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Specification :(In Japanese)ハイドロフォビンを含むエノキタケ抽出物の製造方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6322574
Date of registration Apr 13, 2018
Date of issue May 9, 2018
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)ハイドロフォビンを含むエノキタケ抽出物の製造方法
IPC (International Patent Classification) A23L  31/00        (2016.01)
C07K  14/375       (2006.01)
FI (File Index) A23L 31/00
C07K 14/375
Number of claims or invention 1
Total pages 13
Application Number P2014-515615
Date of filing May 13, 2013
International application number PCT/JP2013/063296
International publication number WO2013/172304
Date of international publication Nov 21, 2013
Application number of the priority 2012112438
Priority date May 16, 2012
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Apr 13, 2016
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
【識別番号】309035073
【氏名又は名称】有限会社一栄
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】河原 秀久
【氏名】小出 芳栄
Representative (In Japanese)【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
Examiner (In Japanese)【審査官】田ノ上 拓自
Document or reference (In Japanese)特開昭60-023391(JP,A)
特開昭60-023392(JP,A)
特開2003-070450(JP,A)
特開2003-231644(JP,A)
特開平06-239761(JP,A)
特開平06-128164(JP,A)
特開平09-056362(JP,A)
国際公開第2006/082649(WO,A1)
特開2005-068112(JP,A)
特開2011-236183(JP,A)
Field of search A23L 31/00
C07K 1/00-19/00
C07G 1/00-99/00
A23L 2/00-2/40
5/00-5/30
29/00-29/10
A61K 35/00-35/768
36/06-36/068
36/07-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
エノキタケ子実体を酢酸溶液に浸漬しその後に前記酢酸溶液から分離することと、
分離した前記エノキタケ子実体を-80℃~-10℃の温度のエタノールに浸漬した後に前記-80℃~-10℃の温度のエタノールから分離することと、
分離した前記エノキタケ子実体を80℃以上の水に浸漬した後に上澄みを抽出物として得ることと、を備えるハイドロフォビンを含むエノキタケ抽出物の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2012-112438号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、エノキタケ抽出物の製造方法、エノキタケ抽出物およびエノキタケ抽出物を含む食品添加剤に関する。
【背景技術】
【0003】
キノコやカビ等の菌類、地衣類等から抽出される抽出物は、粘着性や乳化性を示す低分子タンパク質であるハイドロフォビンを含むことが知られている。このハイドロフォビンを増粘剤、乳化剤、界面活性剤等の各種剤へ利用することが検討されている。
例えば、特許文献1乃至3には、真菌類由来のハイドロフォビンを食品添加剤として使用することが記載されている。
【0004】
特許文献1乃至3には、ハイドロフォビンを得る方法として、真菌からハイドロフォビンをコードする遺伝子を取り出し宿主細胞に導入する遺伝子組み換えの手法によってハイドロフォビンを得ること、及び、真菌の菌糸体からエタノール等でハイドロフォビンを抽出することが記載されている。
【0005】
しかしながら、遺伝子組み換え技術で製造されたハイドロフォビンは、安全性の観点から食品添加剤として食品へ使用することを制限される場合がある。
また、真菌の菌糸体からエタノール等で抽出するという一般的な抽出方法では、抽出量が少なく抽出効率が悪いという問題がある。
【0006】
非特許文献1には、ハイドロフォビンの抽出方法として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の薬品で処理することが記載されている。かかる方法によればハイドロフォビンの抽出量は増加する。しかし、かかる抽出方法で抽出されたハイドロフォビンは安全性の観点からみると好ましくない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】日本国特開2008-507958号公報
【特許文献2】日本国特開2008-507959号公報
【特許文献3】日本国特開2011-41583号公報
【0008】

