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明細書 :微生物の検知方法及び検知装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6274534号 (P6274534)
公開番号 特開2016-106632 (P2016-106632A)
登録日 平成30年1月19日(2018.1.19)
発行日 平成30年2月7日(2018.2.7)
公開日 平成28年6月20日(2016.6.20)
発明の名称または考案の名称 微生物の検知方法及び検知装置
国際特許分類 C12Q   1/08        (2006.01)
C12Q   1/20        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
FI C12Q 1/08
C12Q 1/20
G01N 21/64 Z
G01N 21/27 Z
C12M 1/34 B
C12M 1/00 C
請求項の数または発明の数 5
全頁数 18
出願番号 特願2015-235541 (P2015-235541)
出願日 平成27年12月2日(2015.12.2)
優先権出願番号 2014243594
優先日 平成26年12月2日(2014.12.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年3月27日(2017.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】井上 直人
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】西村 亜希子
参考文献・文献 特開2010-046020(JP,A)
特表2001-526883(JP,A)
特表2001-520892(JP,A)
特開2003-210193(JP,A)
特開昭62-175195(JP,A)
特開2003-144193(JP,A)
特開昭60-234599(JP,A)
特開2005-130859(JP,A)
特開平08-000286(JP,A)
米国特許第03960658(US,A)
特開2014-083524(JP,A)
特開2013-255445(JP,A)
Applied and Environmental Microbiology,1991年,Vol. 57, No. 8,p. 2351-2359
Soil Biology and Biochemistry,2001年,Vol. 33, No. 7-8,p. 1029-1036
Applied and Environmental Microbiology,2003年,Vol. 69, No. 6,p. 3593-3599
調査した分野 C12Q 1/08
C12Q 1/20
G01N 21/27
G01N 21/64
C12M 1/00
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくともL-メチオニンとL-グルタミン酸水素ナトリウムを含む別種の栄養資源が反復して供給された複数の培養スポットを備える培養プレートに土壌サンプルを供給し、蛍光測定を利用して土壌サンプルに含まれる微生物を検知する方法であって、
前記蛍光測定として、培養プレートに土壌サンプルを供給した後、前記土壌サンプルに励起光を照射し、培養前と培養期間経過後において、前記培養プレートの各々の培養スポットからの上記励起光よりも長波長の蛍光強度もしくは蛍光スペクトルを測定し、
培養前と培養期間経過後の各々の培養スポットからの蛍光強度もしくは蛍光スペクトルの差に基づいて、土壌サンプルに含まれる微生物の作用を検出することにより、微生物を検知することを特徴とする微生物の検知方法。
【請求項2】
前記栄養資源として微生物による有機物の分解作用を評価するための有機物が供給された培養スポットを備える培養プレートを用いることを特徴とする請求項1記載の微生物の検知方法。
【請求項3】
前記栄養資源として微生物が必要とする窒素源、ビタミン、リン、硫黄を含む基礎培地が供給された培養スポットを備える培養プレートを用いることを特徴とする請求項1または2記載の微生物の検知方法。
【請求項4】
異なる供給濃度の栄養資源が供給された培養スポットを備える培養プレートを用いることを特徴とする請求項記載の微生物の検知方法。
【請求項5】
培養スポットが設けられた領域を除き、表面が撥水性を備える培養プレートを用いることを特徴とする請求項1~のいずれか一項記載の微生物の検知方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の検知方法及び検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌には100万を超える多様な微生物が存在すると言われている。農業では、作物の栄養、土壌の団粒構造形成、病原菌の防除等が微生物の活動によって支配されており、土壌に含まれる微生物の多様性が大きいことは、多様な栄養供給ルートの確保、土壌物理特性の改善、病原菌の増殖の抑制といった有益な効果をもたらす。このように、土壌中に生息する微生物は作物の生育環境に大きく関わるものであり、土壌中の微生物を分析することは土壌の地力の実態を把握する上で重要である。
【0003】
土壌中に生息する微生物を分析する方法として、生物学的方法を利用する方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、検査用の栄養源を収納する多数個の収納部(セル)を備える培養プレートを使用し、各々のセルに異なる栄養源を供給し、検査対象である土壌サンプルを各々のセルに滴下して微生物による培養の様子、栄養源の消費量を観察することによって微生物の存在の有無、微生物の量等を検知する方法である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-50401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
土壌中に存在する微生物の種類は膨大であるから、異なる栄養源を用意して土壌微生物を培養して微生物を分析する方法による場合は、検査用の栄養源としてできるだけ多様な栄養源が使えるようにすることで、より正確な分析が可能になる。しかしながら、従来の分析方法では、セルに供給する栄養源はある程度の分量が必要であり、培養プレートに設置するセルの数が制限され、一度に多数種の栄養源を用いて検査することができない。また、従来の培養プレートは高価であり、再利用を前提としているため、使い勝手が悪いという問題もある。
【0006】
また、培養プレートを用いて微生物を分析する方法として、従来は、培養プレートのセルに残存する栄養源の分量を直接測定したり、発色試薬や染色を使用して分析している。また、発色度、染色度を数値化して評価するため、光学測定装置を使用して分析する方法も行われている。これらの分析方法は、ある程度の分量の栄養源を必要とし、検査に時間がかかるという問題と、微量の栄養源を用いて分析することができないため、多数種の栄養源を用いる場合は必然的に培養プレートが大型になるという問題があった。
【0007】
本発明は、微量の栄養源を用いるだけで測定対象物に含まれる微生物の種類や量を検知することができ、従来方法と比べて、より効率的にかつ短時間で分析することができる微生物の検知方法及び検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る微生物の検知方法は、少なくともL-メチオニンとL-グルタミン酸水素ナトリウムを含む別種の栄養資源が反復して供給された複数の培養スポットを備える培養プレートに土壌サンプルを供給し、蛍光測定を利用して土壌サンプルに含まれる微生物を検知する方法であって、 前記蛍光測定として、培養プレートに土壌サンプルを供給した後、前記土壌サンプルに励起光を照射し、培養前と培養期間経過後において、前記培養プレートの各々の培養スポットからの上記励起光よりも長波長の蛍光強度もしくは蛍光スペクトルを測定し、培養前と培養期間経過後の各々の培養スポットからの蛍光強度もしくは蛍光スペクトルの差に基づいて、土壌サンプルに含まれる微生物の作用を検出することにより、微生物を検知することを特徴とする。
