流信号を含む電圧全てが印加されることになる。即ち、第1の導電性(例えばN型)を有する第1の領域(Jに対応)と第2の導電性(例えばP型)を有する第2の領域(Kに対応)には交流信号が重畳された第1の逆バイアス電圧(+Vで表示)が印加されている。一方、第2の導電性を有する第3の領域(Lに対応)と第1の導電性を有する第4の領域(Mに対応)には当該交流信号が重畳された第2の逆バイアス電圧(-Vで表示)が印加されている。これらの励振条件下で振動リングを振動させている。

【0070】
図14(a)および(b)における接続パッドKおよびMからはそれぞれ第1の半周状帯領域31および第2の半周状帯領域41での振動(リングの変形)に対応した信号が得られる。エクステンショナル(1,2)モードでは、第1の半周状帯領域31が縮むと第2の半周状帯領域41が膨張するといった変形であるので、接続パッドKおよびMから得られる信号は逆相になる。かかる逆相の信号はOP1およびOP2において電流電圧変換され、差動増幅回路(OP3)で処理される。一方、接続パッドKおよびMから得られる正相信号成分(例えば、リングの振動に寄与しない浮遊容量などからの信号)は差動増幅回路で相殺される。この結果、出力端子113からは振動リングの振動のみに対応した信号が得られる。

【0071】
(実施の形態13)
図15を参照して、本発明に基づく実施の形態13における半導体MEMS共振器について説明する。図15に示すように、本実施の形態における半導体MEMS共振器の構成は、図3(a)に示した構成に、振動リングの外周および内周の領域に電極120,120’ ,122,122’を付加したものである。かかる構成では、種々の駆動・検出形態を採用することができる。例えば、
(1)第1の領域32と第2の領域33との組合せ、第2の領域42と第1の領域43との組合せで振動リングを励振し、電極120と電極120’との間、および、電極122と電極122’との間から信号を検出する。
(2)電極120と電極120’との組合せ、電極122と電極122’との組合せで振動リングを励振し、第1の領域32と第2の領域33との間、第2の領域42と第1の領域43との間から信号を検出する。
(3)第1の領域32と第2の領域33との組合せ、第2の領域42と第1の領域43との組合せ、電極120と電極120’との組合せ、電極122と電極122’との組合せの全てで振動リングを励振し、第2の領域33と第1の領域43との間から信号を検出する。信号検出法は図14(a)および(b)と同様である。

【0072】
本明細書では複数の実施の形態を挙げて本発明の詳細な説明を行った。説明では便宜上、円弧状帯領域(及び半周状帯領域)には、それぞれ1個の不純物が拡散された場合を示している(例えば図3(a))。しかしながら、不純物が拡散された領域は1個に限らず、複数の当該領域が円弧状帯領域に配置されていても構わない。例えば、円弧状帯領域の構成が、外周側から、P型-N型-P型-N型-P型といった構成、即ち、当該領域には2条の領域が配置されている構成であっても構わない。また、P型とN型の指定は本明細書に記載した例に限らず、逆の組合せであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、大きな電気機械変換効率と大きなQ値を持ち集積化に適した構成の半導体MEMS共振器が得られた。さらに、かかる半導体MEMS共振器の構成・構造を活かした駆動法や信号処理法も得られた。本発明で得られた技術は、通信用の共振器のみならず、センサ、アクチュエータなどMEMSデバイス全般に応用可能である。センサ応用においてはセンサ信号の検出に共振器を利用した構成を採用することにより、高感度のセンシングが可能となる。さらに、特に高い周波数が必要とされる分野に本発明を適用することにより顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0074】
10 カンチレバー(第2の導電性、P型)、10’ P型の領域、12,24,49 基台、13,25,45,152 固定領域、14 駆動電極(第1の導電性、N型)、14’ N型の領域、15 空乏層領域、20,30,150,160a,160b 振動リング、21 第1の導電性(N型)領域、22,23 第2の導電性(P型)領域、31,41 半周状帯領域、31’ 一部分、32,32’,43 第1の領域(N型)、33,33’,42,151a,151b 第2の領域(P型)、50,51,90,91 直流電源、52,92 配線、45,152 固定領域(リング支持)、46,153 アンカー、47,61,63,65,67,68,69 絶縁層、48 支持体、60,62,62’,85,86,87,88 シリコン層(第1の導電性,N型)、64 領域、84,89 シリコン層(第2の導電性,P型)、70 接続パッド、100 音響波、101 反射を示す矢印、102,103 領域の幅、110 駆動系、111 信号検出系、112 交流信号の入力端子、113 出力端子、120,120’,122,122’ 電極、130a,130b,131a,131b,132a,132b,133a,133b,134a,134b 円弧状帯領域、155a,155b,155c,155d,155e,155f,155g,155h,162a,162b,162c,162d 配置構成、161 連結機構。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6-1】
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【図6-2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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