【非特許文献1】Interfacial Self-Assembly of Fungal Hydrophobins of the Lichen-Forming Ascomycetes Xanthoria parientina and X. ectaneoides, Fungal Genetics and Biology 30,81-93(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような点に鑑み、ハイドロフォビンを比較的多く含む安全性の高い抽出物を効率よく得ることができる方法、および安全性の高い抽出物および食品添加剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明のハイドロフォビンを含むエノキタケ抽出物の製造方法は、
エノキタケ子実体を酢酸溶液に浸漬しその後に前記酢酸溶液から分離することと、
分離した前記エノキタケ子実体を-80℃~-10℃の温度のエタノールに浸漬した後に前記-80℃~-10℃の温度のエタノールから分離することと、
分離した前記エノキタケ子実体を80℃以上の水に浸漬した後に上澄みを抽出物として得ることと、を備える。

【0014】
本発明のエノキタケ抽出物は、
エノキタケ子実体をアルコールに浸漬した後に前記アルコールから分離し、
分離した前記エノキタケ子実体を80℃以上の水に浸漬することで抽出される。
【0015】
食品添加剤に係る本発明は、前記エノキタケ抽出物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例のエノキタケ抽出物の乳化活性を示すグラフ。
【図2】実施例のエノキタケ抽出物の乳化活性を示すグラフ。
【図3】実施例のエノキタケ抽出物のヒドロキシプロピルセルロースに対する結合性を示すGPCクロマトグラフ。
【図4】実施例のエノキタケ抽出物のペクチンに対する結合性を示すGPCクロマトグラフ。
【図5】実施例のエノキタケ抽出物のワキシコーンスターチに対する結合性を示すGPCクロマトグラフ。
【図6】エノキタケ抽出物のタンパク質濃度と各種試料に対する接着性との関係を示すグラフ。
【図7】シャンプーの泡高さを測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態のエノキタケ抽出物の製造方法は、
エノキタケ子実体をアルコールに浸漬した後に前記アルコールから分離することと、
分離した前記エノキタケ子実体を80℃以上の水に浸漬した後に上澄みを抽出物として得ることと、を備える。

【0018】
さらに、必要に応じて、前記エノキタケ子実体をアルコールに浸漬する前に、前記エノキタケ子実体を酸性溶液に浸漬しその後に前記酸性溶液から分離することを、備えていてもよい。

【0019】
本実施形態で用いる材料としては、エノキタケ(Flammulina velutipes(Curt.:Fr.)Sing)の茎部分と傘部分とからなる子実体の部分が用いられる。
エノキタケは、天然のものあるいは人工栽培したものいずれであってもよく、その産地等も問わない。

【0020】
尚、本実施形態でいうエノキタケ子実体とは、エノキタケ(Flammulina velutipes(Curt.:Fr.)Sing)の生の子実体、エノキタケ子実体の乾燥体、およびエノキタケ子実体からタンパク質以外の成分を除去する処理を施した処理物を含む。

【0021】
前記エノキタケ子実体は、凍結乾燥などによる乾燥状態で、あるいはそのまま生の状態で、粉末にして用いることができる。
あるいは、前記エノキタケ子実体から、多糖類等のタンパク質以外の成分を除去する処理を施した処理物を用いてもよい。

【0022】
菌類の一種であるエノキタケにハイドロフォビンが含まれていることは従来から知られている。エノキタケは安全性の高い材料であるため、エノキタケからハイドロフォビンを抽出することで、安全性の高いハイドロフォビン抽出物が得られる。

【0023】
〔酸処理工程〕
本実施形態では、前記エノキタケ子実体をアルコールに浸漬する前に、前記エノキタケ子実体を酸性溶液に浸漬した後に前記酸性溶液から分離する酸処理工程を実施してもよい。
尚、酸処理工程の実施は、必須ではない。

【0024】
前記酸処理工程で使用される酸性溶液としては、例えば、酢酸、クエン酸等の酸の水溶液が挙げられる。
特に、酢酸水溶液を用いることが安全性の面からみて好ましい。
前記酸性溶液のpHは、pH1.0~3.0、特に好ましくはpH1.0~2.0程度になるように調整することが好ましい。
前記pHの範囲であれば、効率よくハイドロフォビンを抽出することができる。