本発明方法において使用する培養プレートはプレート基板(基板)上にスポット状に複数個の培養スポットを設けたものである。培養スポットとしては径1mm~数mm程度の円形のスポット状に形成したものを用いる。ただし、培養スポットの大きさ、形状、配列、配置数がとくに限定されるものではない。培養スポットの配置数としては、10ポイント程度から1000ポイント程度のものまで任意に設定することができる。
【0009】
各々の培養スポットには測定サンプルに含まれる微生物群集の特性(有機物の分解性等)を評価するための栄養資源を供給する。栄養資源は培養スポットごとに、すべて異なる組成(物質)の栄養資源とする必要はなく、全培養スポットのうち、部分的に特定数の培養スポットについて、同一組成の栄養資源を複数の培養スポットに重複して供給してもよい。また、同一組成の栄養資源を供給する場合も、培養スポットによって異なる濃度の栄養資源を供給してもよい。
培養スポットに栄養資源を供給する方法としては、あらかじめ用意した複数種の栄養資源を、培養スポットごとに1種類ずつ供給する(単一型栄養資源の培養スポット)こともできるし、一つの培養スポットに異種の栄養資源を供給する(複合型栄養資源の培養スポット)こともできる。
【0010】
本発明に係る微生物の検知方法は、培養前と培養期間経過後における培養プレートの培養スポットからの蛍光強度を比較することにより、各培養スポットにおける微生物の増殖量、分泌物量、栄養資源の減少量等を検出して微生物を検知することができるという知見に基づく。
本発明に係る微生物の検知方法は、測定サンプルに含まれる微生物種そのものを同定する、いわば定量的な知見を得ることと、測定サンプルがどのような特性の微生物を含んでいるかという、いわば定性的な知見を得ることの双方を概念として含むものである。
微生物は環境に広く存在しており、微生物を効率的にかつ確実に検知する方法は、土壌微生物を検知する場合に限らず、さまざまな用途に利用することができる。本発明に係る微生物の検知方法は、土壌微生物を検出する場合に限らず一般的な微生物の検出に汎用的に利用することが可能である。
【0011】
微生物種を同定する場合は、培養プレートの各培養スポットからの蛍光測定と、特定の培養スポットを選択してゲノム解析する方法とを併用して行うことができる。すなわち、蛍光測定により微生物が増殖あるいは微生物による分泌物質が増加した培養スポットを特定し、あるいは多数の培養スポットについて微生物が増殖するプロフィールに基づいて培養スポットを特定して、ゲノム解析することにより微生物種を同定することができる。
また、土壌がどのような特性を備えているかといった測定サンプルにどのような特性の微生物が含まれているかといった知見を得る場合には、培養スポットからの蛍光強度に基づいて、測定サンプル中の微生物群集の活性を調べることにより、測定サンプル中に有機物を分解する微生物がどの程度含まれているかといったことから測定サンプルについての知見を得ることができる。
【0012】
培養プレートの培養スポットには適宜栄養資源を供給して測定に用いることができるが、前記栄養資源として微生物による有機物の分解作用を評価するための有機物が供給された培養スポットを備える培養プレートを用いることにより微生物による有機物の分解作用を検知することができ、前記栄養資源として微生物が必要とする窒素源、ビタミン、リン、硫黄を含む基礎培地が供給された培養スポットを備える培養プレートを用いることにより、微生物を培養しながら微生物の作用を検知することができる。
【0013】
また、栄養資源ごとに、複数の培養スポットが反復して設けられた培養プレートを用いることにより、1回の測定で微生物による作用を反復評価することができ、効率的な測定を行うことができる。また、栄養資源ごとに、異なる供給濃度の培養スポットが設けられた培養プレートを用いることにより、濃度の相異によって増殖度合いが異なる微生物の作用の検出に対応することができる。
また、培養スポットが設けられた領域を除き、表面が撥水性を備える培養プレートを用いることにより、測定サンプルの溶液中に培養プレートをディッピングするだけで培養プレートの培養スポットに簡単に測定サンプルを供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る微生物の検知方法によれば、微量の栄養資源を用いるだけで効率的にかつ的確に微生物を検知することができる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】微生物の検知装置の構成を示す説明図である。
【図2】土壌サンプルを滴下した直後(a)と24時間経過後(b)の蛍光画像である。
【図3】培養プレートに土壌サンプルを滴下した直後、6時間後、18時間後、24時間後の560nmの蛍光強度の変化を示すグラフである。
【図4】測定開始時と24時間経過後の560nmの蛍光強度の増減を示すグラフである。
【図5】培養プレートに土壌サンプルを滴下した直後、6時間後、18時間後、24時間後の680nmの蛍光強度の変化を示すグラフである。
【図6】測定開始時と24時間経過後の600nmの蛍光強度の増減を示すグラフである。
【図7】培養プレートに土壌サンプルを滴下した直後、6時間後、18時間後、24時間後の680nmの蛍光強度の変化を示すグラフである。
【図8】測定開始時と24時間経過後の680nmの蛍光強度の増減を示すグラフである。
【図9】測定開始時と1週間培養した後の560nm、600nm、680nmの蛍光画像である。
【図10】測定開始時と1週間経過後における560nmの蛍光強度の増減を示すグラフである。
【図11】測定開始時と1週間経過後における600nmの蛍光強度の増減を示すグラフである。
【図12】測定開始時と1週間経過後における680nmの蛍光強度の増減を示すグラフである。
【図13】栄養資源を整列して設けた培養スポットの配置例を示す説明図である。
【図14】マスキングシールを貼って撥水コーティング処理したガラス板を水に浸漬して引き上げた状態(a)、ガラス板にマスキングシールを貼って撥水コーティングした状態(b)を示す写真である。
【図15】マスキングシールを貼って撥水コーティングしたガラス板(a)、撥水コーティングしていないガラス板(b)を、水に濡らした状態の写真である。グラフである。
【図16】栄養資源を供給した培養プレートに土壌サンプルを供給した状態を示す説明図である。
【図17】培養プレートの培養スポットの組成を調整する方法を示す説明図である。
【図18】レーザ加工後の基板の外観を示す写真である。
【図19】土壌サンプルを供給した培養プレートの蛍光画像(培養前)である。
【図20】土壌サンプルを供給した培養プレートの蛍光画像(培養後)である。
【図21】散布図の構成を示す図である。
【図22】3種類の土壌サンプルについて蛍光測定した結果を散布図として示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(微生物の検知装置)
図1は、微生物の検知装置として土壌微生物を検知する装置の構成例を示す。この検知装置は、土壌サンプルを供給した培養プレート10に励起光を照射し、培養プレート10に供給した土壌サンプルの蛍光を観察して土壌中に存在する微生物を分析(検知)するものである。
図1に示す検知装置は、暗箱12内に、培養プレート10をセットするセット部14と、培養プレート10に向けて励起光を照射する励起光源16a、16bと、培養プレート10に供給した土壌サンプル(培養スポット)からの蛍光を検知する検知部18と、検知部18への蛍光の入射側位置に配置するフィルタ20とを備える。

【0019】
図1に示す検知装置において2つの励起光源16a、16bを使用している理由は、培養プレート10に供給した各々の土壌サンプルに、均等に励起光が照射されるようにするためである。以下の実験で使用した培養プレート10は、40×40mm角のアルミニウム板上に9種類の栄養資源を供給したものである。実際の土壌微生物の検知に使用する培養プレートは、さまざまな組成あるいは組成比からなる栄養資源を使用するから、培養プレート全体に均一に励起光が照射されるようにし、多数点からの蛍光を的確に観測できるように励起光の配置数や配置を調整するのがよい。もちろん、励起光源が1台であってもよい。

【0020】
実験で実際に使用した励起光源16a、16bは、波長440nmの青色LED光源である。励起光源としては青色LED光源に限らず、紫外域の励起光源を使用することもできる。励起光源の波長域はとくに限定されるものではなく、培養スポットからの蛍光の波長域よりも短波長の波長のものであればよい。
励起光源にはLED光源の他に半導体レーザ等のレーザ光源を使用することもできる。レーザ光を励起光源とする場合は、培養プレートをセットするセット部をx-yステージとし、ステージ自体を平面内で動かしながら培養プレートに励起光を照射し、各々の培養スポットからの蛍光を検知するようにするのがよい。

【0021】
検知部18には光電子増倍型CCDカメラ(C9100-13 浜松ホトニクス)を使用した。検知部18は光電子増倍型CCDカメラに限定されるものではなく、光電子増倍管等の適宜検知装置を使用することができる。
フィルタ20には、特定波長の蛍光強度を検知するためのバンドパスフィルタを使用した。異なる波長のバンドパスフィルタを交換して蛍光測定を行うことにより、波長別の蛍光測定ができる。フィルタチェンジャ(FC-35A.CTL:朝日分光)を使用し、フィルタ20を交換しながら実験した。実際に使用したフィルタは、560nm、600nm、680nmの3種のバンドパスフィルタである。本実施形態で、蛍光検知部は、検知部18とフィルタ20とをあわせたものに相当する。