【0025】
酸処理工程では、前記子実体の粉末を前記酸性溶液中に懸濁して、そのまま酸性溶液中に10分間~60分間浸漬させた後に、遠心分離、ろ過、デカンテーション等の公知の分離方法で上澄みと前記エノキタケ子実体である沈殿物とに分離する。
遠心分離によって、前記沈殿物を得る場合には、例えば、8000×g~10000×gで、10分間~30分間程度遠心分離することが好ましい。

【0026】
酸処理工程において、前記エノキタケ子実体を浸漬する前記酸性溶液の量は、例えば、エノキタケ子実体20mg(絶乾重量換算)に対して1ml~2ml程度であることが好ましい。

【0027】
本実施形態の酸処理工程において、前記浸漬と分離とを複数回行なってもよい。すなわち、酸性溶液に浸漬後分離された沈殿物を、さらに酸性溶液中に浸漬して、沈殿物を分離することで不純物の少ない、より多くのハイドロフォビンを含む抽出物が得られる。

【0028】
〔アルコール処理工程〕
本実施形態では、前記酸処理工程後のエノキタケ子実体をアルコールに浸漬させた後に前記アルコールから分離するアルコール処理工程を実施する。
本実施形態で使用するアルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、1-プロパノール等が挙げられる。
中でも、エチルアルコールを使用することが安全性の面から好ましい。

【0029】
前記酸処理工程で分離されたエノキタケ子実体(沈殿物)を前記アルコール中に懸濁して、そのままアルコール中に浸漬する。この時前記アルコールの温度は、-80℃~-10℃程度の低温であることが、アルコール中へのタンパク質の溶解を抑制する観点から好ましい。

【0030】
アルコール処理工程において、前記エノキタケ子実体を浸漬する前記アルコールの量は、例えば、エノキタケ子実体20mg(絶乾重量換算)に対して1ml~2ml程度であることが好ましい。

【0031】
前記沈殿物は、前記アルコール溶液中に懸濁後10分間~60分間浸漬させた後に、遠心分離、ろ過、デカンテーション等の公知の分離方法で上澄みとエノキタケ子実体である沈殿物とに分離する。
遠心分離によって、前記沈殿物を得る場合には、例えば、8000×g~10000×gで、10分間~30分間程度遠心分離することが好ましい。

【0032】
本実施形態のアルコール処理工程において、前記浸漬と沈殿物の分離とを複数回行なってもよい。すなわち、アルコールに浸漬後、分離された沈殿物を、さらにアルコール中に懸濁して浸漬し、沈殿物を分離することで不純物が少ない、より多くのハイドロフォビンを含む抽出物が得られる。

【0033】
本実施形態においては、前記アルコール処理工程の後、沈殿物として得られたエノキタケ子実体中に含まれるアルコール分を除去するため、60分間~240分間程度の時間、例えば、ドラフトチャンバーのような排気可能な空間に置きアルコールを揮発させてもよい。

【0034】
〔抽出工程〕
次に、前記アルコール処理工程で分離したエノキタケ子実体(沈殿物)を、80℃以上の水に浸漬して抽出物を得る抽出工程を実施する。
前記沈殿物を、80℃以上、好ましくは100℃の沸騰水中に10分間~60分間、好ましくは20分間~40分間浸漬する。
前記水が80℃未満、好ましくは30℃~40℃程度になるまで冷却した後、さらに8000×g~10000×g、10分間~30分間、遠心分離等を行った上澄みを、エノキタケ抽出物として得る。

【0035】
本実施形態の製造方法で得られたエノキタケ抽出物には、ハイドロフォビンが含まれている。
ハイドロフォビンは、ジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を含む数100程度のアミノ酸からなる低分子タンパク質であり、構造的にSDS可溶性を示すクラスIIと、不溶性を示すクラスIとに分類される。
尚、本実施形態でいう「ハイドロフォビン」は、前記ハイドロフォビン、およびハイドロフォビンに、他のポリペプチド又はポリサッカライド等が融合した融合タンパク質を含むものを指す。

【0036】
本実施形態で得られるエノキタケ抽出物に含まれるハイドロフォビンはSDS可溶性を示すクラスIIであると考えられている。
前記クラスIIのハイドロフォビンは、無機粒子、多糖類、他のタンパク質等に対して結合する結合性及び乳化活性を示すため、食品添加剤、化粧品用添加剤、薬品、接着剤、塗料等各種製品に使用することが考えられる。