【0022】
セット部14には、高さ方向(z方向)と平面内(x-y)での位置調整が可能な支持機構を備えるものを使用するのがよい。z方向とx-y方向の調整ができると、大きい面積の培養プレート10を使用する場合に、培養プレート10の照明の調整が容易にできる利点がある。

【0023】
土壌微生物の分析(検知)は、実際には、培養プレートの各培養スポットからの蛍光測定と、特定の培養スポットを選択してゲノム解析する方法とを併用して行われる。
蛍光スペクトルには、微生物の増殖量、微生物によって分泌された分泌物質、栄養資源の減少量についての情報が混在している。バンドパスフィルタを用いて、蛍光分析するのは、特定の情報を選り分けて抽出するためである。
蛍光スペクトルから、微生物が増殖しているスポットや、分泌物質が増えているスポット、栄養資源が減少しているスポットが判別できれば、これらの培養スポットを選択してゲノム解析することにより、サンプルに含まれる微生物を検知することができる。

【0024】
(蛍光測定実験:培養24時間)
上記土壌微生物の検知装置を用いて24時間培養による蛍光測定実験を行った。
培養プレート10には、40×40mm、厚さ1mmのアルミニウム板の表面に、一列に3点ずつ3列、均等間隔で、合わせて9か所に栄養資源を供給する凹部を設けたものを使用した。凹部は、中心部の深さ0.1mm、径3mmで内面が球面状である。実施形態では凹部を設けたプレートの表面に、凹部を設けた部位を除いて、撥水コーティングしたものに栄養資源を供給して培養プレート10とした。

【0025】
測定に使用した土壌サンプルは黒ボク土壌の畑地表土である。畑地から採取した土壌を、蒸留・滅菌した水で希釈して懸濁液とし、この懸濁液を土壌サンプルとした。

【0026】
培養プレートの凹部(9か所)のそれぞれに、9種類の栄養資源を供給した。以下の4種は共通に使用した栄養資源である。
酵母エキス:0.1%、 K2HPO4:0.03%、 KH2PO4:0.02%、 MgSO4・7H2O:0.02%
これらの栄養資源に、グルコース、イノシトール、スクロース、ガラクトース、グリセリン、酢酸、グルコン酸、マンニトール、グルタミン酸をそれぞれ0.1%加え、9種類の栄養資源を調製した。

【0027】
上記栄養資源を培養プレート10の凹部に各々10μL供給し、乾燥させて凹部表面に付着した状態にした後、各々の栄養資源に土壌サンプル(懸濁液)を10μLずつ滴下した。蛍光測定は、土壌サンプルを供給した直後と、所定時間恒温器内で培養した後の培養プレート10を、前述した暗箱12内のセット部14にセットして行った。

【0028】
図2は、土壌サンプルを滴下した培養プレート10からの蛍光を測定した画像を示す。図2(a)は、土壌サンプルを滴下した直後に撮影した画像、図2(b)は、24時間培養した後の蛍光画像である。土壌サンプルの培養は内部を暗室とした恒温器(30℃)内に静置して行った。励起光の波長は440nmの青色光である。

【0029】
560nmの蛍光画像を見ると、滴下直後に比べて、24時間培養経過後の蛍光強度がやや強くなっていることがわかる。なお、土壌サンプルからの蛍光が2つの点状に見えているのは2つの励起光源16a、16bから培養プレート10に励起光を照射していることによる。
560nm付近の蛍光は微生物の代謝によってフラビンが生成されたためであると考えられる。フラビンは青色光の励起により560nm付近の緑色の蛍光を放射する。
600nm付近の蛍光強度は、560nm付近の蛍光強度よりも弱く、滴下直後よりも24時間培養した後の強度が弱くなっている。
680nm付近の蛍光強度は、滴下直後から弱く、24時間培養した後はさらに弱くなっている。

【0030】
図3は、培養プレート10に供給した各々の栄養資源(9点)について、560nmの蛍光強度を、滴下直後、6時間後、18時間後、24時間後について測定した結果を示すグラフである。蛍光強度は、それぞれの経過時間ごとに3回、反復して測定し、3回の平均値をとった。また、培地の面積に対する輝度の密度を蛍光強度とした。図3のグラフの縦軸を輝度密度と表示しているのはこのためである。
表1に栄養資源ごとの蛍光強度の測定値を示す。
【表1】
JP0006274534B2_000002t.gif

【0031】
図4は、測定開始時と24時間経過後における、各栄養資源についての560nmの蛍光強度の差(24時間後の平均値-開始時平均値)をグラフに示したものである。このグラフからわかるように、560nmの蛍光強度についてみると、いずれの栄養資源についても24時間経過後に蛍光強度が増大している。また、スクロース、グリセリン、マンニトールについては増加の程度が大きいことがわかる。前述したように、560nm付近の蛍光はフラビンが生成されたことを示すものであり、上記測定結果は、時間経過とともにフラビンの生成量が増えていることから、検査対象土壌中にフラビンを生成させる代謝を進ませる微生物が存在することを示唆する。

【0032】
図5は、600nmの蛍光強度を、滴下直後、6時間後、18時間後、24時間後について測定した結果を示すグラフである。表2に蛍光強度の測定値を示す。
【表2】
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【0033】
図6に、測定開始時と24時間経過後の600nmの蛍光強度の増減を示す。600nmの蛍光強度については、栄養資源全体として減少する傾向にあり、グルコース、イノシトール、ガラクトース、グルタミン酸については、蛍光強度が大きく減少している。一方、グリセリンとマンニトールについては、これらとは逆に蛍光強度が増大するという特徴的な結果を示している。
これらの蛍光測定の結果とゲノム解析とを組み合わせることにより微生物種が同定される。

【0034】
図7は、680nmの蛍光強度を、滴下直後、6時間後、18時間後、24時間後について測定した結果を示すグラフである。表3に蛍光強度の測定値を示す。

【0035】
図8に、測定開始時と24時間経過後の680nmの蛍光強度の差を示す。680nmの蛍光強度の増減については、グルコース、イノシトール、スクロース、ガラクトースのように蛍光強度が大きく減少するものと、グリセリン、グルコン酸、グルタミン酸のように減少幅が小さいものと、酢酸、マンニトールのようにこれらとは逆に蛍光強度が増加するものがある。これらの蛍光測定結果とゲノム解析から、微生物種が特定される。
なお、多数個の培養スポットを備える培養プレートを用いて蛍光測定した場合には、多数個の培養スポットからの光情報に基づいて、土壌等の微生物叢の類似度を得ることができる。
【表3】
JP0006274534B2_000004t.gif

【0036】
(蛍光測定実験:培養1週間)
植物病害の主たる原因とされている糸状菌類の繁殖パターンを見るため、培養期間を1週間として蛍光測定実験を行った。使用した培養プレート10は上述した実験で使用したものと同一のものである。
図9は、測定開始時と1週間培養した後の560nm、600nm、680nmの蛍光画像を示す。この蛍光画像から、1週間培養した場合には、栄養資源によってかなり蛍光強度が異なるものとなることがわかる。

【0037】
図10、11、12は、測定開始時と1週間経過後における、蛍光強度の増減をグラフに示したものである。図10は560nmの蛍光強度、図11は600nmの蛍光強度、図12は680nmの蛍光強度の増減を示す。
図10、11、12に示す実験結果は、1週間経過後における560nm、600nm、680nmの蛍光強度は、いずれの栄養資源についても増加したことを示す。これら560nm、600nm、680nmの蛍光強度についての増減のプロフィールは、24時間培養によるときの増減のプロフィールとは大きく異なっている。24時間の培養時間においてはバクテリアの増殖が支配的であるのに対して、1週間程度の長期の培養期間では糸状菌等の菌類の増殖が支配的になるためと考えられる。

【0038】
上述した蛍光測定による微生物を検知する方法において特徴的な利点として、下記の点を上げることができる。
1)蛍光分析によることから、培養プレートに供給する栄養資源量が微量であっても高感度で光情報を検出することができる。
2)微生物の増殖量や分泌量がわずかであってもこれらの変化を検出することが可能であり、増殖の初期段階においても微生物の増殖や微生物による分泌物質を検出することができ、短期間での検知が可能となる。
3)培養プレートの培養スポットに、組成が異なるさまざまな栄養資源を用意しておくことにより、微生物の増殖パターンを検出する精度が向上し、より多種類の微生物を検出することが可能になる。
4)いろいろな波長での蛍光強度、あるいは蛍光スペクトルを検知することにより、栄養環境によって異なる微生物種、異なる分泌物質が存在することがわかる。これらの光情報とゲノム解析により微生物種を同定することができる。

【0039】
(培養プレート)
本発明に係る土壌微生物の検知方法においては、平板状のプレート上に栄養組成が異なる栄養資源を供給した培養プレートを使用して分析を行う。土壌微生物の分析には、組成が異なるできるだけ多くの栄養資源を用いて分析することが高精度の分析結果を得る上で重要である。上述した蛍光測定を利用して土壌微生物を検知する方法によれば、微量の栄養資源で分析することができ、培養プレートには微量の栄養資源を供給するだけで検知することが可能である。したがって、培養プレートに微量の栄養資源をスポット状に多数個供給することにより、大きな培養プレートを使用することなく、多数種の栄養資源を用いた土壌微生物の分析が可能となる。

【0040】
前述した実施形態においては、プレート上に栄養資源を供給する凹部を設けた培養プレートを使用した。栄養資源を供給する凹部を設ける方法は、供給する栄養資源を位置決めする上では有効であるが、培養プレートに供給する土壌サンプルは微量であるから、凹部を設けずに、単に平板状の培養プレートを使用してスポット状に栄養資源を位置決めして供給することも可能である。