【0037】
本実施形態の製造方法で得られるエノキタケ抽出物は、有害な抽出用の薬品を使用しなくても得られるため、安全性が高い、というメリットがある。
また、本実施形態の製造方法でエノキタケ抽出物を得ることで、抽出される抽出物の量が比較的多く、製造効率がよく、低コストで製造できる、というメリットがある。

【0038】
本実施形態のエノキタケ抽出物は食品添加剤として利用することができる。
前記エノキタケ抽出物は、例えば、乾燥させた粉末状等の形状や、溶媒中に溶解させた液体状等の形状にして、食品添加剤として製造することができる。
また、必要に応じて、タンパク質や多糖類等の他の成分と混合してもよい。
本実施形態の食品添加剤は、前述のように多糖類や他のタンパク質等に対して結合する結合性及び乳化活性を示すため、増粘性や乳化性を付与する食品添加剤として各種食品に添加することができる。

【0039】
また、本実施形態のエノキタケ抽出物は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機粒子表面に付着し、無機粒子の表面特性を変化させうる。
無機粒子表面にエノキタケ抽出物を付着させる方法は特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子と、エノキタケ抽出物を含む溶液とを混合することで、エノキタケ抽出物を無機粒子表面に付着させること等が挙げられる。
エノキタケ抽出物が付着した無機粒子は、エノキタケ抽出物によって肌、金属、その他の各種部材の表面への付着性が向上するため、化粧品材料、塗料等の原料として用いることができる。

【0040】
さらに、本実施形態のエノキタケ抽出物は、界面活性剤等の界面活性作用を向上させうる。
従って、例えば、洗剤、シャンプー、ボディーソープ等の原料として用いることで、洗浄力を向上させることができる。

【0041】
本発明によれば、ハイドロフォビンを比較的多く含む安全性の高いエノキタケ抽出物を効率よく得ることができる。

【0042】
すなわち、本発明によれば、エノキタケ子実体をアルコールに浸漬した後に前記アルコールから分離することと、分離した前記エノキタケ子実体を80℃以上の水に浸漬した後に上澄みを抽出物として得ることと、を備えるため、比較的多くのハイドロフォビンを含む抽出物を有害な薬品を使用しなくても効率よく得ることができる。また、安全性の高いエノキタケ子実体を材料として使用し且つ有害な薬品を使用しなくてもよいため、安全性の高い抽出物を得ることができる。

【0043】
前記エノキタケ子実体を酸性溶液に浸漬しその後に前記酸性溶液から分離することを、備えることで、より多くのハイドロフォビンを含む抽出物が得られる。

【0044】
前記酸性溶液が前述のようなpHの範囲である場合には、より、多くのハイドロフォビンを含む抽出物が得られる。

【0045】
前記酸性溶液が酢酸溶液である場合には、安全性が高い酸であるため好ましい。

【0046】
本発明によれば、安全性が高く、比較的多くのハイドロフォビンを含むエノキタケ抽出物を得ることができる。

【0047】
さらに、本発明によれば、安全性の高いエノキタケを材料とし且つ有害な薬品を使用しないで得られたハイドロフォビンを含む抽出物を含む、安全性が高い食品添加剤が得られる。