【0041】
図13は、培養プレート30に栄養資源32を整列して供給した培養スポットの配置例を示す。栄養資源を点状(小円形の平面形状)に供給して乾燥させることにより、栄養資源32が整列して供給された多数個の培養スポットを備える培養プレート30が得られる。培養スポットの大きさ(径)は0.5mm~数mm程度で十分であり、微小な培養スポットを整列させて配置することにより、1000ポイント程度の培養スポットを備える培養プレートを調製することは容易である。
栄養資源の供給数(培養スポットの数)を多くすることにより、いろいろな組成の栄養資源を分析に使用することができ、分析精度を向上させることができる。また、栄養資源の供給量のばらつきと各栄養資源に供給される土壌サンプルの液量のばらつきによる測定データのばらつきを抑えるため、同一組成の栄養資源を供給する供給ポイントを複数点として測定データを平均化することにより、測定データのばらつきを抑え、測定を繰り返し行わずにばらつきを抑えた測定をすることもできる。

【0042】
培養プレートの素材はとくに限定されないが、土壌サンプルとして懸濁液を使用する関係上、プレート表面が撥水性の培養プレートを用いるのがよい。プレート材そのものが撥水性を備えていてもよいし、表面に撥水処理を施して使用してもよい。
図14、15は、ガラス板の表面を撥水コーティングして、ガラス板の表面に水滴を付着させた実験を行った例である。図14(b)は、ガラス板の表面に径5mmの円形のマスキングシールを貼って撥水コーティング処理した状態を示す。図14(a)は、マスキングシールを剥がし、撥水コーティングしたガラス板を水に浸漬して引き上げた状態を示す。撥水処理を施したことにより、マスキングシールを貼った部位にのみ水滴が付着している。
図15(a)はマスキングシールを貼って撥水コーティングしたガラス板、図15(b)は撥水コーティングしていないガラス板である。撥水コーティングしたガラス板(図15(a))では水滴状に水が付着するのに対して、撥水コーティングしていないガラス板(図15(b))では、水滴状にならない。

【0043】
図14に示した例では、培養スポットを形成する部位にマスキングテープを貼って撥水コーティングすることにより、培養スポットとする部位を非撥水性としたが、培養スポットとする部位を非撥水性とする方法には種々の方法が利用できる。たとえば、培養プレートの基板に撥水性のコーティングを施し、CO2レーザ加工により培養スポットとする部位を非撥水性とする方法、培養スポットとなる部位を露出するマスクを利用して、化学的、物理的なエッチングにより培養スポットに対応する部位を非撥水性にするといった方法等がある。

【0044】
このように、撥水性を有する基板に設けた培養スポットに栄養資源を供給して調製した培養プレートを使用すれば、培養プレートを検査対象である土壌の懸濁液に浸漬する(ディッピング)だけで、培養プレートの培養スポットのみに土壌サンプルを付着させる(供給する)ことができ、培養プレートに不必要に土壌サンプルを付着させずに測定することができる。

【0045】
図16は、基板30aに栄養資源32を供給して調製した培養プレート30に土壌サンプル34を供給した状態を示す。栄養資源32は基板30aに供給して乾燥させることにより、基板30aの表面に平坦状に付着する。撥水性を有する基板30aを使用することにより、土壌サンプルの懸濁液に培養プレート30をディッピングするだけで栄養資源32が付着した培養スポットのみに土壌サンプル34を供給することができる。

【0046】
培養プレート30は基板30aに栄養資源32を所定配列で供給したものであるから、基板30aに供給する栄養資源32の組成を制御することにより、用途に合わせて培養プレート30を調製することができる。すなわち、土壌微生物の分析目的に合わせて各培養スポットにおける栄養資源の組成を調整して培養プレート30とすればよい。

【0047】
図17は、培養プレート30の培養スポットに供給する栄養資源の組成を調整する方法(複合型栄養資源の培養スポットの例)を示す。図17では、栄養資源として、糖類、タンパク質類、ミネラル類を供給する場合を示している。図17に示す供給方法は、栄養資源ごとに培養スポット内における供給領域をあらかじめ区分して設定しておき、各供給領域に供給する栄養資源の供給量を制御することにより各培養スポットに供給される栄養資源の組成を調整する方法である。
図17では、A領域:糖類、B領域:タンパク質類、C領域:ミネラル類とし、各領域ごとに糖類、タンパク質類、ミネラル類を選択して供給する。A領域、B領域、C領域の平面配置が相互に重複しないようにしているのは、隣接する領域の栄養資源が化学反応することを回避するためである。

【0048】
このように培養スポットに供給する栄養資源の供給領域を区分しておけば、それぞれの供給領域に栄養資源を供給する際に、栄養資源の供給量を制御することによって、培養スポットごとに栄養資源の組成を変えることができる。また、供給する栄養資源の濃度を変えることにより、栄養資源の濃度的な組み合わせを変えることもできる。
A、B、C領域に栄養資源を供給する場合、2種あるいは3種の栄養資源を組み合わせることも可能であるし、特定の培養スポットについては1種の栄養資源のみを供給するといった制御も可能であり、この場合、当該培養スポットは単独の栄養資源のみからなる培養スポットとなる。