【0048】
尚、本実施形態にかかるエノキタケ抽出物の製造方法、エノキタケ抽出物および食品添加剤は以上のとおりであるが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
《抽出物の収量》
(実施例1)
エノキタケの子実体の粉末をヘキサン中に懸濁した後、4℃、12時間以上放置した懸濁液を濾紙(No.1、ADVANTEC社製)で濾過することで得られた固形成分を試料として準備した。
前記試料2gを、10%酢酸溶液20mlに懸濁させた後に、遠心分離(25000×g、4℃、15分)して沈殿物を得た。かかる沈殿物2.5gをさらに10%酢酸溶液20mlに懸濁させた後に遠心分離(25000×g、4℃、15分)して沈殿物を得た。
次に、前記沈殿物2.5gを、エタノール(-20℃)20ml中に入れ、遠心分離(25000×g、15分間)を2回繰り返して洗浄し、ドラフトチャンバー内で完全にエタノールを揮発させた沈殿物を、100℃の水の中に30分間浸漬した後、40℃になるまで冷却し、混合して、遠心分離(25000×g、4℃、15分)した上澄みをエノキタケ抽出物として得た。
【実施例】
【0051】
(実施例2)
前記実施例1と同様の試料を、酢酸溶液に懸濁させる処理を行なわない以外は、実施例1と同様に処理して得られたエノキタケ抽出物を実施例2とした。
【実施例】
【0052】
(比較例1)
前記実施例1の10%酢酸溶液を、Washing Buffer液(0.1M Tris-HCl、pH8.0、10mM MgSO4、1mM PMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)の超純粋溶液)に5%(質量%)となるようにトリクロロ酢酸を溶解したものに代え、100℃の水に代えて100℃のドデシル硫酸ナトリウム水溶液(2質量%)で浸漬した以外は、実施例1と同様の方法で得たエノキタケ抽出液を比較例1とした。
【実施例】
【0053】
(比較例2)
前記実施例1のエタノールによる処理を行わない以外は、実施例1と同様の方法で得たエノキタケ抽出液を比較例2とした。
【実施例】
【0054】
(比較例3)
前記実施例1の100℃の水による処理を行わない以外は、実施例1と同様の方法で得たエノキタケ抽出液を比較例3とした。
【実施例】
【0055】
(比較例4)
前記実施例1と同様の試料2gを100℃の水の中に30分間浸漬した後、遠心分離(25000×g、4℃、15分)した上澄みを比較例4のエノキタケ抽出物として得た。
【実施例】
【0056】
前記実施例1、2および比較例1乃至4のエノキタケ抽出液中からタンパク質濃度を以下の方法で測定した。
【実施例】
【0057】
[タンパク質量測定方法]
本実施例においてタンパク質量の測定はLowry法に従い測定した。
Lowry法用のキットとしては、RC DCプロテインアッセイ(バイオラッド社製)を用いた。
使用試薬は、前記キット中のDCプロテインアッセイ試薬のA試薬250μl、同S試薬5μlを混合したA´試薬を用いた。
前記A´試薬と、実施例1乃至比較例4のエノキタケ抽出液を50μlとを、ボルテックスミキサーで1分間混合した後に、さらに前記DCプロテインアッセイ試薬のB試薬を2.0ml添加してボルテックスミキサーで1分間混合した。
この試薬と混合した試料について、分光光度計(U-2001 Spectrophotometer 日立製作所社製)で750nmでの吸光度を測定した。ブランクとして、超純水(Mill-Q)を用いた。
標準液としてBSA(牛血清アルブミン)溶液を用いて検量線を作成し、かかる検量線から実施例1乃至比較例4のタンパク質濃度を算出した。
結果は、以下のとおりであった。
【実施例】
【0058】
実施例1:0.86 質量%
実施例2:0.30 質量%
比較例1:1.50 質量%
比較例2:0.018 質量%
比較例3:0.0079 質量%
比較例4:0.046 質量%
【実施例】
【0059】
実施例1、2は、SDSを用いなくても、比較的多くのタンパク質が抽出されている。特に、実施例1は比較例1と同等程度のタンパク質が抽出されている。
また、比較例2乃至4では、実施例1および2に比べ少量のタンパク質しか抽出されなかった。
【実施例】
【0060】
《乳化活性試験1》
前記実施例1のエノキタケ抽出物の乳化活性を試験した。
乳化活性は、乳化指標(E24)を用いた方法で評価を行なった。
まず、前記実施例1で得られたエノキタケ抽出物を、1.00mg/ml、0.63mg/ml、0.42mg/ml、0.31mg/ml、0.21mg/ml、0.16mg/ml、0.13mg/mlの各濃度になるように超純水で希釈した。
各濃度のエノキタケ抽出物1ml、ケロシン1mlを、テフロンパッキン付きネジ蓋付き試験管に入れ、ボルテックスミキサーで60秒間攪拌した。その後、4℃、30℃、37℃でそれぞれ24時間放置後、液面までの全高さと、エマルジョンの高さを測定し、全高さに占めるエマルジョンの高さをE24(乳化活性指標)として算出した。
結果を図1に示す。
【実施例】
【0061】
図1に示すように、実施例1のエノキタケ抽出物はいずれの濃度においてもE24は40%を超えており、高い乳化活性を示している。
【実施例】
【0062】
《乳化活性試験2》
前記乳化活性試験1のケロシンに代えて、紅花油、米油、コーン油、大豆油、ゴマ油、菜種油、オリーブ油の各油1mlと、前記実施例1で得られたエノキタケ抽出物(濃度0.31mg/ml)1mlとを混合して、前記E24を測定した結果を図2に示す。
【実施例】
【0063】
図2に示すように、実施例1のエノキタケ抽出物はいずれの油に対しても、乳化活性を示している。
特に、従来の生物由来系の乳化剤では乳化させにくいオリーブ油に対しても、エノキタケ抽出物は高い乳化活性を示している。
【実施例】
【0064】
《乳化活性試験3》
前記乳化活性試験1のケロシンに代えて、オリーブ油1mlと、前記実施例1で得られたエノキタケ抽出物をタンパク質濃度175μg/mlになるように希釈したもの1mlとを混合して、前記E24を測定した。
エノキタケ抽出物中のタンパク質濃度は前述したタンパク質量の測定方法と同様に測定した。
尚、前記Lowry法で用いたブランクの超純粋(Mill-Q)に代えて、希釈に用いた0.3M NaClを含む20mM KH2PO4(pH7)を用いた。
【実施例】
【0065】
比較として、エノキタケ抽出物に替えて市販の各界面活性剤と、オリーブ油1mlとを混合したものの前記E24を同様に測定した。
尚、使用した市販の界面活性剤は以下の3種類である。

[界面活性剤]
界面活性剤1:ポエムDL-100、理研ビタミン社製 100μg/ml(ジグリセリンモノラウレート)
界面活性剤2:ポエムDP-100、理研ビタミン社製 100μg/ml(グリセリン脂肪酸エステル)
界面活性剤3:ポエムM-300、理研ビタミン社製 100μg/ml(グリセリン脂肪酸エステル)
【実施例】
【0066】
結果は以下のとおりである。
エノキタケ抽出物:E2462.1%
界面活性剤1: E240.00%
界面活性剤2: E240.00%
界面活性剤3: E240.00%
【実施例】
【0067】
以上のように、エノキタケ抽出物は、市販の界面活性剤では乳化しにくいオリーブ油に対しても高い乳化活性を示している。
【実施例】
【0068】
《多糖類に対する反応性(結合性)試験》
前記実施例1のエノキタケ抽出物の多糖類に対する反応性(結合性)を試験した。
前記実施例1のエノキタケ抽出物(0.16mg/ml)を0.1mlと、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ペクチン、ワキシコーンスターチ(各0.5質量%)をそれぞれ1.0mlとを混合した混合物、エノキタケ抽出物単体、各多糖類単体を、GPC装置(HLC-8320GCP(RI検出器内蔵)、東ソー社製)を用いてUV280における分子量のピークを測定した。
使用カラムはTSKgelGMPWxl(7.8mmI.D.×30cm×2本)を使用し、緩衝液は0.15mM NaClと、Tris-HClとを使用した。流速は1.0ml/minで測定した。
測定した結果を示すGPCクロマトグラムを図3~図5に示す。
【実施例】
【0069】
図3~図5に示すように、いずれのGPCクロマトグラムでも、エノキタケ抽出物単体および多糖類単体と、各多糖類との混合物とでは異なる位置(時間)にピークを示している。
このことから、エノキタケ抽出物は、各多糖類に対する結合性を有しており、各混合物中では多糖類とエノキタケ抽出物との結合体が形成されていることが判る。
【実施例】
【0070】
また、前記乳化活性試験1~3および多糖類に対する反応性(結合性)試験から、実施例で得られたタンパク質は、乳化活性、および多糖類に対する結合性を示すハイドロフォビンクラスIIを含むタンパク質であることが判る。
【実施例】
【0071】
《タンパク質及び無機粒子に対する結合性試験》
以下のような方法で、前記実施例1のエノキタケ抽出物のタンパク質及び無機粒子に対する結合性を試験した。
エノキタケ抽出物との結合性を試験するタンパク質及び無機粒子の試料としては、下記のものを使用した。
[試料]
ケラチン:羊毛、東京化成社製
コラーゲン:TypeI、SIGMA社製
酸化チタン:製造専用品、和光純薬社製
酸化亜鉛:和光純薬社製
酸化第二鉄:和光純薬社製
【実施例】
【0072】
まず、前記実施例1のエノキタケ抽出物中のタンパク質濃度を前述したLowry法と同様に測定したところ205.2μg/mlであった。このエノキタケ抽出物をさらに2、3、4、5倍希釈と5段階の濃度になるようにエノキタケ抽出物を希釈した。
尚、前記Lowry法で用いたブランクの超純粋(Mill-Q)に代えて、希釈に用いた0.3M NaClを含む20mM KH2PO4(pH7)を用いた。
【実施例】
【0073】
次に、前記実施例1のエノキタケ抽出物を1mlと、前記試料用のタンパク質及び無機粒子を含む各試料0.05gとを混合した混合物を、30℃の恒温室において振盪機(NR-2、TAITEC社製)で3時間振盪させた。その後、遠心分離機(CF16RX、HITACHI社製)を用い10000×g、10分間遠心分離し、上澄みを採取した。
採取した上澄み中のタンパク質濃度(B:単位μg/ml)を前記Lowry法によって測定した。
尚、前記Lowry法で用いたブランクの超純粋(Mill-Q)に代えて、希釈に用いた0.3M NaClを含む20mM KH2PO4(pH7)を用いた。
【実施例】
【0074】
さらに、コントロールとして、エノキタケ抽出物の代わりに、1mlのイオン交換水と各試料0.05gとを混合した混合物を前記と同様の方法で上澄みを採取し、同様にタンパク質濃度(C:単位μg/ml)を測定した。
さらに、前記実施例1のエノキタケ抽出物1mlを、前記と同様の方法で上澄みを採取し、同様にタンパク質濃度(d:単位μg/ml)を測定した。該エノキタケ抽出物の上澄みのタンパク質濃度(d)とエノキタケ抽出物中のタンパク質濃度(A)との差(D)を算出した。
【実施例】
【0075】
各測定値及び算出値を以下の算出式にあてはめ、接着率を算出した。