【0049】
図17は、培養スポットに3種類の栄養資源の領域を設定して、培養スポットにおける栄養資源の組成を調整できるようにしたものであるが、栄養資源を供給する供給領域の数は3種に限らない。また、図17では、平面形状が円形の培養スポットを設定して、栄養資源を供給する領域を短冊状としているが、培養スポットの平面形状は円形状のものに限定されるものではなく、たとえば矩形状とすることも可能であり、培養スポットに設定する栄養資源の供給領域も短冊状に限らず、小円の散点的な配置にするといったことも可能である。

【0050】
上記のように、各々の培養スポットに複数種の栄養資源を供給するための供給領域を設定し、それぞれの供給領域に栄養資源を位置決めして供給する方法としては、印刷技術を利用する方法が有効である。培養スポットに供給する栄養資源をあらかじめ調製し、これらの栄養資源を収納した供給ボトルから印刷技術を利用して基板上に栄養資源を印刷することにより、所定組成の栄養資源が供給された培養スポットが所定配列で供給された培養プレートが得られる。

【0051】
印刷法を利用して栄養資源が供給された培養スポットを備える培養プレートを調製する方法は、多数個の培養スポットを備える培養プレートであっても容易に作製することができ、栄養資源の組成を変えることも容易で、種々の用途に容易に対応できるという利点がある。また、栄養資源を印刷したいろいろな用途の培養プレートをあらかじめ用意しておくことが可能であり、これにより農業従事者等の一般用途として手軽に使用することが可能になる。また、撥水性シートを基板として、シートに栄養資源を印刷して提供することで量産が可能であり、安価な培養プレートとして提供でき、使い捨て利用が可能になる等の利点がある。

【0052】
(蛍光測定実験:他の実験例)
プレパラートを基板として培養プレートを作製し、培養スポットを10行×20列、200スポットとして蛍光測定実験を行った。
基板はプレパラートの表面を平滑化処理した後、ディッピングにより基板の表面に撥水性コーティングを施した後、CO2レーザ加工により1mm径の円形の培養スポットを形成した。図18にレーザ加工後の基板を示す。10行×20列の培養スポットが形成されている。

【0053】
次に、培養スポットを形成した基板に基礎培地を供給する操作を行った。基礎培地は微生物に必要な窒素源やビタミン、リン、硫黄を考慮して設定する。本実験では下記の組成の溶液を調製し、基板をこの溶液にディッピングすることで基板の培養スポットに基礎培地を供給した(基礎培地を供給する工程)。
基礎培地の組成
酵母エキス:1.0g/L K2HPO4:0.3g/L KH2PO4:0.2g/L MgSO4・7H2O:0.2g/L
もちろん、基礎培地の組成は上記例の組み合わせに限るものではなく、これら以外の材料を選択することができ、保湿剤を添加して微生物の成長を調整することも可能である。

【0054】
培養プレートの基板に基礎培地を供給した後、微生物による有機物の分解作用を評価するため培養スポットに有機物を供給する操作を行った(有機物を供給する工程)。有機物の利用が盛んであるほど微生物の増殖速度が速くなる。
実験で使用した有機物は下記の10種である。有機物の濃度は既存の培地組成を参考にして設定した。
D-マンニトール:0.5g/L L-グルタミン酸水素ナトリウム:0.2g/L
L-メチオニン:0.2g/L L-アスパラギン水和物:0.5g/L tween80:10ml/L
スキムミルク:1g/L L-プロリン:0.2g/L 安息香酸ナトリウム:0.1g/L
アミノ酪酸:0.2g/L グルコン酸ナトリウム:10g/L
なお、tween80は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートの略である。

【0055】
これらの有機物を選択した理由は以下のとおりである。
1)D-マンニトール、L-アスパラギン水和物、L-プロリン、アミノ酪酸、グルコン酸ナトリウムは、作物根圏土壌微生物群集による分解性の差が見やすいもので、作物による土壌微生物群集の形成の違いや、それによる土壌有機物分解・利用特性の違いの評価に用いられる。
2)tween80は疎水性と親水性を持つ脂肪と類似した性質を持ち、スキムミルクはタンパク質を豊富に含み、安息香酸はベンゼン環を持つ高分子化合物である。これらの物質は微生物が高分子の有機物を迅速に分解できるかどうかの評価に用いられる。
3)L-メチオニンとL-グルタミン酸水素ナトリウムは、静菌作用を持つエチレン代謝の基礎になる物質である。これらの物質の分解能を観察することで、糸状菌の成長を抑制する作用(静菌作用)ついて評価することができる。

【0056】
これらの有機物をインクジェット装置を用いて基板の培養スポットに滴下し、培養プレートを調製した。培養プレートの基板にはあらかじめ基礎培地が供給されている。有機物はこれらの基礎培地が供給されている培養スポットに位置合わせして供給した。基板に供給した有機物の例を表4に示す。表4の行方向、列方向に示した各区画が200個の培養スポットに対応する。
【表4】
JP0006274534B2_000005t.gif

【0057】
本実験では、各々の培養スポットに1種類の有機物を供給した。すなわち、第1行目の培養スポットにはD-マンニトールを供給し、第2行目の培養スポットにはL-グルタミン酸水素ナトリウムを供給した。以下、同様である。
なお、濃色で示した区画は、培養スポットあたり50nlの有機物を供給した区画、薄色で示した区画は培養スポットあたり25nlの有機物を供給した区画である。すなわち、第1行目のD-マンニトールについては、50nlを供給した培養スポットと25nlを供給した培養スポットを10点ずつ、交互に配置した。以下、他の有機物についても濃色と薄色は、50nlと25nlを交互に配置したことを示す。