接着率(%)=[{A-(C+D)}-B]÷{A-(C+D)}

【実施例】
【0076】
前記接着率と、各試料と混合するエノキタケ抽出物の濃度との関係を図6のグラフに示す。
図6に示すように、いずれの試料に対してもエノキタケ抽出物中のたんぱく質は、高い接着率を示した。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄に対してはすべての濃度の範囲でも安定して高い接着率を示した。
すなわち、エノキタケ抽出物は、タンパク質及び無機質に対して高い結合性を有していることが明らかである。
【実施例】
【0077】
《界面活性の向上性試験》
前記実施例1のエノキタケ抽出物(タンパク質濃度100μg/ml)を6.5mlと、市販のシャンプー液(商品名「Super MiLD」、資生堂社製)6.5mlとを、メスシリンダーにいれて25℃の条件で手動で1分間攪拌し、10分毎に泡の高さを測定した。
比較として、水6.5mlと、前記シャンプー液とを用いた混合物でも同様に泡の高さを測定した。
泡の高さの測定方法は、メスシリンダーの側方から定規を用いて測定した。
結果を図7のグラフに示す。
【実施例】
【0078】
図7のグラフに示すように、いずれも攪拌時間においても、エノキタケ抽出物と混合した場合、泡の高さは、水と混合するよりも高くなっており、この結果からエノキタケ抽出物はシャンプー液の界面活性作用を向上させることが明らかであった。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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