【0058】
本実験で使用した培養プレートのように、同一種の有機物を反復して培養プレートに供給すれば、1回の測定で反復評価(実験例では10反復評価)することができ、測定サンプルの供給量のばらつき等による測定結果のばらつきを抑えることができる。
また、培養スポットに供給する有機物の量(濃度)を変えている理由は、微生物の中には低濃度で旺盛に増殖する種もあるからである。本実験では1スポットあたりの有機物の供給量を25nlと50nlとし、2段階で評価した。1スポットあたりに供給する有機物の量を3段階、4段階等として、さらに詳細な、濃度に依存する評価測定をすることもできる。

【0059】
インクジェット装置を利用して培養プレートに有機物を供給する方法は、インクの供給容器に有機物の溶液を入れて印刷操作を行うことによって行った。有機物(溶液)の吐出量を調整するため、インクジェット装置の吐出ノズルを調節して使用した。インクジェット装置を利用して有機物を供給する方法であれば、培養スポットを高密度に配置しても、確実に培養スポットに位置合わせして有機物を供給することができる。インクジェット装置によれば、溶液の吐出量と吐出時間をコントロールすることができる。また、吐出する有機物としてコロイドを使用することもできる。

【0060】
図19、20は上述した培養プレートを用いて蛍光測定を行った結果を示す。図19は培養前における培養プレートの蛍光画像、図20は培養後の蛍光画像である。この実験に使用した測定サンプルは長野県の畑地から採取した「クロボク土」である。培養期間は2日である。
蛍光測定は、励起光として波長392nmのLED光を用い、波長440nmの蛍光を画像化して処理した。この励起光と蛍光の組み合わせは、微生物が代謝の中で電子伝達に関わるNADHの情報を含んでいる。そのため、蛍光が大きい程、微生物の代謝とそれに伴う有機物の分解が盛んであるということができる。

【0061】
微生物の作用については、蛍光画像の各スポットの蛍光強度をグレー値をもとに数値化することにより、微生物の有機物利用の多様性に着目した評価を行うことができる。
蛍光強度に基づいて微生物の多様性を評価する方法として、縦軸に全培養スポットからの蛍光強度の平均値、横軸に全培養スポットからの平均値を全培養スポットからの蛍光強度の標準偏差で割った値、つまり変動変数の逆数(1/C.V.)をとったグラフに表して評価する。これにより、全体的な分解力とその分解が様々な有機物で行われているか、特定の有機物でしか行われていないのかといった分解能力の幅について評価する散布図を作成することができる。

【0062】
図21は散布図の構成を示す。図21で縦軸(蛍光強度の平均値)は測定サンプルに含まれる分解活性を表し、蛍光強度の平均値が高いことは測定サンプルに含まれる微生物群集の総体的な分解力が高いことを意味する。また、横軸(変動変数の逆数)は微生物群集の分解力の多様性を表し、横軸の値が大きくなるにしたがって、測定サンプルに含まれる微生物群集によって分解される有機物の種類が多いことを意味する。図21において、点の位置が右上になるほど分解力が高く、様々な種類の有機物を分解しているということができ、測定サンプルの微生物群集の活性が高いと評価することができる。

【0063】
図22は、3種類の土壌サンプルを測定対象として実際に蛍光測定試験を行い、上述した評価方法に基づいて測定結果を散布図に示したものである。
測定に使用した土壌サンプルは、普通ソバ、アワ(山梨県早川町在来種)、アオアワ(長野県飯田市上村在来種)の栽培に用いた土壌である。これら作物の作物根圏土壌を採取し、前述した200培養スポットを備える培養プレートを用いて培養し、蛍光測定を行った。
図22に示した散布図から、作物土壌によって有機物の分解特性に特徴的な傾向があること、異なる作物土壌で微生物の有機物分解の特徴が異なることがわかる。この実験結果から、アワの根圏微生物群集の分解活性が普通ソバ及びアオアワと比較して高いこと、アワであっても品種によって分解活性の特徴が異なることがわかる。
いろいろな作物について上記のような散布図を作成することにより、微生物の有機物分解を考慮した作付計画や品種改良などに役立てることができる。

【0064】
蛍光測定に基づいて作成する散布図は、図21、22に示すような縦軸と横軸の構成とする場合に限られない。たとえば、縦軸をL-メチオニンとL-グルタミン酸水素ナトリウムの培養スポットでの蛍光量に置き換えると、さらに別のグラフとなる。この場合は、縦軸が静菌力の指標となり、横軸は微生物群集の安定性の指標になるので、農耕地や生態系の土壌病害抑制力の評価が可能になる。
【符号の説明】
【0065】
10 培養プレート
12 暗箱
14 セット部
16a、16b 励起光源
18 検知部
20 フィルタ
30 培養プレート
30a 基板
32 栄養資源
34 土壌サンプル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21